説明

赤外溶剤ストリッピング法

約1マイクロメートル未満の平均繊維径を有する溶剤含有ポリマー繊維を含む不織ウェブを提供する工程と、少なくとも1つの赤外溶剤ストリッピングステーションを通して不織ウェブを運ぶ工程であって、繊維の溶剤濃度を約10,000ppmw未満に低減するために不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体の不存在下に赤外放射線が不織ウェブを照射する工程とを含む溶液紡糸不織ウェブからの化学的に結合した紡糸溶剤のストリッピング法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
溶液紡糸繊維ウェブ中の溶剤含有繊維からの溶剤のストリッピング法が開示される。
【背景技術】
【0002】
溶液紡糸法は、所望のポリマーを好適な溶剤へ溶解させる工程と、このポリマー/溶剤溶液から繊維を紡糸する工程とを含む。多くの場合、溶剤は、そのように形成された布の使用において、健康上の悪影響、望ましくない臭い等々の、望ましくない特性を有する有機溶剤である。
【0003】
溶液紡糸法は、繊維および不織布を製造するために頻繁に用いられ、場合によっては、繊維または布を大量に商業的に実現可能な量で製造できるほど、処理量が高いという利点を有する。
【0004】
米国特許第3,503,134号明細書および米国特許第6,986,830号明細書に開示されているものなどの、製紙法において、紙を形成するウェットレイドセルロース繊維の脱水は、ウェットレイドセルロースウェブを減圧支援多孔性ドラム上に通すことによって行われ、形成プロセスからの過剰の水は、紙ウェブを通しておよび紙ウェブから引き離される。米国特許第3,503,134号明細書は、減圧支援の乾燥効果を高めるための熱風、過熱スチームまたはスチーム−空気混合物の使用を開示している。米国特許第6,986,830号明細書は、ウェットレイド紙を2つの柔らかい、多孔性クロスウェブの間に置く工程であって、紙ウェブのいずれかの面上の多孔性クロスが毛管現象によって紙から追加の水を抜く工程を開示している。
【0005】
米国特許出願公開第2002/0092423号明細書は、不織ポリマーウェブを形成するための溶液紡糸法、特に電気紡糸法であって、ポリマーマイクロファイバーまたはナノファイバーが帯電した回転エミッターポリマーを出るポリマー溶液から製造され、接地されたコレクター格子の方へ導かれる方法を開示している。溶剤は、エミッターとコレクター格子との間を「飛行中に」繊維から蒸発する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1実施形態では、本発明は、約1マイクロメートル未満の平均繊維径を有する溶剤含有ポリマー繊維を含む不織ウェブを提供する工程と、少なくとも1つの赤外溶剤ストリッピングステーションを通して不織ウェブを運ぶ工程であって、繊維の溶剤濃度を約10,000ppmw未満に低減するために不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体の不存在下に赤外放射線が不織ウェブを照射する工程とを含む溶液紡糸不織ウェブからの化学的に結合した紡糸溶剤のストリッピング法である。
【0007】
本明細書の一部に組み込まれる、および一部を構成する、添付の図面は、本発明の現在考えられる実施形態を例示し、説明と一緒に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるナノファイバーウェブを製造するための先行技術のエレクトロブローイング装置の概略図である。
【図2】本発明による赤外溶剤ストリッピングステーションの慨略図である。
【図3】本発明による流体/減圧溶剤ストリッピングステーションの慨略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、少なくとも1つのナノファイバー層を含む、濾過媒体、エネルギー貯蔵分離器、保護服等々の、様々な顧客最終使用用途向けの溶剤紡糸ウェブおよび布と、溶液紡糸ナノファイバーウェブまたは布からの過剰の紡糸溶剤の除去方法とに関する。
【0010】
様々な顧客最終用途ニーズに適合するための多種多様なポリマーから製造された繊維製品が必要とされている。多くのポリマー繊維およびウェブは、スパンボンディングおよびメルトブローイングなどの、溶融紡糸法で形成することができる。しかしながら、溶融紡糸を用いる能力は、溶融加工可能であるポリマー、すなわち、高温で軟化しまたは溶融し、流れることができるものからの繊維の紡糸に限定される。それでも、多くの最終用途において、繊維材料、布およびウェブを形成するために溶融加工できないポリマーを利用することが望ましい。これらの溶融加工できないポリマーを繊維材料へ成形するために、溶液紡糸の技術が用いられる。また、溶融加工可能なポリマーの溶液紡糸は時々、異なる特性の繊維材料、布およびウェブを形成することができる。
【0011】
上述したように、湿式紡糸、乾式紡糸、フラッシュ紡糸、電気紡糸およびエレクトロブローイングなどの、溶液紡糸法は、所望のポリマーを好適な溶剤へ溶解させる工程と、ポリマー/溶剤溶液から繊維を紡糸する工程とを含む。多くの場合、溶剤は、健康上の悪影響、望ましくない臭い等々の、そのように形成された布の使用において望ましくない特性を有する有機溶剤である。残念ながら、約2グラム/平方メートル(gsm)より大きい坪量を有する不織ウェブを形成するためなど、紡糸ダイを通して高処理量で大量の布を溶液紡糸するとき、そのように紡糸されたポリマーへの溶剤の高い物理的または化学的親和性のいずれかまたは両方ならびに、紡糸溶剤の完全な蒸発のための繊維形成と繊維収集との間の十分な時間または空間の欠如が原因で、かなりの量の残存溶剤が集められた布または繊維中に同伴され得る。多くの場合に、溶液紡糸法に使用される溶剤は、様々なレベルの毒性を実証するか、または環境上の悪影響を示すかもしくは特定の最終用途で不都合な化学反応を引き起こす。したがって、できるだけ多くの残存溶剤を溶液紡糸繊維材料から除去することが好ましい。
【0012】
従来の不織布紡糸法では、ロール内の下にある布は大気に曝されないので、溶剤が放置時に蒸発可能である場合でさえ、ロールの外側上の布に同伴された溶剤のみが効果的に蒸発するように、布は紡糸され、本質的に連続的な操作で大きいロールへ巻き取られる。不都合にも、布が広げられた状態で紡糸溶剤を蒸発させるのに十分な時間を与えられることになる場合でさえ、極めて広い区域が広げられた布のための場所を提供する必要があり、かつ、蒸発した溶剤の回収が困難で高くつくであろう。顧客への発送前に、製造プロセス中に、望ましくない溶剤を繊維または布からストリップすることが望ましいであろう。
【0013】
溶剤除去は多くの場合、紡糸操作中に溶剤へのポリマーの完全な溶解を達成するために、任意の特定のポリマー/溶剤紡糸系がポリマーに対する溶剤の強い親和性に基づいて選択されることによって複雑にされる。場合によっては、繊維ポリマーは、溶剤によって膨潤する、すなわち、溶剤分子が吸収され、ポリマー繊維内に分散される。他の場合には溶剤は、水素結合、ファンデルワールス力、または塩形成によりさらにイオン的によってなど、繊維を構成するポリマー分子と化学的に結合する。
【0014】
乾式紡糸などの、幾つかの従来の溶剤紡糸法では、高親和性溶剤の除去は、繊維を長さが30フィートほどに多い熱ガス「煙突」中へ紡糸する工程と、望ましくない溶剤を追い払うために煙突に(500℃ほどに高い)高温ガスを通過させる工程とによって成し遂げられる。想像できるように、この方法は、高価な装置を含み、エネルギー集約的方法である。
【0015】
溶液紡糸繊維からの望ましくない溶剤の除去を高める一方法は、拡散蒸発除去メカニズムが1/直径2の関係式に従うので、繊維それら自体の直径を減らすことであることが発見された。すなわち、同伴溶剤は、より大きい直径を有する繊維からよりもより小さい直径を有する繊維から容易に拡散するであろう。本発明によれば、溶液紡糸繊維は、溶剤除去の拡散蒸発除去メカニズムを最適化するために約1マイクロメートル未満の直径を有する(ナノファイバー)ことが好ましい。
【0016】
用語「ナノファイバー」は、数十ナノメートルから数百ナノメートル以下、しかし一般に約1マイクロメートル未満、さらには約0.8マイクロメートル未満、さらには約0.5マイクロメートル未満にまで変わる直径を有する繊維を意味する。
【0017】
本発明の方法にかけられるべき溶液紡糸布およびウェブは、ポリマーナノファイバーの少なくとも1つの層を含む。ナノファイバーは、約1μm未満、好ましくは約0.1μm〜約1μmの平均繊維径と、空気/液体濾過媒体、エネルギー貯蔵分離器、保護服等々の、様々な商業用の最終用途を満足させるのに十分に高い坪量とを有する。
【0018】
商業的な量および坪量のナノファイバー層の製造方法は、参照により本明細書に援用される、国際公開第2003/080905号パンフレット(米国特許出願第10/822,325号明細書)に開示されている。図1は、国際公開第2003/080905号パンフレットに記載されているような、エレクトロブローイング(または「エレクトロ−ブローン紡糸」)を用いる本発明の方法を実施するために有用なエレクトロブローイング装置の概略図である。この先行技術のエレクトロブローイング法は、ナノファイバーを形成するためにポリマー溶液がノズルを出る時に圧縮ガスがブローイングガス流れ106でポリマー溶液の方へ導かれながら、溶剤中のポリマーの溶液を混合チャンバー100から、紡糸ビーム102を通って、高電圧がかけられている紡糸ノズル104へ供給する工程と、減圧チャンバー114およびブロアー112によって生成された減圧下に接地されたコレクター110上でナノファイバーを集めてウェブにする工程とを含む。
【0019】
移動収集装置は好ましくは、紡糸ビーム102とコレクター110との間の静電場内に配置された移動収集ベルトである。集められた後に、ナノファイバー層は、紡糸ビームの下流側の巻取ロールに導かれ、巻取ロール上へ巻き取られる。任意選択的に、ナノファイバーウェブは、スパンボンド不織布、メルトブローンン不織布、ニードルパンチン不織布、織布、編布、開口フィルム、紙およびそれらの組み合わせなどの、移動収集ベルト110上に配置された様々な多孔性スクリム材料のいずれかの上へ堆積させることができる。
【0020】
典型的には約0.1〜5mL/穴/時の、エレクトロブローイング装置の高い処理量と、紡糸ビーム102の全域に分布する多数の紡糸ノズル(穴)104とのために、乾燥ベースで測定されるときに、すなわち、残存溶剤が蒸発してしまったかまたは除去されてしまった後に、約2g/m2〜約100g/m2、さらには約10g/m2〜約90g/m2、およびさらには約20g/m2〜約70g/m2の坪量を有する単一ナノファイバー層を、移動収集装置のワンパスで単一紡糸ビームからナノファイバーを堆積させることによって製造することができる。しかしながら、また本方法の高い処理量のために、かなりの量の残存紡糸溶剤、特に、繊維ポリマーに対する強い親和性を持ったそれらの溶剤が、そのように形成されたナノファイバーウェブ中に残り得る。
【0021】
1マイクロメートル未満にも、またはさらには約0.8マイクロメートル未満に、またはさらには約0.5マイクロメートル未満に、繊維径を減らすことは、減圧支援収集によるのみでナノファイバーウェブから残存溶剤を減らすかまたは排除するのに単独では不十分であることが発見された。
【0022】
従って、先行技術の装置(図1)の収集ベルト110の下流に配置される、本発明の赤外溶剤ストリッピング法および装置(図2)は、布またはウェブの巻取前に、連続的に溶液紡糸法からの望ましくない残存溶剤の低減または排除を達成する役割を果たす。あるいはまた、本発明の赤外溶剤ストリッピング法および装置は、紡糸されたままのナノファイバーウェブが集められた後に「オフ−ラインで」、または別個のプロセスで用いることができる。
【0023】
本赤外溶剤ストリッピング装置は、溶剤紡糸ナノファイバーウェブとその任意の支持スクリム10とを支え、そしてそのそれぞれが赤外放射線源12を含む、1つ以上の赤外溶剤ストリッピングステーション11を通してそれを導くための任意の連続移動ベルト14を含む。赤外溶剤ストリッピングステーション11は、溶剤紡糸ナノファイバーウェブの平面のいずれかの面かまたは両面に配置することができる。図2は、2つの赤外溶剤ストリッピングステーション11を溶剤紡糸ナノファイバーウェブの平面の反対側に示す。
【0024】
参照により本明細書に援用される、米国特許出願第11/640,625号明細書は、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体の存在下での赤外溶剤ストリッピングステーションの使用方法を記載している。対照的に、本発明は、溶剤ストリッピング工程中に溶剤ストリッピング流体を不織布に衝突させるための流体生成デバイスまたは減圧源を利用しない。
【0025】
理論に制約されることなく、ストリッピング流体の存在は、加熱されるときでさえ、不織ウェブを冷却して溶剤除去をより困難なものにし得ると考えられる。この効果を弱めるために、より多くの赤外エネルギーが加えられなければならないか、より高温の溶剤ストリッピング流体が用いられなければならないかのいずれかである。また、赤外エネルギーが増やされるかまたは溶剤ストリッピング流体の温度が上げられるにつれて、ポリマーを熱分解させるリスクが増大する。
【0026】
意外にも、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体を全く使用しなくても、米国特許出願第11/640,625号明細書に開示されているような、溶剤ストリッピング流体を使用するのと同程度に溶剤の除去に有効であるかまたはそれより良好であることが発見された。従って、本発明は、溶剤ストリッピング流体の提供および加熱のコストをなくす。
【0027】
不織布に衝突する溶剤ストリッピング流体なしに赤外放射線を利用すると、繊維ポリマー中の溶剤濃度を約10,000ppmw未満に、さらには1000ppmw未満に、またはさらには約300ppmw未満に低減することが可能である。赤外(IR)放射線源は、中波長(1.5〜5.6ミクロン)源か短波長(0.72〜1.5ミクロン)源かのいずれかであることができ、溶剤含有ナノファイバーウェブをウェブポリマーの分解温度の真下までの温度に加熱するために強度を変えることができる。好適なウェブ温度は、IR源へのウェブ暴露の滞留時間に依存して、ウェブポリマーの分解なしに、約120℃から約340℃ほどの高さまで変わり得ることが分かった。
【0028】
本発明から利益を受けることができるポリマー/溶剤組み合わせは、ポリマーが溶剤に対して強い親和性を示すもの、特にポリマーと溶剤との間に、水素結合等の化学結合が起こるものである。分離することが困難であるポリマー/溶剤の幾つかの混み合わせは、ポリアミド/ギ酸およびポリビニルアルコール/水である。
【0029】
繊維ポリマーに対する特定の紡糸溶剤の親和性に依存して、多段階で残存溶剤濃度を低減するために、2つ以上の赤外溶剤ストリッピングステーションを溶剤ストリッピング装置へ組み入れることが有利であるかもしれない。加えて、米国特許出願第11/640625号明細書に開示されているような、流体/減圧溶剤ストリッピングステーションも使用することができる。
【0030】
流体/減圧溶剤ストリッピング法および装置(図3)は、先行技術の装置(図1)の収集ベルト110の下流に配置し、そして赤外溶剤ストリッピング装置の前か後かのいずれかに配置することができ、布またはウェブの巻取前に、連続的に溶液紡糸法からの望ましくない残存溶剤の低減または排除を達成する役割をさらに果たすことができる。
【0031】
流体/減圧溶剤ストリッピング装置は、溶剤紡糸ナノファイバーウェブとその任意の支持スクリム10とを支え、そしてそのそれぞれが、移動ベルト14の片側に配置された新鮮溶剤ストリッピング流体加熱装置16と、移動ベルト14の反対側に配置された減圧装置18とを含む、1つ以上の溶剤ストリッピングステーション20を通してそれを導くための任意の連続移動ベルト14を含む。新鮮溶剤ストリッピング流体17、典型的には空気は、移動中の溶液紡糸ウェブに衝突させられ、減圧装置は、溶剤ストリッピングを達成するために溶液紡糸ウェブを通してストリッピング流体を引き寄せるのに役立つ。好ましくは、使用済み溶剤ストリッピング流体コレクター(図示せず)が、リサイクリングまたは廃棄処分のために、使用済みストリッピング流体から過剰の紡糸溶剤を取り除くために減圧装置の下流に配置される。温度、減圧圧力および新鮮溶剤ストリッピング流体それ自体さえも、各溶剤ストリッピングステーション内で個別に制御することができる。
【実施例】
【0032】
下記の実施例は、幾らかの残存溶剤を含有する不織ウェブを形成するためにエレクトロブローされる、99%純度のギ酸溶剤(Kemira Oyj(Helsinki,Finland)から入手可能な)に溶解させたナイロン6,6ポリマー、Zytel(登録商標)FE3218(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から入手可能な)の24重量%の濃度を有するポリマー溶液から製造した。
【0033】
ナイロンの不織シート中の残存ギ酸含有率は、標準湿式化学技法およびイオンクロマトグラフィー分析を用いて測定した。典型的な測定では、既知質量のサンプルを苛性溶液中に入れた。生じた溶液のアリコートを、イオンクロマトグラフィーによって分析し、中和されたギ酸(ギ酸アニオン)に相当するピークの下の面積がサンプル中のギ酸の量に比例した。
【0034】
比較例A
比較例Aは、上記の通り製造し、移動する多孔性スクリーン上で流体/減圧溶剤ストリッピングステーション中へ運んだ。不織ウェブの他の面に減圧をかけながら、120℃の温度の空気の溶剤ストリッピング流体を一面から不織ウェブ上へ衝突させた。減圧は約180mmH2Oと測定された。空気圧と減圧とを組み合わせて溶剤ストリッピングステーション中にほぼ一定の気圧をもたらした。不織ウェブは、4.3秒間溶剤ストリッピングステーション中に留まった。不織ウェブは、本発明の溶剤ストリッピング法にかけなかった。最終溶剤レベルは、比較例Bおよび実施例1を製造する前に測定された1820ppmであった。
【0035】
比較例B
比較例Bは、米国特許出願第11/640,625号明細書の方法に従って、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体ありの赤外溶剤ストリッピングステーションを通してそれがさらに運ばれることを除いては比較例Aと同様に製造した。このストリッピングステーションは、ステンレススチールベルト、巻取ステーション、赤外線ヒーター、赤外線ヒーターの下方でベルトの真下に配置された固定減圧源、および1つが赤外線ヒーターの前に不織ウェブに垂直に衝突し、1つが赤外線ヒーターの後に不織ウェブに垂直に衝突する、2つの熱風源からなった。赤外線ヒーターは、240ボルトで12kWと格付けされる、Radiant Energyヒーター、3相短波ヒーターであり、ウェブを180℃に加熱するのに十分高いレベルに設定した。100℃の温度の熱風にウェブの上方を掃引させた。減圧源は、114.3mmH2Oの減圧で不織ウェブの赤外線ヒーターとは反対側に設置した。ウェブを、約15秒の総滞留時間に相当する、速度1.016メートル毎分で乾燥機に通した。オーブン中のシート温度は平均して153℃であると測定された。最終溶剤レベルは1431ppmであった。
【0036】
実施例1
実施例1は、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体なしの赤外溶剤ストリッピングステーションを通してそれがさらに運ばれることを除いては比較例Aと同様に製造した。ストリッピングステーションは、ステンレススチールベルト、巻取ステーションおよび赤外線ヒーターからなった。赤外線ヒーターは、240ボルトで12kWと格付けされる、Radiant Energyヒーター、3相短波ヒーターであり、ウェブを180℃に加熱するのに十分高いレベルに設定した。衝突流体は、ウェブのいずれの面にも全く利用しなかった。ウェブを、15秒の滞留時間をもたらす、1.016メートル毎分の速度でヒーターの下方に供給した。最終溶剤レベルは696ppmであった。
【0037】
比較例Aは、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体ありの流体/減圧溶剤ストリッピングステーションの効果を示し、幾つかの商業用途向けに好適なレベルまで残存溶剤を除去した。
【0038】
比較例Bは、不織ウェブへの溶剤ストリッピング流体衝突ありの赤外ベースの溶剤ストリッピングの効果を示し、追加の残存溶剤を除去した。
【0039】
実施例1は、不織ウェブへの溶剤ストリッピング流体衝突なしの赤外ベースの溶剤ストリッピングの効果を示し、不織ウェブ中の極めて低い残存溶剤レベルまで追加の残存溶剤を除去した。
【0040】
比較例C
比較例Cは、上記の実施例セクションに示された通り製造し、移動する多孔性スクリーン上で流体/減圧溶剤ストリッピングステーション中へ運んだ。不織ウェブの他の面に減圧をかけながら、65℃の温度の空気の溶剤ストリッピング流体を一面から不織ウェブ上へ衝突させた。減圧は約100mmH2Oと測定された。空気圧と減圧とを組み合わせて溶剤ストリッピングステーション中にほぼ一定の気圧をもたらした。不織ウェブは、20秒間溶剤ストリッピングステーション中に留まった。不織ウェブは、本発明の溶剤ストリッピング法にかけなかった。最終溶剤レベルは7501ppmであった。
【0041】
比較例D、EおよびF
比較例D、EおよびFは、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体ありの赤外溶剤ストリッピングゾーンを通してそれらがさらに運ばれることを除いては比較例Cと同様に製造した。この追加の工程は、浮上乾燥機を通してウェブを運ぶことにあった。この乾燥機は、両方がウェブの上方および下方にある、それぞれ2バンクの赤外線ヒーターからなる3つのセクションからなる。使用した赤外線ヒーターは、GlenRoから入手可能な31.4kW、480ボルトと格付けされるRadplane Series 80 Heaters、1相、中波長であった。それぞれ比較例D、EおよびFについて、49℃、107℃および205℃の温度の熱風に、ウェブ移動と向流にウェブの上方および下方を掃引させた。約12秒の総滞留時間に相当する、12.2メートル毎分の速度でウェブを乾燥機に通した。最終溶剤レベルは、それぞれ、2624ppm、596ppmおよび235ppmであった。
【0042】
実施例2
実施例2は、不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体なしの赤外溶剤ストリッピングステーションを通してそれがさらに運ばれることを除いては比較例Cと同様に製造した。この追加の工程は、浮上乾燥機を通してウェブを運ぶことにあった。この乾燥機は、両方がウェブの上方および下方にある、それぞれ2バンクの赤外線ヒーターからなる3つのセクションからなる。使用した赤外線ヒーターは、GlenRoから入手可能な31.4kW、480ボルトと格付けされる、Radplane Series 80 Heaters、1相、中波長であった。比較例D、EおよびFとは違って、熱風にウェブ移動と向流にウェブの上方および下方を掃引させなかった。約12秒の総滞留時間に相当する、12.2メートル毎分の速度でウェブを乾燥機に通した。最終溶剤レベルは337ppmであった。
【0043】
比較例D、EおよびFは、不織ウェブへの溶剤ストリッピング流体衝突ありの赤外ベースの溶剤ストリッピングの効果を示し、追加の残存溶剤を除去した。除去される残存溶剤の量は、溶剤ストリッピング流体の温度に強く依存する。
【0044】
実施例2は、不織ウェブへの溶剤ストリッピング流体衝突なしの赤外ベースの溶剤ストリッピングの効果を示し、不織ウェブ中の極めて低い残存溶剤レベルまで追加の残存溶剤を除去した。材料中の残存溶剤レベルは比較例Fとほとんど同じほどに低かったが、ポリマー分解がある可能性は、熱いストリッピング流体を使用しないときに著しく低下した。比較例D、EおよびFならびに実施例2からのデータを表1にまとめる。
【0045】
表1

【0046】
これらの実施例は、本発明の赤外ベースの溶剤ストリッピングステーションが紡糸溶剤を実質的に含まない溶液紡糸不織ウェブを製造できることを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1マイクロメートル未満の平均繊維径を有する溶剤含有ポリマー繊維を含む不織ウェブを提供する工程と、
少なくとも1つの赤外溶剤ストリッピングステーションを通して不織ウェブを運ぶ工程であって、繊維の溶剤濃度を約10,000ppmw未満に低減するために不織ウェブに衝突する溶剤ストリッピング流体の不存在下に赤外放射線が不織ウェブを照射する工程と
を含む溶液紡糸不織ウェブからの化学的に結合した紡糸溶剤のストリッピング法。
【請求項2】
前記平均繊維径が0.8マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均繊維径が0.5マイクロメートル未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶剤濃度が1,000ppmw未満に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶剤濃度が300ppmw未満に低減される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記不織ウェブがスクリム上で前記溶剤ストリッピングステーションを通して運ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの赤外溶剤ストリッピングステーションの前または後に少なくとも1つの流体/減圧溶剤ストリッピングステーションを通して不織ウェブを運ぶ工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−533248(P2010−533248A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516256(P2010−516256)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069717
【国際公開番号】WO2009/009707
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】