赤外線センサシステム
【課題】電磁波の影響による誤検知を抑制することができる赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線センサシステムにおいて、赤外線センサ素子101は、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。また、検出手段102は、電波を検出して検出信号を出力する。そして、信号出力手段103は、赤外線センサ素子101が受光信号を出力したときに、検出手段102が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。
【解決手段】赤外線センサシステムにおいて、赤外線センサ素子101は、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。また、検出手段102は、電波を検出して検出信号を出力する。そして、信号出力手段103は、赤外線センサ素子101が受光信号を出力したときに、検出手段102が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検出する装置等に用いられる赤外線センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線センサを組み込んだ装置が多数生産されている。そのような装置の例として、省エネルギー化を目的とし自動でスイッチのON、OFF制御を行う家電製品、防犯用の人体検出装置、高齢者の生活リズム計測装置などがある。
【0003】
これらの装置、特に防犯用途や高齢者向け福祉用途に使用される装置は、赤外線センサの情報をユーザに即時に伝える必要がある。さらに、設置場所の制限を少なくするため、例えば図9に示すような無線設備を内蔵している装置、又は図10に示すような無線設備を備える機器と接続する装置の適用が求められている。
【0004】
しかし、赤外線センサは高周波のノイズを受けやすいという問題点がある。そのため、赤外線センサを利用した際に、検出する対象物(例えば人間)が存在していなくても、無線機器の発する電波の影響により、あたかも対象物を検知したかのように誤った反応してしまうことがある。
【0005】
そのため、例えば特許文献1に記載された赤外線センサでは、ノイズを低減するために、金属ケースで赤外線素子を覆うことでシールド効果を持たせ、さらに赤外線透過窓部材に導電体の格子状部材が用いられている。
【0006】
また、例えば特許文献2に記載された焦電型赤外線センサでは、回路基板の焦電素子等が実装されている側と反対側の面が導体箔で覆われている。そして、電磁シールド性を得るために、導体箔を回路基板のグランド配線、グランド端子、キャップと電気的に接続する。
【0007】
また、例えば特許文献3に記載された赤外線センサでは、ノイズの除去のために、赤外線センサモジュールの内部にコンデンサが設置されている。
【0008】
また、特許文献4には、圧電特性とパイロ電気(焦電)特性とを有する測定素子において、ノイズ因子量である温度だけが作用する補償素子を有し、温度によるノイズを補正する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平01−111299号公報
【特許文献2】特開2000−304605号公報
【特許文献3】特開平11−108757号公報
【特許文献4】特表2008−516202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9及び図10に示したような装置において赤外線センサ(図9及び図10の赤外線センサモジュール)は、図示しない電源、グランドに接続され、出力端子を介して信号線と接続される。そのため、特許文献1〜特許文献3に記載された赤外線センサを用いて赤外線センサモジュール内部でのノイズの影響を緩和できたとしても、これら電源、グランド、信号線等に電波によるノイズがのってしまうと、その影響を受けることになる。つまり、物体(例えば、人間)が存在していなくても、電波の影響により物体が存在するかのような誤った検知情報を出力してしまう。
【0011】
また、特許文献4に示されているセンサ素子は、圧力等の機械量を測定するものであり、赤外線を受光することにより物体の有無を検出する構成については記載されていない。また、温度によるノイズを補償するものであるが、電波の影響をキャンセルすることについては記載されていない。
【0012】
そこで、本発明は、電波の影響による誤検知を防止することができる赤外線センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の赤外線センサシステムは、赤外線を受光すると、受光信号を出力する赤外線センサ素子と、電波を検出して検出信号を出力する検出手段と、前記赤外線センサ素子が受光信号を出力したときに、前記検出手段が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する信号出力手段とを備えた。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電波の影響による誤検知を防止することができる赤外線センサシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1の赤外線センサシステムにおける赤外線センサモジュール示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1の赤外線センサシステムを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態1の赤外線センサシステムの回路構成を示す回路図である。
【図4】信号処理部内の信号波形の一例を示す波形図である。
【図5】本発明の実施形態2の赤外線センサシステムの回路構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態3の赤外線センサシステムを示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態3における信号調節部の一例を示す回路図である。
【図8】本発明の赤外線センサシステムの最小構成を示すブロック図である。
【図9】一般的な赤外線センサとその周辺回路を示すブロック図である。
【図10】一般的な赤外線センサとその周辺回路の別の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1の赤外線センサシステムにおける赤外線センサモジュールを示す斜視図である。なお、図1の紙面上側を赤外線センサモジュールの上側とし、紙面下側を赤外線センサモジュールの下側として説明する。
【0017】
図1に示すように、実施形態1の赤外線センサシステムにおける赤外線センサモジュールは、略円盤状のベース部15とキャップ11(部材)によって略円筒形状の筐体が形成されている。キャップ11は、外郭11a、窓材11b及び内壁11cを含む。外郭11a及び内壁11cには、赤外線を遮蔽し電波を透過する素材が用いられる。また、キャップ11の上部に形成された窓材11bには赤外線を透過するフィルタ等が用いられる。そして、ベース部15の下部から、信号線等に接続されるインタフェースである端子16が複数本突出している。
【0018】
ベース部15の上部には、回路が形成された基板14が設置され、基板14の上部に基板13が設置される。基板13において、窓材11bと対向する位置に赤外線が入射可能な領域17が存在する。領域17内に、赤外線を受光すると受光信号を出力する赤外線センサ素子21が取り付けられる。
【0019】
領域17の四方(図1における前後及び左右方向)は、内壁11cに囲われている。また、内壁11cの上部の縁は窓材11bの縁と接しており、下部の縁は基板13と接している。また、基板13において、赤外線が入射しない領域18に、赤外線又は電波を検知すると信号を出力する補助赤外線センサ素子24(検出手段)が設置されている。領域18は、赤外線を遮蔽する外郭11aと内壁11cとの間の空間にあるので、外部からの赤外線が入光しない。補助赤外線センサ素子24は、赤外線が入光することなく電波等のノイズによってのみ反応するように設置されるので、電波等のノイズの検出手段として機能する。
【0020】
なお、本実施形態の赤外線センサにおける赤外線センサモジュールの構成は、上記に示したものに限られず、少なくとも赤外線センサ素子21は赤外線を受光できる位置にあり、かつ補助赤外線センサ素子24は赤外線が到達せず、電波を検出できる位置にあればよい。
【0021】
また、赤外線センサ素子21及び補助赤外線センサ素子24には、例えば焦電素子が用いられる。焦電素子の構造として、デュアルタイプ、クアッドタイプ等の構造が知られているが、どの構造の焦電素子を用いても構わない。
【0022】
図2は、本発明の実施形態1の赤外線センサシステムを示すブロック図である。
赤外線センサ素子21は、図1に示す領域17に取り付けられ、補助赤外線センサ素子24は、図1に示す領域18に取り付けられている。
【0023】
第1の赤外線センサ素子21の一方の端子は、FET23のゲートに接続され、他方の端子は、信号線を介して接地される。また、赤外線センサ素子21と並列に抵抗22が接続される。同様に、補助赤外線センサ素子24の一方の端子は、FET26のゲートに接続され、他方の端子は、信号線を介して接地される。また、補助赤外線センサ素子24と並列に抵抗25が接続される。
【0024】
FET23とFET26のそれぞれの入力端子は電源(Vcc)に接続され、それぞれの出力端子は、信号処理部27(信号出力手段)の入力端子に接続されている。そして、赤外線センサ素子21及び補助赤外線センサ素子24から出力された信号が、信号処理部27に入力される。また、本実施形態の赤外線センサシステムは、図示しない増幅回路を含む。増幅回路は、赤外線センサ素子21及び補助赤外線センサ素子24から出力された信号を増幅する。
【0025】
信号処理部27は、FET23を介して赤外線センサ素子21から信号を受信したときに、FET26を介して補助赤外線センサ素子24から検出信号を受信しないことを条件に、出力端子28へ赤外線検出信号を出力する。
【0026】
図3は、本発明の実施形態1の赤外線センサシステムの回路構成を示す回路図である。なお、図3において、信号処理部27の構成以外は、図2と同じであるため、説明は省略する。
【0027】
図3に示すように、信号処理部27において、FET23の出力端子は、信号線を介して論理積(AND)回路274に直接接続される。また、信号処理部27において、FET26の出力端子は、抵抗271に接続される。抵抗271は、信号線を介して反転(NOT)回路273の入力端子に接続され、NOT回路273の出力端子はAND回路274の入力端子に接続されている。また、抵抗271とNOT回路273との間に他端が接地されたコンデンサ272が設けられている。
【0028】
次に、動作について説明する。電波によるノイズがない場合、補助赤外線センサ素子24の出力信号はOFF状態(ローレベルであるとする)である。出力信号は、NOT回路273で反転され、AND回路274の一方の入力端子に正論理の信号が入力される。その状態で赤外線センサ素子21の出力信号がON状態(ハイレベルであるとする)になると、AND回路274の他方の入力端子にも正論理の信号が入力され、AND回路274から出力端子28へ赤外線検出信号が出力される。
【0029】
電波によるノイズがある場合、補助赤外線センサ素子24の出力信号はON状態になる。出力信号は、NOT回路273で反転され、AND回路274の一方の入力端子に負論理の信号が入力される。その状態で赤外線センサ素子21の出力信号がON状態になって、AND回路274の他方の入力端子に正論理の信号が入力されても、補助赤外線センサ素子24側の入力端子には負論理の信号が入力された状態であるから、AND回路274から出力端子28へ赤外線検出信号は出力されない。
【0030】
図4は、図3の信号処理部27内の信号波形の一例を示す波形図である。(a)は、図3のA点における信号波形を示し、(b)は、図3のB点における信号波形を示し、(c)は、図3のC点における信号波形を示す。
【0031】
図4(a)に示すように、電波によるノイズが入力したときに、補助赤外線センサ素子24の検出信号の波形が、断続的になる可能性がある。しかし、抵抗271、コンデンサ272を介することによって、図4(b)に示すように、B点における信号の波形は、連続的になる。そして、図4(c)に示すように、C点における波形は、NOT回路273を通過しているため、B点の波形が反転された波形になる。
【0032】
このように、コンデンサ272等の作用によって、電波のノイズが断続的な場合でも、連続的な信号に変換することができるので、ノイズに起因する赤外線検出信号の出力を確実に制限できる。
【0033】
なお、本実施形態の赤外線センサシステムの回路構成は、図2及び図3に示したものに限定されず、赤外線センサ素子21から信号を受信したときに、補助赤外線センサ素子24から検出信号を受信しないことを条件に赤外線検出信号を出力する回路構成になっていればよい。
【0034】
本実施形態の赤外線センサシステムは、このような回路構成にすることで、赤外線センサ素子21が、赤外線を受光せずに無線機器等の電波を受けて受光信号を出力したとしても、補助赤外線センサ素子24の出力によりキャンセルすることができる。これにより、電波の影響による誤検知を防止できる。
【0035】
本実施形態の赤外線センサシステムは、さまざまな物体(例えば人体)の検出を行う装置に用いることができる。そのような装置として、例えば、省エネルギー化を目的とし自動でスイッチのON、OFF制御を行う家電製品、防犯用の人体検出装置、高齢者の生活リズム計測装置などがある。
【0036】
本実施形態の赤外線センサシステムは、電波の影響による誤検知を防止でき、物体の検出精度を向上することができる。特に、赤外線センサ素子21、補助赤外線センサ素子24、及びその周辺回路は、電源及びグランドが共通であり、しかも実装位置が近い。そのため、赤外線センサ素子21と、補助赤外線センサ素子24とがほぼ同じように電波の影響を受けるので、より正確に誤検知を防止することができる。
【0037】
また、赤外線センサモジュール(本発明における赤外線センサシステムに相当)内にて電波対策が完結しているので、装置に組み込んだ際に赤外線センサモジュール用に必要な周辺回路を設ける必要がなく、省スペースになる。
【0038】
また、本実施形態の赤外線センサシステムを用いない場合、電波によるノイズ対策として基板配線の引き回し、電源及びグランドの取り方、ノイズ対策部品の検討などに多大な検討時間を要し、多岐に渡るノウハウが必要であった。しかし、本発明の赤外線センサシステムを用いることによってこれらのコストが削減でき、ノウハウが不要となる。
【0039】
また、本実施形態の赤外線センサシステムは、補助赤外線センサ素子24によって電波のノイズの影響を監視できる。そのため、電波をシールドするための金属ケースなどが削減できるので、低コストとすることができる。
【0040】
実施形態2.
次に、赤外線を受光する赤外線センサ素子と電波の検出手段である補助赤外線センサ素子とを異なるモジュールに搭載する本発明の他の実施形態を説明する。
【0041】
図5は、本発明の実施形態2における赤外線センサシステムの回路構成を示す図である。赤外線センサモジュール51は、赤外線センサ素子(図示せず)を有し、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。また、赤外線センサモジュール52は、電波の検出手段として補助赤外線センサ素子(図示せず)を有し、外部からの赤外線が到達しない位置に設置され、電波を検出して検出信号を出力する。赤外線センサモジュール52は、電波による影響が赤外線センサモジュール51と同等になるように、赤外線センサモジュール51の近傍に設けられることが望ましい。
【0042】
また、図5に示すように、赤外線センサモジュール51及び赤外線センサモジュール52は、共通の電源部54とグランド55に接続される。電源及びグランドは、必ずしも共通でなくてもよいが、ノイズの影響がなるべく同等になるように、共通にすることが望ましい。また、図5に示す電源部54は、装置内に設置されるものであるが、必ずしも装置内に用意しなくても、例えば外部から供給されるACアダプタなどの電源を用いてもよい。
【0043】
そして、赤外線センサモジュール51及び赤外線センサモジュール52は、制御部53の入力ポートに接続される。そして、制御部53は、赤外線センサモジュール51が受光信号を出力したときに、赤外線センサモジュール52が受信信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。よって、赤外線センサモジュール51が、赤外線を受光せずに無線機器等の電波を受けて受光信号を出力したとしても、赤外線センサモジュール52の出力によりキャンセルすることができる。従って、電波の影響による誤検知を防止できる。
【0044】
なお、赤外線センサモジュール51及び赤外線センサモジュール52の形状は、どのようなものでもよい。また、赤外線センサモジュール51の赤外線センサ素子及び赤外線センサモジュール52の補助赤外線センサ素子には、例えば焦電素子を用いる。焦電素子の構造として、デュアルタイプ、クアッドタイプ等の構造が知られているが、どの構造の焦電素子を用いてもよい。
【0045】
本実施形態の赤外線センサシステムは、実施形態1と同様に、電波の影響による誤検知を防止でき、物体の検出精度を向上することができる。また、赤外線検出用の赤外線センサ素子と電波検出用である補助赤外線センサ素子を一つの赤外線センサモジュールに設置しなくてもよいので、量産されている汎用の赤外線センサモジュールを用いることができる。これにより、赤外線センサシステムのコストを低減することができる。
【0046】
実施形態3.
次に、電波の検出手段としてアンテナを用いた本発明のさらに他の実施形態を説明する。
【0047】
図6は、実施形態3の赤外線センサシステムの回路構成を示す図である。赤外線センサモジュール61は、赤外線センサ素子(図示せず)を有し、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。赤外線センサモジュール61は、制御部64の入力ポート、電源部65及びグランド66に接続されている。また、無線機器の発する電波を検知できるアンテナ62が設置されている。アンテナ62は、信号調整部63(本発明の信号回路に相当)を介して制御部64の入力ポートに接続されている。
【0048】
アンテナ62は、電波による影響が赤外線センサモジュール61と同等になるように、赤外線センサモジュール61の近傍に設けられることが望ましい。なお、赤外線センサモジュール61に用いられる赤外線センサ素子には、例えば焦電素子を用いる。焦電素子の構造として、デュアルタイプ、クアッドタイプ等の構造が知られているが、どの構造の焦電素子を用いても構わない。
【0049】
制御部64は、赤外線センサモジュール61が受光信号を出力したときに、アンテナ62が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。よって、赤外線センサモジュール51が、赤外線を受光せずに無線機器等の電波を受けて受光信号を出力したとしても、アンテナ62の出力によりキャンセルすることができる。これにより、電波の影響による誤検知を防止できる。
【0050】
図7は、実施形態3における信号調節部の一例を示す回路図である。信号調整部63は、増幅器72、リミッタ73、コンパレータ74を有している。アンテナ62が電波を検出した場合、アンテナ62から送られる信号は増幅器72にて増幅され、増幅された信号は、リミッタ73を通り、コンパレータ74に入力する。コンパレータ74は、アンテナ62が受信した信号のレベル(例えば、電圧値又は電流値)が所定の閾値を超えているかどうかを判定する。
【0051】
コンパレータ74を利用することで、アンテナ62が受信した電波が、赤外線センサシステムに影響がない低レベルの電波だった場合には、制御部64へ信号を送らない。これにより、赤外線センサモジュール61の受光信号を誤ってキャンセルしてしまうことを防止することができる。近年、家庭内でも様々な無線機器が増加し、低レベルの電波による無線通信が頻繁に行われているので、このような機能が特に必要とされる。
【0052】
なお、図6に示す電源部65は、装置内に設置されているが、必ずしも装置内に用意しなくても、例えば外部から供給されるACアダプタなどの電源を用いてもよい。
【0053】
また、図7において、制御部64がA−D変換を行える場合(A−D変換ポートを備えている場合)は、コンパレータ74を使用せずA−D変換の値を用いて、制御部64においてアンテナ62が受信した電波を無効にするかどうかの判定を行うこともできる。
【0054】
本実施形態の赤外線センサシステムは、実施形態1と同様に、電波の影響による誤検知を防止でき、物体の検出精度を向上することができる。また、コンパレータ74等を用いてアンテナ62が出力する信号レベルが赤外線センサシステムに影響がないレベルの電波かどうか判定することで、赤外線センサモジュール61の受光信号を誤ってキャンセルしてしまうことを防止することができる。
【0055】
また、赤外線センサモジュール61に電波を監視する検出手段を設置しなくてもよいので、量産されている汎用の赤外線センサモジュールを用いることができる。これにより、赤外線センサシステムのコストを低減することができる。
【0056】
次に、本発明による赤外線センサシステムの最小構成について説明する。図8は、本発明の赤外線センサシステムの最小構成を示す図である。図8に示すように、赤外線センサシステム100は、最小の構成要素として、赤外線センサ素子101と、検出手段102と、信号出力手段103とを備える。
【0057】
図8に示す最小構成の赤外線センサシステムでは、赤外線センサ素子101は、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。また、検出手段102は、電波を検出して検出信号を出力する。そして、信号出力手段103は、検出手段102と異なる測定系に配置され、赤外線センサ素子101が受光信号を出力したときに、検出手段102が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。
【0058】
従って、最小構成の赤外線センサシステムによれば、電波の影響による誤検知を防止することができる。
【0059】
また、上記の各実施形態には、以下の(1)〜(6)に示すような赤外線センサシステムも開示されている。
【0060】
(1)赤外線センサシステム(例えば、赤外線センサシステム100)は、赤外線を受光すると、受光信号を出力する赤外線センサ素子(例えば、赤外線センサ素子21、赤外線センサモジュール51内の図示しない赤外線センサ素子、又は赤外線センサモジュール61内の図示しない赤外線センサ素子)と、電波を検出して検出信号を出力する検出手段(例えば、補助赤外線センサ素子24、赤外線センサモジュール52内の図示しない補助赤外線センサ素子、又はアンテナ62)と、赤外線センサ素子が受光信号を出力したときに、検出手段が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する信号出力手段(例えば、信号処理部27、制御部53又は制御部64)とを備えている。
【0061】
(2)赤外線センサシステムにおいて、検出手段は、赤外線が到達しない位置に設置された補助赤外線センサ素子(例えば、補助赤外線センサ素子24、又は赤外線センサモジュール52内の図示しない補助赤外線センサ素子)であるように構成されていてもよい。
【0062】
(3)赤外線センサシステムにおいて、赤外線センサ素子及び補助赤外線センサ素子は、焦電素子であるように構成されていてもよい。
【0063】
(4)赤外線センサシステムにおいて、補助赤外線センサ素子に向かう赤外線を遮蔽する部材(例えば、キャップ11)を備えるように構成されていてもよい。
【0064】
(5)赤外線センサシステムにおいて、赤外線センサ素子と補助赤外線センサ素子とは基板(例えば、基板13)に設置され、部材は、基板を収容する筐体の一部であるように構成されていてもよい。
【0065】
(6)赤外線センサシステムにおいて、検出手段は、アンテナ(例えば、アンテナ62)と、当該アンテナが出力する信号レベルが所定値を超えているときに検出信号を出力する信号回路(例えば、信号調整部63)とを含むように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、物体を検出する装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
11 キャップ
13 基板
21 赤外線センサ素子
24 補助赤外線センサ素子
62 アンテナ
63 信号調整部
100 赤外線センサシステム
101 赤外線センサ素子
102 検出手段
103 信号出力手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検出する装置等に用いられる赤外線センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線センサを組み込んだ装置が多数生産されている。そのような装置の例として、省エネルギー化を目的とし自動でスイッチのON、OFF制御を行う家電製品、防犯用の人体検出装置、高齢者の生活リズム計測装置などがある。
【0003】
これらの装置、特に防犯用途や高齢者向け福祉用途に使用される装置は、赤外線センサの情報をユーザに即時に伝える必要がある。さらに、設置場所の制限を少なくするため、例えば図9に示すような無線設備を内蔵している装置、又は図10に示すような無線設備を備える機器と接続する装置の適用が求められている。
【0004】
しかし、赤外線センサは高周波のノイズを受けやすいという問題点がある。そのため、赤外線センサを利用した際に、検出する対象物(例えば人間)が存在していなくても、無線機器の発する電波の影響により、あたかも対象物を検知したかのように誤った反応してしまうことがある。
【0005】
そのため、例えば特許文献1に記載された赤外線センサでは、ノイズを低減するために、金属ケースで赤外線素子を覆うことでシールド効果を持たせ、さらに赤外線透過窓部材に導電体の格子状部材が用いられている。
【0006】
また、例えば特許文献2に記載された焦電型赤外線センサでは、回路基板の焦電素子等が実装されている側と反対側の面が導体箔で覆われている。そして、電磁シールド性を得るために、導体箔を回路基板のグランド配線、グランド端子、キャップと電気的に接続する。
【0007】
また、例えば特許文献3に記載された赤外線センサでは、ノイズの除去のために、赤外線センサモジュールの内部にコンデンサが設置されている。
【0008】
また、特許文献4には、圧電特性とパイロ電気(焦電)特性とを有する測定素子において、ノイズ因子量である温度だけが作用する補償素子を有し、温度によるノイズを補正する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平01−111299号公報
【特許文献2】特開2000−304605号公報
【特許文献3】特開平11−108757号公報
【特許文献4】特表2008−516202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9及び図10に示したような装置において赤外線センサ(図9及び図10の赤外線センサモジュール)は、図示しない電源、グランドに接続され、出力端子を介して信号線と接続される。そのため、特許文献1〜特許文献3に記載された赤外線センサを用いて赤外線センサモジュール内部でのノイズの影響を緩和できたとしても、これら電源、グランド、信号線等に電波によるノイズがのってしまうと、その影響を受けることになる。つまり、物体(例えば、人間)が存在していなくても、電波の影響により物体が存在するかのような誤った検知情報を出力してしまう。
【0011】
また、特許文献4に示されているセンサ素子は、圧力等の機械量を測定するものであり、赤外線を受光することにより物体の有無を検出する構成については記載されていない。また、温度によるノイズを補償するものであるが、電波の影響をキャンセルすることについては記載されていない。
【0012】
そこで、本発明は、電波の影響による誤検知を防止することができる赤外線センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の赤外線センサシステムは、赤外線を受光すると、受光信号を出力する赤外線センサ素子と、電波を検出して検出信号を出力する検出手段と、前記赤外線センサ素子が受光信号を出力したときに、前記検出手段が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する信号出力手段とを備えた。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電波の影響による誤検知を防止することができる赤外線センサシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1の赤外線センサシステムにおける赤外線センサモジュール示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1の赤外線センサシステムを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態1の赤外線センサシステムの回路構成を示す回路図である。
【図4】信号処理部内の信号波形の一例を示す波形図である。
【図5】本発明の実施形態2の赤外線センサシステムの回路構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態3の赤外線センサシステムを示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態3における信号調節部の一例を示す回路図である。
【図8】本発明の赤外線センサシステムの最小構成を示すブロック図である。
【図9】一般的な赤外線センサとその周辺回路を示すブロック図である。
【図10】一般的な赤外線センサとその周辺回路の別の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1の赤外線センサシステムにおける赤外線センサモジュールを示す斜視図である。なお、図1の紙面上側を赤外線センサモジュールの上側とし、紙面下側を赤外線センサモジュールの下側として説明する。
【0017】
図1に示すように、実施形態1の赤外線センサシステムにおける赤外線センサモジュールは、略円盤状のベース部15とキャップ11(部材)によって略円筒形状の筐体が形成されている。キャップ11は、外郭11a、窓材11b及び内壁11cを含む。外郭11a及び内壁11cには、赤外線を遮蔽し電波を透過する素材が用いられる。また、キャップ11の上部に形成された窓材11bには赤外線を透過するフィルタ等が用いられる。そして、ベース部15の下部から、信号線等に接続されるインタフェースである端子16が複数本突出している。
【0018】
ベース部15の上部には、回路が形成された基板14が設置され、基板14の上部に基板13が設置される。基板13において、窓材11bと対向する位置に赤外線が入射可能な領域17が存在する。領域17内に、赤外線を受光すると受光信号を出力する赤外線センサ素子21が取り付けられる。
【0019】
領域17の四方(図1における前後及び左右方向)は、内壁11cに囲われている。また、内壁11cの上部の縁は窓材11bの縁と接しており、下部の縁は基板13と接している。また、基板13において、赤外線が入射しない領域18に、赤外線又は電波を検知すると信号を出力する補助赤外線センサ素子24(検出手段)が設置されている。領域18は、赤外線を遮蔽する外郭11aと内壁11cとの間の空間にあるので、外部からの赤外線が入光しない。補助赤外線センサ素子24は、赤外線が入光することなく電波等のノイズによってのみ反応するように設置されるので、電波等のノイズの検出手段として機能する。
【0020】
なお、本実施形態の赤外線センサにおける赤外線センサモジュールの構成は、上記に示したものに限られず、少なくとも赤外線センサ素子21は赤外線を受光できる位置にあり、かつ補助赤外線センサ素子24は赤外線が到達せず、電波を検出できる位置にあればよい。
【0021】
また、赤外線センサ素子21及び補助赤外線センサ素子24には、例えば焦電素子が用いられる。焦電素子の構造として、デュアルタイプ、クアッドタイプ等の構造が知られているが、どの構造の焦電素子を用いても構わない。
【0022】
図2は、本発明の実施形態1の赤外線センサシステムを示すブロック図である。
赤外線センサ素子21は、図1に示す領域17に取り付けられ、補助赤外線センサ素子24は、図1に示す領域18に取り付けられている。
【0023】
第1の赤外線センサ素子21の一方の端子は、FET23のゲートに接続され、他方の端子は、信号線を介して接地される。また、赤外線センサ素子21と並列に抵抗22が接続される。同様に、補助赤外線センサ素子24の一方の端子は、FET26のゲートに接続され、他方の端子は、信号線を介して接地される。また、補助赤外線センサ素子24と並列に抵抗25が接続される。
【0024】
FET23とFET26のそれぞれの入力端子は電源(Vcc)に接続され、それぞれの出力端子は、信号処理部27(信号出力手段)の入力端子に接続されている。そして、赤外線センサ素子21及び補助赤外線センサ素子24から出力された信号が、信号処理部27に入力される。また、本実施形態の赤外線センサシステムは、図示しない増幅回路を含む。増幅回路は、赤外線センサ素子21及び補助赤外線センサ素子24から出力された信号を増幅する。
【0025】
信号処理部27は、FET23を介して赤外線センサ素子21から信号を受信したときに、FET26を介して補助赤外線センサ素子24から検出信号を受信しないことを条件に、出力端子28へ赤外線検出信号を出力する。
【0026】
図3は、本発明の実施形態1の赤外線センサシステムの回路構成を示す回路図である。なお、図3において、信号処理部27の構成以外は、図2と同じであるため、説明は省略する。
【0027】
図3に示すように、信号処理部27において、FET23の出力端子は、信号線を介して論理積(AND)回路274に直接接続される。また、信号処理部27において、FET26の出力端子は、抵抗271に接続される。抵抗271は、信号線を介して反転(NOT)回路273の入力端子に接続され、NOT回路273の出力端子はAND回路274の入力端子に接続されている。また、抵抗271とNOT回路273との間に他端が接地されたコンデンサ272が設けられている。
【0028】
次に、動作について説明する。電波によるノイズがない場合、補助赤外線センサ素子24の出力信号はOFF状態(ローレベルであるとする)である。出力信号は、NOT回路273で反転され、AND回路274の一方の入力端子に正論理の信号が入力される。その状態で赤外線センサ素子21の出力信号がON状態(ハイレベルであるとする)になると、AND回路274の他方の入力端子にも正論理の信号が入力され、AND回路274から出力端子28へ赤外線検出信号が出力される。
【0029】
電波によるノイズがある場合、補助赤外線センサ素子24の出力信号はON状態になる。出力信号は、NOT回路273で反転され、AND回路274の一方の入力端子に負論理の信号が入力される。その状態で赤外線センサ素子21の出力信号がON状態になって、AND回路274の他方の入力端子に正論理の信号が入力されても、補助赤外線センサ素子24側の入力端子には負論理の信号が入力された状態であるから、AND回路274から出力端子28へ赤外線検出信号は出力されない。
【0030】
図4は、図3の信号処理部27内の信号波形の一例を示す波形図である。(a)は、図3のA点における信号波形を示し、(b)は、図3のB点における信号波形を示し、(c)は、図3のC点における信号波形を示す。
【0031】
図4(a)に示すように、電波によるノイズが入力したときに、補助赤外線センサ素子24の検出信号の波形が、断続的になる可能性がある。しかし、抵抗271、コンデンサ272を介することによって、図4(b)に示すように、B点における信号の波形は、連続的になる。そして、図4(c)に示すように、C点における波形は、NOT回路273を通過しているため、B点の波形が反転された波形になる。
【0032】
このように、コンデンサ272等の作用によって、電波のノイズが断続的な場合でも、連続的な信号に変換することができるので、ノイズに起因する赤外線検出信号の出力を確実に制限できる。
【0033】
なお、本実施形態の赤外線センサシステムの回路構成は、図2及び図3に示したものに限定されず、赤外線センサ素子21から信号を受信したときに、補助赤外線センサ素子24から検出信号を受信しないことを条件に赤外線検出信号を出力する回路構成になっていればよい。
【0034】
本実施形態の赤外線センサシステムは、このような回路構成にすることで、赤外線センサ素子21が、赤外線を受光せずに無線機器等の電波を受けて受光信号を出力したとしても、補助赤外線センサ素子24の出力によりキャンセルすることができる。これにより、電波の影響による誤検知を防止できる。
【0035】
本実施形態の赤外線センサシステムは、さまざまな物体(例えば人体)の検出を行う装置に用いることができる。そのような装置として、例えば、省エネルギー化を目的とし自動でスイッチのON、OFF制御を行う家電製品、防犯用の人体検出装置、高齢者の生活リズム計測装置などがある。
【0036】
本実施形態の赤外線センサシステムは、電波の影響による誤検知を防止でき、物体の検出精度を向上することができる。特に、赤外線センサ素子21、補助赤外線センサ素子24、及びその周辺回路は、電源及びグランドが共通であり、しかも実装位置が近い。そのため、赤外線センサ素子21と、補助赤外線センサ素子24とがほぼ同じように電波の影響を受けるので、より正確に誤検知を防止することができる。
【0037】
また、赤外線センサモジュール(本発明における赤外線センサシステムに相当)内にて電波対策が完結しているので、装置に組み込んだ際に赤外線センサモジュール用に必要な周辺回路を設ける必要がなく、省スペースになる。
【0038】
また、本実施形態の赤外線センサシステムを用いない場合、電波によるノイズ対策として基板配線の引き回し、電源及びグランドの取り方、ノイズ対策部品の検討などに多大な検討時間を要し、多岐に渡るノウハウが必要であった。しかし、本発明の赤外線センサシステムを用いることによってこれらのコストが削減でき、ノウハウが不要となる。
【0039】
また、本実施形態の赤外線センサシステムは、補助赤外線センサ素子24によって電波のノイズの影響を監視できる。そのため、電波をシールドするための金属ケースなどが削減できるので、低コストとすることができる。
【0040】
実施形態2.
次に、赤外線を受光する赤外線センサ素子と電波の検出手段である補助赤外線センサ素子とを異なるモジュールに搭載する本発明の他の実施形態を説明する。
【0041】
図5は、本発明の実施形態2における赤外線センサシステムの回路構成を示す図である。赤外線センサモジュール51は、赤外線センサ素子(図示せず)を有し、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。また、赤外線センサモジュール52は、電波の検出手段として補助赤外線センサ素子(図示せず)を有し、外部からの赤外線が到達しない位置に設置され、電波を検出して検出信号を出力する。赤外線センサモジュール52は、電波による影響が赤外線センサモジュール51と同等になるように、赤外線センサモジュール51の近傍に設けられることが望ましい。
【0042】
また、図5に示すように、赤外線センサモジュール51及び赤外線センサモジュール52は、共通の電源部54とグランド55に接続される。電源及びグランドは、必ずしも共通でなくてもよいが、ノイズの影響がなるべく同等になるように、共通にすることが望ましい。また、図5に示す電源部54は、装置内に設置されるものであるが、必ずしも装置内に用意しなくても、例えば外部から供給されるACアダプタなどの電源を用いてもよい。
【0043】
そして、赤外線センサモジュール51及び赤外線センサモジュール52は、制御部53の入力ポートに接続される。そして、制御部53は、赤外線センサモジュール51が受光信号を出力したときに、赤外線センサモジュール52が受信信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。よって、赤外線センサモジュール51が、赤外線を受光せずに無線機器等の電波を受けて受光信号を出力したとしても、赤外線センサモジュール52の出力によりキャンセルすることができる。従って、電波の影響による誤検知を防止できる。
【0044】
なお、赤外線センサモジュール51及び赤外線センサモジュール52の形状は、どのようなものでもよい。また、赤外線センサモジュール51の赤外線センサ素子及び赤外線センサモジュール52の補助赤外線センサ素子には、例えば焦電素子を用いる。焦電素子の構造として、デュアルタイプ、クアッドタイプ等の構造が知られているが、どの構造の焦電素子を用いてもよい。
【0045】
本実施形態の赤外線センサシステムは、実施形態1と同様に、電波の影響による誤検知を防止でき、物体の検出精度を向上することができる。また、赤外線検出用の赤外線センサ素子と電波検出用である補助赤外線センサ素子を一つの赤外線センサモジュールに設置しなくてもよいので、量産されている汎用の赤外線センサモジュールを用いることができる。これにより、赤外線センサシステムのコストを低減することができる。
【0046】
実施形態3.
次に、電波の検出手段としてアンテナを用いた本発明のさらに他の実施形態を説明する。
【0047】
図6は、実施形態3の赤外線センサシステムの回路構成を示す図である。赤外線センサモジュール61は、赤外線センサ素子(図示せず)を有し、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。赤外線センサモジュール61は、制御部64の入力ポート、電源部65及びグランド66に接続されている。また、無線機器の発する電波を検知できるアンテナ62が設置されている。アンテナ62は、信号調整部63(本発明の信号回路に相当)を介して制御部64の入力ポートに接続されている。
【0048】
アンテナ62は、電波による影響が赤外線センサモジュール61と同等になるように、赤外線センサモジュール61の近傍に設けられることが望ましい。なお、赤外線センサモジュール61に用いられる赤外線センサ素子には、例えば焦電素子を用いる。焦電素子の構造として、デュアルタイプ、クアッドタイプ等の構造が知られているが、どの構造の焦電素子を用いても構わない。
【0049】
制御部64は、赤外線センサモジュール61が受光信号を出力したときに、アンテナ62が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。よって、赤外線センサモジュール51が、赤外線を受光せずに無線機器等の電波を受けて受光信号を出力したとしても、アンテナ62の出力によりキャンセルすることができる。これにより、電波の影響による誤検知を防止できる。
【0050】
図7は、実施形態3における信号調節部の一例を示す回路図である。信号調整部63は、増幅器72、リミッタ73、コンパレータ74を有している。アンテナ62が電波を検出した場合、アンテナ62から送られる信号は増幅器72にて増幅され、増幅された信号は、リミッタ73を通り、コンパレータ74に入力する。コンパレータ74は、アンテナ62が受信した信号のレベル(例えば、電圧値又は電流値)が所定の閾値を超えているかどうかを判定する。
【0051】
コンパレータ74を利用することで、アンテナ62が受信した電波が、赤外線センサシステムに影響がない低レベルの電波だった場合には、制御部64へ信号を送らない。これにより、赤外線センサモジュール61の受光信号を誤ってキャンセルしてしまうことを防止することができる。近年、家庭内でも様々な無線機器が増加し、低レベルの電波による無線通信が頻繁に行われているので、このような機能が特に必要とされる。
【0052】
なお、図6に示す電源部65は、装置内に設置されているが、必ずしも装置内に用意しなくても、例えば外部から供給されるACアダプタなどの電源を用いてもよい。
【0053】
また、図7において、制御部64がA−D変換を行える場合(A−D変換ポートを備えている場合)は、コンパレータ74を使用せずA−D変換の値を用いて、制御部64においてアンテナ62が受信した電波を無効にするかどうかの判定を行うこともできる。
【0054】
本実施形態の赤外線センサシステムは、実施形態1と同様に、電波の影響による誤検知を防止でき、物体の検出精度を向上することができる。また、コンパレータ74等を用いてアンテナ62が出力する信号レベルが赤外線センサシステムに影響がないレベルの電波かどうか判定することで、赤外線センサモジュール61の受光信号を誤ってキャンセルしてしまうことを防止することができる。
【0055】
また、赤外線センサモジュール61に電波を監視する検出手段を設置しなくてもよいので、量産されている汎用の赤外線センサモジュールを用いることができる。これにより、赤外線センサシステムのコストを低減することができる。
【0056】
次に、本発明による赤外線センサシステムの最小構成について説明する。図8は、本発明の赤外線センサシステムの最小構成を示す図である。図8に示すように、赤外線センサシステム100は、最小の構成要素として、赤外線センサ素子101と、検出手段102と、信号出力手段103とを備える。
【0057】
図8に示す最小構成の赤外線センサシステムでは、赤外線センサ素子101は、赤外線を受光すると、受光信号を出力する。また、検出手段102は、電波を検出して検出信号を出力する。そして、信号出力手段103は、検出手段102と異なる測定系に配置され、赤外線センサ素子101が受光信号を出力したときに、検出手段102が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する。
【0058】
従って、最小構成の赤外線センサシステムによれば、電波の影響による誤検知を防止することができる。
【0059】
また、上記の各実施形態には、以下の(1)〜(6)に示すような赤外線センサシステムも開示されている。
【0060】
(1)赤外線センサシステム(例えば、赤外線センサシステム100)は、赤外線を受光すると、受光信号を出力する赤外線センサ素子(例えば、赤外線センサ素子21、赤外線センサモジュール51内の図示しない赤外線センサ素子、又は赤外線センサモジュール61内の図示しない赤外線センサ素子)と、電波を検出して検出信号を出力する検出手段(例えば、補助赤外線センサ素子24、赤外線センサモジュール52内の図示しない補助赤外線センサ素子、又はアンテナ62)と、赤外線センサ素子が受光信号を出力したときに、検出手段が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する信号出力手段(例えば、信号処理部27、制御部53又は制御部64)とを備えている。
【0061】
(2)赤外線センサシステムにおいて、検出手段は、赤外線が到達しない位置に設置された補助赤外線センサ素子(例えば、補助赤外線センサ素子24、又は赤外線センサモジュール52内の図示しない補助赤外線センサ素子)であるように構成されていてもよい。
【0062】
(3)赤外線センサシステムにおいて、赤外線センサ素子及び補助赤外線センサ素子は、焦電素子であるように構成されていてもよい。
【0063】
(4)赤外線センサシステムにおいて、補助赤外線センサ素子に向かう赤外線を遮蔽する部材(例えば、キャップ11)を備えるように構成されていてもよい。
【0064】
(5)赤外線センサシステムにおいて、赤外線センサ素子と補助赤外線センサ素子とは基板(例えば、基板13)に設置され、部材は、基板を収容する筐体の一部であるように構成されていてもよい。
【0065】
(6)赤外線センサシステムにおいて、検出手段は、アンテナ(例えば、アンテナ62)と、当該アンテナが出力する信号レベルが所定値を超えているときに検出信号を出力する信号回路(例えば、信号調整部63)とを含むように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、物体を検出する装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
11 キャップ
13 基板
21 赤外線センサ素子
24 補助赤外線センサ素子
62 アンテナ
63 信号調整部
100 赤外線センサシステム
101 赤外線センサ素子
102 検出手段
103 信号出力手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を受光すると、受光信号を出力する赤外線センサ素子と、
電波を検出して検出信号を出力する検出手段と、
前記赤外線センサ素子が受光信号を出力したときに、前記検出手段が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する信号出力手段とを備えた
ことを特徴とする赤外線センサシステム。
【請求項2】
検出手段は、赤外線が到達しない位置に設置された補助赤外線センサ素子である
請求項1記載の赤外線センサシステム。
【請求項3】
赤外線センサ素子及び補助赤外線センサ素子は、焦電素子である
請求項2記載の赤外線センサシステム。
【請求項4】
補助赤外線センサ素子に向かう赤外線を遮蔽する部材を備えた
請求項2又は請求項3記載の赤外線センサシステム。
【請求項5】
赤外線センサ素子と補助赤外線センサ素子とは基板に搭載され、
部材は、前記基板を収容する筐体の一部である
請求項4記載の赤外線センサシステム。
【請求項6】
検出手段は、
アンテナと、当該アンテナが出力する信号レベルが所定値を超えているときに検出信号を出力する信号回路とを含む
請求項1記載の赤外線センサシステム。
【請求項1】
赤外線を受光すると、受光信号を出力する赤外線センサ素子と、
電波を検出して検出信号を出力する検出手段と、
前記赤外線センサ素子が受光信号を出力したときに、前記検出手段が検出信号を出力していないことを条件に赤外線検出信号を出力する信号出力手段とを備えた
ことを特徴とする赤外線センサシステム。
【請求項2】
検出手段は、赤外線が到達しない位置に設置された補助赤外線センサ素子である
請求項1記載の赤外線センサシステム。
【請求項3】
赤外線センサ素子及び補助赤外線センサ素子は、焦電素子である
請求項2記載の赤外線センサシステム。
【請求項4】
補助赤外線センサ素子に向かう赤外線を遮蔽する部材を備えた
請求項2又は請求項3記載の赤外線センサシステム。
【請求項5】
赤外線センサ素子と補助赤外線センサ素子とは基板に搭載され、
部材は、前記基板を収容する筐体の一部である
請求項4記載の赤外線センサシステム。
【請求項6】
検出手段は、
アンテナと、当該アンテナが出力する信号レベルが所定値を超えているときに検出信号を出力する信号回路とを含む
請求項1記載の赤外線センサシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−64689(P2013−64689A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204437(P2011−204437)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】
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