説明

赤外線反射性複合黒色系顔料、該赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法、該赤外線反射性複合黒色系顔料を用いた塗料及び樹脂組成物

【課題】本発明は、酸化第二銅を含み、有害な元素を含有しない黒色系顔料であって、優れた赤外線反射性を有すると共に耐酸性及び塗料安定性に優れる赤外線反射性複合黒色系顔料を提供する。
【解決手段】酸化第二銅と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を表面処理剤で被覆し得られる複合黒色系顔料であって、酸化第二銅と第二成分の顔料とのモル比が0.1:0.9〜0.95:0.05であり、被覆層は耐酸性を有し、被覆量が芯粒子に対して0.1〜10重量%であり、耐酸性に優れ、JIS R3106に従い測定した日射反射率が20%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な元素を含有せず、しかも、優れた赤外線反射性を有する熱遮蔽性塗料を得ることができる赤外線反射性複合黒色系顔料に関し、特に酸化第二銅を含む赤外線反射性複合黒色系顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で用いられている道路、建築物、備蓄タンク、自動車、船舶等は、太陽の日射によって内部温度が上昇するため、建築物及び自動車等の外観塗装を白色から淡色にすることで太陽光を反射させ、ある程度熱遮蔽効果を高めることが行われている。
【0003】
しかしながら、殊に、屋外建築物の屋根などは、汚れを目立たなくするために、濃彩色から黒色を呈している場合が多く、外観塗装が濃彩色から黒色を有する建築物及び自動車等の場合には、淡色から白色の外観塗装を有する建築物及び自動車等に比べて太陽光を吸収しやすく、屋内の温度が著しく上昇する傾向にある。物品の輸送、保存に当たって、内部が高温になることは好ましいものではない。
【0004】
そこで、地球温暖化防止のためのエネルギー節約という観点からも、濃彩色から黒色の外観を有する建築物及び自動車等の内部温度の上昇を抑制することが強く望まれている。
【0005】
従来より、濃彩色から黒色の外観塗装を有する建築物及び自動車等の内部温度の上昇を低減するために、熱遮蔽性黒色塗料が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。また、黒色度に優れたストロンチウム鉄酸化物ペロブスカイトが知られている(例えば特許文献4参照)。また、黒色度に優れたマグネシウム、アルミニウム含有酸化鉄が知られている(例えば特許文献5参照)。しかしながら次のような課題を有している。
【0006】
特許文献1には、CoO、Cr及びFeからなるスピネル構造を有する黒色焼成顔料が記載されているが、Crを含有するものであり、また、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満であり、十分な遮熱効果を有するとは言い難いものであった。
【0007】
また、特許文献2には、Feを必須成分とし、Cr、Mn又はNiOを含む焼成顔料からなる黒色顔料が記載されているが、Crを含有するものであるので好ましくない。
【0008】
また、特許文献3には、希土類元素、アルカリ土類金属及び鉄からなる黒色複合酸化物が記載されているが、十分な遮熱効果を有するとは言い難いものであった。
【0009】
また、特許文献4には、黒色度に優れたストロンチウム鉄酸化物ペロブスカイトが記載されているが、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であって、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満であるので、十分な遮熱効果は得られていない。
【0010】
また、特許文献5には、黒色度に優れたマグネシウム、アルミニウム含有スピネルが記載されているが、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であって、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満であるので、十分な遮熱効果は得られていない。
【0011】
また、特許文献6には、CuO−Crを主成分とする顔料は、日射反射率及び近赤外線反射率が低いとの実験データも開示されている。
【0012】
上記課題を解決するため、本出願人は、有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する赤外線反射性黒色顔料を開発し既に特許出願を行っている(特許文献7参照)。この黒色顔料は、FeとCoとAlを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料であって、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmである赤外線反射性黒色顔料であり、有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する。しかしながら、赤外線領域波長1500nmの反射率が十分に高いとは言えない。
【0013】
【特許文献1】特開2000−72990号公報
【特許文献2】特開2001−311049号公報
【特許文献3】特開2004−83616号公報
【特許文献4】特開2000−264639号公報
【特許文献5】特開2003−238164号公報
【特許文献6】特開2002−331611号公報
【特許文献7】特開2007−197570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記黒色顔料以外の黒色顔料としてCuOがある。CuOは黒色度に優れ、かつ熱遮蔽性に優れるものの耐酸性に課題がある。さらにCuOは比重が大きいため塗料としての貯蔵安定性も問題となる。CuOを原料とした黒色又は茶色の顔料も提案されており、化学式CuMgOで表される化合物を含有する近赤外線反射顔料が開示されている(特開2007−204296号公報)。
【0015】
上記の通り有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する黒色顔料としていくつかの黒色顔料が開発されているものの、これら顔料も必ずしも十分とは言えず、さらなる改良が求められている。これは黒色顔料のみならず灰色がかった黒灰色顔料にも当てはまる。
【0016】
本発明の目的は、酸化第二銅を含み、有害な元素を含有しない黒色系顔料であって、優れた赤外線反射性を有すると共に耐酸性及び塗料安定性に優れる赤外線反射性複合黒色系顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0018】
即ち、本発明は、酸化第二銅と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を表面処理剤で被覆し得られる複合黒色系顔料であって、芯粒子を構成する酸化第二銅と第二成分の顔料とのモル比が0.1:0.9〜0.95:0.05であり、被覆層は耐酸性を有し、被覆量が芯粒子に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料である(本発明1)。
【0019】
また、本発明は、請求項1に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料において、表面処理剤が、Si,Al,Zr,Ti,Zn,Pから選ばれる一種以上の化合物又は有機系表面処理剤であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料である(本発明2)。
【0020】
また、本発明は、請求項1又は2記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の明度(L)が20以上50以下であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料である(本発明3)。
【0021】
また、本発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の日射反射率が20%以上であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料である(本発明4)。
【0022】
また、本発明は、酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料粒子とを混合し芯粒子を得る混合工程と、前記混合工程で得られる芯粒子の表面を表面処理剤で被覆する被覆工程と、前記被覆工程で得られる表面処理剤で被覆された芯粒子を150〜300℃の温度で加熱する加熱処理工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法である(本発明5)。
【0023】
また、本発明は、請求項5に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法において、さらに混合工程の後、被覆工程前に、混合工程で得られる芯粒子を該芯粒子の融点以下の温度で熱処理する熱処理工程を含むことを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法である(本発明6)。
【0024】
また、本発明は、請求項6に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法において、熱処理工程における熱処理温度が300℃以上850℃以下であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法である(本発明7)。
【0025】
また、本発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料、又は請求項5乃至7のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法により得られる赤外線反射性複合黒色系顔料を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料である(本発明8)。
【0026】
また、本発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料、又は請求項5乃至7のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法により得られる赤外線反射性複合黒色系顔料を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物である(本発明9)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、酸化第二銅を含み、有害な元素を含有しない黒色系顔料であって、優れた赤外線反射性を有すると共に耐酸性及び塗料安定性に優れているので赤外線反射性黒色系顔料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0029】
先ず、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料について述べる。
【0030】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、酸化第二銅と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を表面処理剤で被覆し得られる複合黒色系顔料であって、芯粒子を構成する酸化第二銅と第二成分の顔料とのモル比が0.1:0.9〜0.95:0.05であり、被覆層は耐酸性を有し、被覆量が芯粒子に対して0.1〜10重量%である。
【0031】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料において、芯粒子を構成する酸化第二銅と体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料とのモル比が0.1:0.9〜0.95:0.05である。酸化第二銅のモル比が0.1未満となると、明度が大きくなり過ぎ黒色系顔料とは言い難い。一方、酸化第二銅のモル比が0.95を超えると比重が大きくなり過ぎ、用途が制限されやすい。
【0032】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料において、芯粒子の表面を覆う被覆層は耐酸性を有することが必要である。芯粒子には耐酸性の低い酸化第二銅が含まれるため、被覆層に耐酸性を持たせることで顔料として耐酸性を確保することができる。
【0033】
また、被覆量は芯粒子に対して0.1〜10重量%である。被覆量が芯粒子に対して0.1重量%未満では、芯粒子を十分に被覆することができず、顔料の耐薬品性、特に耐酸性が不十分となる。一方、被覆量が芯粒子に対して10重量%を超えると、耐薬品性効果が飽和するため、必要以上に被覆することは不経済である。
【0034】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料の平均粒子径は、0.02〜5.0μmが好ましい。黒色系顔料の平均粒子径が5.0μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下する。平均粒子径が0.02μm未満の場合には、ビヒクル中への分散が困難となる場合がある。より好ましくは0.025〜4.8μm、更により好ましくは0.04〜4.5μmである。
【0035】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料のBET比表面積は、1〜100m/gが好ましい。BET比表面積が1m/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、着色力が低下する。一方、BET比表面積が100m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、粒子表面への表面処理剤による均一な被覆処理が困難となる。より好ましくは1.5〜75m/g、更により好ましくは1.8〜65m/gである。
【0036】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料の明度(L)は、20以上50以下が好ましい。明度(L)が前記範囲外の場合には、黒色系顔料とは言い難い。
【0037】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料のaは、−2〜+10が好ましい。aが前記範囲外の場合には、黒色系顔料とは言い難い。より好ましくは−1〜+5である。
【0038】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料のbは、−5〜+10が好ましい。bが前記範囲外の場合には、黒色系顔料とは言い難い。より好ましくは−4〜+5である。
【0039】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料の赤外線反射性は、ラッカー色見本塗膜をJIS R 3106に従い測定したときの日射反射率が20%以上であることが好ましく、より好ましくは24%以上である。日射反射率が20%未満では、日射反射率が十分に高いとは言えない。
【0040】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、該顔料を塗膜化した際の光沢度(GLOSS値)が60°−60°において50以上であることが好ましい。光沢度(GLOSS値)が50未満の場合には、十分な光沢性が得られず、分散性に優れているとは言い難い。
【0041】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、真比重が3.0〜6.0であることが好ましい。真比重が上記範囲内であれば、塗料構成基材に本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を分散させたとき、優れた分散性を示す。また塗料として優れた貯蔵安定性を示す。
【0042】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料において、酸化第二銅と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物からなる芯粒子の平均粒子径は、0.018〜4.80μm、好ましくは0.02〜4.5μm、より好ましくは0.04〜4.0μmである。芯粒子の平均粒子径が0.018μm未満の場合には、粒子の微細化により分子間力が増大し凝集を起こしやすいため、芯粒子表面への表面処理剤の均一な被覆処理が困難となる。一方、平均粒子径が4.8μmを超える場合には、得られる赤外線反射性複合黒色系顔料もまた粗大粒子となり着色力が低下する。
【0043】
芯粒子の形状は、特定の形状に限定されず、球状、粒状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子及び板状粒子等を使用することができる。得られる黒色系顔料の分散性を考慮すれば、球状粒子及び粒状粒子が好ましい。
【0044】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有し、芯粒子よりも若干大きな粒子サイズを有している。
【0045】
芯粒子のBET比表面積は、1〜200m/g、好ましくは1.5〜150m/g、より好ましくは2.0〜100m/gである。BET比表面積が1m/g未満の場合には、芯粒子が粗大であったり、粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる顔料もまた粗大粒子となり、着色力が低下する。BET比表面積が200m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、芯粒子表面への表面処理剤による均一な被覆処理が困難となる。
【0046】
芯粒子を構成する体質顔料、白色顔料及び酸化鉄は、日射反射率が10%以上である。これら顔料の日射反射率が10%未満では、十分に高い日射反射率を有する赤外線反射性複合黒色系顔料を得ることができない。
【0047】
体質顔料として、シリカ粉、ホワイトカーボン、微粉ケイ酸、珪藻土等のシリカ微粒子、クレー、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、石膏、アルミナホワイト、タルク、透明性酸化チタン、サチン白等が挙げられる。
【0048】
白色顔料として、酸化亜鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモンが挙げられる。
【0049】
日射反射率が10%以上である酸化鉄として、ヘマタイト及びマンガン含有ヘマタイトに対して5〜40重量%のマンガンを含有するマンガン含有ヘマタイトが挙げられる。
【0050】
芯粒子を構成する酸化第二銅及び第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄の平均粒子径は、0.018〜4.80μm、好ましくは0.02〜4.5μm、より好ましくは0.04〜4.0μmである。これらの平均粒子径が0.018μm未満の場合には、粒子の微細化により分子間力が増大し凝集を起こしやすいため、得えられる芯粒子表面への表面処理剤の均一な被覆処理が困難となる。一方、平均粒子径が4.8μmを超える場合には、得られる赤外線反射性複合黒色系顔料もまた粗大粒子となり着色力が低下する。
【0051】
また芯粒子を構成する酸化第二銅及び第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のBET比表面積は、1〜200m/g、好ましくは1.5〜150m/g、より好ましくは2.0〜100m/gである。BET比表面積が1m/g未満の場合には、得られる芯粒子が粗大であり、最終的に得られる顔料もまた粗大粒子となり、着色力が低下する。BET比表面積が200m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、得られる芯粒子表面への表面処理剤による均一な被覆処理が困難となる。
【0052】
芯粒子を構成する酸化第二銅及び第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄は、特定の形状に限定されず、球状、粒状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子及び板状粒子等を使用することができる。得られる芯粒子、最終的に得られる赤外線反射性複合黒色系顔料の分散性を考慮すれば、球状粒子及び粒状粒子が好ましい。
【0053】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料において、芯粒子を被覆する表面処理剤は、Si,Al,Zr,Ti,Zn,Pから選ばれる1種以上の化合物又は有機系表面処理剤を使用することができる。
【0054】
Si,Al,Zr,Ti,Zn,Pから選ばれる1種以上の化合物としては、アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が挙げられる。ケイ素化合物として、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が挙げられる。ジルコニウム化合物として、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等のジルコニウム塩等が使用できる。チタン化合物として、酢酸チタニウム、硫酸チタニウム、塩化チタニウム、硝酸チタニウム等のチタニウム塩等が使用できる。亜鉛化合物として、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛塩等が使用できる。りん化合物として、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩等が使用できる。
【0055】
有機系表面処理剤としては、ステアリン酸又はその塩、ロジン、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤、リン酸化合物等が挙げられる。
【0056】
有機ケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0057】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0058】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0059】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0060】
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
【0061】
リン酸化合物としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性リン酸エステル、ホスホン酸等の有機リン化合物等が挙げられる。
【0062】
次に、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料の製造法について述べる。
【0063】
まず、酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料とを十分に混合する。混合撹拌に使用する機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることが好ましい。ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0064】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミルがある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサーがある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダーがある。
【0065】
さらに酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料からなる混合物を該混合物の融点以下の温度で熱処理することが好ましい。好ましい熱処理温度は、混合物の融点以下の温度で300℃以上850℃以下の温度である。混合物を該混合物の融点以下の温度で熱処理することで、複合化させることができる。混合物を複合化させることで耐薬品性がより高くなる。該混合物を該混合物の融点を超える温度で熱処理すると該混合物が溶融し、また、該混合物の融点以下の温度であっても850℃を越える高い温度で熱処理すると、芯粒子が粗大化し塗膜化した際の光沢性が低下するので好ましくない。
【0066】
次に、得られた混合物及び/又は複合化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を表面処理剤で被覆し、さらにその後、該芯粒子を150〜300℃の温度で加熱処理する。これにより本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を得ることができる。芯粒子と表面処理剤とを混合することで、芯粒子表面が被覆された赤外線反射性複合黒色系顔料を得ることができるけれども、この状態では被覆層の耐薬品性、特に耐酸性が不十分である。表面処理剤で被覆された芯粒子を温度150℃未満の温度で加熱処理した場合も同様である。一方、被覆層は300℃の温度で十分に強固となり300℃を超えて加熱する必要はない。また300℃を超えて必要以上に高い温度で加熱すると、芯粒子の比表面積が低下するため好ましくない。
【0067】
芯粒子表面への表面処理剤の被覆は、乾式又は湿式方法等の常法に従って行えばよい。乾式処理の場合、芯粒子と表面処理剤とを機械的に混合撹拌したり、芯粒子に表面処理剤を噴霧しながら機械的に混合撹拌すればよい。添加した表面処理剤は、ほぼその全量が芯粒子の粒子表面に被覆される。
【0068】
表面処理剤を均一に芯粒子の表面に被覆するためには、芯粒子の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0069】
芯粒子と表面処理剤との混合撹拌に使用する機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることが好ましい。ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0070】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミルがある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサーがある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダーがある。
【0071】
芯粒子と表面処理剤との混合撹拌条件は、芯粒子の表面に表面処理剤ができるだけ均一に被覆されるように、適宜調整すればよく、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)が好ましく、より好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、最も好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)であり、処理時間は5分〜24時間が好ましく、より好ましくは10分〜20時間の範囲であり、撹拌速度は2〜2000rpmが好ましく、より好ましくは5〜1000rpm、最も好ましくは10〜800rpmの範囲である。
【0072】
例えば、シランカップリング剤をヘンシェルミキサーで乾式処理する場合、芯粒子、水、助剤、アルコールを低速度回転で1時間予備混合する。その後、高速度回転に調整し、130℃で1時間維持した後、水冷却し排出する。その後150℃で1時間加熱する。
【0073】
また、ステアリン酸亜鉛を乾式で表面処理する場合には、振動ミルで30分間処理し、その後、乾燥機で150℃の温度で乾燥させる。
【0074】
湿式方法は、湿式分散した芯粒子スラリーに、Si,Al,Zr,Ti,Zn,Pから選ばれる1種又は2種以上の可溶性化合物を、酸又はアルカリでpH調整しながら添加・混合して被覆すればよい。これにより芯粒子の表面を水酸化物又は酸化物で被覆することができる。有機系表面処理剤の場合、湿式分散した芯粒子スラリーに有機系表面処理剤を投入して被覆すればよい。
【0075】
例えば、芯粒子を純水中で撹拌しながら3号水ガラスと硫酸、水酸化ナトリウムをpHが6〜8になるように滴下添加し、80℃で1時間維持した後、水洗し乾燥する。さらにその後150℃の温度で1時間加熱すればよい。
【0076】
また2種以上の表面処理剤を使用する場合には、芯粒子を純水中で撹拌しながら、例えば硫酸ジルコニウムとアルミン酸ナトリウムと硫酸、水酸化ナトリウムをpHが6〜8になるように滴下添加し、80℃で1時間維持した後、水洗、ろ過乾燥する。さらにその後180℃の温度で1時間加熱すればよい。
【0077】
次に、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を配合した塗料について述べる。
【0078】
本発明に係る塗料中における赤外線反射性複合黒色系顔料の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対して0.5〜100重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリング性を考慮すれば、好ましくは1.0〜100重量部である。
【0079】
塗料構成基材としては、樹脂、溶剤、必要により油脂、消泡剤、体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0080】
樹脂としては、溶剤系塗料用や油性印刷インクに通常使用されているアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ガムロジン、ライムロジン等のロジン系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂、石油樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、水系塗料用や水性インクに通常使用されている水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水可溶性フッ素樹脂等を用いることができる。
【0081】
溶剤としては、溶剤系塗料用に通常使用されている大豆油、トルエン、キシレン、シンナー、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0082】
水系塗料用溶剤としては、水と水系塗料用に通常使用されているエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤とを混合して使用することができる。
【0083】
油脂としては、あまに油、きり油、オイチシカ油、サフラワー油等の乾性油を加工したボイル油を用いることができる。
【0084】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0085】
次に、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を含有する樹脂組成物について述べる。
【0086】
本発明に係る樹脂組成物中における赤外線反射性複合黒色系顔料の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、樹脂組成物のハンドリング性を考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0087】
本発明に係る樹脂組成物における構成基材としては、赤外線反射性複合黒色系顔料と周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0088】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0089】
添加剤の量は、赤外線反射性複合黒色系顔料と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0090】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂原料と赤外線反射性複合黒色系顔料をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、赤外線反射性複合黒色系顔料の凝集体を破壊し、樹脂組成物中に赤外線反射性複合黒色系顔料を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0091】
また本発明に係る樹脂組成物は、マスターバッチペレットを経由して得ることもできる。
【0092】
本発明におけるマスターバッチペレットは、塗料及び樹脂組成物の構成基材としての結合材樹脂と前記赤外線反射性複合黒色系顔料とを必要により、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で混合した後、周知の単軸混練押出機や二軸混練押出機等で混練、成形した後切断するか、又は、上記混合物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混練して得られた混練物を粉砕又は成形、切断することにより製造される。
【0093】
結合材樹脂と赤外線反射性複合黒色系顔料の混練機への供給は、それぞれを所定比率で定量供給してもよいし、両者の混合物を供給してもよい。
【0094】
本発明におけるマスターバッチペレットは、平均長径1〜6mm、好ましくは2〜5mmの範囲である。平均短径は2〜5mm、好ましくは2.5〜4mmである。平均長径が1mm未満の場合には、ペレット製造時の作業性が悪く好ましくない。6mmを超える場合には、希釈用結合材樹脂の大きさとの違いが大きく、十分に分散させるのが困難となる。また、その形状は種々のものができ、不定形及び球形等の粒状、円柱形、フレーク状等にできる。
【0095】
本発明におけるマスターバッチペレットに使用する結合材樹脂としては、前記樹脂組成物用樹脂と同一の樹脂が使用できる。
【0096】
なお、マスターバッチペレット中の結合材樹脂の組成は、希釈用結合材樹脂と同一の樹脂を用いても、また、異なる樹脂を用いてもよいが、異なる樹脂を使用する場合には、樹脂同士の相溶性により決まる諸特性を考慮して決めればよい。
【0097】
マスターバッチペレット中に配合される赤外線反射性複合黒色系顔料の量は、結合材樹脂100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部である。1重量部未満の場合には、混練時の溶融粘度が不足し、赤外線反射性複合黒色系顔料の良好な分散混合が困難である。200重量部を超える場合には、赤外線反射性複合黒色系顔料に対する結合材樹脂が少ないため、赤外線反射性複合黒色系顔料の良好な分散混合が難しく、また、マスターバッチペレットの添加量のわずかな変化によって樹脂組成物中に配合される赤外線反射性複合黒色系顔料の含有量が大きく変化するため所望の含有量に調製することが困難となり好ましくない。また、機械摩耗が激しく適当ではない。
【0098】
<作用>
本発明において最も重要な点は、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、有害な元素を含有しない、酸化第二銅を含む黒色系顔料であって、優れた赤外線反射性を有すると共に耐酸性及び塗料安定性に優れるという事実である。
【0099】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、赤外線反射性に優れるものの耐酸性に劣りさらに真比重が大きい酸化第二銅を含むけれども、酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を耐酸性を有する被覆層で被覆することで、塗料分散時の成分分離を防止し、高い赤外線反射性を有しながらも優れた耐薬品性、特に高い耐酸性を実現することができた。特に芯粒子の表面を表面処理剤で被覆した後、所定温度で加熱処理することにより、高い耐酸性を得ることができた。さらに芯粒子を表面処理剤で被覆する前に所定温度で熱処理することで、より優れた耐薬品性を実現することができた。
【0100】
また、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、芯粒子が酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物からなるので、酸化第二銅粒子のみを芯粒子とする場合に比較して比重を下げることが可能となり、これにより塗料分散時の優れた分散性及び塗料貯蔵安定性を実現することができた。
【0101】
また、本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、Cr6+などの有害金属元素を含有しておらず、安全な顔料である。
【実施例】
【0102】
本発明の代表的な実施例は、次の通りである。
【0103】
粒子の平均粒子径は電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0104】
比表面積は、BET法により測定した値で示した。
【0105】
酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物からなる芯粒子及び赤外線反射性複合黒色系顔料の内部や表面に存在するSi量、Al量、Zr量、Ti量、Zn及びP量並びに有機系表面処理剤から生成するオルガノシラン化合物又はポリシロキサンに含有されているSi量のそれぞれは「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0106】
赤外線反射性複合黒色系顔料の真比重(密度)は、JIS K5101の「顔料試験方法」に従って測定した。
【0107】
赤外線反射性複合黒色系顔料の色相(L値、a値、b値)は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製した塗膜片について、「多光源分光測色計MSC−IS−2D」(スガ試験機株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z8729に定めるところに従って表色指数(L値、a値、b値)で示した。
【0108】
赤外線反射性複合黒色系顔料の日射反射率は、上記の色相を測定するために作製した塗膜片について、「分光光度計 UV−3100PC」(株式会社島津製作所)を用い、JIS R3106に従い測定した。
【0109】
赤外線反射性複合黒色系顔料の光沢度(GLOSS値)は、色判定、日射反射率を測定した色見本を、「デジタル変角光沢計UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて60°−60°における値を示した。光沢度が高いほど、赤外線反射性複合黒色系顔料を配合した塗料の分散性が優れていることを示す。
【0110】
赤外線反射性複合黒色系顔料の耐酸性の評価は、JIS K5101−8の「顔料試験方法 第8部:耐薬品性」に従い、試験管に顔料2gを2%の硫酸を20ml加え、密封して5分振り混ぜ、常温に静置させた後、ろ過分離後の溶液をICPでCu量を測定し、溶解Cuを分析した。
【0111】
赤外線反射性複合黒色系顔料を含有する塗料の評価は、次の要領で行なった。
マヨネーズビン(内容積140ml)中に、ガラスビーズ90g、赤外線反射性複合黒色系顔料10g、アミノアルキッド樹脂(クリヤー)16.0g、溶剤6.0g配合し、ペイントコンデイショナーで40分間分散後、更にアルミアルキッド樹脂(クリヤー)50g追加後、ペイントコンデイショナーで5分分散し、ガラスビーズと分離した。静置5時間後の塗料について、目視で分離状態を判定し安定性を評価した。
【0112】
実施例1
CuO粒子とAl粒子とをモル比で0.8:0.2とし、これらを室温下で混合撹拌し、芯粒子を得た。この芯粒子に対し、シランカップリング剤2.5重量%(SiO換算で1重量%)と水0.25重量%、アルコール1.75重量%を加え、ヘンシェルミキサーで低速度回転で1時間予備混合した。その後、ヘンシェルミキサーを高速度回転に調整し、130℃で1時間維持し、水冷却し排出した。その後、表面処理剤で被覆された芯粒子を160℃で1時間加熱処理した。加熱処理品を粉砕し平均粒子径0.4μm、BET比表面積9.8m/gの複合黒色系顔料を得た。
【0113】
得られた複合黒色系顔料の被覆量は、芯粒子に対してSiO換算で1重量%であり、真比重は5.6g/cmであった。また日射反射率は25%であり、耐酸性を評価した結果、溶液中のCuの濃度は540ppmと小さく、塗料とした際も分離することなく安定していた。
【0114】
実施例2
CuO粒子とSiO粒子とをモル比で0.5:0.5とし、これらを室温下で混合撹拌し、芯粒子を得た。この芯粒子に対し、純水中で撹拌しながらアルミン酸ナトリウム6.0重量%(Al換算で2重量%)を、硫酸、水酸化ナトリウムをpHが6〜8になるように滴下添加し、80℃で1時間維持した後、水洗、ろ過乾燥する。さらにその後180℃の温度で1時間加熱処理した。加熱処理品を粉砕し平均粒子径0.09μm、BET比表面積65m/gの黒色顔料を得た。
得られた黒色顔料の被覆量は、芯粒子に対してAl3換算で2重量%であり、真比重は4.2g/cmであった。また日射反射率は28%であり、耐酸性を評価した結果、溶液中のCuの濃度は190ppmと小さく、塗料とした際も分離することなく安定していた。
【0115】
実施例3〜実施例6、比較例1〜比較例5
実施例3〜実施例6、比較例2、4では、CuO粒子と第二成分粒子とを混合撹拌した後、熱処理を行ない、その後に表面処理及び加熱処理を行った。その他、熱処理温度、表面処理方法、表面処理剤及び被覆量、さらには表面処理後の加熱温度を変化させた。
【0116】
比較例1、2、4においては、塗料とした際に顔料が沈降分離し、比較例3及び5においては、塗料とした際にCuOと第二成分の顔料とが分離し沈降した。
【0117】
実施例1〜6及び比較例1〜5の製造条件、得られた赤外線反射性複合黒色系顔料の諸特性、塗料及び塗膜の特性を表1、表2及び表3に示した。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料は、赤外線反射性に優れかつ耐酸性及び塗料安定性にも優れるので赤外線反射性黒色系顔料として好適である。また本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を含有する樹脂組成物は、赤外線反射性に優れるので、樹脂組成物を公知の方法でシート又はフィルムとすることで、以下のような用途に利用することができる。
【0122】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を含有する樹脂組成物から得られるシートは、黒色であるので農業用マルチシートに利用すれば、雑草の発生、育成を防止することが可能であり、さらに赤外線反射性に優れるので地面の温度上昇を抑えることが可能であり、黒色の農業用マルチシートとして好適に使用することができる。
【0123】
同様に、太陽電池のバックシートに好適に使用することができる。太陽電池モジュールは、複数の太陽電池素子の表裏面がカバー材料で保護されている。太陽電池素子の裏面を保護するバックシートは、電力変換効率の点から高い反射性を有し、意匠の点から黒色系を有するバックシートが好ましい。さらに太陽電池素子は高温になるほど発電効率が低下する。本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を含有する樹脂組成物から得られるシートは、太陽電池のバックシートとして必要な特性を十分に備え、太陽電池のバックシートとして好ましい。
【0124】
外部から内部を見えにくくするために着色されたフィルムが車両の窓ガラス等に貼付され使用されているが、これらフィルムには室内の温度を上昇させないことも求められている。本発明に係る赤外線反射性複合黒色系顔料を含有する樹脂組成物から得られるフィルムは、黒色度に優れかつ赤外線反射性に優れるので、車両、建物の窓ガラスに貼付する着色フィルムとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化第二銅と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料との混合物及び/又は複合化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を表面処理剤で被覆し得られる複合黒色系顔料であって、芯粒子を構成する酸化第二銅と第二成分の顔料とのモル比が0.1:0.9〜0.95:0.05であり、被覆層は耐酸性を有し、被覆量が芯粒子に対して0.1〜10重量%であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料において、表面処理剤が、Si,Al,Zr,Ti,Zn,Pから選ばれる一種以上の化合物又は有機系表面処理剤であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の明度(L)が20以上50以下であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の日射反射率が20%以上であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料。
【請求項5】
酸化第二銅粒子と第二成分である体質顔料、白色顔料及び日射反射率が10%以上である酸化鉄のいずれか1種以上の顔料粒子とを混合し芯粒子を得る混合工程と、
前記混合工程で得られる芯粒子の表面を表面処理剤で被覆する被覆工程と、
前記被覆工程で得られる表面処理剤で被覆された芯粒子を150〜300℃の温度で加熱する加熱処理工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法において、さらに混合工程の後、被覆工程前に、混合工程で得られる芯粒子を該芯粒子の融点以下の温度で熱処理する熱処理工程を含むことを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法において、熱処理工程における熱処理温度が300℃以上850℃以下であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料、又は請求項5乃至7のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法により得られる赤外線反射性複合黒色系顔料を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料、又は請求項5乃至7のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色系顔料の製造方法により得られる赤外線反射性複合黒色系顔料を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−150354(P2010−150354A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328860(P2008−328860)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】