説明

赤外線吸収性眼鏡用レンズおよびその製造方法

【課題】赤外線吸収剤を添加して成形したレンズにおいて、赤外線吸収剤の劣化や分解などが生じないようにして、優れた赤外線吸収性能を示す眼鏡用レンズを提示し、またはそのような赤外線吸収性眼鏡用レンズの製造方法を提示することである。
【解決手段】ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させたプレポリマーと、芳香族ポリアミンとが付加重合反応してなるポリウレタン樹脂組成物に、赤外線吸収色素を含ませた樹脂組成物からなる赤外線吸収性眼鏡用レンズとした。従来の成形用樹脂材料では不可避であった過酸化物などの添加剤(過酸化ベンゾイルなどの重合触媒、重合開始剤など)による赤外線吸収剤の機能劣化や可視光の吸収増加傾向が回避され、しかも比較的低温で成形が可能で、従来技術のように250℃を超えるような高温で成形する必要もないので、加熱による赤外線吸収剤の機能劣化も回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリウレタン樹脂製の赤外線吸収性眼鏡用レンズおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、眼鏡は視力の矯正ばかりでなく、有害な光線から眼の細胞を保護する上でも有用であり、多くのサングラスや遮光眼鏡などの保護具には紫外線の透過を阻止する紫外線吸収剤を含む紫外線吸収性眼鏡レンズが採用されている。
【0003】
また、眼鏡用レンズにおける防除対象の有害な光線の種類としては、紫外線領域ばかりでなく赤外線領域も必要である。
【0004】
因みに、赤外線のうち、眼に見えない波長780〜1300nmの電磁波を近赤外線といい、同じく眼に見えない1300nm〜2000nmの電磁波は、中赤外線と呼ばれている。それら波長域の浸透力は、皮膚下30mmにもおよび、特に近赤外線は角膜を透過してほとんど網膜まで達し、眼底を損傷させる可能性がある。
【0005】
赤外線による熱傷の傾向としては、瞬間的に強い光を浴びる場合ばかりでなく、長時間をかけて少しずつ障害が蓄積される場合があり、例えば網膜障害を起こし、水晶体の白濁(白内障)を起こすなどの例がある。
【0006】
赤外線の透過を阻止するための一般的な赤外線吸収色素、すなわち赤外線領域に吸収性のある色素(赤外線吸収剤とも称される)としては、アゾ系、アミニウム系、アンスラキノン系、シアニン系、ポリメチン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、キノン系、ジイモニウム系、ジチオール金属錯体系、スクアリリウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系などが知られている。
【0007】
このような赤外線吸収剤を、必要に応じて単独又は併用してバインダーとなる樹脂に分散させた樹脂組成物でもってコート層を形成するように溶剤含有コーティング液とし、これを塗布し乾燥させて赤外線吸収層を形成した赤外線吸収フィルターも知られている(特許文献1)。
【0008】
また、前記したような赤外線吸収剤のうちの一部のものをポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39と通称される)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの眼鏡用光学特性に優れた合成樹脂基材に対し、0.001〜0.05重量%配合し、これを眼鏡用レンズとして形成されることも知られている(特許文献2)。
【0009】
【特許文献1】特開2005− 43921号公報
【特許文献2】特開2003−107412号公報(請求項2〜4、段落0013、0020、0022、0023)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記した従来の眼鏡用レンズのうち、赤外線吸収剤をレンズの表面にコーティングするには、本来の眼鏡用レンズの光学的特性を低下させないように、コーティングの層の厚さをできるだけ薄く形成する必要があり、そのため、所望の赤外線吸収性能を確保できないという問題がある。
【0011】
また、汎用の成形品を製造する場合には、赤外線吸収剤を熱可塑性樹脂材料に分散させ、この熱可塑性樹脂を熱溶融して成形することは可能であるが、歪が生じる場合があり、また異物をろ過する事が充分にできないので、高品位の眼鏡レンズに適した製法ではなかった。
【0012】
なぜなら、眼鏡用の熱可塑性樹脂としては、透明性に優れるMMA(メチルメタアクリレート樹脂)やPC(ポリカーボネート樹脂)が選ばれて成形されるが、MMAは耐衝撃性の点で劣っていて実用性が低く、PCは耐衝撃性などで十分な性能を有する分子量のグレードでは250℃以上の成形温度が必要であり、その温度では赤外線吸収剤が劣化・分解してしまう。
【0013】
また、プラスチック製眼鏡レンズとして利用される注型タイプの硬化型樹脂の代表的な樹脂のCR−39や中屈折率樹脂(例えば、日本油脂製:コーポレックス、屈折率1.56)は、その組成がアリルジグリコールカーボネートであるが、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(以下、IPPと略記する)を触媒として硬化する嫌気性熱硬化型樹脂であるため、その触媒であるIPPは過酸化物であって、赤外線吸収剤はそのような過酸化物と反応して、劣化・分解して所望の赤外線吸収性能が得られなかった。
【0014】
また、周知の高屈折率樹脂(例えば、三井化学社製:チオウレタン系樹脂MR−7、屈折率1.67)は、イソシアネートとポリチオールを化合させた樹脂であり、赤外線吸収剤はイオウ系成分や触媒と反応してしまい、劣化・分解して充分な赤外線防除効果が得られなかった。
【0015】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、赤外線吸収剤を添加して成形したレンズにおいて、赤外線吸収剤の劣化や分解などが生じないようにして、優れた赤外線吸収性能を示す眼鏡用レンズを提示し、またはそのような赤外線吸収性眼鏡用レンズの製造方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本願の発明者は多くの実験を重ねて取得したデータにより、ポリヒドロキシ化合物と脂環式ポリイソシアネートとを反応させてなるプレポリマーと架橋剤である芳香族ポリアミンからなるポリウレタン樹脂組成物に赤外線吸収剤を添加して成形したレンズが、赤外線吸収剤の劣化や分解などが生じず、優れた赤外線吸収性能を示すことを発見し、この発明を完成させたものである。
【0017】
すなわち、前記の課題を解決するために、この発明では、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させたプレポリマーと、芳香族ポリアミンとが付加重合反応してなるポリウレタン樹脂組成物に、赤外線吸収色素を含ませた樹脂組成物からなる赤外線吸収性眼鏡用レンズとしたのである。
【0018】
上記したように構成されるこの発明の赤外線吸収性眼鏡用レンズは、赤外線吸収剤と所定のポリウレタン樹脂組成物を組み合わせて採用したことにより、従来の成形用樹脂材料では不可避であった過酸化物などの添加剤(過酸化ベンゾイルなどの重合触媒、重合開始剤など)による赤外線吸収剤の機能劣化や可視光の吸収増加傾向が回避され、しかも比較的低温で成形が可能で、従来技術のように250℃を超えるような高温で成形する必要もないので、加熱による赤外線吸収剤の機能劣化も回避される。
【0019】
すなわち、所定のポリウレタン樹脂組成物は、付加しやすいイソシアネート基を有する原子団が二官能化合物に付加して高分子が形成されるものであり、過酸化物系統の重合触媒や重合開始剤などが必要なく、また眼鏡レンズの注型成形およびその後の硬化には赤外線吸収剤の機能劣化がないことが判明した。
【0020】
このようにして赤外線吸収色素をポリウレタン樹脂組成物に添加する場合、赤外線吸収色素が、波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均が30%以下に抑制できるように配合されている眼鏡用レンズとすることができる。
【0021】
また、眼鏡用レンズとして採用する赤外線吸収色素の機能としては、波長400nm以下の紫外線を吸収する紫外線吸収剤が配合されていることが好ましい。
【0022】
また、これらの赤外線吸収性眼鏡用レンズの発明において、透明性に優れ、耐衝撃性に優れた眼鏡用レンズであるためには、ポリイソシアネートが、4,4´−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)またはイソホロンジイソシアネートである赤外線吸収性眼鏡用レンズとすることが好ましく、ポリヒドロキシ化合物が、平均分子量700〜1200のポリエーテルジオールもしくはポリエステルジオールまたはこれらの混合物であることが好ましく、さらに芳香族ポリアミンが、4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)であることが好ましい。
【0023】
さらに優れた耐衝撃・赤外線吸収性眼鏡用レンズとするためには、ポリイソシアネートおよびポリヒドロキシ化合物の反応モル比(NCO/OH)が、2.5〜4.0でありかつ生成するポリウレタンプレポリマーのNCO含量が7.0〜14.0%となるようにポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物とを配合した上記の赤外線吸収性眼鏡用レンズとすることが好ましい。
【0024】
また、眼鏡用レンズが、透明レンズ、着色レンズまたは偏光レンズである上記の赤外線吸収性眼鏡用レンズとすることもでき、さらに眼鏡の用途により、サングラス用レンズ、偏光眼鏡用レンズまたはゴーグル用シールドレンズである場合の赤外線吸収性眼鏡用レンズであってもよい。ゴーグル用シールドレンズは、平板もしくはシート状またはアイキャップ状のものであってもよい。
【0025】
このような赤外線吸収性眼鏡用レンズを製造するには、ポリイソシアネートおよびポリヒドロキシ化合物をこれらの反応モル比(NCO/OH)が2.5〜4.0となるように配合し、得られたNCO含量7.0〜14.0%のポリウレタンプレポリマーと芳香族ポリアミンを反応モル比(NCO/NH2)が1.10〜0.90となるように配合すると共に、赤外線吸収色素を含ませ、これを注型すると共に60〜140℃で硬化することからなるポリウレタン樹脂製の赤外線吸収性眼鏡用レンズの製造方法を採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させたプレポリマーと、芳香族ポリアミンとが付加重合反応してなるポリウレタン樹脂組成物に、赤外線吸収色素を含ませた樹脂組成物からなる赤外線吸収性眼鏡用レンズとしたので、赤外線吸収剤を添加して成形したレンズが、赤外線吸収剤の劣化や分解などが生じないようになり、優れた赤外線吸収性能を示す眼鏡用レンズとなる利点がある。
【0027】
また、ポリイソシアネートおよびポリヒドロキシ化合物を所定量配合し、得られた所定NCO含量のポリウレタンプレポリマーと芳香族ポリアミンを所定量配合すると共に、赤外線吸収色素を含ませ、これを注型して硬化するポリウレタン樹脂製の赤外線吸収性眼鏡用レンズの製造方法としたので、赤外線吸収剤を添加して成形したレンズが、赤外線吸収剤の劣化や分解などが生じないようになり、優れた赤外線吸収性能を示す眼鏡用レンズを確実に効率よく製造できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
この発明に用いるポリイソシアネートは、脂環式ジイソシアネートである4,4′−メ
チレンビス(シクロへキシルイソシアネート)又はイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0029】
ポリイソシアネートとして、上記以外のものとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添XDl、ノルボルナンジイソシアネート等があるが、これらを使用すると、得られるウレタン樹脂のポットライフが充分に長くならない。
【0030】
この発明に使用するポリヒドロキシ化合物は、平均分子量700〜1200のポリエーテルジオール又はポリエステルジオール及びその混合物である。
【0031】
ポリエーテルジオールとしては、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリオキシテトラメチレングリコールや他のポリエーテルジオールが使用できる。またポリエステルジオールとしては、公知の各種ポリエステルが使用できるが、1,4−ブタンジオール
アジペート、1,6−へキサンジオールアジペートが好ましい。
【0032】
ジイソシアネートと反応して得られるプレポリマーの粘度は、ポリエーテルジオールからのプレポリマーの方が低く注型作業に有利である。従ってこの発明に使用するポリヒドロキシ化合物としては、ポリエーテルジオールが特に好ましい。
【0033】
また、硬度や耐薬品性を向上させるために分子量300以下の脂肪族ポリオールを併用してもよい。脂肪族ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類を挙げることができる。
【0034】
この発明に用いることが好ましい芳香族ポリアミンの代表例としては、芳香族ジアミンがあり、特に成型上のポットライフが長くて好ましい点で4,4′−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)が挙げられるが、他の周知な芳香族ポリアミンも使用可能である。芳香族ポリアミンを用いてポットライフが短い場合には、速やかに成型作業を行なうなどの留意が必要である。
【0035】
前記した周知な芳香族ジアミンの例としては、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエンなどの芳香族単環系ジアミン、または芳香族多環系ジアミンである4,4´メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、4,4´メチレン-ビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4´メチレン-ビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、4,4´メチレン-ビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4´メチレン-ビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4´メチレン-ビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)などが挙げられる。
【0036】
この発明においてポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物とを反応させて得られるプレポリマーを製造する場合、反応モル比(NCO/OH)は2.5〜4.0であり、得られるプレポリマーのNCO含量は7.0〜14.0%とすることが好ましい。反応モル比とNCO含量がこの範囲より小さいと、プレポリマー粘度が高くなり過ぎて注型作業が困難となり、硬度も低くなる。また、上記範囲より大きいと硬化物性が悪くなって好ましくない。
【0037】
この発明のプレポリマーと芳香族ポリアミンとの混合モル比(NCO/NH2)は、1.10〜0.90であり、周知の硬化処理条件を採用できる。
【0038】
赤外線吸収剤としては、波長780〜2500nmの範囲に渡って赤外線を吸収する赤外線吸収剤を選定すればよく、周知の赤外線吸収色素を採用できるが、例えば下記のようなものが挙げられる。
(1) N,N,N´,N´−テトラキス(p-置換フェニル)-p−フェニレンジアミン類、ベンジジン類及びそれらのアルミニウム塩、ジイモニウム塩からなる赤外線吸収剤。
(2) N,N,N´,N´−テトラアリールキノンジイモニウム塩類。
(3) ビス−(p-ジアルキルアミノフェニル)〔N,N-ビス(p-ジアルキルアミノフェニル
)p-アミノフェニル〕アミニウム塩。
【0039】
また、必要に応じて使用できる紫外線吸収剤としては、例えば下記のようなものが挙げられる。
(1) 2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン
(2) 4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン
(3) 2−2´−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
【0040】
これらの紫外線吸収剤を用いる際には、波長の長いUV−A(315〜400nm)と波長の短いUV−B(280〜315nm)とそれ以下のUV−C(100〜280nm)の全ての紫外線を吸収させることが好ましい。
【0041】
たとえば溶接光の青色炎を消す為には、波長380〜450nmを吸収する必要があり、偏光膜と赤外線吸収剤を使用する場合は、染料を入れなくても吸収するが、偏光膜を使用しない場合には、樹脂に青色を吸収する黄色染料、橙染料、赤染料及びそれらの混合物を使用する。
【0042】
そして、眼鏡用レンズをブラウン系の色調にするには、黄色染料、橙色染料、赤色染料等やこれらの混合物を使用する。
【0043】
偏光膜に染色する場合には、水溶性の染料を選択し、ウレタン樹脂を染色する場合には油溶性の染料が適している。
染料の種類としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、硫化染料、分散染料、油溶染料などがあるが、堅牢性の優れた染料を使用する事が望ましい。
【0044】
赤外線吸収剤の添加量は、レンズを構成する材料(耐衝撃性ウレタン)100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、遮光保護具以外の用途に使用する場合には好ましくは0.1〜1.0重量部の範囲が適している。遮光保護具の場合には必要とする赤外線吸収性能に合わせて添加すればよい。
【0045】
紫外線吸収剤の添加量は、レンズを構成する材料(耐衝撃性ウレタン)100重量部に対して、0.01〜4重量部、好ましくは0.1〜4.0重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量部の範囲が適している。
【0046】
この発明の眼鏡レンズは、少なくとも波長380〜780nmの範囲の可視光線を透過し、透過率は1%〜75%の範囲で、遮光保護具以外では10%〜40%の範囲が好ましい。
【0047】
紫外線波長(100nm〜380nm)については、0.1%未満、好ましくは0.02未満で透過しない方が適している。
また、紫外線吸収剤を添加することにより赤外線吸収剤の屋外使用での耐久性が向上する。
赤外線波長(780nm〜2500nm)については、平均透過率として、10%未満、好ましくは1%未満が適している。
但し、溶接作業などにおいて使用される遮光保護具用については、規定される規格に基づくので、この限りではない。
【0048】
遮光保護具以外に使用する場合は、ファッション性を考慮して色調を好みに合わすようにするが、波長380〜550nm領域の平均光線透過率(A%)と波長550〜780nm領域の平均光線透過率(B%)との比が、A/B≦0.3であるレンズの色調に赤外線吸収剤を添加して色調を調整するようにした方が好ましい。
【0049】
この発明における眼鏡用レンズは、用途として偏光眼鏡レンズ、サングラス用レンズ、ゴーグル用シールドレンズもしくはアイキャップ、またはヘルメット用シールドなどであってもよい。また、この発明でいう眼鏡用レンズは、凹レンズ、凸レンズばかりでなく、度のない素通しのレンズまたは顔面や眼の保護のために適当な柔軟性を有するシートや平板またはアイキャップ状(度付き、度なし)のものであってもよい。
【0050】
因みに、ゴーグルは、スポーツや作業などの用途で眼を保護するため顔面に装着する保護眼鏡であり、例えば水泳、登山、スキー、バイク、防虫や花粉防御などにも使用されるものである。
【0051】
また眼鏡用レンズの色調は、種々の好みに対応できるが、赤外線吸収剤は緑色を呈しているものが多いのである程度の制約があり、赤外線吸収性能とファッション性を考慮して選択すればよい。
【0052】
上記の注型用ポリウレタン樹脂材料組成物を注型して眼鏡レンズなどの透明レンズ、着色レンズまたは偏光レンズなどに用いる耐衝撃性光学レンズを製造するには、周知のキャスト法を採用することができる。レンズ型以外の形状でもモールドを変更する事でゴーグルなどの形状も成形可能である。
【0053】
すなわち、キャスト法では、レンズを成形するために凹型と凸型とをガスケットを介して液密に嵌めあわせて使用するモールド部材を設け、このモールド部材のキャビティー内にモノマーを注入し、重合および硬化させる。特に偏光レンズを製造する場合においては、リング状のガスケットを介して凹型と凸型のモールド部材を嵌め合わせる際に、前記ガスケット内に偏光素子(偏光フィルムやシート)を予めセットする。そして、モールド部材またはガスケットに形成した注入孔から偏光素子の両面に沿って樹脂で覆われるように樹脂原料のモノマーを注入し、重合および硬化させる方法である。
【0054】
眼鏡用レンズには、ハードコート処理することも可能である。シリコン系化合物などを含む溶液にレンズを浸漬する事により強化被膜を形成させて表面硬度を向上させる方法である。また、防曇処理、反射防止処理、耐薬品性処理、帯電防止処理、ミラー処理などを施して更に性能をアップさせてやる事も可能である。
【0055】
このようにして製造される眼鏡用レンズは、赤外線、紫外線の有害な光線の透過を抑制するので、太陽光線の極めて強い場所での使用にも適し、目の弱い者が使用しても、有害光線による眼の損傷を防止できる。
【0056】
また、溶接作業のように眼に対して有害な紫外線、強烈な可視光線、赤外線が生じる作業には遮光保護具の着用を義務付けられている。その作業状態によりJIS T 8141に使用基準が定められているが、赤外線吸収剤や色材の添加量を調節する事により利用可能な遮光レンズも提供できる。
【0057】
この発明における好ましい調整例による眼鏡用レンズとすることにより、有害光線による眼の障害(以下の5種類)を防止できる。
(1)紫外線UV−B,Cによる角膜、結膜への障害
(2)紫外線UV−Aによる水晶体への障害
(3)青色光による網膜への光化学的障害
(4)可視光線、近赤外線による角膜、水晶体への障害
(5)近・中赤外線による角膜、水晶体への障害
【実施例】
【0058】
以下の実施例および比較例において、全ての「部」及び「%」は特に断りのない限り、「重量部」及び「重量%」である。
【0059】
[プレポリマーの製造]
製造例1:温度計、攪拌機、窒素シール管を備えた500mlセパラブルフラスコに、平均分子量1014のポリオキシテトラメチレングリコール(保土谷化学工業製:PTG−1000N)200部をとり、窒素気流中で攪拌しながら加熱し、100〜110℃/3〜5mmHgの減圧下で1時間脱水した。脱水後4,4´−メチレン−ビス(シクロへキシルイソシアネート)(住友バイエルウレタン製:デスモジュールW)170部を添加し、120〜130℃で2時間反応してプレポリマーを製造した。得られたプレポリマーは無色透明液体であり、NCO含量9.9%、粘度8600mPa・s/30℃,750mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをAとする。
【0060】
製造例2:製造例1の装置を使い、平均分子量1014のポリテトラオキシメチレングリコール200部と、トリメチロールプロパン4部をセパラブルフラスコに取り、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後4,4′−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシア
ネート)を190部添加し、120〜130℃で2時間反応してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーはほぼ無色透明の液体であり、NCO含量10.1%、粘度8000mPa・s/30℃、920mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをBとする。
【0061】
製造例3:製造例1の装置を使い、平均分子量1014のポリテトラオキシメチレングリコール200部をセパラブルフラスコにとり、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後イソホロンジイソシアネート(バイエル社製デスモジュールl)131部を添加し120〜130℃で2時間反応してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは、ほぼ無色透明の液体であり、NCO含量9.7%,粘度6900mPa・s/30℃,900mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをCとする。
【0062】
製造例4:製造例1の装置を使い、平均分子量1014のポリテトラオキシメチレングリコール200部とトリメチロールプロパン4部をセパラブルフラスコにとり、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後イソホロンジイソシアネート155部を添加し、120〜130℃で2時間反応してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは、ほぼ無色透明の液体であり、NCO含量10.4%、粘度9400mPa・s/30℃、1200mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをDとする。
【0063】
製造例5:製造例1の装置を使い、平均分子量1007の1,6−ヘキサンジオールアジペート(日本ポリウレタン社製:ニッポラン164)200部をセパラブルフラスコに取り、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後4,4´−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)170部を添加し120〜130℃で2時間反応させてプレポリマーを得た。得られたプレポリマーはほぼ無色透明の液体であり、NCO含量9.0%,粘度19000mPa・s/30℃,2000mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをEとする。
【0064】
製造例6:製造例1の装置を使い、平均分子量1007の1,6−ヘキサンジオールアジペート200部とトリメチロールプロパン4部をセパラブルフラスコに取り、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後、4,4′−メチレン−ビス(シクロへキシルイソシアネート)199部を添加し、120〜130℃で2時間反応してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは、ほぼ無色透明の液体であり、NCO含量10.1%,粘度22000mPa・s/30℃、2100mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをFとする。
【0065】
製造例7:製造例1の装置を使い、平均分子量1014のポリテトラオキシメチレングリコール200部をセパラブルフラスコにとり、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後4,4´−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)104部を添加し120〜130℃で2時間反応してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは、ほぼ無色透明の液体であり、NCO含量5.5%、粘度30000mPa・s/30℃,2700mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをGとする。
【0066】
製造例8:製造例1の装置を使い、平均分子量1014のポリテトラオキシメチレングリコール200部をセパラブルフラスコにとり、製造例1と同一条件下で脱水した。脱水後80℃まで冷却し、トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製:T−80)103部を添加し、80〜85℃で5時間反応してプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは淡黄色透明の液体で、NCO含量10.8%,粘度2000mPa・s/30℃,150mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをHとする。
【0067】
製造例9:製造例8において、トリレンジイソシアネートを70部としてプレポリマーを得た。得られたプレポリマーは淡黄色透明の液体でNCO含量6.3%、粘度7000mPa・s/30℃、600mPa・s/60℃であった。このプレポリマーをIとする。
【0068】
[実施例1]
製造例1で得られたプレポリマーAの100重量部を70℃に加熱してから、赤外線吸収剤(IR剤)のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.10重量部添加し混合した後、120℃で溶融した4,4´−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)31.4重量部と脱泡混合した。この混合物を100℃で予備加熱したモールドに注入し、100℃で24時間加熱硬化し、眼鏡用レンズ(偏光膜は不使用)を製造した。この時の混合モル比(NCO/NH2)は1.0であり、得られた眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.6mm)の近赤外分光チャートを図1に示した。
【0069】
図1の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると1.35%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると0.30%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する眼鏡レンズが得られたことがわかる。
【0070】
[実施例2]
実施例1において、レッド系色調(コパー30)の偏光膜をサンドイッチして注型成形し、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.13重量部添加したこと以外は全く同様にして偏光レンズを製造した。得られた偏光眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図2に示した。
【0071】
図2の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると3.93%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると2.27%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する眼鏡レンズが得られたことがわかる。
【0072】
[実施例3]
実施例1において、レッド系色調(コパー30)の偏光膜をサンドイッチして注型成形し、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.15重量部添加したこと以外は全く同様にして偏光レンズを製造した。得られた偏光眼鏡レンズ(レンズ厚さ約1.7mm)の近赤外分光チャートを図3に示した。
【0073】
図3の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると4.79%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると2.27%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する眼鏡レンズが得られたことがわかる。
【0074】
[実施例4]
実施例1において、グレー系色調(TG−15)の偏光膜をサンドイッチして注型成形し、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.10重量部添加したこと以外は全く同様にして偏光レンズを製造した。得られた偏光眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図4に示した。
【0075】
図4の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると7.63%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると6.66%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する眼鏡レンズが得られたことがわかる。
【0076】
[実施例5]
実施例1において、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.20重量部添加したこと以外は全く同様にしてゴーグルの透視性保護面部分(眼鏡レンズ部分)に用いるシートを製造した。得られたゴーグル用シート(シート厚さ1.0mm)の近赤外分光チャートを図5に示した。
【0077】
図5の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると8.14%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると6.36%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有するゴーグル用シートが得られたことがわかる。
【0078】
[実施例6]
実施例5において、レッド系色調(コパー50)の偏光膜をサンドイッチして注型成形したこと以外は全く同様にしてゴーグル用シートを製造した。得られたゴーグル用シート(シート厚さ1.0mm)の近赤外分光チャートを図6に示した。
【0079】
図6の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると5.77%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると3.87%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する偏光ゴーグル用シートが得られたことがわかる。
【0080】
[実施例7]
製造例1で得られたプレポリマーAの100重量部を70℃に加熱してから、赤外線吸収剤(IR剤)のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.10重量部添加し混合した後、120℃で溶融した4,4´メチレン-ビス(2,6-ジエチルアニリン)36.5重量部と脱泡混合した。この混合物を100℃で予備加熱したモールドに注入し、数分のポットライフに応じて速やかに成型を完了させ、100℃で24時間加熱硬化し、眼鏡用レンズ(偏光膜は不使用)を製造した。得られた眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図7に示した。
【0081】
図7の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると3.37%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると0.62%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する眼鏡レンズが得られたことがわかる。
【0082】
[実施例8]
製造例1で得られたプレポリマーAの100重量部を70℃に加熱してから、赤外線吸収剤(IR剤)のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.10重量部添加し混合した後、120℃で溶融した4,4´メチレン-ビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)44.6重量部と脱泡混合した。この混合物を100℃で予備加熱したモールドに注入する際、レッド系色調(コパー30)の偏光膜をサンドイッチして迅速に注型成形し、100℃で24時間加熱硬化し、眼鏡用偏光レンズを製造した。得られた眼鏡用偏光レンズ(レンズ厚さ約2.2mm)の近赤外分光チャートを図8に示した。
【0083】
図8の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると3.95%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると1.35%)であり、赤外線吸収剤の劣化などがなく、所期した優れた赤外線吸収性能を有する眼鏡用偏光レンズが得られたことがわかる。
【0084】
[比較例1]
母材の樹脂として高屈折率樹脂(三井化学製:チオウレタン系樹脂MR−7、屈折率1.67)100重量部に対して、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.13重量部添加し、レッド系色調(コパ−15)の偏光膜をサンドイッチして注型成形して偏光レンズを製造した。得られた偏光眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.4mm)の近赤外分光チャートを図9に示した。
【0085】
図9の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると47.70%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると70.26%)であり、赤外線吸収剤がイオウ系成分と反応して劣化したため、所期した赤外線吸収性能が得られていないことがわかる。
【0086】
[比較例2]
母材の樹脂としてアリルジグリコールカーボネート(CR−39)100重量部に対して、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.13重量部添加し、レッド系色調(コパー30)の偏光膜をサンドイッチして注型成形して偏光レンズを製造した。得られた偏光眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図10に示した。
【0087】
図10の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると58.20%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると81.47%)であり、赤外線吸収剤が過酸化物触媒のIPPと反応し、劣化・分解して所期した赤外線吸収性能が得られていないことがわかる。
【0088】
[比較例3]
実施例1において、レッド系色調(コパー30)の偏光膜をサンドイッチして注型成形し、赤外線吸収剤を添加しなかったこと以外は全く同様にして偏光レンズを製造した。得られた偏光眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図11に示した。
【0089】
図11の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を算出すると52.14%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると78.24%)であり、赤外線吸収性能のない特性の眼鏡レンズが得られたことがわかる。
【0090】
[比較例4]
比較例1において、母材の樹脂として同じ高屈折率樹脂(三井化学製:チオウレタン系樹脂MR−7、屈折率1.67)を用い、赤外線吸収剤を添加せず、偏光膜も用いずに注型成形して眼鏡レンズを製造した。得られた眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.3mm)の近赤外分光チャートを図12に示した。
【0091】
図12の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると46.39%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると69.09%)であり、所期した赤外線吸収性能が得られていないことがわかる。
【0092】
[比較例5]
母材の樹脂として高屈折率樹脂(三井化学製:チオウレタン系樹脂MR−7、屈折率1.67)100重量部に対して、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.15重量部添加し、偏光膜を用いずに注型成形して眼鏡レンズを製造した。得られた眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.3mm)の近赤外分光チャートを図13に示した。
【0093】
図13の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると49.06%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると72.06%)であり、赤外線吸収剤がイオウ系成分と反応して劣化し、所期した赤外線吸収性能が得られていないことがわかる。
【0094】
[比較例6]
比較例2と同様に、母材の樹脂としてアリルジグリコールカーボネート(CR−39)を採用し、赤外線吸収剤は添加せず、偏光膜も使用せずに注型成形して眼鏡レンズを製造した。得られた眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図14に示した。
【0095】
図14の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると61.61%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると86.60%)であり、赤外線吸収性能が得られていないことがわかる。
【0096】
[比較例7]
比較例2と同様に、母材の樹脂としてアリルジグリコールカーボネート(CR−39)100重量部に対して、赤外線吸収剤のジイモニウム系化合物(日本化薬社製:IRG−022)を0.13重量部添加し、偏光膜を使用せずに注型成形して眼鏡レンズを製造した。得られた眼鏡レンズ(レンズ厚さ約2.0mm)の近赤外分光チャートを図15に示した。
【0097】
図15の結果から波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると60.95%(波長780〜1700nmの範囲での赤外線の透過率の平均を調べると85.94%)であり、赤外線吸収剤が過酸化物触媒のIPPと反応して劣化・分解したためか所期した赤外線吸収性能が得られていないことがわかる。
【0098】
以上のように図1〜15の結果からもポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させたプレポリマーと、芳香族ポリアミンとが付加重合反応したポリウレタン樹脂に赤外線吸収剤を添加して成形したレンズのみが、優れた赤外線吸収性能を示し、赤外線吸収剤の劣化や分解などは起こらなかったことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施例1の近赤外分光チャート
【図2】実施例2の近赤外分光チャート
【図3】実施例3の近赤外分光チャート
【図4】実施例4の近赤外分光チャート
【図5】実施例5の近赤外分光チャート
【図6】実施例6の近赤外分光チャート
【図7】実施例7の近赤外分光チャート
【図8】実施例8の近赤外分光チャート
【図9】比較例1の近赤外分光チャート
【図10】比較例2の近赤外分光チャート
【図11】比較例3の近赤外分光チャート
【図12】比較例4の近赤外分光チャート
【図13】比較例5の近赤外分光チャート
【図14】比較例6の近赤外分光チャート
【図15】比較例7の近赤外分光チャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させたプレポリマーと、芳香族ポリアミンとが付加重合反応してなるポリウレタン樹脂組成物に、赤外線吸収色素を含ませた樹脂組成物からなる赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項2】
赤外線吸収色素が、波長780〜2500nmの範囲での赤外線の透過率の平均が30%以下に抑制できるように配合されている請求項1に記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項3】
波長400nm以下の紫外線を吸収する紫外線吸収剤が配合されている請求項1または2に記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項4】
ポリイソシアネートが、4,4´−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)またはイソホロンジイソシアネートである請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項5】
ポリヒドロキシ化合物が、平均分子量700〜1200のポリエーテルジオールもしくはポリエステルジオールまたはこれらの混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項6】
ポリイソシアネートおよびポリヒドロキシ化合物の反応モル比(NCO/OH)が、2.5〜4.0でありかつ生成するポリウレタンプレポリマーのNCO含量が7.0〜14.0%となるようにポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物とを配合した請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項7】
眼鏡用レンズが、透明レンズ、着色レンズまたは偏光レンズである請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項8】
眼鏡用レンズが、サングラス用レンズ、偏光眼鏡用レンズまたはゴーグル用シールドレンズである請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線吸収性眼鏡用レンズ。
【請求項9】
ポリイソシアネートおよびポリヒドロキシ化合物をこれらの反応モル比(NCO/OH)が2.5〜4.0となるように配合し、得られたNCO含量7.0〜14.0%のポリウレタンプレポリマーと芳香族ポリアミンを反応モル比(NCO/NH2 )が1.10〜0.90となるように配合すると共に、赤外線吸収色素を含ませ、これを注型すると共に60〜140℃で硬化することからなるポリウレタン樹脂製の赤外線吸収性眼鏡用レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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