説明

赤外線検知器及びその製造方法

【課題】製造工程を少なくし、材料ロスおよび不良品のロスをなくすことで製造コストを低減し、簡易な構成および製造方法でありながら気密信頼性の高い赤外線検知器およびこれを製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】セラミック容器4の接合部に、環状且つ同心状に分割された2つの容器側メタライズ層6a,6bを形成し、赤外線透過窓材5の接合部に、環状の窓側メタライズ層7を形成し、溶融した溶着金属8を容器外側メタライズ層6bに沿って環状に付着・配置する(a)。次に、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とを真空チャンバ内で荷重をかけながら加熱押圧することで(b)、溶融した溶着金属8を容器内側メタライズ層6aに移動させ、容器内側メタライズ層6aの全面に溶着金属8が行き渡った状態で溶着金属8を冷却して、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とを気密接合する(c)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器に赤外線検知素子を内蔵した赤外線検知器およびその製造方法に関し、特に、真空雰囲気で真空容器と赤外線透過窓材とを溶着金属によって真空封止するにあたり、封止部の気密性を改良する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、赤外線検知器は、赤外線検知素子に入射した赤外線エネルギーによる温度変化を検出するため、入射した赤外線エネルギーが周囲に拡散しないように、赤外線検知素子が封入される内部空間が真空に保持されている。赤外線検知器内部の真空度を短時間で高める技術として、赤外線検知素子が設置されたセラミック容器と蓋材とを真空チャンバ内で溶着する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)、これは、真空チャンバ内の上下に配置されたヒータに、セラミック容器と赤外線透過窓材が取り付けられた蓋材とをそれぞれセットし、これらヒータを加熱することによってセラミック容器に配置されたロウ材を溶融させた状態で両部材を加圧密着させ、ヒータの加熱を停止してロウ材を固まらせることによって赤外線検知器を封止する。
【0003】
また、特許文献1には、セラミック容器と蓋材との接合強度および気密性の向上を図るべく、蓋材にフランジ面を形成することでセラミック容器との接合面積を確保し、ロウ材が配置されるセラミック容器には接合用のメタライズを施し、一方、蓋材側のロウ材と接触する領域にはロウ材との親和性を高める表面処理を施し、フランジのエッジを面取りしておくことによってロウ材がフィレットを形成するように構成した赤外線探知器が開示されている。
【0004】
このような従来の方法では一般に、次のような手順がとられている。図9(a)に示すように、まず、セラミック容器94の上面に容器側メタライズ層96を形成しておき、真空雰囲気で、予備溶融されたIn−Sn系やSn−Ag系などの融点が250℃以下の溶着金属98を容器側メタライズ層96に付着させる。これを一旦大気に戻し、図9(b)に示すように、余分な溶着金属98および表面に形成された酸化膜を旋盤などで切削除去する。次に、このセラミック容器94と、下面に窓側メタライズ層97が形成された赤外線透過窓材95とを真空チャンバ内の所定の位置にセットし、脱ガスのためのベイキング工程を行う。図9(c)に示すように、赤外線透過窓材95をセラミック容器94上に移動し荷重を加えるとともに加熱することで、溶着金属8と窓側メタライズ層97とを溶着し、これを冷却することによってセラミック容器94と赤外線透過窓材95とを封止する。
【特許文献1】特開2003−139616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の赤外線検知器の製造方法では、切削屑による材料ロス(消耗率)が発生する。また、ベイキング工程に長時間を要するため、酸化膜を切削除去した金属界面は封止工程まで純粋なまま維持されず、溶着金属表面の偏析、汚染、ドロス(酸化膜などのはんだカス)などの影響により、溶着金属の気密性が損なわれる虞があった。気密性対策として、溶着金属の溶融中に赤外線透過窓材をスクラブして溶着金属の新たな界面を作り出すことで気密信頼性の向上を図っていたが、リーク不良を完全に排除することはできず、不良品のロスも生じていた。また製造には上述したような多くの工程が必要であるので、製造コストも高くならざるを得なかった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、製造工程数を少なくし、材料ロスおよび不良品のロスを抑えることで製造コストを低減し、簡単な構成および製造方法でありながら気密信頼性の高い赤外線検知器およびこれを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の赤外線検知器では、赤外線検知素子を収容する第1収容部材と、前記第1収容部材に対して環状の接合部をもって接合された赤外線透過性を有する第2収容部材とを備え、前記第1収容部材側の接合部に環状の第1メタライズ層が形成されるとともに、前記第2収容部材側の接合部に環状の第2メタライズ層が形成され、当該第1メタライズ層と第2メタライズ層とが溶着金属によって気密接合されることにより、前記赤外線検知素子が真空封入された赤外線検知器であって、前記第1メタライズ層と前記第2メタライズ層とのいずれか一方が同心状に分割された構成とする。
【0008】
また、請求項2の赤外線検知器では、請求項1に記載の赤外線検知器において、前記同心状に分割されたメタライズ層が、互いに高さの異なる平行平面上に形成された構成とする。
【0009】
また、本発明の請求項3の赤外線検知器の製造方法では、第1収容部材と赤外線透過性を有する第2収容部材とによって真空封止された内部空間に赤外線検知素子を収容した赤外線検知器の製造方法であって、前記第1収容部材の前記第2収容部材が接合される接合部に、環状且つ同心状に分割された複数の分割第1メタライズ層を形成する分割第1メタライズ層形成工程と、前記第2収容部材の前記第1収容部材が接合される接合部に、環状の第2メタライズ層を形成する第2メタライズ層形成工程と、前記分割第1メタライズ層の一方に、溶融した溶着金属を配置する溶着金属予備配置工程と、真空雰囲気で前記第1収容部材と前記第2収容部材とを加熱状態で押圧することで、前記分割第1メタライズ層の他方に前記溶着金属を移動させる溶着金属移動工程と、真空雰囲気で前記溶着金属を冷却して前記第1収容部材と前記第2収容部材とを気密接合する収容部材封止工程とを含む構成とする。
【0010】
また、請求項4の赤外線検知器の製造方法は、請求項3に記載の赤外線検知器において、前記分割第1メタライズ層形成工程では、前記複数の分割第1メタライズ層は、互いに高さの異なる平行平面上に形成され、前記溶着金属予備配置工程では、前記溶着金属は、高さの低い方の分割第1メタライズ層に配置される構成とする。
【0011】
また、本発明の請求項5の赤外線検知器の製造方法は、請求項3の赤外線検知器の製造方法と異なり、赤外線透過性を有する第2収容部材の側に、環状且つ同心状に分割された複数の分割第2メタライズ層を形成する構成とする。
【0012】
また、請求項6の赤外線検知器の製造方法は、請求項5に記載の赤外線検知器において、前記分割第2メタライズ層形成工程では、前記複数の分割第2メタライズ層は、互いに高さの異なる平行平面上に形成され、前記溶着金属予備配置工程では、前記溶着金属は、高さの低い方の分割第2メタライズ層に配置される構成とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、一方のメタライズ層が同心状に分割されたという簡単な構成でありながら、分割されて複数となったメタライズ層の一方が、溶融された溶着金属留め用として利用され、他方が、酸化膜を破り出た純粋な溶着金属による封止用として利用されることで、封止部に不純物を含まない気密信頼性の高い赤外線検知器が得られる。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、分割された複数のメタライズ層の高さに差がつけられることにより、留め用として利用された高さの低い方のメタライズ層に配置された溶着金属が、封止用として利用された高い方のメタライズ層に少量で行き渡るようになり、溶着金属の材料投入量が低減されるとともに、溶着金属を封止用のメタライズ層に行き渡させる工程を容易且つ短時間で行うことが可能な赤外線検知器が得られる。また、高さに差をつけてメタライズ層を分割することにより、請求項1で必要であった分割メタライズ層間の間隔が不要となり、平面視的に少ない範囲で溶着が可能となり、より小型の赤外線検知器が得られる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、第1収容部材に形成するメタライズ層を同心状に分割し、分割された一方を、溶融された溶着金属留め用として利用し、他方を、酸化膜を破り出た純粋な溶着金属による封止用として利用されることで、溶着金属のロスを省くとともに、気密信頼性の高い赤外線検知器を製造することができる。また、溶着金属を配置するためのベイキング工程や、余盛りした溶着金属の切削工程、切削表面のスクラブ工程を行う必要がなくなり、製造工程が簡略化される。このように、材料ロスおよび不良品発生率の低減ならびに工程の簡略化により、低コストで気密信頼性の高い赤外線検知器を製造することができる。
【0016】
また、請求項4の発明によれば、請求項2の発明の効果と同様に、留め用の高さの低い方のメタライズ層に配置された溶着金属が、封止用の高い方のメタライズ層に少量で行き渡るようになり、溶着金属の材料投入量が低減されるとともに、溶着金属を封止用のメタライズ層に行き渡させる工程を容易且つ短時間で行うことが可能となる。
【0017】
さらに、請求項5および請求項6の発明によれば、請求項3および請求項4とは逆に、分割された複数のメタライズ層を第1収容部材ではなく第2収容部材に形成した場合であっても、請求項3および請求項4の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
≪実施形態に係る赤外線検知器の構成≫
図1は実施形態に係る封止前の赤外線検知器の斜視図であり、図2は実施形態に係る赤外線検知器の断面図であり、図3は図2中のa部拡大図である。図1〜図3に示すように、赤外線検知器1は、赤外線検知素子2と、略円筒状のキャビティ3(内部空間)が形成され、そこに赤外線検知素子2を収容する角型のセラミック容器4(第1収容部材)と、セラミック容器4のキャビティ3を気密封止する円形平板状の赤外線透過窓材5(第2収容部材)とから構成されている。
【0020】
赤外線透過窓材5は、ゲルマニウム、シリコン、サファイヤなどの赤外線透過性を有する材料から形成されている。赤外線検知素子2は、赤外線透過窓材5を透過した赤外線による温度変化を検出する。図示は省略するが、赤外線検知素子2は、セラミック容器4に形成された複数のボンティングパッドに複数のワイヤによって電気接続されている。入射した赤外線エネルギーが周囲に拡散しないように、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とによって形成される内部空間(キャビティ3)は、真空状態に気密封止されている。
【0021】
図2,図3に示すように、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とは、環状に配置された溶着金属8によって気密接合されている。溶着金属8には一般に、融点が250℃以下の低融点金属であるIn−Sn系合金やSn−Ag系合金が用いられる。溶着金属8が溶着されるセラミック容器4の平面状の接合部には、同心状に配置された2つの環状のメタライズ層、すなわち容器内側メタライズ層6a(分割第1メタライズ層)と容器外側メタライズ層6b(分割第1メタライズ層)とが形成されている。一方、赤外線透過窓材5の接合部には、環状の窓側メタライズ層7(第2メタライズ層)が形成されている。
【0022】
これらメタライズ層6a,6b,7には、容器がセラミック製の場合は、焼結されたMo、Mn、Tiなどの導電性パターン上に溶着金属8と親和性が大きな材料、例えばNi、Ag、Auなどのメッキが施され、また、容器がゲルマニウム、シリコン、サファイヤ、ガラス材などの場合は、例えば、Cr、Cu、Ni、Ag、Auなどの積層蒸着膜が用いられ、その厚さは数10μm〜100μmに形成される。また、容器側メタライズ層6a,6bの幅は、0.2mm以上且つ10mm以下に形成するのが望ましく、本実施形態では1.5mmとされている。両容器内側メタライズ層6a,6bの間隙は、溶融した溶着金属8の流出を防止するために0.1mm以上とすることが望ましく、本実施形態では0.5mmとされている。
【0023】
窓側メタライズ層7は、容器内側メタライズ層6aの内径と略同一の内径を有し、容器外側メタライズ層6bの内径よりも大きく容器外側メタライズ層6bの外径よりも小さな外径を有しており、容器側メタライズ層6a,6bと略同心状に配置されている。しがたって、平面視において窓側メタライズ層7は、容器内側メタライズ層6aの略全面と重複し、容器外側メタライズ層6bの一部と全周に渡って重複した状態で溶着金属8に溶着されている。
【0024】
溶着金属8は、容器側メタライズ層6a,6b、および窓側メタライズ層7の全面に溶着しており、両メタライズ層6,7に挟まれた部分において、数10〜数100μmの厚さを有しており、容器外側メタライズ層6b上の窓側メタライズ層7と重複しない部分において、上方へ突出した突条を形成している。
【0025】
≪実施形態に係る赤外線検知器の製造方法≫
次に図4を参照して実施形態に係る赤外線検知器1の製造手順について説明する。(a)は溶着金属予備配置工程における赤外線検知器1の断面拡大図を示し、(b)は溶着金属移動工程における赤外線検知器1の断面拡大図を示し、(c)は収容部材封止工程における赤外線検知器1の断面拡大図を示している。なお、図5〜図8においても(a),(b),(c)はそれぞれ図4と同じ工程を示す断面拡大図を示している。
【0026】
まず、セラミック容器4の赤外線透過窓材5が接合される接合部に、環状且つ同心状に分割された2つの容器側メタライズ層6a,6bを形成する(分割第1メタライズ層形成工程)。機能については後述するが、容器外側メタライズ層6bは溶着金属8を所定範囲内に留める目的に利用され、容器内側メタライズ層6aは溶着金属8によってセラミック容器4と赤外線透過窓材5とを封止する目的に利用される。また、前記工程に平行して赤外線透過窓材5のセラミック容器4が接合される接合部に、環状の窓側メタライズ層7を形成する(第2メタライズ層形成工程)。
【0027】
次に(a)に示すように、溶融した溶着金属8を容器外側メタライズ層6bに付着させ、容器外側メタライズ層6bに沿って環状に配置する(溶着金属予備配置工程)。溶着金属8はセラミックとの親和性が低いため、容器外側メタライズ層6b上に留まり、上方に盛り上がった突状となる。つまり、容器外側メタライズ層6bは溶着金属8留めの機能を果たす。なお、本実施形態ではセラミック容器4に予め赤外線検知素子2が収容されている状態から製造工程が開始されているが、赤外線検知素子2の設置およびワイヤボンティングによる電気接続は、分割第1メタライズ層形成工程や溶着金属予備配置工程の後に行われてもよい。
【0028】
次に、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とを真空チャンバ(図示せず)の所定位置にセットし、ベイキング処理を行って真空チャンバ内を真空雰囲気にする。赤外線透過窓材5をジグでセンタリングするとともにマニピュレータで移動し、真空雰囲気でセラミック容器4に荷重をかけながら加熱押圧する。
【0029】
すると(b)に示すように、溶着金属8は溶融し、押圧された部分表面の酸化膜が破れて純粋な新生界面が現れる。この際、ドロスは流動性に欠けるためその場に留まっており、純粋な溶着金属8のみが流動する。溶融した溶着金属8は、親和性の高い窓側メタライズ層7を伝うように図面右側の容器内側へ移動し、容器内側メタライズ層6aに到達する(溶着金属移動工程)。つまり、窓側メタライズ層7は溶着金属8を誘導する機能、或いは、両容器側メタライズ層6a,6bを溶着金属8で連結する機能を果たす。
【0030】
(c)に示すように、容器内側メタライズ層6aおよび窓側メタライズ層7の全面に溶着金属8が行き渡った状態とし、真空雰囲気で溶着金属8を冷却することにより、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とを気密接合する(収容部材封止工程)。上記工程により、セラミック容器4と赤外線透過窓材5とによって真空封止されたキャビティ3に赤外線検知素子2を収容した赤外線検知器1が製造される。
【0031】
≪実施形態による作用効果≫
このように、セラミック容器4に形成した容器側メタライズ層6を同心状に分割し、容器外側メタライズ層6bを溶着金属8留め用として利用し、容器内側メタライズ層6aを溶着金属8による封止用として利用することにより、溶着金属予備配置工程を真空雰囲気で行う必要がなくなる。配置した溶着金属の表面に酸化膜が形成されても、酸化膜および余盛り部分の切削工程、切削面のスクラブ工程を行う必要もない。また、真空雰囲気で溶着金属移動工程を行うことにより、封止用の容器内側メタライズ層6aとその上方部分の窓側メタライズ層7とが、不純物を含まない純粋な溶着金属8によって溶着され、当該封止部の気密性が確保される。
【0032】
また、酸化膜および余盛りの溶着金属8の切削工程が不要であることから、溶着金属予備配置工程を真空チャンバ内での脱ガスベイキング処理と併用することもでき、製造工程がさらに削減される。さらに、封止部の気密信頼性向上による歩留まりの向上および製造工程の簡略化によって製造コストが大幅に低減される。
【0033】
≪第1変形実施形態≫
次に図5を参照して第1変形実施形態に係る赤外線検知器21の構成および製造手順について説明する。なお説明にあたっては、上記実施形態と重複する部分についての説明は省略し、上記実施形態を異なる構成について説明する。また、符号については、上記実施形態のものと機能および構成が同一の要素には同一の符号を使用する。以下の変形実施形態についても同様とする。
【0034】
本変形実施形態では、上述した実施形態と異なり、2つの分割第1メタライズ層(容器内側メタライズ層26a,容器外側メタライズ層26b)のうち内側の第1分割メタライズ層(容器内側メタライズ層26a)に、溶融した溶着金属が予備配置される。窓側メタライズ層27(第2メタライズ層)は、上述した機能を果たすべく、容器内側メタライズ層26aの内径よりも大きく容器内側メタライズ層26aの外径よりも小さな内径を有し、容器外側メタライズ層26bの外径と略同一の外径を有している。したがって、平面視において窓側メタライズ層27は、容器内側メタライズ層26aの一部と全周に渡って重複し、容器外側メタライズ層26bの略全面と重複した状態で溶着金属8に溶着される。容器内側メタライズ層26aは溶着金属8留め用として、容器外側メタライズ層26bは溶着金属8による封止用として利用される。
【0035】
製造工程については、溶着金属予備配置工程において(a)に示すように、溶融した溶着金属8を、容器内側メタライズ層26aに付着させ、予備配置する。溶着金属移動工程では、(b)に示すように、真空雰囲気でセラミック容器4に荷重をかけながら加熱押圧すると、溶融した溶着金属8が窓側メタライズ層27に誘導されて図面左側の容器外側へ移動し、容器外側メタライズ層26bに到達する。
【0036】
≪第2変形実施形態≫
図6を参照して第2変形実施形態に係る赤外線検知器41の構成および製造手順について説明する。本変形実施形態では、上記実施形態および上記第1変形実施形態と異なり、赤外線透過窓材5(第2収容部材)が下側に、セラミック容器4(第1収容部材)が上側に配置されて製造工程が行われる。赤外線透過窓材5の溶着金属8が溶着される接合部には、同心状に配置された2つの環状のメタライズ層、すなわち、窓内側メタライズ層47a(分割第2メタライズ層)と窓外側メタライズ層47b(分割第2メタライズ層)とが形成されている。一方、セラミック容器4の接合部には、環状の容器側メタライズ層46(第1メタライズ層)が形成されている。平面視において容器側メタライズ層46は、窓内側メタライズ層47aの略全面と重複し、窓外側メタライズ層47bの一部と全周に渡って重複した状態で溶着金属8に溶着される。窓内側メタライズ層47aは溶着金属8留め用として、窓外側メタライズ層47bは溶着金属8による封止用として利用される。
【0037】
製造工程としては、まず、赤外線透過窓材5のセラミック容器4が接合される接合部に、環状且つ同心状に分割された2つの窓側メタライズ層47a,47bを形成する(分割第2メタライズ層形成工程)。これに平行してセラミック容器4の赤外線透過窓材5が接合される接合部に、環状の容器側メタライズ層46を形成する(第1メタライズ層形成工程)。溶着金属予備配置工程において、(a)に示すように、溶融した溶着金属8を窓外側メタライズ層47bに付着させ、予備配置する。赤外線透過窓材5がセラミック容器4の下になるように、真空チャンバ内の所定位置にこれらをセットし、セラミック容器4をジグでセンタリングするとともにマニピュレータで移動する。次に溶着金属移動工程において(b)に示すように、真空雰囲気でセラミック容器4の上に荷重をかけながら加熱押圧すると、溶融した溶着金属8は容器側メタライズ層46に誘導されて図面右側の赤外線透過窓材5の中心方向へ移動し、窓内側メタライズ層47aに到達する。
【0038】
≪第3変形実施形態≫
図7を参照して第3変形実施形態に係る赤外線検知器61の構成および製造手順について説明する。本変形実施形態では、上記各実施形態と異なり、セラミック容器64(第1収容部材)に形成されたキャビティ3の開口周縁の上面に、一定高さの環状の凸条69がセラミック容器64と一体形成されている。凸条69の外周面に対する段差は、0.1mm以上且つ5mm以下とするのが望ましく、本実施形態では0.5mmである。凸条69は、その周囲の容器上面と平行平面をなす上面と、当該上面に直角な両側面とから構成されている。凸条69の上面には、容器内側メタライズ層66a(分割第1メタライズ層)が形成されており、凸条69の外周には、容器内側メタライズ層66aの外径と同一寸法の内径を有する容器外側メタライズ層66b(分割第1メタライズ層)が形成され、赤外線透過窓材5との接合部として使用される。一方、赤外線透過窓材5の接合部には、窓側メタライズ層67(第2メタライズ層)が形成されている。窓側メタライズ層67は、容器内側メタライズ層66aの内径と略同一の内径を有し、容器外側メタライズ層66bの内径よりも大きく容器外側メタライズ層66bの外径よりも小さな外径を有している。高さの低い方の容器外側メタライズ層66bが溶着金属8留め用として利用され、高い方の容器内側メタライズ層66aが溶着金属8による封止用として利用される。
【0039】
製造工程としては、まず、セラミック容器64上面の高さの異なる平行平面をなす接合部に、環状且つ同心状に分割された2つの容器側メタライズ層66a,66bを形成する(分割第1メタライズ層形成工程)。これに平行して赤外線透過窓材5のセラミック容器64が接合される接合部に、環状の窓側メタライズ層67を形成する(第2メタライズ層形成工程)。溶着金属予備配置工程において、(a)に示すように、溶融した溶着金属8を、容器内側メタライズ層66aよりも高くなるように、容器外側メタライズ層66bに付着させ、予備配置する。次に溶着金属移動工程において、(b)に示すように、真空雰囲気で赤外線透過窓材5に荷重をかけながら加熱押圧することで、溶融した溶着金属8が窓側メタライズ層67に誘導されて移動し、容器内側メタライズ層66aに到達する。
【0040】
このように、容器内側メタライズ層66aと容器外側メタライズ層66bとを高さの異なる平行平面上に形成することにより、留め用として利用された高さの低い方の容器外側メタライズ層66bに配置された溶着金属8が、封止用として利用された高い方の容器内側メタライズ層66aに少量で行き渡るようになり、溶着金属8の材料投入量が低減される。また、溶着金属8は少量で容器内側メタライズ層66aに行き渡るようになるので、溶着金属移動工程を短時間で行うことが可能となる。
≪第4変形実施形態≫
【0041】
図8を参照して第4変形実施形態に係る赤外線検知器81の構成および製造手順について説明する。本変形実施形態では、上記変形第3実施形態と異なり、セラミック容器84(第1収容部材)のキャビティ3の開口周縁の上面に、一定深さの環状の切欠き89が形成されている。切欠き89の外周面に対する段差は、0.1mm以上且つ5mm以下とするのが望ましく、本実施形態では0.5mmである。切欠き89は、その周囲の容器上面と平行平面をなす底面と、当該底面に直角な外側面とにより構成されている。切欠き89の底面には、容器内側メタライズ層86a(分割第1メタライズ層)が形成されており、切欠き89の外周には、容器内側メタライズ層86aの外径と同一寸法の内径を有する容器外側メタライズ層86b(分割第1メタライズ層)が形成されている。一方、赤外線透過窓材5の接合部には、窓側メタライズ層87(第2メタライズ層)が形成されている。容器内側メタライズ層86aが溶着金属8留め用として利用され、容器外側メタライズ層86bが溶着金属8による封止用として利用される。
【0042】
製造工程として上記第3実施形態と異なる主な点は、溶着金属予備配置工程において、(a)に示すように、溶融した溶着金属8を、容器外側メタライズ層86bよりも高くなるように、容器内側メタライズ層86aに付着させ、予備配置することである。
【0043】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では第1収容部材として、角型の外形に円筒状のキャビティが形成されたセラミック容器を用いているが、円筒状の外形や角型のキャビティ、或いはこれらを組み合わせた形状の容器であってもよい。また、収容の用に供され且つ第2収容部材との組み合わせによって内部空間が形成されるものであれば、キャビティが形成されない平板状のものであってもよい。また、第1収容部材の材料としてセラミックが用いられているが、溶着金属と非親和性であれば、ガラスやステンレススチールなどの金属を用いてもよい。さらに、第2収容部材として平板状の単体の赤外線透過窓材を用いているが、赤外線透過窓材が取り付けられた複数部材から構成される赤外線透過窓アセンブリを用いてもよい。また、ペルチェ素子や、ゲッタ、輻射シールドなどを内蔵した赤外線検知器でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態に係る封止前の赤外線検知器の斜視図
【図2】実施形態に係る赤外線検知器の断面図
【図3】図2中のa部拡大図
【図4】実施形態に係る赤外線検知器の製造工程を示す概略部分断面図
【図5】第1変形実施形態に係る赤外線検知器の別の製造工程を示す概略部分断面図
【図6】第2変形実施形態に係る赤外線検知器の製造工程を示す概略部分断面図
【図7】第3変形実施形態に係る赤外線検知器の製造工程を示す概略部分断面図
【図8】第4変形実施形態に係る赤外線検知器の製造工程を示す概略部分断面図
【図9】従来技術による赤外線検知器の製造工程を示す概略部分断面図
【符号の説明】
【0045】
1,21,41,61,81 赤外線検知器
2 赤外線検知素子
3 キャビティ
4,64,84 セラミック容器(第1収容部材)
5 赤外線透過窓材(第2収容部材)
6a,26a,66a,86a 容器内側メタライズ層(分割第1メタライズ層)
6b,26b,66b,86b 容器外側メタライズ層(分割第1メタライズ層)
46 容器側メタライズ層(第1メタライズ層)
7,27,67,87 窓側メタライズ層(第2メタライズ層)
47a 窓内側メタライズ層(分割第2メタライズ層)
47b 窓外側メタライズ層(分割第2メタライズ層)
8 溶着金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検知素子を収容する第1収容部材と、
前記第1収容部材に対して環状の接合部をもって接合された赤外線透過性を有する第2収容部材とを備え、
前記第1収容部材側の接合部に環状の第1メタライズ層が形成されるとともに、前記第2収容部材側の接合部に環状の第2メタライズ層が形成され、当該第1メタライズ層と第2メタライズ層とが溶着金属によって気密接合されることにより、前記赤外線検知素子が真空封入された赤外線検知器であって、
前記第1メタライズ層と前記第2メタライズ層とのいずれか一方が同心状に分割されたことを特徴とする赤外線検知器。
【請求項2】
前記同心状に分割されたメタライズ層が、互いに高さの異なる平行平面上に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検知器。
【請求項3】
第1収容部材と赤外線透過性を有する第2収容部材とによって真空封止された内部空間に赤外線検知素子を収容した赤外線検知器の製造方法であって、
前記第1収容部材の前記第2収容部材が接合される接合部に、環状且つ同心状に分割された複数の分割第1メタライズ層を形成する分割第1メタライズ層形成工程と、
前記第2収容部材の前記第1収容部材が接合される接合部に、環状の第2メタライズ層を形成する第2メタライズ層形成工程と、
前記分割第1メタライズ層の一方に、溶融した溶着金属を配置する溶着金属予備配置工程と、
真空雰囲気で前記第1収容部材と前記第2収容部材とを加熱状態で押圧することで、前記分割第1メタライズ層の他方に前記溶着金属を移動させる溶着金属移動工程と、
真空雰囲気で前記溶着金属を冷却して前記第1収容部材と前記第2収容部材とを気密接合する収容部材封止工程と
を含むことを特徴とする赤外線検知器の製造方法。
【請求項4】
前記分割第1メタライズ層形成工程では、前記複数の分割第1メタライズ層は、互いに高さの異なる平行平面上に形成され、
前記溶着金属予備配置工程では、前記溶着金属は、高さの低い方の分割第1メタライズ層に配置されることを特徴とする請求項3に記載の赤外線検知器の製造方法。
【請求項5】
第1収容部材と赤外線透過性を有する第2収容部材とによって真空封止された内部空間に赤外線検知素子を収容した赤外線検知器の製造方法であって、
前記第1収容部材の前記第2収容部材が接合される接合部に、環状の第1メタライズ層を形成する第1メタライズ層形成工程と、
前記第2収容部材の前記第1収容部材が接合される接合部に、環状且つ同心状に分割された複数の分割第2メタライズ層を形成する分割第2メタライズ層形成工程と、
前記分割第2メタライズ層の一方に、溶融した溶着金属を配置する溶着金属予備配置工程と、
真空雰囲気で前記第1収容部材と前記第2収容部材とを加熱状態で押圧し、前記分割第2メタライズ層の他方に前記溶着金属を移動させる溶着金属移動工程と、
真空雰囲気で前記溶着金属を冷却して前記第1収容部材と前記第2収容部材とを気密接合する収容部材封止工程と
を含むことを特徴とする赤外線検知器の製造方法。
【請求項6】
前記分割第2メタライズ層形成工程では、前記複数の分割第2メタライズ層は、互いに高さの異なる平行平面上に形成され、
前記溶着金属予備配置工程では、前記溶着金属は、高さの低い方の分割第2メタライズ層に配置されることを特徴とする請求項5に記載の赤外線検知器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−180629(P2008−180629A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14886(P2007−14886)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(592163734)昭和オプトロニクス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】