説明

赤外線通信用発光器

【課題】赤外線LEDを複数使用したときに広角の赤外線通信範囲を限定するようにして、環境光により赤外線通信範囲が影響されにくい赤外線通信用発光器を提供すること。
【解決手段】半値角±20度以上の配光特性を有する複数の赤外線LED3を、赤外線LED3全体での赤外線照射角度が±40度以上となるように外箱1内に配設するとともに、外箱1の前面に、±40度を超える照射角度の赤外線を反射し透過光量を減衰するフィルタ5を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線通信用発光器に関し、特に、環境光により赤外線通信範囲が影響されにくい配光を特定し、赤外線通信範囲を限定するようにした赤外線通信用発光器の赤外線LED取付角度に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線通信用発光器に使用される複数個の赤外線LEDは、赤外線通信用発光器に環境光を計測する回路を設けて、環境光の変化に応じ赤外線通信の光量を変化させるようにした方法、また、環境光の変化による赤外線通信範囲の変化を抑えるために、赤外線受信側に環境光量を計測する回路を設け、環境光の増減により受信した赤外線通信信号の増幅量を変化させて通信を行う方法などが提案されている。
【0003】
ところで、赤外線通信の受光素子として、フォトダイオードやフォトトランジスタなどがあるが、これらの受光特性は受光量に対して直線的でない。また、赤外線LED単体の発光特性は、図5に示すように、山形特性のため環境光が少ない場合は、図6に示すように環境光が多いときに比べ通信範囲が広がってしまうという特性がある。
【0004】
しかしながら、環境光の変化に応じ赤外線通信の光量を変化させる方法は、コスト面で不利になるという問題があった。
また、環境光の増減により受信した赤外線通信信号の増幅率を変化させて通信を行う方法は、受信側に環境光を計測する回路を設ける必要があるため、受信器の消費電力が増えるという問題を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の赤外線通信用発光器のLED取付角度に有する問題点に鑑み、赤外線LEDを複数使用したときに広角の赤外線通信範囲を限定するようにして、環境光により赤外線通信範囲が影響されにくい赤外線通信用発光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の赤外線通信用発光器は、半値角±20度以上の配光特性を有する複数の赤外線LEDを、該赤外線LED全体での赤外線照射角度が±40度以上となるように外箱内に配設するとともに、該外箱の前面に、±40度を超える照射角度の赤外線を反射し透過光量を減衰するフィルタを配設したことを特徴とする。
なお、半値角とは、赤外線LEDの最大出力値が半分の値となる角度のことをいう(一般的には正面が最大出力値になる)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の赤外線通信用発光器によれば、半値角±20度以上の配光特性を有する複数の赤外線LEDを、該赤外線LED全体での赤外線照射角度が±40度以上となるように外箱内に配設するとともに、該外箱の前面に、±40度を超える照射角度の赤外線を反射し透過光量を減衰するフィルタを配設することから、内蔵している赤外線LED全体での赤外線照射角度が±40度を超えても、前面のフィルタにより約±40度の範囲に絞って赤外線通信範囲を限定することができ、これにより、赤外線LEDの取付角度の誤差による影響を少なくするとともに、赤外線LED単品の配光特性の影響も少なくすることができ、また、前記フィルタの透過特性により、赤外線通信範囲が環境光による影響を受けにくくし、さらに赤外線通信用発光器の構造を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の赤外線通信用発光器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0009】
赤外線LEDを複数個配列してなる赤外線通信用発光器は、特に限定されるものではないが、例えば、人等の通過を管理するシステムに使用される。
この通過管理システムは、天井面などの固定側に赤外線通信を行うための赤外線通信用発光器を備えたコントローラを配設する一方、作業者等の人や特定位置を通過する車両に、コントローラ側と通信するタグを配設し、それらの通過を管理するようにしている。
ところで、赤外線通信用発光器を配設する天井高さは、事務所においては約2000〜2500mm程度であり、タグの受信高さは、人に着用する高さとなり、これは人の身長等により多少異なるが、大体1200mm程度であり、この高さ位置のタグが受光するには、天井面に取り付ける赤外線通信用発光器の赤外線照射範囲は、±25度以上の照射範囲が必要である。
【0010】
また、赤外線通信用発光器に複数個の赤外線LEDを使用する場合、従来は、図3に示すように、赤外線LED単体で配光範囲が狭いものを使用する必要があり、広角での赤外線通信範囲にするためには、その配光角度毎に赤外線LEDを配置する必要があり、構造が複雑となるという問題点がある。
これに対し、本発明では、図4に示すように、赤外線LED単体で配光範囲が広いものを使用することで、赤外線の照射範囲を広くする一方、平板フィルタの特性を利用することで、照射範囲を限定するようにしている。
【実施例1】
【0011】
図1〜図2に、本発明の赤外線通信用発光器の一実施例を示す。
実施例における赤外線通信用発光器は、その形状を円盤形とした。この赤外線通信用発光器の外箱1は、表面すなわち赤外線LED3の取付側に、赤外線を透過するようにした平板フィルタ5を着脱自在に取り付け可能とし、さらにこの外箱1内には、円板を4つ割とした形状の4枚の取付板2を図2(A)に示すように、その直線の割線部を互いにつき合わせるようにしてビス4にて取り付けられるようにする。
【0012】
この円板を4つ割とした形状の取付板2には、図2に示すように、赤外線LED単体での照射角度が半値角±20度を超える特性をもった複数個の赤外線LED3を取り付ける。
この場合、各赤外線LED3は取付板2の表面に対しほぼ直角となり、各赤外線LED3は平行するようにして取り付けるとともに、各赤外線LED3のアノード側Aを赤外線通信用発光器の内側になるように配置する。
【0013】
このように、赤外線LED単体での照射角度が±20度以上の赤外線LEDを使用し、かつ4方向に配光させることで、±40度以上の配光特性が得られ、この赤外線通信用発光器の表面に取り付けた平板フィルタ5の反射による透過特性を利用することで、約±38度の配光特性を得ることができる。
また、平板フィルタ5の材質を変更することにより、屈折率がかわり、配光特性を任意の特性とすることができる。
【0014】
かくして、本実施例の赤外線通信用発光器は、半値角±20度以上の配光特性を有する複数の赤外線LED3を、該赤外線LED全体での赤外線照射角度が±40度以上となるように外箱1内に配設するとともに、該外箱1の前面に、±40度を超える照射角度の赤外線を反射し透過光量を減衰するフィルタ5を配設することから、内蔵している赤外線LED全体での赤外線照射角度が±40度を超えても、前面のフィルタ5により約±40度の範囲に絞って赤外線通信範囲を限定することができ、これにより、赤外線LED3の取付角度の誤差による影響を少なくするとともに、赤外線LED単品の配光特性の影響も少なくすることができ、また、前記フィルタ5の透過特性により、赤外線通信範囲が環境光による影響を受けにくくし、さらに赤外線通信用発光器の構造を簡単にすることができる。
【0015】
以上、本発明の赤外線通信用発光器について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の赤外線通信用発光器は、環境光により赤外線通信範囲が影響されにくい配光を特定し、赤外線通信範囲を限定するという特性を有していることから、例えば、入退場の管理や防犯の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の赤外線通信用発光器の一実施例を示し、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図2】複数の赤外線LEDを配列した基板を示し、(A)は4枚の基板を合わせた状態の平面図、(B)は2枚の基板の正面図、(C)は同平面図である。
【図3】配光特性が±8度の狭い赤外線LEDを使用した場合についての、フィルタの反射に伴う角度と減衰の関係を示すグラフである。
【図4】配光特性が±21度の広い赤外線LEDを使用した場合についての、フィルタの反射に伴う角度と減衰の関係を示すグラフである。
【図5】赤外線LEDの配置例における相対強度を示す説明図である。
【図6】赤外線LEDによる受信可能照度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0018】
1 外箱
2 取付板
3 赤外線LED
4 ビス
5 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半値角±20度以上の配光特性を有する複数の赤外線LEDを、該赤外線LED全体での赤外線照射角度が±40度以上となるように外箱内に配設するとともに、該外箱の前面に、±40度を超える照射角度の赤外線を反射し透過光量を減衰するフィルタを配設したことを特徴とする赤外線通信用発光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−238253(P2006−238253A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52392(P2005−52392)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000233206)日立機電工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】