説明

走行型移動体及びその制御方法

【課題】車輪のゴミを十分に除去することができる走行型移動体及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる走行型移動体は、正回転させると第1方向に進行し、逆回転させると第2方向に進行する車輪2と、車輪2の近傍に設けられたブラシ3とを有する。さらに、走行型移動体は、車輪2が正回転する場合、車輪2の第2方向側で、車輪2とブラシ3とを接触させ、車輪2が逆回転する場合、車輪2とブラシ3とを非接触にする制御部5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行型移動体及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
倒立振り子型2輪移動体は、2つの車輪の接地面のみで車体を支え、かつ倒れないように制御をしている。このため、車輪がスリップした場合、4輪や3輪などの他の車輪構成と比較して、倒れる危険性が高い。特に、埃や砂などが車輪接地面に付着するとスリップする可能性が高くなり、これに伴い、倒れる危険性も高くなる。そこで、倒立振り子型2輪移動体等に設けられる車輪の接地面のゴミを払う機構が開示されている(特許文献1−3)。
【0003】
特許文献1に記載の自動車のタイヤブラシには、自動車が走行した際に慣性力が働く。これにより、タイヤブラシが浮き上がり、タイヤの側壁と接触する。特許文献2に記載の自動車のタイヤウォッシャーは、タイヤを洗浄する場合、ブラシをタイヤに接触させる。また、前輪がある角度以上旋回した場合や、車速がある値を超えた場合、ブラシをタイヤに非接触にする。特許文献3に記載の自動車タイヤの泥除去装置は、エアシリンダーを伸ばし、ワイヤブラシをタイヤに接触させる。そして、エアシリンダーを縮めて、ワイヤブラシをタイヤに非接触にする。
【特許文献1】特開平10−217917号公報
【特許文献2】特開平5−178169号公報
【特許文献3】実開平3−15778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、慣性力によってタイヤブラシを浮上させるため、必ず進行方向前方側でタイヤブラシとタイヤが接触する。このため、タイヤのゴミを除去したとしても、進行方向前方側の路面にゴミが落ちてしまうことがある。これにより、再びタイヤにゴミが付着してしまう可能性がある。特許文献2でも、前進する際に、進行方向前方側でタイヤブラシとタイヤが接触する。このため、上記と同様の問題が生じる。
【0005】
また、特許文献2には、タイヤブラシとタイヤとを非接触させる点が開示されている。具体的には、前輪がある角度以上旋回した場合や、車速がある値を超えた場合、すなわちタイヤブラシに負担がかかる場合のみ、これらを非接触にしている。つまり、進行方向前方側でタイヤブラシとタイヤが接触する場合に、非接触にしているわけではない。このため、接触と非接触とを切り替えたとしても、ゴミの再付着が発生する可能性がある。また、特許文献3も同様に、進行方向前方側でタイヤブラシとタイヤが接触する場合に、非接触にしているわけではない。このため、ゴミの再付着が発生する可能性がある。以上のように、特許文献1−3の技術では、タイヤのゴミの除去が十分に行えない。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みるためになされたものであり、車輪のゴミを十分に除去することができる走行型移動体及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる走行型移動体は、正回転させると第1方向に進行し、逆回転させると第2方向に進行する車輪と、前記車輪の近傍に設けられた第1ゴミ除去部と、前記車輪が正回転する場合、前記車輪の前記第2方向側で、前記車輪と前記第1ゴミ除去部とを接触させ、前記車輪が逆回転する場合、前記車輪と前記第1ゴミ除去部とを非接触にする制御部とを有するものである。これにより、車輪のゴミを十分に除去することができる。
【0008】
また、上記の走行型移動体であって、前記車輪の近傍に設けられた第2ゴミ除去部をさらに有し、前記制御部は、前記車輪が正回転する場合、前記車輪と前記第2ゴミ除去部とを非接触にし、前記車輪が逆回転する場合、前記車輪の前記第1方向側で、前記車輪と前記第2ゴミ除去部とを接触させることが好ましい。これにより、車輪のゴミをさらに十分に除去することができる。
【0009】
そして、上記の走行型移動体であって、前記制御部は、前記車輪と前記第1ゴミ除去部、又は前記車輪と前記第2ゴミ除去部が接触して、前記車輪を指定回数回転させた後、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にすることが好ましい。これにより、車輪の磨耗、ゴミ除去部の磨耗、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0010】
なお、上記の走行型移動体であって、前記制御部は、前記車輪を前記指定回数回転させて、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にした後に、指定時間又は指定距離走行すると、前記車輪と非接触になっていた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を接触させることが好ましい。これにより、長時間走行しても、車輪の磨耗等を抑制しつつ、車輪のゴミを十分に除去することができる。
【0011】
本発明にかかる走行型移動体の制御方法は、正回転させると第1方向に進行し、逆回転させると第2方向に進行する車輪を有する走行型移動体の制御方法であって、前記車輪が正回転する場合、前記車輪の前記第2方向側で、前記車輪と第1ゴミ除去部とを接触させるステップと、前記車輪が逆回転する場合、前記車輪と前記第1ゴミ除去部とを非接触にするステップとを有する方法である。これにより、車輪のゴミを十分に除去することができる。
【0012】
また、上記の走行型移動体の制御方法であって、前記車輪が正回転する場合、前記車輪と第2ゴミ除去部とを非接触にし、前記車輪が逆回転する場合、前記車輪の前記第1方向側で、前記車輪と前記第2ゴミ除去部とを接触させることが好ましい。これにより、車輪のゴミをさらに十分に除去することができる。
【0013】
そして、上記の走行型移動体の制御方法であって、前記車輪と前記第1ゴミ除去部、又は前記車輪と前記第2ゴミ除去部が接触した後、前記車輪を指定回数回転させるステップと、前記指定回数回転させた後、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にするステップをさらに有することが好ましい。これにより、車輪の磨耗、ゴミ除去部の磨耗、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0014】
なお、上記の走行型移動体の制御方法であって、前記車輪を前記指定回数回転させて、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にした後に、指定時間又は指定距離走行すると、前記車輪と非接触になっていた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を接触させるステップをさらに有することが好ましい。これにより、長時間走行しても、車輪の磨耗等を抑制しつつ、車輪のゴミを十分に除去することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車輪のゴミを十分に除去することができる走行型移動体及びその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
以下に示す実施の形態では、走行型移動体の一例として、倒立振り子型2輪移動体を説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる倒立振り子型2輪移動体の構成を説明する。図1(a)は、倒立振り子型2輪移動体の構成を示す側面図である。図1(b)は、倒立振り子型2輪移動体の構成を示す正面図である。
【0017】
倒立振り子型2輪移動体は、本体1、車輪2、ブラシ3、及び制御部5を有する。車輪2は、本体1の両側にそれぞれ1つずつ設けられる。そして、車輪2を正回転させると、車輪2は第1方向に進行する。ここでは、車輪2を正回転させると、車輪2は前進する。すなわち、2つの車輪2を共に正回転させると、倒立振り子型2輪移動体は前進する。また、車輪2を逆回転させると、車輪2は第2方向に進行する。ここでは、車輪2を逆回転させると、車輪2は後進する。すなわち、2つの車輪2を共に逆回転させると、倒立振り子型2輪移動体は後進する。それぞれの車輪2近傍には、ゴミ除去部としてのブラシ3が設けられる。ブラシ3は、それぞれの車輪2の後方側に設けられる。ここで、後方側とは、車輪2の第2方向側のことである。すなわち、後方側とは、前進する際の進行方向後方側のことである。また、図1に示されるように、ブラシ3は、路面4近傍に設けられる。それぞれのブラシ3は、略同じ高さに設けられる。
【0018】
制御部5は、車輪2とブラシ3との接触・非接触を切り替える。例えば、制御部5によりブラシ3の位置を変化させることによって、車輪2とブラシ3との接触・非接触を切り替えている。具体的には、制御部5によってブラシ3を車輪2に近づけると、ブラシ3と車輪2が接触する。また、制御部5によってブラシ3を車輪2から遠ざけると、ブラシ3と車輪2が非接触になる。制御部5は、車輪2の回転方向に応じて、車輪2とブラシ3の接触・非接触を切り替えている。具体的には、車輪2が正回転する場合、車輪2の第2方向側で車輪2とブラシ3を接触させる。すなわち、車輪2の進行方向後方側で車輪2とブラシ3を接触させる。そして、車輪2が逆回転する場合、車輪2とブラシ3を非接触にする。なお、制御部5は、それぞれのブラシ3に対して制御を行う。すなわち、一方の車輪2とブラシ3を接触させ、他方の車輪2とブラシ3を非接触にすることができる。
【0019】
次に、倒立振り子型2輪移動体の動作について説明する。まず、図2を参照して、前進する倒立振り子型2輪移動体について説明する。図2(a)は、前進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す側面図である。図2(b)は、前進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。なお、図2(b)では、本体1の図示は省略している。以降、参照する図面において、中抜き矢印は、倒立振り子型2輪移動体の進行方向を表し、細矢印は、車輪2の回転方向を表す。
【0020】
2つの車輪2が共に正回転すると、倒立振り子型2輪移動体が前進する。2つの車輪2が共に正回転しているので、制御部5によって、2つの車輪2と2つのブラシ3がそれぞれ接触するように制御される。また、車輪2の進行方向後方側で、2つの車輪2と2つのブラシ3がそれぞれ接触する。路面4には、埃や砂などのゴミ10aが落ちている。このため、前進する際、車輪2には、ゴミ10aが付着する。車輪2とブラシ3が接触しているので、車輪2に付着したゴミ10aは、ブラシ3によって払われる。進行方向後方側でこれらが接触するため、進行方向後方側の路面4に、ゴミ10bが払われる。すなわち、進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。これにより、払われたゴミ10bが車輪2に再付着することを抑制することができる。すなわち、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0021】
次に、図3を参照して、後進する倒立振り子型2輪移動体について説明する。図3(a)は、後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す側面図である。図3(b)は、後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。なお、図3(b)では、本体1の図示は省略している。以降、参照する図面において、太矢印は、ブラシ3が車輪2から離れる様子を表す。
【0022】
2つの車輪2が共に逆回転すると、倒立振り子型2輪移動体が後進する。2つの車輪2が共に逆回転しているので、制御部5によって、2つの車輪2と2つのブラシ3がそれぞれ非接触となるように制御される。このため、進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。すなわち、ゴミ10の付着を十分に抑制することができる。
【0023】
ここで、図4を参照して、前進の際と同様、後進の際にも、ブラシ3と車輪2とが接触する場合について説明する。図4は、後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。なお、図4では、本体1の図示は省略している。後進する際、車輪2には、ゴミ10aが付着する。このとき、2つの車輪2と2つのブラシ3とがそれぞれ接触している。これにより、車輪2に付着したゴミ10aは、ブラシ3によって払われる。また、前進の場合と異なり、進行方向前方側で車輪2とブラシ3とが接触する。このため、進行方向前方側の路面4に、ゴミ10bが払われる。従って、後進する際に、車輪2は、払われたゴミ10bを踏んでしまい、ゴミ10bが再付着する。
【0024】
このように、車輪2の回転方向に応じて、車輪2とブラシ3との接触・非接触を切り替えない場合、ゴミの付着を十分に抑えることができない。すなわち、車輪2が一方向に回転する場合には、ゴミの付着を十分に抑えることができたとしても、車輪2が他方向に回転する場合には、ゴミの付着を十分に抑えることができない。これに対して、本実施の形態では、車輪2の回転方向に応じて、車輪2とブラシ3の接触・非接触を切り替えるため、ゴミ10の付着を十分に抑えることができる。そして、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0025】
次に、図5を参照して、その場で回転する倒立振り子型2輪移動体について説明する。図5は、その場で回転する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す上面図である。
【0026】
2つの車輪2が逆方向に回転すると、倒立振り子型2輪移動体がその場で回転する。具体的には、一方の車輪2が正回転し、他方の車輪2が逆回転すると、倒立振り子型2輪移動体がその場で回転する。図5においては、右側の車輪2が正回転し、左側の車輪2が逆回転する。また、図5に示されるように、正回転する車輪2は、上面から見ると、ブラシ3から遠ざかる方向に回転する。逆回転する車輪2は、上面から見ると、ブラシ3に近づく方向に回転する。
【0027】
制御部5によって、正回転する車輪2とブラシ3が接触するように制御される。また、車輪2の進行方向後方側で、正回転する車輪2とブラシ3が接触する。車輪2に付着したゴミ10aは、ブラシ3によって払われる。車輪2の進行方向後方側でこれらが接触するため、車輪2の進行方向後方側の路面4に、ゴミ10bが払われる。すなわち、車輪2の進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。これにより、払われたゴミ10bが車輪2に再付着することを抑制することができる。すなわち、ゴミ10の付着を十分に抑制することができる。一方、制御部5によって、逆回転する車輪2とブラシ3が非接触になるように制御される。このため、車輪2の進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。すなわち、ゴミの付着を十分に抑制することができる。そして、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0028】
以上のように、本実施の形態にかかる倒立振り子型2輪移動体は、車輪2の回転方向に応じて、制御部5によって車輪2とブラシ3の接触・非接触を切り替える。すなわち、ゴミ10が車輪2の進行方向後方側に払われるときは、ゴミ10をブラシ3によって払う。そして、ゴミ10が車輪2の進行方向前方側に払われるときは、ゴミ10をブラシ3によって払わない。これにより、車輪2のゴミ10の付着を十分に抑制することができる。そして、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0029】
また、車輪2の接地表面上に、層状にゴミが付着すると、車輪2のグリップ力が低下する。これにより、倒立振り子型2輪移動体は、スリップして倒立制御に必要なトルクを踏面に伝えられず転倒する。本実施の形態にかかる倒立振り子型2輪移動体は、上記のように、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。すなわち、車輪接地面に付着するゴミ10を低減することができる。これにより、長時間走行しても、グリップ力の低下を抑えることができる。そして、スリップが生じにくく、転倒を抑制することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、車輪2の回転方向に応じて、制御部5によって車輪2とブラシ3の接触・非接触を切り替えたが、これに限らない。これに加えて、車輪2の回転数、車輪2とブラシ3の接触時間、走行時間、走行距離等に応じて、接触・非接触を切り替えてもよい。具体的には、車輪2とブラシ3が接触した後、車輪2が2回転したら、車輪2と接触していたブラシ3を非接触にする。そして、所定の時間又は距離を走行したら、車輪2と非接触になっていたブラシ3を再び接触させる。このように、車輪2が正回転であっても、インターバルを置いて、接触させてもよい。これにより、必要以上に車輪2とブラシ3が接触することなく、車輪2の磨耗、ブラシ3の磨耗、エネルギー効率の低下を抑制することができる。また、長時間走行しても、車輪の磨耗等を抑制しつつ、車輪のゴミを十分に除去することができる。
【0031】
さらに、起動直後、車輪2が正回転の場合、車輪2とブラシ3を接触させてもよい。これは、電源OFF時の手押し移動を想定したものである。すなわち、電源OFFにして手押しにしている場合、車輪2にはゴミ10aが付着している。このため、起動直後には、車輪2とブラシ3を接触させてゴミ10aを払う。また、略停止状態、すなわち車輪回転微低速時には、車輪2とブラシ3を非接触にしてもよい。
【0032】
なお、本実施の形態では、人搭乗型倒立2輪ロボット等の倒立振り子型2輪移動体について説明したがその他の走行型移動体でもよい。例えば、2つ以上の車輪を有する走行型移動体でもよい。また、人搭乗型倒立2輪ロボット等の場合、補助輪を設けてもよい。例えば、人が搭乗しているときは2輪で走行し、降車後は補助輪を接地させてもよい。また、この場合、補助輪接地状態(非倒立2輪状態)では、全ての車輪2とブラシ3を非接触にしてもよい。すなわち、降車後、全ての車輪2とブラシ3を非接触にしてもよい。これにより、車輪2とブラシ3との摩擦が生じないので、降車後に人搭乗型倒立2輪ロボットを手押ししやすくなる。
【0033】
このように、様々な条件に応じて、制御部5によって車輪2とブラシ3との接触・非接触を切り替えてもよい。もちろん、上記の条件は組み合わせてもよいし、ブラシ3ごとに条件を替えてもよい。
【0034】
実施の形態2.
本実施の形態では、1つの車輪2につき、複数のブラシ3を有する。なお、それ以外の構成・動作等は、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。まず、図6を参照して、本実施の形態にかかる倒立振り子型2輪移動体の構成を説明する。図6は、倒立振り子型2輪移動体の構成を示す側面図である。
【0035】
倒立振り子型2輪移動体は、本体1、車輪2、ブラシ3、及び制御部5を有する。それぞれの車輪2の前方及び後方にゴミ除去部としてのブラシ3が1つずつ設けられる。具体的には、ブラシ3は、車輪2近傍であって、車輪2の前方側及び後方側にそれぞれ設けられる。なお、ここでの前方側とは、車輪2の第1方向側のことである。すなわち、前方側とは、前進する際の進行方向前方側のことである。また、後方側とは、車輪2の第2方向側のことである。すなわち、後方側とは、前進する際の進行方向後方側のことである。以降、前方側のブラシ3を前方ブラシ3a、後方側のブラシ3を後方ブラシ3bとする。図6に示されるように、ブラシ3は、路面4近傍に設けられる。2つの前方ブラシ3aと2つの後方ブラシ3bは、略同じ高さに設けられる。
【0036】
制御部5は、車輪2とブラシ3との接触・非接触を切り替える。制御部5は、車輪2の回転方向に応じて、車輪2とブラシ3との接触・非接触を切り替えている。具体的には、車輪2が正回転する場合、車輪2の第2方向側で車輪2と後方ブラシ3bを接触させ、車輪2と前方ブラシ3aを非接触にする。すなわち、車輪2の進行方向後方側で車輪2と後方ブラシ3bを接触させる。そして、車輪2が逆回転する場合、車輪2の第1方向側で車輪2と前方ブラシ3aを接触させ、車輪2と後方ブラシ3bを非接触にする。すなわち、車輪2の進行方向後方側で車輪2と前方ブラシ3aを接触させる。また、制御部5は、それぞれのブラシ3に対して制御を行う。
【0037】
次に、倒立振り子型2輪移動体の動作について説明する。まず、図7を参照して、前進する倒立振り子型2輪移動体について説明する。図7は、前進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。なお、図7では、本体1の図示は省略している。
【0038】
2つの車輪2が共に正回転すると、倒立振り子型2輪移動体が前進する。2つの車輪2が共に正回転しているので、制御部5によって、2つの車輪2と2つの後方ブラシ3bがそれぞれ接触するように制御される。そして、制御部5によって、2つの車輪2と2つの前方ブラシ3aがそれぞれ非接触になるように制御される。すなわち、車輪2の進行方向後方側のみで、車輪2とブラシ3が接触するように制御される。このため、進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。これにより、払われたゴミ10bが車輪2に再付着することを抑制することができる。すなわち、ゴミ10の付着を十分に抑制することができる。そして、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0039】
次に、図8を参照して、後進する倒立振り子型2輪移動体について説明する。図8は、後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。なお、図8では、本体1の図示は省略している。
【0040】
2つの車輪2が共に逆回転すると、倒立振り子型2輪移動体が後進する。2つの車輪2が共に逆回転しているので、制御部5によって、2つの車輪2と2つの前方ブラシ3aがそれぞれ接触するように制御される。また、制御部5によって、2つの車輪2と2つの後方ブラシ3bがそれぞれ非接触になるように制御される。すなわち、車輪2の進行方向後方側のみで、車輪2とブラシ3が接触するように制御される。このため、進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。すなわち、ゴミ10の付着を十分に抑制することができる。そして、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0041】
次に、図9を参照して、その場で回転する倒立振り子型2輪移動体について説明する。図9は、その場で回転する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す上面図である。
【0042】
2つの車輪2が逆方向に回転すると、倒立振り子型2輪移動体がその場で回転する。具体的には、一方の車輪2が正回転し、他方の車輪2が逆回転すると、倒立振り子型2輪移動体がその場で回転する。図9においては、右側の車輪2が正回転し、左側の車輪2が逆回転する。正回転する車輪2においては、制御部5によって、車輪2と後方ブラシ3bが接触するように制御され、車輪2と前方ブラシ3aが非接触になるように制御される。また、逆回転する車輪2においては、制御部5によって、車輪2と前方ブラシ3aが接触するように制御され、車輪2と後方ブラシ3bが非接触になるように制御される。
【0043】
図9に示されるように、上面から見ると、それぞれの車輪2の回転方向側では車輪2とブラシ3が離れている。すなわち、車輪2とブラシ3が非接触となっている。また、それぞれの車輪2の反回転方向側では車輪2とブラシ3が接触している。すなわち、車輪2の進行方向後方側のみで、車輪2とブラシ3が接触する。このため、それぞれの車輪2の進行方向前方側には、ゴミ10bが払われない。すなわち、ゴミ10の付着を十分に抑制することができる。そして、車輪2のゴミ10の除去を十分に行うことができる。
【0044】
次に、制御部5の動作について説明する。すなわち、倒立振り子型2輪移動体の制御方法について説明する。図10は、制御部5の動作を示すフローチャートである。まず、倒立振り子型2輪移動体が2輪倒立状態か否かを判断する(ステップS1)。すなわち、補助輪等を接地せず、人が搭乗状態か否かを判断する。2輪倒立状態である場合、車輪2が正回転か否かを判断する(ステップS2)。車輪2が正回転である場合、車輪2に後方ブラシ3bを接触させる(ステップS3)。具体的には、制御部5によって、車輪2に後方ブラシ3bを近づける。これにより、進行方向後方側で車輪2と後方ブラシ3bが接触し、後方ブラシ3bによって車輪2のゴミ10aが払われる。なお、このとき、車輪2と前方ブラシ3aは非接触である。
【0045】
車輪2に後方ブラシ3bを接触させた後、指定回数以上回転したか否かを判断する(ステップS4)。指定回転数は、車輪2にブラシ3を接触させた後、離すまでの回転数のことである。これは、予め使用者等によって設定される。指定回数以上回転させた場合、車輪2と接触していたブラシ3を非接触とする(ステップS5)。具体的には、制御部5によって、車輪2から後方ブラシ3bを遠ざける。これにより、車輪2と後方ブラシ3bが非接触となる。また、上記のように、車輪2と前方ブラシ3aは、もともと非接触であったので、この車輪2については、全てのブラシ3が非接触となる。そして、指定時間又は指定距離を走行した後、ステップS1から同様の工程を繰り返す。すなわち、指定時間又は指定距離を走行した後、所定の条件を満たしていたら(ステップS2でYes)、非接触となっていた車輪2とブラシ3を再び接触させる。ここで、指定時間、指定距離とは、車輪2にブラシ3を接触させた後、離すまで走行した時間又は距離のことである。これは、予め使用者等によって設定される。
【0046】
また、2輪倒立状態でない場合(ステップS1でNo)、車輪2とブラシ3を非接触とする(ステップS6)。具体的には、全ての車輪2について、全てのブラシ3が非接触となる。車輪2が正回転でない場合(ステップS2でNo)、車輪2が逆回転か否かを判断する(ステップS7)。車輪2が逆回転である場合、前方ブラシ3aを接触させる(ステップS8)。具体的には、制御部5によって、車輪2に前方ブラシ3aを近づける。これにより、車輪2と前方ブラシ3aが接触し、前方ブラシ3aによって車輪2のゴミ10aが払われる。なお、このとき、車輪2と後方ブラシ3bは非接触である。その後、ステップS4から同様の工程を行う。また、車輪が逆回転でない場合(ステップS7でNo)、車輪2とブラシ3を非接触とする(ステップS5)。すなわち、この車輪2について、全てのブラシ3が非接触となる。また、指定回数以上回転していない場合(ステップS4でNo)、ステップS1から同様の工程を繰り返す。すなわち、指定回数以上回転する前であっても、例えば車輪2の回転方向等が変わったら、車輪2と接触していたブラシ3を非接触にする。
【0047】
以上のように、本実施の形態にかかる倒立振り子型2輪移動体は、1つの車輪2につき、複数のブラシ3を設ける。また、複数のブラシ3は、少なくとも前方側に1つ、後方側に1つ設ける。そして、進行方向後方側のブラシ3のみ、車輪2に接触させる。このような構成により、正回転のみならず、逆回転のときも、払われたゴミ10bの再付着を抑制しながら、ブラシ3により車輪2のゴミ10aを払うことができる。このため、実施の形態1と比較して、よりよい効果を得ることができる。
【0048】
なお、実施の形態1では、本実施の形態の後方ブラシ3bに相当するブラシ3が設けられ、本実施の形態では、前方ブラシ3aと後方ブラシ3bとを設けたがこれに限らない。例えば、後方ブラシ3aのみを用い、上記のように制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1にかかる倒立振り子型2輪移動体の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1にかかる前進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1にかかる後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す図である。
【図4】後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。
【図5】実施の形態1にかかるその場で回転する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す上面図である。
【図6】実施の形態2にかかる倒立振り子型2輪移動体の構成を示す側面図である。
【図7】実施の形態2にかかる前進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。
【図8】実施の形態2にかかる後進する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す拡大側面図である。
【図9】実施の形態2にかかるその場で回転する倒立振り子型2輪移動体の構成を示す上面図である。
【図10】実施の形態2にかかる制御部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 本体、2 車輪、3 ブラシ、3a 前方ブラシ、3b 後方ブラシ、4 路面、
5 制御部、10、10a、10b ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正回転させると第1方向に進行し、逆回転させると第2方向に進行する車輪と、
前記車輪の近傍に設けられた第1ゴミ除去部と、
前記車輪が正回転する場合、前記車輪の前記第2方向側で、前記車輪と前記第1ゴミ除去部とを接触させ、前記車輪が逆回転する場合、前記車輪と前記第1ゴミ除去部とを非接触にする制御部とを有する走行型移動体。
【請求項2】
前記車輪の近傍に設けられた第2ゴミ除去部をさらに有し、
前記制御部は、前記車輪が正回転する場合、前記車輪と前記第2ゴミ除去部とを非接触にし、前記車輪が逆回転する場合、前記車輪の前記第1方向側で、前記車輪と前記第2ゴミ除去部とを接触させる請求項1に記載の走行型移動体。
【請求項3】
前記制御部は、前記車輪と前記第1ゴミ除去部、又は前記車輪と前記第2ゴミ除去部が接触して、前記車輪を指定回数回転させた後、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にする請求項1又は2に記載の走行型移動体。
【請求項4】
前記制御部は、前記車輪を前記指定回数回転させて、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にした後に、指定時間又は指定距離走行すると、前記車輪と非接触になっていた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を接触させる請求項3に記載の走行型移動体。
【請求項5】
正回転させると第1方向に進行し、逆回転させると第2方向に進行する車輪を有する走行型移動体の制御方法であって、
前記車輪が正回転する場合、前記車輪の前記第2方向側で、前記車輪と第1ゴミ除去部とを接触させるステップと、
前記車輪が逆回転する場合、前記車輪と前記第1ゴミ除去部とを非接触にするステップとを有する走行型移動体の制御方法。
【請求項6】
前記車輪が正回転する場合、前記車輪と第2ゴミ除去部とを非接触にし、
前記車輪が逆回転する場合、前記車輪の前記第1方向側で、前記車輪と前記第2ゴミ除去部とを接触させる請求項5に記載の走行型移動体の制御方法。
【請求項7】
前記車輪と前記第1ゴミ除去部、又は前記車輪と前記第2ゴミ除去部が接触した後、
前記車輪を指定回数回転させるステップと、
前記指定回数回転させた後、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にするステップをさらに有する請求項5又は6に記載の走行型移動体の制御方法。
【請求項8】
前記車輪を前記指定回数回転させて、前記車輪と接触していた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を非接触にした後に、
指定時間又は指定距離走行すると、前記車輪と非接触になっていた前記第1ゴミ除去部又は前記第2ゴミ除去部を接触させるステップをさらに有する請求項7に記載の走行型移動体の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−214657(P2009−214657A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59306(P2008−59306)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】