説明

走行支援装置および走行支援方法

【課題】 車両周囲の建造物や壁などの影響により、通信エリアが狭められるようなことがあったとしても、交差点での安全かつスムーズな合流を実現するための走行支援装置を提供する。
【解決手段】 自車両周囲の建造物等の影響で、他車両との通信範囲が狭く、通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定を行う合流支援モードでの効果的な走行支援の実行が困難な場合には、メッセージ情報の授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を提供する頭出し支援モードでの走行支援を実行することができ、頭出し支援モードでの走行支援によって、合流支援モードでの走行支援を効果的に実行可能な位置まで、自車両の頭出し運転操作を安全に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行支援装置、特に、交差点での安全かつスムーズな進入を可能にするための走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車輌の走行に影響を与えることが予想される他車輌を特定し、当該他車輌との間で運転者の意志情報を双方向で通信する車車間通信装置が従来より提案されている(例えば、特許文献1)。この提案では、交通状況を判断した運転者の発した音声に応答して車車間通信が起動し開設される。この車車間通信によって、自車両の走行に影響を及ぼすと思われる他車両の運転者と音声(認識)に基づく双方向通信を行い、該当する車両相互間での意思疎通を可能にし、円滑な交通を実現しようとするものであるとされている。
【特許文献1】特開2002−183889(段落0004〜段落0005、図2、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上掲の従来の技術によれば、自車両の走行に影響を及ぼすと考えられる他車両との間で、時間的および距離的に前もってコミュニケーションを行い、円滑な交通の実現を試みるものである。一方、車々間通信には、車両周囲の建造物や壁などの影響により、通信エリアが狭くなってしまう問題がある。従って、この従来技術が有効に機能することが特に望まれる見通し不良な出会い頭交差点等における通信エリアは、注目すべき他車両との間でコミュニケーションを行うには不十分であり、システムが本来目的とする円滑な交通の実現が困難な場合があった。
【0004】
しかしながら、特許文献1では上述のような電波の伝播について障害となるような構造物が存在するような場合への対処については別段の提案がなされていない。
本発明は、上述のような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両周囲の建造物や壁などの影響により、通信エリアが狭められるようなことがあったとしても、交差点での安全かつスムーズな合流を実現するための走行支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するべく、本願では次のような技術を提案する。
例えば、適宜のサンプリング周期の、毎回の現在時点等に該当する、異なる複数の時点で、それぞれ自車両および他車両の各位置を認識して該認識に係るデータを保持し、これらのデータに依拠する等して自車両および他車両の進路が交差する交差位置を予測する。
前記自車両および他車両が当該交差位置に向かうに際して、前記自車両における走行支援を、走行支援モード選択実行手段によって、車車間通信等の通信手段による自車両および他車両間でのメッセージ情報の授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モードと、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モードとの双方の走行支援モードのうちの何れかの走行支援モードで選択的に実行するようにし、走行支援モード切換え手段によって、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置に到達するまでに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、実行する走行支援モードを、前記頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換えるようにするというものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車車間通信等の通信手段による自車両および他車両間でのメッセージ情報の授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モードと、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モードとの双方の走行支援モードを用意しておき、
前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が双方の車両の移動軌跡が交差すると予測される当該交差位置に到達するまでに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、実行する走行支援モードを、前記頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換えるように構成としたので、自車両周囲の建造物等の影響で、他車両との通信範囲が狭く、合流支援モードでの効果的な走行支援の実行が困難な場合には、頭出し支援モードでの走行支援を実行することができ、頭出し支援モードでの走行支援によって、合流支援モードでの走行支援を効果的に実行可能な位置まで自車両の頭出し行為を安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実行の形態を図面を参照して説明する。尚、以下に参照する図においては、便宜上、説明の主題となる要部は適宜誇張し、要部以外については適宜簡略化し乃至省略されている。
図1は、本発明の実行の形態としての走行支援装置の要部のブロック図である。この走行支援装置(その要部)100は、車両の所定部位に適切な使用環境が維持され得る形態で装備され、自己に接続されるデバイスを含んで構成される系全体を統括的に制御するシステムコントローラとして機能し得るようにマイクロプロセッサを主体に構成された処理装置101には、この処理装置101と各種のデータおよび命令を授受し車両の状況や制御に係る各種のデータを読み出し可能に保持する記憶装置102が接続されている。
【0008】
また、処理装置101には、車車間通信装置103が接続されており、この車車間通信装置103によって他車両と車車間通信を通して各種の情報(データ)の授受を行い得る。
後述するように、この車車間通信装置103は、自車両から他車両に対してその進路への侵入の可否を確認(打診)するための譲歩依頼メッセージを発信するための手段としても機能し、他車両からこのような打診のメッセージが発信されたときには通信可能領域にあるときに当該メッセージを受信してその打診に対する応答メッセージを発信するように機能し得る。
【0009】
更に、路側装置との通信を行う路車間通信装置104、カーナビゲーションシ装置105(自車両の現在位置を認識する機能、目的地への経路を案内する機能を備える)、カーナビゲーションシ装置105の表示部と車車間通信および路車間通信の通信内容等の表示部並びに自車両での監視対象各部位の状態に係る表示部等を兼ねインストルメントパネルの中央部位等の適所に設置され、運転者その他の乗員に対する情報提供装置として機能する表示装置106も、この処理装置101に接続されている。
【0010】
また、車車間通信装置103を通して他車両とメッセージの授受を行うに際して、発信を意図する定型の(或いは、予め設定した)メッセージの選択・決定操作を行うメッセージ選択決定操作部107、自車両の方向指示器の操作状態、ステアリングの舵角やアクセルペダルやブレーキペダルの操作ストローク等の運転操作量を感知する運転操作量感知装置108の出力端、自車両の車速および加減速度を認識するための車両状態認識装置109、の各出力端も、この処理装置101に接続されている。
尚、その他、自車両に装備された装置を用いるための操作等を行うべく車両の適所に配された操作器110も、この処理装置101に接続され、この操作器110から処理装置101を通して該当する各装置との所要のマンマシンインターフェースが計られる。
【0011】
上述の構成において、処理装置101に接続された各装置のうち、一の装置の機能は他の装置の機能と、別異の物象の状態の量に依拠しつつ類似の機能を果たし、或いはまた、相補的に作用するが、何れの場合も処理装置101によって系全体が統括的に制御されて調和的に作動し得る。例えば、自車両の位置情報、駐車場周りの運転操作に関する補助的情報、地図情報、有料道路に関する情報、給油所その他の施設や店舗に関する案内情報等々の車両の運行の便宜に係る種々の情報が、路車間通信装置103および/またはカーナビゲーションシ装置105を所要に応じて相補的に活用して、処理装置101で収集されるように構成されている。
【0012】
尚、図1の走行支援装置は、自車両に設けられ検出乃至認識を行う各装置によって各種のデータを収集する他に、別途、車車間通信装置103による車車間通信を通して、他車両から、例えば、その車両の位置情報、車両の速度および加減速度に関するデータ(自車両に装備されたものと同様に当該他車両に設けられた車両状態認識装置によって認識され、その車両の処理装置から車車間通信装置を通して送信されたデータ)の供給を受けられように構成されている。
【0013】
図1の構成において、カーナビゲーションシ装置105(或いは、更に、所定の路側装置との通信を行う路車間通信装置104、および、処理装置101の該当する機能部をも含む構成)によって自車両の位置を認識する自車両位置認識手段が構成される。
また、車車間通信装置103、および、処理装置101の該当する機能部によって、他車両の位置を認識する他車両位置認識手段が構成される。
【0014】
更に、車車間通信装置103、および、処理装置101の該当する機能部(或いは、更に、カーナビゲーションシ装置105、および、表示装置106をも含む構成)によって、所定時点で当該所定時点以降の前記自車両および他車両の各移動軌跡を予測して当該予測による移動軌跡の交差位置を推定する移動軌跡予測手段が構成される。
更に、車車間通信装置103、および、表示装置106、ならびに、メッセージ選択決定操作部107によって、前記自車両から前記他車両に対して自車両側で選択したメッセージを担うメッセージ信号を含み得る信号を送信し他車両からのメッセージ信号を含み得る信号を受信することが可能な通信手段が構成される。
【0015】
一方、前記自車両および他車両が当該交差位置に向かうに際して、前記通信手段によるメッセージの授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モードと、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モードとを含む何れかの走行支援モードを選択的に実行可能な走行支援モード選択実行手段が、処理装置101の該当する機能部と操作と表示の機能に係る関連各部によって構成される。
【0016】
更に、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、前記走行支援モード選択実行手段によって実行される走行支援モードを、頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換える走行支援モード切換え手段が、処理装置101の該当する機能部によって構成される。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態における走行支援を適用する状況の一例を説明するための図である。図示の状況において、自車両Aが交差点CRSの非優先道230側で優先道路260へ左折での進入を試みている。このとき、優先道路260上を自車両Aの右方向から他車両Bと他車両Cが交差点CRSに向かってそれぞれ40[km/h]で走行している。交差点CRSの周囲には建造物BU1,BU2,BU3,BU4,BU5,BU6,BU7,BU8,…が立ち並んでおり、自車両Aは交差点CRSから少し離れた手前の位置に一時停止している。このとき、建造物BU1,BU2,…による遮蔽効果などによって、自車両Aと他車両の通信が開始する範囲Z2はおよそ20[m]である。この状況では、他車両Bとの通信は行えるが、他車両Cとの通信は行えない。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態における走行支援を適用する状況の他の例を説明するための図である。図示の状況において、自車両Aが交差点CRSの非優先道230側で優先道路260へ左折での進入を試みている。このとき、優先道路260上を自車両Aの右方向から他車両Cと他車両Dが交差点CRSに向かってそれぞれ40[km/h]で走行している。交差点の周囲には建造物BU1,BU2,BU3,BU4,BU5,BU6,BU7,BU8,…が立ち並んでいる。しかし、自車両Aは、図2におけるよりも交差点に極めて接近した位置に一時停止している。この状況では、自車両Aと他車両の通信が開始する範囲Z3はおよそ100[m]である。そのため、他車両C、他車両Dとも通信が行える。
【0019】
尚、図2および図3において、各車両について、上述の移動軌跡予測手段によって予測される移動軌跡(部分)が破線(矢線)で示され、移動軌跡の交差位置が参照符号INTで示されている。尚、本明細書において、一方の移動軌跡が他方を横断する場合のみならず、一方の延長上に他方が合流するときの当初の重複位置も、この「交差位置」に該当するものとする。
【0020】
図4は、図1中の処理装置における処理手順の一例を表すフローチャートである。図4において、ステップS401では、自車両が車車間通信装置103を介して自車両周辺に存在する他車両の情報を受信する。処理装置101は、車車間通信装置103が他車両の情報を受信した場合、即時に受信内容を参照し、項目毎に情報を分割して記憶装置102へ格納する。本例では、車車間通信装置103を通して、他車両情報としての、各他車両の位置、車速および運転者が伝達したいメッセージコード等が入手可能である。また、通信可能な他車両の台数は特に制限せず、車々間通信装置103の通信範囲内で自車両周辺に存在する車々間通信装置装備車両全車からの情報を収集可能なものとする。
【0021】
次いで、ステップS401で取得した他車両情報から当該他車両が自車両の通行に影響がある車両であるかどうかを判断する(ステップS402)。具体的には、当該他車両に関して上述の移動軌跡予測手段によって予測される移動軌跡が自車両の移動軌跡と交差する関係にあるかどうかを自車両と当該他車両の位置関係および進行方向とから判断する。
自車両と当該他車両の移動軌跡が交差すると予測される場合は、当該他車両が自車両の通行に影響がある車両であると判断し、ステップS403へ進む。
一方、自車両の通行に影響のある車両が無い場合には、ステップS401へ戻り、処理を繰り返す。既述の図2の状況では、他車両Bが自車両Aの通行に影響がある接近車両と認識され、図3の状況では、他車両Cと他車両Dが自車両Aの通行に影響のある接近車両と認識される。
【0022】
次いで、ステップS404では、自車両Aおよび他車両の移動軌跡の交差位置INTを算出する。交差位置INTの算出は、例えば、2つの移動軌跡たる直線の交点を求めるための次の式(1),(2)に各該当する車両の座標位置と進行方向とを当てはめて実行する。即ち:
X=(tAnθ1・X1−tAnθ2・X2+Y2−Y1)/(tAnθ1−tAnθ2)……(1)
Y=tAnθ2(X−X2)+Y2……(2)
(但し、 X:交差位置INTのx座標 Y:交差位置INTのy座標 X1:自車両のx座標 Y1:自車両のy座標 θ1:自車両の向き X2:該当する他車両のx座標 Y2:該当する他車両のy座標 θ2:該当する他車両の向き)
【0023】
次いで、ステップS404で、自車両の交差位置INTまでの距離D1、該当する他車両の交差位置INTまでの距離D2を算出する。距離D1、D2の算出は、例えば、次の式(3),(4)に交差位置Cの座標位置と各該当する車両の座標位置とを当てはめて実行する。
即ち:
1={(X−X12+(Y−Y121/2……(3)
2={(X−X22+(Y−Y221/2……(4)
【0024】
次いで、ステップS405で、ステップS404で求めた各他車両の交差位置INTまでの距離が最も遠い車両の認識を行う。既述の図2の場合では、自車両Aが通信を行っている車両は他車両Bのみなので、交差位置INTから最も離れた接近車両は、他車両Bである。一方、図3の場合には、自車両Aが通信を行っている車両は他車両Cと他車両Dの2台であるが、交差位置INTから最も離れた接近車両は、他車両Dである。
【0025】
更に、次のステップS406では、ステップS405で求めた交差位置INTから最も離れた他車両が自車両との交差位置INTに到達するまでの所要時間TTC2を算出する。所要時間TTC2の算出には、他車両の交差位置INTまでの距離D2と車速V2および加減速度α2を利用する。ここで、加速度α2の認識は、車速V2の微分値として算出することとする。なお、このように自車両側で演算によって加速度算出するほか、車車間通信装置103を介して他車両から直接加速度を送信して貰っても良い。
【0026】
次いで、ステップS407では、ステップS406で求めた他車両が交差位置INTに到達するまでの時間をもとに、自車両の運転者へ実施する運転支援を決定する。
具体的には、他車両が交差位置INTに到達するまでの時間と、合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間を比較し、他車両が交差位置INTに到達するまでの時間が合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間より長い時間であるという関係が成り立つ場合は、合流支援モードでの走行支援を実行し、そうでない場合は、頭出し支援モードでの走行支援を実行することを決定する。
なお、合流支援モードとして複数通りの合流支援サブモードが用意されている場合には、それぞれの合流支援サブモードについてそれらの合流支援サブモードでの走行支援実行時間と他車両が交差位置INTに到達するまでの時間とを比較する。
【0027】
本例では、「合流支援」機能として、第1の合流支援サブモードとして、他車両と自車両との間で合流の譲歩に関するメッセージの交換を行う合流支援サブモードと、第2の合流支援サブモードとして、他車両の交差位置INTまでの距離、車速および加減速度から自車両が合流する際の危険度を推定する合流支援サブモードと、の2種類のモードを用意するものとする。端的に言えば、上述の第1の合流支援サブモードはメッセージ伝達機能を主体とするものであることを特徴とし、第2の合流支援サブモードは危険度推定機能を主体とするものであることを特徴としている。
【0028】
ここで、第1の合流支援サブモードにおけるメッセージ伝達機能に関しては、自車両運転者の送信メッセージの選択時間、他車両運転者の受信メッセージの認識時間、および、他車両運転者側での送信メッセージの選択時間、さらには、車両間の通信に掛かる時間や情報の表示に掛かる時間等を考慮すると、およそ5秒程度の時間が実行時間として要求されることになる。
【0029】
また、第2の合流支援サブモードにおける危険度推定機能に関しては、危険度推定の演算に掛かる時間、運転者へ危険度を情報提供する時間、および、運転者が危険度を認識する時間などで、およそ3秒程度の時間が実行時間として要求されることになる。
一方、頭出し支援モードでの走行支援とは、交差位置INT付近における他車両の存在を地図画面上に表示する認知支援機能を主体とするものである。
【0030】
既述の、図2の場合では、他車両Bの位置は、交差位置INTから約20[m]で車速は40[km/h]である。よって、他車両Bが交差位置INTに到達するのに掛かる時間は、およそ2秒となる。このため、第1の合流支援サブモードによるメッセージ伝達、および、第2の合流支援サブモードによる危険度推定の何れも実行できないと判断し、頭出し支援モードでの走行支援を実行することを決定する。
【0031】
一方、図3の場合には、他車両Dの位置は、交差位置INTから約100[m]で車速は40[km/h]である。よって、他車両Bが交差位置INTに到達するのに掛かる時間は、およそ9秒となる。このため、第1の合流支援サブモードによるメッセージ伝達、および、第2の合流支援サブモードによる危険度推定の何れもが実行可能であると判断し、上述の両方のサブモードを含む合流支援モードでの走行支援を実行することを決定する。
【0032】
更に、次のステップS408では、ステップS407で決定した、運転者への運転支援が、頭出し支援モードか合流支援モードかの判断を行う。
実行する運転支援が頭出し支援モードである場合には、ステップS409へ進む。一方、実行する運転支援が合流支援モードの場合には、ステップS413に移行する。即ち、図2の場合では、決定した運転支援は、頭出し支援モードなので、ステップS409へ進む。一方、図3の場合には、決定した運転支援は、合流支援モードなので、ステップS413に移行する。
【0033】
ステップS409では、自車両の運転者への、頭出し支援モードによる運転支援として、車々間通信装置103を介して受信した自車両の通行に影響のある他車両の位置を表示装置106の地図画面上にプロットして他車両の存在を自車両の運転者へ情報提供する。
図5は、本例にける頭出し支援モードによる運転支援として、他車両の位置と注意喚起のメッセージを表示する情報提供画面の一例を示す図である。
この頭出し支援モードによる運転支援によって、運転者は見通し不良な出会い頭交差点等において、他車両の確認を前もって行うことができるので、頭出し実行時に自車両が危険に曝されることを防止することができ、安全を確保しつつ、接近車両を目視可能な位置まで頭出しが可能となる。
【0034】
更に、次のステップS410では、自車両、従って、交差位置INTに最も近い他車両について、自車両が合流する際の危険度の推定を行う。本例における危険度の推定は、車車間通信装置103を介して取得した、他車両との交差位置INTまでの距離、車速および加減速度等を入力とするファジィ推論ロジックによって危険度を0から10の範囲で出力するものとする。危険度は0が最も低く、10が最も高い(危険)とする。
【0035】
なお、推定精度をより高めるために、運転操作量感知装置107を介して取得した、アクセルやブレーキなどの運転者操作情報を入力に加えても良い。また、本例では、交差位置INTに最も近い他車両について危険度の推定を行う構成としたが、自車両の通行に影響を与える全ての車両に関して危険度の推定を行っても良い。
次いで、ステップS411では、ステップS410で求めた危険度推定値の値が所定値を超えているか否かの判断を行う。危険度推定値が所定値以上であると判断された場合は、ステップS412へ進み、危険度推定値が所定値未満であると判断された場合は、開始に戻り一連の処理をまた最初から繰り返し実行する。ここで、危険度推定値の所定値とは、例えば7程度の、自車両の合流が危険と推定される数値とする。
【0036】
ステップS412では、ステップS411で自車両の合流に対する危険度が所定値を超えている場合に、自車両の運転者へ危険度の情報提供を実施する。なお、ここでの危険度の情報提供は、通常の合流支援モードでの表示におけるような、自車両の通行に影響のある他車両の位置を表示装置106の地図画面上にプロットして他車両の存在を自車両の運転者へ情報提供するといった方法では、運転者の認識に時間が掛かってしまうので、ブザー等を利用した警報とすることで、運転者の即時的な対応を促す。
【0037】
ステップS413は、ステップS408で、図3のような場合に、合流支援モードで運転支援する旨決定した場合に、これに次いで行われる処理(判断)ステップである。ここでは、自車両が交差位置INT手前の停止線付近で一旦停止を行ったかどうかを判断する。
自車両が一旦停止を行っている場合は、安全確認の義務を守る優良運転者と認識し、ステップS414へ進み、合流支援モードでの走行支援を実施する。
【0038】
一方ステップS413で、自車両が一旦停止を行わなかった場合は、安全確認を怠ったと認識し、合流支援モードでの走行支援の実施を許可せず、ステップS409へ戻り、頭出し支援モードのみの実施とすることで、運転支援に制限を行う。
ステップS414では、自車両、従って、交差位置INTに最も近い他車両について、自車両が合流する際の危険度の推定を行う。本例における危険度の推定は、車車間通信装置103を介して取得した、他車両との交差位置INTまでの距離、車速および加減速度等を入力とするファジィ推論ロジックによって危険度を0から10の範囲で出力するものとする。危険度は0が最も低く、10が最も高い(危険)とする。
【0039】
なお、推定精度をより高めるために、運転操作量感知装置107を介して取得した、アクセルやブレーキなどの運転者操作情報を入力に加えても良い。また、上述の例では、交差位置INTに最も近い他車両について危険度の推定を行う構成としたが、自車両の通行に影響を与える全ての車両に関して危険度の推定を実施しても良い。
次いで、ステップS415では、ステップS407で決定した運転支援に関して、メッセージ伝達機能を主体とする第1の合流支援サブモードでの運転支援が実行できるか否かの判断を行う。第1の合流支援サブモード(メッセージ交換機能)での運転支援が実行できると判断されたときにはステップS416へ進む。メッセージ伝達機能を主体とする第1の合流支援サブモードが実行できず、危険度推定機能を主体とする第2の合流支援サブモードのみが実行できる場合には、ステップS424へ進む。
【0040】
ステップS416では、自車両、従って、交差位置INTに最も近い他車両が、交差位置INTに到達するまでの所要時間TTC2が、所定時間未満であるか否かを判定する。この判定の結果、所要時間TTC2が所定時間未満であると判定されたときには、ステップS417へ進む。
一方、ステップS416で、所要時間TTC2が所定値よりも大きい場合には、自車両が優先道路に「余裕を持って」進入可能であると判断し、他車両に対する譲歩打診のメッセージの発信は許可せず、ステップS424へ進む。ここでの所定値とは自車両が優先道路に余裕を持って進入する事が可能な時間であり、例えば10秒とする。
【0041】
即ち、所要時間TTC2が所定値よりも大きい場合には、他車両は未だ自車両の挙動を感知する必要がない程度に交差位置INTから遠く離隔した領域を走行しており、自車両は未だこの領域を走行している他車両の進路に、何等別段の意向打診等を伴わずとも「余裕をもって」進入することが可能である。この判定がなされたときには、自車両および他車両とも何等別段の処置乃至操作を俟つ必要はないためステップS424に移行する。
【0042】
ステップS417では、交差位置INTに最も近い他車両が、現在の車両運動状態から設定した想定減速度で減速を行った場合に、停止するまでに掛かる距離の算出を行う。停止するまでに掛かる距離の算出には、他車両の車速と想定する所定の減速度を用いる。このようにして算出して得られた他車両の停止距離をSD2とする。なお、他車両が実施すると想定される減速度の設定は、例えば0.2Gを基準値に設定する。これは、通常運転者が赤信号で停止する際に発生する減速度である。
【0043】
更に、次のステップS418では、ステップS417で求めた他車両の停止距離SD2と、他車両から交差位置INTまでの距離D2とを比較する。この結果、他車両が停止するのに要する距離SD2が他車両から交差位置INTまでの距離D2未満である場合には、自車両の進入に対して、他車両が進路譲歩を行える可能性が高いと判断し、ステップS419へ進む。
【0044】
一方、他車両が停止するのに要する距離SD2が他車両から交差位置INTまでの距離D2を上回る場合には、自車両の進入に対して、他車両が進路譲歩を行える可能性が低いと判断し、ステップS424に移行する。
ステップS419では、自車両から他車両に対して、進路譲歩の依頼を行うためのメッセージ発信の許可を行う。この処理によって、自車両の運転者は、他車両の運転者に対して「入れてください」のように進路の譲歩を意味するメッセージコードを運転者の意思によって選択し送信することができる。次いで、ステップS420では、自車両が他車両から合流の譲歩に関するメッセージを受信したかどうかの判断を行う。譲歩に関するメッセージとしては、「お先にどうぞ」などのような内容が考えられる。
【0045】
ステップS420で、自車両が他車両から譲歩を受けたと判断された場合には、ステップS421へ進む。また、その場合、自車両の運転者は周囲の安全を確認しながら、図3の非優先道路230から優先道路260への合流を実施する。一方、他車両から譲歩に関するメッセージを受けていない場合には、ステップS424へ進む。
ステップS421では、自車両が非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断するための準備処理を実行する。本例では、自車両が優先道路への合流を完了したことを認識するためのパラメータとして、自車両の進行方向と走行距離およびウィンカ状態という3種類のパラメータを利用する。これらのパラメータのうち、自車両の進行方向については、自車両が非優先道路から優先道路へ合流することによって、自車両の進行方向は、他車両の進行方向と同じような値となるはずである。
【0046】
従って、自車両の進行方向と他車両の進行方向との差が所定値以下となった場合には、自車両が非優先道路から優先道路への合流を完了した可能性が高いと判断する。次に、自車両の走行距離については、自車両が非優先道路から優先道路へ合流することによって必然的に積算されることになる。従って、非優先道路上の他車両との交差位置INT付近を基点として、自車両が所定値以上の距離を走行した場合には、自車両が非優先道路から優先道路への合流が完了した可能性が高いと判断する。
【0047】
自車両が非優先道路から優先道路に合流したことを判断する基点からの距離として、例えば10[m]程度の距離が考えられる。最後に、自車両のウィンカ状態については、自車両が非優先道路から優先道路へ合流した際には、ウィンカの作動状態がONからOFFに切り替わるはずである。したがって、自車両のウィンカがONからOFFに切り替わった場合には、自車両が非優先道路から優先道路への合流が完了した可能性が高いと判断する。
【0048】
尚、上述の3種類のパラメータである、自車両の進行方向、自車両の走行距離、および、ウィンカの作動状態については、車両運動状態認識装置109を介して取得される。
ステップS421に次いで、ステップS422では、ステップS421で各パラメータの状態からそれぞれ判断した自車両の合流完了/未完了について、総合的な判断を行い、自車両が非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断する。具体的には、3種類全てのパラメータが自車両の合流完了を示していれば、自車両が確実に非優先道路から優先道路への合流を完了したものと判断してステップS423へ進む。
【0049】
一方で、3種類のパラメータのなかで一つでも自車両が合流未完了であることを示していれば、自車両は、まだ非優先道路から優先道路へ合流が完了していないと判断し、ステップS421へ戻り、処理を繰り返す。
ステップS423では、自車両から他車両に対して、合流を譲歩してくれたことに対するお礼を行うためのメッセージ発信の許可を行う。この処理によって、自車両の運転者は、他車両の運転者に対して「ありがとう」のように譲歩に対するお礼を意味するメッセージコードを運転者の意思によって選択し送信することができる。
【0050】
ステップS424では、ステップS414で求めた自車両の運転者へ危険度の情報提供を実施する。この情報提供の一例を図6に示す。
図6は、危険度の情報提供の一例としての情報提供画面での表示状況を表す図である。 情報提供画面の左側に左からの他車両に関する危険度推定値を、情報提供画面の右側に右からの他車両に関する危険度推定値を、バーグラフのような形状で示す。
【0051】
図7は、車車間通信を通して送信するメッセージの選択と決定の操作を行うための機構部について説明するための図である。図7の機構部はカーナビゲーションシステムNVSの操作・表示部と兼用するようにして車両のインストルメントパネルに装備される。カーナビゲーションシステムNVSの操作スイッチボードSWBに配された適宜のモード選択スイッチの操作に応じて、表示画面MS上に送信の候補となる複数のメッセージがメッセージリストMLとして表示画面MSの中央部を避けた位置に共通の枠内に列記される如くして表示される。
【0052】
図示の例では、説明の便宜上、第1メッセージM1たる「ありがとう」、第2メッセージM2たる「入れてください」、第3メッセージM3たる「お先にどうぞ」の3種類のメッセージのみが表示されるように描かれているが、これより多くのメッセージを列記可能に構成してもよい。操作スイッチボードSWBの一隅にロータリ・プッシュ式のスイッチRPSが配され、このスイッチRPSの回転操作によって、メッセージリストML中の何れか一つのメッセージが選択的に枠線で特定されるように表示される。
【0053】
スイッチRPSの回転操作でメッセージの種別を選択し、次いで、スイッチRPSをその回転位置を固定させた状態で押し込むように決定操作すると、当該メッセージの選択が決定しそのメッセージに対応するメッセージコードが車車間通信を通して通信相手に発信される。受信側では、このようにして発信されたメッセージコードに対応するメッセージが認識されて、例えば、自車両における図7におけるものと同様の所定の表示画面に文字表示されることになる。
【0054】
尚、上述の例では、メッセージの種別の選択と決定(発信)は回転およびプッシュ型のスイッチRPSによって行う構成であったが、これに替えて所謂ジョイスティック型のスイッチを適用可能なことは勿論である。
本例では、以上のような構成とすることで、自車両周囲の建造物等の影響で、他車両との通信範囲が狭く、「合流支援」(合流支援モードでの走行支援)の効果的な実施が困難な場合には、「頭出し支援」(頭出し支援モードでの走行支援)を実施することができ、「合流支援」を効果的に実施可能な位置まで自車両の頭出し行為を安全に実施することができる。
また、本例では、自車両と他車両が交差する交差位置INTを各車両の位置関係と進行方向とから算出していたが、この他にも経路案内機能を有するカーナビゲーションシ装置105に格納されている地図情報に交差位置INTをあらかじめ記憶しておき、その情報をもとに交差位置INTを取得する方法も考えられる。
【0055】
以上、本願にて提案の技術思想の構成とその作用について、その実施の形態との対応関係を表わすための参照符合乃至図面番号(代表的なもの)を伴って、次に列記する。
(1)自車両の位置を認識する自車両位置認識手段(105(或いは、更に、104、および、101の該当する機能部をも含む))と、他車両の位置を認識する他車両位置認識手段(103、および、101の該当する機能部)と、所定時点で当該所定時点以降の前記自車両および他車両の各移動軌跡を予測して当該予測による移動軌跡の交差位置を推定する移動軌跡予測手段(103、101の該当する機能部(或いは、更に、105、106をも含む構成)と、前記自車両から前記他車両に対して自車両側で選択したメッセージを担うメッセージ信号を含み得る信号を送信し他車両からのメッセージ信号を含み得る信号を受信することが可能な通信手段(103、106、107)と、前記自車両および他車両が当該交差位置に向かうに際して、前記通信手段によるメッセージの授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モード(図2、図4、ステップS408でYesのとき)と、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モード(図3、図4、ステップS408でNoのとき)とを含む何れかの走行支援モードを選択的に実行可能な走行支援モード選択実行手段(101の該当する機能部と、操作と表示の機能に係る関連各部)と、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、前記走行支援モード選択実行手段によって実行される走行支援モードを、頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換える走行支援モード切換え手段(処理装置101の該当する機能部)と、を備えたことを特徴とする走行支援装置。
【0056】
上記(1)の走行支援装置によれば、自車両と他車両が通信を開始した時点における、他車両が自車両との交差位置までに到達するのに掛かる時間と、合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間とに応じて、実施する自車両運転者への運転支援を、頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換える構成としたので、自車両周囲の建造物等の影響で、他車両との通信範囲が狭く、合流支援モードでの走行支援の効果的な実施が困難な場合には、頭出し支援モードでの走行支援を実施することができ、合流支援モードでの走行支援を効果的に実施可能な位置までの、自車両の頭出し運転操作を、安全に実施することができる。
【0057】
(2)前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両側において前記他車両位置認識手段により他車両を認識した時点で、前記到達所要時間が前記支援実行時間未満であるときには(図2、図4、ステップS407-ステップS408)、前記頭出し支援モードでの走行支援を実行し、前記到達所要時間が前記支援実行時間以上であるときには(図3、図4、ステップS407-ステップS408)、前記合流支援モードでの走行支援を実行することを特徴とする(1)の走行支援装置。
【0058】
上記(2)の走行支援装置によれば、自車両が出会い頭付近で優先道路への合流を試みている状況で、自車両と他車両が通信を開始した時点における、他車両が自車両との交差位置(自車両と他車両との各移動軌跡の交差位置)までに到達するのに掛かる時間が、合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる時間未満である場合には、頭出し支援モードでの走行支援を実行し、それ以外の場合には、合流支援モードでの走行支援を実行する構成としたので、合流支援モードでの走行支援を効果的に実施困難な場合には、頭出し支援モードでの走行支援を実行することにより、合流支援モードでの走行支援が効果的に実行可能な位置までの、自車両の頭出し運転操作を、安全に実施することができる。
【0059】
(3)前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両との通信を行える他車両が複数台存在する場合には、最も自車両から離れた距離にある他車両に関して(図4、ステップS405)、前記何れかの走行支援モードを選択切換えすることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(3)の走行支援装置によれば、自車両との通信を行える他車両が複数台存在する場合には、最も自車両から離れた車両の情報(位置、車速等)を運転支援の選択に利用する構成としたので、適切な通信範囲の認識を行うことができ、合流支援モードでの走行支援への切り替が適切に行われるので、自車両が既に頭出しを完了している状況で、合流支援モードでの走行支援に切り替わらないという問題を回避することができる。
【0060】
(4)前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両側において前記他車両位置認識手段により他車両を認識した時点での他車両の加減速度を考慮して(図4、ステップS406)前記何れかの走行支援モードを選択切換えすることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(4)の走行支援装置によれば、通信を開始した時点(他車両を認識した時点)での他車両の加減速度を考慮して、運転支援の選択を行う構成としたので、他車両が自車両との交差位置に到達する時間を正確に求めることができるので、適切な運転支援の選択を行うことができる。
【0061】
(5)前記走行支援モード選択実行手段は、前記合流支援モードに該当する複数通りの合流支援サブモードでの走行支援を選択的に実行可能に構成され、前記走行支援モード切換え手段は、前記複数の各合流支援サブモードでの走行支援を実行するのに掛かる各別の支援実行時間と前記到達所要時間とを夫々比較し、各個の比較結果に基づいて前記複数の各合流支援サブモード毎にそれらの実行可否を判断する(図4、ステップS415−ステップS416)ことを特徴とする(1)の走行支援装置。
【0062】
上記(5)の走行支援装置によれば、複数の合流支援モード(サブモード)がある場合には、それぞれの合流支援サブモードについて実施時間と他車両の到達時間とを比較し、個別に合流支援サブモードの実施可否を判断する構成としたので、実施に必要な時間が比較的短い合流支援サブモードを早めに開始できるので、自車両の運転者にとって利便性が向上する。
【0063】
(6)前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいては、前記合流支援モードでの走行支援を実行可能であると判断される場合であっても(図4、ステップS408でNoのとき)、前記自車両が前記交差位置手前で停止または極低速で走行していないときには(図4、ステップS413でNoのとき)、前記頭出し支援モードでの走行支援のみを選択することを特徴とする(1)の走行支援装置。
【0064】
上記(6)の走行支援装置によれば、自車両が交差位置手前で停止または極低速で走行する以外の場合には、通信エリアが合流支援モードでの走行支援を実行可能な場合であっても、頭出し支援モードでの走行支援のみの実施に制限する構成としたので、一時停止無視や安全確認が不十分な運転者のシステムの過信を防止することができ、システムの誤った使用を未然に防ぐことができる。
【0065】
(7)走行支援モード選択実行手段は、前記自車両が前記他車両の走行路に合流するときの合流危険度を推定する合流危険度推定モードでの作動が、前記頭出し支援モードおよび合流支援モードでの走行支援を実行中にも実行可能に構成され(図4、ステップS409、および、ステップS414)、前記走行支援モード切換え手段は、前記頭出し支援モードを選択している間に、前記合流危険度推定モードの実行によって当該合流危険度が所定値よりも高く推定された場合には、実行中の頭出し支援モードでの走行支援を通常よりも早く終了し、前記合流危険度推定モードによる危険度推定を伴う前記合流支援モードでの走行支援に切り替える(図4、ステップS410―411)ことを特徴とする(1)の走行支援装置。
【0066】
上記(7)の走行支援装置によれば、合流危険度推定モードの実行によって、合流危険度推定機能の危険度推定値が高く推定された場合には、実行中の頭出し支援モードでの走行支援を通常よりも早く終了して、危険度推定を行う合流支援モードでの走行支援に切換える構成としたので、自車両の頭出しが危険と推測される場合を前もって自車両の運転者に知らせることができる。
【0067】
(8)前記走行支援モード選択実行手段による合流危険度推定モードでの危険度の推定は、他車両の交差位置に対する距離、車速、加減速、および、運転者の運転操作状態等を考慮して、事前に危険度が高くなることを推定できる危険度推定ロジックを適用する(図4、ステップS414)ものであることを特徴とする(7)の走行支援装置。
上記(8)の走行支援装置によれば、危険度の推定は、他車両の交差位置に対する距離や車速、加減速および運転者の運転操作状態等を考慮して事前に危険度が高くなることを推定できる危険度推定ロジックを適用する構成としたので、他車両に関する正確な危険度の推測を行うことができる。
【0068】
(9)自車両位置認識手段により自車両の位置を認識し(105(或いは、更に、104、および、101の該当する機能部をも含む))、他車両位置認識手段により他車両の位置を認識し(103、および、101の該当する機能部)、移動軌跡予測手段により所定時点で当該所定時点以降の前記自車両および他車両の各移動軌跡を予測して当該予測による移動軌跡の交差位置を推定し(103、101の該当する機能部(或いは、更に、105、106をも含む構成)、前記自車両および他車両が当該交差位置に向かうに際して前記自車両における走行支援を、通信手段(103、106、107)による前記自車両および他車両間でのメッセージの授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モード(図2、図4、ステップS408でYesのとき)と、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モード(図3、図4、ステップS408でNoのとき)との双方の走行支援モードのうちの何れかの走行支援モードで選択的に実行するようにし、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、実行する走行支援モードを、前記頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換える(処理装置101の該当する機能)ことを特徴とする走行支援方法。
【0069】
上記(9)の走行支援方法によれば、自車両と他車両が通信を開始した時点における、他車両が自車両との交差位置までに到達するのに掛かる時間と、合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間とに応じて、実施する自車両運転者への運転支援を、頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換えるようにしたので、自車両周囲の建造物等の影響で、他車両との通信範囲が狭く、合流支援モードでの走行支援の効果的な実施が困難な場合には、頭出し支援モードでの走行支援を実施することができ、合流支援モードでの走行支援を効果的に実施可能な位置までの、自車両の頭出し運転操作を、安全に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実行の形態としての走行支援装置の要部のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における走行支援を適用する状況の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態における走行支援を適用する状況の他の例を説明するための図である。
【図4】図1中の処理装置における処理手順の一例を表すフローチャートである。
【図5】頭出し支援モードによる運転支援として、他車両の位置と注意喚起のメッセージを表示する情報提供画面の一例を示す図である。
【図6】図6は、危険度の情報提供の一例としての情報提供画面での表示状況を表す図である。
【図7】車車間通信を通して送信するメッセージの選択と決定の操作を行うための機構部について説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
100…走行支援装置(その要部) 101…処理装置 102…記憶装置 103…車車間通信装置 104…路車間通信装置 105…カーナビゲーション装置 106…表示装置(情報提供装置) 107…メッセージ選択決定操作部 108…運転操作量感知装置 109…車両運動状態認識装置 110…操作器 230…非優先道路 260…優先道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置を認識する自車両位置認識手段と、他車両の位置を認識する他車両位置認識手段と、所定時点で当該所定時点以降の前記自車両および他車両の各移動軌跡を予測して当該予測による移動軌跡の交差位置を推定する移動軌跡予測手段と、前記自車両から前記他車両に対して自車両側で選択したメッセージを担うメッセージ信号を含み得る信号を送信し他車両からのメッセージ信号を含み得る信号を受信することが可能な通信手段と、前記自車両および他車両が当該交差位置に向かうに際して、前記通信手段によるメッセージの授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モードと、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モードとを含む何れかの走行支援モードを選択的に実行可能な走行支援モード選択実行手段と、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、前記走行支援モード選択実行手段によって実行される走行支援モードを、頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換える走行支援モード切換え手段と、を備えたことを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両側において前記他車両位置認識手段により他車両を認識した時点で、前記到達所要時間が前記支援実行時間未満であるときには、前記頭出し支援モードでの走行支援を実行し、前記到達所要時間が前記支援実行時間以上であるときには、前記合流支援モードでの走行支援を実行することを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両との通信を行える他車両が複数台存在する場合には、最も自車両から離れた距離にある他車両に関して、前記何れかの走行支援モードを選択切換えすることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両側において前記他車両位置認識手段により他車両を認識した時点での他車両の加減速度を考慮して前記何れかの走行支援モードを選択切換えすることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項5】
前記走行支援モード選択実行手段は、前記合流支援モードに該当する複数通りの合流支援サブモードでの走行支援を選択的に実行可能に構成され、前記走行支援モード切換え手段は、前記複数の各合流支援サブモードでの走行支援を実行するのに掛かる各別の支援実行時間と前記到達所要時間とを夫々比較し、各個の比較結果に基づいて前記複数の各合流支援サブモード毎にそれらの実行可否を判断することを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項6】
前記走行支援モード切換え手段は、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいては、前記合流支援モードでの走行支援を実行可能であると判断される場合であっても、前記自車両が前記交差位置手前で停止または極低速で走行していないときには、前記頭出し支援モードでの走行支援のみを選択することを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項7】
前記走行支援モード選択実行手段は、前記自車両が前記他車両の走行路に合流するときの合流危険度を推定する合流危険度推定モードでの作動が、前記頭出し支援モードおよび合流支援モードでの走行支援を実行中にも実行可能に構成され、前記走行支援モード切換え手段は、前記頭出し支援モードを選択している間に、前記合流危険度推定モードの実行によって当該合流危険度が所定値よりも高く推定された場合には、実行中の頭出し支援モードでの走行支援を通常よりも早く終了し、前記合流危険度推定モードによる危険度推定を伴う前記合流支援モードでの走行支援に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項8】
前記走行支援モード選択実行手段による合流危険度推定モードでの危険度の推定は、他車両の交差位置に対する距離、車速、加減速、および、運転者の運転操作状態等を考慮して、事前に危険度が高くなることを推定できる危険度推定ロジックを適用するものであることを特徴とする請求項7に記載の走行支援装置。
【請求項9】
自車両位置認識手段により自車両の位置を認識し、他車両位置認識手段により他車両の位置を認識し、移動軌跡予測手段により所定時点で当該所定時点以降の前記自車両および他車両の各移動軌跡を予測して当該予測による移動軌跡の交差位置を推定し、前記自車両および他車両が当該交差位置に向かうに際して前記自車両における走行支援を、通信手段による前記自車両および他車両間でのメッセージの授受を俟つことなく当該交差位置付近における他車両の存在有無に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する頭出し支援モードと、前記通信手段によるメッセージの授受を行うことを前提として合流時の危険度推定に係る情報を含む走行支援情報を自車両の運転者に提供する合流支援モードとの双方の走行支援モードのうちの何れかの走行支援モードで選択的に実行するようにし、前記自車両が前記他車両の存在を認識した時点におけるこの他車両が当該交差位置までに到達するのに掛かる到達所要時間と前記合流支援モードでの走行支援を実行するのに掛かる支援実行時間との比較に基づいて、実行する走行支援モードを、前記頭出し支援モードを先行し、次いで合流支援モードとなる順序で切換えることを特徴とする走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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