説明

走行車両の洗車ポンプ取り付け構造

【課題】 自在継手軸の後ヨークに洗車ポンプの入力軸を連結して廻り止めを行うだけで、簡単かつ容易に取り付けることができるようにする。
【解決手段】 走行車両2の後部に3点リンク手段3を介して作業機4を連結可能な連結枠5を装着し、走行車両2のPTO軸6に自在継手軸7の前ヨーク7Fを連結し、自在継手軸7の後ヨーク7Rを作業機のPIC軸8と連結可能にし、後ヨーク7Rを回転自在に保持するジョイントホルダ9を連結枠5に横軸10を介して揺動自在に支持する。前記自在継手軸7の後ヨーク7Rに洗車ポンプ11の入力軸12を連結して洗車ポンプ11を連結枠5に対して取り付け、洗車ポンプ11に連結枠5に対して廻り止めを行う廻り止め部材13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行車両の洗車ポンプ取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の走行車両においては、洗車ポンプはPTO軸に連結することにより使用できるが、ロータリ耕耘機等の作業機を3点リンク手段を介して簡便に着脱できるように連結枠が採用されている場合は、PTO軸に自在継手軸が連結されているので、洗車ポンプをPTO軸に直接連結することは困難になる。
そこで、特許文献1に開示されているように、作業機を取り外した連結枠に、外周をホース巻取部としたリール形ポンプフレームを連結し、このリール形ポンプフレームの中央空間部にポンプ本体を収納固定し、このポンプ本体の入力軸を爪クラッチを介して自在継手軸と連結している。
【特許文献1】実開平2−112574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術においては、ポンプ本体の連結のためにポンプフレームを必要とするとともに、ポンプ本体をポンプフレームに座板を介して固定しているために入力軸と自在継手軸との間に爪クラッチを必要としており、洗車ポンプの取り付け構造が複雑でかつ取り付けが非常に面倒になっている。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした走行車両の洗車ポンプ取り付け構造を提供することを目的とする。
本発明は、自在継手軸の後ヨークに洗車ポンプの入力軸を連結して廻り止めを行うだけで、簡単かつ容易に取り付けることができる走行車両の洗車ポンプ取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、走行車両2の後部に3点リンク手段3を介して作業機4を連結可能な連結枠5を装着し、走行車両2のPTO軸6に自在継手軸7の前ヨーク7Fを連結し、自在継手軸7の後ヨーク7Rを作業機のPIC軸8と連結可能にし、後ヨーク7Rを回転自在に保持するジョイントホルダ9を連結枠5に横軸10を介して揺動自在に支持しており、
前記自在継手軸7の後ヨーク7Rに洗車ポンプ11の入力軸12を連結して洗車ポンプ11を連結枠5に対して取り付け、洗車ポンプ11に連結枠5に対して廻り止めを行う廻り止め部材13を設けていることを特徴とする。
【0005】
第2に、前記廻り止め部材13を上下に幅のある板材で形成して洗車ポンプ11に取り付けており、前記ジョイントホルダ9の横軸10を設けた左右側壁9aに廻り止め部材13の側端面の上下部分を当接していることを特徴とする。
第3に、前記洗車ポンプ11の入力軸12は後ヨーク7Rにスプライン嵌合する接ぎ軸14を有していることを特徴とする。
[作用]
前記構成の洗車ポンプ取り付け構造においては、走行車両2の後部に3点リンク手段3を介して作業機4を連結するために装着された連結枠5から作業機4を取り外した状態で、ジョイントホルダ9に揺動自在に支持された自在継手軸7の後ヨーク7Rに洗車ポンプ11の入力軸12を連結し、この洗車ポンプ11に設けた廻り止め部材13を介して連結枠5に対して廻り止めを行うだけで、PTO軸6の動力で洗車ポンプ11を駆動して洗車に使用することができる。
【0006】
前記廻り止め部材13を上下に幅のある板材で形成されているので、ジョイントホルダ9の横軸10を設けた左右側壁9aに側端面の上下部分を当接させると、入力軸12廻りの洗車ポンプ11の回転を阻止することができる。
前記洗車ポンプ11の入力軸12は後ヨーク7Rに直接スプライン嵌合するように形成してもよいが、市販のものが作業機のPIC軸8と径が異なる場合は、接ぎ軸14を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自在継手軸の後ヨークに洗車ポンプの入力軸を連結して廻り止めを行うだけで、簡単かつ容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、走行車両2としてのトラクタに3点リンク手段3を連結し、この3点リンク手段3の後端に連結された連結枠5に、ロータリ耕耘機等の作業機4の代わりに、洗車ポンプ11を着脱自在に連結した状態を図示している。
トラクタの後部に連結された3点リンク手段3は、中央上部の1本のトップリンク3Aと左右下部一対のロアリンク3Bとを有し、正面視三角形状又はA形状に形成された連結枠5には、トップリンク3Aが連結される上連結部16Uと、左右ロアリンク3Bが連結される左右下連結部16Dとが形成され、各連結部16U、16Dはピンによって形成されている。
【0009】
連結枠5には、作業機4の上被係合部18U及び左右下被係合部18Dをそれぞれ係合する上係合部19U及び左右下係合部19Dが形成されており、前記上被係合部18U及び左右下被係合部18Dはピンで形成され、前記上係合部19U及び左右下係合部19Dはピンが係合する凹部となっている。
前記上係合部19Uは上被係合部18Uに下方から嵌合可能であり、これを嵌合して連結枠5を上昇させて作業機4を持ち上げると、上被係合部18Uを中心に作業機4が前方へ揺動して、左右下係合部19Dに左右下被係合部18Dが後方から移動してきて嵌入することになる。
【0010】
図1〜3において、前記連結枠5は、角パイプを屈曲した山形材5aの頂部に、2枚の板材を固着して上連結部16Uと上係合部19Uとを有する鶏冠部5bを設け、山形材5aの左右下部に逆U字部材を固着して下連結部16Dと下係合部19Dとを有する左右基部5cを設け、この左右各基部5cの内側下端に略L字形状の基板5dの水平端を連結し、山形材5aの中途部に角パイプ製の梁材5eを設け、基板5dの垂直端と梁材5eとを連結し、左右基板5dの垂直部を間隔をおいて配置し、この左右基板5d間にジョイントホルダ9を枢支連結している。
【0011】
この連結枠5には、左右下係合部19Dに係合した左右下被係合部18Dの抜け止めをするロック部材21を有するロック手段22と、ロック部材21を抜け止め姿勢から退避させかつ退避姿勢で保持可能なロック解除手段23とが備えられている。
前記ロック手段22の左右各ロック部材21は、後上部に上向き開放のフック形状でありロック軸24に横軸廻り回動自在に枢支され、同じくロック軸24に嵌装されたコイルスプリング25によって、下被係合部18Dと係合するための抜け止め姿勢側へ付勢されており、ロック部材21が下被係合部18Dの離脱を阻止(ロック)する。
【0012】
ロック解除手段23は、左右ロック部材21を連結する連動リンク28と、連結枠5に枢支されていて揺動することによって連動リンク28を押し引きして左右のロック部材21の姿勢を同時に変更するロック操作レバー29とが設けられ、このロック操作レバー29は梁材5eから前下方へ突出したブラケット30に横軸31を介して揺動自在に支持されている。
前記ロック操作レバー29は、前記横軸31廻りに後方へ揺動することにより、連動リンク28を介してロック部材21を回動して、ロック姿勢からロック解除姿勢に変更する。
【0013】
図1〜4において、前記ジョイントホルダ9には自在継手軸7の後部が支持されている。自在継手軸7は前ヨーク7Fが走行車両2のPTO軸6にスプライン嵌合され、作業機4のPIC軸8とスプライン嵌合可能な後ヨーク7Rがジョイントホルダ9に軸受35を介して回転自在に支持されている。
ジョイントホルダ9は平面視略コ字形状で左右の各側壁9aに横軸10を外方突出状に設けており、この横軸10が前記左右基板5dの垂直部に枢支されており、支持した後ヨーク7Rの向きを横軸10廻りに変更可能にしており、上被係合部18Uを中心に作業機4が前方へ揺動してきたときに作業機4のPIC軸8が後ヨーク7Rに容易に嵌合できるようになっている。
【0014】
洗車ポンプ11は市販のものが使用されており、ポンプ本体11Aから前方に入力軸12が突出され、この入力軸12に接ぎ軸14が嵌合してピン12aによって連結されており、前記接ぎ軸14は後ヨーク7Rにスプライン嵌合するように雄スプラインが形成されている。
前記ポンプ本体11Aの前面には廻り止め部材13が配置されていて、抑え板11Bをネジ止めすることにより着脱可能に固定されている。
廻り止め部材13は板金を側面視コ字形状に屈曲して形成したものであり、その背壁が入力軸12の周囲でポンプ本体11Aの前面に取り付けられ、その上下の壁の左右幅は左右両端面がジョイントホルダ9の左右側壁9aに当接する幅となっている。
【0015】
前記廻り止め部材13は上下に幅のある板材であればよく、側端面が上下箇所で側壁9aに当接することにより、連結枠5に対するポンプ本体11Aの廻り止めができ、ポンプ本体11Aが入力軸12の回転の反動で回ろうとするのを阻止できる。
前記廻り止め部材13はポンプ本体11Aから上方に突出させて、少なくとも左右2箇所で又は面で梁材5eと当接するように設けてもよく、その場合、ポンプ本体11Aの入力軸12廻りの回転だけでなく、ジョイントホルダ9が横軸10廻りに揺動するのを阻止する構成としてもよい。
【0016】
図2の符号38は鎖又はワイヤで形成された拘束索を示し、ポンプ本体11Aに取り付けられていて梁材5eに掛けるようになっており、接ぎ軸14が後ヨーク7Rから抜けないように、ポンプ本体11Aの後方移動を規制している。
前記洗車ポンプ11は入力軸12を後ヨーク7Rに連結しておくだけで、後ヨーク7Rの回転によって駆動され、入力軸12の回転の反動も余りなく、反動があっても廻り止め部材13によって阻止でき、ポンプ本体11Aを連結枠5に固定する必要がないので、入力軸12を後ヨーク7Rに連結するだけの作業で組立てができる。
【0017】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜5に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、接ぎ軸14を入力軸12の一部として使用しているが、洗車ポンプ11は入力軸12が後ヨーク7Rに直接スプライン嵌合できる同一径に形成した特別製でもよく、また、廻り止め部材13を割愛して、拘束索38に廻り止め部材の役目をさせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態を示す全体側面図である。
【図2】拡大側面図である。
【図3】背面図である。
【図4】要部の断面側面図である。
【符号の説明】
【0019】
2 走行車両
3 3点リンク手段
4 作業機
5 連結枠
6 PTO軸
7 自在継手軸
7F 前ヨーク
7R 後ヨーク
8 PIC軸
9 ジョイントホルダ
10 横軸
11 洗車ポンプ
12 入力軸
13 廻り止め部材
14 接ぎ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両(2)の後部に3点リンク手段(3)を介して作業機(4)を連結可能な連結枠(5)を装着し、走行車両(2)のPTO軸(6)に自在継手軸(7)の前ヨーク(7F)を連結し、自在継手軸(7)の後ヨーク(7R)を作業機のPIC軸(8)と連結可能にし、後ヨーク(7R)を回転自在に保持するジョイントホルダ(9)を連結枠(5)に横軸(10)を介して揺動自在に支持しており、
前記自在継手軸(7)の後ヨーク(7R)に洗車ポンプ(11)の入力軸(12)を連結して洗車ポンプ(11)を連結枠(5)に対して取り付け、洗車ポンプ(11)に連結枠(5)に対して廻り止めを行う廻り止め部材(13)を設けていることを特徴とする走行車両の洗車ポンプ取り付け構造。
【請求項2】
前記廻り止め部材(13)を上下に幅のある板材で形成して洗車ポンプ(11)に取り付けており、前記ジョイントホルダ(9)の横軸(10)を設けた左右側壁(9a)に廻り止め部材(13)の側端面の上下部分を当接していることを特徴とする請求項1に記載の走行車両の洗車ポンプ取り付け構造。
【請求項3】
前記洗車ポンプ(11)の入力軸(12)は後ヨーク(7R)にスプライン嵌合する接ぎ軸(14)を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行車両の洗車ポンプ取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−67138(P2009−67138A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235536(P2007−235536)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】