説明

走行車輌

【課題】不整地を高速で走行する走行車輌ではブレーキ装置の冷却が重要であり、従来は、減速装置で回転するギア等によって油溜まりの潤滑油を飛散させ、少しずつ連絡通路を伝わせてブレーキ装置に供給して冷却していたが、供給効率が低く、ブレーキ装置に対する十分な冷却効果が得られない、という問題があった。
【解決手段】ブレーキ装置12の上部又は下部に油を送出して冷却するための給油手段151と、該給油手段151を前記ブレーキ装置12が作動中にのみ動作させるための同期手段156を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荒れ地や草地、砂地、河原、圧雪された雪上など条件を選ばず走行可能なバギー車などの走行車輌に関し、特に、走行車輌におけるブレーキ装置の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速で使用され車軸への入力回転数が高い走行車輌においては、車軸への駆動入力軸にブレーキ装置が周設され、該ブレーキ装置、特にその構成部材である回転摩擦板は駆動入力軸と一緒に回転し、走行中は、該回転摩擦板によって下方の潤滑油が高速で攪拌され、潤滑油の攪拌抵抗による熱が発生する。更に、ブレーキ作動時には、回転摩擦板と固定摩擦板との間の摩擦抵抗による熱も発生する。このため、走行車輌のブレーキ装置を効果的に冷却するための技術が強く求められている。
そこで、例えば特許文献1に示すように、ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングと減速装置等を収容するリダクションケースとの間に、上下部の連絡油路を設けた上で、該減速装置を構成するギア等の回転体の回転によって、リダクションケース内の油溜まりの潤滑油を攪拌し飛散させ、この飛散した潤滑油の一部は、前記上部連絡油路を通ってブレーキハウジングの上部に進入してブレーキ装置を冷却し、その後、ブレーキハウジング下部に流下し、前記下部連絡油路を通って再びリダクションケース内の油溜まりに還流される、という技術が公知となっている。
【特許文献1】特許第3052075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記油溜まりから飛散した潤滑油の大部分は、強い遠心力によってリダクションケースの内壁に衝突した後、そのまま下方に流下して油溜まりに戻るため、前記上部連絡油路を伝ってブレーキハウジング内に進入する潤滑油は極めて少ない。従って、ブレーキ装置に対する十分な冷却効果を得るのに油溜まりへの回転体の浸漬深さを増加して少しでも飛散量を多くする必要があるが、そうすると、走行中のブレーキハウジング内の油面も高くなり、潤滑油の攪拌抵抗による伝達動力の損失や熱の発生が著しくなる、という問題があった。
さらに、不整地を走行する走行車輌では車体の傾きが大きく変化して前述の回転体の浸漬深さが一定しないため、走行中の冷却効果の変動が大きい、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、エンジンと、該エンジンに駆動連結され車両の前後方向に延設される駆動入力軸と、該駆動入力軸に周設されるブレーキ装置と、車両の左右方向に延設される車軸駆動軸と、該車軸駆動軸と前記駆動入力軸間とを連結すると共に車軸への伝達動力を減速する減速装置と、該減速装置や前記車軸駆動軸を収容するリダクションケースとを備えた走行車輌において、前記ブレーキ装置の上部又は下部に油を送出して冷却するための給油手段と、該給油手段を前記ブレーキ装置が作動中にのみ動作させるための同期手段とを設けたものである。
請求項2においては、前記給油手段は、吐出口を前記ブレーキ装置上方に開口した汲み上げポンプ装置を備え、該汲み上げポンプ装置の吸入口は前記ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングの下部空間に開口され、該下部空間は前記リダクションケースと連通されており、リダクションケースから下部空間に流入した油を、該汲み上げポンプ装置によって吐出口からブレーキ装置上部に供給するものである。
請求項3においては、前記同期手段は、前記吸入口から吐出口までの経路の途中部にリークバルブを備え、該リークバルブは前記ブレーキ装置と連動連結されており、ブレーキ装置が非作動状態ではリークバルブが開となり、ブレーキ装置が作動状態ではリークバルブが閉となって油が吸入口から吐出口まで流れるものである。
請求項4においては、前記給油手段は、前記ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングの下部空間と前記リダクションケースとの間に介設された横送りポンプ装置を備え、リダクションケース内の油を、該横送りポンプ装置によって下部空間に供給して油面を上昇させ、ブレーキ装置下部を浸漬するものである。
請求項5においては、前記同期手段は、前記横送りポンプ装置のポンプ軸を前記駆動入力軸に駆動連結する伝達機構と、該伝達機構によって伝達される動力を継断するクラッチ機構とを備え、該クラッチ機構は前記ブレーキ装置と連動連結されており、ブレーキ装置が非作動状態ではクラッチが切れて動力が遮断され、ブレーキ装置が作動状態ではクラッチが入って動力が前記横送りポンプ装置に伝達されるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、エンジンと、該エンジンに駆動連結され車両の前後方向に延設される駆動入力軸と、該駆動入力軸に周設されるブレーキ装置と、車両の左右方向に延設される車軸駆動軸と、該車軸駆動軸と前記駆動入力軸間とを連結すると共に車軸への伝達動力を減速する減速装置と、該減速装置や前記車軸駆動軸を収容するリダクションケースとを備えた走行車輌において、前記ブレーキ装置の上部又は下部に油を送出して冷却するための給油手段と、該給油手段を前記ブレーキ装置が作動中にのみ動作させるための同期手段とを設けたので、専用の前記給油手段によって、油をブレーキ装置全体に無駄なく供給することができ、ブレーキ装置に対して十分な冷却効果を得ることができる。また、走行中の油面を予め低く設定しておき、ブレーキ装置がその下部空間の油に浸漬しないようにできるため、高速回転する摩擦板等が下部空間の油を攪拌する際の攪拌抵抗による伝達動力の損失や熱の発生を防止することができる。加えて、ブレーキ装置が作動しない走行中には前記給油手段は動作しないため、高速回転する摩擦板等の上部や下部に供給される油に起因した攪拌抵抗による伝達動力の損失や熱の発生も防止することができる。
請求項2においては、前記給油手段は、吐出口を前記ブレーキ装置上方に開口した汲み上げポンプ装置を備え、該汲み上げポンプ装置の吸入口は前記ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングの下部空間に開口され、該下部空間は前記リダクションケースと連通されており、リダクションケースから下部空間に流入した油を、該汲み上げポンプ装置によって吐出口からブレーキ装置上部に供給するので、ブレーキハウジング内の油量が少なくても前記汲み上げポンプ装置を使って油をブレーキ装置の上部に確実に供給できるため、車体の傾きが大きく変化し油面が変動しやすい走行中でも安定した冷却効果を得ることができる。
請求項3においては、前記同期手段は、前記吸入口から吐出口までの経路の途中部にリークバルブを備え、該リークバルブは前記ブレーキ装置と連動連結されており、ブレーキ装置が非作動状態ではリークバルブが開となり、ブレーキ装置が作動状態ではリークバルブが閉となって油が吸入口から吐出口まで流れるので、複雑な装置を設けることなく簡単な構成で、前記汲み上げポンプ装置をブレーキ装置が作動中にのみ動作させることができ、製造コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項4においては、前記給油手段は、前記ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングの下部空間と前記リダクションケースとの間に介設された横送りポンプ装置を備え、リダクションケース内の油を、該横送りポンプ装置によって下部空間に供給して油面を上昇させ、ブレーキ装置下部を浸漬するので、ブレーキ装置の摩擦板等に沿って油を流下させて冷却する場合と比べ、冷却媒体の量が多くて冷却能力が高いため、冷却効果の更なる向上を図ることができる。
請求項5においては、前記同期手段は、前記横送りポンプ装置のポンプ軸を前記駆動入力軸に駆動連結する伝達機構と、該伝達機構によって伝達される動力を継断するクラッチ機構とを備え、該クラッチ機構は前記ブレーキ装置と連動連結されており、ブレーキ装置が非作動状態ではクラッチが切れて動力が遮断され、ブレーキ装置が作動状態ではクラッチが入って動力が前記横送りポンプ装置に伝達されるので、通常の走行中は、ブレーキ装置が非作動状態でクラッチが切れているため、横送りポンプ装置を駆動することによる駆動入力軸への負担がほとんどなく、走行のための伝達動力の損失を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に関わる走行車輌としてのバギー車の全体構成を示す平面図、図2は第一実施例に係わる後車軸駆動装置の側面一部断面図、図3は同じく平面一部断面図、図4は同じく図2のA−A断面図、図5は第二実施例に係わる後車軸駆動装置の側面一部断面図、図6は同じく平面一部断面図、図7は同じく図5のB−B断面図である。
【0007】
最初に、本発明に係わる走行車輌の一例としてバギー車の全体構成について、図1により説明する。
該バギー車1において、車体フレーム4の前部に前車軸駆動装置8が配設され、該前車軸駆動装置8からは、左右の前車軸駆動軸14L・14Rがそれぞれ左右方向に延出され、該前車軸駆動軸14L・14Rの外側端には前輪車軸26L・26Rが連結され、更に、該前輪車軸26L・26Rには前輪5L・5Rが旋回可能に支持されている。また、前記前車軸駆動装置8の内部には、左右の前車軸駆動軸14L・14R間を差動連結する差動装置7と、後方に前駆動入力軸10を延出した減速装置30とが収納されている。
【0008】
そして、前記車体フレーム4の前後略中央部には、エンジン2が載置され、該エンジン2からの出力軸2aが、変速装置3を介して前後のドライブシャフト28・29に駆動連結され、該前ドライブシャフト28の前端は、前記前駆動入力軸10の後端に連結されている。
【0009】
これにより、前記エンジン2からの駆動力が、変速装置3で変速された後、前ドライブシャフト28を介して前駆動入力軸10に入力され、減速装置30で減速されてから、前車軸駆動軸14を介して前輪車軸26L・26Rに伝達され、旋回可能な前記前輪5L・5Rを駆動するようにしている。
【0010】
また、前記車体フレーム4の後部には後車軸駆動装置9が配設され、該後車軸駆動装置9からは、左右の後車軸駆動軸15L・15Rがそれぞれ左右方向に延出され、該後車軸駆動軸15L・15Rの外側端には後輪車軸27L・27Rが連結され、更に、該後輪車軸27L・27Rには後輪6L・6Rが軸支されている。そして、前記後車軸駆動軸15L・15Rと、該後車軸駆動軸15L・15Rの内側端間を相対回転不能に連結する車軸連結筒15cとから、後車軸駆動軸15全体が構成されている。
【0011】
更に、前記後車軸駆動装置9では、車軸連結筒15cがリダクションケース17に軸受支持され、該リダクションケース17の前端にはブレーキハウジング16が一体的に連接されている。そして、該ブレーキハウジング16には、前後方向に延設され前端を前記後ドライブシャフト29後端と駆動連結した後駆動入力軸11と、該後駆動入力軸11に周設されたブレーキ装置12とが収納されると共に、前記リダクションケース17には、減速装置13が収納されている。
【0012】
これにより、前記エンジン2からの駆動力は、変速装置3で変速された後、後ドライブシャフト29を介して、ブレーキ装置12によって制動可能な後駆動入力軸11に入力され、減速装置13で減速されてから、前記後車軸駆動軸15を介して後輪車軸27L・27Rに伝達され、前記後輪6L・6Rを駆動する。
【0013】
次に、以上のような構成の走行車輌懈1における、ブレーキ装置12の冷却構造の第一実施例について、図2乃至図4により説明する。
まず、該冷却構造を有する後車軸駆動装置9の構成について、後部のリダクションケース17から前部のブレーキハウジング16の順に、図2と図3により説明する。
リダクションケース17は、後下部に油溜まり24を有するケース本体33の後部33bと、該ケース本体後部33bの開放された左端面にボルトで締結される左壁部材34とから構成され、該左壁部材34に装着されるボールベアリング36によって前記車軸連結筒15cの左端が支承される一方、該車軸連結筒15cの右端は、前記ケース本体後部33bの右端部に装着されるボールベアリング37によって支承される。すなわち、前記後車軸駆動軸15L・15Rは、車軸連結筒15cを介して前記左壁部材34とケース本体後部33bに支持されている。
【0014】
前記ケース本体後部33bには、前記後駆動入力軸11の後端外周面をニードルベアリング39を介して支承する軸受けブラケット40と、この後駆動入力軸11の中間部をボールベアリング38を介して支承するボス部41とが一体的に形成されており、該軸受けブラケット40とボス部41とによって後駆動入力軸11の後部が軸受支持されている。
【0015】
そして、前記減速装置13は、このような後駆動入力軸11と、該後駆動入力軸11の後部に一体的に形成される小径の駆動ベベルギア31と、該駆動ベベルギア31に噛合すると共に前記車軸連結筒15c外周にスプライン結合される大径の従動ベベルギア32とから成り、前記後ドライブシャフト29を介して後駆動入力軸11に入力された駆動力は、この減速装置13によって減速されてから車軸連結筒15cに伝達される。
【0016】
更に、前記左壁部材34には左後車軸駆動軸15Lの外周面に密接するオイルシール42が装着され、前記ケース本体後部33bには右後車軸駆動軸15Rの外周面に密接するオイルシール43が装着されており、該オイルシール42・43によってリダクションケース17は液密に構成される。そして、このように液密に構成されたリダクションケース17内に前記油溜まり24が形成されており、潤滑油44が、図示せぬ給油口から前記従動ベベルギア32の下部を浸漬させる油面レベルまで注入されている。
【0017】
また、このようなリダクションケース17の前部に連接されたブレーキハウジング16は、前記ボス部41の前端に一体的にフランジ状に形成されたケース本体33の前部33aと、該ケース本体前部33aの開放端面にボルト46で着脱可能に固定される前壁部材35とから構成され、該前壁部材35の正面視略中央には、前記後駆動入力軸11の前部を支承するボールベアリング47と、該後駆動入力軸11の外周面に密接するオイルシール48とが装着されている。これにより、後駆動入力軸11が前記軸受けブラケット40とボス部41に加えて該前壁部材35によっても軸受支持されるようにすると共に、前記リダクションケース17から後述の如く供給される潤滑油44がブレーキハウジング16内から外に漏出しないように、ブレーキハウジング16も液密に構成されている。従って、該ブレーキハウジング16、前記リダクションケース17から成る後車軸駆動装置9は、全体が液密に構成され、潤滑油が内部で還流可能な構成となっている。
【0018】
該ブレーキハウジング16内のブレーキ装置12は、後駆動入力軸11のスプライン軸部11aに摺動自在で相対回転不能に接合された複数の回転摩擦板22と、該回転摩擦板22と交互に重ねられると共にケース本体前部33aの内周面に摺動自在で回転不能に接合して支持された複数の固定摩擦板23と、これら回転摩擦板22と固定摩擦板23の最後部の固定摩擦板23を受ける受圧部55と、該受圧部55に向かって回転摩擦板22と固定摩擦板23の最前部の固定摩擦板23を押圧するブレーキ作動機構158とを備える。そして、該受圧部55は、後述する汲み上げポンプ装置151のポンプケース157と兼用されている。
【0019】
該ブレーキ作動機構158は、前記ケース本体前部33aの固定摩擦板23に隣接して配置される環状の回転カム板49と、該回転カム板49と前記ケース本体前部33aの対向面に形成されたボール溝49a・33cに係合するボール50とを備え、該ボール溝49a・33cは、周方向に延びると共に、それぞれの溝底が互いに反対側の端部に向けて浅くなるように形成されている。このような構成において、回転カム板49を所定方向に回転させると、該回転カム板49は、前記ボール溝49a・33cにガイドされながらボール50上を摺動し、ケース本体前部33aから離間する方向、すなわち回転摩擦板22と固定摩擦板23を押圧する側へ移動するようにしている。
【0020】
前記回転カム板49には、外周面の半径方向に従動アーム49bが形成され、該従動アーム49bは、前記前壁部材35とケース本体前部33aによって前後方向に支承されたブレーキ作動軸154の駆動アーム155と係合している。該ブレーキ作動軸154の一端は、前壁部材35を貫通してブレーキハウジング16の外に突出され、該突出端には作動レバー53が接合され、該作動レバー53は、図示せぬブレーキワイヤを介して各種のブレーキレバーに連結されている。
【0021】
更に、前記回転摩擦板22と固定摩擦板23の最前後部に位置する固定摩擦板23・23のいくつかのスプライン歯23a・23aにはガイドピン57が摺動自在に取り付けられ、該ガイドピン57に外嵌されたレリーズばね56が前記スプライン歯23a・23a間に縮設されている。
【0022】
このような構成において、前記ブレーキ装置12が非作動状態にある場合は、対をなすボール溝49a・33cの最深部にボール50を係合させて前記回転カム板49をケース本体前部33aに最も近接した位置に配置させると共に、レリーズばね56の弾性力によって最前後部の固定摩擦板23・23間を相互に離間させるので、回転摩擦板22と固定摩擦板23との間に隙間が生じて摩擦抵抗が発生せず、前記駆動入力軸11の回動が阻害されない。
【0023】
一方、ブレーキ装置12を作動状態にする場合は、走行中に図示せぬ前記ブレーキレバーを操作してブレーキワイヤを牽引し、前記作動レバー53を回動させて、前記駆動アーム155と従動アーム49bを介して回転カム板49を回転させる。この際、該回転カム板49を、前記ボール溝49a・33cが互いに浅い側を対向する方向に回転させると、それに伴って、回転カム板49は、ボール50上を摺動して前記受圧部55側に移動し、該受圧部55と協動して回転摩擦板22と固定摩擦板23とを挟圧する。すると、該回転摩擦板22と固定摩擦板23との間に摩擦力が発生して、前記駆動入力軸11が制動されるのである。
【0024】
次に、このような構成から成る後車軸駆動装置9における、ブレーキ装置12の冷却構造について、図2乃至図4により説明する。
前記ブレーキ装置12より前方の後駆動入力軸11上には、前面を前壁部材35の内側壁面に固設したトロコイド式の汲み上げポンプ装置151が設けられている。該汲み上げポンプ装置151は、後駆動入力軸11上に外嵌固定されたインナーロータ159と、該インナーロータ159の外側に遊嵌されたアウターロータ160と、これらのトロコイドロータを収納するポンプケース157とから構成され、該ポンプケース157には吸入ポート161と排出ポート162とが開口されている。なお、本実施例では内接形ギアポンプの一種のトロコイド式ポンプを用いて説明するが、通常の外接形ギアポンプ等でもよく、設置体積が小さく、下部空間62からの吸い上げが可能なポンプであれば特に限定されるものではない。
【0025】
これらのうちの排出ポート162からは、ポンプケース157内に排出油路164が延設され、該排出油路164の先部には側面視L字状の吐出口153が形成され、該吐出口153は前記ブレーキ装置12の上方に開放されている。一方、前記吸入ポート161からは、ポンプケース157内に吸入油路163が垂設され、該吸入油路163下端には吸入口152が形成され、該吸入口152は前記ブレーキハウジング16の下部空間62に開口されている。
【0026】
そして、該下部空間62と、前記リダクションケース17の油溜まり24との間は連絡油路61によって連通されており、該連絡油路61を介して、油溜まり24内の潤滑油44と下部空間62内の潤滑油とが相互に行き来できるようにしている。
【0027】
このような構成において、走行中、前記後駆動入力軸11が回動すると、該後駆動入力軸11上のインナーロータ160が回転駆動され、前記下部空間62内の潤滑油44が吸入口152から吸い上げられ、吸入油路163を通って吸入ポート161から汲み上げポンプ装置151内に吸い込まれる。この吸い込まれた潤滑油44は、排出ポート162から排出され、排出油路164を通って吐出口153に到達し、該吐出口153からブレーキ装置12の上部に向かって勢いよく吐出される。
【0028】
この吐出した潤滑油44は、逸れてブレーキハウジング16の内壁に向かったりすることなく、そのほとんどがブレーキ装置12に到達するため、最も発熱の大きな回転摩擦板22と固定摩擦板23との間はもちろんのこと、ブレーキ装置12全体に潤滑油44を無駄なく行き渡らせることができる。加えて、前記吸入口152の高さを低く設定しておくことで、不整地走行中に車体の傾きが大きい場合等に、たとえ油面が低くなるようなことがあっても、吸入口152を潤滑油44内に常に浸漬させておくことができ、該潤滑油44をブレーキ装置12の上部に絶やさず送出することができる。加えて、潤滑油44を少なくして油面を予め低く設定しておくことで、走行中に高速で回転する回転摩擦板22が潤滑油44に浸漬しないようにすることができ、潤滑油による攪拌抵抗が生じないようにすることができるのである。
【0029】
また、前記ポンプケース125内で前記排出油路164よりも低位置にリーク油路130を設け、該リーク油路130の一端を前記排出ポート162に連通し、リーク油路130の他端をブレーキハウジング16内の空間に連通させると共に、該リーク油路130の途中部にリークバルブ156を設けている。
【0030】
該リークバルブ156は、前記ブレーキ作動軸154の一部に設けられ、該ブレーキ作動軸154の直径方向に切換油路156aを穿設し、該切換油路156aを前記リーク油路130と同軸上に設けて成るものであり、切換油路156aがリーク油路130と同軸上にある場合は、該リーク油路130がブレーキハウジング16の内部空間に連通され、ブレーキ作動軸154が回動して切換油路156aがリーク油路130と同軸上でなくなる場合は、リーク油路130はリークバルブ156によって途中部で遮断される。
【0031】
このような構成において、走行中で前記ブレーキ装置12が非作動状態にある場合には、切換油路156aがリーク油路130と同軸上となるようにブレーキ作動軸154が回動されて、リーク油路130が開状態となるため、前記下部空間62から吸入口152を介して吸い上げられた潤滑油44は、排出油路164に流れ込むことなく、そのまま該排出油路164よりも低位置にあるリーク油路130に流れ込み、ブレーキハウジング16の内部空間に排出される。
【0032】
そして、走行中に図示せぬブレーキレバーの操作によってブレーキワイヤを牽引し作動レバー53を操作すると、ブレーキ作動軸154が回動され、駆動アーム155・従動アーム49bを介してブレーキ装置12が作動状態になる。それと同時に、リークバルブ156がリーク油路130の途中部を遮断して閉状態とするため、前記下部空間62から吸入口152を介して吸い上げられた潤滑油44は、ブレーキハウジング16の内部空間にそのまま排出されることなく、排出油路164に流れ込み、該排出油路164を通って吐出口153からブレーキ装置12に向かって吐出される。この吐出された潤滑油44は、そのほとんどがブレーキ装置12全体に無駄なく行き渡り冷却しながら流下して、前記下部空間に62に流入する。
【0033】
つまり、ブレーキ装置12が非作動状態にあって回転摩擦板22が高速で回転している走行中は、潤滑油44はブレーキ装置12に吐出されることがなく、ブレーキ装置12を作動させて初めて、潤滑油44がブレーキ装置12に吐出され、その結果、吐出された潤滑油44についても、高速回転する回転摩擦板22によって攪拌されることがなくなる。
【0034】
すなわち、エンジン2と、該エンジン2に駆動連結され車両の前後方向に延設される駆動入力軸11と、該駆動入力軸11に周設されるブレーキ装置12と、車両の左右方向に延設される車軸駆動軸15と、該車軸駆動軸15と前記駆動入力軸11間とを連結すると共に車軸への伝達動力を減速する減速装置13と、該減速装置13や前記車軸駆動軸15を収容するリダクションケース17とを備えたバギー車1において、前記ブレーキ装置12の上部又は下部に油を送出して冷却するための汲み上げポンプ装置151のような給油手段と、該給油手段を前記ブレーキ装置12が作動中にのみ動作させるためのリークバルブ156のような同期手段とを設けたので、専用の前記給油手段によって、油をブレーキ装置12全体に無駄なく供給することができ、ブレーキ装置12に対して十分な冷却効果を得ることができる。また、走行中の油面を予め低く設定しておき、ブレーキ装置12がその下部空間62の油に浸漬しないようにできるため、高速回転する摩擦板22等が下部空間62の油を攪拌する際の攪拌抵抗による伝達動力の損失や熱の発生を防止することができる。加えて、ブレーキ装置12が作動しない走行中には前記給油手段は動作しないため、高速回転する摩擦板22等の上部や下部に供給される油に起因した攪拌抵抗による伝達動力の損失や熱の発生も防止することができる。
【0035】
更に、前記給油手段は、吐出口153を前記ブレーキ装置12上方に開口した汲み上げポンプ装置151を備え、該汲み上げポンプ装置151の吸入口152は前記ブレーキ装置12を収納するブレーキハウジング16の下部空間62に開口され、該下部空間62は前記リダクションケース17と連通されており、リダクションケース17から下部空間62に流入した油を、該汲み上げポンプ装置151によって吐出口153からブレーキ装置12上部に供給するので、ブレーキハウジング16内の油量が少なくても前記汲み上げポンプ装置151を使って油をブレーキ装置12の上部に確実に供給できるため、車体の傾きが大きく変化し油面が変動しやすい走行中でも安定した冷却効果を得ることができる。
【0036】
加えて、同期手段は、前記吸入口152から吐出口153までの経路の途中部にリークバルブ156を備え、該リークバルブ156は前記ブレーキ装置12と連動連結されており、ブレーキ装置12が非作動状態ではリークバルブ156が開となり、ブレーキ装置12が作動状態ではリークバルブ156が閉となって油が吸入口152から吐出口153まで流れるので、複雑な装置を設けることなく簡単な構成で、前記汲み上げポンプ装置151をブレーキ装置12が作動中にのみ動作させることができ、製造コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができるのである。
【0037】
次に、ブレーキ装置の冷却構造の第二実施例について、図5乃至図7により説明する。
まず、本第二実施例の冷却構造を有する後車軸駆動装置9の構成について説明する。なお、シール構造や軸受け構造の詳細については前記第一実施例と同様なので省略する。
リダクションケース207は、後下部に油溜まり24を有するケース本体204の後部204bと、該ケース本体後部204bの開放された左端面にボルトで締結される左壁部材34とから構成され、該左壁部材34とケース本体後部204bとに、前記後車軸駆動軸15L・15Rが車軸連結筒15cを介して支承されている。そして、前記ケース本体後部204bには、軸受けブラケット209とボス部210とが一体的に形成され、該軸受けブラケット209とボス部210に後駆動入力軸11の後部が軸受支持されている。該後駆動入力軸11の後部には小径の駆動ベベルギア31が一体的に形成され、該駆動ベベルギア31には、前記車軸連結筒15c外周にスプライン結合される大径の従動ベベルギア32が噛合して減速装置13を構成し、該減速装置13によって後駆動入力軸11の駆動力を減速して車軸連結筒15cに伝達するようにしている。
【0038】
このようなリダクションケース207の前部に連接されたブレーキハウジング206は、前記ボス部210の前端に一体的にフランジ状に形成された、ケース本体204の前部204aと、該ケース本体前部204aの開放端面に複数のボルト46で着脱可能に固定される前壁部材205とから構成され、該前壁部材205の正面視略中央には後駆動入力軸11の前部が軸受支持されている。
【0039】
該ブレーキハウジング206内のブレーキ装置12は、複数の回転摩擦板22と、該回転摩擦板22と交互に重ねられる複数の固定摩擦板23と、これら回転摩擦板22と固定摩擦板23の最前部の固定摩擦板23を受ける受圧部211と、該受圧部211に向かって回転摩擦板22と固定摩擦板23の最後部の固定摩擦板23を押圧するブレーキ作動機構158とを備える。なお、前記受圧部211は、前記前壁部材205の内壁より後方に突設されている。
【0040】
該ブレーキ作動機構158には、第一実施例と同様に、環状の回転カム板49と、該回転カム板49と前記ボス部210前部のブレーキハウジング206内壁との対向面に形成されたボール溝49a・204cに係合するボール50とを備えており、該ボール溝49a・204cは、周方向に延びると共に、それぞれの溝底が互いに反対側の端部に向けて浅くなるように形成されている。このような構成で、該回転カム板49を所定方向に回転させると、該回転カム板49がボール溝49a・204cにガイドされながらボール50上を摺動し、回転摩擦板22と固定摩擦板23を押圧する側へ移動するようにしている。
【0041】
そして、該回転カム板49には、外周面の半径方向に従動アーム49bが形成され、該従動アーム49bは、前記前壁部材205とケース本体前部204aによって前後方向に支承されたブレーキ作動軸212の駆動アーム213と係合している。該ブレーキ作動軸212の一端は、前壁部材205を貫通してブレーキハウジング206の外に突出され、該突出端には作動レバー53が接合され、該作動レバー53は、図示せぬブレーキワイヤを介して各種のブレーキレバーに連結されている。更に、前記回転摩擦板22と固定摩擦板23の最前後部のスプライン歯23a・23aにはガイドピン57が摺動自在に取り付けられ、該ガイドピン57に外嵌されたレリーズばね56が前記スプライン歯23a・23a間に縮設されている。
【0042】
このような構成において、前記ブレーキ装置12が非作動状態にある場合は、前記回転カム板49をケース本体前部204aに最も近接した位置に配置させると共に、レリーズばね56の弾性力によって最前後部の固定摩擦板23・23間を相互に離間させるので、回転摩擦板22と固定摩擦板23との間に隙間が生じて摩擦抵抗が発生せず、前記駆動入力軸11の回動が阻害されない。
【0043】
一方、ブレーキ装置12を作動状態にする場合は、走行中に図示せぬ前記ブレーキレバーを操作してブレーキワイヤを牽引し、前記作動レバー53を回動させて、前記駆動アーム213と従動アーム49bを介して回転カム板49を回転させる。この際、該回転カム板49を、前記ボール溝49a・204cが互いに浅い側を対向する方向に回転させると、それに伴って、回転カム板49は、ボール50上を摺動して前記受圧部211側に移動し、該受圧部211と協動して回転摩擦板22と固定摩擦板23とを挟圧する。すると、該回転摩擦板22と固定摩擦板23との間に摩擦力が発生して、前記駆動入力軸11が制動される。
【0044】
次に、このような構成から成る後車軸駆動装置9における、ブレーキ装置12の冷却構造について説明する。
前記リダクションケース207の油溜まり24とブレーキハウジング206の下部空間62との間には連絡油路203が連通可能に形成され、該連絡油路203にポンプ軸202が取り付けられて横送りポンプ装置201が構成される。そして、該ポンプ軸202は、前半部の支持部202aと後半部の送り部202bとから成り、該送り部202bは、外周にスクリューが刻設されて前記連絡油路203に内挿され、前記支持部202aは、その前端が前記前壁部材245に軸支されている。
【0045】
前記支持部202aの途中部には従動プーリ215が外嵌固定される一方、該従動プーリ215の上方で前記ブレーキ装置12よりも前方の後駆動入力軸11外周には、駆動プーリ214がスプライン結合され、該駆動プーリ214と前記従動プーリ215との間に、伝達ベルト216が弛緩した状態で巻回されて、伝達機構217が構成されている。
【0046】
更に、前記伝達ベルト216の近傍にはクラッチ機構218が配設され、該クラッチ機構218は、前記ブレーキ作動軸212に一端を固設したテンションアーム220と、該テンションアーム220の他端に回動自在に取り付けられ前記伝達ベルト216の外周に当接可能なテンションプーリ219とにより構成される。
【0047】
このような構成において、走行中で前記ブレーキ装置12が非作動状態にある場合には、ブレーキ作動軸212が回動せずにテンションアーム220は初期位置221でクラッチ切の状態にあるため、前記伝達ベルト216は緩んだままで、後駆動入力軸11の駆動力は前記従動プーリ215に伝達されず、前記エンジン2からの駆動力は遮断されている。
【0048】
そして、走行中に図示せぬブレーキレバーの操作によってブレーキワイヤを牽引して作動レバー53を操作すると、ブレーキ作動軸212が回動され、駆動アーム213・従動アーム49bを介してブレーキ装置12が作動状態になる。それと同時に、前記ブレーキ作動軸212に固設されたテンションアーム220も、前記初期位置221から回動位置222まで回動され、該テンションアーム220先部のテンションプーリ219が、前記伝達ベルト216を押圧し、該伝達ベルト216は緊張してクラッチ入の状態となる。すると、後駆動入力軸11の駆動力は従動プーリ215に伝達され、該従動プーリ215に連結された前記ポンプ軸202が回動する。
【0049】
すると、前記送り部202bのスクリュー202cの回動によって、リダクションケース207の油溜まり24内の潤滑油44は連絡油路203内に吸い込まれ、回転するスクリュー202cと連絡油路203内壁との間の空間を通って、ブレーキハウジング206の下部空間62に吐き出される。該下部空間62内への潤滑油44の供給が進むにつれて、油面が上昇していき、その結果、徐々に制動が進み摩擦熱で発熱する回転摩擦板22と固定摩擦板23の下部は、潤滑油44内に浸漬されて冷却されるのである。
【0050】
つまり、ブレーキ装置12が非作動状態にあって回転摩擦板22が高速で回転している走行中は、ブレーキ装置12が潤滑油44に浸漬することがなく、ブレーキ装置12を作動させて初めて、潤滑油44の油面が上昇してブレーキ装置12の下部が浸漬されるので、高速回転する回転摩擦板22によって潤滑油が激しく攪拌されることがなく、攪拌による伝達動力の損失や熱の発生を最小限に抑制できるのはもちろんのこと、冷却媒体である潤滑油44が多量に存在する中に浸漬するので、第一実施例のように潤滑油44がブレーキ装置12を流下しながら冷却が進む場合と比べて、冷却効率に優れている。
【0051】
すなわち、記給油手段は、前記ブレーキ装置12を収納するブレーキハウジング206の下部空間62と前記リダクションケース207との間に介設された横送りポンプ装置201を備え、リダクションケース207内の油を、該横送りポンプ装置201によって下部空間62に供給して油面を上昇させ、ブレーキ装置12下部を浸漬するので、ブレーキ装置12の摩擦板等に沿って油を流下させて冷却する場合と比べ、冷却媒体の量が多くて冷却能力が高いため、冷却効果の更なる向上を図ることができる。
【0052】
また、走行中は、前記クラッチ機構218は切状態にあり、後駆動入力軸11は横送りポンプ装置201と動力伝達に関しては完全に遮断されているため、後駆動入力軸11の駆動が横送りポンプ装置201によって阻害されることがなく、エンジン2からの駆動力は後駆動入力軸11を介して後輪6L・6Rにそのまま伝達される。
【0053】
すなわち、前記同期手段は、前記横送りポンプ装置201のポンプ軸202を前記駆動入力軸11に駆動連結する伝達機構217と、該伝達機構217によって伝達される動力を継断するクラッチ機構218とを備え、該クラッチ機構218は前記ブレーキ装置212と連動連結されており、ブレーキ装置212が非作動状態ではクラッチが切れて動力が遮断され、ブレーキ装置212が作動状態ではクラッチが入って動力が前記横送りポンプ装置201に伝達されるので、通常の走行中は、ブレーキ装置212が非作動状態でクラッチが切れているため、横送りポンプ装置201を駆動することによる駆動入力軸11への負担がほとんどなく、走行のための伝達動力の損失を最小限に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、同様な車軸駆動構成を有する、走行車輌以外で、潤滑油をブレーキ装置の冷却に使用するトラクター等の各種運搬車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に関わる走行車輌としてのバギー車の全体構成を示す平面図である。
【図2】第一実施例に係わる後車軸駆動装置の側面一部断面図である。
【図3】同じく平面一部断面図である。
【図4】同じく図2のA−A断面図である。
【図5】第二実施例に係わる後車軸駆動装置の側面一部断面図である。
【図6】同じく平面一部断面図である。
【図7】同じく図5のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 走行車輌
2 エンジン
11 駆動入力軸
12、212 ブレーキ装置
13 減速装置
15 車軸駆動軸
16、206 ブレーキハウジング
17、207 リダクションケース
62 下部空間
151 汲み上げポンプ装置151
152 吸入口
153 吐出口
156 リークバルブ
201 横送りポンプ装置
202 ポンプ軸
217 伝達機構
218 クラッチ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンに駆動連結され車両の前後方向に延設される駆動入力軸と、該駆動入力軸に周設されるブレーキ装置と、車両の左右方向に延設される車軸駆動軸と、該車軸駆動軸と前記駆動入力軸間とを連結すると共に車軸への伝達動力を減速する減速装置と、該減速装置や前記車軸駆動軸を収容するリダクションケースとを備えた走行車輌において、前記ブレーキ装置の上部又は下部に油を送出して冷却するための給油手段と、該給油手段を前記ブレーキ装置が作動中にのみ動作させるための同期手段とを設けたことを特徴とする走行車輌。
【請求項2】
前記給油手段は、吐出口を前記ブレーキ装置上方に開口した汲み上げポンプ装置を備え、該汲み上げポンプ装置の吸入口は前記ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングの下部空間に開口され、該下部空間は前記リダクションケースと連通されており、リダクションケースから下部空間に流入した油を、該汲み上げポンプ装置によって吐出口からブレーキ装置上部に供給することを特徴とする請求項1記載の走行車輌。
【請求項3】
前記同期手段は、前記吸入口から吐出口までの経路の途中部にリークバルブを備え、該リークバルブは前記ブレーキ装置と連動連結されており、ブレーキ装置が非作動状態ではリークバルブが開となり、ブレーキ装置が作動状態ではリークバルブが閉となって油が吸入口から吐出口まで流れることを特徴とする請求項2記載の走行車輌。
【請求項4】
前記給油手段は、前記ブレーキ装置を収納するブレーキハウジングの下部空間と前記リダクションケースとの間に介設された横送りポンプ装置を備え、リダクションケース内の油を、該横送りポンプ装置によって下部空間に供給して油面を上昇させ、ブレーキ装置下部を浸漬することを特徴とする請求項1記載の走行車輌。
【請求項5】
前記同期手段は、前記横送りポンプ装置のポンプ軸を前記駆動入力軸に駆動連結する伝達機構と、該伝達機構によって伝達される動力を継断するクラッチ機構とを備え、該クラッチ機構は前記ブレーキ装置と連動連結されており、ブレーキ装置が非作動状態ではクラッチが切れて動力が遮断され、ブレーキ装置が作動状態ではクラッチが入って動力が前記横送りポンプ装置に伝達されることを特徴とする請求項4記載の走行車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24176(P2007−24176A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206973(P2005−206973)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】