説明

起重機

【課題】ばら物を荷役する起重機において、ばら物の荷役効率を向上させる。
【解決手段】ばら物4を陸揚げするアンローディングクレーン1において、ばら物4をばら積み船3から掴持して吊り上げる開閉式のグラブバケット6と、そのグラブバケット6からばら物を受け取り、ホッパまで横行搬送するトラバーサ7とを備えた。このトラバーサ7の下部に、ばら物4をグラブバケット6から受け取り、ホッパ8の投入口に対して斜めに投入するバケット部7bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起重機に関し、更に詳しくは、例えば穀物、岩塩、砂、石炭または鉄鉱石のような各種のばら物を荷役する起重機において、ばら物の荷役効率を向上させることが可能な起重機に関する。
【背景技術】
【0002】
グラブバケット方式のアンローディングクレーン(以下、単にクレーンという)は、例えば製鉄所や火力発電所において鉄鉱石や石炭等のような重量のばら物を、クレーンのトロリに吊り下げられた開閉式のグラブバケットを用いて、ばら積み船等から陸揚げする機器である。
【0003】
図13に、この種のクレーン50の構成を示す。ばら積み船51の船倉内の重量のばら物52は、クレーン50のグラブバケット53により掴持された後、グラブバケット53を吊ったトロリ54の横行によってホッパ55まで運ばれ、ホッパ55に投入される。このホッパ55に投入されたばら物52は、ホッパ55の排出口下に配置された機内コンベア56によって後背地の主コンベア57に運ばれ、この主コンベア57によって所望の場所に搬送される。通常、主コンベア57は複数のラインが設置されており、そのライン選択は、機内コンベア56によって行われる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年は、ばら積み船の大型化と作業能率の追求から、クレーンの陸揚げ能力が、例えば3000−5000t/h級にまで増大している。このクラスのクレーンでは、定格荷重40−80ton、横行速度200m/sにまで達している。
【0005】
しかしながら、このような荷重の増大と横行速度の上昇に伴い荷ぶれも大きくなり操作性が低下している。すなわち、ロープで重量のばら物を吊りながら走行する横行体としては、構造上、横行速度も限界に達しており、ばら物の荷役効率の向上を阻害する、という問題がある。
【0006】
また、ばら物の荷役作業が最後の方になると、ばら物が少なすぎてグラブバケットで掴持することができない。そこで、ブルドーザをクレーンのトロリで吊り上げて、ばら積み船内に運び入れ、ばら物を運び出している。しかし、機内コンベアがあるとブルドーザを吊り上げることができないので、機内コンベアを移動し、それからブルドーザを吊り上げることが行われている。このため、ばら物の荷役効率を阻害する、という問題がある。また、機内コンベアは、移動のための機構を備える等、複雑で高価な機構を備えているので、機内コンベアを備えるクレーンのコストも増大する、という問題もある。
【0007】
また、グラブバケットを用いた場合、グラブバケットを開いてばら物をホッパに投入する際に、グラブバケットの直下に垂直に落とすので周囲に粉塵が飛散し易い。このため、環境清浄化の観点から、高い機能を持った集塵式または散水式の発塵防止システムをホッパに設置しなければならず、クレーンのコストが増大する、という問題がある。
【0008】
なお、貨物をコンテナに入れて搬送するコンテナクレーンにおいては、スプレッタ等のような吊り具を用いて吊り上げたコンテナをトラバーサに載せ換えた後、そのトラバーサをガーダに沿って横行走行させて所定の場所まで搬送する構成がある(例えば特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−309428号公報
【特許文献2】特開2000−143154号公報
【特許文献3】米国特許5570986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ばら物を荷役する起重機において、ばら物の荷役効率を向上させることが可能な起重機を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、ばら物を荷役する起重機のコストを低減することが可能な起重機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の起重機は、橋桁部上に設置されたトロリから吊り下げられた開閉式のグラブバケットによって、ばら物を掴持して吊り上げる構成を備える起重機において、前記グラブバケットにより掴持されたばら物を受け取り、前記グラブバケットから離れた位置に配置されたホッパに投入するトラバーサを前記橋桁部に備え、前記トラバーサは、前記グラブバケットの直下において前記ばら物を受け取るバケット部を備え、前記トラバーサのバケット部のばら物を前記ホッパに投入する際に、そのばら物を前記ホッパの投入口に対して斜めに投入するように前記トラバーサのバケット部を傾斜させて開放する傾斜機構を備えている。
【0013】
また、上記した起重機において、前記トラバーサのバケット部は、前記トラバーサの本体の下部に支持されており、前記傾斜機構は、前記トラバーサ部の一端に設けられ、かつ、前記バケット部を回転可能な状態で軸支する回転軸と、前記バケット部を前記回転軸を支持点として開閉する開閉手段とを備えている。
【0014】
また、上記した起重機において、前記傾斜機構は、前記トラバーサの移動時にはバケット部を固定ピンにより固定し、前記ばら物のホッパへの投入時にはバケット部をバケット部およびばら物の自重により開放し、前記ばら物のホッパへの投入後にはバケット部を閉じて前記固定ピンで固定する機構を有している。
【0015】
また、上記した起重機において、前記ホッパは、その後段の搬送ラインを選択可能なように、傾転、移動またはホッパの排出口に設けた排出トレイの位置を変更する機構を備えている。
【0016】
また、上記した起重機において、前記グラブバケットの巻下げ時に電動発電機から発生する回生電力を、前記トラバーサの移動時の加速エネルギーの一部として使用する。これにより、起重機の消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の起重機によれば、ばら物を掴持して吊り上げるグラブバケットと、そのグラブバケットのばら物を受け取りホッパまで搬送するトラバーサとを橋桁部に設けたことにより、グラブバケットは上下運動にトラバーサは横行搬送にとそれぞれの役割を特化することができるので、ばら物の荷役効率を向上させることができる。また、トラバーサは剛体構造物なので、その横行搬送に際して、ロープで吊り下げたグラブバケットを横行搬送させる場合に生じる荷ぶれが無い。このため、ばら物の搬送速度を向上させることができる。また、トラバーサの横行搬送を自動化することにより、運転手はグラブバケットの上下操作に専念することができるので、作業効率および安全性を向上させることができる。これらにより、ばら物の荷役効率を向上させることができる。
【0018】
また、トラバーサを設けたことにより、複雑で高価な機能を備えた機内コンベアを無くすことができる。また、トラバーサのばら物をホッパの投入口に対して斜めに投入することにより、ホッパの周辺での粉塵の飛散を低減できるので、ホッパに設ける集塵式または散水式の発塵防止システムを簡単化することができる。これらにより、起重機のコストを低減することができる。
【0019】
また、トラバーサを設けたことにより、機内コンベアを無くすことができるので、ばら物の荷役作業の最後に機内コンベアを移動する時間を必要としない。このため、ばら物の荷役効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の起重機であるクレーンの全体構成図である。
【図2】図1のA方向から見たグラブバケット、トロリおよびトラバーサの要部構成図である。
【図3】トラバーサの側面図である。
【図4】ホッパの拡大構成図である。
【図5】ホッパの変形例を示す拡大構成図である。
【図6】ホッパの他の変形例を示す拡大構成図である。
【図7】ばら物の荷役作業中のクレーンの作業状態を示す全体構成図である。
【図8】図7に続くクレーンの作業状態を示す全体構成図である。
【図9】図8に続くクレーンの作業状態を示す全体構成図である。
【図10】図9に続くクレーンの作業状態を示す全体構成図である。
【図11】図10に続くクレーンの作業状態を示す全体構成図である。
【図12】図11に続くクレーンの作業状態を示す全体構成図である。
【図13】従来のクレーンの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の起重機について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[起重機の全体構成]
図1に本実施の形態の起重機であるアンローディングクレーン(以下、単にクレーンという)1の全体構成を示す。
【0023】
クレーン1は、岸壁2に接岸係留中のばら積み船3の船倉3a内に積み込まれた穀物、岩塩、砂、石炭または鉄鉱石等のばら物4を陸揚げする装置であり、その本体5には、開閉式のグラブバケット6と、トラバーサ7と、ホッパ8とが設置されている。
【0024】
クレーン1の本体5は、岸壁2の上面に敷設された走行レール(図示せず)上を走行可能な状態で設置されており、岸壁2の上面に立設された2つの脚部5a,5bと、これらを橋渡すように設けられたクレーンガータ(橋桁部)5cとを備えている。
【0025】
クレーンガーダ5cは、陸側に設けられたガーダ5cgと、それよりも海側に張り出すように設けられたブーム5cbとを備えている。なお、特に限定されるものではないが、クレーンガーダ5cの長手方向の全長は、例えば100m程度、岸壁2の上面からガーダ5cgまでの高さは、例えば30m程度、ばら積み船3の船倉3aからブーム5cbまでの距離は、例えば10m程度である。
【0026】
このクレーンガータ5cには、トロリ10がクレーンガータ5cに沿って水平に移動可能な状態で支持されている。このトロリ10には、上記したグラブバケット6が複数本のワイヤロープ11を介して昇降可能な状態で吊り下げられている。グラブバケット6は、ばら積み船3のばら物4を掴持して吊り上げる吊り具である。このグラブバケット6の開閉動作および昇降動作は、グラブバケット6の開閉用および支持用のワイヤロープ11の巻上げおよび巻下げ操作により制御される。
【0027】
また、クレーンガータ5cおよび脚部5a上には、機械室12が設置されている。この機械室12には、ワイヤロープ11を操作するワイヤドラム(図示せず)が設置されている。ワイヤドラムは図示しないモータ(電動発電機)によって駆動する。このワイヤドラムから巻出されたワイヤロープ11はトロリ10のシーブ(図1には図示せず)を介してグラブバケット6に接続されている。
【0028】
また、クレーンガータ5cには、上記したトラバーサ7がグラブバケット6の直下から上記したホッパ8の直上までクレーンガータ5cに沿って水平に移動可能な状態で支持されている。このトラバーサ7は、グラブバケット6に掴持されたばら物4を受け取り、それをホッパ8まで搬送してホッパ8の投入口に投入するための横行搬送体である。また、トラバーサ7は、グラブバケット6の直下においてばら物4を受け取り、かつ、そのばら物4をホッパ8の投入口に対して斜めに投入することが可能なバケット部7bを備えている。
【0029】
ホッパ8は、トラバーサ7から投入されたばら物4を後背地のコンベア13a,13bに移載するための移載機であり、グラブバケット8(ばら積み船3)から陸方向に向かって離れた位置に配置されている。このホッパ8は、脚部5aに対して傾転可能な状態で脚部5aに設置されている。このホッパ8の排出口の下方には、コンベア13a,13bが設置されている。
【0030】
[グラブバケット、トロリおよびトラバーサの位置関係]
次に、図2に図1のA方向から見たグラブバケット6、トロリ10およびトラバーサ7を示す。また、図3に図1のトラバーサ7の拡大側面図を示す。
【0031】
図2に示すように、クレーンガータ5cは、2本並設されており、その2本のクレーンガータ5cの隣接間には、上記したトロリ10が、その両側面に設けられた車輪10a,10aを2本のクレーンガータ5cの内側の2つのレール部R1,R1上に載せて横行可能な状態で支持されている。このトロリ10には、複数のシーブ10bが並設されている。各シーブ10bには、グラブバケット6の開閉用および支持用のワイヤロープ11が掛けられている。
【0032】
一方、図2および図3に示すように、トラバーサ7は、その両側面に設けられた2つの支持体7aと、その2つの支持体7a,7aの下部の間に設けられたバケット部7bとを備えている。トラバーサ7は、2つの支持体7aの各々の上部内側に設けられた車輪7cを、2本のクレーンガータ5cの外側の2つのレール部R2,R2上に載せて横行可能な状態で支持されている。このような構成にすることにより、トラバーサ7のバケット部7bを、吊り上げ持のグラブバケット6の直下に配置することが可能になっている。
【0033】
トラバーサ7のバケット部7bは、その横行方向の一端側に設けられた回転軸(傾斜機構)7dを中心にして回転して矢印Bに示すように開閉可能な状態で支持体7aの下部に支持されている。
【0034】
また、バケット部7bの横行方向の他端側には、シーブ(傾斜機構、開閉手段)7fが回転可能な状態で軸支されている。このシーブ7fには、ワイヤロープ(傾斜機構、開閉手段)15が掛けられている。
【0035】
このワイヤロープ15は、バケット部7bの開閉操作用のロープであり、図3に示すウインチ(傾斜機構、開閉手段)16から巻出され、シーブ(傾斜機構、開閉手段)7eを介してバケット部7bのシーブ7fに掛けられた後、その上方のシーブ(傾斜機構、開閉手段)7gを介してガーダ5cの先端部に固定されている。
【0036】
すなわち、トラバーサ7のバケット部7bは、ウインチ16と、ワイヤロープ15と、シーブ7e〜7g等の滑車機構によって開閉するようになっている。なお、上記したように、ばら物4をホッパ8に投入する際、バケット部7bは、ホッパ8の開口面に対して斜めに傾斜した状態で開くよう制御される。
【0037】
ウインチ16は、ワイヤロープ15の巻上げおよび巻下げを行う巻上げ手段であり、ガーダ5cまたは機械室12に設置されている。ウインチ16のモータ(傾斜機構、開閉手段)16aの動力は減速機(傾斜機構、開閉手段)16bで減速されてワイヤ巻回用のドラム16cに伝達される。このモータ16aによるワイヤロープ15の巻上げ巻下げ操作によりバケット部7bの開閉角度(傾斜角度)が制御される。
【0038】
シーブ7e〜7g等の滑車機構は、ワイヤロープ15の経路を決め、ワイヤロープ15が円滑に動くように引き回す他、小さな力でバケット部7bを開閉する機能を有している。
【0039】
さらに、トラバーサ7のバケット部7bと支持体7aとの対向部の各々には、バケット部7bを閉止状態に維持するロックピン(固定ピン)7hが設けられている。なお、シーブ7e〜7g等の滑車機構、ワイヤロープ15およびロックピン7hは、図3の反対側の面にも同様に設置されている。
【0040】
トラバーサ7の移動時には、ウインチ16によりワイヤロープ15を張りつめた状態に維持し、ロックピン7hによりバケット部7bを支持体7aに固定することにより、バケット部7bを閉止状態に維持する。
【0041】
また、ばら物4をホッパ8に投入する時には、ウインチ16によりワイヤロープ15を緩めてロックピン7hを解除して、バケット部7bおよびばら物4の自重によりバケット部7bを開放する。この時、バケット部7bは、ホッパ8の投入口に対して傾斜した状態で開くようになっている。これにより、ばら物4の投入時の粉塵の発生を低減することができる。
【0042】
また、ばら物4の投入後には、ウインチ16によりバケット部7bの他端を、ロックピン7hが掛かる位置まで引き上げ、バケット部7bを閉じてロックピン7hによって再び固定する。この時、バケット部7bの自重だけ引き上げれば良いので、ウインチ16を小型化することができる。
【0043】
また、図2に示すように、トラバーサ7のバケット部7bの上部の幅方向の両側面には、粉塵が飛散するのを防止するための粉塵飛散防止板7g,7gが設置されている。これにより、ばら物4をトラバーサ7のバケット部7bに移載する時に周囲に粉塵が飛散するのを抑制または防止することができる。
【0044】
[ホッパの構成]
次に、図4に図1のホッパ8の拡大構成図を示す。ホッパ8は、その上部の回転軸8aを中心として矢印Cに示すように傾転可能な状態で脚部5aに支持されている。ホッパ8と脚部5aとの間には、例えば油圧シリンダのような伸縮装置17が設けられている。この伸縮装置17のロッドの伸縮によってホッパ8の傾転角度を制御することにより、ばら物4をコンベア13a,13bのいずれに移載するかを選択する。
【0045】
[ホッパの変形例1]
図5にホッパ8の変形例を示す。ここでは、ホッパ8が、その上部に設けられた車輪8bによって矢印Dに示すように支持体5dに沿って平行に移動することが可能な状態で支持体5dに支持されており、その移動位置によって、ばら物4を移載するコンベア13a,13bを選択することが可能なっている。
【0046】
[ホッパの変形例2]
図6にホッパ8の他の変形例を示す。ここでは、ホッパ8の排出口の下方にスライダ(排出トレイ)8cが設けられており、そのスライダ8cの位置を変えることによって、ばら物4を移載するコンベア13a,13bを選択することが可能なっている。
【0047】
[ばら物の荷役方法]
次に、ばら物の荷役方法について図7〜図12を参照して説明する。なお、図7〜図12は、ばら物4の荷役作業中のクレーン1の作業状態を示している。
【0048】
まず、図7に示すように、グラブバケット6を下降して開き、ばら積み船3の船倉3a内のばら物4を掴持した後、図8に示すように、グラブバケット6を閉じたまま上昇させて、トラバーサ7のバケット部7bの高さよりも若干高い位置で止める。
【0049】
続いて、トラバーサ7をグラブバケット6に向かって移動し、図9に示すように、トラバーサ7のバケット部7bがグラブバケット6の直下に位置したところで止める。その後、グラブバケット6を開いて、ばら物4をトラバーサ7のバケット部7bに落とし移載する。この時、グラブバケット6からトラバーサ7のバケット部7bまでの落差が小さいので、飛散する粉塵の量を低減することができる。このため、トラバーサ7の粉塵防止手段を、上記した粉塵飛散防止板7gのような簡単な構造にすることができる。
【0050】
その後、図10および図11に示すように、ばら物4を載せたトラバーサ7をホッパ8まで移動する。この時、トラバーサ7は剛体構造物なので、ワイヤロープ11で吊り下げたグラブバケット6を横行搬送させる場合に生じる荷ぶれが無い。このため、ばら物4の搬送速度を向上させることができるので、ばら物4の荷役効率を向上させることができる。
【0051】
また、トラバーサ7の横行搬送を自動化することにより、作業者はグラブバケット6の上下操作に専念することができるので、作業効率および安全性を向上させることができる。これにより、ばら物4の荷役効率を向上させることができる。
【0052】
一方、その間、グラブバケット6においては、図10および図11に示すように、グラブバケット6を開いたまま下降し、ばら積み船3の船倉3a内のばら物4を再び掴持する。この時、ばら物4をトラバーサ7に落とす時に開いたグラブバケット6を閉じることなく開いたままの状態で、次のばら物4を掴持する作業に移ることができるので、ばら物4の荷役効率を向上させることができる。
【0053】
また、グラブバケット6を下降させる(ワイヤロープ11を巻下げる)時に、機械室12のワイヤドラムを駆動するモータ(電動発電機)から発生する回生電力をバッテリに蓄え、その回生電力をトラバーサ7の移動時の加速エネルギーの一部として使用する。これにより、クレーン1の消費電力を低減することができる。また、バッテリに蓄えた回生電力を停電時の電力として使用することもできる。
【0054】
次いで、トラバーサ7においては、図12に示すように、トラバーサ7のバケット部7bを開き、ばら物4をホッパ8に投入する。この時、トラバーサ7のばら物4をホッパ8の投入口に対して斜めに投入することにより、ホッパ8の周辺に飛散する粉塵の量を低減することができる。このため、ホッパ8に設ける集塵式または散水式の発塵防止システムを簡単化することができるので、クレーン1のコストを低減することができる。
【0055】
続いて、ホッパ8に投入されたばら物4を、ホッパ8によって、いずれかのコンベア13a,13bに移載し、このコンベア13a,13bによって所望の場所に搬送する。
【0056】
このように、クレーン1においては、ばら物4を掴持して吊り上げるグラブバケット6と、そのグラブバケット6からばら物を受け取りホッパ8まで横行搬送するトラバーサ7とを設けたことにより、グラブバケット6は上下運動にトラバーサ7は横行搬送にとそれぞれの役割を特化することができるので、ばら物4の荷役効率を向上させることができる。
【0057】
また、クレーン1においては、トラバーサ7を設けたことにより、複雑で高価な機構を備える機内コンベアを無くすことができるので、クレーン1のコストを低減することができる。
【0058】
また、トラバーサ7を設けたことにより、機内コンベアを無くすことができるので、ばら物の荷役作業の最後に、ブルトーザを吊り上げるために機内コンベアを移動する時間を必要としない。このため、ばら物4の荷役効率を向上させることができる。
【0059】
また、機内コンベアの跡地を有効に活用することができる。例えば機内コンベアの跡地に上記のブルドーザを待機させておくことにより、ばら物4の荷役作業が最後の方になった時に、直ぐにブルドーザを吊り上げて船倉3a内に運び入れることができるので、ばら物4の荷役効率をさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の起重機は、ばら物を掴持して吊り上げるグラブバケットと、そのグラブバケットのばら物を受け取りホッパまで搬送するトラバーサとを設けたことにより、ばら物の荷役効率を向上させることができるので、グラブバケット方式のクレーン等のような起重機に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 アンローディングクレーン(起重機)
4 ばら物
5 本体
5a,5b 脚部
5c クレーンガータ(橋桁部)
5cg ガータ
5cb ブーム
5d 支持体
6 グラブバケット
7 トラバーサ
7a 支持体
7b バケット部
7c 車輪
7d 回転軸(傾斜機構)
7e シーブ(傾斜機構、開閉手段)
7f シーブ(傾斜機構、開閉手段)
7g シーブ(傾斜機構、開閉手段)
7h ロックピン(固定ピン)
7g 粉塵飛散防止板
8 ホッパ
8a 回転軸
8b 車輪
8c スライダ(排出トレイ)
10 トロリ
10a 車輪
10b シーブ
11 ワイヤロープ
12 機械室
13a,13b コンベア
15 ワイヤロープ(傾斜機構)
16 ウインチ(傾斜機構、開閉手段)
16a モータ(傾斜機構、開閉手段)
16b 減速機(傾斜機構、開閉手段)
16c ドラム(傾斜機構、開閉手段)
17 伸縮装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋桁部上に設置されたトロリから吊り下げられた開閉式のグラブバケットによって、ばら物を掴持して吊り上げる構成を備える起重機において、
前記グラブバケットにより掴持されたばら物を受け取り、前記グラブバケットから離れた位置に配置されたホッパに投入するトラバーサを前記橋桁部に備え、
前記トラバーサは、前記グラブバケットの直下において前記ばら物を受け取るバケット部を備え、
前記トラバーサのバケット部のばら物を前記ホッパに投入する際に、そのばら物を前記ホッパの投入口に対して斜めに投入するように前記トラバーサのバケット部を傾斜させて開放する傾斜機構を備えている起重機。
【請求項2】
前記トラバーサのバケット部は、前記トラバーサの本体の下部に支持されており、
前記傾斜機構は、前記トラバーサ部の一端に設けられ、かつ、前記バケット部を回転可能な状態で軸支する回転軸と、前記バケット部を前記回転軸を支持点として開閉する開閉手段とを備えている請求項1記載の起重機。
【請求項3】
前記傾斜機構は、前記トラバーサの移動時にはバケット部を固定ピンにより固定し、前記ばら物のホッパへの投入時にはバケット部をバケット部およびばら物の自重により開放し、前記ばら物のホッパへの投入後にはバケット部を閉じて前記固定ピンで固定する機構を有している請求項1または2記載の起重機。
【請求項4】
前記ホッパは、その後段の搬送ラインを選択可能なように、傾転、移動またはホッパの排出口に設けた排出トレイの位置を変更する機構を備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の起重機。
【請求項5】
前記グラブバケットの巻下げ時に電動発電機から発生する回生電力を、前記トラバーサの移動時の加速エネルギーの一部として使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の起重機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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