説明

超仕上げ大型遊星歯車システム

開示されるのは風力タービン発電機の入力段で使用される新しい改良型の大型遊星歯車システムである。この改良型の遊星歯車システムは、従来はギア歯から発生していた潤滑くずを削減または除去するので、軸受故障の誘発原因を除去する。これらの結果を得るため、遊星歯車システム(1、2、3)内の一部および好ましくはすべてのギア歯(4)は、約0.25ミクロン以下の表面粗さまで化学的促進振動仕上げを使用して超仕上げされる。本発明の複数の目的および効果は、慣らしプロセスを簡単化し、ギアボックスの耐久性および効率性を高めるため、金属くずが削減され、軸受の寿命が改良され、摩耗が低減され、振動摩擦音が低減され、接触疲労が改良され、耐フレッチング性が改良され、潤滑が改良されたギアボックスを提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年5月30日に出願された米国仮特許出願第60/474836号の出願日の利益を主張し、そしてまた、2003年6月2日に出願された米国仮特許出願第60/475210号の出願日の利益を主張する。
【0002】
本発明は大型ギアボックスの新しい改良型の入力遊星段に関係する。本発明において詳述される入力遊星段は、500kW以上の出力電力定格を有する風力タービン発電機用である。
【背景技術】
【0003】
風力タービン発電機は、最も費用対効果が優れた、環境にやさしい発電方法の一つであると考えられる。5MWを超える発電用の個々の風力タービンが現在のところ設計および建設中である。殆どの風力タービンの主要な要素は、低速時に変動する高負荷の影響を受け、20年の設計寿命をもつそれらのギアボックスである。これらのギアボックスの耐久性および効率性を高めるものが風力タービンの製造業者および運営業者によって非常に切望されている。
【0004】
最新の大型風力タービン発電機(500kW以上)は、一般に入力段として大型遊星歯車システムを使用する大規模装置である。山または沖合のような離れた場所に位置することが多い高い塔の頂部に取り付けられるこれらの重いギアボックスは、風の状態および温度の激しい変動の影響を受け、腐食性の海水環境および/または摩耗を起こす微粒子に晒されることが多い。ギアボックス故障は、巨大な道具を使用するギアボックスの取り外しと、製造業者の設備におけるギアボックスの再組立およびその後に続く離れた場所における再設置とを要する。発電の同時損失はさらにそれ自体で費用のかかる事象である。
【0005】
製造業者は、完全な現場作業の前にギア歯の接触面からピーク凹凸(peak asperity)を取り除くことによってギアボックスの耐用年数が増大することを認識している。ピーク凹凸の除去には二つの明らかな利点がある。第一に、ピーク凹凸の除去は、潤滑くず(lubricant debris)を生成し歯車および軸受を破壊することが知られている金属同士の接触の量を減少させる。第二に、それは、負荷を支持するため利用可能なギア歯面の量の測定値である材料比(Rmr)を改善する。業界は、明白な金属の破損またはリード(lead)およびプロファイルの著しい変性が起きない限り、ピーク凹凸を除去する技術はどれでも同じであると想定していた。歯車ホーニングプロセスは、たとえば、ピーク凹凸の高さを下げるため航空宇宙産業で頻繁に使用される。ホーニングプロセスは風力タービンギアボックスの検討対象になり得たが、但し、殆どのホーニングプロセス設備は12インチ以下の直径を有する歯車の処理に限定されるので、ホーニングプロセスは大型歯車に関してコストが非常に高い。したがって、現在の風力タービン歯車は、典型的に、磨き上げられたギア歯の側面(フランク)を有し、接触面からピーク凹凸を除去するために慣らし(ランイン、run−in)手順を通じて動作されることが推奨される。
【0006】
軸受の最適性能の利益が得られるのは、かみ合う接触面が共に化学的促進振動仕上げを使用して約0.075ミクロン未満の算術平均粗さ(R)まで等方向に超仕上げされたときであることが多年に亘って教えられている。
【0007】
同様に、高負荷、高ピッチ線速度で動作する自動車レース用変速装置の歯車は、0.3ミクロンから0.025ミクロン未満までのRaでギア歯が仕上げされるこの等方性超仕上げ加工によって利益を受ける。このような超仕上げ歯車は、接触疲労、動作温度、摩擦、雑音および振動が減少する。
【0008】
超仕上げは、流体潤滑(HL)または弾性流体潤滑(EHL)の開発を可能にする。HLは、連続的な潤滑膜によって達成される動作中にかみ合うギア歯が完全に分離するときに存在する。EHLは、分離する流体膜形成が接触する面の弾性変形による影響を受けるときに運転中にかみ合うギア歯に高負荷がかかる場合に存在する。よって、高速および高負荷の運転中にHLまたはEHLを用いると、超仕上げ自動車レース用変速装置は、かみ合うギア歯の金属同士の接触の影響を殆ど受けない。
【0009】
自動車レース用変速装置とは著しく対照的に、風力タービン発電産業で使用される入力遊星段歯車は非常に異なる条件で動作する。風力タービンアプリケーションでは、歯車は、非常に高い変動性負荷、低ピッチの線速度の影響を受けるので、流体潤滑(HL)または弾性流体潤滑(EHL)ではなく境界潤滑が予想される。境界潤滑が存在するのは、運転中にかみ合うギア歯が流体で湿潤し、潤滑膜の厚さがかみ合う面の表面粗さの合成より薄いときである。よって、ピーク凹凸が潤滑膜を貫通し、金属同士の接触はギア歯から金属くずを生じる。従来から製造されている、後述の慣らしプロセス後に磨き上げられた風力タービンギア歯(「Standard for Design and Specification of Gear Boxes for Wind Turbines」, ANSI/AGMA/AWEA 6006−A03を参照のこと)は、Ra=0.5ミクロンから0.7ミクロンの表面仕上げを達成することが期待される。しかし、当業者は従来から製造されている中空ホイールが非常に高い表面仕上げを有することを認める。この歯車仕上げがRa>1.6ミクロンを上回らないことが米国歯車工業界(AGMA)規格によって推奨される。0.5ミクロンから0.7ミクロンの仕上げは、殆どの金属同士の側面接触を防止するために十分であると考えられる。さらに、この表面条件はギア歯が低速で動くときに必要とされる著しい潤滑剤保持を生じるので、取り得る最良の潤滑条件が得られると考えられた。しかし、風力タービンギアボックス故障の主要な原因は軸受の故障である。慣らしが上記の仕上げを達成する場合でも、金属同士のギア歯接触が遊星歯車段のギア歯で持続し、潤滑くずを生成し、この潤滑くずが次に急激な軸受故障の一因となる。
【0010】
対照的に、Ra<0.3ミクロンの条件までの化学的促進振動超仕上げは、歯側面が動作のための潤滑剤保持が不十分であるため、大型タービン発電機のためには過度に滑らかであると考えられ、歯の故障が予想される。よって、化学的促進振動仕上げを使用して入力遊星段を超仕上げすることがギアボックスに性能価値を付加するかどうかは不確かである。長期に亘り、費用のかかる実地試験だけがその回答を与える。
【0011】
さらに、当業者は、大型風力タービン発電機の入力遊星段を構成する大型重量歯車は化学的促進振動仕上げプロセスで使用される振動仕上げ設備内で処理できないと考える。この振動仕上げ設備はボウル(bowl)型またはタッブ(tub)型のいずれかである。この入力遊星段歯車は、典型的に、500kW以上の出力能力の発電機の場合に200kg以上である。この歯車重量は、振動仕上げ設備の通常の動作範囲を越えると考えられる。
【0012】
特に、400kgから5000kg以上までの重量である大型中空ホイールギア(環状歯車)は大型振動ボウル内で超仕上げできないと考えられる。当業者は、比較的小さい断面積を有するこのような大規模歯車が、ライニング、歯車、または、両方を破損するボウルの底に直ぐに沈められることを予測するであろう。その上、重量歯車は、媒体(media)に加えられた高圧のため、振動仕上げ設備で使用されるセラミック媒体のかなりの量を破損することが予想される。セラミック媒体の粉砕によって生成された破片は鋭い先端およびエッジをもつ。ギア歯の重要な接触面を超仕上げ条件まで平滑化するのではなく、これらの媒体破片はこれらの面を破損し、その結果、特に、圧力が最大であるボウルの底の付近で、面を粗くし、削り、さらには凹ませることが予想される。破損は、より柔らかい全面硬化(硬度32HRCから40HRC)中空ホイールギアの場合に著しく増大される。破砕から予想される高速の媒体摩耗はさらに予想できない加工費を追加する他に、加工機のドレーンの目詰まりおよび閉塞の問題を生じる。
【0013】
さらに、中空ホイールを加工する際に、ギア歯のリードに沿って媒体圧力の強度の変動があると予想される。ボウルの底により近いギア歯上の媒体の圧力は上端付近の媒体の圧力より大きい。その結果として、底に近い方で取り除かれるストックは上端に近い方で取り除かれるストックより多いことが期待される。したがって、振動加工された中空ホイールギアは寸法許容範囲を外れることになる。これは、プロセスの半分を過ぎたところで歯車を取り外し、歯車の向きを変え、歯車をボウルに戻し、プロセスを継続することによって部分的に緩和される。注意すべき点は、向きを変える間に、このような大型歯車は時間がかかり、かつ、危険のおそれがあることである。さらに、ギア歯の中心幅の一部は、仕上げ時間の2倍に亘って加工され、結果的にギア歯の幾何形状を変化させる可能性がある。上記の予想される欠点のそれぞれは、この大型中空ホイールギアの超仕上げを採算的に非現実的かつ予測不可能にすることが予想される。
【0014】
同様の欠点が、風力タービンギアボックスの入力遊星段を構成するその他の歯車の化学的促進振動仕上げについても予想される。遊星および太陽ピニオンとして知られているこれらの歯車は、同様に巨大であり、典型的にそれぞれの重量が200kgを超える。よって、当業者は、それらの歯車が、ボウル型またはタッブ型を問わずに、振動仕上げ設備で加工できないと予測する。したがって、風力タービン業界はギアボックスの入力遊星段に対してこの超仕上げプロセスの利益を実現できない。
【0015】
大型入力遊星歯車段ではガス窒化またはガス浸炭中空ホイールではなく全面硬化中空ホイールギアを使用できることが望まれることに注意すべきである。全面硬化中空ホイールの方が安価に製造できる。
【0016】
ガス窒化は高価であり、時間がかかり、歯面に非常に堅く、脆い「ホワイトレイヤ」を生成する。当業者は歯車の使用前にこのホワイトレイヤを除去しなければならないことがわかる。しかし、研削によるホワイトレイヤの除去は莫大な費用がかかり、中空ホイールを破壊する危険性がある。代替的な化学的分解によるホワイトレイヤの除去は、非常に有害な、環境にやさしくないプロセスである。
【0017】
ガス浸炭の場合、熱処理プロセスによる著しい変形のため、歯の最終的な研削が必要であり、これもまた費用のかかるプロセスである。さらに、最終的な研削後、ガス浸炭中空ホイールは、別の有害な、環境にやさしくないプロセスであるテンパーバーン(temper burn)検査を必要とする。
【0018】
さらに、全面硬化中空ホイールはより安価に製造できるだけでなく、窒化または浸炭中空ホイールより幾何形状が正確である。これは、遊星歯車セットの残りの歯車が規定通りに高い幾何精度で製造されるので非常に有利である。よって、より高精度、より低価格の全面硬化中空ホイールが高精度の遊星および太陽歯車で動かされるならば、得られる遊星歯車セットは非常に効率的であり、かつ、十分な耐久性がある。全面硬化中空ホイールが化学的促進振動仕上げを用いて超仕上げされるならば、その歯は十分な表面耐久力があり、かつ、HLまたはEHL方式で動作可能であり、それによって、くず発生を低減する。よって、超仕上げされた全面硬化中空ホイールが超仕上げされた遊星および太陽歯車と組み合わされると、風力タービンの設計負荷および速度で満足できる動作が可能であり、その結果として、優れた入力遊星歯車段が得られる。或いは、遊星歯車および太陽ピニオン歯車が超仕上げされ、超仕上げされていない中空ホイールに合わされるならば、金属熱処理にもかかわらず、500kW以上の出力容量の風力タービン発電機用の改良された入力遊星歯車段が得られる。したがって、入力遊星段の歯車の一部、または、好ましくは全部を超仕上げすることによって、ギア歯から発生する潤滑くずが低減または除去され、それによって、軸受を破損させる原因を低減または除去する。
【0019】
実際には、大型風力タービン発電機のギアボックス製造業者は、研削後にピーク凹凸を削減するため実行可能な選択肢が一つしかなく、それは慣らしプロセスである。慣らしプロセスでは、歯車は、種々の負荷および速度でギアボックスを動作させることにより、接触領域ピーク凹凸が切り取られるか、または、それ自体が塑性変形するように、組み付けられた状態で滑らかにされる。ギアボックスはどうしてもその出荷およびその最終目的地での据え付けの前に負荷条件下で試験および認定を受ける必要があるので、慣らしプロセスは利用できる最も経済的な経路でもあったことに注意すべきである。慣らし段階および試験段階は同じ試験リグ上で同時に実施してもよい。たとえば、AGMA/AWEA & The Danish Energy Agencyは、風力タービンギアボックス設計のガイドラインを作成し、慣らしの必要性を重視する。ギア歯の耐久性に対する表面仕上げの影響は簡単に記載されているが、表面を平滑化する方法論についての検討はなされていない。ピーク凹凸を除去する方法が適切でないという見解は、この業界だけでなくその他の歯車の製造業者によって広く共有されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
理想的な慣らしプロセスは、負荷支持表面の全体に亘る凹凸ピークを平滑化するために実際の現場条件をシミュレーションするには様々な負荷および速度でのギアボックスの動作を必要とする。しかし、実際の厳しい条件を試験装置(リグ)上で繰り返すことは、実質的に不可能であるだけでなく、設備、時間および費用の制約の点でも非現実的である。慣らしプロセス中に、油膜厚は、より多くの凹凸ピーク接触を可能にさせ、それによって、より滑らかな表面を得るために意図的に低減されることが多い。慣らしプロセスが完了すると、歯車慣らし潤滑剤および濾過システムが使用されるべきである。典型的に、潤滑剤が排出され、歯車に水が流され、新しい潤滑剤と交換され、慣らしプロセス中に発生された金属くずを捕捉するフィルタが清掃されるか、または、交換される。残念ながら、慣らし中でさえ、この金属くずは、フィルタに収集する前に、軸受および歯車接触面に重大な破損を起こすことがある。しかも、殆どのフィルタは非常に大きいくず粒子だけを捕捉可能であり、微粒子を通過させる。これらの微粒子は、さらに、特にギアボックス軸受に表面破損を生じさせる可能性がある。
【0021】
さらに、慣らし手順がどんなに完全または注意深く行われるとしても、このプロセスは、ピーク凹凸を機械的剪断、破砕、または、弾性変形するために与えられた高応力によって、ギア歯接触領域に微視的な材料ディストレス(ストレスレイザ、応力起点)を残す。ストレスレイザは、将来の接触疲労損傷または微小損傷の開始点として作用する。
【0022】
その結果として、慣らし後であっても、入力遊星歯車は現場サービスの早期の期間中に微小損傷が起こることがよくある。微小損傷それ自体は、金属くずが濾過システムによって早急にまたは完全に捕捉されないので、軸受および歯車接触面にさらなる損傷を起こし得る金属くずの別の原因である。10ミクロンフィルタを通過する微視的な金属くず粒子でさえ、破損を開始させるために十分な大きさであることが重視されるべきである。微小損傷は、将来起こり得る歯車故障および/または深刻な摩耗問題の指標であると認識される。厳しい摩耗が発生すると、ギア歯プロファイルは変化して、振動およびノイズを増加させ、ギアボックスシステムへの応力を増加させる。
【0023】
さらに、慣らし手順は、典型的に、中空ホイールおよび太陽歯車のドライブ側だけを平滑化し、これらの歯車のギア歯のコースト側は機械加工されたまま残す。風力またはタービン破壊の強い突風のような悪動作条件中に、コースト側負荷は十分に高く、凹凸接触を生じ、有害な金属くずの原因となる。しかし、化学的促進振動超仕上げされた歯車は接触歯面の両側で平滑化される。
【0024】
かさねて、業界は実際の最適表面仕上げに、または、ギアボックス耐久性を改善するためこのような最適表面を生成する方法に指針を与えられなかったことを強調しておく。それどころか、業界は、歯車のギア歯の接触領域を満足できる条件であると考えられる程度まで滑らかにするため、主として慣らし手順に頼っている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
風力タービン発電機の入力段で使用される新しい改良型の大型遊星歯車システムが本明細書に開示される。この改良型の遊星歯車システムは、従来はギア歯から発生していた潤滑くずを削減または除去するので、軸受故障の誘発原因を除去する。これらの結果を得るため、遊星歯車システム内の一部および好ましくはすべてのギア歯は、約0.25ミクロン以下の表面粗さまで化学的促進振動仕上げを使用して超仕上げされる。
【0026】
特に、振動ボウル内に水平に設置された大規模中空ホイールギア、とりわけ全面硬化中空ホイールギアを超仕上げする新しい方法が開示される。
【0027】
本明細書に開示された発明の教示内容は、大型遊星歯車セットの他のすべてのアプリケーションに役立つ。同様に、本発明の教示内容は、伝統的に切削された歯仕上げのために境界潤滑方式が存在する他の大型、非遊星、ギアボックスタイプの一部またはすべての歯車に適用可能である。スパー、ヘリカル、フェイス、ベベルなどのようなこれらのギアボックス内の歯車のスタイルは、本明細書に開示された発明の概念に重要ではない。
【0028】
当業者に容易にわかるように、明白な本質の種々の変形および変更がなされ、このような変形および変更はすべてが特許請求の範囲に含まれるとみなされる。本発明の他の実施形態は、明細書の検討事項およびここに開示された発明の実施から当業者に明白であろう。これらの大型ギアボックス内の歯車のすべておよび/または軸受のすべての超仕上げが例として挙げられる。したがって、記載された具体的な実施形態は本発明を限定することを意図するのではなく、単に本発明の例示である。
【0029】
本発明で使用されるプロセスの独創的かつ重要な特長は表面仕上げを実現するため利用される表面レベリング機構である。化学溶液がセラミック媒体と共に振動ボウルまたはタッブ内で使用される。機械に導入されたとき、この化学溶液は金属と反応し、ギア歯の凹凸(ピークと谷)の全域に安定した柔らかいコンバージョンコーティングを生成する。機械および媒体によって生み出されたギア歯の側面全体における摩擦運動は、表面の「ピーク」からコンバージョンコーティングを効率的にこすり落とすが、手つかずのまま「谷」を残す。コンバージョンコーティングはこの段の間、連続的に再形成され、こすり落とされ、表面レベリング機構を実現する。この機構は希望の表面仕上げが達成されるまで振動機械内で続けられる。この時点で、活性化学反応は止められ、典型的に、素地と反応しない光沢液で機械から洗い流される。この段階中に、コンバージョンコーティングは、入力遊星歯車段の完成歯車を製造するため最後に1回ギア歯側面をこすり落とす。最終的に、このプロセスは水性、ほぼ室温、かつ、開放雰囲気であるので、化学的促進振動仕上げによる歯車の焼き戻しの機会はない。よって、テンパーバーン検査は本発明による超仕上げ後に不要である。
【0030】
凹凸ピークは据え付け前に除去されるので、従来の慣らし平滑化手順の場合のように、微小応力が導入されることはない。実際には、慣らしの必要性は著しく低減されるか、または、完全に除去される。よって、歯車表面の微小損傷およびフレッチングの問題は低減、または、除去される。さらに、本発明によって仕上げられた歯車は、起動時に、または、長期間の使用後に、重大な金属くずを発生しないので、軸受を破損する金属くずを回避する。これは、さらに、潤滑剤サービス間の期間を長くすることが可能である。表面の平滑化はさらに摩擦を低減するので、歯車は、潤滑剤、軸受およびシールの寿命を短くする原因である典型的なブレークイン温度スパイクをもたらさない。ノイズおよび振動も二つの理由によって低減されことが予想される。第一に、摩擦の減少は、振動およびノイズの減少をもたらす。第二に、摩耗の減少は、伝達誤差が時間的に一定の状態を保ち、したがって、ノイズも増加しないことを意味する。
【0031】
本発明より先行して、風力タービン発電機ギアボックスの耐久性を改善する試みは、ギア歯を表面研削し、その後に、慣らしを続けることによって実現され、そのために、ギアボックスは可変負荷および速度の下で動作させられた。慣らしは、表面がかみ合うギア歯の一部からピーク凹凸を除去可能であるが、本発明と比較すると上記の多数の重大な欠点がある。したがって、500kW以上の個別の出力電力容量を有する風力タービン発電機に適用可能である歯研削および慣らしプロセスに対する本発明の複数の目的および効果は、以下の通りである。
1.歯側面全体が超仕上げされ、慣らし中、または、実際のサービス中に歯車によって発生される有害な金属くずを削減または除去する改良型入力遊星段を提供すること。
2.通常はギア歯によって発生される金属くずが著しく削減または除去され、それによって、軸受故障の誘発原因を削減または除去する改良型遊星段を提供すること。
3.下限値Rを有し、Rmrが増加し、ストレスレイザが著しく減少した高品質の表面まで、化学的促進振動仕上げを使用して、大型中空ホイールギア、特に、幾何精度の高い全面硬化中空ホイールを超仕上げする実際的かつ費用対効果の優れた方法を提供すること。
4.200kg以上のあらゆるスタイルの歯車の歯車側面の一部および好ましくは全部が寸法許容範囲を維持したまま0.25ミクロン以下のRaまで超仕上げされた改良型入力遊星段を提供すること。
5.歯および軸受の将来の微小損傷、摩耗、最終的に故障を招く可能性がある微小損傷およびフレッチングが著しく低減された改良型入力遊星段を提供すること。
6.この場合も有害な金属くずの可能性を削減または除去し、すべての歯車、特に、中空ホイールおよび太陽ギア歯のドライブ(駆動)側およびコースト(惰性)側を同時に超仕上げする方法を提供すること。
7.慣らし中、または、初期の現場動作中に、金属、潤滑剤、および、シールに損害を与える可能性がある温度スパイクが著しく削減された改良型入力遊星段を提供すること。
8.摩擦によって、および/または、摩耗による歯プロファイル変化によって生じる振動および/またはノイズが著しく削減された改良型入力遊星段を提供すること。
9.より大きい電力密度を可能にさせる接触歯面上の材料比(Rmr)が増加した歯車を有する改良型入力遊星段を提供すること。
10.慣らしプロセスの簡素化または除去を可能にする改良型入力遊星段を提供すること。
11.歯車が超仕上げされた後にテンパーバーン検査を必要としないプロセスを提供すること。
12.超仕上げが潤滑くずを削減または除去するように、境界潤滑方式で動作するあらゆるタイプのギアボックス内の200kg以上のあらゆるスタイルの歯車に適用可能である化学的促進振動仕上げプロセスを提供すること。
13.潤滑くずを削減または除去するため一部または好ましくは全部の歯車および/または軸受が超仕上げされた改良型大型ギアボックスを提供すること。
【0032】
さらなる目的および効果は以下の説明および図面の考慮から明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は風力タービンギアボックスで典型的に使用される入力遊星段の図である。入力遊星段は、中空ホイールギア(1)、2個以上の遊星歯車(2)、および、太陽歯車(3)により構成される。各歯車の歯(4)は超仕上げされる。図2aは単一のギア歯(4)の3次元図であり、図2bは2個のギア歯(4)の2次元断面図を表す。ギア歯(4)は、ギア歯の作用側または接触側である側面(5)、ギア歯の上面であるトップランド(6)、隣接した歯の間の空間の底における表面であるボトムランド(7)、および、歯側面(5)とボトムランド(7)との間のギア歯の底にある丸みを帯びた部分であるルートフィレット(8)により構成される。最も重要な領域は、歯車が動作しているときに相手歯と接触しているギア歯の表面領域である歯接触パターン(9)である。本発明において、太陽歯車(3)、遊星歯車(2)および中空ホイールギア(1)を含む風力タービンギアボックスの1個以上の遊星歯車は、振動ボウルまたはタッブ内で化学的促進仕上げを使用して、0.25ミクロン以下のRまでそのドライブ側およびコースト側で超仕上げされる。
【0034】
(超仕上げプロセスの一般的な説明)
超仕上げプロセスの一般的な説明については、出願人所有の米国特許第4491500号および第4818333号、並びに、米国特許出願第10/071533号、第09/758067号および第10/684073号に従い、それぞれは参照によって本明細書に組み込まれる。活性化学物質は、歯車の金属を、物理的かつ化学的に安定し、視覚的に認識できる場合とできない場合がある硬度低下膜の組成物に変換する能力を備えた振動仕上げ装置に導入される。この膜はコンバージョンコーティングとして知られている。この膜が歯車の表面に作成されたとき、歯車の上の媒体エレメントの作用は、歯車の凹凸ピークからこの膜だけを除去し、押圧されたコーティングの領域はそのまま残す。金属表面を活性化学物質で常に湿潤させることにより、安定したコーティングは連続的に再形成し、比較的柔らかい膜の新しい層を設けるため、下にある裸の金属が新たに露出された領域を覆う。その部分が隣接した領域より高く保たれるならば、その部分は、粗さが実質的に取り除かれるまで、こすり落とされ続ける。
【0035】
利用される活性化学物質溶液の量は処理される部品の全表面を湿った条件に保つだけの量であり、摩擦作用によって取り除かれるコーティングの連続的、かつ、実質的に瞬間的な再形成を確保する。当業者に明白であるように、利用される媒体の量は、処理中の歯車の表面特徴、面積、重量、および、組成、コンバージョンコーティングのため利用される溶液の組成、動作温度、達成されるべき磨き上げ(refinement)の程度および割合などの様々な要因に依存する。
【0036】
歯車に生成されたコンバージョンコーティングによって示される特性はこのプロセスの実施を成功させるために極めて重要であるが、コーティングを生成するため利用される活性化学物質の配合は重要ではない。組成物は、動作の条件下で、素地の比較的柔らかい反応生成物を高速かつ効率的に生成する能力が必要であり、コーティングは、除去が融解ではなく、主として摩擦によって起こることを保証するため、液体媒体中で実質的に不溶性でなければならない。活性化学物質は、一般に、水と、最大で約40重量パーセントの活性物質とにより構成され、活性物質は、本質的にコンバージョン化学物質を含み、さらに選択的に、望ましくは、酸化剤を含み、ある種の例では、安定剤および/または湿潤剤を含有する。望ましい量の改良が達成された後、活性化学反応は遮断される。その後、研磨溶液が振動機械に導入される。素地に反応しない研磨溶液は、鏡面のような外観を作成するために、表面からコンバージョンコーティングを除去するのに役立つ。
【0037】
(遊星歯車および太陽歯車の超仕上げ)
本発明の一実施形態では、太陽歯車および遊星歯車は、適当なサイズの振動ボウルまたはタッブ機械で超仕上げされる。適当に取り付けられた複数個の歯車が同時に超仕上げされる。装置が(1個以上の)歯車を支持するために、または、動作中に振動ボウル若しくはタッブの側面と接触しないように保つために使用される。(1個以上の)歯車は、(1個以上の)歯車と非摩耗性のセラミック媒体との間に相対運動を生じさせるため急速に激しく動かされる。(1個以上の)歯車と媒体の表面は、30v/v%のFERROMIL(登録商標)FML−590の水溶液で湿潤条件に維持される。非摩耗性固体媒体エレメントは、激しい動きの条件下で、ギア歯の一様な媒体摩擦を生じるような量、サイズおよび形状をもつ。このプロセスは、算術平均粗さ(R)値が0.25ミクロン以下になるまで継続される。(1個以上の)歯車は、次に、FERROMIL(登録商標)FBC−295の1.5v/v%の水溶液を使用してコンバージョンコーティングを除去するため研磨される。
【0038】
好ましい実施形態は非摩耗性セラミック媒体の使用を考えているが、その他のセラミック媒体、プラスチック媒体、スチール媒体、ステンレス鋼媒体、および、様々なタイプの媒体の組み合わせが、歯車の仕上げを取り囲む物理的環境に応じて、使用される。それぞれの事例で使用すべき媒体、または、媒体の組み合わせを決定することは、当業者の技術的事項の範囲内である。
【0039】
(中空ホイールギアの超仕上げ)
本実施例は、出力電力容量が500kW以上である市販の風力タービンギアボックスに適した大型中空ホイールギア(1)を超仕上げする一実施形態を教示する。中空ホイールギア(1)は以下の近似的な重量および寸法を有する。その重量は1620kgであり、外径が171cmであり、内径が146cmであり、歯幅が38.5cmである。中空ホイールは、ガス浸炭、ガス窒化によって熱処理されるか、または、焼き入れを用いてもよい。図3において、振動ボウル(10)は、その体積の約3分の2まで研磨および非研磨セラミック媒体の混合物(11)で充填される。媒体サイズおよび形状は、均質的な媒体の混合物がギア歯の側面に亘って均一に接触するように選択される。媒体の量は、さらに、歯車が振動ボウル溝の底または側面と接触しないように、または、歯車の上端が作用している媒体の高さより上昇しないように、処理中に好ましい量のリフト作用を与えるため選択される。モータ重量は約85度のリード角度に設定される。
【0040】
中空ホイールギア(1)は、中空ホイールギアをボウルの中心にセンタリングするため相当に注意して、静止した媒体の集団(11)上で振動ボウル(10)のセンターハブ(12)の上に水平に置かれる。図5に示されるように、1.5v/v%のFERROMIL(登録商標)FBC−295の水溶液は、毎時20リットルの流速で、摩擦熱発生の影響を軽減するため、ボウルの外壁と歯車(13)の外面との間の領域に供給される。30v/v%のFERROMIL(登録商標)FML−590により構成された活性化学物質の水溶液は、毎時18リットルでセンターハブ(12)と内部ギア歯(14)との間の領域に供給される。
【0041】
振動ボウル(10)は低周波数で始動され、中空ホイールギアが媒体(11)に収まるように、約46ヘルツから48ヘルツまで徐々に高められる。理想的な位置は、歯車(1)の最上部が媒体(11)と空気の境界面、または、その直ぐ下にある図4に示されている。振動ボウル振幅が1.5mmから2.0mmの範囲外であるならば、この振幅を達成するため重量を低下させるように調整が行われるべきである。この測定量は、ボウル(10)の外側に取り付けられた振幅ゲージから読み出される。中空ホイールギア(1)は、残りの処理の間に中心に置かれた状態を保ち、振動ボウルのセンターハブ(12)の周りをゆっくり回転する。
【0042】
歯車が振動ボウル(10)のセンターハブ(12)の周りを一様に回転するように、媒体(11)の上面またはその直ぐ下に歯車(1)を保つため必要に応じて、以下のパラメータ:
・媒体サイズ、形状、組成およびそれぞれのパーセンテージ
・媒体レベル
・モータの周波数
・調整可能なウェイトシステムによって発生される振幅およびリード角度
・活性化学物質および研磨溶液の濃度と流速
が調整される。これらのパラメータの調整は当業者の知識の範囲内の事項である。
【0043】
このプロセスは、算術平均粗さ(R)値が0.25ミクロン以下になるまで継続される。活性化学物質のフローは遮断され、1.5v/v%のFERROMIL(登録商標)FBC−295の水溶液により構成される研磨コンパウンドが毎時150リットルでボウルのセンターカラムと歯車(15)の歯との間の領域に供給される。このプロセスは、コンバージョンコーティングが除去され、きれいで輝いている外観を生じるまで継続される。
【0044】
予期せず得られた結果は次の通りである。
1.歯車はボウルの中心に位置したままであり、媒体の運動によってボウルの底から浮き、歯車の最上部は媒体/空気の境界面またはその直ぐ下にとどまる。
2.歯車は媒体または媒体破片によって損なわれることなく超仕上げされる。
3.0.25ミクロン以下のRが実現され、材料比が著しく増加する。
a.図6は、超仕上げ前のギア歯接触領域の典型的な表面粗さプロファイルを表す。Rは0.78ミクロンであり、Rmrは49.4%である。
b.図7は、超仕上げ後のギア歯接触領域の表面粗さプロファイルを表す。Rは0.16ミクロンであり、Rmrは73.2%である。
4.表面仕上げは、リードおよびプロファイルの全域において許容範囲内で一様である。
5.たとえあるとしても、少量の媒体だけがこのプロセスによって破損される(すなわち、媒体消耗は非常に低かった。)。
【0045】
(現場における遊星歯車試験)
出力電力容量が500kW以上である2台の風力タービン発電機ギアボックスの歯車は、本発明における上記のプロセスを使用して0.25ミクロン以下の表面粗さで超仕上げされた入力遊星段からの歯車の全部であった。超仕上げ前に、中空ホイールは全面硬化され、遊星歯車および太陽歯車がガス浸炭された。運転開始後、ギアボックスは、約6ヶ月後、および、約1年の運転後に検査された。微小損傷またはフレッチングはギア歯面上で観察されなかった。同様に、軸受破損は見つからなかった。これに対して、慣らし技術だけによって平滑化された研削歯車は、一般に、6ヶ月の運転後にようやく微小損傷またはフレッチングの兆候を示し始め、軸受は直接検査によって、または、ノイズ/振動監視によって破損を示し始める。さらに、本発明の予想された効果には、金属くずの削減、軸受寿命の改良、磨耗の低減、振動およびノイズの低減、耐接触疲労性の改良、潤滑の改良、潤滑剤供給間の時間の増加、慣らしプロセスの簡単化または除去、耐久性と効率の強化、遊星ギアボックスの製造コストおよび運転コストの削減が含まれる。
【0046】
本発明の装置および方法は好ましい実施形態の観点から説明されているが、本発明の概念および意図を逸脱することなく、本明細書に記載された内容に変形が適用されることは当業者に明白である。当業者に明白であるすべてのこのような類似した置換および変更は、本発明の意図および概念の範囲内にあると考えられ、このプロセスは、特に、風力タービン業界に関連したものに限られることなく、あらゆるタイプの歯車、あらゆるタイプの大型遊星歯車システム、および、境界潤滑方式で動作する200kgを超える個々の歯車を有するあらゆるタイプの大型ギアボックスの仕上げに適用可能である。このテクノロジーが役に立つ他の産業におけるこのような実施例は、船舶用推進および土工産業、採掘産業、並びに、大型歯車システムの用途を利用する他の産業にみられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】3個の遊星歯車を備えた遊星ギアボックスの断面図である。
【図2a】歯接触領域を示すギア歯の図である。
【図2b】2個のギア歯の断面図である。
【図3】中空ホイールギアを超仕上げするため使用される媒体を格納する振動ボウルの図である。
【図4】超仕上げプロセス中の中空ホイールギアの理想的な位置を示す振動ボウルの図である。
【図5】化学溶液が超仕上げプロセス中に供給される場所を示す図である。
【図6】中空ホイールギア歯の典型的な機械加工/研削された側面上で測定された表面パラメータおよびプロファイルを表す図である。
【図7】本発明を使用する中空ホイールギア歯の典型的な超仕上げされた側面上で測定された表面パラメータおよびプロファイルを表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車を含み、
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のうちの一つ以上が、遊星ギアボックス内に蓄積される潤滑くずを削減するために十分な表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、遊星ギアボックス。
【請求項2】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のうちの一つ以上が、化学的促進仕上げを使用して超仕上げされる、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項3】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のうちの一つ以上が、0.25μm以下の最終表面粗さまで超仕上げされる、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項4】
複数の仕上げ媒体が中空ホイールギアの表面から硬度が低下した膜を除去し、それによって、中空ホイールギアの表面が磨き上げられるように、中空ホイールギアが、中空ホイールギアの表面に硬度が低下した膜を有する膜を形成するため複数の仕上げ媒体と中空ホイールギアの金属と反応し得る化学溶液とが存在するときに、中空ホイールギアを激しく動かすことにより超仕上げされ、その後、複数の仕上げ媒体によるさらなる磨き上げのため、硬度が低下した膜を有する組成物が中空ホイールギアと化学溶液との間の反応によって直ちに再形成される、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項5】
複数の仕上げ媒体が研磨媒体、非研磨媒体、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項6】
研磨媒体が水晶、花崗岩、天然および合成の酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化鉄、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項5に記載の遊星ギアボックス。
【請求項7】
研磨媒体が磁器、プラスチック、または、それらの混合物の母材に保持される、請求項6に記載の遊星ギアボックス。
【請求項8】
非研磨媒体がセラミック媒体、プラスチック媒体、スチール媒体、ステンレス鋼媒体、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項5に記載の遊星ギアボックス。
【請求項9】
混合が振動仕上げ装置内で起こる、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項10】
化学溶液の量が中空ホイールギアおよび複数の仕上げ媒体の表面を湿潤条件に保つために十分である、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項11】
化学溶液がリン酸塩、リン酸、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、硫酸塩、硫酸、重炭酸ナトリウム、クロム酸塩、クロム酸、クロム酸ナトリウム、または、それらの混合物よりなる群から選択された化学物質を含む、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項12】
化学溶液が亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、有機酸化剤、無機酸化剤、過酸化物、メタ−ニトロベンゼン、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、および、それらの混合物よりなる群から選択された促進剤を含む、請求項4に記載の遊星ギアボックス。
【請求項13】
複数の仕上げ媒体が遊星歯車の表面から硬度が低下した膜を除去し、それによって、遊星歯車の表面が磨き上げられるように、遊星歯車が、遊星歯車の表面に硬度が低下した膜を有する膜を形成するため複数の仕上げ媒体と遊星歯車の金属と反応し得る化学溶液とが存在するときに、遊星歯車を激しく動かすことにより超仕上げされ、その後、複数の仕上げ媒体によるさらなる磨き上げのため、硬度が低下した膜を有する組成物が遊星歯車と化学溶液との間の反応によって直ちに再形成される、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項14】
複数の仕上げ媒体が研磨媒体、非研磨媒体、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項13に記載の遊星ギアボックス。
【請求項15】
非研磨媒体が粘性塊(コヒーレントマス)に融合させられ離散的な研磨粒子を実質的に含まない酸化物粒子の混合物を含み、粘性塊が、無酸素で、約60重量パーセントから80重量パーセントのアルミニウムと約5重量パーセントから30重量パーセントのシリコンとを含有する、請求項14に記載の遊星ギアボックス。
【請求項16】
粘性塊が、無酸素で、約76重量パーセントから78重量パーセントのアルミニウム、約10重量パーセントから12重量パーセントのケイ素、約5重量パーセントから9重量パーセントの鉄、および、約4重量パーセントから6重量パーセントのチタンを含む、請求項15に記載の遊星ギアボックス。
【請求項17】
粘性塊が、無酸素で、約63重量パーセントから67重量パーセントのアルミニウム、約26重量パーセントから36重量パーセントのケイ素、約2重量パーセントから4重量パーセントのナトリウム、約1重量パーセントから2重量パーセントのカリウム、および、約0.5重量パーセントから0.8重量パーセントのリンを含む、請求項15に記載の遊星ギアボックス。
【請求項18】
粘性塊が、約62重量パーセントから73重量パーセントのアルミニウム、約7重量パーセントから14重量パーセントのケイ素、約10重量パーセントから25重量パーセントのマグネシウム、および、約1重量パーセントから4重量パーセントのナトリウムを含む、請求項15に記載の遊星ギアボックス。
【請求項19】
酸化物粒子が1ミクロンから25ミクロンの間の直径を有する、請求項15に記載の遊星ギアボックス。
【請求項20】
非研磨媒体が少なくとも1立方センチメートル当たり約2.75グラムの密度を有する、請求項14に記載の遊星ギアボックス。
【請求項21】
非研磨媒体が少なくとも約845の平均ダイヤモンドピラミッド硬度(ビッカース硬度)値を有する、請求項14に記載の遊星ギアボックス。
【請求項22】
プロセス中の激しい動きによって生ずる複数の仕上げ媒体の平均重量減少が毎時約0.1パーセントを超えない、請求項14に記載の遊星ギアボックス。
【請求項23】
化学溶液の量が中空ホイールギアおよび複数の仕上げ媒体の表面を湿潤条件に保つために十分である、請求項13に記載の遊星ギアボックス。
【請求項24】
化学溶液がリン酸塩、リン酸、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、硫酸塩、硫酸、重炭酸ナトリウム、クロム酸塩、クロム酸、クロム酸ナトリウム、または、それらの混合物よりなる群から選択された化学物質を含む、請求項13に記載の遊星ギアボックス。
【請求項25】
化学溶液が亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、有機酸化剤、無機酸化剤、過酸化物、メタ−ニトロベンゼン、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、および、それらの混合物よりなる群から選択された促進剤を含む、請求項13に記載の遊星ギアボックス。
【請求項26】
複数の仕上げ媒体が太陽歯車の表面から硬度が低下した膜を除去し、それによって、太陽歯車の表面が磨き上げられるように、太陽歯車が、太陽歯車の表面に硬度が低下した膜を有する膜を形成するため複数の仕上げ媒体と太陽歯車の金属と反応し得る化学溶液とが存在するときに、太陽歯車を激しく動かすことにより超仕上げされ、その後、複数の仕上げ媒体によるさらなる磨き上げのため、硬度が低下した膜を有する組成物が太陽歯車と化学溶液との間の反応によって直ちに再形成される、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項27】
複数の仕上げ媒体が研磨媒体、非研磨媒体、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項26に記載の遊星ギアボックス。
【請求項28】
非研磨媒体が粘性塊に融合させられ離散的な研磨粒子を実質的に含まない酸化物粒子の混合物を含み、粘性塊が、無酸素で、約60重量パーセントから80重量パーセントのアルミニウムと約5重量パーセントから30重量パーセントのシリコンとを含有する、請求項27に記載の遊星ギアボックス。
【請求項29】
粘性塊が、無酸素で、約76重量パーセントから78重量パーセントのアルミニウム、約10重量パーセントから12重量パーセントのケイ素、約5重量パーセントから9重量パーセントの鉄、および、約4重量パーセントから6重量パーセントのチタンを含む、請求項28に記載の遊星ギアボックス。
【請求項30】
粘性塊が、無酸素で、約63重量パーセントから67重量パーセントのアルミニウム、約26重量パーセントから36重量パーセントのケイ素、約2重量パーセントから4重量パーセントのナトリウム、約1重量パーセントから2重量パーセントのカリウム、および、約0.5重量パーセントから0.8重量パーセントのリンを含む、請求項28に記載の遊星ギアボックス。
【請求項31】
粘性塊が、約62重量パーセントから73重量パーセントのアルミニウム、約7重量パーセントから14重量パーセントのケイ素、約10重量パーセントから25重量パーセントのマグネシウム、および、約1重量パーセントから4重量パーセントのナトリウムを含む、請求項28に記載の遊星ギアボックス。
【請求項32】
酸化物粒子が1ミクロンから25ミクロンの間の直径を有する、請求項28に記載の遊星ギアボックス。
【請求項33】
非研磨媒体が少なくとも1立方センチメートル当たり約2.75グラムの密度を有する、請求項27に記載の遊星ギアボックス。
【請求項34】
非研磨媒体が少なくとも約845の平均ダイヤモンドピラミッド硬度値を有する、請求項27に記載の遊星ギアボックス。
【請求項35】
プロセス中の激しい動きによって生ずる複数の仕上げ媒体の平均重量減少が毎時約0.1パーセントを超えない、請求項26に記載の遊星ギアボックス。
【請求項36】
化学溶液の量が中空ホイールギアおよび複数の仕上げ媒体の表面を湿潤条件に保つために十分である、請求項26に記載の遊星ギアボックス。
【請求項37】
化学溶液がリン酸塩、リン酸、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、硫酸塩、硫酸、重炭酸ナトリウム、クロム酸塩、クロム酸、クロム酸ナトリウム、または、それらの混合物よりなる群から選択された化学物質を含む、請求項26に記載の遊星ギアボックス。
【請求項38】
化学溶液が亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、有機酸化剤、無機酸化剤、過酸化物、メタ−ニトロベンゼン、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、および、それらの混合物よりなる群から選択された促進剤を含む、請求項26に記載の遊星ギアボックス。
【請求項39】
遊星歯車が風力タービンユニット、船舶用推進ユニット、または、土工ユニットから選ばれた遊星歯車である、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項40】
0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされる前に、中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および、太陽歯車のうちの一つ以上が、ガス浸炭、ガス窒化、および、全面硬化よりなる群から選択された方法によって熱処理される、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項41】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および、太陽歯車のそれぞれが、0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項42】
2個以上の遊星歯車および太陽歯車のそれぞれが、0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項43】
2個以上の遊星歯車のそれぞれが0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項44】
複数個の歯のドライブ側が0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項45】
複数個の歯のコースト側が0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた、請求項1に記載の遊星ギアボックス。
【請求項46】
0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、200kgを超える質量を有する歯車。
【請求項47】
200kgを超える質量を有する歯車が化学促進仕上げを使用して超仕上げされた、請求項46に記載の歯車。
【請求項48】
複数の仕上げ媒体が200kgを超える質量を有する歯車の表面から硬度が低下した膜を除去し、それによって、200kgを超える質量を有する歯車の表面が磨き上げられるように、200kgを超える質量を有する歯車が、200kgを超える質量を有する歯車の表面に硬度が低下した膜を有する膜を形成するため複数の仕上げ媒体と200kgを超える質量を有する歯車の金属と反応し得る化学溶液とが存在するときに、200kgを超える質量を有する歯車を激しく動かすことにより超仕上げされ、その後、複数の仕上げ媒体によるさらなる磨き上げのため、硬度が低下した膜を有する組成物が200kgを超える質量を有する歯車と化学溶液との間の反応によって直ちに再形成される、請求項46に記載の歯車。
【請求項49】
複数の仕上げ媒体が研磨媒体、非研磨媒体、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項48に記載の歯車。
【請求項50】
研磨媒体が水晶、花崗岩、天然と合成の酸化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化鉄、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項49に記載の歯車。
【請求項51】
研磨媒体が磁器、プラスチック、または、それらの混合物の母材に保持される、請求項50に記載の歯車。
【請求項52】
非研磨媒体がセラミック媒体、プラスチック媒体、スチール媒体、ステンレス鋼媒体、および、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項49に記載の歯車。
【請求項53】
混合が振動仕上げ装置内で起こる、請求項48に記載の歯車。
【請求項54】
化学溶液の量が中空ホイールギアおよび複数の仕上げ媒体の表面を湿潤条件に保つために十分である、請求項48に記載の歯車。
【請求項55】
化学溶液がリン酸塩、リン酸、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、硫酸塩、硫酸、重炭酸ナトリウム、クロム酸塩、クロム酸、クロム酸ナトリウム、または、それらの混合物よりなる群から選択された化学物質を含む、請求項48に記載の歯車。
【請求項56】
化学溶液が亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、有機酸化剤、無機酸化剤、過酸化物、メタ−ニトロベンゼン、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、および、それらの混合物よりなる群から選択された促進剤を含む、請求項48に記載の歯車。
【請求項57】
複数個の歯のドライブ側が0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた、請求項46に記載の歯車。
【請求項58】
複数個の歯のコースト側が0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた、請求項46に記載の歯車。
【請求項59】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および、太陽歯車を含む遊星ギアボックス内の潤滑くずを削減する方法であって、
遊星ギアボックスを運転する前に、中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のうちの一つ以上からの歯を0.25ミクロン以下の表面粗さまで超仕上げするステップを含む、方法。
【請求項60】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のうちの一つ以上が、化学的促進仕上げを使用して超仕上げされる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされる前に、中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のうちの一つ以上が、ガス浸炭、ガス窒化、および全面硬化よりなる群から選択された方法によって熱処理される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
中空ホイールギア、2個以上の遊星歯車、および太陽歯車のそれぞれが、0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
2個以上の遊星歯車および太陽歯車のそれぞれが、0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
2個以上の遊星歯車のそれぞれが0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされた複数個の歯を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
複数個の歯のドライブ側が0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされる、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
複数個の歯のコースト側が0.25μm以下の表面粗さまで超仕上げされる、請求項59に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−516096(P2007−516096A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533520(P2006−533520)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/017079
【国際公開番号】WO2004/108356
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503248259)アール・イー・エム・テクノロジーズ・インコーポレーテツド (3)
【出願人】(505440790)オスロ・ゲー・エム・ベー・ハー (1)
【Fターム(参考)】