説明

超伝導受信機システム

【課題】導波管型フィルタでイメージ側にフィルタをかけることにより、小型・簡素化が実現できる超伝導受信機システムを提供する。
【解決手段】天体や大気微量分子からのスペクトルを受信するヘテロダイン受信システムにおいて、両サイドバンド(DSB)受信機である超伝導SISミクサ3を、片サイドバンド(SSB)受信機として使用するために、電磁ホーン5に接続されるクロスガイドカプラー2と前記超伝導SISミクサ3間に導波管型帯域阻止フィルタ2Aを配置し、この導波管型帯域阻止フィルタ2Aでイメージ側にフィルタをかけることにより、イメージバンドからの雑音や混信を取り除く。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超伝導受信機システムに係り、特に、導波管型帯域阻止フィルタを用いた超伝導(SIS)受信機システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ミリ波サブミリ波領域で用いられるミクサ受信機では、サイドバンド比の大きさの程度が、安定で精度のよい観測を遂行する上での鍵を握っている。
【0003】
そこで、本願発明者らは既に、安定で精度のよい観測を遂行できるコムジェネレータを用いた超伝導ミクサのサンドバンド比の測定装置(下記特許文献1参照)を提案している。
【0004】
一方、天体や大気微量分子からのスペクトルを受信するヘテロダイン受信システムでは、効率の良い観測のためにはイメージバンドからの雑音や混信を取り除く必要がある。また、天体等のスペクトル強度は受信機のサイドバンド比(シグナルバンドとイメージバンドの感度比)によって変化するため、受信機を片サイドバンド(SSB)化することは高精度測定のために極めて重要である。
【0005】
従来は、両サイドバンド(DSB)受信機である超伝導ミクサを片サイドバンド(SSB)受信機として用いるには、マーチンパープレット等の準光学方式や2バックショート方式などでイメージ側にフィルタをかけることにより実現していた。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−57274号公報(第3−5頁 図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の方法は必ずシステムに可動部分を伴うため、再現性が悪いことや経年変化などの問題が生じる。
【0008】
また、上記した従来の方法では、位相差等を使用するためサイドバンド比は〜20dB程度しか達成されなかった。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、導波管型フィルタでイメージ側にフィルタをかけることにより、超伝導ミクサを簡単な構成で片サイドバンド(SSB)化でき、サイドバンド比を大きくするとともに、小型・簡素化が実現できる超伝導受信機システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕天体や大気微量分子からのスペクトルを受信するヘテロダイン受信システムにおいて、両サイドバンド(DSB)受信機である超伝導SISミクサを、片サイドバンド(SSB)受信機として使用するために、電磁ホーンに接続されるクロスガイドカプラーと前記超伝導SISミクサ間に導波管型帯域阻止フィルタを配置し、該導波管型帯域阻止フィルタでイメージ側にフィルタをかけることにより、イメージバンドからの雑音や混信を取り除くことを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載の超伝導受信機システムにおいて、中間周波信号の周波数を選ぶだけで、超伝導受信機の調整無しにSSB受信とDSB受信を切り換えを可能にすることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例を示す超伝導受信機システムのブロック図、図2は本発明の実施例を示す超伝導受信機システムの要部構成を示す写真(代用図面)である。
【0014】
図1において、1はデュワー(4Kクライオスタット)、2,6はCGC(クロスガイドカプラー)、2Aは導波管型帯域阻止フィルタ、3は被測定用超伝導(SIS)ミクサ、4,9はHEMT増幅器、5,7は電磁ホーン、8はコムジェネレータ出力較正用超伝導(SIS)ミクサ(バックショート付)、11は温度較正装置、12は回転ミラー、13は常温黒体(300K)、14は液体窒素冷却黒体(77K)、21は信号発振装置、22はコムジェネレータ基準信号発振器(〜数GHz)、23はコムジェネレータ、24,26は方向性結合器、25はコムジェネレータ出力較正用疑似天体信号発振器、27はLO(局部発振)用GUNN発振器、31はコンピュータ、32はスペクトルアナライザーである。このように構成することにより、両サイドバンド(DSB)受信機である超伝導SISミクサ3を、片サイドバンド(SSB)受信機として使用するために、電磁ホーン5に接続されるクロスガイドカプラー2と前記超伝導SISミクサ3間に導波管型帯域阻止フィルタ2Aを配置し、この導波管型帯域阻止フィルタ2Aでイメージ側にフィルタをかけることにより、イメージバンドからの雑音や混信を取り除くようにした。
【0015】
図3は本発明の実施例を示す超伝導受信機システムの導波管型帯域阻止フィルタの特性図であり、横軸に周波数(GHz)、縦軸にトランスミッション利得(dB)を示している。図中、aは導波管帯型域阻止フィルタを適用した本発明の特性図、bはシミュレーション結果を示す図である。
【0016】
この図から明らかなように、導波管型帯域阻止フィルタは、シミュレーションの再現性がよく作製可能であるということができる。
【0017】
図4は本発明の超伝導受信機システムの導波管型帯域阻止フィルタによるオゾンスペクトルの観測結果を示す図であり、横軸は周波数〔MHz〕、縦軸は温度T〔K〕を示している。図中、○は両サイドバンド(DSB)での観測結果、□は片サイドバンド(SSB)を示している。
【0018】
SSBでの観測時は1番目のLO(局部発振器)の周波数は約103GHz、第1の中間周波数(IF)は約7GHz〔USB:上(アッパー)サイドバンドは約110GHz、LSB:下(ロー)サイドバンドは約96GHz、図3のBSF特性参照〕である。
【0019】
また、DSBでの観測時は1番目のLO(局部発振器)の周波数は約106GHz、第1の中間周波数(IF)は約4GHz(USB:上サイドバンドは約110GHz、LSB:下サイドバンドは約102GHz、図3のBSF特性参照)である。
【0020】
なお、従来の方式では、位相差等を使用するためサイドバンド比は〜20dB程度しか達成されなかった。一方、本発明の導波管型フィルタ方式では、帯域阻止率を−50dB以上にすることが可能なため、達成されるサイドバンド比も50dB以上にすることが可能となる。さらに、中間周波信号の周波数を選ぶだけで、受信機の調整無しにSSB受信とDSB受信を切り換えることが可能になる。
【0021】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0022】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、両サイドバンド(DSB)受信機である超伝導SISミクサを、片サイドバンド(SSB)受信機として使用するために、電磁ホーンに接続されるクロスガイドカプラーと前記超伝導SISミクサ間に導波管型帯域阻止フィルタを配置し、この導波管型帯域阻止フィルタでイメージ側にフィルタをかけることにより、イメージバンドからの雑音や混信を取り除くことができる。特に、サイドバンド比を従来の方式での20dBよりも大幅に上げること(フィルタの阻止能まで)が可能となる。
【0023】
また、さらに、中間周波信号の周波数を選ぶだけで、受信機の調整無しにSSB受信とDSB受信を切り換えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す超伝導受信機システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施例を示す超伝導受信機システムの要部構成を示す代用図面としての写真である。
【図3】本発明の実施例を示す超伝導受信機システムの導波管型帯域阻止フィルタの特性図である。
【図4】本発明の超伝導受信機システムの導波管型帯域阻止フィルタによるオゾンスペクトルの観測結果を示す図である。
【符号の説明】
1 デュワー(4Kクライオスタット)
2,6 CGC(クロスガイドカプラー)
2A 導波管型帯域阻止フィルタ
3 被測定用超伝導(SIS)ミクサ
4,9 HEMT増幅器
5,7 電磁ホーン
8 コムジェネレータ出力較正用超伝導(SIS)ミクサ(バックショート付)
11 温度較正装置
12 回転ミラー
13 常温黒体(300K)
14 液体窒素冷却黒体(77K)
21 信号発振装置
22 コムジェネレータ基準信号発振器(〜数GHz)
23 コムジェネレータ
24,26 方向性結合器
25 コムジェネレータ出力較正用疑似天体信号発振器
27 LO(局部発振)用GUNN発振器
31 コンピュータ
32 スペクトラムアナライザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天体や大気微量分子からのスペクトルを受信するヘテロダイン受信システムにおいて、両サイドバンド(DSB)受信機である超伝導SISミクサを、片サイドバンド(SSB)受信機として使用するために、電磁ホーンに接続されるクロスガイドカプラーと前記超伝導SISミクサ間に導波管型帯域阻止フィルタを配置し、該導波管型帯域阻止フィルタでイメージ側にフィルタをかけることにより、イメージバンドからの雑音や混信を取り除くことを特徴とする超伝導受信機システム。
【請求項2】
請求項1記載の超伝導受信機システムにおいて、中間周波信号の周波数を選ぶだけで、超伝導受信機の調整無しにSSB受信とDSB受信の切り換えを可能にすることを特徴とする超伝導受信機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2004−343654(P2004−343654A)
【公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−140773(P2003−140773)
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【出願人】(503360115)独立行政法人 科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】