説明

超伝導磁石装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置

【課題】励磁中にブリッジ線の超伝導部材のクエンチが頻発することを、作業工数の低減を図りつつ回避することが可能な、超伝導磁石装置を提供する。
【解決手段】超伝導磁石装置100は、観測領域4に所定の磁場分布を形成する複数の超伝導コイル7、8と、超伝導磁石装置100の外部にある磁場発生源によって観測領域4に生成される磁場を遮蔽するための、複数の超伝導コイル7、8上の特定の接続点P1、P2間を短絡させるブリッジ線15と、を有し、ブリッジ線15は、超伝導ブリッジ線18と、当該超伝導ブリッジ線18を覆うマトリックス材19とを備え、マトリックス材19の抵抗値よりも小さい抵抗値を持つ低抵抗材22が、接続点P1、P2間に電気回路的に並列に接続され、且つブリッジ線15に沿うように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導磁石装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、核磁気共鳴(以下、「NMR」という。)現象を利用したイメージング装置であり、NMR現象により水素原子核スピンが放出する電磁波を計測し、その信号を演算処理することにより、被検者体内中の水素原子核密度分布として断層像化するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、撮像中に、外部にある磁場発生源によってMRI装置の観測領域の磁場が変化する場合があり、このような外乱磁場による画像の乱れを回避する技術が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
図6は、従来の超伝導磁石装置100aの電気回路の概略図である。図6を参照して、従来の超伝導磁石装置100aにおける外乱磁場の補償について説明する。
図6に示すように、超伝導磁石装置100aは、直列に接続される互いに巻先方向が逆向きの超伝導コイル7、8を備えており、超伝導コイル7、8と並列に、直流電源16と永久電流スイッチ17とが接続されている。そして、直列接続されている超伝導コイル7、8の回路の一部が、外乱磁場の影響を低減するための手段であるブリッジ線15で短絡されている。ブリッジ線15は、通常、超伝導ブリッジ線18と、その周囲に配置された常伝導体であるマトリックス材19とを備えて構成されている。
【0005】
図6に示す電気回路においては、超伝導ブリッジ線18が存在するために、「超伝導コイル7→超伝導ブリッジ線18」の閉ループと、「超伝導コイル8→超伝導ブリッジ線18」の閉ループとの、2個の閉ループが生成される。もし超電導ブリッジ線18が無ければ、超電導コイル7,8の線材が互いに逆向きに巻かれていることから、外乱磁場発生時における超電導コイル7,8の両端電圧は互いに打消され、外乱磁場を抑制するために超電導コイル7、8に流れる電流が小さくなるため、外乱磁場の抑制効果が低くなる。一方、超電導ブリッジ線18が存在することにより、上記電圧の打消し効果が無くなり、より多くの電流が流れ、外乱磁場の抑制効果を高めることができる。
【0006】
ところで、超伝導ブリッジ線18に流れる電流は通常小さいため、超伝導ブリッジ線18の臨界電流性能(値)は超伝導コイル7、8で用いられる線材よりも低く構成される。これにより、直流電源16からの給電(以下、「励磁」という。)時には、超伝導コイル7の両端に電流増加率に比例した誘導起電力が発生して超伝導ブリッジ線18に電流が流れてしまい、超伝導ブリッジ線18に流れる電流が超伝導ブリッジ線18における臨界電流に達する毎に、超伝導ブリッジ線18がクエンチする現象が発生する。ここで、臨界電流とは、超伝導体中に超伝導状態で流すことができる最大の電流値をいい、クエンチとは、超伝導状態が崩れて急激に電気抵抗が発生することをいう。
【0007】
このクエンチ発生時には電圧パルスが発生し、励磁中にクエンチが頻発すると各種監視機器の誤動作を誘発する虞がある。このため、ヒータ(加熱器)20を超伝導ブリッジ線18に密着させ、励磁中に直流電源21により通電させることによって、超伝導ブリッジ線18を常伝導状態に保持し、電圧パルスの頻発を防ぐことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−29441号公報
【特許文献2】欧州特許0299325B1号明細書
【特許文献3】特許第3447090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術に開示されているヒータは、励磁中必ず通電する操作が必要となり、励磁中の作業工数の増大を招いていた。また、ヒータ線を超伝導コイル回路の近傍に配置することは、電気的な外乱の侵入口を設けることになるため、ヒータ20と直流電源21との間に電気ノイズを遮断するフィルタ等を設ける工程が必要となり、組立時の作業工数の増大も招いていた。しかも、直流電源21も必要になる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、励磁中にブリッジ線の超伝導部材のクエンチが頻発することを、作業工数の低減を図りつつ回避することが可能な、超伝導磁石装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、
超伝導磁石装置であって、
測定空間に所定の磁場分布を形成する複数の超伝導コイルと、
前記超伝導磁石装置の外部にある磁場発生源によって前記測定空間に生成される磁場を遮蔽するための、前記複数の超伝導コイル上の特定の接続点間を短絡させるブリッジ線と、を有し、
前記ブリッジ線は、超伝導部材と、当該超伝導部材を覆う常伝導材とを備え、
前記常伝導材の抵抗値よりも小さい抵抗値を持つ低抵抗材が、前記接続点間に電気回路的に並列に接続され、且つ前記ブリッジ線に沿うように配置されている。
【0012】
また、本発明は、前記超伝導磁石装置を用いた磁気共鳴イメージング装置であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、励磁中にブリッジ線の超伝導部材のクエンチが頻発することを、作業工数の低減を図りつつ回避することが可能な、超伝導磁石装置及びこれを用いた磁気共鳴イメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る超伝導磁石装置100が適用されたMRI装置の概略側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る超伝導磁石装置の電気回路の概略図である。
【図4】本実施形態の低抵抗材をブリッジ線と共に示す斜視図である。
【図5】他の実施形態の低抵抗材をブリッジ線と共に示す斜視図である。
【図6】従来の超伝導磁石装置の電気回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る超伝導磁石装置100が適用されたMRI装置101の概略側面図である。図2は、図1のA−A線に沿う概略断面図である。
【0017】
MRI装置101は、NMR現象により水素原子核スピンが放出する電磁波を計測し、その信号を演算処理することにより、被検者体内中の水素原子核密度分布として断層像化する装置である。観測領域(測定空間)4内には、強い磁場(0.2T以上)で、高い静磁場均一度(10ppm程度)を有する磁場分布を形成する必要がある。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るMRI101装置は、超伝導磁石装置100と、被検者1をのせるベッド2と、図示しない制御手段とを備えた開放型MRI装置である。被検者1は、ベッド2により、観測領域4を挟んで対向するように配置された一対の真空容器3間に搬送され、予め定められた観測領域4に撮像する領域が一致するように位置決めされる。一対の真空容器3は支柱5で連結されている。
【0019】
図2に示すように、真空容器3の内部には、静磁場発生源としての超伝導主コイル7及び超伝導シールドコイル8(以下、「超伝導コイル7、8」ともいう)が格納されており、観測領域4に矢印6の方向の静磁場を生成する。すなわち、真空容器3の内部には、観測領域4に矢印6の向きの静磁場を発生する環状の超伝導主コイル7と、漏洩磁場を抑制するために超伝導主コイルと逆向きの電流を流す環状の超伝導シールドコイル8とが配置されている。なお、超伝導コイル7、8は、分割された複数の超伝導コイルをそれぞれ備えて構成されていてもよい。
【0020】
MRI装置は、さらに、超伝導コイル7、8を内包し、極低温保持用の液体ヘリウムを格納する冷却容器9と、冷却容器9を真空容器3に対して支持すると共に、熱侵入量を低減するための断熱支持部材10とを備える。
【0021】
これらの構造物は、環状の超伝導コイル7、8の中心軸である軸11に関して概ね回転対称に、さらに観測領域4を挟んで概ね上下対称に配置される。真空容器3や冷却容器9には例えばステンレス鋼を、断熱支持部材10には例えばFRP(繊維強化プラスチック)をそれぞれ用いることができる。熱侵入を完全に除去することは難しいため、冷却容器9は、図示しない冷凍機に接続されている。
【0022】
被検者1の撮像において空間位置情報を付与するために、真空容器3の観測領域4側に、磁場の空間的な変化(傾斜磁場)を印加する傾斜磁場コイル12が配置される。また、NMR現象を引き起こすための共鳴周波数の電磁波を印加するために、傾斜磁場コイル12の観測領域4側に、高周波照射コイル13が配置される。これらの構成を用いて被検者1の断面が画像化される。なお、磁場補正コイル14については後記する。
【0023】
具体的には、まず、静磁場発生源により観測領域4に生成された均一静磁場に、傾斜磁場コイル12で磁場を重畳させることにより、関心領域(通常1mm厚のスライス面)を所定の磁場強度に形成する。続いて、その領域に高周波照射コイル13を用いて共鳴周波数の電磁波を照射して、関心領域内の水素原子核だけにNMR現象を引き起こさせ、放出される電磁波を受信して画像とする。
【0024】
そして、良好な画像を得るためには観測領域4の磁場均一度を確保する必要がある。そのために、観測領域4の磁場計測結果を元に、真空容器3の大気側の側面に小鉄片を並べる磁場調整作業や、傾斜磁場コイル12と高周波照射コイル13との間に配置した磁場補正コイル14に給電することによる磁場調整作業が行われる。
【0025】
また、前記磁場調整作業中には図1に示すMRI装置101周辺に存在していなかった外部磁場発生源(例えば、駐車場の自動車やエレベータなど)は、場合によっては、観測領域4の磁場均一度を劣化させる。特に撮像中に前記外部磁場発生源とMRI装置101との距離が変化する場合には、観測領域4の磁場が変化することになる。このような外部磁場発生源によって乱れる磁場(外乱磁場)は、画像の乱れとして顕著に現れることになる。この種の外乱磁場は、前記小鉄片による磁場調整作業や、磁場補正コイル14への給電で補正することは困難である。この外乱磁場による画像の乱れを回避するために、直列接続されている超伝導コイル7、8の回路の一部をブリッジ線15(図3参照)で短絡することが行われる。
【0026】
図3は、本実施形態に係る超伝導磁石装置100の電気回路の概略図である。なお、図3では、図2に示す上側(又は下側)のみの電気回路を示している。
図3に示すように、超伝導主コイル7と超伝導シールドコイル8とは通常直列接続されており、超伝導コイル7、8と並列に、直流電源16と永久電流スイッチ17とが接続されている。超伝導コイル7、8に、直流電源16から給電する場合(励磁時)には、永久電流スイッチ17を開放状態(高抵抗状態)とし、超伝導コイル7、8を永久電流運転させる場合(撮像時等)には、永久電流スイッチ17を閉止状態(超伝導状態)とする。
【0027】
外乱磁場の影響を低減するための手段であるブリッジ線15は、超伝導主コイル7、又は超伝導シールドコイル8、又は超伝導主コイル7若しくは超伝導シールドコイル8の一部と、並列に接続される。すなわち、ブリッジ線15は、複数の超伝導コイル7、8上の特定の接続点P1、P2間を短絡させる。図3では、超伝導主コイル7に並列にブリッジ線15が接続された例を示している。ブリッジ線15は、通常、超伝導ブリッジ線(超伝導部材)18と、その周囲に配置された、常伝導体であるマトリックス材(常伝導材)19とを備えて構成されている。
【0028】
ここで、外乱磁場が問題となるのは、永久電流スイッチ17が閉止状態となっている場合、すなわち超伝導コイル7、8が永久電流運転されている場合である。図3に示す電気回路においては、超伝導ブリッジ線18が存在するために、「超伝導コイル7→超伝導ブリッジ線18」の閉ループと、「超伝導コイル8→超伝導ブリッジ線18」の閉ループとの、2個の閉ループが生成される。もし超電導ブリッジ線18が無ければ、超電導コイル7,8の線材が互いに逆向きに巻かれていることから、外乱磁場発生時における超電導コイル7,8の両端電圧は互いに打消され、外乱磁場を抑制するために超電導コイル7、8に流れる電流が小さくなるため、外乱磁場の抑制効果が低くなる。一方、超電導ブリッジ線18が存在することにより、上記電圧の打消し効果が無くなり、より多くの電流が流れ、外乱磁場の抑制効果を高めることができる。
【0029】
前記外乱磁場は通常微小であるため、背景技術において説明したように、超伝導ブリッジ線18に流れる電流は、通常超伝導コイル7、8を流れる電流よりも電流値が2桁以上小さい。このため超伝導ブリッジ線18の臨界電流性能(値)は、超伝導コイル7、8で用いられる線材よりも低く構成される。これにより、直流電源16から給電する励磁時には、超伝導コイル7の両端に電流増加率に比例した誘導起電力が発生して超伝導ブリッジ線18に電流が流れてしまい、臨界電流に達する毎に、超伝導ブリッジ線18がクエンチする現象が発生する。このクエンチ発生時には電圧パルスが発生し、励磁中にクエンチが頻発すると各種監視機器の誤動作を誘発する虞がある。
【0030】
本実施形態では、この励磁時の超伝導ブリッジ線18のクエンチ頻発を避けるため、ブリッジ線15のマトリックス材19の抵抗値よりも小さい抵抗値を持つ低抵抗材22が、ブリッジ線15に並列に接続されている。すなわち、低抵抗材22は、両接続点P1、P2間に電気回路的に並列に接続されている。マトリックス材19の材質として、例えばCu(銅)とNi(ニッケル)の合金を用いることができ、低抵抗材22の材質として、例えばCu(銅)や、SUS(ステンレス鋼)を用いることができる。通常、超伝導コイル7,8に巻かれる超伝導線材にもマトリックス材と呼ばれる部分が存在し、そのマトリックス材の材質として、超伝導材としての安定化効果を高めるためにCu(銅)が用いられる。しかし、超伝導ブリッジ18は、超伝導コイル7,8とは大きく異なり、必要な時には速やかにクエンチを引き起こさせ高抵抗状態へ移行させることが望まれるため、マトリックス材19の材質には安定化効果を低減する材料の適用が好ましい。
【0031】
図4は、本実施形態の低抵抗材22をブリッジ線15と共に示す斜視図である。
図4に示すように、低抵抗材22は、中空の筒状を呈しており、当該低抵抗材22の中にブリッジ線15が挿通されることによりブリッジ線15に沿うように配置されている。具体的には、ブリッジ線15は、最内周に単数又は複数本の超伝導体からなる超伝導ブリッジ線18(図4には1本の超伝導体からなる例を図示)が配置され、その周りに常伝導体からなるマトリックス材19が配置されて構成されており、それらを完全に覆うように、筒状の低抵抗材22が配置されている。
【0032】
このように、低抵抗材22は、ブリッジ線15に熱的に良好に接触させられている。すなわち、低抵抗材22は、ブリッジ線15の超伝導ブリッジ線18と伝熱可能に配置されている。これにより、励磁中に低抵抗材22を流れる電流によるジュール発熱を、効率よく超伝導ブリッジ線18に伝えることができる。なお、ブリッジ線15及び低抵抗材22の各構成部材は、両端を除き図示しない電気絶縁層により絶縁されている。
【0033】
次に、このように構成された超伝導磁石装置100の作用について説明する。
超伝導磁石装置100の励磁は、直流電源16から給電することによって行われる。本実施形態では、励磁中に、一度超伝導ブリッジ線18がクエンチして、超伝導ブリッジ線18が常伝導化した後には、直流電源16の電流変化(上昇)によって発生する超伝導主コイル7の誘導起電力により、電気抵抗が発生した超伝導ブリッジ線18には殆ど電流が流れずに、小さい抵抗値を持つ低抵抗材22に電流が流れ続けて、低抵抗材22が発熱し、励磁中常に超伝導ブリッジ線18を加熱し続ける。
【0034】
このようにして、励磁中には超伝導ブリッジ線18を常に常伝導状態に保ち続けることが可能となる。なお、最初に生じる超伝導ブリッジ線18のクエンチは、直流電源16から給電し始めて超伝導コイル7、8の電流が低い時に発生するため、そのとき発生する電圧パルスによって監視機器が誤動作しても大きな問題とはならない。
【0035】
一方、超伝導コイル7、8の永久電流運転時(撮像時等)には、一定の電流が流れ続けるために超伝導コイル7の両端には誘導起電力が発生しない。このため、低抵抗材22には電流が流れなくなり、発熱することはない。そして、超伝導ブリッジ線18は超伝導状態になり、外乱磁場による影響を低減するブリッジ線15の機能が発揮される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る超伝導磁石装置100は、観測領域4に所定の磁場分布を形成する複数の超伝導コイル7、8と、超伝導磁石装置100の外部にある磁場発生源によって観測領域4に生成される磁場を遮蔽するための、複数の超伝導コイル7、8上の特定の接続点P1、P2間を短絡させるブリッジ線15と、を有し、ブリッジ線15は、超伝導ブリッジ線18と、当該超伝導ブリッジ線18を覆うマトリックス材19とを備え、マトリックス材19の抵抗値よりも小さい抵抗値を持つ低抵抗材22が、接続点P1、P2間に電気回路的に並列に接続され、且つブリッジ線15に沿うように配置されている。
【0037】
したがって、直流電源16から給電する場合(励磁時)には、低抵抗材22が発熱して能動的に超伝導ブリッジ線18のクエンチが頻発することを回避することが可能となり、従来のように励磁中にヒータを操作する工数が不要となるばかりか励磁時に使用されるヒータの設置が不要となるため、組立工数低減も可能となる。
すなわち、励磁中にブリッジ線15の超伝導部材のクエンチが頻発することを、作業工数の低減を図りつつ回避することが可能な、超伝導磁石装置100及びこれを用いたMRI装置101を提供することができる。
【0038】
図5は、他の実施形態の低抵抗材22aをブリッジ線15と共に示す斜視図である。図1〜図4に示した実施形態と同様の構成及び作用は、この実施形態に取り込まれるものとして詳細な説明を省略し、相違する点について説明する。
【0039】
図5に示すように、低抵抗材22aは、らせん状を呈しており、ブリッジ線15の外周に沿って巻回されることによりブリッジ線15に沿うように配置されている。具体的には、ブリッジ線15は、最内周に単数又は複数本の超伝導体からなる超伝導ブリッジ線18(図5には1本の超伝導体からなる例を図示)が配置され、その周りに常伝導体からなるマトリックス材19が配置されて構成されており、それらに巻き付けるように、らせん状の低抵抗材22aが配置されている。
【0040】
このように、低抵抗材22aは、ブリッジ線15に熱的に良好に接触させられている。すなわち、低抵抗材22aは、ブリッジ線15の超伝導ブリッジ線18と伝熱可能に配置されている。これにより、励磁中に低抵抗材22aを流れる電流によるジュール発熱を、効率よく超伝導ブリッジ線18に伝えることができる。したがって、この実施形態によっても、前記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0042】
例えば、前記実施形態では、超伝導磁石装置100が開放型MRI装置に適用された例について説明したが、トンネル型MRI装置でも電気回路としては図3に示したものと等価となるため、ブリッジ線15はトンネル型MRI装置でも採用され得る。したがって、本発明の低抵抗材22、22aは開放型MRI装置に限定されず、トンネル型MRI装置に適用しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
4 観測領域(測定空間)
7 超伝導主コイル(超伝導コイル)
8 超伝導シールドコイル(超伝導コイル)
15 ブリッジ線
18 超伝導ブリッジ線(超伝導部材)
19 マトリックス材(常伝導材)
22、22a 低抵抗材
100 超伝導磁石装置
101 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
P1、P2 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導磁石装置であって、
測定空間に所定の磁場分布を形成する複数の超伝導コイルと、
前記超伝導磁石装置の外部にある磁場発生源によって前記測定空間に生成される磁場を遮蔽するための、前記複数の超伝導コイル上の特定の接続点間を短絡させるブリッジ線と、を有し、
前記ブリッジ線は、超伝導部材と、当該超伝導部材を覆う常伝導材とを備え、
前記常伝導材の抵抗値よりも小さい抵抗値を持つ低抵抗材が、前記接続点間に電気回路的に並列に接続され、且つ前記ブリッジ線に沿うように配置されていることを特徴とする超伝導磁石装置。
【請求項2】
前記低抵抗材は、前記超伝導部材と伝熱可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超伝導磁石装置。
【請求項3】
前記低抵抗材は、中空の筒状を呈しており、当該低抵抗材の中に前記ブリッジ線が挿通されることにより前記ブリッジ線に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超伝導磁石装置。
【請求項4】
前記低抵抗材は、らせん状を呈しており、前記ブリッジ線の外周に沿って巻回されることにより前記ブリッジ線に沿うように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超伝導磁石装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の超伝導磁石装置を用いたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−169568(P2012−169568A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31501(P2011−31501)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】