説明

超微粒子水酸化カルシウムスラリー

【課題】 超微細であり長期分散安定な水酸化カルシウムスラリーを提供すること。
【解決手段】 本発明に超微粒子水酸化カルシウムスラリーは、通過分積算分布のメディアン径(d50)が0.5μm以下で、かつ通過分積算分布のd90−d10が0.5μm以下である。この
ような超微粒子水酸化カルシウムスラリーは、好ましくは水酸化カルシウム5〜60重量部
、分散剤0.01〜30重量部、水10〜94.99重量部とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃ガス処理剤、有害ガスの捕捉剤、排水処理剤、水性インキ、脱臭剤、塗料、セメント混和剤、建築材、保温性壁材、各種窯炉の耐火材料、強度発現材、薬液注入材料、中和剤、加工機械の腐食防止剤、抗菌剤、紙、鋳物、製線用潤滑剤、難燃化充填剤等の用途に有用な超微粒子水酸化カルシウムスラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化カルシウムは水処理工程、有害ガスの除去、鋳物や製線用潤滑剤などとして、広く使用されている。これらの用途において、より小さい粒径の水酸化カルシウムを用いればその効率や効果を高められることが知られている。例えば、水酸化カルシウムスラリーを用いた排ガスの脱硫工程においては、微粒子の水酸化カルシウムほど浄化能力や効率が高くなるため、より微細な粒子からなる水酸化カルシウムの製造方法が求められている。特許文献1により、水酸化カルシウムスラリーを消化反応槽―ポンプ―インラインミキサー―サイクロン―消化反応槽と循環させながら、サイクロンよりメディアン径1μm以下の水酸化カルシウムスラリーを得る方法が示されている。しかしながら、この方法では、工程が複雑で長い時間を要する。簡便な方法として(特許文献2)、1μm以下の水酸化カルシウムスラリーが示されているが、生石灰から消化反応にて調製するため、粒子の比表面積が増大し、表面が活性化し、直ちに凝集および増粘するため篩分けの際に生じるロスが大きく、高濃度のスラリーは得られていない。
【0003】
また、水酸化カルシウムスラリーを充填剤として使用する場合、強度等の性能を改善するには可能な限り小さな粉末を素材中に均一に分散させる必要がある。しかし、水酸化カルシウムは、微粉砕しても空気中の炭酸ガスと反応して、炭酸カルシウムに変化し易い問題があり、粉末で平均粒子径5〜7μm(最大粒子径20μm)、湿式粉砕装置(ジェットミル)で粉体表面を脂肪酸等の界面活性剤で改質した、粉末で平均粒子径1.5μm(最大粒子径10μm)が限界であった。また、粉砕効率が高く、高度な粉砕が可能な湿式粉砕としてボ
ールミル等を使用しているが、平均粒径3μmの水酸化カルシウム(特許文献3)を得るのが現状である。さらに、消石灰スラリーの低粘性化のために分散剤を添加したり、沈降抑制剤として分散安定剤、気泡剤を加えて、高濃度で分散安定性を保つ消石灰スラリー(特許文献4)が提案されているが、消石灰粒度構成は0.3〜30μmで80%とかなりブロードであり、粘度も200mPa・s以下程度であり分散安定性も30時間程度しかなく、不安定で沈降が
起こるなどの問題点がある。
【0004】
従って、微粒子の水酸化カルシウムのスラリー化が求められているが水酸化カルシウムのスラリーは極めて分散性が悪く、不安定で十分な効果を発揮できるまでに至っていない。
【0005】
一方、薬液注入材料の硬化剤として水酸化カルシウムを使用する場合、水酸化カルシウムの粉末等を水に投入して平均粒径8μm以下(特許文献5および特許文献6)としているが、水酸化カルシウムは水に難溶性のため、薬液を注入するためのスリーブ管など送液管内に水酸化カルシウムの粗粒が詰まりスケール化するなどの不具合も生じている。さらに、水酸化カルシウムの粉末等を注入使用毎にスラリー化する作業を施しているため使用が煩雑である。また粉末は飛散しやすく、強アルカリ性の粉塵は人体にとっても有害性があり取り扱いが困難であった。
【0006】
特許文献7には、消石灰50重量%と水50重量%の例が記載されているが、このような濃度のスラリーでは、沈降は抑制できるが粘性が高くホイップ状となるので、材料との混合
状態が不十分となり、作業性に困難が生じている。一方で低濃度のスラリーでは、沈降安定性がなく均質性の確保が困難であった。
【特許文献1】ドイツ特許 2714858
【特許文献2】特開2001-220185
【特許文献3】特開2005-139060
【特許文献4】特開2001-114542
【特許文献5】特開平5-194953
【特許文献6】特開平6-336722
【特許文献7】特表平10-502574
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような技術状況に鑑みてなされたものであって、超微細であり、しかも炭酸カルシウムへの変化を抑えた、長期分散安定な水酸化カルシウムのスラリーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成する本発明は、以下の事項を要旨としている。
(1)通過分積算分布のメディアン径(d50)が0.5μm以下で、かつ通過分積算分布のd90−d10が0.5μm以下であることを特徴とする超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
(2)水酸化カルシウム5〜60重量部、分散剤0.01〜30重量部、水10〜94.99重量部を含む(1)に記載の超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
(3)分散剤が、カルボン酸塩系高分子化合物と非イオン系湿潤剤との混合物またはスルホン酸塩系高分子化合物であることを特徴とする(1)または(2)の何れかに記載の超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
(4)粘性が150mPa・s以下であり、1400時間以上分散安定性を保つことを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超微細であり長期分散安定な水酸化カルシウムスラリーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、最良の形態を含めて、さらに具体的に説明する。本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴の説明として、添付図面と照らし合わせて読むと、より明らかになるであろう。
【0011】
ただし、図面は専ら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
本発明のスラリーを構成する水酸化カルシウム微粒子は、粒子径基準を体積とした場合、通過分積算分布のメディアン径(d50)が0.5μm以下、好ましくは0.47μm以下、特に好
ましくは0.35μm以下であり、下限は特に限定はされないが、通常は0.01μm以上である。また該微粒子の通過分積算分布のd90−d10が0.5μm以下、好ましくは0.45μm以下、特に好ましくは0.35μmであり、この下限も特に限定はされないが、通常は0.01μm以上である。この水酸化カルシウム微粒子、粒度分布範囲幅が狭く、このことが分散安定性と伴に低粘性で長期安定性等の諸特性の向上を可能にする。
【0012】
なお粒子径を測定する方法として、ここではレーザー光を照射し、照射領域を通過する粒子から発せられる散乱(回折)光から粒子径、粒子数を求めるレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置が使用される。粒子径の基準は体積基準(体積分布)であり、対象データを
値の昇順に並べた場合に中央に位置する値をメディアンと呼び、算出する場合にはデータを昇順(降順)にソートしてから、粒子径の大きい側と小さい側が等量となる径をメディアン径(d50)といい一般的によく用いられる。また、粒子径分布の表示は、通過分積算分
布で表示することが、ISO並びにJISでは標準化されている。
【0013】
前記したように、従来、水酸化カルシウムを微粉砕しても空気中の炭酸ガスと反応して、炭酸カルシウムに変化し易い問題が報告されている。スラリー化によりさらに分散状態が不安定となり、凝集が促進される傾向にあった。本発明者らは、後述するように、比較的簡単な調製で低粘性の長期分散安定性を維持した超微粒子水酸化カルシウムスラリーが得られであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明に係る超微粒子水酸化カルシウムスラリーは、水酸化カルシウム微粒子を含み、好ましくはさらに分散剤を含む。水酸化カルシウムの割合は、スラリー全量100重量部に対して、好ましくは5〜60重量部、さらに好ましくは10〜50重量部、特に好ましくは15〜40重量部であり、また、分散剤の割合は、スラリー全量100重量部に対して、好ましくは0.01〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.15〜15重量部である。残部は水であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤が含まれていてもよい。
【0015】
前記分散剤としては、カルボン酸塩系高分子化合物と非イオン系湿潤剤との混合物またはスルホン酸塩系高分子化合物が好ましく、特にスルホン酸塩系高分子化合物が好ましい。
【0016】
スルホン酸塩系高分子化合物は、不規則に入り乱れた複雑な立体構造を有する芳香族系スルホン酸塩の高分子化合物であり、特にポリスチレン鎖を有するスルホン塩が高い分散性を有するため好ましい。スルホン酸塩系高分子化合物は、ポリマー鎖と−SO3M(M
はアルカリ金属、特にナトリウムである)とからなり、分子量は12,000〜20,000の範囲において好ましく使用できる。このような分散剤として用いられるスルホン酸塩系高分子化合物としては、たとえばポリスチレンスルホン酸ナトリウム系分散剤(商品名:ポリティPS-1900、ライオン(株)製)があげられる。
【0017】
また、カルボン酸塩系高分子化合物は、ポリマー鎖と−COOM(Mはアルカリ金属、特にナトリウムである)とからなり、ポリマー鎖構造として直鎖不飽和ジカルボン酸を有し、分子量が8,000以上において好ましく使用できる。このような分散剤として用いられ
るカルボン酸塩系高分子化合物としては、たとえばアミレン・マレイン酸共重合物ソーダ塩(商品名:マッドフロー200、日本ゼオン(株)製)があげられる。このカルボン酸塩
系高分子化合物は、非イオン系湿潤剤と混合して用いられる。非イオン系湿潤剤とは、ここでは非イオン界面活性剤を示す。界面活性剤とは、水に溶かしたときに電離してイオン(電荷をもつ原子又は原子団)となるイオン性界面活性剤と、イオンにならない非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)に大きく分類され、イオン性界面活性剤は更に、水に溶かしたときにそのイオンの種類により、アニオン界面活性剤(又は陰イオン界面活性剤)、カチオン界面活性剤(又は陽イオン界面活性剤)及び両性界面活性剤に分類される。本発明で使用される非イオン界面活性剤は、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型(ポリエチレングリコール型)、アルカノールアミド型等にも分類され、いずれも性能面の特徴として使用可能であるが、好ましくはエステルエーテル型(ポリエチレングリコール型)が使用できるが、具体的にはアセチレンジオール(アセチレングリコール)、特に好ましくは自己乳化型アセチレンジオール(商品名:サーフィノールSE-F、日信化工(株)製)があげられる。なお、非イオン系湿潤剤は、カルボン酸塩系高分子化合物100重量部に対して0.01〜30重量部程度の割合で用いられる。
【0018】
上記のような分散剤は、一種単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分散剤は、水酸化カルシウム粒子表面層に吸着して、近接する粒子間に立体的な緩い架橋結合を形成させることにより沈降を抑制させると考えられる。
【0019】
一般に微細化の工程において、分散剤を用いない場合、直ちに粘性が上がり、微細化が困難となることが多い。また、分散剤の種類によっては、粒子の凝集が起こり、粒度分布は広がり、分布が2つの山に分かれるなど不均一な粒子径が得られてしまうことがある。このため、分散剤としては前述したポリスチレンスルホン酸塩またはアミレン・マレイン酸共重合物塩(非イオン系湿潤剤含有)が好ましく使用される。特にポリスチレンスルホン酸塩は水酸化カルシウムとの相性がよく、水酸化カルシウムの表面を覆い、微細化された際に粒子間で電気的な反発を起こし長期にわたり凝集せず分散安定性を保つと考えられる。
【0020】
本発明の超微粒子水酸化カルシウムスラリーを製造する方法は、特に限定はされない。前記したように、粉砕効率が高く、高度な粉砕が可能な湿式粉砕が推奨される。具体的には、ビーズミル等に代表される粉砕機を使用して湿式粉砕する方法が挙げられる。
【0021】
原料として使用する水酸化カルシウムは特に限定されず、市販品の工業用消石灰が使用できるが、水酸化カルシウムの含有量が高いJIS規格1号以上が好ましく、更に不純物が
少なく粒子径の小さいJIS特号が特に好ましい。
【0022】
上記湿式粉砕法について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。図1に、水酸化
カルシウムの微細化における湿式粉砕の循環フローを示す。図示したように、水酸化カルシウムスラリーをスラリータンク2中に攪拌機4で攪拌しながら、湿式粉砕装置1との間を循環ポンプ3を用いて循環する。循環運転では粉砕は時間と伴に連続的に進行するので、粒度コントロールや自動化運転ができ、運転中に粉砕の進行状況の確認や添加剤などの投入もスラリータンク2にて可能である。
【0023】
図2には、湿式粉砕装置1の構成例を示す。湿式粉砕装置1は、粉砕室9の内部中心に回転軸(回転速度で5〜40m/s回転させる)を有するディスク型の攪拌部10を持ち、水酸化カルシウムスラリーをスラリー入口5より循環させながら、スラリー出口6にて排出される。スラリー出口6の手前にギャップセパレーター11を取付けることにより、ビーズとスラリーが分離され、スラリーの流れに逆らいビーズが粉砕室9に押し戻される。粉砕室9に微小ビーズ等の粉砕媒体(メディア直径0.03〜2mm)を60〜95%充填させる。上記
構成の装置のよれば、微小ビーズを用いても安定した運転が可能であり、スラリー流量を大きくしてもビーズが出口側に偏ることがなく、粉砕室内のビーズ分布は均一になる。ショートパスや粉砕室内圧の上昇、偏摩耗、異常発熱が起こらないので循環運転だけでなくパス運転でも微細化と伴にシャープな粒度分布が得られる。さらに、冷却水入口7から冷却水出口8に冷却溶媒として、ここでは水道水を流すことで、スラリーを冷却するので温度の制御ができ、スラリーの低温処理が可能となる。
【0024】
スラリータンク2と粉砕装置1との間を循環することで、通過分積算分布のメディアン径(d50)が0.5μm以下で、なおかつ通過分積算分布のd90−d10が0.5μm以下の範囲の超微
粒子水酸化カルシウムスラリーを得ることが出来る。
【0025】
スラリー中の粒子をできるだけ微粉砕するために、粉砕メディアとしてボールミル(メディア直径10〜30mm)、アトライター(メディア直径3〜15mm)、サンドミル(メディア
直径1〜5mm)、ビーズミル(メディア直径0.03〜2mm)等が使用される。ボールミルでは
、微細化するのにバッチ式で長時間の運転が必要で、粗粒が滞在してしまう。微細化を目
的とする場合、微小ビーズが特に好ましく選択され、ここでは高い固形分濃度、高い粉砕効率・流速(パス回数、循環速度)、運転制御が容易でしかも微小ビーズの使用可能なビーズミルを使用している。特に、ハードな凝集体はビーズミルを用いて分散することが必要である。
【0026】
粉砕効率は、粉砕メディアの径と、原料水酸化カルシウム粒子のメディアン径との関係に依存する。原料水酸化カルシウム粒子のメディアン径が20μm以下程度であれば、粉砕
メディア直径は0.03〜2mm程度であるが、直径0.5mm以下の粉砕メディアが好ましく使用できる。特に好ましくは、0.3mm以下の粉砕メディアが使用できる。
【0027】
原料水酸化カルシウム粒子の平均粒子径は小さいほど製造における時間が短縮でき、平均粒子径が20μm以下のものが特に好ましく利用できる。平均粒子径が20μm以上の場合は、適宜な粉砕メディアを選択し、予備的な粉砕を行い、水酸化カルシウム粒子の平均粒子径を20μm以下としておくことが好ましい。予備粉砕には、ボールミルを使用することもできる。
【0028】
粉砕メディアの材質は、特に限定されないが、粉砕効果、耐摩耗性に優れたジルコニアボール、窒化けい素ボール、アルミナボールなどが使用されるがここでは、ジルコニアボールが好ましく使用できる。
(実施例)
以下、実験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)分散安定性の評価法
分散媒体としては、純水を使用し300mlのプラスチック容器に94.75gを入れその中に水
酸化カルシウム5.00g(市販品の消石灰)をハンドミキサー(テスコム(株)製)にて550r.p.m.で攪拌しながら、表1に記載の各種分散剤を0.25g加えて5分間攪拌した後に、スラリーをプラスチック製100mlメスシリンダーに移し1、3、5、10分静置した。容器上部において、透明な水の層と消石灰沈降部との境界面を目視にて確認し、消石灰沈降部の容量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
参考例1においては、分散剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム (ポリティPS
−1900 ライオン(株)製)を使用した。
参考例2においては、分散剤として、アミレン・マレイン酸共重合物ソーダ塩(マッド
フロー200 日本ゼオン(株)製)を0.24g加え、非イオン性湿潤剤として自己乳化型アセチレンジオール(サーフィノールSE-F 日信化工(株)製)を0.01g加えた。
【0031】
参考例3では、分散剤を使用していない。
参考例4では分散剤として、ポリカルボン酸ナトリウム(ポリティA-550 ライオン(株)製)0.25gを使用した。なお、この分散剤には、非イオン系湿潤剤は含まれていない。
【0032】
参考例5では分散剤として、ポリアクリル酸ナトリウム(レオフローA-1000 ライオン
(株)製)0.25gを使用した。なお、この分散剤には、非イオン系湿潤剤は含まれていない。
【0033】
参考例6では分散剤として、ポリカルボン酸ナトリウム(アロンT40 東亜合成(株)製)
0.25gを使用した。なお、この分散剤には、非イオン系湿潤剤は含まれていない。
(2)粘度の評価方法
粘度は、水酸化カルシウムスラリーを20ml程度採取し、B型粘度計((株)東京計器製B8L型)を用い回転数30r.p.m.と固定し、BLアダプター及びロータNo.1〜No.4を用いて液温25℃にて測定を行った。
(3)粒径の評価方法
分散媒体としては純水を使用し、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製LA-920)を用いて水酸化カルシウムの粒度分布を測定し、測定結果から体積基準(体積分布)として、算出する場合にはデータを昇順(降順)にソートしてから、粒子径の大きい側と小さい側が等量となるメディアン径(d50)およびd90−d10を求め、通過分積算
分布(d90−d10)を算出した。
【0034】
超微粒子消石灰スラリーの構成と特性を実施例1〜7として表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
(実施例1)
純水0.981kg攪拌中にポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリティPS−1900 ライオン製)0.069kgを加え、更に消石灰0.450kgを3分間かけて投入し、三枚風車を用い400r.p.m.
で20分間攪拌を行った。
【0037】
得られた消石灰スラリーを、図1に示す構成の装置のスラリータンクに導入した。湿式粉砕装置(浅田鉄工(株)製 NM-L)には、直径0.3mmジルコニアビーズ(比重6.0)を充填
率80%で充填され、内部回転軸の回転速度を10m/sとしてスラリー流量0.66L/minで循環し
、20分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(実施例2)
湿式粉砕時間を40分とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
(実施例3)
純水1.005kg攪拌中にポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリティPS −1900 ライオ
ン製)0.045kgを加え、更に消石灰0.450kgを3分間かけて投入し、三枚風車を用い400r.p.m.で20分間攪拌を行った。
【0038】
実施例1と同様に、20分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(実施例4)
純水0.840kg攪拌中にポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリティPS −1900 ライオ
ン製)0.060kgを加え、更に消石灰0.600kgを3分間かけて投入し、三枚風車を用い400r.p.m.で20分間攪拌を行った。
【0039】
実施例1と同様に、20分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(実施例5)
湿式粉砕時間を40分とした以外は、実施例4と同様の操作を行った。
(実施例6)
純水1.219kg攪拌中にアミレン・マレイン酸共重合物ソーダ塩(マッドフロー200 日本ゼオン(株)製)0.054g加え、非イオン性湿潤剤として自己乳化型アセチレンジオール(サーフィノールSE-F 日信化工(株)製)0.002g加え、更に消石灰0.225kgを3分間かけて投入し、三枚風車を用い400r.p.m.で20分間攪拌を行った。
【0040】
実施例1と同様に、20分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(実施例7)
純水1.219kg攪拌中にアミレン・マレイン酸共重合物ソーダ塩(マッドフロー200 日本ゼオン(株)製)0.091g加え、非イオン性湿潤剤として自己乳化型アセチレンジオール(サーフィノールSE-F 日信化工(株)製)0.004g加え、更に消石灰0.225kgを3分間かけて投入し、三枚風車を用い400r.p.m.で20分間攪拌を行った。
【0041】
実施例1と同様に、40分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
消石灰スラリーの構成と特性を比較例1〜5、炭酸カルシウムスラリーの構成と特性を比較例6〜7として表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
(比較例1)
純水1.275kg攪拌中に消石灰0.225kgを3分間かけて投入し、5分間スリーワンモーター三
枚風車羽を用い回転数400r.p.m. で攪拌を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(比較例2)
純水1.275kg攪拌中に消石灰0.225kgを3分間かけて投入し、40分間スリーワンモーター
三枚風車羽を用い回転数400r.p.m.で攪拌を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(比較例3)
純水1.275kg攪拌中に消石灰0.225kgを3分間かけて投入し、20分間スリーワンモーター
三枚風車羽を用い回転数400r.p.m.で攪拌を行った。
【0044】
実施例1と同様の装置を用い、10分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(比較例4)
純水1.027kg攪拌中にポリカルボン酸ナトリウム(アロンT40、東亜合成製)0.023kgを加
え、更に消石灰0.450kgを3分間かけて投入し、20分間スリーワンモーター三枚風車羽を用い回転数400r.p.m.で攪拌を行った。
【0045】
実施例1と同様の装置を用い、15分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(比較例5)
湿式粉砕時間を30分とした以外は、比較例4と同様の操作を行った。
(比較例6)
純水1.027kg攪拌中にポリカルボン酸ナトリウム(アロンT40、東亜合成製)0.023kgを加
え、更に炭酸カルシウム0.450kgを3分間かけて投入し、20分間スリーワンモーター三枚風車羽を用い回転数400r.p.m.攪拌を行った。
【0046】
実施例1と同様の装置を用い、15分間湿式粉砕を行った。スラリーの粘度と粒径を測定した。
(比較例7)
湿式粉砕時間を30分とした以外は、比較例6と同様の操作を行った。
【0047】
超微粒子消石灰スラリーの経日的、粒度の安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
実施例8〜9は実施例2で得られた30%スラリー溶液を30〜60日間放置後の粒度分布の測定を行った。
実施例10〜12は実施例2で得られた30%スラリー溶液をスラリー濃度5.0%に希釈し、0〜20日間放置後の粒度分布の測定を行った。
【0050】
実施例13〜15は実施例2で得られた30%スラリー溶液をスラリー濃度2.5%に希釈し、0〜20日間放置後の粒度分布の測定を行った。
実施例16〜17は実施例2で得られた30%スラリー溶液をスラリー濃度2.5%に希釈し、0〜2日間放置後の粒度分布の測定を行った。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、超微細であり長期分散安定な水酸化カルシウムスラリーが提供される。したがって、水酸化カルシウムスラリーの各種用途の展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】水酸化カルシウムの微細化における湿式粉砕の循環運転フロー図である。
【図2】湿式粉砕装置の構成例である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・湿式粉砕機、2・・・スラリータンク(循環タンク)、3・・・
循環ポンプ、4・・・攪拌機、5・・・スラリー入口、6・・・スラリー出口、7・・・冷却水入口、8・・・冷却水出口、9・・・粉砕室、10・・・攪拌部、11・・・ギャップセパレーター



【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過分積算分布のメディアン径(d50)が0.5μm以下で、かつ通過分積算分布のd90−d10
が0.5μm以下であることを特徴とする超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
【請求項2】
水酸化カルシウム5〜60重量部、分散剤0.01〜30重量部、水10〜94.99重量部を含む請求項1に記載の超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
【請求項3】
分散剤が、カルボン酸塩系高分子化合物と非イオン系湿潤剤との混合物またはスルホン酸塩系高分子化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の超微粒子水酸化カルシウムスラリー。
【請求項4】
粘性が150mPa・s以下であり、1400時間以上分散安定性を保つことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の超微粒子水酸化カルシウムスラリー。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−31212(P2007−31212A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217571(P2005−217571)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(390028093)東曹産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】