説明

超微粒子酸化亜鉛及びその製造方法

【課題】赤外線遮蔽能及び導電性に加えて可視光透過性という性能も兼ね備えた超微粒子酸化亜鉛及びその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛又は焼成によって酸化亜鉛となる前駆体化合物と、3価以上の元素とが固体状態で混合した混合物を調整する工程(1)、上記工程(1)の混合物と焼結防止成分とを混合する工程(2)、及び、上記工程(2)によって得られた混合物を焼成する工程からなり、表面に金属化合物が被着しており、平均一次粒子径が0.1μm以下であることを特徴とする超微粒子酸化亜鉛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超微粒子酸化亜鉛及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の高まりの中、地球温暖化を抑えるため、空調に要する電力の削減等による省エネルギーが検討されている。これを積極的に進める方法の一つとして、太陽光中の熱線を遮蔽することにより室内や車内等の空間内の温度上昇を抑える検討がなされている。
【0003】
赤外線は太陽光の約50%を占める。太陽光中の赤外線のエネルギーは紫外線の10分の1と小さいが、熱的作用は大きい。このため、上述したような目的を達成するためには、赤外光の遮蔽を行うことが要求されている。特に、ビルの窓、車窓、電話ボックス等においては、ガラス等の透明な材料を通じて空間内に進入する赤外線の遮蔽を行うことが要求されている。赤外線を遮蔽するには、赤外線を吸収し熱拡散させるか、反射させることが必要である。
【0004】
しかし、赤外線を遮蔽する材料によって可視光領域が遮蔽されると、空間内が暗くなったり視感度が悪化したりするという問題を生じる。このため、赤外線遮蔽材料は、可視光に対しては透明である必要がある。このような理由から可視光領域の光を透過し、赤外光領域を反射又は吸収する材料が求められてきた。また、様々な用途にフレキシブルに用いることが可能で、製造設備やコストに利点のある粒子分散型が望ましい。
【0005】
一方、導電性を有する金属酸化物材料に対する要望も近年増加しつつあり、用途によっては可視光に対する透光性を要求される。このため、可視光領域の光を透過し、赤外光領域を反射又は吸収する材料が求められてきた。導電性金属酸化物材料は、同時に赤外線遮蔽機能を有するため、可視光に対する透光性を有する導電性金属酸化物材料を得ることができれば、これらの両方の用途に適用することができる。
【0006】
これまで、熱線遮蔽材料及び導電性材料としては、金属蒸着膜、有機添加剤又は無機(半)導体が提案されている。しかしながら、金属蒸着膜の場合、可視光の透過性に劣ることや、耐久性に乏しいこと、更に装置が高価であるなどの欠点がある(特許文献1〜5)。有機添加剤は、耐候性が低いことや、更に赤外線の遮蔽が分子の振動運動に起因する吸収によるため、再度熱エネルギーとして熱輻射を生じるという問題がある(特許文献6、7)。また、カルボニル基の熱伸縮による熱線吸収性を利用して、各種金属の炭酸塩が用いられるが、吸収波長域が狭いという本質的な欠点を有する。
【0007】
無機(半)導体材料としては、近年、主にスズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等が研究されている。特にITOは透明熱線遮蔽剤として有望であり、実用化もされている。これまで、ITOは主として透明導電膜としての研究が盛んに行われてきた。その結果、FPD材料やタッチパネルなどをはじめ、様々な電子材料分野で活用されている。この様な電気特性に付随して赤外線遮蔽という光学特性が得られることがわかっている。光学特性は電気的特性の副産物とされているが、その逆もまた然りであり、熱線遮蔽性を持つと同時に導電性も持つ。しかし、インジウムは高価であるという問題を有し、代替材料が求められている。また、ATOにおいてもアンチモンの毒性が問題となる。
【0008】
一方、金属をドープした酸化亜鉛やITO、ATOを含有する樹脂被膜によって、近赤外線遮蔽を行う方法も検討されている(特許文献8〜11)。このような方法は、安価な材料によって簡便に処理を行うことができるという利点を有する。また、酸化亜鉛は紫外線吸収能も有するため、紫外線及び赤外線の両方を吸収できるという利点も有する。しかし、ビルの窓、車窓、電話ボックス等の透明基材に適用するには、可視光透過性を確保することが必要になる。酸化亜鉛粒子の透明性を得るためには、平均一次粒子径が0.1μm以下程度の超微粒子酸化亜鉛を使用することが必要である。しかし、このような酸化亜鉛粒子は、優れた熱線遮蔽性及び導電性を達成するために必要となる高いキャリア濃度と高結晶性とを得るため、高温焼成を行って得られるものであることから、高温焼成時に粒子の焼結を招き、粗大な粒子を生成させることとなる(非特許文献1)。この問題を解決するために分散性を改善した金属微粒子が検討されているが(特許文献12、13)、透明性を有するような微細な平均一次粒子径と、赤外線遮蔽能、及び、導電性とを両立することが極めて困難であり、更には酸化亜鉛本来の耐環境性が低いこともあり、実用化されていない。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−59748号公報
【特許文献2】特開昭57−59749号公報
【特許文献3】特公平03−72011号公報
【特許文献4】特公平04−929号公報
【特許文献5】特公平05−6766号公報
【特許文献6】特開平04−160037号公報
【特許文献7】特開平05−126650号公報
【特許文献8】特開平07−291680号公報
【特許文献9】特開平10−310759号公報
【特許文献10】特開平08−281860号公報
【特許文献11】特開2000−186237号公報
【特許文献12】特開2004−124033号公報
【特許文献13】特開平05−319808号公報
【非特許文献1】J.Am.Ceram.soc.,89[8]2440−2443(2006)Shangfeng Du著「Calcination Effects on the Properties of Gallium−Doped Zinc Oxide Powders」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、赤外線遮蔽能及び導電性に加えて可視光透過性という性能も兼ね備えた超微粒子酸化亜鉛及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、3価以上の元素を含有し、かつ、表面に金属化合物が被着しており、平均一次粒子径が0.1μm以下であることを特徴とする超微粒子酸化亜鉛である。
上記3価以上の元素は、Sc、Y、In、Ga、Al、Ti、B及びランタノイド元素よりなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
上記金属化合物は、Si、Zr、Sn、Mg、Hf、Ge、Mo、W、V、Nb、Ta、Ca、Sr及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の化合物であることが好ましい。
上記3価以上の元素の含有量は、酸化亜鉛1モルに対して、上記元素換算で0.001〜0.2モルの範囲であることが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、被着処理された酸化亜鉛に対して0.5〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明は、3価以上の元素を含有した酸化亜鉛又は3価以上の元素を含有した焼成して酸化亜鉛となる前駆体化合物に、焼結防止成分を表面に被着させ、次いで600〜850℃で焼成することを特徴とする上述の超微粒子酸化亜鉛の製造方法でもある。
上記超微粒子酸化亜鉛の製造方法において、焼結防止成分は、シリカであることが好ましい。
上記超微粒子酸化亜鉛の製造方法において、上記3価以上の元素は、酸化亜鉛1モルに対する含有量が3価以上の元素換算で0.001〜0.2モルであり、シリカは、被着処理された酸化亜鉛に対する含有量がSiO換算で0.5〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0013】
本発明は、上記超微粒子酸化亜鉛を含有することを特徴とする塗料組成物でもある。
本発明は、上記超微粒子酸化亜鉛を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物でもある。
【0014】
本発明は、上記超微粒子酸化亜鉛を含有することを特徴とするインキでもある。
本発明は、ガラス基材層及び赤外線遮蔽層からなる積層体であり、上記赤外線遮蔽層は、上述の超微粒子酸化亜鉛及びバインダー樹脂からなることを特徴とする積層体でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、3価以上の元素を含有し、かつ、表面に金属化合物が被着しており、平均一次粒子径が0.1μm以下であることを特徴とする超微粒子酸化亜鉛である。本発明の超微粒子酸化亜鉛は、3価以上の元素を含有したものであるので、赤外線遮蔽性及び導電性に優れるものである。更に、可視光透過性を有するものであることから、透明性をも有するものである。このように、赤外線遮蔽能及び導電性に加えて可視光透過性という性能も兼ね備えた超微粒子酸化亜鉛は公知ではなく、本発明によって新規に見出されたものである。
【0016】
上記3価以上の元素としては、酸化亜鉛に赤外線遮蔽性と導電性を付与する元素であれば特に制限されないが、Sc、Y、In、Ga、Al、Ti、B及びランタノイド元素よりなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。より好ましくは13族元素であり、更に好ましくはIn、Ga又はAlである。
【0017】
本発明において、酸化亜鉛1モルに対する3価以上の元素の含有量は、元素換算で、0.001〜0.2モルの範囲であることが好ましい。より好ましくは0.01〜0.1モルであり、特に好ましくは0.02〜0.1モルの範囲である。上記含有量が0.001モル未満であると、赤外線遮蔽性が不充分であるため好ましくなく、0.2モルを超えると効果が飽和して経済的に不利になることと、効果的な位置に拡散されない過剰の添加元素が粒界に化合物となって析出することで、可視光を散乱し、赤外線遮蔽性や導電性を低下させるため好ましくない。
【0018】
上記金属化合物は、後述する焼結防止成分に由来するものであり、好ましくはSi、Zr、Sn、Mg、Hf、Ge、Mo、W、V、Nb、Ta、Ca、Sr及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の化合物であり、より好ましくはSi、Zr、Sn、Mg、Hfの化合物であり、更に好ましくはSi又はSnの化合物である。上記金属化合物は、上記金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の形態で本発明の超微粒子酸化亜鉛に被着している。
【0019】
上記金属化合物は、被着処理された酸化亜鉛に対する含有量が酸化物換算で0.5〜20質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.5〜15質量%であり、更に好ましくは1〜10質量%であり、特に好ましくは1〜5質量%である。上記金属化合物の含有量が0.5質量%未満であると、焼結防止効果が充分に得られず、粒子が粗大化し透明性が低下するため好ましくなく、20質量%を超えると、酸化亜鉛の含有量が減少することにより熱線遮蔽性が低下し、過剰の焼結防止成分による絶縁のために導電性が低下するため好ましくない。
【0020】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、平均一次粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径を上記範囲内とすることによって、可視光領域における散乱を生じず、透明性に優れた超微粒子酸化亜鉛とすることができる。なお、本発明において、平均一次粒子径は、粒子の形状を球とみなし、その球の表面積をその球の体積とその物質の比重の積で除した値がBET比表面積の値であるとする関係式において得られるその球の直径の値をいう。上記平均一次粒子径は、0.07μm以下であることがより好ましい。
【0021】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、BET比表面積が10〜100m/gであることが好ましい。BET比表面積が100m/gを超えると凝集力が極めて強くなり、解凝集処置に非常にエネルギーと時間がかかるという問題と、経時変化による特性の低下を促進するという問題とを生じるおそれがあり、10m/g未満であると、高い透明性を得られないという問題を生じるおそれがある。上記BET比表面積は、10〜70m/gであることがより好ましい。
【0022】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、可視光透過性に優れる点で、550nmの光透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。本発明の超微粒子酸化亜鉛は、赤外線遮蔽性能に優れる点で、1900nmの光透過率が80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、導電性に優れる点で、体積固有抵抗値が10000Ωcm以下であることが好ましく、2000Ωcm以下であることがより好ましく、1000Ωcm以下であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下に詳細に説明する方法によって製造することができる。なお、以下に説明する超微粒子酸化亜鉛の製造方法も本発明の一つであるが、本発明の超微粒子酸化亜鉛は、以下で詳述する方法によって製造されたものに限定されるものではない。
【0025】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、3価以上の元素を含有した酸化亜鉛又は3価以上の元素を含有した焼成して酸化亜鉛となる前駆体化合物に、焼結防止成分を表面に被着させ、次いで600〜850℃で焼成することによって製造することができる。すなわち、焼結防止成分による表面処理層が焼結による粗粒化を防ぎ、その結果、3価以上の元素が、高い効率で固溶するために必要な高温焼成を行っても、超微粒子を維持することを可能ならしめる、透明性と赤外線遮蔽能及び導電性とを兼ね備えた超微粒子を得るものである。
【0026】
上記焼結防止成分は、被着処理された酸化亜鉛に対する含有量が焼結防止成分の酸化物換算で0.5〜20質量%の範囲が好ましい。より好ましくは0.5〜15質量%であり、更に好ましくは1〜10質量%であり、特に好ましくは1〜5質量%である。0.5質量%未満であると、充分な焼結防止効果がなく、超微粒子が得られないという問題を有するおそれがあり、20質量%を超えると酸化亜鉛の含有量が少なくなり、充分な赤外線遮蔽効果が得られないという問題を有するおそれがある。
【0027】
本発明の超微粒子酸化亜鉛の製造方法は、より詳細には、例えば、以下に示すような方法によって実施することができる。以下に示す超微粒子酸化亜鉛の製造方法は、酸化亜鉛又は焼成によって酸化亜鉛となる前駆体化合物と、3価以上の元素とが固体状態で混合した混合物を調製する工程(1)、上記工程(1)の混合物と焼結防止成分とを混合する工程(2)、及び、上記工程(2)によって得られた混合物を600〜850℃の範囲の温度で焼成する工程(3)からなるものである。
【0028】
工程(1)においては、酸化亜鉛又は焼成して酸化亜鉛となる前駆体化合物を使用する。上記前駆体化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、硫酸亜鉛や硝酸亜鉛等を挙げることができる。
【0029】
上記工程(1)においては、酸化亜鉛又は焼成によって酸化亜鉛となる前駆体化合物(以下、酸化亜鉛及び前駆体化合物を「亜鉛化合物」ということがある)と、3価以上の元素とが固体状態で混合した混合物を調製する。上記固体状態で混合した混合物の調製方法としては、酸化亜鉛又は焼成して酸化亜鉛となる前駆体化合物と、所定量の3価以上の元素化合物とをボールミルを用いて乾式で混合する方法;酸化亜鉛の水性ディスパージョンに、所定量の3価以上の元素化合物の水溶性塩を、酸又はアルカリ剤を用いて、中性にpH調整しながら同時に添加、すなわち同時中和し、酸化亜鉛表面に均一に3価以上の元素化合物の不溶性塩を沈積させる方法;亜鉛の水溶性塩と3価以上の元素化合物の水溶性塩の混合水溶液と、酸又はアルカリ剤を用いて、亜鉛と3価以上の元素の不溶性塩を同時に均一に沈殿させる方法、すなわち同時沈殿法等を挙げることができる。
【0030】
上記工程(1)において使用する3価以上の元素としては特に限定されず、元素単体で用いてもよく、またこれらの元素の化合物を用いても良い。3価以上の元素化合物としては、例えば、ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ酸リチウムやホウ酸ナトリウムを挙げることができ、アルミニウム化合物としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムやアルミニウムトリプロポキシドを挙げることができ、ガリウム化合物としては、酸化ガリウム、硝酸ガリウムや塩化ガリウムを挙げることができ、インジウム化合物としては、酸化インジウムや塩化インジウムを挙げることができる。
【0031】
スカンジウム化合物としては、酢酸スカンジウム、炭酸スカンジウム、塩化スカンジウム、フッ化スカンジウム、ヨウ化スカンジウム、硝酸スカンジウム、酸化スカンジウム、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムやトリス(ドデシル硫酸)スカンジウムを挙げることができる。
【0032】
イットリウム化合物としては、酢酸イットリウム、酸化イットリウム、臭化イットリウム、炭酸イットリウム、塩化イットリウム、フッ化イットリウム、ヨウ化イットリウム、イットリウムイソプロポキシド、ナフテン酸イットリウム、ナフトエ酸イットリウム、ネオデカンイットリウム、硝酸イットリウム、2−エチルヘキサン酸イットリウム、ヘキサフルオロアセチルアセトナトイットリウム、シュウ酸イットリウム、過酸化酸イットリウム、硫酸イットリウム、硫化イットリウムやトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン酸)イットリウムが挙げられる。
【0033】
チタン化合物としては、四塩化チタン、硫酸チタニル、チタンテトライソプロポキシド、チタン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0034】
ランタノイド化合物としては、ランタノイド元素の酢酸塩、臭化塩、炭酸塩、塩化塩、フッ化塩、ヨウ化塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酸化物、リン酸塩、ステアリン酸塩や硫酸塩が挙げられる。
【0035】
次いで行う工程(2)において、工程(1)において得られた亜鉛化合物と3価以上の元素との混合物に、焼結防止効果を有する焼結防止成分を添加する。上記焼結防止成分を焼結防止剤として添加することによって、極端な粒子成長を抑制しつつ、高温で焼成することができ、酸化亜鉛結晶中への3価以上の元素の拡散を容易ならしめることができる。これによって、微細な粒子径を維持しつつ、赤外線遮蔽能及び導電性を得ることができる。つまり、微粒子形状を維持しつつ、高い赤外線遮蔽能及び導電性を得ることができる。
【0036】
上記焼結防止成分は、酸化亜鉛の焼成時に粒子間の焼結を防止し、粒子の凝集による粒子径の増大を防止することができる成分であり、赤外線遮蔽能及び導電性に悪影響を与えず、酸化亜鉛よりも焼結温度が高く、焼成後において屈折率が大きすぎず、超微粒子酸化亜鉛の導電性に影響を与えないものである。上記焼結防止成分としては、上記物性を有するものであれば特に制限されず、上記金属化合物と同一のものであってもよいし、乾燥又は焼成により上記金属化合物に変化するものであってもよい。上記物性を有するものとしては、具体的には、例えば、Si、Zr、Sn、Mg、Hf、Ge、Mo、W、V、Nb、Ta、Ca、Sr及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の化合物を挙げることができ、それらの塩化物等のハロゲン化物、酸化物、水酸化物、硝化物、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。これらの成分から二種以上を同時に併用することもできる。上記焼結防止成分としては、上記物性において優れることから、Si、Zr、Sn、Mg、Hf又はそれらの化合物が好ましく、Si、Sn又はそれらの化合物であることがより好ましい。焼結防止成分を混合することで、酸化亜鉛の耐環境性も同時に向上する。
【0037】
上記焼結防止成分が、酸化亜鉛よりも焼結温度が高いものであると、酸化亜鉛の焼結温度以上で焼成した場合に焼結防止成分は酸化亜鉛よりも焼結しにくいため、酸化亜鉛の粒子間の焼結による凝集を防止することができ、超微粒子酸化亜鉛の平均粒子径を上記範囲内とすることができる。上記焼結防止成分を焼成後において屈折率が大きすぎないものとすることによって、焼成により得られる超微粒子酸化亜鉛の透明性を阻害することなく、優れた可視光透過性を実現することができる。また、焼結によって上記焼結防止成分が酸化亜鉛結晶中に含有されてしまうおそれがあるが、このような場合であっても導電性に影響を与えないものであることが必要である。以上の観点から、上述した元素の化合物が好ましい。
【0038】
上記焼結防止成分として具体的には例えば、シリカ、塩化ジルコニウム、塩化スズ、硝酸マグネシウム、塩化ハフニウム、塩化ゲルマニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、水酸化カルシウム、炭酸マトロンテウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0039】
上記工程(2)において用いる焼結防止成分としては、酸化亜鉛表面を覆うことができれば、どのような形状でも良く、コロイド状や溶液より沈殿したものなどを挙げることができる。亜鉛化合物と3価以上の元素との混合物に、焼結防止成分を添加する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、亜鉛化合物と3価以上の元素との混合物と、粉末状焼結防止成分とをボールミルで乾式混合する方法;亜鉛化合物と3価以上の元素との混合物の水性ディスパージョン中で、焼結防止成分を含む塩基性化合物(例えばケイ酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウム等)を同時中和して、混合物の表面に酸化物を沈積させた後、乾燥もしくは焼成して焼結防止成分とする方法;亜鉛化合物と3価以上の元素の混合物の水性ディスパージョンへ、金属アルキレート化合物(例えばエチルシリケート等のアルキルシリケート)を徐々に添加した後、乾燥もしくは焼成する方法等が挙げられる。
【0040】
上記工程(2)を行う方法は、上述したいかなる方法でも良いが、亜鉛化合物と3価以上の元素との混合物の水性ディスパージョン中で、ケイ酸ナトリウム等の塩基性化合物と酸で同時中和して、混合物の表面に含水酸化ケイ素を緻密な皮膜状に形成するように、時間をかけて沈積させる方法が最も優れた効果を有する。
【0041】
次いで、上記工程(2)によって得られた焼結防止成分を含有する亜鉛化合物と3価以上の元素化合物との混合物を焼成する工程(工程(3))を行うことによって、本発明の超微粒子酸化亜鉛を得ることができる。
【0042】
上記工程(3)の焼成条件は、特に限定されないが、亜鉛化合物が酸化亜鉛になり、かつ、3価以上の元素が酸化亜鉛母体へ充分に拡散される条件が好ましい。上記観点から、焼成温度は600〜850℃が好ましい。600℃以上とすることで、酸化亜鉛の結晶性が高まり、3価以上の元素が拡散されやすくなる。850℃以下とすることで、焼結防止成分の焼結防止作用が有効に働き、平均一次粒子径0.1μm以下の超微粒子酸化亜鉛を得ることができる。上記焼成温度は、650〜850℃であることがより好ましく、700〜800℃であることが更に好ましい。
【0043】
また、酸化亜鉛の半導体的性質を高めるため、焼成雰囲気は不活性ガス雰囲気や還元性雰囲気が好ましく、還元性雰囲気がより好ましい。焼成に使用する装置は、雰囲気を維持しながら加熱できる装置であれば特に限定されず、例えば、ロータリーキルンや電気炉等を挙げることができる。
【0044】
上記還元性雰囲気は、例えば、水素と窒素の混合気体雰囲気、一酸化炭素と窒素の混合雰囲気等を挙げることができる。安全性やコスト面から、水素と窒素の混合気体雰囲気が好ましい。上記水素と窒素の混合気体雰囲気においては、水素の混合比率が、1体積%以上が好ましく、より好ましくは5体積%以上である。更に、不活性ガス成分として、窒素以外に、ヘリウムやアルゴン等を挙げることができ、それらを単独で用いても良く、数種類組み合わせても良い。
【0045】
上記工程(3)におけるガスの流量は、特に限定されず、例えば、1分間当たり、焼成するために必要な装置のうち、加熱される空間容量の1/10体積%の量以上を添加すればよい。焼成における雰囲気ガスの添加時期は、例えば、水素と窒素の混合気体の場合、最初から還元雰囲気にて焼成することが好ましいが、窒素のみからなる雰囲気で最高温度に達した後に、水素を添加しても良い。
【0046】
更に、焼成は、必ずしも1回ではなくてもよく、複数回繰り返しても良い。複数回の焼成を行う場合は、異なる焼成条件を組み合わせて焼成してもよい。工程(3)における最後の焼成が酸化性雰囲気下での焼成である場合、得られる超微粒子酸化亜鉛の特性の低下を引き起こさない条件を選定することが好ましい。必要に応じて上記工程(3)の前又は後に、粉砕や分級を行ってもよい。
【0047】
上記粉砕において用いる粉砕機は、特に限定されないが、例えば、乾式粉砕機では、ハンマーミル、気相エネルギー流体ミル、エッジランナーやピンミルなどが挙げられ、湿式粉砕機では、アクアミル、サンドミルやコロイドミル等が挙げられる。
【0048】
必要に応じて上記工程(3)によって得られた超微粒子酸化亜鉛に対して、無機又は有機表面処理を行ってもよい。上記表面処理としては特に限定されず、例えば、塗料適性を向上するための含水酸化アルミニウムによる表面処理;熱可塑性樹脂への分散向上のためのシランカップリング処理等を挙げることができる。このような表面処理剤の選択や表面処理方法は、適宜常法にて行うことができる。
【0049】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、非常に透明性に優れ、かつ、1500nmより長波長領域で吸収帯を持つ、優れた透明熱線遮蔽剤として、及び体積抵抗値が1000Ωcm以下である透明導電材料として、塗料、熱可塑性樹脂組成物やインキに好適に配合することができる。また、酸化亜鉛が本来有する紫外線吸収能をも有するため紫外線遮蔽と熱線遮蔽が両立した、優れた機能を持つ。上記酸化亜鉛を含有する塗料組成物、熱可塑性樹脂組成物、インキも本発明の一部である。
【0050】
本発明の塗料組成物は、ガラス基材上に適用することによって、基材に優れた熱線遮蔽性能及び導電性を付与することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形等の周知の方法によってフィルム成形し、周知の方法によってこれをガラス基材上にラミネートすることによって、基材に優れた熱線遮蔽性能を付与することができる。このようにして製造されたガラス基材層、並びに、熱線遮蔽剤又は導電材料としての上記超微粒子酸化亜鉛及びバインダー樹脂からなる赤外線遮蔽層又は導電層からなる積層体も本発明の一部である。
【0051】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、優れた導電性を有するものであるので、透明帯電防止フィルム及び帯電防止性能を付与する透明塗料として用いることができる。例えば、高い可視光透過率と埃等の付着防止が求められる液晶及びプラズマディスプレイの画面等に塗布、又は、フィルムとして貼り付けることで、帯電防止材料として、好適に用いることができる。また、静電気による影響が大きい電子材料の包装材料に塗布、又は、フィルムとして用いたり、素材の意匠性を保ちつつ帯電を防止したい塗装面のトップコートや、プラスチック等に代表される絶縁性物質の静電気による帯電を防止するため等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の超微粒子酸化亜鉛は、1500nm以上の赤外線を遮蔽することができ、体積抵抗値が10000Ωcm以下であり、透明性を有する。このような超微粒子酸化亜鉛は、樹脂組成物およびガラス組成物等に好適に用いることができる。また、本発明の超微粒子酸化亜鉛の製造方法は、上記超微粒子酸化亜鉛を好適に製造することができる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例A−1)
酸化亜鉛100g(堺化学工業社製 酸化亜鉛1種)を、35質量%塩酸(特級試薬)250gと精製水350gからなる塩酸水溶液中へ添加して、酸化亜鉛を完全に溶解して、塩化亜鉛水溶液を調製した。さらに、調製した塩化亜鉛水溶液中へ硝酸ガリウム八水和物14.7gを添加し、完全に透明になるまで溶解させた。他方、重炭酸アンモニウム(特級試薬)230gを精製水1500gに溶解して、重炭酸アンモニウム水溶液を別途調製した。上記硝酸ガリウムを溶解させた塩化亜鉛水溶液を、重炭酸アンモニウム水溶液へ120分かけて添加し、沈殿物を生成させた。次いで、メタケイ酸ナトリウム9水和物(試薬特級)23.5g(SiOとして5g)を含む水溶液150mlと10質量%硫酸を、pHを7〜9の範囲になるように流量を調整しながら添加し、90分かけて同時に添加した。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分別し、130℃で5時間乾燥した。次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、焼成前駆体とした。焼成前駆体を、アルミナ製ボートへ入れて、管状炉を用いて、窒素ガス0.21リットル/分、水素ガス0.09リットル/分の混合気体を流通しながら200℃/時で700℃まで昇温した。そのまま2時間保持してから室温まで放冷して、超微粒子酸化亜鉛A−Aを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Aの平均一次粒子径は、0.025μmであった。
【0055】
(実施例A−2)
メタケイ酸ナトリウム9水和物(試薬特級)の添加量を4.7g(SiOとして1g)とした以外は実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Bを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Bの平均一次粒子径は、0.034μmであった。
【0056】
(実施例A−3)
メタケイ酸ナトリウム9水和物(試薬特級)の添加量を47.0g(SiOとして10g)とした以外は実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Cを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Cの平均一次粒子径は、0.018μmであった。
【0057】
(実施例A−4)
硝酸ガリウム八水和物14.7gにかえて、塩化アルミニウム六水和物14.8gを添加した以外は実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Dを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Dの平均一次粒子径は、0.030μmであった。
【0058】
(実施例A−5)
硝酸ガリウム八水和物14.7gにかえて、塩化インジウム四水和物10.8gを添加した以外は実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Eを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Eの平均一次粒子径は、0.035μmであった。
【0059】
(実施例A−6)
硝酸ガリウム八水和物14.7gにかえて、硝酸ガリウム八水和物34.3gを添加した以外は実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Fを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Fの平均一次粒子径は、0.016μmであった。
【0060】
(実施例A−7)
焼成温度の「700℃」を「800℃」に変えた以外は、実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Gを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Gの平均一次粒子径は、0.031μmであった。
【0061】
(比較例A−1)
酸化亜鉛100g(堺化学工業社製 酸化亜鉛1種)を、35質量%塩酸(特級試薬)250gと精製水350gからなる塩酸水溶液中へ添加して、酸化亜鉛を完全に溶解して、塩化亜鉛水溶液を調製した。さらに、調製した塩化亜鉛水溶液中へ硝酸ガリウム八水和物14.7gを添加し、完全に透明になるまで溶解させた。また、重炭酸アンモニウム(特級試薬)230gを精製水1500gに溶解して、重炭酸アンモニウム水溶液を別途調製した。
上記硝酸ガリウムを溶解させた塩化亜鉛水溶液を、重炭酸アンモニウム水溶液へ120分かけて添加し、沈殿物を生成させた。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分別し、130℃で5時間乾燥した。次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、焼成前駆体とした。焼成前駆体を、アルミナ製ボートへ入れて、管状炉を用いて、窒素ガス0.21リットル/分、水素ガス0.09リットル/分の混合気体を流通しながら200℃/時で700℃まで昇温した。そのまま2時間保持してから室温まで放冷して、シリカを含有しない超微粒子酸化亜鉛A−Hを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Hの平均一次粒子径は、0.13μmであった。
【0062】
(比較例A−2)
硝酸ガリウム八水和物14.7gにかえて、塩化アルミニウム六水和物14.8gを添加した以外は、比較例A−1と同様にして、シリカを含有しない超微粒子酸化亜鉛A−Iを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Iの平均一次粒子径は、0.35μmであった。
【0063】
(比較例A−3)
硝酸ガリウム八水和物14.7gにかえて、塩化インジウム四水和物10.8gを添加した以外は、比較例A−1と同様にして、シリカを含有しない超微粒子酸化亜鉛A−Jを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Jの平均一次粒子径は、0.53μmであった。
【0064】
(比較例A−4)
焼成工程における焼成温度「700℃」を「900℃」に変えること以外は、実施例A−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛A−Kを得た。超微粒子酸化亜鉛A−Kの平均一次粒子径は、0.21μmであった。
【0065】
上記実施例A−1〜A−7及び比較例A−1〜A−4によって得られた超微粒子酸化亜鉛の合成条件及びBET法比表面積測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
(分析方法A)
実施例A−1〜A−7及び比較例A−1〜A−4によって得られた超微粒子酸化亜鉛の組成分析を行った。
サンプル0.2gを50mlの純水中へ添加した後、塩酸(分析用)を用いて、完全に透明になるまで塩酸を添加して溶解させた。その水溶液を100mlメスフラスコに移し、100mlになるように純水でメスアップした。
そのようにして用意した水溶液を用いて、ICP発光分光分析装置(セイコー電子工業製SPS1700HVR型)にて分析した。あらかじめ作成した検量線を用いて、3価以上の元素の含有量とシリカの含有量を測定で求めた後、酸化亜鉛に対する含有量を計算にて求めた。
表1に、3価以上の元素の含有量をZnO1モルに対するモルとして示し、シリカの量を、調製物中の質量%として示す。
【0068】
(評価例A)薄膜における熱線遮蔽性評価
実施例A−1〜A−7及び比較例A−1〜A−4によって得られた超微粒子酸化亜鉛を用いて次の試験を行った。
超微粒子酸化亜鉛粉末2.36gとアルキド樹脂ワニス(大日本インキ社製ベッコゾールJ−524)5.5g、メラミン樹脂ワニス(大日本インキ社製スーパーベッカミンJ−820)2.8g、および、キシレン(試薬特級)5.7gを混合し、1.5mmφガラスビース30gと共に、ペイントコンディショナーにて180分間分散し、超微粒子酸化亜鉛分散塗料を得た。次いで、この分散塗料を少量ガラス板上に採取して、12番のバーコーターを用いて成膜した後、130℃で30分間焼き付けて評価膜とした。評価膜の光透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製V−570型分光光度計及びILN471型積分級装置)により測定した。表2に、550nmと、1900nmにおける透過率を示す。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例A−1〜A−3、およびA−6〜A−7のGaを含有する酸化亜鉛は、550nm可視光透過率が高く、1900nm近赤外透過率が極めて低い、良好な微粒子の酸化亜鉛となったことを示す。比較例A−1、A−4に示される酸化亜鉛において、比較例A−1の酸化亜鉛は焼結防止剤としてのシリカを含有せず、また、比較例A−4の酸化亜鉛は900℃という高温で焼成するため、比表面積が極めて低下し、透明性が失われている結果を示している。また、実施例A−4〜A−5に示される酸化亜鉛は、AlおよびInを含有した酸化亜鉛であり、比較例A−2〜A−3のシリカを含有しない酸化亜鉛に比べて、550nm可視光透過率が高く、1900nm近赤外透過率が低い、良好な性能であることを示している。
【0071】
(実施例B−1)
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種)100gを、35質量%塩酸(特級試薬)250gと精製水350gからなる塩酸水溶液中へ添加して、酸化亜鉛を完全に溶解して、塩化亜鉛水溶液を調整した。さらに、調製した酸化亜鉛水溶液中へ塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを添加し、完全に透明になるまで溶解させた。他方、炭酸ナトリウム(特級試薬)154.6gを精製水1546gに溶解して、炭酸ナトリウム水溶液を別途調製した。上記塩化スカンジウムを溶解させた酸化亜鉛水溶液を、炭酸ナトリウム水溶液へ120分かけて添加し、沈殿物を生成させた。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分離し、130℃で5時間乾燥した。次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、前駆体化合物とした。
前駆体化合物を磁製るつぼにいれて、マッフル炉を用いて、400℃で1時間焼成し、スカンジウムと亜鉛の混合酸化物とした。この混合酸化物を、撹拌下、精製水1000gに入れ、次いで、メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を、pHを7〜9の範囲になるように流量を調整しながら90分かけて同時に添加した。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分離し、130℃で5時間乾燥した。
【0072】
次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、焼成前駆体とした。焼成前駆体をアルミナボートにいれて、管状炉を用いて、窒素ガス0.285リットル/分、水素ガス0.015リットル/分の混合気体を流通しながら200℃/時で700℃まで昇温した。そのまま2時間保持してから室温まで放冷して、超微粒子酸化亜鉛B−Aを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Aの平均一次粒子径は0.021μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Aの体積抵抗値は521Ωcmであった。
【0073】
(実施例B−2)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸イットリウム六水和物(試薬)23.5gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Bを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Bの平均一次粒子径は0.031μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Bの体積抵抗値は665Ωcmであった。
【0074】
(実施例B−3)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを塩化インジウム四水和物(化学用)18.0gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Cを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Cの平均一次粒子径は0.041μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Cの体積抵抗値は459Ωcmであった。
【0075】
(実施例B−4)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸ガリウム八水和物(試薬)の添加量を23.4gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Dを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Dの平均一次粒子径は0.024μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Dの体積抵抗値は333Ωcmであった。
【0076】
(実施例B−5)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)23.0gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Eを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Eの平均一次粒子径は0.022μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Eの体積抵抗値は474Ωmであった。
【0077】
(実施例B−6)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを塩化チタン(IV)(試薬)11.6gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Fを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Fの平均一次粒子径は0.024μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Fの体積抵抗値は514Ωmであった。
【0078】
(実施例B−7)
酸化亜鉛(酸化亜鉛1種)100gを、35質量%塩酸(特級試薬)250gと精製水350gからなる塩酸水溶液中へ添加して、酸化亜鉛を完全に溶解して、塩化亜鉛水溶液を調整した。他方、炭酸ナトリウム(特級試薬)154.6gを精製水1546gに溶解して、炭酸ナトリウム水溶液を別途調製した。上記酸化亜鉛水溶液を、炭酸ナトリウム水溶液へ120分かけて添加し、沈殿物を生成させた。その後、沈殿物を充分洗浄した後、ホウ酸(特級試薬)3.8gを加え、20分間撹拌した。次いで、スラリーを130℃で蒸発乾固し、得られた乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、前駆体化合物とした。
前駆体化合物を磁製るつぼにいれて、マッフル炉を用いて、400℃で1時間焼成し、ホウ素と亜鉛の混合酸化物とした。この混合酸化物を、撹拌下、精製水1000gに入れ、次いで、メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を、pHを7〜9の範囲になるように流量を調整しながら90分かけて同時に添加した。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分離し、130℃で5時間乾燥した。
次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、焼成前駆体とした。焼成前駆体をアルミナボートにいれて、管状炉を用いて、窒素ガス0.285リットル/分、水素ガス0.015リットル/分の混合気体を流通しながら200℃/時で700℃まで昇温した。そのまま2時間保持してから室温まで放冷して、超微粒子酸化亜鉛B−Gを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Gの平均一次粒子径は0.021μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Gの体積抵抗値は536Ωcmであった。
【0079】
(実施例B−8)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸セリウム六水和物(特級試薬)26.7gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Hを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Hの平均一次粒子径は0.019μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Hの体積抵抗値は543Ωmであった。
【0080】
(実施例B−9)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸ユーロピウム六水和物(試薬)27.4gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Iを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Iの平均一次粒子径は0.022μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Iの体積抵抗値は540Ωmであった。
【0081】
(実施例B−10)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを塩化イッテルビウム六水和物(試薬)23.8gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Jを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Jの平均一次粒子径は0.025μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Jの体積抵抗値は692Ωmであった。
【0082】
(実施例B−11)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)3.7gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Kを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Kの平均一次粒子径は0.026μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Kの体積抵抗値は547Ωmであった。
【0083】
(実施例B−12)
塩化スカンジウム六水和物(試薬)15.9gを硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)69.1gとした以外は実施例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Lを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Lの平均一次粒子径は0.035μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Lの体積抵抗値は481Ωmであった。
【0084】
(実施例B−13)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を塩化ジルコニウム(試薬)5.7g(ZrOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%水酸化ナトリウム水溶液(試薬)とした以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Mを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Mの平均一次粒子径は0.026μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Mの体積抵抗値は450Ωmであった。
【0085】
(実施例B−14)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を塩化スズ(IV)五水和物(試薬特級)7.0g(SnOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%水酸化ナトリウム水溶液(試薬)とした以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Nを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Nの平均一次粒子径は0.027μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Nの体積抵抗値は593Ωmであった。
【0086】
(実施例B−15)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を硝酸マグネシウム六水和物(特級試薬)19.1g(MgOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%水酸化ナトリウム水溶液(試薬)とした以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Oを得た。微粒子の超微粒子酸化亜鉛B−Oの平均一次粒子径は0.028μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Oの体積抵抗値は608Ωmであった。
【0087】
(実施例B−16)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を塩化ハフニウム(試薬)4.6g(HfOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%水酸化ナトリウム水溶液(試薬)とした以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Pを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Pの平均一次粒子径は0.020μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Pの体積抵抗値は632Ωmであった。
【0088】
(実施例B−17)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)をメタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)3.8g(SiOとして0.8g)とした以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Qを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Qの平均一次粒子径は0.054μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Qの体積抵抗値は893Ωmであった。
【0089】
(実施例B−18)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)をメタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)71.1g(SiOとして15g)とした以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Rを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Rの平均一次粒子径は0.012μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Rの体積抵抗値は352Ωmであった。
【0090】
(実施例B−19)
還元焼成温度の「700℃」を「600℃」に変えた以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Sを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Sの平均一次粒子径は0.017μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Sの体積抵抗値は647Ωcmであった。
【0091】
(実施例B−20)
還元焼成温度の「700℃」を「850℃」に変えた以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Tを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Tの平均一次粒子径は0.051μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Tの体積抵抗値は145Ωcmであった。
【0092】
(比較例B−1)
酸化亜鉛(堺化学製 酸化亜鉛1種)100gを、35質量%塩酸(特級試薬)250gと精製水350gからなる塩酸水溶液中へ添加して、酸化亜鉛を完全に溶解して、塩化亜鉛水溶液を調製した。さらに、調製した酸化亜鉛水溶液中へ硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)0.46gを添加し、完全に透明になるまで溶解させた。他方、炭酸ナトリウム(特級試薬)154.6gを精製水1546gに溶解して、炭酸ナトリウム水溶液を別途調整した。上記硝酸アルミニウム九水和物を溶解させた酸化亜鉛水溶液を、炭酸ナトリウム水溶液へ120分かけて添加し、沈殿物を生成させた。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分離し、130℃で5時間乾燥した。次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、前駆体化合物とした。
【0093】
前駆体化合物を磁製るつぼにいれて、マッフル炉を用いて、400℃で1時間焼成し、アルミニウムと亜鉛の混合酸化物とした。この混合酸化物を、撹拌下、精製水1000gに入れ、次いで、メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)を含む水溶液90mlと10質量%硫酸(試薬)を、pHを7〜9の範囲になるように流量を調節しながら90分かけて同時に添加した。その後、沈殿物を充分洗浄した後、液相より分離し、130℃で5時間乾燥した。
【0094】
次いで、乾燥粉をメノウ乳鉢で解砕して、焼成前駆体とした。焼成前駆体をアルミナボートにいれて、管状炉を用いて、窒素ガス0.285リットル/分、水素ガス0.015リットル/分の混合気体を流通しながら200℃/時で700℃まで昇温した。そのまま2時間保持してから室温まで放冷して、超微粒子酸化亜鉛B−Uを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Uの平均一次粒子径は0.027μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Uの体積抵抗値は35000Ωcmであった。
【0095】
(比較例B−2)
硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)0.46gを硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)115.2gに変えた以外は比較例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Vを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Vの平均一次粒子径は0.045μmであった。超微粒子酸化亜鉛料B−Vの体積抵抗値は581Ωcmであった。
【0096】
(比較例B−3)
硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)0.46gを硝酸アルミニウム九水和物(JIS試薬特級)23.0gに変えて、メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.2g(SiOとして3g)をメタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)0.95g(SiOとして0.2g)と変えた以外は比較例B−1と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Wを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Wの平均一次粒子径は0.153μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Wの体積抵抗値は376Ωmであった。
【0097】
(比較例B−4)
メタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)14.21g(SiOとして3g)をメタケイ酸ナトリウム九水和物(特級試薬)142.0g(SiOとして30g)と変えた以外は比較例B−3と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Xを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Xの平均一次粒子径は0.007μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Xの体積抵抗値は1276Ωmであった。
【0098】
(比較例B−5)
還元焼成温度の「700℃」を「500℃」に変えた以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Yを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Yの平均一次粒子径は0.014μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Yの体積抵抗値は950Ωmであった。
【0099】
(比較例B−6)
還元焼成温度の「700℃」を「1000℃」に変えた以外は実施例B−5と同様にして、超微粒子酸化亜鉛B−Zを得た。超微粒子酸化亜鉛B−Zの平均一次粒子径は0.536μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−Zの体積抵抗値は30Ωmであった。
【0100】
(比較例B−7)
超微粒子酸化亜鉛(堺化学製 FINEX−50)を超微粒子酸化亜鉛B−αとする。超微粒子酸化亜鉛B−αの平均一次粒子径は0.021μmであった。超微粒子酸化亜鉛B−αの体積抵抗値は22870000Ωmであった。
【0101】
【表3】

【0102】
(分析方法B)
実施例B−1〜B−20及び比較例B−1〜B−7によって得られた超微粒子酸化亜鉛の組成分析を行った。
サンプル0.2gを50mlの純水中へ添加した後、塩酸(分析用)を用いて、完全に透明になるまで塩酸を添加して溶解させた。その水溶液を100mlメスフラスコに移し、100mlになるように純水でメスアップした。
そのようにして用意した水溶液を用いて、ICP発光分光分析装置(セイコー電子工業製SPS1700HVR型)にて分析した。あらかじめ作成した検量線を用いて、3価以上の元素の含有量と金属化合物の含有量を測定で求めた後、酸化亜鉛に対する含有量を計算にて求めた。
表3に、3価以上の元素の含有量をZnO1モルに対するモルとして示し、金属化合物の量を、調製物中の質量%として示す。
【0103】
(評価例B−1)薄膜による熱線遮蔽性評価
実施例B−1〜B−20及び比較例B−1〜B−7によって得られた超微粒子酸化亜鉛を用いて次の試験を行った。
超微粒子酸化亜鉛粉末2.36gとアルキド樹脂ワニス(大日本インキ社製ベッコゾールJ−524)5.5g、メラミン樹脂ワニス(大日本インキ社製スーパーベッカミンJ−820)2.8g、および、キシレン(特級試薬)5.7gを混合し、0.8mmφジルコニアビース55gと共に、ペイントコンディショナーにて180分間分散し、超微粒子酸化亜鉛分散塗料を得た。次いで、この分散塗料を少量ガラス板上に採取して、12番のバーコーターを用いて成膜した後、130℃で30分間焼き付けて評価膜とした。評価膜の光透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製V−570型分光光度計及びILN471型積分級装置)により測定した。表3に550nmと、1900nmにおける透過率を示す。また、本発明の効果が顕著に現れている実施例B−4、B−5と比較例B−3、B−7の光透過スペクトル曲線を図1に示す。
【0104】
(評価例B−2)体積固有抵抗値評価
実施例B−1〜B−20及び比較例B−1〜B−7によって得られた超微粒子酸化亜鉛の体積固有抵抗値を、次の方法を用いて測定した。
内径20mmφの塩化ビニル製の筒に、サンプル0.8gを入れて、両側に電極を兼ねた良導電性の芯棒を用いてサンプルを挟み込み、サンプルに200kgfの荷重がかかる様にハンドプレスにて荷重をかけた。そして、その状態を維持しながら、電極両端の抵抗値をテスターで測定した。
抵抗値より、次式により、体積固有抵抗値を求めた。
(式)体積固有抵抗値(Ωcm)
=抵抗値(Ω)×サンプルのプレス面積(cm)/プレス時の厚み(cm)
【0105】
(評価例B−3)走査型電子顕微鏡観察
超微粒子酸化亜鉛を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−7000F)で観察した。実施例B−5と比較例B−3の透過型電子顕微鏡写真を図2および図3に示す。
【0106】
(評価例B−4)温度測定
評価例B−1の方法で得た超微粒子酸化亜鉛分散塗料を10cm×12cmで厚み3mmのガラス板上に採取して、14番のバーコーターを用いて片面全面に成膜し、130℃で30分間焼き付けて評価膜とした。一方、縦×横×高さが17cm×21cm×12.5cmで、外部との熱の授受を遮断した箱の上面の中心を9cm四方に切り取ったものを評価系として用いる。上記評価系の上面の切り取った部分に評価膜をセットし、評価膜から上方向に12.5cm離れたところから、白熱灯を点灯し、評価系内部の評価膜から下方向に12.5cm離れたところに置いた熱電対により温度を測定した。装置概略図を図4に、熱灯点灯からの時間と温度を図5に示す。
【0107】
表3において、実施例B−1〜B−10で得られた超微粒子酸化亜鉛B−A〜B−Jは、本発明による、3価以上の元素を含有させることで、平均一次粒子径が0.1μm以下であり、かつ550nm可視光透過率が高く、1900nm近赤外透過率が極めて低い、良好な近赤外線遮蔽性超微粒子酸化亜鉛であることを示す。
加えて、表3は、超微粒子酸化亜鉛B−A〜B−Jは、いずれも体積固有抵抗値が1000Ωcm以下であり、本発明の超微粒子酸化亜鉛は、良好な導電性をも有するということを示している。
【0108】
また、表1において、実施例B−11とB−12で得られた超微粒子酸化亜鉛B−KとB−Lは、本発明による3価以上の元素であるAlの含有量を変えた場合にも、上述したものと同様に、良好な近赤外線遮蔽性と導電性を併せ持つ超微粒子酸化亜鉛が得られることを示している。
更に、実施例B−13〜B−16で得られた超微粒子酸化亜鉛B−M〜B−Pは、本発明による、各種焼結防止成分を用いた場合にも、上述したものと同様に、良好な近赤外線遮蔽性と導電性を併せ持つ超微粒子酸化亜鉛が得られることを示している。
【0109】
また、実施例B−17とB−18で得られた超微粒子酸化亜鉛B−QとB−Rは、焼結防止成分Siの含有量を変え、実施例B−19とB−20で得られた超微粒子酸化亜鉛B−SとB−Tは、還元焼成温度を変えたが、上述したものと同様に、良好な近赤外線遮蔽性と導電性を併せ持つ超微粒子酸化亜鉛が得られることを示している。
比較して、比較例B−1で得られた超微粒子酸化亜鉛B−Uは、本発明による、3価以上の元素であるAlを含有したものの、含有量が少ないため、赤外線遮蔽性能が低く、体積固有抵抗値が高い結果を示している。
【0110】
比較例B−2で得られた超微粒子酸化亜鉛B−Vは、3価以上の元素であるAlの含有量が多く、粒界に過剰分のAlが析出することで、可視光が散乱されると考えられ、結果的に、550nm光透過率は低くなり、1900nm光透過率は高いことから、透明性が悪く赤外線遮蔽性が低いことを示している。
比較例B−3で得られた超微粒子酸化亜鉛B−Wは焼結防止成分Siの含有量が極めて少ないために、本発明における焼成温度では粒子同士が焼結してしまい、粒子が粗大化し、550nmの透過率が低下した結果を示している。
【0111】
比較例B−4で得られた超微粒子酸化亜鉛B−Xは、焼結防止成分であるSiの含有量が多く、3価以上の元素を含有した酸化亜鉛の割合が低下し、充分な赤外線遮蔽性能を得られず、過剰の焼結防止成分Siによって粒子間が絶縁され、体積固有抵抗値が高い結果を示している。
【0112】
比較例B−5で得られた超微粒子酸化亜鉛B−Yは、還元焼成温度が低いため、3価以上の元素が充分に酸化亜鉛結晶内部へ拡散されず、結果、赤外線遮蔽性能が低い結果を示している。
比較例B−6で得られた超微粒子酸化亜鉛B−Zは、還元焼成温度が高く、本発明における焼結防止剤を添加しても、粒子同士が焼結してしまい、粒子が粗大化し、平均一次粒子径が大きくなり、可視光透明性が極めて低下する結果を示している。
【0113】
比較例B−7の超微粒子酸化亜鉛B−αは純粋な酸化亜鉛であり、3価以上の元素を添加していないため、赤外線遮蔽性能がなく、体積抵抗値が高い結果を示している。
【0114】
更に、図5に評価例B−4によって得られた時間経過による温度測定の結果を示した。バインダーのみおよび比較例B−7の評価膜では、赤外線遮蔽性能がないために、温度は大幅に上昇しているのに対して、実施例B−4、B−5では熱源である白熱灯と熱電対の間に評価膜を置くことで、赤外線遮蔽性能により、温度の上昇を抑制していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の超微粒子酸化亜鉛の製造方法によって得られた超微粒子酸化亜鉛は、塗料組成物、熱可塑性樹脂組成物、インキ等に使用することができる。本発明の塗料組成物、熱可塑性樹脂組成物、インキは、赤外線遮蔽材及び導電材料としてガラス等の基材に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】評価例B−1によって得られた光透過スペクトルである。
【図2】評価例B−3によって得られた実施例B−5の走査型電子顕微鏡写真であり、粒子は微粒子形状である。
【図3】評価例B−3によって得られた比較例3の走査型電子顕微鏡写真であり、粒子は巨大化している。
【図4】評価例B−4における装置の概略図である。
【図5】評価例B−4によって得られた時間経過による温度測定の結果である。
【符号の説明】
【0117】
1 白熱灯
2 評価膜
3 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価以上の元素を含有し、かつ、
表面に金属化合物が被着しており、
平均一次粒子径が0.1μm以下である
ことを特徴とする超微粒子酸化亜鉛。
【請求項2】
3価以上の元素は、Sc、Y、In、Ga、Al、Ti、B及びランタノイド元素よりなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1記載の超微粒子酸化亜鉛。
【請求項3】
金属化合物は、Si、Zr、Sn、Mg、Hf、Ge、Mo、W、V、Nb、Ta、Ca、Sr及びBaよりなる群から選ばれる少なくとも1つの元素の化合物である請求項1又は2記載の超微粒子酸化亜鉛。
【請求項4】
3価以上の元素の含有量は、酸化亜鉛1モルに対して、前記元素換算で0.001〜0.2モルの範囲である請求項1、2又は3記載の超微粒子酸化亜鉛。
【請求項5】
金属化合物の含有量は、被着処理された酸化亜鉛に対して酸化物換算で0.5〜20質量%の範囲である請求項1、2、3又は4記載の超微粒子酸化亜鉛。
【請求項6】
3価以上の元素を含有した酸化亜鉛又は3価以上の元素を含有した焼成して酸化亜鉛となる前駆体化合物に、焼結防止成分を表面に被着させ、次いで600〜850℃で焼成することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の超微粒子酸化亜鉛の製造方法。
【請求項7】
焼結防止成分は、シリカである請求項6記載の超微粒子酸化亜鉛の製造方法。
【請求項8】
3価以上の元素は、酸化亜鉛1モルに対する含有量が3価以上の元素換算で0.001〜0.2モルであり、
シリカは、被着処理された酸化亜鉛に対する含有量がSiO換算で0.5〜20質量%の範囲である請求項7記載の超微粒子酸化亜鉛の製造方法。
【請求項9】
請求項1、2、3、4又は5に記載の超微粒子酸化亜鉛を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4又は5に記載の超微粒子酸化亜鉛を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1、2、3、4又は5に記載の超微粒子酸化亜鉛を含有することを特徴とするインキ。
【請求項12】
ガラス基材層及び赤外線遮蔽層からなる積層体であり、
前記赤外線遮蔽層は、請求項1、2、3、4又は5に記載の超微粒子酸化亜鉛及びバインダー樹脂からなることを特徴とする積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−297260(P2007−297260A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275654(P2006−275654)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】