説明

超撥水性アルミ箔及びその製造方法

【課題】アモルファス酸化アルミニウム膜を基材の上に作製するという工程を必要しない超撥水アルミ箔及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
熱水処理した金属アルミ箔の表面に、直接、フッ素を含まないヘキシルトリメトキシシランの縮合物若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランの縮合物の被膜を設けた超撥水アルミ箔及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超撥水性を有するアルミ箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、基板上に酸化アルミニウムをゾル-ゲル法によって作製した後、温水処理によって、花弁状組織を作製し、これにシラン化合物をコーティングして、超撥水性(接触角)165度を得ている(特許文献1、非特許文献1参照)。
アモルファス酸化アルミニウム膜を基材の上に作製するという工程を必要し、熱処理も必要とされるがために、基材の耐熱性に制限がある。
また、Cuプレートを利用した超撥水の問題点としては、金属Cuは非常に錆びやすいために、耐腐食性に弱い。また、撥水の形態を得るために2日以上の長時間の反応を必要とする点が挙げられる。
【特許文献1】特開平9−202649
【非特許文献1】WangST, Feng L, Jiang L One-stepsolution-immersion process for the fabrication of stable bionicsuperhydrophobic surfaces ADVANCED MATERIALS 18 (6): 767+ MAR 17 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アモルファス酸化アルミニウム膜を基材の上に作製するという工程を必要しない超撥水アルミ箔及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明は、アルミニウム箔の表面を熱水処理し、特殊なシラン化合物の縮合物その表面を覆うことにより、超撥水アルミ箔が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、熱水処理した金属アルミ箔の表面に、直接、フッ素を含まないヘキシルトリメトキシシランの縮合物若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランの縮合物の被膜を設けた超撥水アルミ箔である。
また、本発明は、アルミニウム箔を80〜99度の熱水に0.5〜5時間浸漬した後に取り出し、洗浄乾燥させ、フッ素を含まないヘキシルトリメトキシシラン若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランを塗布し、硬化させてなる超撥水アルミ箔の製造方法である。
本発明はここで、洗浄乾燥をエタノールで行うことが望ましい。
また、本発明は、熱水の温度が88〜92℃であり、浸漬時間が1〜2時間であるとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0005】
簡単な処理工程のみにより、超撥水アルミ箔を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いるアルミ箔は、表面が汚れていないものならば、市販のアルミ箔を用いることができる。
本発明で用いる水は、イオン交換水を用いることができる。
また、本発明で用いるフッ素を含まないヘキシルトリメトキシシラン若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランは、市販されている。
本発明で用いる撥水剤としては、フッ素を含まないヘキシルトリメトキシシランの縮合物、若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランやトリデカフルオロオクチルメトキシシシラン、2-(パーフルオロオクチル)エチル]トリクロロシランなどのシランカップリング剤やパーフルオロラウリン酸、ポリ(パーフルオロデシルエチルアクリレート)などの長鎖パーフルオロアルキル基を有する高分子やビニル末端ポリジメチルシロキサンからなる群れより選ばれる1種を用いることができる。
本発明について実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0007】
アルミニウム箔を90度の水に1h浸した後に取り出し、エタノールで洗浄して乾燥させる。
シラン化合物のフッ素を含まないヘキシルトリメトキシシランをコーティングした。
コーティングはヘキサン中にシランを溶解させ、60℃にて24時間静置し、取り出し、室温で乾燥させた。
図1のSEM像からアルミニウム箔上にナノシートが垂直方向に成長していることが分かる。
図2はアルミニウム箔上のナノシート膜へ、ヘキシルトリメトキシシランをコーティングした超撥水の写真である。
【実施例2】
【0008】
実施例1と同様にして、シラン化合物のフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランを塗布した。
図3はヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコーティングした超撥水の写真である。いずれも150°以上の超撥水を示していることが分かる。
図4は平滑なガラス基板上にヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコートした膜の撥水の写真であり、接触角は約113度と、150度以上の超撥水は示さない。
図5はアルミニウム箔上のナノシート膜へ、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコートした膜上に油であるヘキサデカンを滴下した撥油の写真である。接触角が約109度と、撥油膜であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明の超撥水アルミ箔は、簡単な処理工程のみにより、超撥水アルミ箔を得ることができるばかりか、量産性に優れているので、安価に超撥水アルミ箔を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】アルミニウム箔上のナノシート構造
【図2】アルミニウム箔上のナノシート膜へ、ヘキシルトリメトキシシランをコートした超撥水の写真
【図3】アルミニウム箔上のナノシート膜へ、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコートした超撥水の写真。
【図4】平滑なガラス基板上に、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコートした撥水の写真。
【図5】アルミニウム箔上のナノシート膜へ、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコートした膜上に油であるヘキサデカンを滴下した撥油の写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱水処理した金属アルミ箔の表面に、直接、フッ素を含まないヘキシルトリメトキシシランの縮合物若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランの縮合物の被膜を設けた超撥水アルミ箔。
【請求項2】
アルミニウム箔を80〜99度の熱水に0.5〜5時間浸漬した後に取り出し、洗浄乾燥させ、撥水剤をコートする超撥水アルミ箔の製造方法。
【請求項3】
洗浄乾燥をエタノールで行う請求項2に記載した超撥水アルミ箔の製造方法。
【請求項4】
熱水の温度が88〜92℃であり、浸漬時間が1〜2時間である請求項2又は3に記載した超撥水アルミ箔の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−104936(P2008−104936A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289424(P2006−289424)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】