説明

超疎液性表面、その作製法及び用途

本発明は新規な超疎液性ナノ繊維、このようなナノ繊維を含む構造、該ナノ繊維表面の作製法及び使用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2003年4月28日出願の“超疎液性表面、その組立法及び使用法”と題する米国暫定出願No.60/466,229による利益及び優先権を主張する。この先行出願は全体をここに援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、主としてナノ技術の分野に関する。更に詳しくは本発明は、外生的な(exogenous)疎水性、疎液性又は両疎媒性の材料を含有し、超疎水性、超疎油性及び/又は超両疎媒性の特性を示すナノ繊維及びナノ繊維構造に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
材料のはっ水性又は疎水性は、美的用途から工業的用途に至るまで無数の用途に極めて重要である。例えば氷/雪の堆積又は浸水を受けやすい表面には、疎水性の向上が望ましいことが多い。また他の例では、疎油性(はつ油性)及び/又は両疎媒性(はっ水兼はつ油性)も用途となる(例えば油性流体の輸送又は貯蔵等)。このような疎液性(例えば疎水性、疎油性、両疎媒性等)を得ようとする多くの研究は、各種被覆又は表面組織の変性による用途に焦点を絞っている。例えば材料の疎液性向上には、従来、炭化水素及び弗素を含有する化合物やワックスが使用されてきた。最近、他の方法は或る種の、又は或る程度の疎液性を得るため、表面の粗面化を利用している。
【0004】
疎液性の代りに又は他に、幾つかの局面では超疎液性(例えば超疎水性)が要求される。また疎液性については、代表的な従来の研究は、疎液性被覆(例えばシラン等を含む被覆)及び表面組織の変性に焦点を絞っている。
【0005】
疎液性材料に対する要望が増大するのに従って、ナノ構造(例えば炭素ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノロッド、量子ドット等)についての設計及び用途にますます焦点が絞られてきた。例えば電気的、機械的及び化学的利用では、ナノ構造によって表わされる新規な特性に大きな注目が生じた。例えばYang等,Intl.J.Nanoscience,1,(1):1−39(2002)参照。
【特許文献1】WO 02/17362
【特許文献2】WO 02/48701
【特許文献3】WO 01/03208
【特許文献4】WO 03/054953
【特許文献5】USP 5,464,796
【特許文献6】USP 5,230,957
【特許文献7】USP 5,537,000
【特許文献8】USP 6,128,214
【特許文献9】USP 6,225,198
【特許文献10】USP 6,306,736
【特許文献11】USP 6,314,019
【特許文献12】USP 6,322,901
【特許文献13】USP 6,501,091
【特許文献14】WO 02/17632
【特許文献15】WO 01/03208
【特許文献16】USP 6,159,742
【特許文献17】USP 6,036,774
【特許文献18】USP 5,897,945
【特許文献19】USP 5,997,832
【特許文献20】USPN 5,196,396
【特許文献21】USPN 5,252,835
【特許文献22】WO 96/29629
【特許文献23】WO 02/080280
【特許文献24】USPN 6,036,774
【特許文献25】USPN 5,879,945
【特許文献26】USPN 5,997,832
【特許文献27】USPN 5,690,807
【特許文献28】USPN 6,136,156
【特許文献29】USPN 6,413,489
【特許文献30】USPN 6,207,229
【特許文献31】USPN 6、322、901
【特許文献32】US特許出願60/370,095
【特許文献33】USSN 60/468,390
【特許文献34】USSN 60/468,606
【特許文献35】USSN 10/792,402
【特許文献36】USSN 60/549,711
【特許文献37】USSN 60/541,463
【特許文献38】USSN 60/466,229
【非特許文献1】Yang等,Intl.J.Nanoscience,1,(1):1−39(2002)
【非特許文献2】Arcles,“Silane Coupling Agent Chemistry”,Application Note,United Chemical Technologies,Inc.Bristol,PA
【非特許文献3】Morales等“A Laser Ablation Method for the Synthesis of Crystalline Semiconductor Nanowires”Science 279,208−211(1998)
【非特許文献4】Wu等(2002)、“Block−by−Block Growth of Single−Crystalline Si/SiGe Superlattice Nanowires”,Nano Letters Vol.2:83−86
【非特許文献5】Lieber等(2001)、“Carbide Nanomaterials”USP 6,190,634B1
【非特許文献6】Thess等(1996)“Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes”,Science 273,483−486
【非特許文献7】Bjork等(2002)、“One−dimensional Steplechase for Electrons Realized”,Nano Letters,Vol.2:86−90
【非特許文献8】Kong等(1998),“Synthetic of Individual Single−Walled Carbon Nanotubes on Patterned Silicon Wafers”,Nature 395,878−881
【非特許文献9】Kong等(1998),“Chemical Vapor Deposition of Methane for Single−Walled Carbon Nanotubes”Chem.Phys.Lett.292,567−574
【非特許文献10】Schon,meng及びBao,“Self−assembled monolayer organic field−effect transistors”,Nature 413:713(2001)
【非特許文献11】Zhou等(1997),“Nanoscale Metal/Self−assembled Monolayer/Metal Heterostructure”,Applied Physics Letters,71:611
【非特許文献12】Gudiksen等(2000),“Diameter−selective synthesis of semiconductor nanowires”,J.Am.Chem.Soc.122:8801−8802
【非特許文献13】Cui等(2001),“Diameter−controlled synthesis of single crystal silicon nanowires”,J.Phys.Chem.B 105:4062−4064
【非特許文献14】Morales等(1998),“A laser ablation method for the synthesis of crystalline semiconductor nanowires”,Science 279:208−211
【非特許文献15】Duan等(2000),“General synthesis of compound semiconductor nanowires”,Adv.Mater.12:298−302
【非特許文献16】Cui等(2000),“Doping and electrical transport in silicon nanowires”,Phys.Chem.B 104:5213−5216
【非特許文献17】Urbau等(2002年),“Synthesis of single−crystalline perovskite nanowires composed of barium titanate and strontium titanate”,J.Am.Chem.Soc.,124,1186
【非特許文献18】Yun等(2002)、“Ferroelectric Properties of Indivisual Barium Titanate Nanowires Investicated by Scanned Probe Microscopy”,Nano Letters 2,447
【非特許文献19】Jun等(2001年),“Controlled synthesis of multi−armed CdS nanorod architectures using monosurfactant system”,J.Am.Chem.Soc.,123:5150−5151
【非特許文献20】Manna等(2000年),“Synthesis of Soluble and Processable Rod−,Arrow−,Teardrop−,and Tetrapod−Shaped CdSe Nanocrystals”,J.Am.Chem.Soc.,122:12700−12706
【非特許文献21】Liu等(2001年),“Sol−Gel Synthesis of Free−Standing Ferroelectric Lead Zirconate Titanate Nanoparticles”,J.Am.Chem.Soc.,123:4344
【非特許文献22】Peng等(1997年),“Epitaxial growth of highly liminescent CdSe/CdS core/shell nanocrystals with photostability and electronic acessibility”,J.Am.Chem.Soc.,119:7019−7029
【非特許文献23】Dabbouski等(1997年),“(CdSe)ZnS core−shell quantum dots:Synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrystallites”,J.Phys.Chem.B 101:9463−9475
【非特許文献24】Manna等(2002年),“Epitaxial growth and photochemical annealing of graded CdS/ZnS shells on colloidal CdSe nanorods”,J.Am.Chem.Soc.,124:7136−7145
【非特許文献25】Cao等(2000年),“Crowth and properties of semiconductor core/shell nanocrystals with InAs cores”,J.Am.Chem.Soc.,122:9692−9702
【非特許文献26】Gudiken等(2002年),“Crowth of nanowire superlattice structures for nanoscale photonics and electronics”,Nature 415:617−620
【非特許文献27】Bjork等(2002年),“One−dimensional steeplechase of electrons realized”,Nano Letters 2:86−90
【非特許文献28】Wu等(2002年),“Block−by−block growth of single−crystalline Si/SiGe superlattice nanowires”,Nano Letters 2:83−86
【非特許文献29】Haraguchi等(1994),“Polarization Dependance of Light Emitted from GaAs p−n junctions in quantum wire crystals”,J.Appl.Phys.75(8):4220−4225
【非特許文献30】Hiruma等(1993),“GaAs Free Standing Quantum Sized Wires”,J.Appl.Phys.74(5):3162−3171
【非特許文献31】Yazawa(1993)”Semiconductor Nanowhiskers“,Adv.Mater.,5(78):577−579
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多種の異なる構造等を有する第二の表面に任意に移行でき、各種の設定/局面に使用でき、またナノ構造の所望特性も有する種々の程度及び種類の超疎液性に作製できる表面又は表面層を当該技術に追加することが歓迎される。本発明は、これら及びその他の新規な利点を提供するもので、このような利点は、以下の調査で明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
種々の局面において、本発明は少なくとも第一表面と、1種以上の外生的疎液性材料を含む複数のナノ繊維とを含有する超疎液性基体を含む。幾つかの実施態様では、ナノ繊維は固体ナノ繊維及び/又は結晶性ナノ繊維を含む。各種実施態様のナノ繊維の表面密度(例えば表面上又は基体上)は、10μ当り約1以下のナノ繊維〜1μ当り約200のナノ繊維、1μ当り約1以下のナノ繊維〜1μ当り約150以上のナノ繊維、1μ当り約10以下のナノ繊維〜1μ当り約100以上のナノ繊維、1μ当り約25以下のナノ繊維〜1μ当り約75以上のナノ繊維が可能である。種々の実施態様では基体は、第一表面の被覆率が約0.01〜約50%、約0.25〜約40%、約0.5〜約30%、約1〜約20%、約5〜約15%、約0.1〜約5%、又は約1%であるナノ繊維を任意に含有できる。ナノ繊維の長さは、約1〜約200μ、約5〜約150μ、約10〜約125μ、又は約50〜約100μである。幾つかの実施態様ではナノ繊維の直径は、約5nm〜約1μ、約20nm〜約250nm、約40nm〜約200nm、約50nm〜約150nm、又は約75nm〜約100nmである。なお他の実施態様ではナノ繊維の高さ対直径アスペクト比は、約2:1;約2000:1;約2:1〜約40:1又はそれ以上;約5:1〜約30:1又はそれ以上;又は約10:1〜約20:1又はそれ以上である。
【0008】
種々の実施態様では、例えばナノ繊維を含む基体表面は、限定されるものではないが、シリコン、ガラス、透明基体、半透明基体、やや不透明基体、石英、プラスチック、金属、重合体、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO、SiO、炭化珪素、窒化珪素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族重合体又は脂肪族重合体、の1種以上を含有できる。ナノ繊維を構成する外生的材料は、任意に疎水性材料、疎油性材料又は両疎媒性材料の1種以上で可能である。例えばこの材料は、テフロン(登録商標)、Tri−sil,トリデカフルオロ1,1,2,2,テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシラン、弗化物含有化合物、シラン含有化合物、PTFE、ヘキサメチルジシラザン、脂肪族炭化水素含有分子、芳香族炭化水素含有分子、ハロゲン含有分子及びパラリエン(paralyene)よりなる群から選ばれた1種以上の材料を含有できる。これらの実施態様では本発明基体上の液滴(例えば水ベース及び/又は油性(lipid)ベース及び/又は非水/非油性ベース)は、少なくとも約150〜約179.5°以上、少なくとも約160〜約179.5°以上、少なくとも約170〜約179.5°以上、少なくとも約175〜約179.5°以上又は少なくとも約178〜約179.5°以上の接触角を示す。ナノ繊維は、基体の少なくとも第一表面上で任意に成長する。或いはナノ繊維は、第二表面上で成長し、第一表面に移行する。
【0009】
他の局面では本発明は、少なくとも第一表面と複数のナノ繊維とを含み、基体上の液滴が少なくとも160°(又は幾つかの実施態様では少なくとも170°)又はそれ以上の接触角を示す超疎液性基体であって、該ナノ繊維は1種以上の外生的疎液性材料を含むと共に、約0.01〜約50%の基体表面被覆率を有し、かつ約2:1〜約40:1(又は幾つかの実施態様では約100:1〜約2000:1)又はそれ以上の長さ対直径アスペクト比を有する該超疎液性基体を含む。
【0010】
本発明の他の局面は、本発明の1種以上の超疎液性基体を有するシステム又は装置、例えば基体上の液滴は、少なくとも約150〜約179.5°以上、少なくとも約155〜約179.5°以上、少なくとも約160〜約179.5°以上、約165〜約179.5°以上、少なくとも約170〜約179.5°以上、少なくとも約175〜約179.5°以上又は少なくとも約178〜約179.5°以上の接触角を示す1種以上の超疎液性基体を有するシステム又は装置を含む。
【0011】
本発明の更に他の局面は、1つ以上の液滴と基体との接触角を少なくとも150°(又は種々の実施態様では160°又は170°又は175°又は175°又は178°又は179.5°又はそれ以上)にする方法を含む。この方法は、1つ以上の液滴を用意する工程、第一表面と外生的疎液性材料を含む複数のナノ繊維とを含有する1種以上の基体を用意する工程、及び該液滴(例えば油性滴、非油性滴(例えば水性滴)、或いは油性滴又は非油性滴)を該1種以上の基体と接触させる工程を含む。
【0012】
本発明は、1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を有する、1つ以上の表面領域を持った基体を用意し、これにより超疎液性基体を形成する工程、及び該基体を第一媒体及び1種以上の第二媒体と物理的に接触させる工程を含む、第一媒体と1種以上の第二媒体との交換方法の局面も含む。この種の幾つかの実施態様では、第一媒体は複数のナノ繊維部材間(例えばナノ繊維間の隙間領域及び/又は空隙)だけに配置し、1つ以上の第二媒体は複数のナノ繊維上(例えばナノ繊維の層間とは反対のナノ繊維の層の頂上)だけに配置する。このような方法は、媒体が気体、液体及び/又は固体(例えば乾燥スラリー等)である場合を含む。媒体間の交換は、熱交換の一つ(例えば一方の媒体から他方の媒体への熱の交換)であってよい。その他の実施態様としては、この交換が媒体間の1種以上の成分(例えばこの成分は第一媒体及び/又は第二媒体内に存在する)である場合が挙げられる。
【0013】
本発明は、1種以上の材料で処理された複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った基体を含有すると共に、1種以上の液体又は気体と物理的に接触した容器を用意する工程、及び該容器の加熱源又は冷却源を用意する工程により、基体と液体又は気体との熱交換法も含む。このような基体は、超疎水性基体、超疎油性基体又は超両疎媒性基体等を含み得る。
【0014】
本発明は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を有する1つ以上の表面領域を持った基体を含むチャンネルを用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該チャンネルに液体、気体又は固体(例えば粉末又は乾燥スラリー等)を流す工程を含む、チャンネル内の流れ抵抗を低下させる方法も含む。このようなチャンネルは、例えばミクロ流動チャンネルを含み得る。
【0015】
本発明のその他の方法は、容器中での該材料の残存閉込みを低減しながら、材料を容器中で貯蔵又は輸送する方法を含む。これらの方法は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った壁を有する容器を用意する工程、及び該壁と物理的に接触した被輸送材料を用意する工程により行われる。貯蔵/輸送される材料は、例えば流体、気体、固体等を含み得る。
【0016】
本発明は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った基体(例えば航空機の機体、配線又は部品等で、これらは任意に加熱される)を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該基体をHO含有の液体又は気体の存在下に0℃以下に冷却する工程を含む、基体への氷の堆積を防止又は低減する方法も含む。
【0017】
本発明の他の局面は、容器(例えば各種の容器)からの漏れを防止又は低減する方法を含む。このような方法は、1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの壁を有する容器(例えば毒物、廃棄物又は危険物を任意に保有する地下貯蔵槽)を用意し、これにより超疎液性容器壁を作製する工程、及び該容器内に1種以上の内容物を供給する工程を含む。
【0018】
本発明は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を有する部品を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該基体と物理的に接触した1種以上の水又はこのような水の形成/蓄積を伝導し得る周囲条件を用意する工程を含む、領域への水(又は他の液体、例えば油性液体)の侵入を防止又は低減する方法も含む。或いは他の液体、例えば油性液体等は、このような物理的接触状態で用意できる。
【0019】
本発明のその他の局面は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、該表面領域内のナノ繊維の1つ以上の所定領域をエッチング又は除去することにより超疎液性基体のパターン領域とナノ繊維を含まない裸表面のパターン領域とを作製する工程、該裸領域のパターン領域内に優先的に定住する1種以上のインク又は染料を供給する工程、及び該基体を1つ以上の第二基体と接触させることにより裸表面のパターン領域に対応するパターン状で(in a pattern)第二基体にインク又は染料を移行させる工程によるプラテン印刷法を含む。
【0020】
本発明は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該表面領域内のナノ繊維の1つ以上の所定領域をエッチング又は除去することにより超疎液性基体のパターン領域とナノ繊維を含まない裸表面のパターン領域とを作製する工程による表面のパターン化法を含む局面も有する。
【0021】
本発明の更に他の局面は、複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性のナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意する工程、及び該少なくとも1つの基体上の1つ以上の領域を1種以上の超疎液性材料で、選択されたパターン状に処理することによりパターン化超疎液性基体を作製する工程による表面のパターン化法を含む。
【0022】
本発明のこれら及びその他の目的及び特徴は、以下の詳細な説明を添付図面と共同で読めば、一層十分に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図面の簡単な説明
図1A、1Bは、液滴と基体表面との相互作用を示す概略図である。
【0024】
図2は、液滴と疎液性基体表面との相互作用を示す概略図である。
【0025】
図3は、液滴と超疎液性基体表面との相互作用を示す概略図である。
【0026】
図4は、液滴と粗面化基体表面との相互作用を示す概略図である。
【0027】
図5は、本発明に組込み可能な一例のナノ繊維基体の写真図である。
【0028】
図6A、6Bは、液滴及び本発明のナノ繊維基体を示す概略図である。
【0029】
図7は、本発明の被覆した超疎液性ナノ繊維の概略図である。
【0030】
図8は、多孔質テフロン(登録商標)上の液滴を示す写真図である。
【0031】
図9は、弗素化シリコン表面上の液滴を示す写真図である。
【0032】
図10は、本発明の弗素化ナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【0033】
図11は、本発明の弗素化ナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【0034】
図12は、本発明のナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【0035】
図13は、本発明のナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【0036】
図14は、本発明のナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【0037】
詳細な説明
本発明は、ナノ繊維を超疎液性(例えば超疎水性)にするため、外生的疎液性材料で処理したか、又は該材料を含有するナノ繊維基体を有する。特に、特定の操作理論又は機構に束縛されるものではないが、ここで説明するナノ繊維表面は、疎液性増大処理を行うと、独特の接触特性が得られ、実際に超疎液性(例えば超疎水性)になるものと考えられる。例えばナノ繊維表面にメチル基、弗素基等を添加すると、極超疎液性表面が得られる。したがって、このような超疎液性表面に塗布した水は、球形となり、水流と同様に表面を転がり落ちる。テフロン(登録商標)のような他の非濡れ性疎水性表面でもこのような極限特性は示さない。したがって、本発明は、はっ水及び/又ははつ油(例えばグリース)被覆又はバイオ不活性層を所望する用途や、分離用仮想表面、流動用、例えばパイプ、マニホールド、チャンネル、細管、ミクロ流動導管等の流体導管の低摩擦被覆や、水上及び海上用、例えば船舶/潜水艦、魚雷、及び更には玩具、噴水(fountains)のような美的構造物にも任意に使用される。
【0038】
以上から判るように、疎液性表面は、多くの用途に有用である。ナノ繊維表面(即ち、アスペクト比が1より大きく、かつ直径がナノ規模である特徴を有する表面)の概念は、適切な化学官能価を有するか、該官能価で処理すると、極限まで達する。例えば以下に更に説明するように、シリコンウエーハ上で成長し、メチル化剤で処理したシリコンナノ繊維は、水を、表面を容易に転がり落ちる球形の液滴に成形する。同様にナノ繊維表面を弗素化化合物で処理すると、この表面は鉱油をビーズ化して、同様に表面を転がり落ちる。また特定の操作機構に束縛されるものではないが、容器をこのように処理したナノ繊維で被覆すると、この容器に入れるのに使用した液体は、基体上に配置したナノ繊維の最上部と接触するだけである(この部分は通常、下層の基体表面積の1%未満を構成する)。例えば図4〜6参照。最小の壁相互作用が起こり、基本的には、仮想容器が生じる。このような仮想容器は、液体と容器表面との化学的相互作用を低下させる。この相互作用は、分析、生物学及び化学的利用において、長い間、本質的な問題源となっていた。本発明の超疎液特性は、例えば薬を配送したり、分析装置に入れたり、或いは球形製品に成形するため、また当業者によって理解され、またここで詳述する(非限定的)実施例を選択するその他の用途に、液体を分配する際にも有益である。
【0039】
定義
本発明を詳細に説明する前に、特定の構成に限定されず、勿論、変化できる(例えば或る範囲の長さ、密度等に任意に存在するナノ繊維と被覆との各種組合わせ)ことを理解すべきである。またここで使用した用語は、単に特定の実施態様を説明するためのもので、限定を意図するのではないことを理解すべきである。明細書及び付属の特許請求の範囲に記載した単数形の冠詞は、特に明確に規定しない限り、複数形を含む。したがって、“1つのナノ繊維”は、複数のこの種のナノ繊維を含む等である。
【0040】
特に定義しない限り、全ての科学的及び技術的用語は、これらの用語が関連する技術分野で普通に使用されている意味と同じ意味を持つことが判る。本発明目的のため、ここでは更に特定の用語を追加、定義した。
【0041】
ここで用語“ナノ繊維”とは、通常、少なくとも1つの断面寸法が約1000nm未満、例えば約500nm未満、約250nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約20nm未満、約10nm未満、更には約50m以下を特徴とする長いナノ構造を言う。多くの場合、この領域又は特徴的寸法は、構造の最小軸と平行する。本発明のナノ繊維は、通常、1つの基本軸は、他の2つの基本軸よりも長く、したがって、アスペクト比は1より大きく、2以上、約10より大きく、約20より大きく、また多くの場合、約100、200、500又は2000よりも大きい。
【0042】
ここでナノ繊維は、任意にほぼ単結晶構造(“単結晶ナノ繊維”又は“単結晶性ナノ繊維”)である。またナノ繊維は、任意に導電性又は半導電性である。“均質ナノ繊維”は、構成要素の配列が本質的に均質なナノ繊維である。例えば均質ナノ繊維は、シリコン及び該結晶中に本質的に同じように分散したドーパントのような基材を含む単結晶構造であり得る。“不均質ナノ繊維”は、異なる組成を含む副領域を有するナノ繊維である。例えば不均質ナノ繊維は、異種のドーパント、異なる濃度の1種類のドーパント又はその両者を有する異なる副領域又は“断片”を持ったシリコンのような基材を含む単結晶構造であり得る。ナノ繊維の例としては、国際特許出願公開No.WO 02/17362、WO 02/48701及びWO 01/03208(これらは全て、あらゆる目的のため全体をここに援用した)に記載されるような半導体ナノ繊維、及び大きさ(例えば幾つかの実施態様では、ナノウイスカー等)のように他の長い構造が挙げられる。
【0043】
特定の実施態様では本発明のナノ繊維の直径は、ほぼ均一である。幾つかの実施態様では直径は、最大変動領域に対し(over)、また少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも20nm又は少なくとも50nmの線寸法に亘って、約20%未満、約10%未満、約5%未満又は約1%未満の分散を示す。通常、直径はナノ繊維の端部から遠く離れて(例えばナノ繊維の中心20%、40%、50%又は80%に対して)測定される。更に他の実施態様では、ナノ繊維の直径は不均一である(即ち、長さと平行する直径は変化する)。
【0044】
本発明のナノ繊維は、任意に多数の異なる材料のいずれでも構成され、本質的にいかなる都合のよい材料からも作製できる。以下参照。幾つかの通常の実施態様では、本発明のナノ繊維は、非炭素又は無機の材料を含む。また幾つかの実施態様では、シリコン又は珪素含有化合物(例えば酸化珪素)を含む。各種の好ましい実施態様も、任意に通常、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(又は整列したポリアクリロニトリル繊維)、ポリスチレン、ポリエステル又はポリアミドのナノ繊維を含まない。本発明の実施態様は、固体及び/又は結晶性のナノ繊維を含むことができる。ここで好ましい実施態様は、通常、ナノチューブを含まないが、このようなナノチューブは、他のナノ繊維と同様、任意に有用である(例えばナノ繊維を疎液性材料で変性する等)。更に、シリコンナノポストは、通常、好ましい実施態様内には含まれない。しかしまた、好ましい実施態様は通常、カーボンナノチューブを使用せず、むしろ固体ナノ繊維成分を含有する。
【0045】
特定の実施態様では、ナノ繊維の長さは、約10nm〜約200μ、又は約20nm〜約100μ、或いは約20nm又は50nm〜約500nmの範囲である。ここで特定のナノ繊維の長さは、約1μ未満、約500nm未満、約250nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、約25nm未満、約20nm未満、約10nm未満である。幾つかの実施態様では、ナノ繊維の長さは、1μ〜100μ、又は約5μ〜約100μである。他の実施態様では、このようなナノ繊維の直径は約50nmである。更に前述のように、ナノ繊維は、通常、固体であり、また通常、無機材料で構成される(例えば通常の実施態様では、シリコン)。
【0046】
用語“結晶性”又は“ほぼ結晶性”は、本発明のナノ繊維と関連して使用した場合、ナノ繊維が通常、長い範囲の配列を示すことを言う。本発明のナノ繊維は、疎水性、疎油性、両疎媒性又は疎液性の被覆を持つことができる。以下参照。これらの例では、被覆はこのような配列を示す必要がない(例えば被覆は、非晶質、その他であり得る)ことは理解されよう。ここで、語句“結晶性”、又は“ほぼ結晶性”又は“ほぼ単結晶性”又は“単結晶性”は、ナノ結晶の中心“芯”を言う(即ち、被覆層を除く)。ここで使用される用語“結晶性”又は“ほぼ結晶性”は、構造が実質的な長い範囲の配列を示す限り、各種の欠陥、原子置換等を有する構造を含むことも意図する。用語“単結晶性”本発明のナノ繊維と関連して使用する場合、ナノ繊維がほぼ結晶性で、実質的に反結晶を含むことを示す。しかし、以下の定義において本発明のナノ繊維表面は、その効果に対する明確な説明なしでは、このような結晶度を含む必要があると示唆することを意図するのではない。
【0047】
ナノ繊維という用語は、例えばナノワイヤー、ナノウイスカー、半導電性ナノ繊維及び非炭素ナノ繊維(例えばホウ素のナノチューブ又はナノ細管)も任意に含み得る。前記参照。また幾つかの実施態様では、更に“通常の”ナノ繊維の代りにナノ結晶又はその他の同様なナノ構造を用いて、超疎液性表面を作ることができる。例えば更に小さいアスペクト比(例えば前記よりも小さいアスペクト比)を有するナノ構造、例えばナノロッド、ナノテトラポッド、ナノポスト(例えば非シリコンナノポスト)等も、任意に(特定の実施態様で)ナノ繊維の定義内に任意に含まれる。このようなその他の任意に含まれるナノ構造の例は、例えばPCT出願公開No.WO 03/054953及びそこで引用された文献に見い出される。これらは全て、あらゆる目的で全体をここに援用した。
【0048】
“両疎媒性”は、疎水性、疎油性の両者を有し、したがって、油性及び非油性の両者又は水性/水ベース液体を反発する材料の特性を説明する。
【0049】
ここで使用される“疎液性”又は“超疎液性”は、一般的な意味では、液体反発特性を示す全ての材料、例えば疎水性、疎油性又は両疎媒性等(疎液性の場合)或いは超疎水性、超疎油性又は超両疎媒性等(超疎液性の場合)の1つ以上を有する材料を説明する。このような材料は、例えば液体を材料表面上でビーズ化し、広げないか、又は材料表面を濡らさないで、液体を反発する。含まれる液体は、例えばナノ繊維と共同で使用される特定の被覆材料に依存する、任意に1種以上の液体(例えば油性液体、水性液体、非水性非油性液体等)である。したがて、ここで使用される、超疎油性として説明する基体(例えば外生的材料を有するナノ繊維基体等)は、これに関連する超疎水性、超疎油性又は超両疎媒性の1つ以上であり得る。
【0050】
“超疎水性”、“超疎油性”、“超両疎媒性”及び“超疎液性”はいずれも、物質表面上の液滴の接触角を150°以上にする物質を言う。これに関連して、液滴は、例えば水/水ベース/水性滴(超疎水性)、油性ベース滴(超疎油性)、水ベース又は油性ベースの滴(超両疎媒性)又はその他の液体を含有できる。超疎液性は、流体滴(例えば油性ベース、水性ベース、又はその他)の接触角を150℃より大きくする物質を示す包括的用語を含む。
【0051】
その他の用語、例えば“被覆(coating)”は他の所で説明する。
【0052】
疎液性の測定
液体(例えば水ベース、油性ベース等)の滴を表面に置くと、液滴は、液体及び基体の表面張力、表面の平滑性、粗さ等の要因により、ある程度まで表面に広がる。例えば基体の疎液性は、基体の表面エネルギーを低下させる各種の被覆により向上できる。疎液性の数量化は、表面上の液滴の接触表面角度(又は接触角)の程度として表現できる。
【0053】
例えば図1A及び図1Bに示すように、高い表面張力(即ち、液滴の表面張力よりも高い)に対しては、液滴100は、110のように広がって、基体120を“濡らす”。このような表面は、疎液性とは反対の親液性を示す。接触角が0より大きい場合(例えば表面の粗さ程度が大きい場合)、表面張力(γ)と接触角(θ)との関係はYoungの式:
(1) cosθ=(γSV−γSL)/γLV
で表わされる。ここでγSV 、γSL及びγLVは、それぞれ固体/蒸気界面、固体/液体界面及び液体/蒸気界面の表面エネルギー(即ち、単位面積当りの間隙の自由エネルギー)であり、θは、液滴と基体表面との接触角である。例えば基体210上の液滴200を示す図2、及び基体310上の液滴300を示す図3参照。したがって、表面エネルギーが低下すると、疎液性は向上する(また、その逆)。平滑面に対しては、CF末端の基体で最大約120°の接触角が得られた。
【0054】
図1Bでは、接触角はゼロに近い(即ち、非常に低い)が、図2及び図3では接触角は、図3のように、180°になるまで、増大する。接触角が150°以上の表面は、超疎液性(例えば液体が水性であれば、超疎水性;液体が油性であれば、超疎油性;液体が油性でも非油性でもあり得れば、超両疎媒性等)として説明する。
【0055】
基体から液体を開放するには、基体表面の臨界表面張力は、問題の液体の臨界表面張力よりも低くしなければならない。一般に、多くの液体の臨界表面張力は、20ダイン/cmよりも高い。例えば脱イオン水の20℃での臨界表面張力は、73ダイン/cmであるが、DMSOは25ダイン/cm、またトルエンは28ダイン/cmである。例えば表面平滑な基体の臨界表面張力の例としては、ソーダガラスの30ダイン/cm、ステンレス鋼301の44ダイン/cm、テフロン(登録商標)の18ダイン/cmがある。
【0056】
前記Youngの式は、基体表面が平滑である場合は適用できる。しかし、基体表面が粗ければ、このような粗さは、接触角の測定の際、注意しなければならない。したがって、接触角の測定にはWenzelの式:
(2) cosθ’=r(γSV−γSL)/γLV=rcosθ
が使用される。式中、rは表面の“粗さ係数”で、表面の実面積と表面の予想幾何面積との比率である。Wenzelの式は、
(3) cosθ=rcosθγ
ここでθはWenzel角度、θγはYoung角度である。Wenzel解析の粗さは本来、非常に小さく、基体と液体間に気泡を形成するほど大きくはない。
【0057】
しかし、基体表面と液体間に空気が閉じ込められる(これにより複合界面を形成する)ほど、十分粗い表面では、Cassieの式が使用される。Cassieの式では、接触角は
(4) cosθ’=fcosθ+(1−f)cos180°
= cosθ+f−1
により測定される。ここでθ’は、液体と空気/基体表面との接触角を表わす。この式で、空気/液体接触角は180°と推定する。また式中、fは固体表面積分数Σ/Σ(a+b)(“a”は基体表面と液体との接触面積であり、面積“b”は液体と、液体及び基体間に閉じ込められた空気との接触面積である)に等しい。図4参照。図4から判るように、液滴400は特定点(即ち、高くした点又は粗面化点)でだけ粗面基体410と接触する。図4、6等での表示は、解析を容易にするため、誇張して示した。こうして例えば“a”で表わされる領域は、均一なもの、頂部が平坦なもの等として表わした。Cassieの式は
(5) cosθCB=fSLcosθγ−fLA
のように変形できる。ここでfSLは固体/液体界面の分数被覆度(fractional coverage)、fLAは液体/空気界面の分数被覆度である。
【0058】
このような解析では、表面粗さの深さは、接触角を測定する際の要因ではない。しかし、液体、及び基体の複数の点間の幅と接触するこれら“点”の幅(即ち、液体/空気接触“点”の幅)が重要であることは理解されよう。図4参照。表面粗さの増大は、基体上の比較的小さい地理的面積に対し大きな幾何的面積を与える。ハス(Nelumbo nucifera)の葉の上の同様な表面粗さは、天然産の超疎水性(幾つかの例では接触角は約170°)を生じることができる。以下、更に詳細に説明するように、以上の式でこのような粗さには、例えば基体上に存在するナノ繊維が挙げられる。
【0059】
当業者ならば、各種表面上の各種液体の接触角を例えば光学接触角測定器等で測定する手段に精通している。超疎液性のその他の測定法としては、滑り角度、例えば液滴が基体上を滑るか回る基体の角度又は傾斜の程度が挙げられる。ここで超疎液性(例えば超疎水性、超疎油性等の表面)は、滑り角度5°以下、4°以下、3°以下、2°以下、更には1°以下を表わすことができる。また当業者ならば、このような概念及び必要な測定法は熟知している。
【0060】
ナノ繊維
本発明のナノ繊維は、他の異なる一方法で任意に作製され、ここに示した例及び検討は、限定するものとみなすべきではない。したがって、ここに具体的に説明しない手段で作製したが、外生的要素(例えば通常は疎液性部分等)を含むと共に、ここで述べた超疎液性パラメーターの範囲内にある手段により作製したナノ繊維は、なお本発明のナノ繊維である。
【0061】
前述のように一般的意味では本発明のナノ繊維は、固体基体(例えば任意に平面等の)から突起した長い薄い突起物(例えば繊維又はワイヤー、或いは更にはロッド、円錐体等)である。勿論、実施態様では、ナノ繊維は、これらナノ繊維(平面である必要はない)が表面上で成長し、第二基体に結着すると共に、実際に無数の三次元構造を含み得る基体とは離れている。更に他の実施態様では、本発明のナノ繊維は、表面上にパターン化できる(即ち、選択されたパターン)か、或いは三次元表面の特定領域の三次元表面上に成長できる。或いはナノ繊維は、当業者に公知の各種方法を用いて実質的にいかなる形状の基体上にも、その場で作製できる。
【0062】
図7は、本発明の一例のナノ繊維の概略実物大の下絵図である。図7において、ナノ繊維710は、基体表面700に結着している。外生的疎液性材料720は、ナノ繊維を“被覆して”示される。以下参照。また図7は、単に説明の目的であって、限定とみなすべきでないことは理解されよう。例えばナノ繊維の長さ、直径、密度、形状、組成等は、いずれも任意に極めて多様であって、種々の実施態様で異なり得る。以下参照。更に、理解されるように、疎液性被覆も同様に、任意に極めて変化できる。したがって、被覆(例えばナノ繊維全体を被覆するかどうか、ナノ繊維の一部だけを被覆するかどうか等)の厚さ、組成、塗布時間及び程度は、いずれも本発明の実施態様の範囲において、任意に変化できる。
【0063】
しかし、以下、更に詳細に説明するように、実際のナノ繊維の構造は、例えば図6又は図7に示すものよりも遥かに複雑であり得る。例えば図5は、本発明と同様なナノ繊維構造の写真図である。この画像は、シリコンウエーハ上で成長したナノ繊維(ここではナノワイヤー)表面のSEM断面である。図5のナノ繊維は、直径が約40nmで、長さが約40μである。図5から判るように、ナノ繊維は複雑な三次元メッシュ又はマトリックスを形成する。交錯し可変する高さ、曲がり、折れ曲げ(bent)等は、このナノ繊維の超疎液性発生に密接に関係すると考えられる粗面を形成する。
【0064】
図7から判るように、このナノ繊維は、通常、無機材料(通常、排他的ではないが、シリコン及び/又は酸化珪素)の“芯”の周囲に疎液性“被覆”を設けて構成される。この疎液性被覆は、多数の疎水性、疎油性、両疎媒性、又はその他の疎液性材料のいずれかで任意に構成される。以下参照。実際に使用される被覆は、コスト、使いやすさ、ナノ繊維と接触する液体、耐久性、不透明性、ナノ繊維芯に対する被覆の接着性、ナノ繊維の形状/密度等の多数の変数に基づいて選択できる。このような局面において、“外生的”は、通常、被覆が“芯”ナノ繊維の一部ではない(例えば最初に芯の一部として作製されない)ことを示す。このような被覆は、通常、ナノ繊維の成長後に塗布され、通常、ナノ繊維芯の周囲に“外装層”又は“包囲層”を有する。しかし、以下、更に説明するように、このような被覆は、任意にナノ繊維の芯の材料の変形である。したがって、本発明の主な利点は、特定の用途及び条件に応じて作製する本発明の適合性及び容易性である。例えば接触する液体の種類、耐久性、毒性、コスト等の要因に応じて異なる被覆がナノ繊維上に使用できる。また外装又は被覆として説明したが、このような処理は、必ずしも芯全体の均一又は均質な層又は被覆を含むものではなく、幾つかの例では、ナノ繊維表面上に非晶質的、周期的又は局部的に沈着させてもよい。
【0065】
以下、更に詳細に説明するように、多数の疎液性被覆は当業者に周知である。本発明が必ずしも特定の外生的疎液性被覆により限定されないこと及びこのような特定例の列挙が必ずしも限定と解釈すべきでないことは理解されよう。
【0066】
疎液性材料の芯ナノ繊維への塗布は、疎液性材料及びナノ繊維の特定の必要性等に応じて種々の方法で行われる。換言すれば、種々の疎液性材料は、種々の方法で種々のナノ繊維に結着させる。疎液性材料をシリコン(例えばその芯ナノ繊維を構成することが多い)のような材料に接着、沈着等させることは当業者に周知である。例えばBrennanのUSP 5,464,796及びArcles,“Silane Coupling Agent Chemistry”,Application Note,United Chemical Technologies,Inc.Bristol,PA参照。したがって、ナノ繊維(例えばシリコンナノ繊維)の表面化学変性もナノ繊維上に外生的被覆を作ることができる。被覆が芯自体上の層ではなく、むしろ芯表面への変性/添加、例えば芯の表面分子の変化又は芯ナノ繊維の表面分子への他の分子の添加である実施態様が存在する。更に前述のように、ナノ繊維芯を被覆する疎液性材料は、いずれの実施態様においても本発明のナノ繊維を全体に被覆する必要はない。例えばナノ繊維のベースを接着剤等に埋込む実施態様では、次にこれらのベースを被覆する必要はない。
【0067】
密度
本発明の一局面は、例えば本発明の基体表面上の、ナノ繊維の密度である。前述のように、表面の超疎液性には、通常、表面粗さという概念が含まれる。例えば前記式2〜5参照。したがって、粗さの程度を変化させる、ナノ繊維の密度は、本発明の超疎液性と関係があると考えられる。更に重要なことは、この密度を制御する能力が表面全体の超疎液性水準を制御する独特の能力を与えることである。要するに、外生的材料の疎液性は、ナノ繊維密度との組合わせで、本発明の超疎液性に影響を与えると考えられることである。
【0068】
ここで密度の概念は、本発明に包含される数種の異なる方法で任意にアプローチされる。例えばナノ繊維密度の一定義は、基体表面の単位面積当りのナノ繊維数からなる。本発明の異なる実施態様は、このような異なる密度の範囲を含む。単位面積当りのナノ繊維数は、任意に10μ当り約1以下のナノ繊維〜1μ当り約2000のナノ繊維、1μ当り約1以下のナノ繊維〜1μ当り約1500のナノ繊維、1μ当り約10以下のナノ繊維〜1μ当り約1000のナノ繊維、1μ当り約25以下のナノ繊維〜1μ当り約750のナノ繊維、1μ当り約50以下のナノ繊維〜1μ当り約500のナノ繊維、1μ当り約75以下のナノ繊維〜1μ当り約500のナノ繊維、1μ当り約100以下のナノ繊維〜1μ当り約250のナノ繊維、1μ当り約125以下のナノ繊維〜1μ当り約175以下のナノ繊維の範囲が可能である。
【0069】
異なる実施態様では、それぞれナノ繊維の直径は任意に異なるので、ナノ繊維密度は基体表面の被覆率(%)としても定義できる。換言すれば、ナノ繊維自体の足型(footprint)により占有される基体表面の全面積に対する百分率である。通常、この百分率は、ナノ繊維芯を基準として求められる。しかし、例えば外生的疎液性材料が厚い被覆を含む幾つかの実施態様では、この百分率は、任意にナノ繊維芯の足型及び該外生的被覆を基準とする。例えばナノ繊維が厚いプラスチック被覆で被覆されていれば、基体表面の被覆率(%)は、任意に芯ナノ繊維の直径+プラスチック被覆を基準として求められる。表面被覆密度%は、Cassieの式中の値に関係する一要因であることは理解されよう。前記式4、5参照。例えばナノ繊維が、極めて薄い被覆とは逆に、厚い被覆(したがって、直径が大きくなる)を持った実施態様では、図4の“a”の値は変化する。しかし、またこれが疎液性の測定において、一要因であることは理解されよう。幾つかの実施態様では、ナノ繊維は、約0.01以下〜約50%、約0.25以下〜約40%、約0.5以下〜約30%、約1以下〜約20%、約5以下〜約15%の表面被覆率を有する。
【0070】
ナノ繊維密度の更に他の局面は、基体表面上の平面で測定した被覆率(%)を含む。幾つかの実施態様では、本発明のナノ繊維は、折れ曲がったり、曲がったり、或いは更にはカールした形態を含む。例えば図5、6に見られるように、ナノ繊維は、任意に極めて複雑な三次元構造を形成できる。このような複雑性は、例えばナノ繊維の長さ、ナノ繊維の直径、ナノ繊維の長さ:直径アスペクト比、ナノ繊維の被覆(あれば)、及びナノ繊維の成長条件に一部依存する。基体表面上の1つ以上の平面を通る被覆密度(又は“高い被覆率)は、基体表面での被覆密度(即ち、足型密度)とは任意に全く異なり得ることは理解されよう。したがって、問題の平面が液滴とナノ繊維との相互作用/接触場所である場合には、このような接触点での密度は、前記足型密度とは異なり得る。幾つかの実施態様では、ナノ繊維の複雑性は、基体表面での密度よりもかなり高い被覆率を生じる。このような局面は、カールし曲がったナノ繊維(即ち、仮想平面を2回以上横断する)のために起こり得る。
【0071】
前述の検討から理解されるように、表面粗さ(例えば図4参照)は、超疎液性の作製に全く影響を与えられない。したがって、基体表面上の種々の仮想平面で測定した表面粗さは、本発明ナノ繊維の超疎液性等の一局面である。例えばカールするか又は曲がった輪郭(例えば図6bの610)を持ったナノ繊維は、“真直ぐの”又はカールしていない/曲がっていないナノ繊維に比べてかなり高い密度を有する。図4の図形は、ナノ繊維が液体等に接触していれば、多くの“a”領域を有するのと同様なものとして見ることができる。図6aは一例のナノ繊維610上に留まる液滴600を示し、基体620上には曲がった又はその他、真直ぐではない形態が任意に存在し得る。図6bは基体650上の長いカールしたナノ繊維640上に留まる液滴630を示す。幾つかの実施態様で明らかなように、ナノ繊維は、その先端(tip)以外の領域で(例えばナノ繊維の側方又は先端で、但し、或る角度で、等)液滴に接触している。更に、幾つかの実施態様で複雑なナノ繊維配列を与えると、若干のナノ繊維は、その先端で液滴に接触するが、同一表面の他のナノ繊維は、その側方等で液滴に接触できる。また以上、至る所で説明したように、真直ぐでも、曲がっていても、カールしても等、このようなナノ繊維は、通常の実施態様では、外生的被覆/部分等を有する。
【0072】
種々の実施態様において、高い被覆率(%)は単位面積当りのナノ繊維数の制御により、またナノ繊維の直径(したがって、また被覆密度%)やナノ繊維の長さ、ナノ繊維の組成等により任意に調節される。これらのパラメーターは、高い平面を通るナノ繊維の折れ曲がり、交錯等に影響を与える。したがって、ナノ繊維基体の超疎液性は、ナノ繊維に添加した外生的疎液性材料と共同で、これらパラメーターの調節により任意に制御されることが理解されよう。
【0073】
作製
本発明は、ナノ繊維の作製手段により限定されないことは理解されよう。好ましい実施態様ではナノ繊維は、無機材料、通常、シリコン及び/又は酸化珪素で構成され、通常、固体結晶性構造である。無機ナノ繊維の形成は、いずれも本発明に受け入れやすい当業者に周知の多数の異なる方法で可能である。例えばUSP 5,230,957;同5,537,000;同6,128,214;同6,225,198;同6,306,736;同6,314,019;同6,322,901;同6,501,091;及び国際特許出願公開No.WO 02/17632及びWO 01/03208参照。これら各特許の十分な開示は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。
【0074】
また本発明は、ナノ繊維の作製手段により限定されないことは理解されよう。例えば通常のナノ繊維は、シリコンで構成される(ナノ繊維は例えばシリコン及び/又は酸化珪素で、固体及び/又は非炭素及び/又は結晶性である)。しかし、またシリコンの使用は、必ずしも限定と解釈すべきではない。ナノ繊維の形成は、いずれも本発明に受け入れやすく、したがって、ここに包含される当業者に周知の多数の異なる方法で可能である。
【0075】
通常の実施態様は、当業者に公知のナノ構造の各種作製法や、ここで説明した方法と併用できる。例えば超疎液性ナノ繊維の各種作製法は、ここで説明した方法又は他の方法で作ったナノ繊維を用いて行える。換言すれば、ナノ繊維及びナノ繊維含有構造の各種製造法は存在し、説明したし、また本発明の各種方法、システム及び装置に使用するのに適合できる。
【0076】
ナノ繊維は、当該パラメーター内の本質的にいかなる都合のよい材料(例えば半導電性材料、強誘電体材料、金属等)からも作製でき、また本質的に単一材料を含有できるか、或いはヘテロ構造であり得る。例えばナノ繊維は、半導体材料、例えば周期表第2又は12族から選ばれた第一元素及び第16族から選ばれた第二元素を含有する材料(例えばZnS、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe等の材料)、第13族から選ばれた第一元素及び第15族から選ばれた第二元素を含む材料(例えばGaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等の材料)、第14族元素を含む材料(例えばSiC又はSiNのようなGe、Si等の材料)、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP及びAlSbのような材料、又はそれらの合金又は混合物を含有できる。別の例等は至る所に示す。
【0077】
幾つかの実施態様は、酸化チタン、又は酸化チタンと他の材料との混合物からなるナノ繊維を含有できる。このような混合物は、酸化チタンを異なる%量、例えば1以下〜約20%、約2以下〜約15%、約3以下〜約10%、約4以下〜約5%含有できる。特定の作用様式に限定されるものではないが、このような酸化チタンナノ繊維は、紫外光及び汚染粒子と相互作用し、こうして超疎液性表面を清浄に保持する等と考えられる。
【0078】
更に他の実施態様では、本発明ナノ繊維の若干又はほぼ全部は、例えば外生的材料被覆又は他の手段により1種以上の他のナノ繊維に架橋できる。したがって、幾つかの実施態様は、ナノ繊維間の多数の接続部と三次元連結複合体又は格子を形成できる。
【0079】
幾つかの通常の実施態様では、ナノ繊維は、任意にシリコン又は酸化珪素で構成される。当業者ならば、ここで使用した用語“酸化珪素”がいかなる程度の酸化状態の珪素も言うものであることは理解できよう。こうして、酸化珪素と言う用語は、化学構造SiO(但し、xは0〜2の範囲を包含する)。
【0080】
幾つかではあるが、全てではない実施態様は、シリコンナノ繊維を含有する。シリコンナノ繊維の普通の製造法としては、蒸気液体固体成長(VLS)、レーザー融除(レーザー接触成長)及び熱蒸発が挙げられる。例えばMorales等“A Laser Ablation Method for the Synthesis of Crystalline Semiconductor Nanowires”Science 279,208−211(1998)参照。一例の方法では、長さ方向に整列したヘテロ構造を有する半導体ナノ繊維の合成にハイブリッドパルス化レーザー融除/化学蒸着(PLA−CVD)法が使用される。Wu等(1998)、“Block−by−Block Growth of Single−Crystalline Si/SiGe Superlattice Nanowires”,Nano Letters Vol.2:83−86(2002)参照。
【0081】
一般にナノ繊維及び他のナノ構造の幾つかの製造法が文献に記載され、これらの方法は、本方法、システム及び装置に利用できる。前記Morales等及びWu等の他、例えばLieber等(2001)、“Carbide Nanomaterials”USP 6,190,634B1;Lieber等(2000)“Nanometer Scale Microscopy Probes”USP 6,159,742;Lieber等(2000)、“Method of Producing Metal Oxide Nanorods”USP 6,036,774;Lieber等(1999)、“Metal Oxide Nanorods”USP 5,897,945;Lieber等(1999)、“Preparation of Carbide Nanorods”USP 5,997,832;Lieber等(1998)、“Covalent Carbon Nitride Material Comprising CN and Formation Method;Thess等(1996)“Crystalline Ropes of Metallic Carbon Nanotubes”,Science 273,483−486;Lieber等(1993)、“Method of Making a Superconducting Fullerene Composition By Reacting a Fullerene with an Alloy Containing Alkali Metal”,USPN 5,196,396;及びLieber等(1993)、“Machining Oxide Thin Films with an Atomic Force Microscope:Pattern and Object Formation on the Nanometer Scale”,USPN 5,252,835参照。最近では、一次元半導体ヘテロ構造が文献に記載されている。例えばBjork等(2002)、“One−dimensional Steplechase for Electrons Realized”,Nano Letters,Vol.2:86−90参照。
【0082】
必ずしもナノ繊維に特異的ではないが、幾つかの文献は、本発明に任意に利用可能であることに注目すべきである。例えば作製条件の背景問題等は、ナノ繊維と他のナノ構造間に適用できる。若干のナノ構造、例えばナノ結晶等も、幾つかの実施態様では任意に本発明の超疎液性表面内に(即ち、超疎水性被覆したナノ繊維として又は該ナノ繊維の他に)含まれる。
【0083】
一般的なアプローチでは、複数の表面上にそれぞれナノ構造を量産する合成法が、例えばKong等(1998),“Synthetic of Individual Single−Walled Carbon Nanotubes on Patterned Silicon Wafers”,Nature 395,878−881、及びKong等(1998),“Chemical Vapor Deposition of Methane for Single−Walled Carbon Nanotubes”Chem.Phys.Lett.292,567−574に記載されている。勿論、本発明は中空ナノチューブ又はナノ細管とは逆に被覆したナノ繊維に向けることが好ましいが、また普通の作製法等は重複する。
【0084】
更に他のアプローチでは、基体及びセルフアッセンブリング単層(SAM)形成用材料を使用し、例えば下記文献に記載されるような微小接触印刷技術に従ってナノ繊維を作製できる。Schon,meng及びBao,“Self−assembled monolayer organic field−effect transistors”,Nature 413:713(2001);Zhou等(1997),“Nanoscale Metal/Self−assembled Monolayer/Metal Heterostructure”,Applied Physics Letters,71:611;及びWO 96/29629(Whitesides等、1996年6月26日公開)。
【0085】
各種組成のナノ構造、例えばナノ結晶の合成は、例えば下記文献に記載されている。Peng等(2000),“Shape control of CdSe nanocrystals”,Nature 404:59−61;Puntes等(2001),“Colloidal nanocrystal shape and size control:The case of cobalt”,Science 291:2115−2117;Alivisatos等(2001年10月23日)“Process for forming shaped group III−V semiconductor monocrystals and product formed using process”と題するUSPN 6,306,736;Alivisatos等(1996年4月9日)“Preparation of III−V semiconductor nanocrystals”と題するUSPN 5,505,928;Alivisatos等(1998年5月12日)“Semiconductor nanocrystals covalently bound to solid inorganic surfaces using self−assembled monolayers”と題するUSPN 5,751,018;Gallagher等(2000年4月11日)“Encapsulated quantum sized doped semiconductor particles and method of manufacturing same”と題するUSPN 6,048,616;及びWeiss等(1999年11月23日)“Organo luminescent semiconductor nanocrystal probes for biological applications and process for making and using such probes”と題するUSPN 5,990,479。
【0086】
種々のアスペクト比及び制御された直径を有するナノワイヤーのようなナノ繊維の成長については、例えば下記文献に記載されている。Gudiksen等(2000),“Diameter−selective synthesis of semiconductor nanowires”,J.Am.Chem.Soc.122:8801−8802;Cui等(2001),“Diameter−controlled synthesis of single crystal silicon nanowires”,J.Phys.Chem.B 105:4062−4064;Morales等(1998),“A laser ablation method for the synthesis of crystalline semiconductor nanowires”,Science 279:208−211;Duan等(2000),“General synthesis of compound semiconductor nanowires”,Adv.Mater.12:298−302;Cui等(2000),“Doping and electrical transport in silicon nanowires”,Phys.Chem.B 104:5213−5216;Peng等(2000),前記;Puntes等(2001),前記;Alivisatos等,前記;Lieber等(2000年3月14日)“Method of producing metal oxide nanorods”と題するUSPN 6,036,774;Lieber等(1999年4月27日)“Metal oxide nanorods”と題するUSPN 5,879,945;Lieber等(1999年12月7日)“Preparation of carbide Nanorods”と題するUSPN 5,997,832;Urbau等(2002年),“Synthesis of single−crystalline perovskite nanowires composed of barium titanate and strontium titanate”,J.Am.Chem.Soc.,124,1186;Yun等(2002)、“Ferroelectric Properties of Indivisual Barium Titanate Nanowires Investicated by Scanned Probe Microscopy”,Nano Letters 2,447;及びPCT出願公開No.WO 02/17362及び同WO 02/080280。
【0087】
分岐ナノ構造(例えばナノテトラポッド、トリポッド、バイポッド及び分岐テトラポッド)の成長については、例えばJun等(2001年),“Controlled synthesis of multi−armed CdS nanorod architectures using monosurfactant system”,J.Am.Chem.Soc.,123:5150−5151;及びManna等(2000年),“Synthesis of Soluble and Processable Rod−,Arrow−,Teardrop−,and Tetrapod−Shaped CdSe Nanocrystals”,J.Am.Chem.Soc.,122:12700−12706に記載されている。ナノ粒子の合成については、例えば下記文献に記載されている。Clark Jr.等(1997年11月25日)“Method for producing semiconductor particles”と題するUSPN 5,690,807;El−Shall等(2000年10月24日)“Nanoparticles of silicon oxide alloys”と題するUSPN 6,136,156;Ying等(2002年7月2日)“Synthesis of nanometer−sized particles by reverse micelle mediated techniques”と題するUSPN 6,413,489;Liu等(2001年),“Sol−Gel Synthesis of Free−Standing Ferroelectric Lead Zirconate Titanate Nanoparticles”,J.Am.Chem.Soc.,123:4344。ナノ粒子の合成については、前記ナノ結晶、ナノワイヤー及び分岐ナノワイヤーについての文献にも記載されている。
【0088】
芯−殻ナノ構造、例えばナノ構造ヘテロナノ構造の合成については、例えば下記文献に記載されている。Peng等(1997年),“Epitaxial growth of highly liminescent CdSe/CdS core/shell nanocrystals with photostability and electronic acessibility”,J.Am.Chem.Soc.,119:7019−7029;Dabbouski等(1997年),“(CdSe)ZnS core−shell quantum dots:Synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrystallites”,J.Phys.Chem.B 101:9463−9475;Manna等(2002年),“Epitaxial growth and photochemical annealing of graded CdS/ZnS shells on colloidal CdSe nanorods”,J.Am.Chem.Soc.,124:7136−7145;及びCao等(2000年),“Crowth and properties of semiconductor core/shell nanocrystals with InAs cores”,J.Am.Chem.Soc.,122:9692−9702。同様なアプローチは、他の芯−殻ナノ構造の成長に利用できる。例えば“Highly luminescent color−selective materials”と題する、Bawendi等(2001年3月27日)USPN 6,207,229及び同(2001年11月27日)USPN 6、322、901参照。
【0089】
異なる材料がナノワイヤーの長軸沿いの異なる位置で分布しているナノワイヤーヘテロ構造を有する均質集団のナノ繊維の成長については、例えば下記文献に記載されている。PCT出願公開No.WO 02/17362及び同WO 02/080280;Gudiken等(2002年),“Crowth of nanowire superlattice structures for nanoscale photonics and electronics”,Nature 415:617−620;Bjork等(2002年),“One−dimensional steeplechase of electrons realized”,Nano Letters 2:86−90;Wu等(2002年),“Block−by−block growth of single−crystalline Si/SiGe superlattice nanowires”,Nano Letters 2:83−86;及びEmpedoclesの“Nanowire heterostructures for encoding information”と題するUS特許出願60/370,095(2002年4月2日)。同様なアプローチは、他のヘテロ構造の成長及びここでの各種方法及びシステムに利用できる。
【0090】
本発明は、通常のナノ構造の大きさの範囲外であってよい構造と任意に併用できる。例えばHaraguchi等(USPN 5,332,910)は、ここで任意に使用されるナノウイスカーについて説明している。半導体ウイスカーについては、下記文献にも記載されている。Haraguchi等(1994),“Polarization Dependance of Light Emitted from GaAs p−n junctions in quantum wire crystals”,J.Appl.Phys.75(8):4220−4225;Hiruma等(1993),“GaAs Free Standing Quantum Sized Wires”,J.Appl.Phys.74(5):3162−3171;Haraguchi等(1996),“Self−Organized Fabrication of Planar GaAs Nanowhisker Arrays,及びYazawa(1993)”Semiconductor Nanowhiskers“,Adv.Mater.,5(78):577−579。このようなナノウイスカーは、本発明表面のナノ繊維成分として任意に採用される。
【0091】
ナノ繊維の製造法の一例は、変性パルスレーザー融除/化学蒸着(PLA−CVD)を用いてナノ繊維(例えばナノワイヤー)を製造する、Wuに記載の方法に見られる。また、この例示が本発明の超疎液性ナノ繊維の一方法に過ぎず、限定とみなすべきではないことを強調するものである。このような方法では、金の薄層を被覆したシリコンウエーハを、基体としての石英炉管内に入れる。次にHとSiClとのガス混合物を反応管中に連続的に導入する。高温で溶剤として金による変性した蒸気−液体−固体機構によりナノ繊維の成長が起こる。
【0092】
このナノ繊維成長法は、金属溶剤からなるナノサイズの液滴にガス状反応剤が溶解して始まり、次いで単結晶性繊維の核が形成され、成長する。繊維軸沿いに高度に結晶性で凝集性(coherent)の界面を維持しながら、ナノメーターレベル又は更には原子レベルで正確な組成分布及び界面を制御することは、異なる蒸気源の連続的供給により可能である。混合構成のナノ繊維、例えばSi/SiGeナノワイヤーを合成するには、Ge蒸気を、周波数を倍増したレーザーによる純粋なGe標的のパルス融除によりパルス形態で任意に発生させる。
【0093】
このようなナノワイヤー製造法では反応温度は、通常、約850〜約950℃の範囲である。この温度で金の薄膜は、珪素と共に液体合金を形成し、自発的にナノメーターサイズの液滴に分かれる。珪素種は金−珪素液滴中に連続的に沈着し、ここで過飽和になると、珪素のナノ繊維成長が始まる。この成長過程中、レーザーをつけると、Ge蒸気が発生し、こうしてGe及びSiの両種は合金の液滴中に沈着する。次にこのSiGe合金は、固体/液体界面から沈殿する。ナノワイヤーの組成を変えるため、ドーパント及び/又はガスを変えることができる(例えばSiGeの代る他の合金も可能である)。
【0094】
珪素を含む前記例は通常の実施態様であるが、また前述のように、他の材料も任意に使用できる。例えばシリコン基体は、限定されるものではないが、周期表の第II、III、IV、V又はVI族から選ばれた1種以上の金属、それらの組合わせ及び/又は合金を含む他の材料(例えば無機材料)と取り替えることができる。更にドーパントは、限定されるものではないが、周期表の第II、III、IV、V又はVI族から選ばれた1種以上の金属、それらの各種組合わせ及び/又は合金を含む材料であり得る。
【0095】
ナノ繊維の大きさ(例えば直径)及び/又は形状は、基体上の金(又は他の触媒)液滴の大きさにより任意に測定できる。コロイド状触媒(例えば前記Gudiksen等参照)を使用すると、ナノ繊維の直径及び均一性の制御を著しく向上することが判った。触媒液滴の大きさは、基体上の金触媒又は他の触媒液滴の選択的沈着によっても変えられる(例えば分子ビーム法、平版印刷法等により)。同様に、基体上のナノ繊維の分布は、基体上の金触媒又はその他の触媒の分布により管理できる。
【0096】
好ましい実施態様では、製造方法がどうであっても、ナノ繊維は、通常、“固体”ナノ繊維、即ち、中空芯のないナノ繊維を含有することは注目されよう。したがって、ナノ繊維は、通常、炭素のナノ小管又はナノチューブとは構造的に類似しないことが好ましい。前記参照。
【0097】
更に本発明のナノ繊維は、前述のように、一般にナノ繊維にとって所望の基体上で現場製造できるが、本発明のナノ繊維を例えば前述の方法又は同様な方法で第一基体上で任意に成長させ、次いで1つ以上の第二の基体表面に移行できる。例えば本発明のナノ繊維は、シリコンウエーハ上で成長したナノ繊維をシリコンウエーハからガラス容器の内壁に移すことができる。ナノ繊維の“被覆”に用いた外生的疎液性材料、例えばシラン等は、このように第二表面に移行する前でも或いは移行した後でも任意に沈着する。
【0098】
ナノ繊維を一表面(例えばナノ繊維が成長した表面)から第二の表面(例えばナノ繊維を使用する表面)に移す実施態様では、ナノ繊維は、多数の方法のいずれかで任意に“収穫”できる。当業者ならば、これらの繊維移行法が限定とはみなされないことは理解されよう。例えば第一表面のナノ繊維層に粘着性被覆又は材料を塗布し、次いでこの被覆/材料を第一表面から引き剥がすことにより収穫できる。次に任意に、この粘着性被覆/材料を第二の表面に押し当て、ナノ繊維を沈着させる。このような移行に任意に使用される粘着性被覆/材料としては、限定されるものではないが、例えばテープ(例えば3M Scotch(登録商標)テープ)、磁気ストリップ、硬化性セメント(例えばゴムセメント等)等が挙げられる。他の方法としては、ナノ繊維上に重合体材料を注型してシートを形成し、これを引き剥がす方法がある。次にこのシートを第二の表面に移す(任意に引き続き選択的エッチングにより重合体を除去する)。更に幾つかの実施態様は、第二の表面にナノ繊維のスラリー又は溶液を被覆又は塗装する工程を含む。ここで溶液の濃度は、所望のナノ繊維密度を得るのに十分高い濃度である。これらの実施態様では、ナノ繊維が第二表面に沈着した後、又はこのような移行/沈着を行う前に、ナノ繊維に疎液性被覆を任意に塗布できる。
【0099】
疎液性被覆
通常の実施態様では、本発明の超疎液性ナノ繊維は、外生的疎液性材料(例えば疎水性材料、疎油性材料、両疎媒性材料等)を含有する。通常、このような材料は、本発明ナノ繊維の“被覆”形態を取る。しかし、他の実施態様では、ナノ繊維は、ナノ繊維全体を覆う薬品の層又は被覆を有するという慣用的な意味では被覆されていない。例えば幾つかの実施態様は、ナノ繊維の表面を任意に変化させて、超疎液性にするが、慣用的な意味ではナノ繊維の表面を被覆又は包囲しない成分(例えば薬品、レーザー、周囲条件への暴露等)で本発明のナノ繊維を処理する工程を含む。このような幾つかの実施態様では、ナノ繊維の変化した表面は、被覆と言える。
【0100】
しかし、通常の実施態様では、ナノ繊維の芯、例えば繊維自体、通常はシリコン繊維自体が疎液性被覆の足場等として働く。例えば図7参照。当業者ならば、本発明がナノ繊維と関連する疎液性局面の種類によって限定されないことは理解されよう。換言すれば、疎液性被覆(超疎液性が得られる非化学的処理に含まれる工程でさえ;前記参照)の実際の化学組成等は、必ずしも限定とみなすべきではない。このような被覆等は、多くのパラメーター、例えば反発すべき液体、ナノ繊維の使用条件、コスト、塗布の容易性、毒性、ナノ繊維の最終用途、耐久性等の基づいて任意に変化及び/又は選択されるが、これらは全て本発明のパラメーターの範囲内である。
【0101】
幾つかの実施態様では、本発明のナノ繊維は、疎液性化合物の多数被覆で構成されるか、或いは疎液性を付与する多数処理により構成される。更に他の実施態様では、ナノ繊維に対し、それ自体で超疎液性を生じないが、本発明ナノ繊維の最終超疎液性を誘導する方法において中間物となる化合物及び/又は処理で処理/被覆を施す。
【0102】
また幾つかの実施態様では、本発明の超疎液性ナノ繊維は、単離状態か、又は本発明ナノ繊維の一成分として存在しない場合、疎液性が全くないか、或いは弱い疎液性しかないことも理解されよう。したがって、換言すれば、超疎液性は、ナノ繊維と、これらナノ繊維と関連する外生的局面(例えば化学的被覆、塗布等)との組合わせだけで生じる。
【0103】
本発明で使用できる疎液性化合物の例を第1表に示す。また、このような例示は単に説明の目的だけで、必ずしも本発明を制限するものとみなすべきではない。表面処理に使用され、疎液性であり、かつ任意にナノ繊維と併用される他の化合物例は、当業者に周知である。例えば表示の疎液性化合物(例えば疎水性、疎油性、両疎媒性化合物等を含む)は、例えばUnited Chemicals、Sigma−Aldrich等の薬品カタログのような普通の商用源に見られる。例えば幾つかの実施態様では、ナノ繊維は、メチル化(例えばメチル化剤等での処理による)弗素化、フルオロアルキルシラン基による処理等がされている。幾つかの実施態様は、例えばテフロン(登録商標)、珪素重合体(例えばHydrolam 100(登録商標))、ポリプロピレン、ポリエチレン、ワックス(例えばアルキルケテン二量体、パラフィン、フルオロカーボンワックス等)、プラスチック(例えばアイソタクチックポリプロピレン等),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シラン剤で処理して作った化合物、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、パーフルオロドデシルトリクロロシラン、ポリビニリデンフルオリド、アクリル酸ポリパーフルオロアルキル、オクタデカンチオール、弗素化合物(例えば弗化グラファイト、弗素化モノアルキルホスフェート、C等)、のナノ繊維被覆を含む。各種実施態様に任意に使用される他のサンプル外生的化合物(それ自体被膜として、或いは被膜を形成するため)第1表に見られる。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
前述のように、幾つかの実施態様は、酸化チタン、又は酸化チタンと他の材料との混合物からなるナノ繊維を含有できる。或いは及び/又は更に、幾つかの実施態様は、酸化チタン、又は酸化チタンの混合物からなる外生的被覆も含有できる。このような化合物は、酸化チタンを異なる割合、例えば1%以下〜約20%、約2%以下〜約15%、約3%以下〜約10%、約4%以下〜約5%で含有できる。酸化チタンを含む外生的材料は、酸化チタンを含むナノ繊維又は酸化チタンを含まないナノ繊維と連携(associate)できることは理解されよう。特定の作用様式に限定されるものではないが、このような酸化チタン外生的材料は、紫外光及び汚染粒子と相互作用し、こうして超疎液性表面を清浄に保持する等と考えられる。
【0107】
使用/利用法
本発明の超疎液性表面は、非常に多くの異なる用途に任意に使用される。基本的には超疎液性表面を所望するかどうかで本発明は任意に利用できる。したがって、ここで請求し、説明した用途/方法は、例示であり、限定されないことは理解されよう。こうして、これらナノ繊維及び/又はその利用を含む他の説明しなかった用途/方法も本発明の特徴である。ナノ繊維表面の、例えば医療用への他の多数の使用例については、例えば以下の文献に見られる。いずれも“Nanofiber Surfaces for use in Enhanced Surface Area Applications”と題するUSSN 60/468,390(2003年5月6日出願)、USSN 60/468,606(2003年5月5日出願)、USSN 10/792,402(2004年3月2日出願);“Medical Device Applications of Nonostructured Surfaces”と題するUSSN 60/549,711(2004年3月2日出願);“Porous Substrates,Articles,Systems and Compositions comprising Nanofibers and Methods of Their use and Production”と題するUSSN 60/541,463(2004年2月2日出願);及び“Superhydrophobic Surfaces,Methods of Their Construction and Uses Thereof”と題するUSSN 60/466,229(2003年4月28日出願)。これらの文献はあらゆる目的のため、全体をここに援用した。
【0108】
本発明の超疎液性ナノ繊維表面は、容量損失又は容量保持を最大関心とする容器(例えば薬剤用又は高価な液体用)に任意に採用できる。例えば本発明のナノ繊維表面を有する薬剤配送装置は任意に製造できる。また小容量の各種装置(例えば細管及び/又はミクロ流動装置)も流体の保留を防止/低減したり、流体の引きずりを防止/低減する等のため、本発明のナノ繊維基体で任意に被覆される。
【0109】
本発明の有用な各種用途は、基体表面の水又はその他の液体を表面から容易に落とし又は滑らせる本発明基体の能力に依存する。例えば表面を液体で連続的又は規則的に溢流させる場合、本発明の基体は、この表面上のいかなる粘稠な引きずり又は流体摩擦も実質的に低下させるのに使用できる。少なくとも1つの実施態様では、流体導管は、このような導管による流体の引きずりを少なくし、こうして導管にポンプ送りするのに必要な動力を劇的に低下させるため、本発明の表面を備える。同様に水上又は海上用船舶は、水との界面点、例えばボートの船体上に本発明の表面を備えることができる。このような引きずり減少は、船舶の効率を劇的に増加させ、速度、燃料効率等を高める。以上説明した材料は、その場、例えば導管の壁上で任意に作られ、又は第二の表面、例えばボートの船体に移されるので、このような用途及びその他の多数の用途に容易に利用できる。
【0110】
更に本発明は、鏡、窓、窓覆い等の表面に、はつ液剤として任意に使用して、水及び/又は雪又は氷をはじくことができる。こうして幾つかの実施態様では、ナノ繊維構造は、ナノ繊維被覆基体を通して見るため、透明、半透明、やや不透明、半不透明等である。更にこれら及び他の実施態様では、ナノ繊維表面は、表面上の液体(例えば水)ビーズの移動により、任意に自浄できる。こうして、これらのビーズは、ナノ繊維表面を傷つけたり蓄積する沈着汚れを任意に引き揚げること等が可能である。
本発明の他の用途は、食材の付着を防止すると共に、調理容器をきれいにしやすくするため、調理機具、例えばポット、パン、調理容器等に使用することが挙げられる。当業者ならば、現在の調理器具のテフロン(登録商標)被覆によるような同様の用途について熟知している。
【0111】
本発明の他の用途は、構造物への雪又は氷の付着を防止及び/又は低下させるのに使用することが挙げられる。例えば航空機表面、特に翼及び安定器表面の氷は、上昇及び/又は制御の損失を生じる可能性がある。陸上の航空機は、離陸前に氷を除去しなければならないし、また飛行中の航空機は、着氷条件を避けるか、或いは機上に着氷又は氷結防止器を備えなければならない。本発明の超疎液性表面は、液体で“濡れ”ないので、このような氷結を防止するのに任意に使用される。幾つかの実施態様では、機体表面に任意に送風(任意に加熱空気)する。他の実施態様では、機体表面自体も加熱する。現在、幾つかの飛行機の機体も加熱されているが、超疎水性は備えることにより、ナノ繊維と接触した氷を溶かすだけでよく、しかも表面の超疎水性が不溶解の氷を容易に除去できるので、必要な熱量は任意に少なくなる。機体以外の他の表面も氷/雪のない状態にしておく必要がある。アンテナ、通信用皿型板(dish)、道路標識、屋根のひさし、とい、自動車の窓/鏡等、いずれも任意に本発明の超疎液性ナノ繊維により利益を受ける。
本発明は織物の製造(例えば耐汚染布等の製造、又は細胞及び/又はバクテリアの成長を防止する各種織布又はその他の織物フォーマット医療機器)に任意に使用できる。例えば織布又は不織布の雨用具(例えばレインコート等)も任意に本発明の超疎水性ナノ繊維を含有できる。
【0112】
本発明は美的面にも大きな用途がある。彫刻、図形文字書き入れ(graphic lettering)、玩具、消費財等は、いずれも任意に本発明の局面を利用できる。例えば本発明の超疎液性表面からなる図形文字書き入れは、噴水に書き込みするのに任意に使用される。
【0113】
廃棄物池や地下貯蔵槽の障壁層のような構造物を含む利用も考えられる。廃棄物池は、通常、毒物の地下への浸出を防止するため、粘土のような不浸透層でライニングされている。地下槽は、同じ目的から2重壁を必要とする。本発明の超疎液性材料は、膜(例えばプラスチックシート)の表面に任意に使用されるか、或いは強靭な不浸透層を形成するため、他の材料(例えば粘土又はコンクリートの障壁)のような他の材料と任意に混合される。同様な用途は、水路/水道の漏れが大きな関心事である所で水の輸送を援助するため、水路や送水管等をライニングすることによっても任意に生じる。
【0114】
本発明は、建材にも任意に利用される。例えば、前述のように、本発明の超疎液性ナノ繊維は、氷及び/又は雪の蓄積防止/低下を援助するため、屋根板、とい等に任意に塗布できる。更にこの超疎液性材料は、水の侵入(例えば、とい、羽目板、ハウスラップ(house−wrap)、地下コンクリート地盤等)を防止するため、任意に建材に取り込まれる。このような材料は、任意に空気及び/又は水蒸気のガス相通路となるが、水の侵入を防止する。同様な用途では、湿気の多い所でカビ/白カビの生成を防止する耐汚染表面が任意に得られる。超疎液性材料は、例えば台所(特に商業用の台所)、エンジン(例えば自動車、発電機等)、或いはその他、油及び/又はグリースが蓄積する可能性のある所で溜まったグリース/油を減らすか除去するのにも任意に使用される。したがって、本発明の実施態様は、液体(例えば水、グリースのような油性類(lipid)等)の或る領域への侵入を防止/低減するのに使用できる。
【0115】
本発明の他の用途は、液体/気体と基体表面間に閉じ込められた気体/液体(例えばナノ繊維間に分散した気体/液体とナノ繊維上に配置した気体/液体)の層を任意に使用することである。例えばこれら2つの媒体間の交換が任意に起こり得る。このような交換は、媒体(例えば該気体又は液体)中の各種化合物、成分等であり得るし、或いは熱交換であり得る。以下参照。幾つかの実施態様では、ナノ繊維基体は、多孔質層を有し、これによりナノ繊維層とは反対側の基体上の媒体流(又はその成分)は、基体及びナノ繊維層中に拡散し、他方の媒体に達する。基体が気体/液体に不浸透性である実施態様では、流れは、ナノ繊維基体の表面及び例えばナノ繊維間の隙間領域内のナノ繊維自体間の“流れ”と平行であり得る。このような交換のための用途としては、任意に、例えば人工肺(例えば液体として血液及び中に拡散する気体として空気又は酸素)、化学反応器、バイオ反応器(例えば拡散種としてO及びCOにより)、下水処理等が任意に挙げられる。
【0116】
本発明はプラテン印刷にも任意に使用される。例えば疎液性領域を超疎液性領域で包囲してなるパターンは、所望のパターン状でインクを印刷又は移行する方法を任意に提供できる。インクは、慣用の顔料ばかりでなく、例えば配列の順序付け用オリゴヌクレオチド、マクロ電子配列への沈着用ナノ繊維懸濁液も任意に含有できる。このインクは、疎液性領域にそれ自体を位置決めする傾向がある(即ち、超疎液性領域ではじかれる)。このような位置決めは、普通、疎水性領域及び親水性領域のパターンによって行われる。しかし、疎液性/超疎液性パターンを用いると、疎液性領域はインクにより殆ど汚染されず、また各種異なる化合物で殆ど相互汚染なく、繰り返し使用できるという利点が得られる。しかし、単に疎液性領域及び超疎液性領域よりもむしろ、他の実施態様は、疎水性領域、疎油性領域、両疎媒性領域、超疎水性領域、超疎油性領域及び超両疎媒性領域の各種パターンの組合わせを含むことができる。例えば幾つかの実施態様は、任意に超疎水性及び超疎油性領域等のパターンを任意に含むことができる。プラテンのパターン化は、ナノ繊維の均一場をレーザー融除した後、疎液性表面を均一に処理することにより任意に行われる。こうして、ナノ繊維が残存する超疎液性表面の他に、ナノ繊維のない疎液性表面が生成する。。したがって、本発明の局面は、超疎液性ナノ繊維表面を用意し、該表面領域内の1つ以上の所定領域をエッチング又は除去し(こうして、超疎液性基体のパターン領域とナノ繊維を含まない裸表面のパターン領域とを作製する)、次いでこの基体を第二の基体と接触させ、こうして裸表面のパターン領域に対応するパターン状で第二基体にインク又は染料等を移行させることによる印刷法を含み得る。また本発明は、1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維(例えば非炭素及び/又は固体及び/又は結晶性ナノ繊維)を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意し、これにより超疎液性基体を作製し、該表面領域内のナノ繊維の1つ以上の所定領域をエッチング又は除去することにより超疎液性基体のパターン領域とナノ繊維を含まない裸表面のパターン領域とを作製することによる表面のパターン化法も含み得る。
【0117】
本発明の他の任意の用途は、非汚染性ボイラー又は熱交換器の製造を含む。液体を含む熱交換器は、局部的な沸騰が器壁の欠陥部で起こると、非常に効率的に働く。蒸発熱は、通常、液体の熱容量よりもかなり大きい。いったん気泡が十分大きく成長すると、気泡は表面から分離して、その熱を作動流体の塊に伝達する。ぎっしり詰めたナノ繊維表面は、局部煮沸のための欠陥部又は核形成部位が豊富であるとみなし得る。更に、ナノ繊維の超疎液性によって、液体の接触が壁自体で殆ど起こらないことが保証される。こうして、熱交換器は汚れた液体によっても殆ど汚染されない。しかも、苛性又は腐蝕性の材料は、交換器の壁に問題になる程、多く存在しない。壁上のナノ繊維は、有用な凝縮器(例えば作動流体から熱を伝達するための熱交換器)表面を作るための滴核形成部位も任意に含み得る。この超疎液性表面は、汚染物の成長を阻止する傾向もある。
【0118】
本発明の更に他の実施態様では、超疎液性ナノ繊維表面は光特性用にも利用できる。例えば超疎液性ナノ繊維表面は水性液体に含浸できる。ナノ繊維間に閉じ込められた/含まれる空気の層(例えばナノ繊維間の隙間空間内)は、表面を観察者から或る角度(例えば45度)回転させると、反射性となり得る。同様な装置は、異なる液体及び非親和性(phobicity)により任意に作製される。このような気体を閉じ込めた薄層は、音の減衰、低吸着容器、低接着細胞成長層及び低抵抗流体流層にも利用できる。前記参照。
【0119】
以上、本発明の超疎液性ナノ繊維及びナノ繊維構造物の各種用途/利用について説明した。また特定の実施態様を列挙したが、本発明の超疎液性ナノ繊維/ナノ繊維構造を含むが、説明しないその他の用途/利用について必ずしも限定とみなすべきではない。当業者ならば、ここでの超疎液性ナノ繊維表面及び方法の他の可能な利用及び用途を理解されよう。
【0120】
幾つかの実施態様では、本発明は、本発明の基体を任意に有する、ここで説明した方法を実施するためのキットを提供する。各種実施態様では、このキットは、前述のような超疎液性基体、又は超疎液性基体を有する装置の1つ以上を含む容器を備える。
【0121】
キットは、いずれかの必要な試薬、デバイス、措置、及び超疎液性ナノ繊維を作るため、或いはナノ繊維構造を作るため、追加使用される材料も含有できる。
【0122】
更にキットは、超疎液性ナノ繊維構造を合成、及び/又は被覆、及び/又は使用するための指令書(即ち、プロとコール)を含む指示資料を任意に含有できる。指示資料は資料書(例えば印刷資料、CDに保存した資料、コンピュータディスケット、DVD等の形態で)、及び適切な指示を含むインターネットサイトへのアクセスを含有できる。好ましい指示資料は、キットの内容物(例えばここで説明したアッセイ/方法/用法のいずれかを行うため)を使用するためのプロとコールを与える。
【0123】
特定の実施態様では、指示資料は、例えば液体の輸送/貯蔵装置、防氷/防水装置のような1つ以上の装置の製造において、本発明のナノ繊維基体の用法を教示する。
【実施例1】
【0124】
実施例
例1:超疎液性ナノ繊維の作製
酸化物表面を有する4インチのシリコンウエーハの表面にシリコンナノ繊維(ここではナノワイヤー)を作った。ナノワイヤーは、金コロイド開始CVD法で成長させた。ワイヤーの長さは、数μ〜約100μに変化させた。ワイヤーの幅は、約500nmであった。この表面に水滴を迅速にうまく塗布すし、ナノワイヤー間の気泡が充満するまで広げた。
【0125】
同様なウエーハを2つの方法で処理した。第一に、ナノワイヤー含有ウエーハをTri−Sil(登録商標9(Pierce Chemical)中に2時間浸漬し、次いでDMF及びエタノール及び水で洗浄した。次にウエーハを送風乾燥した。第二のウエーハ(5cmのもの)を1%トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシランのクロロホルム溶液に浸漬した。第二ウエーハを新しいクロロホルムで洗浄し、送風乾燥した。
【0126】
これら2つのウエーハ上に水滴をピペットで滴下した。両例とも、水は球となり、自由に転がった。本発明の同様なナノワイヤー表面を説明するため、図10及び図11に本発明の弗素化ナノワイヤー表面上の水滴を示す。図10、11に見られるように、水滴は非常に大きな接触角を示す(接触角の詳細については前記参照)。図11では、水滴の周りに円形の線が引かれ、液滴の形状、及び液滴と液滴が留まるナノワイヤー表面との接触点1100を見やすくしている。比較のため、図8及び図9に他の疎液性表面上の液滴を示す。図8では、多孔質テフロン(登録商標)テープ上の液滴が接触点800での接触角、即ち、180度未満を示す。図8でも円形線が引かれ、液滴及び接触角を見やすくしている。図9の円形可視化線は僅かにオフセットしているが、表面接触点900は図10、11に比べて鮮明度がかなり落ちるが、なおはっきり見られる。図12〜14は、本発明ナノワイヤー表面上の液滴の顕微鏡写真を示す。図13、14では、本発明の幾つかのナノ繊維(ここではナノワイヤー)が液滴を通して見られる(即ち、この図は液滴の頂部から、下のナノ繊維表面を見下ろしている)。
【0127】
例2:超疎水性ナノワイヤー基体の作製−傾斜テスト
例1の第二の局面で作った5cmウエーハ基体(即ち、弗素化モノマーで機能化したウエーハで、ナノワイヤーは、この弗素化モノマーで“被覆”されている)を1.9度の角度で置いた。30μlの水滴をウエーハの高い方の端部に置いた。水滴は3秒以内でウエーハの反対端部に転げ落ちた。したがって、滑り角度は2度未満である。鉱油の油滴もウエーハの高い方の端部に置くと、同様に反対端部に滑り落ちた。したがって、この処理ウエーハが超両疎媒性であることを示している。
【0128】
例3:超疎水性ナノワイヤー基体の移行
Scotch(登録商標)透明テープ(3M)の1インチ片を、例1のTri−Sil(登録商標)処理ナノワイヤーウエーハに張り付けた。このテープを手でウエーハからゆっくり引き剥がした。可視検査すると、ウエーハの茶色の被覆ナノ繊維は、テープ片の表面に移行していた。テープ片に塗布した水滴は、例1の水滴と同様、ビーズ化して、テープを転がり落ちた。したがって、処理ナノワイヤーは、ナノワイヤーが成長した表面から第二の表面に移行することが判る。重要なことは、処理ナノワイヤーの超疎液性が第二表面にも移行させることである。
【0129】
以上、本発明を明確化及び理解の目的で、幾らか詳細に説明したが、当業者ならば、この開示を読めば、本発明範囲を逸脱しない限り、形式及び詳細の各種変化が可能であることは明らかであろう。例えば以上説明した技術及び装置の全ては、種々組合せて使用できる。本出願で引用した特許、特許出願又はその他の文献は、各刊行物、特許、特許出願又はその他の文献があらゆる目的で援用するよう指示したのと同様に、あらゆる目的のため、全体を援用した。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】液滴と基体表面との相互作用を示す概略図である。
【図2】液滴と疎液性基体表面との相互作用を示す概略図である。
【図3】液滴と超疎液性基体表面との相互作用を示す概略図である。
【図4】液滴と粗面化基体表面との相互作用を示す概略図である。
【図5】本発明に組込み可能な一例のナノ繊維基体の写真図である。
【図6A】液滴及び本発明のナノ繊維基体を示す概略図である。
【図6B】液滴及び本発明のナノ繊維基体を示す概略図である。
【図7】本発明の被覆した超疎液性ナノ繊維の概略図である。
【図8】多孔質テフロン(登録商標)上の液滴を示す写真図である。
【図9】弗素化シリコン表面上の液滴を示す写真図である。
【図10】本発明の弗素化ナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【図11】本発明の弗素化ナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【図12】本発明のナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【図13】本発明のナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【図14】本発明のナノ繊維表面上の液滴を示す写真図である。
【符号の説明】
【0131】
100 液滴
110 広がった液滴
120 基体
200 液滴
210 基体
300 液滴
310 基体
400 液滴
410 粗面基体
600 液滴
610 ナノ繊維
620 基体
630 液滴
640 ナノ繊維
650 基体
700 基体
710 ナノ繊維
720 外生的疎液性材料の被覆
800 接触点
900 接触点
1100 接触点
θ 接触角
b 粗面
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一表面と、1種以上の外生的疎液性材料を含む複数のナノ繊維とを含有する超疎液性基体。
【請求項2】
前記ナノ繊維が非炭素材料を含む請求項1に記載の基体。
【請求項3】
前記ナノ繊維がシリコンを含む請求項1に記載の基体。
【請求項4】
前記ナノ繊維が固体ナノ繊維を含む請求項1に記載の基体。
【請求項5】
前記ナノ繊維が結晶性ナノ繊維を含む請求項1に記載の基体。
【請求項6】
前記ナノ繊維の表面密度が10μ当り約1のナノ繊維〜1μ当り約200以上のナノ繊維である請求項1に記載の基体。
【請求項7】
前記ナノ繊維の表面密度が1μ当り約10のナノ繊維〜1μ当り約100以上のナノ繊維である請求項1に記載の基体。
【請求項8】
前記ナノ繊維の表面密度が1μ当り約25のナノ繊維〜1μ当り約75以上のナノ繊維である請求項1に記載の基体。
【請求項9】
前記ナノ繊維の第一表面の被覆率が約0.01〜約50%である請求項1に記載の基体。
【請求項10】
前記ナノ繊維の第一表面の被覆率が約0.5〜約30%である請求項1に記載の基体。
【請求項11】
前記ナノ繊維の第一表面の被覆率が約5〜約15%である請求項1に記載の基体。
【請求項12】
前記ナノ繊維の第一表面の被覆率が約1%である請求項1に記載の基体。
【請求項13】
前記ナノ繊維の長さが約1〜約200μである請求項1に記載の基体。
【請求項14】
前記ナノ繊維の長さが約10〜約125μである請求項1に記載の基体。
【請求項15】
前記ナノ繊維の長さが約1〜約50又は約100μである請求項1に記載の基体。
【請求項16】
前記ナノ繊維の直径が約5nm〜約1μである請求項1に記載の基体。
【請求項17】
前記ナノ繊維の直径が約40〜約200nmである請求項1に記載の基体。
【請求項18】
前記ナノ繊維の直径が約75〜約100nmである請求項1に記載の基体。
【請求項19】
前記ナノ繊維の高さ対直径アスペクト比が約2:1〜約40:1又はそれ以上である請求項1に記載の基体。
【請求項20】
前記ナノ繊維の高さ対直径アスペクト比が約5:1〜約30:1又はそれ以上である請求項1に記載の基体。
【請求項21】
前記ナノ繊維の高さ対直径アスペクト比が約10:1〜約20:1又はそれ以上である請求項1に記載の基体。
【請求項22】
前記表面がシリコン、ガラス、透明基体、半透明基体、やや不透明基体、石英、プラスチック、金属、重合体、TiO、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe、AlS、AlP、AlSb、SiO、SiO、炭化珪素、窒化珪素、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、芳香族重合体又は脂肪族重合体を含有する請求項1に記載の基体。
【請求項23】
前記外生的材料が1種以上の疎水性材料、疎油性材料又は両疎媒性材料を含む請求項1に記載の基体。
【請求項24】
前記外生的材料がテフロン(登録商標)、Tri−sil,トリデカフルオロ1,1,2,2,テトラヒドロオクチル−1−トリクロロシラン、弗化物含有化合物、シラン含有化合物、PTFE、ヘキサメチルジシラザン、脂肪族炭化水素含有分子、芳香族炭化水素含有分子、ハロゲン含有分子及びパラリエンよりなる群から選ばれた1種以上の材料を含む請求項1に記載の基体。
【請求項25】
前記基体上の液滴が少なくとも約160〜約179.5°以上の接触角を示す請求項1に記載の基体。
【請求項26】
前記基体上の液滴が少なくとも約170〜約179.5°以上の接触角を示す請求項1に記載の基体。
【請求項27】
前記基体上の液滴が少なくとも約175〜約179.5°以上の接触角を示す請求項1に記載の基体。
【請求項28】
前記基体上の液滴が少なくとも約178〜約179.5°以上の接触角を示す請求項1に記載の基体。
【請求項29】
前記ナノ繊維が少なくとも第一表面上で成長したナノ繊維を含む請求項1に記載の基体。
【請求項30】
前記ナノ繊維が第二表面上で成長し、前記第一表面に移行したナノ繊維を含む請求項1に記載の基体。
【請求項31】
少なくとも第一表面と複数のナノ繊維とを含み、基体上の液滴が少なくとも160°又はそれ以上の接触角を示す超疎液性基体であって、該ナノ繊維は1種以上の外生的疎液性材料を含むと共に、約0.01〜約50%の基体表面被覆率を有し、かつ約2:1〜約40:1又は約100:1〜約2000:1の長さ対直径アスペクト比を有する該超疎液性基体。
【請求項32】
請求項1又は25に記載した1種以上の超疎液性基体を有するシステム又は装置。
【請求項33】
1つ以上の液滴を用意する工程、第一表面と外生的疎液性材料を含む複数のナノ繊維とを含有する1種以上の基体を用意する工程、及び該液滴を該1種以上の基体と接触させる工程を含む、1つ以上の液滴と基体との接触角を少なくとも160°にする方法。
【請求項34】
前記液滴が油性及び/又は非油性である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を有する、1つ以上の表面領域を持った基体を用意し、これにより超疎液性基体を形成する工程、及び該基体を第一媒体及び1種以上の第二媒体と物理的に接触させる工程を含む、第一媒体と1種以上の第二媒体との交換方法。
【請求項36】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第一媒体が複数のナノ繊維間に単独で配置され、前記1種以上の第二媒体が複数のナノ繊維の上に単独で配置される請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第一及び第二媒体が気体及び液体よりなる群から選ばれる請求項35に記載の方法。
【請求項39】
交換が熱交換を含む請求項35に記載の方法。
【請求項40】
交換が、第一及び/又は第二媒体内に成分が存在する、第一媒体と1種以上の第二媒体間の1種以上の成分の交換を含む請求項35に記載の方法。
【請求項41】
1種以上の材料で処理した複数のナノ繊維を有する1つ以上の表面領域を持った基体を含むチャンネルを用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該チャンネルに材料を流す工程を含む、チャンネル内の流れ抵抗を低下させる方法。
【請求項42】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記材料が気体、液体又は固体を含む請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記チャンネルがミクロ流動チャンネルである請求項41に記載の方法。
【請求項45】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った壁を有する容器を用意し、これにより超疎液性壁を作製する工程、及び該壁と物理的に接触した被輸送材料を用意する工程を含む、容器中での該材料の残存閉込みを少なくするため、材料を容器中で貯蔵又は輸送する方法。
【請求項46】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記材料が気体、液体又は固体を含む請求項45に記載の方法。
【請求項48】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った基体を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該基体をHO含有の液体又は気体の存在下に0℃以下に冷却する工程を含む、基体への氷の堆積を防止又は低減する方法。
【請求項49】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記基体が航空機の機体、配線又は部品を含む請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記基体が加熱される請求項48に記載の方法。
【請求項52】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの壁を有する容器を用意し、これにより超疎液性容器壁を作製する工程、及び該容器の内容物を1種以上用意する工程を含む、容器からの漏れを防止又は低減する方法。
【請求項53】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記容器が地下貯蔵槽を含む請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記容器の内容物が毒物、廃棄物又は危険物である請求項52に記載の方法。
【請求項56】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を有する部品を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該基体と物理的に接触した水を用意する工程を含む、領域への水の侵入を防止又は低減する方法。
【請求項57】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項56に記載の方法。
【請求項58】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、該表面領域内のナノ繊維の1つ以上の所定領域をエッチング又は除去することにより超疎液性基体のパターン領域とナノ繊維を含まない裸表面のパターン領域とを作製する工程、該裸領域のパターン領域内に優先的に定住する1種以上のインク又は染料を供給する工程、及び該基体を1つ以上の第二基体と接触させることにより裸表面のパターン領域に対応するパターン状で第二基体にインク又は染料を移行させる工程を含むプラテン印刷法。
【請求項59】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項58に記載の方法。
【請求項60】
1種以上の外生的材料で処理した複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意し、これにより超疎液性基体を作製する工程、及び該表面領域内のナノ繊維の1つ以上の所定領域をエッチング又は除去することにより超疎液性基体のパターン領域とナノ繊維を含まない裸表面のパターン領域とを作製する工程を含む、表面のパターン化法。
【請求項61】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項60に記載の方法。
【請求項62】
複数のナノ繊維を含む1つ以上の表面領域を持った少なくとも1つの基体を用意する工程、及び該少なくとも1つの基体上の1つ以上の領域を1種以上の超疎液性材料で、選択されたパターン状に処理することによりパターン化超疎液性基体を作製する工程を含む、表面のパターン化法。
【請求項63】
前記ナノ繊維が固体結晶性ナノ繊維を含む請求項62に記載の方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−512211(P2007−512211A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532490(P2006−532490)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/013131
【国際公開番号】WO2005/005679
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505082822)ナノシス・インク. (32)
【Fターム(参考)】