説明

超短波治療器用導子

【課題】 患部が超短波治療器用導子の幅方向の一方から他方に向けて患部の厚さが増大するような箇所であって、各導子部をそれぞれ当てる患部の接触面が互いに平行でなくても、容易にかつ患部に密着させて固定することができる超短波治療器用導子を提供すること。
【解決手段】 治療器本体の出力端子にそれぞれ接続されて人体の局部に当てる第一及び第二導子部2、3と、第一及び第二導子部2、3を連結する連結部とを備え、第一及び第二導子部2、3から短波または超短波を照射し、第一導子部2と連結部4との接続部に第一折線L1が形成され、第二導子部3と連結部4との接続部に第二折線L2が形成され、第一及び第二折線L1、L2のそれぞれの延長線が互いに交差する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数10〜50MHzの超短波帯の電磁波を人体に照射し、体内に発生する透熱効果により温熱治療を行う超短波治療器に用いられる導子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超短波治療器は、病院や診療所のように術者が患者に超短波治療を施すことを前提としていたため、2つの別個の導子を固定ベルトで人体に装着する構成としていた。しかし、超短波治療を家庭でも受けたいという要望から、導子を患者自身で簡便に装着できるように、一対の導子部を連結部で連結した超短波治療器用導子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この超短波治療器用導子は、一対の導子部が連結部で連結されていると共に固定ベルトを備えている。そして、患部に装着する際は、連結部を屈曲させて一対の導子部を患部に当て、この状態で固定ベルトによって一対の導子部を患部に固定、装着する。このように、一対の導子部を患部に当てた状態を維持するために一方の手が動かしにくいときでも、他方の手で一対の導子部の固定を行うことができる。したがって、患者自身で装着作業を簡便に行うことができる。
【特許文献1】特開2001−46520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の超短波治療器用導子には、以下の課題が残されている。すなわち、従来の超短波治療器用導子では、各導子部が連結部を介して直線状に連結されているので、各導子部の患部への当接面が平行となる。これにより、例えば肩部のように患部の厚さが腕部側の一方から首部側の他方に向けて増大する場合、すなわち患部に当てた際に超短波治療器用導子の幅方向の一方から他方に向けて患部の厚さが増大する場合において、各導子部と肩部との間に隙間が生じ、肩部を各導子部で均等に密着させることが困難となる。したがって、患部に超短波を均等に照射することが困難となる。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、例えば肩部のように、患部が超短波治療器用導子の幅方向の一方から他方に向けて患部の厚さが増大するような箇所であって、各導子部をそれぞれ当てる患部の接触面が互いに平行でなくても、容易にかつ患部に密着させて固定することができる超短波治療器用導子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の超短波治療器用導子は、治療器本体の出力端子にそれぞれ接続されて人体の局部に当てる第一及び第二導子部と、該第一及び第二導子部を連結する連結部とを備え、前記第一及び第二導子部から短波または超短波を照射する超短波治療器用導子において、前記第一導子部と前記連結部との接続部に第一折線が形成され、前記第二導子部と前記連結部との接続部に第二折線が形成され、前記第一及び第二折線のそれぞれの延長線が互いに交差することを特徴とする。
【0006】
この発明では、各導子部と連結部との接続部に形成される各折線が互いに平行とならないように形成されているので、各導子部が互いに平行とならないように各接続部で折り曲げられる。したがって、例えば肩部のように患部の幅が各導子部を当てる幅方向の一方から他方に向けて増大するような箇所であって、患部の接触面が互いに平行でなくても、患部に密着させて固定することが容易にできる。これにより、患部に超短波を均等に照射することができる。
【0007】
また、本発明の超短波治療器用導子は、前記第一及び第二導子部にそれぞれ第一及び第二固定ベルトが設けられ、前記第一及び第二固定ベルトに平面ファスナが取り付けられており、前記第一及び第二固定ベルトが互いに着脱自在であることが好ましい。
この発明によれば、肩部や腕部に装着するときに、各固定ベルトを互いに固定することで超短波治療器用導子をリング形状とし、これを腕部に通すことによって肩部や腕部に装着することができ、片手で患部に超短波治療器用導子を固定することが容易となる。
【0008】
また、本発明の超短波治療器用導子は、前記第一及び第二導子部と前記出力端子とをそれぞれ接続する第一及び第二コードを有し、該第一コードが、前記第一導子部の前記接続部と離間する一端部から前記第一導子部の外方に延出し、前記第二コードが、前記第二導子部の前記接続部と離間する一端部から前記第二導子部の外方に延出していることが好ましい。
この発明によれば、例えば肩部に超短波治療器用導子を固定して治療を行うときに、各コードが肩部の下側から垂下するので、治療操作を阻害することが回避される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超短波治療器用導子によれば、第一及び第二導子部が互いに平行とならないように各接続部で折り曲げられるので、例えば肩部のように第一及び第二導子部を当てる患部の接触面が互いに平行でなくても、容易に密着させて固定することができる。これにより、患部に超短波を均等に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる超短波治療器用導子の一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
本実施形態における超短波治療器用導子1は、図1及び図2に示すように、第一及び第二導子部2、3と、これら第一及び第二導子部2、3を連結する連結部4と、第一及び第二導子部2、3と後述する治療器本体30の出力端子とをそれぞれ接続する第一及び第一コード5、6と、第一及び第二固定ベルト7、8とを備えている。
【0011】
第一導子部2は、図2に示すように、平面視でほぼ矩形状を有する板形状を有しており、超短波を照射する第一電極部材11と、第一電極部材11を覆う第一カバー部材12と、第一電極部材11と第一コード5とを固定する第一コード固定板13とを備えている。
第一電極部材11は、銅などの導体によって構成され、平面視でほぼ矩形状の板状または網状を有している。そして、第一電極部材11は、第一コード5を介して前記出力端子から出力された超短波信号により超短波を照射する。
【0012】
第一カバー部材12は、第一電極部材11及び第一コード固定板13を覆う、例えばポリエステル製のフェルトなどのような布によって構成されている。このように、第一カバー部材12に絶縁性の布を用いることで、患者の皮膚と剛性の高い第一電極部材11との馴染みを良好とすると共に、第一電極部材11を保護して機械的損傷や漏電が発生することを防止している。
第一コード固定板13は、第一電極部材11に固定されたほぼ扇形の板金であって、第一コード5の一端を第一電極部材11に固定する。
また、第二導子部3は、第一導子部2と同様に、第二電極部材21、第二カバー部材22及び第二コード固定板23を備えている。
【0013】
連結部4は、第一及び第二カバー部材12、22と同様に絶縁性の布によって構成されており、平面視で台形を有している。そして、連結部4は、その斜辺と第一カバー部材12の長手方向の一端辺とを縫合し、他の斜辺と第二カバー部材22の長手方向の一端辺とを縫合することによって、第一及び第二導子部2、3を連結している。
連結部4は屈曲自在となっており、連結部4と第一導子部2との接続部に第一折線L1が形成され、連結部4と第二導子部3との接続部に第二折線L2が形成される。この第一及び第二折線L1、L2は、互いに平行となっておらず、互いの延長線が一点で交差する。
【0014】
第一コード5は、2芯の同軸ケーブルであって、一端が第一コード固定板13によって第一電極部材11に固定され、他端が第二コード6と共に治療器本体30の出力端子に接続されている。そして、第一コード5は、治療器本体30の出力端子から出力された超短波信号を第一電極部材11に伝達する。
また、第二コード6は、第一コード5と同様に、治療器本体30の出力端子から出力された超短波信号を第二電極部材21に伝達する。
【0015】
第一固定ベルト7は、その長手方向が第一折線L1とほぼ直交するように、一端が第一導子部2の第一カバー部材12に縫合、固定されている。
また、第二固定ベルト8は、第一固定ベルト7と同様に、その長手方向が第二折線L2とほぼ直交するように、一端が第二導子部3の第二カバー部材22に固定されている。
これら第一及び第二固定ベルト7、8には、マジックテープ(登録商標)などのような平面ファスナが取り付けられており、第一及び第二固定ベルト7、8が互いに着脱自在となっている。
【0016】
この超短波治療器用導子1は、図3に示すような治療器本体30に接続される。この治療器本体30は、発振回路31と、増幅回路32と、電力増幅回路33と、出力整合回路34と、調整手段35と、電源回路36とを備えている。
発振回路31は、出力となる超短波の基本周波数、すなわちISM(Industrial Scientific and Medical equipment)で高周波利用医療機器に割り当てられている周波数、例えば27.12MHzや13.56MHz、40.68MHzで発振を行っている。なお、ISMで高周波利用医療機器に割り当てられている周波数のうち、2.45GHzはマイクロ波と呼ばれ、超短波と比較して高い周波数帯域となっている。
増幅回路32は、発振回路31から出力された信号を十分な電圧に増幅させる。
電力増幅回路33は、増幅回路32の出力信号を規定電力に増幅する。
出力整合回路34は、人体インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの整合調整を取り、出力基本周波数に対する高調波成分を除外すると共に、第一及び第二コード5、6を介して第一及び第二導子部2、3に対し最大効率で電力を供給する。
調整手段35は、容量が可変であるバリアブルコンデンサなどを用いて、出力整合回路34の伝送線路の特性インピーダンスを調整する。
電源回路36は、発振回路31、増幅回路32、電力増幅回路33、出力整合回路34及び調整手段35に電力を供給する。
【0017】
以上説明した超短波治療器用導子1を用いて超短波治療を行う際には、以下のようにして、患部である肩部に装着する。
まず、第一及び第二折線L1、L2に沿って連結部4と第一及び第二導子部2、3とのそれぞれの接続部を折り曲げ、第一及び第二固定ベルト7、8を互いに固定することでリング形状とする。そして、治療する肩部と近接する一方の腕部にリング状とした超短波治療器用導子1を通し、第一及び第二導子部2、3を肩部に当接させて当該肩部を挟む。その後、第一及び第二固定ベルト7、8による固定を調節することで、図4のように、超短波治療器用導子1を装着する。
【0018】
この後、治療器本体30から超短波信号を第一及び第二電極部材11、21に出力して、第一及び第二電極部材11、21から超短波を肩部に照射する。このようにして、超短波治療を開始する。ここで、超短波治療器にかかる負荷インピーダンスは、人体各部の誘電率または損失の相違により異なってくるので、調整手段35を用いて出力整合回路34のインピーダンスを調整して、患部のインピーダンスに整合させる。
【0019】
このように構成された超短波治療器用導子1によれば、第一及び第二導子部2、3が互いに平行とならないように各接続部で折り曲げられるので、肩部のように第一及び第二導子部2、3を当てる患部の接触面が互いに平行でない患部に装着する場合であっても、密着させることが容易にできる。これにより、患部に超短波を均等に照射することができる。
また、第一及び第二固定ベルト7、8を平面ファスナによって着脱自在とすることで、肩部に装着させる際に、超短波治療器用導子1をリング状とした状態で腕部に通すことによって装着できる。これにより、装着作業が簡便化される。
そして、第一及び第二コード5、6がそれぞれ第一及び第二導子部2、3の接続部と離間する一端から延出しているので、肩部に装着したときに第一及び第二コード5、6が肩部の下側から垂下するように配置される。これにより、第一及び第二コード5、6が治療操作を阻害することが回避される。
【0020】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、患部として肩部に固定しているが、腕部や腰など他の部分に固定してもよい。また、第一及び第二導子部2、3で患部を挟み込むようにして装着しているが、第一及び第二導子部2、3を平面状に並べて患部に装着させるようにしてもよい。
また、第一及び第二導子部2、3が平面視で矩形状を有しているが、円形など他の形状としてもよい。
また、連結部4が平面視で台形となっているが、第一及び第二折線L1、L2の延長線が互いに交差するような形状であればよい。
また、第一及び第二固定ベルト7、8に平面ファスナが設けられているが、ボタンなど他の部材によって互いが固定可能に構成されてもよく、設けなくてもよい。
また、第一固定ベルト7の長手方向が第一折線L1と直交し、第二固定ベルト8の長手方向が第二折線L2と直交するように構成されているが、直交しなくてもよい。
また、第一コード5が第一導子部2の接続部と離間する一端から外方に延出し、第二コード6が第二導子部3の接続部と離間する一端から外方に延出しているが、第一及び第二コード5、6の配置位置は適宜変更してもよい。
また、第一及び第二カバー部材12、22にファスナなどを設けることによって、第一及び第二カバー部材12、22と第一及び第二電極部材11、21及び第一及び第二コード固定板13、23とを分離し、第一及び第二カバー部材12、22及び連結部4単体で洗濯できるようにすると、第一及び第二カバー部材12、22や連結部4が汚れても洗濯することで常に清潔な状態に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明によれば、超短波治療器用導子に関して、例えば肩部のように、患部が超短波治療器用導子の幅方向の一方から他方に向けて患部の厚さが増大するような箇所であって、各導子部をそれぞれ当てる患部の接触面が互いに平行でなくても、容易にかつ患部に密着させて固定することができ、産業上の利用可能性が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における超短波治療器用導子を説明する平面図である。
【図2】図1の要部を示す部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における治療器本体を示すブロック図である。
【図4】図1の超短波治療器用導子を患部に装着した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 超短波治療器用導子
2 第一導子部
3 第二導子部
5 第一コード
6 第二コード
7 第一固定ベルト
8 第二固定ベルト
30 治療器本体
L1 第一折線
L2 第二折線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療器本体の出力端子にそれぞれ接続されて人体の局部に当てる第一及び第二導子部と、該第一及び第二導子部を連結する連結部とを備え、
前記第一及び第二導子部から短波または超短波を照射する超短波治療器用導子において、
前記第一導子部と前記連結部との接続部に第一折線が形成され、前記第二導子部と前記連結部との接続部に第二折線が形成され、前記第一及び第二折線のそれぞれの延長線が互いに交差することを特徴とする超短波治療器用導子。
【請求項2】
前記第一及び第二導子部にそれぞれ第一及び第二固定ベルトが設けられ、
前記第一及び第二固定ベルトに平面ファスナが取り付けられており、前記第一及び第二固定ベルトが互いに着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の超短波治療器用導子。
【請求項3】
前記第一及び第二導子部と前記出力端子とをそれぞれ接続する第一及び第二コードを有し、
該第一コードが、前記第一導子部の前記接続部と離間する一端部から前記第一導子部の外方に延出し、
前記第二コードが、前記第二導子部の前記接続部と離間する一端部から前記第二導子部の外方に延出していることを特徴とする請求項1または2に記載の超短波治療器用導子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−20935(P2007−20935A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208703(P2005−208703)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(591032518)伊藤超短波株式会社 (69)
【Fターム(参考)】