説明

超硬合金のリサイクル方法及びその方法に用いられる装置

【課題】Zn分解法を用いた、Co含有量の高い超硬合金のリサイクル方法において、溶融ZnをCoに好適に溶融、拡散して、超硬合金の回収率を向上させることで好適なリサイクルを達成すること。
【解決手段】溶融Znに、主成分をWCとしバインダ成分をCoとする超硬合金の粉粒を溶融、拡散するに際し、Co-Zn状態図の下に、CoとZnとが液相化する温度で、坩堝に収納されている溶融Znを加圧して、超硬合金の粉粒を溶融Znに浸透させ易くし、かつ、上記溶融Znを、上下動又は落下振動させ、坩堝内の溶融Znが超硬合金の粉粒に良好に溶融、拡散されるように対流させる。その結果、従来よりも大幅に溶融ZnがCoに溶融、拡散され、超硬合金の粉末の回収率が向上し好適なリサイクルが行われるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超硬合金をリサイクルするための方法及びその方法に用いられる装置に関し、代表的には、超硬合金のうち、バインダとなるCo含有率の高い、WCを主成分とする超硬合金を、リサイクルするための方法及びその方法に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に開示されている、スクラップとなった超硬合金を溶融Znに溶融、拡散させ、最終的に粉末として回収可能な「Zn分解法」が知られている(以下、かかるZn分解法による超硬合金の処理を、本願明細書では単に「Zn処理」と称する)。
【0003】
ところで、超硬合金の製品は種々ある。中でも、ギヤ型に代表される異形ダイスは局所的に鍛造時の加工応力が集中するため、その靭性を高める必要がある。
そこで、ギヤ型等の超硬合金は、例えばWCを主成分としつつ、バインダとして機能するCoを他の超硬合金よりも15〜25wt%と、多く含有させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−215428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このギヤ型等の超硬合金を、従来通りの方法でZn処理すると一定の不具合が生じる。
係る不具合の説明の前に、まず、図7を参照し(同図では超硬合金をZn処理するときに用いられる坩堝内の左上半分のみを断面で図示している。以下に示す図3、5も同様)、Co含有量が少ない超硬合金のZn処理の一般的な挙動を説明する。図7において、二番目に暗い灰色で示された領域3は、CoとZnが800℃以上になるとCo−Znの液相を生じる。このCo−Znの液相に超硬合金中のCoが好適に溶融、拡散し(参照符号5)、かつ、Co−Znの液相中にZnの固溶相(参照符号6)が増大する。さらに、900℃に昇温し、このZnの固溶相を蒸発し、最後にCoが含有された超硬合金がスポンジ状に残る。最後に、これを解砕、分級し、超硬合金の粉末を得る。
【0006】
ところが、高回収率のために、超硬合金中に多く含まれるCoは、Zn処理中に、溶融Znに溶融、拡散すべきであるが、Coが18wt%以上と、多く含有していると、Coは溶融Znに溶融、拡散しにくくなり、好適にZn処理されない。
図8の(a)、(b)は、かかる現象を説明するための図である。両図は順にCoの含有率をそれぞれ22wt%、9wt%とし、かつWCを主成分とする超硬合金をZn処理した後の断面を写真撮影し、その写真をトレースしたものである。
【0007】
図8の(a)、(b)において、一点鎖線で囲まれた「元のサイズ」の領域は、超硬合金をZn処理する前のサイズである。また「未拡散」の領域は、網掛け模様で示されているほぼ真中に停滞している物質が溶融Znに拡散されなかった超硬合金を示す。また「拡散距離」と示されている長さ部分は、Zn処理前のサイズから、溶融Znに拡散されなかった超硬合金の外周面までの距離であり、これは溶融ZnのCoへの拡散度の物理的尺度となる。
【0008】
同図(a)に比べ、同図(b)では、未拡散領域が小さく、Znが超硬合金中に比較的広く拡散していることが分かる。物理的尺度から比較すると、同図(b)で示す拡散距離は、同図(a)で示す拡散距離の約2倍である。また、未拡散領域の輪郭を比較すると、同図(b)の輪郭がギザギザであるのに対し、同図(a)の輪郭は団子状になっておりその外面が滑らかになっている。
以上の考察から、Coを22wt%と多く含有させた超硬合金は、Coを9wt%含有させたものより、溶融Znが超硬合金中のCoに溶融、拡散しにくく一定箇所に停滞しがちであることが分かる。
【0009】
本発明は、Co含有量が多い超硬合金のリサイクル方法及びその方法に用いられる装置において、Coの含有量が多くても溶融ZnがCoに溶融、拡散し易くなるようにし、結果として、超硬合金の回収率を高めることによって、Co含有率の高い超硬合金の好適リサイクルを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
以下の各項において、(1)〜(8)項の各々が、請求項1〜8の各々に相当する。
【0011】
(1)Zn分解法による超硬合金のリサイクル方法であって、超硬合金バルクを破砕してその粉粒を溶融Znに溶融し、かつ、Zn溶融液に対流を生じさせることを特徴とする超硬合金のリサイクル方法。
【0012】
「超硬合金バルク」は、スクラップのものばかりでなく、例えば、既に製造されている超硬合金の製品を他の超硬合金の製品に作り直すものも含む。
なお、本願明細書における「超硬合金バルク」は、WCを主成分とし、Coをバインダーとして15〜25%と比較的多く含有する超硬合金を代表例とする。
【0013】
「超硬合金バルクを粉砕」する工程では、超硬合金を破砕して粉粒にすることで、当該粉粒を溶融Znに溶融、拡散し易くする。より具体的には、超硬合金を、ジョークラッシャ、インパクトミル等の粗粉砕機を適宜用い、不活性ガス雰囲気中において例えば5〜20mm程度の大きさの粉粒まで砕く。さらに好適には5mm未満とすることが好ましい。20mmより大きいと超硬合金内部まで溶融Znが拡散せず、未拡散部が残存するため好ましくない。
【0014】
「溶融Zn」は、以下のようにしてZn粉粒を溶融することによって得られる。カーボン製の耐熱容器(上述した「坩堝」に相当。以下「坩堝」と称する)中に、Zn処理されるべき超硬合金の粉粒をほぼ真中になるように未溶融のZnの粉粒によって取り囲みセットする。そして、この坩堝を、密閉チャンバを備えたZn溶融炉に配置し、窒素やアルゴンガスのような不活性ガス雰囲気で常温から800℃以上の温度まで上昇させると「溶融Zn」が得られる。Zn溶融炉内の温度や湿度の変動や無用な酸化反応をなくし品質を保つため、さらには密閉チャンバ内の腐食、金属疲労を防ぐためにも不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。
【0015】
上記のように800℃以上の温度まで上昇させるのは、Co-Zn状態図によれば、Zn含有率が80wt%以上の領域では800℃以上に昇温しないと、Co-Znの液相が発生しないからである。すなわち、800℃以上の温度でCo-Znの液相が発生することで溶融ZnのCoへの溶融、拡散を促進することができる。
【0016】
さらに、「Zn溶融液に対流を生じさせる」と、図7を用いて記述したZnの停滞を防ぐことができる。「対流を生じさせる」ための具体的な装置は後述する。
なお、Zn溶融液は、通常ある程度自然対流するが、本願発明でいう「対流」は、後述する「上下運動」や「落下振動運動」による機械的作用による「対流」を指す。
【0017】
既述したように、Coの含有量の多い超硬合金をリサイクルする方法中、Zn処理では、従来、溶融Znは、反応部の一定箇所に停滞しがちでCoへの溶融、拡散が困難であった。
そこで、本項により、溶融Znを「対流」させ、溶融Znを機械的にCoに溶融、拡散させるようにする。その結果、溶融Znが主成分のWCと共にCoに溶融、拡散し、最終的に超硬合金の回収率を向上させることができ、ひいては超硬合金の良好なリサイクルが達成できる。
【0018】
(2)前記対流は、溶融Znを加圧させながら行うことを特徴とする(1)項に記載の超硬合金のリサイクル方法。
本項によれば、(1)項によって生じさせた溶融Znの「対流」に「圧力」を加えると、溶融ZnをCo含有率が多い超硬合金の粉粒中に良好に浸透させることができるようになる。高温下(800℃)での処理中では、溶融Znが徐々に蒸発し、Zn濃度が低下するが、溶融Znに「圧力」を加え続けることで溶融Zn濃度を一定に維持することができ、溶融Zn濃度の低下を抑制させることができる。
溶融Znに「圧力」を加えるには、超硬合金とZnの粉粒を含む坩堝が配置される密閉チャンバ内の雰囲気を一定のガス圧で不活性ガス雰囲気にする。そのためには、真空ポンプを用いて一度密閉チャンバ内部を真空引きした後、窒素に代表される不活性ガスを、ガスフロー制御によるガス圧で密閉チャンバ内部に流してガス置換する。
【0019】
(3) 前記対流は、溶融Znを上下動させながら行うことを特徴とする(1)又は(2)項に記載の超硬合金のリサイクル方法。
(3)項は、(1)又は(2)項で特定された超硬合金が溶融、拡散された溶融Znの「対流」を「上下動」によって生じさせる。(2)項で超硬合金が溶融、拡散された溶融Znに圧力をかけた状態で、本項によって溶融Znを上下動させるようにしてもよく、溶融ZnがCo中に、より一層好適に、溶融、拡散するようになる。上下動の装置は後述する。
【0020】
(4)前記対流は、溶融Znを落下振動をさせながら行うことを特徴とする(1)〜(3)項のいずれかに記載の超硬合金のリサイクル方法。
(4)項によれば、(1)項又は(2)項で、超硬合金が溶融、拡散された溶融Znの「対流」を「落下振動」によってさらに促進させることができる。なお、WCと共にCoを溶融Znにより溶融、拡散するには、(2)項で超硬合金が溶融された溶融Znに圧力をかけた状態で、本項によって溶融Znを落下振動させるようにすることがより好ましい。落下振動の装置は後述する。
【0021】
(5)Zn分解法による超硬合金のリサイクル装置であって、超硬合金バルクを破砕する粉砕機と、破砕された超硬合金を溶融Znに溶融する溶融炉と、溶融Znを対流させる対流機構と、を含むことを特徴とする超硬合金のリサイクル装置。
【0022】
(6) 破砕された超硬合金を溶融、拡散する際、前記溶融炉に備わる密閉チャンバ内で不活性ガスを用いて加圧する手段をさらに含むことを特徴とする(5)項に記載の超硬合金のリサイクル装置。
【0023】
(7)溶融Znに超硬合金が溶融、拡散するように収容された坩堝を上下駆動できるシリンダをさらに含むことを特徴とする(5)項又は(6)項に記載の超硬合金のリサイクル装置。
【0024】
(8)溶融Znに超硬合金が溶融、拡散するように収容された坩堝を、段違いに配置された複数の搬送装置に配置し、段差箇所で前記坩堝が落下振動するようにされた落下振動機構をさらに含むことを特徴とする(5)項〜(7)項のいずれに記載の超硬合金のリサイクル装置。
(5)〜(8)項は、(1)〜(4)項の方法を具現化するための装置を例示するものである。より具体的には、第1、2実施形態の欄で後述する。
【0025】
(9) (1)から(4)のいずれかの超硬合金のリサイクル方法で得られた超硬合金の粉末を金型装置に投入し粉末冶金法により、新たな所望の超硬合金製品を製造することを特徴とする方法。
(10) (5)から(8)のいずれかの超硬合金のリサイクル装置で得られた超硬合金の粉末を金型装置に投入し粉末冶金法により、新たな所望の超硬合金製品を製造することを特徴とする装置。
(1)〜(4)項の方法及び(5)〜(8)項の装置において、出発原料である超硬合金のバルクがZn処理されて、最終的に超硬合金の粉末が得られた後、(9)項の方法又は(10)項の装置で、この超硬合金粉末を金型装置によって所望の形状とした後、一定温度条件で焼結し、適宜寸法精度を出すような機械加工を施すことで、新たな所望の超硬合金の製品を製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、Zn分解法を用いて、WCを主成分としCo含有率の高い超硬合金をZn処理する際、超硬合金中のCoに溶融Znを溶融、拡散することを促進することができる。その結果、超硬合金を粉末の状態で高回収率で得ることができ、Co含有率の高い超硬合金を好適にリサイクルすることができる。本願明細書では超硬合金の代表例としてCo含有率の高い超硬合金を取り上げたがCo含有率の高い超硬合金のみならず、本発明は、Co含有率の低い他の超硬合金にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る第1、2実施形態に適用される、超硬合金のリサイクル方法のフロー図を示す。
【図2】図1のフロー図中、特にZn処理工程を説明するための図を示す。
【図3】Zn処理工程で、溶融Znを「上下運動機構」によって対流させて、Co中に溶融Znを好適に溶融、拡散するときの態様を説明するための概念図を示す。
【図4】Zn処理工程で、不活性ガスで加圧しながら主成分のWCと共にバインダのCoを溶融Zn中に好適に拡散するために、「上下運動機構」を備えたバッチ処理式のZn反応熱処理炉の概念断面図を示す。
【図5】Zn処理工程で、溶融Znを「落下振動機構」によって対流させて、Co中に溶融Znを好適に溶融、拡散する態様を説明するための概念図を示す。
【図6】Zn処理工程で、不活性ガスで加圧しながら主成分のWCと共にバインダのCoを溶融Zn中に好適に拡散するため、「上下運動機構」を備えた連続処理式のZn反応熱処理炉の概念断面図を示す。
【図7】従来のZn処理の問題点を説明するための概念図を示す。
【図8】Zn処理後、超硬合金中のCoの含有率の大小による溶融ZnのCoへの拡散性を比較するための金属顕微鏡を用いて撮影した写真のトレース図であり、Co含有率は(a)が22wt%、(b)が9wt%である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明に係る好適実施形態を、添付図面を参照しながら説明するが、以下に記載される装置及びその各構成要素、各部品、各箇所、各材料は、本願発明の実施形態の一例であり、これに限られるものではない。また、図中、同一の符号を付した部分は同一物、同一部材を表し、装置や部材の各寸法、各比率は実際のものを反映したものではなく、概略的に示したものである。
【0029】
以下、超硬合金バルクのリサイクルについて、図1〜6を参照して説明する。
<第1実施形態>
図3に示されるように、第1実施形態は、溶融Znの対流(参照符号10)を、溶融Znを上下動させながら生じさせる(参照符号11)ことを特徴とする。
図3を参照し、WCと共にCoを溶融Zn中に、より一層溶融、拡散するには、超硬合金の粉粒が溶融されることになる溶融Znに不活性ガスで圧力をかけた状態で、坩堝ごとその中に収納させている溶融Znを上下動させる(参照符号11)ようにすることがより好ましい。また、溶融Znを上下動させる(参照符号11)ことによって、Coと液相を構成するZn濃度の低下を抑制してCo-Zn液相を維持する(参照符号12、13)。このようにして、Znと超硬合金の粉粒がまだ未拡散である未拡散部14から、溶融Znが従来のように停滞することなく超硬合金中のCoへ溶融、拡散させることができる(参照符号15)。
【0030】
次に、第1実施形態に適用されるバッチ式Zn反応熱処理炉を説明する。
図4は、バッチ式Zn反応熱処理炉20の概略断面図である。
図4を参照し、バッチ式Zn反応熱処理炉20は、密閉チャンバ21、Zn処理がなされる多段の棚部(不図示)に配置される耐熱のカーボン製の坩堝22及びZn回収容器23を含み、かつ、従来の反応熱処理炉では坩堝22が固定されていたが、第1実施形態においては5段に配置されている坩堝22を上下運動できる油圧シリンダ24をさらに備えている。上記段数は5段に限られるものではなく、適宜処理能力に応じ改変することができる。
【0031】
既述したように、坩堝22内の参照符号25で示す箇所に所定粒度の超硬合金の粉粒をZnの粉粒が取り囲むようにセットされている。本実施形態では、このようにセットされた5段分の坩堝22が密閉チャンバ21の内部に配置されている。密閉チャンバ21は図示しない真空ポンプと、ガスフロー制御器を介した窒素ガスボンベを備えている。密閉チャンバ21は下方からシリンダ24によって支持されている。また、密閉チャンバ21の下方には溶融Znから蒸発されるZnを溜めることができるZn回収容器23が配置されている。
以上の構成を備えた図4に示すバッチ式Zn反応熱処理炉20の動作を、図1に示す工程フローの各工程の説明と共に説明する。
【0032】
[ステップ1;超硬合金バルクの準備] 各坩堝22内にセットされる出発材料は、WCを主成分とし、Coを含有率15〜25%としたバインダ成分を含む。本実施形態では、約10〜100kgの超硬合金と、10〜200kgのZn金属を準備する。またこれらを収納する坩堝の寸法は例えば縦400mm×横400mm×高さ200mmのものとする。
【0033】
第1実施形態(以下の第2実施形態も同様)では、超硬合金を代表例とするが、このようなギヤ型等の異形ダイスに使用される超硬合金ばかりでなく、WCを主成分とし、Coを含有率5〜25%としたバインダ成分を含むものであれば、その他の各種ダイス、プラグ、ゼンジミアロール、モルガンロール等の耐摩耗工具のようなものでもよい。
【0034】
[ステップ2;破砕工程]
ステップ1で準備した超硬合金がバルクのままでは、サイズが大きすぎて熱容量が大きく表面積も小さいため、加熱ヒータからの熱伝達がうまくなされず、Zn処理において溶融Znに溶融、拡散されにくい。
そこで、超硬合金を破砕してある程度の粒度に揃えるために粗粉砕機を用いる。超硬合金のバルクの大きさによるが、必要に応じて一度ハンマー等で投入口に入る程度に分割し、まずジョークラッシャである程度のサイズの粒径となるまで破砕し、さらにブラウンミル又はスタンプミル等の粉砕能力が中程度の粗粉砕機で粉砕し、約5〜20mmの大きさの超硬合金の粉粒とする。さらに5mm未満としてもよいが、ミクロンオーダまで粉砕すると加工コストがかかり、また、酸化が促進されるため好ましくない。
【0035】
[ステップ3;磁性測定工程]
ステップ2で得られた超硬合金の粉粒について、公知の磁気特性測定器を用いて、保磁力と飽和磁化を測定し、常法により磁性体金属であるCo含有量を測定し、超硬合金中のCoの含有率を求める。求められたCo含有率により、Co量に対応して投入される適正なZn重量や後述する溶融Znの対流のための上下運動や落下振動の条件を適宜決定するための基礎データとすることができる。より具体的には、Co含有量が大きければ上下動の回数、サイクルを多めに設定し、或いは、落下振動の振動回数を増やし、対流をより増やすようにする。また、出発材料の受け入れ検査としても有効であり、超硬合金としてCoがバインダーとして機能しうるCo含有量5〜25wt%を確認することもできる。さらに、WCの粒度も確認することができる。
【0036】
[ステップ4;分別工程]
ステップ3で得られた超硬合金をWCの粒度毎に分別する。必要に応じて、さらにCo量毎に分別する。
【0037】
[ステップ5;Zn処理工程]
Zn処理工程は、基本的に常法のZn分解法に沿って進行する。このZn処理工程に関し、拡散の度合いによって「拡散前段階」、「拡散初期段階」、「拡散終期段階」及び「Zn蒸発段階」の4段階に分け、図2を参照し説明する。
【0038】
図2で「拡散」とあるのは、超硬合金の粉粒に溶融Znが拡散していくことを指す。ただし、これは相対的なものであり溶融Znに超硬合金の粉粒の溶解したものが拡散していくともみなせる。
また、図2で示すグラフは、Zn処理時間(hr)を横軸に取り、同方法による処理温度(℃)を縦軸に取ったものである。そして、このグラフにZn処理時間の経過に沿った各過程における温度パターンが描かれている。第1実施形態では、Zn処理時間(hr)の総計は好ましくは8〜15時間が望ましい。8時間未満だとZnの拡散距離が短いため好ましくなく一方15時間よりさらに長くしても処理時間がさらなる拡散にはほとんど寄与しなくなるため製造コストの観点から好ましくない。
【0039】
「拡散前段階」では、既にステップ1の超硬合金バルクの準備の欄で説明したが、図2(1)で示されるように、Coを含有するWCからなる超硬合金の粉粒であって、ステップ4で分別された粉粒を所定の大きさの坩堝22のほぼ中央部に収まるようにし、その周りを同じく粉粒されたZn粉粒で取り囲むように設定する。そして、この坩堝22を、窒素ガスを流すことで所定のガス圧を付与するようにした不活性ガス雰囲気の密閉チャンバ内に多段に配置する(図4参照)。所定のガス圧を付与するのは溶融Znの蒸発を抑制し、Zn濃度を一定に保ち、浸透し易くするためである。不活性ガスを用いるのはZn処理中に超硬合金やZnの粉粒が酸化されること等を防ぐためである。
【0040】
ここで、Zn粉粒の投入量は、超硬合金に含有されるCo量に対して8〜10wt%程度とする。
所定のガス圧は、密閉チャンバ21内を一度真空引きし、その後、フロー制御した窒素ガスを例えば0〜0.2MPa程度密閉チャンバ内に流すことが好ましい。ガス圧は、0より大きくないと溶融Znが飛散するため好ましくなく、一方0.2MPaを超えると密閉チャンバ21の耐圧の関係から好ましくなく、また窒素ガスのコストがかかる等の理由により好ましくない。
【0041】
次の(2)「拡散初期段階」では、(1)「拡散前段階」で準備された坩堝内の超硬合金の粉粒とそれを囲むZnの粉粒に、図示しない加熱ヒータによって常温から800℃以上の処理温度まで昇温を行い、かつ、800℃を少し超える処理温度で温度維持する。また、図2に示されるように(2)「拡散初期段階」では、Zn粉粒(固体)が溶融Zn(液体)に変化すると共に、超硬合金中のWCとCoが徐々に溶融Zn中に溶融、拡散し始める。800℃以上の処理温度に関し、800〜850℃の範囲が好ましく、850℃近辺の処理温度がさらに好ましい。Co-Zn状態図によれば、処理温度は800℃未満ではZn-Co状態図から判断するとCoが溶融Znに溶融、拡散しにくいため好ましくなく、一方850℃を超えてしまうとZnの蒸発が著しく低いため好ましくない。なお、Co-Zn状態図によれば、900℃近辺がCo-Zn状態図において拡散領域の限界温度であるため、900℃を超えると、超硬合金のCoとZnの成分比に対応するCo-Znの拡散領域を逸脱するため特に好ましくない。
【0042】
この(2)拡散初期段階以降、図7を参照して説明したように、Co含有率が高い超硬合金では、Coは溶融Znに良好に溶融、拡散しづらい傾向にある。
そこで、第1実施形態では、Zn反応熱処理炉20の密閉チャンバ21内で多段の棚部に配置される複数の坩堝22を上下動できる油圧シリンダ24をさらに含むようにしている。
この油圧シリンダ24によって、坩堝22の上下方向の、運動距離27を20〜100mmとし、運動回数を2〜12回/hrとすることによって、Coを溶融Zn中に、より対流するようにする。ここで、運動距離が20mm未満であるとほとんど対流が起こらないため好ましくなく、一方100mmを超えると装置に不具合をもたらすこともあり好ましくない。また、運動回数が2回/hr未満であると運動効率の観点から好ましくなく、一方12回/hrを超えるようにしてもほとんど効果は変わらない。この拡散初期段階では、窒素ガス等の不活性ガスで0.2Ma程度まで加圧しながら昇温を行うようにすることが好ましい。
【0043】
(3)「拡散終期段階」では、800℃以上の上記温度範囲で一定時間、例えば8時間から12時間程度の間、好ましくは10〜11時間程度維持することで、Coの溶融Znへの拡散反応を進行させるようにする。その結果、CoとZnとからなる液相が出現してZnが蒸発していくためZn含有率が減少し、かつ、超硬合金が膨張していき、それと共に、坩堝の中央にあった未拡散部が減少していく。
【0044】
(4)「Zn蒸発段階」では、上記の800℃以上の温度からさらに900〜910℃程度まで昇温させ、かつ、密閉チャンバ21内の圧力を−0.1〜0MPaに減圧し、Znを蒸発させる。900〜950℃程度まで昇温させるのは、Znの沸点が907℃だからであり、温度が900℃以下ではZnが残存してしまうため好ましくなく、一方950℃より高いとスポンジ状となった超硬合金の固相焼結が始まるため好ましくない。また、密閉チャンバ21内の圧力が、0MPa以上であると減圧雰囲気にならず好ましくない。
以上の諸条件の下の「Zn蒸発段階」によれば、坩堝内の中央に未拡散部を残し、坩堝内をスポンジ状に変化させることができる。スポンジ状になるのはZnが坩堝内から蒸発することでZnが存在していた箇所が空孔となるからである。蒸発したZnは、密閉チャンバ21内を減圧してZn回収容器23に回収する。このZn回収容器23に回収されたZn26´は、次のZn処理のためにリサイクルすることができる。
【0045】
[ステップ6;粉砕工程]
再び図1のフロー図のステップ6に戻り第1実施形態の説明を続ける。このステップ6における粉砕工程では、ステップ5のZn処理工程で得られた反応生成物を冷却した後、スポンジ状の部分をほぐすように軽く粉砕して粉末にする。
【0046】
[ステップ7;分級工程]
ステップ7の分級工程は、ステップ6で得られた、僅かに残存した未拡散部を含む粉末を分級機(不図示)に投入し、未拡散部と粉末とを分離し、粉末のみを回収する工程である。
[ステップ8;再生粉末採取工程]
ステップ8の再生粉末採取工程は、回収率や成分比等を測定するために、ステップ7で回収した粉末を適当な容器に採取する工程である。この回収率のデータは、本実施形態の各工程の製造条件等と共に記録され、工程管理や以降の実施形態でさらに回収率を良好とするデータとして用いる。
【0047】
このように、図3の(a)の概念図に示される第1実施形態による態様を具現化するために、バッチ式Zn反応熱処理炉20内に備わる図示しない真空チャンバ21を備えた、多段に配置される坩堝22を上下動できる油圧シリンダ24をさらに備える装置によって、密閉チャンバ21内の窒素ガス圧を一定程度まで維持して、溶融ZnをCoに浸透し易くし、Coを含む溶融Znの対流を促進する。
さらに、油圧シリンダ24によって、多段の棚に配置される坩堝22を所定条件の下、上下運動機構によって上下動させることによって、さらにCoを含む溶融Znの対流が促進される。
【0048】
このように、第1実施形態によれば、Coをバインダーとして多く含む、超硬合金バルクから、高い回収率でCoを含有したWCの粉末を回収することができ、さらに、この粉末を用いた粉末冶金法により、新たな超硬合金製の製品を作製できる。その結果、Co含有率が高いWCを主成分とする超硬合金の好適なリサイクルが達成される。
【0049】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。
図5に示されるように、第2実施形態は、坩堝22´(図6参照)内の超硬合金の成分CoとWCがその中に溶融、拡散しようとする溶融Znの対流(参照符号10)を、溶融Znを落下振動させながら生じさせることを特徴とする(参照符号11´)。WCとCoを溶融Zn中に、より一層溶融、拡散させるには、超硬合金の成分CoとWCが溶融された溶融Znに不活性ガスで圧力をかけて浸透させ易くした状態で、溶融Znを落下振動させる(参照符号11´)ようにすることが好ましい。溶融Znを落下振動させる(参照符号11´)ことによって、Coと共に液相を構成するZnの濃度の低下を抑制しかつCo-Zn液相を維持する(参照符号12、13)。このようにして、図5に示されるように、Znと超硬合金のCoとWCの粉粒の未拡散部14から、溶融Znが従来のように停滞することなく、Coを溶融Znへ溶融、拡散させることができる(参照符号15)。
【0050】
第2実施形態に係る工程は、第1実施形態の欄で図1を参照し述べた超硬合金のリサイクルに係る工程と基本的に同じである。しかし、溶融Znを対流させる手段として、図6に示すように、上流方向に昇るように傾斜させた複数の搬送装置間の段差を利用した「落下振動」を採用している点、この「落下振動」をさせるため搬送装置を複数含む連続式Zn反応熱処理炉を用いている点及びこの連続式Zn反応熱処理炉が第1加熱室と第2加熱室を備えている点において異なる。
図6に示す搬送装置を複数含む連続式Zn反応熱処理炉には、図示しないが、公知のゾーンセパレータ付連続炉、メッシュベルト式連続熱炉又はローラーハース型連続炉を使用することができる。特に、Zn処理中の昇温パターン(図2参照)を超硬合金とZnの粉粒を収納した坩堝を複数連続的に処理するには、ゾーンセパレータ付連続炉を用いて、各ゾーン毎に各坩堝に適切な温度、雰囲気条件の下、Zn処理を施すことができる。
【0051】
そのため、まず図6を参照して第2実施形態で用いる連続式Zn反応熱処理炉30を説明し、次に、第1実施形態の欄で説明したように第2実施形態で適用される超硬合金のリサイクルのための工程について説明する。なお、第1実施形態で適用される同工程と重複する内容については適宜その説明を省略する。
【0052】
第2実施形態で用いる連続式Zn反応熱処理炉30は、第1加熱室31と第2加熱室32の2つに分かれている。第1加熱室32の内部には少なくとも4台の複数の搬送装置33〜36が直列に配置されており、第2加熱室32の内部には少なくとも1台の搬送装置40が配置されている。
【0053】
第1加熱室31に含まれる複数の搬送装置33〜36は、最も上流側の一台33と最も下流側の一台36は略水平に配置されるが、その間に配置される少なくとも2台以上の搬送装置34、35は、上流方向に沿って一定の傾斜角で上向きに傾けて、対向する搬送装置の下流側と搬送装置の上流側との間に段差37、38を設けてある。第1加熱室31に配置されている搬送装置33〜36上でZn処理用の坩堝22´が搬送されるが、2箇所の段差37、38のを、坩堝22´が通過するたびに落下振動させることができる。落下振動の箇所をさらに増やすには、段差の箇所がさらに増やせばよく、それには搬送装置を同様に増やすと共に第1加熱室31の長さを延ばすようにすればよい。
【0054】
第1加熱室31は、基本的に、第1実施形態の「拡散前段階」の欄で述べたものと同様に図示しない真空ポンプとガスフローを介したガスボンベを備えており、第1加熱室31の内部を窒素ガスで加圧された不活性ガス雰囲気とすることができる密閉チャンバである。上述したように不活性ガス雰囲気の方が好ましいが大気雰囲気でも処理可能である。
第2加熱室32は、第1実施形態の「Zn蒸発段階」の欄で述べた態様及び条件と同様である。すなわち、第2加熱室32は、「Zn蒸発段階」では、さらに900〜950℃程度まで昇温し、かつ、密閉チャンバ21内の圧力を−0.1〜0MPaに減圧し、Znを蒸発させることができる密閉チャンバである。そのため、第2加熱室32には、図示しない、加熱ヒータ、ガスフロー制御器及びZn回収容器が、第1実施形態と同様に第2加熱室32に備わっており、蒸発されたZnはこの図示しないZn回収容器に収納され、再利用可能となっている。
【0055】
第1加熱室31と第2加熱室32とは、第1加熱室31でのZn処理中は、開閉可能な空密仕様の真空ドア39によって仕切られている。第1加熱室31におけるZn処理完了後、真空ドア39が開けられて、Zn処理されたCo含有のWCを主成分とする超硬合金を収納する坩堝22´が第2加熱室32に搬送され、その後、真空ドア39が閉じられ、次のZn処理が開始されるようにして制御可能となっている。
【0056】
次に、連続式のZn反応熱処理炉30を用いた第2実施形態で適用される超硬合金のリサイクルのための工程について、図1の工程フローを参照しながら説明する。なお、ステップ1〜4の工程は、第1実施形態と同じ態様であるためこれらの説明は省略する。
【0057】
[ステップ5;Zn処理工程]
Zn処理工程は、基本的に常法のZn分解法に沿って実行される。このZn処理工程について、第2実施形態でも、同様に図2を参照し、拡散の度合いによって「拡散前段階」、「拡散初期段階」、「拡散終期段階」及び「Zn蒸発段階」の4段階がある。
図2の「拡散」の定義は第1実施形態のものと同じであるため説明を省略する。
このZn処理工程から、図5に示された連続式のZn反応熱処理炉30を用いる。
【0058】
「拡散前段階」では、既にステップ1の超硬合金バルクの準備の欄で説明したが、WCとCoとからなる超硬合金の粉粒であって、ステップ4で選別されたものを一定の大きさのカーボン製の坩堝22´のほぼ中央部に収まるようにし、その周りを所定粒度のZn金属で取り囲むように設定し、かつ、当該坩堝22´を窒素ガス等によって一定ガス圧を付与した不活性ガス雰囲気の第1加熱室31の最も上流側の搬送装置33の最上流側の端部の上に配置する。「Znの投入量」及び「一定ガス圧」については第1実施形態の態様と同様であるのでその説明を省略する。
【0059】
「拡散初期段階」では、基本的に第1実施形態と同様の態様の内容で処理がなされるが、上述したような装置態様、すなわち、少なくとも2台以上の搬送装置34、35(図5では2台34、35のみ)は、上流方向に沿って上向きに一定の傾斜角で傾けて形成される、対向する搬送装置の下流側と搬送装置の上流側との間の段差37、38によって、「落下振動」を与えながら同処理が進行する。
「落下振動」の落下距離は、10〜50mmであることが好ましい。落下距離が10mm未満であると、ほとんど振動の効果が得られないため好ましくない一方、落下距離が50mmを超えると坩堝への負荷が増大し、装置の故障や、ひいては溶融Znが漏出する原因となるため好ましくない。
「落下振動」の落下回数は、1〜4回/hrであることが好ましい。落下回数が0だと、Coの溶融Znへの拡散が発生しないため好ましくなく、一方、落下回数が4回/hrを超えると、坩堝の負荷が増大し、装置の故障や、ひいては溶融Znが漏出する原因となるため好ましくない。
【0060】
「拡散終期段階」は、基本的に第1実施形態と同様の態様で処理がなされるが、搬送装置33〜36の内、下流よりの搬送装置で同処理が実行される。
「Zn蒸発段階」も、基本的に第1実施形態と同様の態様で処理がなされるが、図5に示された第2加熱室32において、減圧雰囲気の中でZnを蒸発させる。蒸発したZnは、図示しないZn回収容器に回収される。回収されたZnは、第1実施形態と同様にしてリサイクルすることができる。
【0061】
ステップ6〜8[粉砕工程、分級工程、再生粉末採取工程]は、基本的に第1実施形態の態様と同様にして処理がなされるが、第2加熱室32の図示しない真空ドアが開けられ、坩堝21´ごと、取り出された後で同処理がなされる。
【0062】
このように、第2実施形態によって図5の概念図に示される態様を具現化するために、搬送装置33〜36、40を含む連続式Zn処理炉30で、搬送装置33〜36によって搬送される坩堝22´が落下振動されるように、搬送装置34と35との間および搬送装置35と36との間に「段差」37、38を設ける。この落下振動機構によって、主成分であるWCのみならずバインダのCoを含む溶融Znの対流を促進させる。加えて、連続式Zn反応熱処理炉30の第1加熱室31内の窒素ガスのガス圧を一定に維持して、Coを溶融Znに溶融、拡散し易くし、Coを含む溶融Znの対流を促進させるのは第1実施形態と同様である。
この第2実施形態によっても、Coをバインダーとして多く含む、超硬合金バルクから、高い回収率でCoとWCとからなる粉末を回収することができ、さらに、この粉末を用いた粉末冶金法により、新たな超硬合金製の製品を作製できる結果、Co含有率が高いWCを主成分とする超硬合金の好適なリサイクルが達成される。
【0063】
本発明に係る第1、2実施形態は、Co含有量の高い超硬合金のリサイクル方法に係るものであり、Zn処理を用いるが、上下動又は落下振動によって、加圧された溶融Znをより積極的に対流させる。その結果、溶融Znを超硬合金のCoに溶融、拡散させて、超硬合金のスクラップ等を他の製品に作り変えるための粉末材料として回収することができる。また、加圧し並びに上下動又は落下振動を加え、かつ、Zn処理時間を延長させることによって、超硬合金の粉粒を溶融Znに、より良好に溶融、拡散させることができ、従来の反応部に滞留していた溶融Znを滞留させることなく、好適に超硬合金を粉末化することができる。Zn処理中に従来滞留しがちな溶融ZnをCoに上記方法、装置で積極的に溶融、拡散させることで、回収率は80%以上100%近くとすることができる。
【0064】
なお、上記の第1、2実施形態で示された各製造条件は、出発材料として、約10kg〜100kgの超硬合金と、10kg〜200kgのZn金属を準備したことから導かれるものである。すなわち、出発材料の重量によって各製造条件は、当業者によって適宜改変されるものであり、上述した範囲に限られるものではない。また、溶融Znの対流は、坩堝の上下動、落下振動以外の手段によっても発生させうる。たとえば、坩堝の上下動に加え、坩堝が時計方向、反時計方向を交互に回るような回転運動を加えるようにしてもよく、或いは、振り子運動を適宜加えるようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn分解法による超硬合金のリサイクル方法であって、超硬合金バルクを破砕してその粉粒を溶融Znに溶融し、かつ、Zn溶融液に対流を生じさせることを特徴とする超硬合金のリサイクル方法。
【請求項2】
前記対流は、溶融Znを加圧させながら行うことを特徴とする請求項1に記載の超硬合金のリサイクル方法。
【請求項3】
前記対流は、溶融Znを上下動させながら行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の超硬合金のリサイクル方法。
【請求項4】
前記対流は、溶融Znを落下振動をさせながら行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超硬合金のリサイクル方法。
【請求項5】
Zn分解法による超硬合金のリサイクル装置であって、超硬合金バルクを破砕する粉砕機と、破砕された超硬合金を溶融Znに溶融する溶融炉と、溶融Znを対流させる対流機構と、を含むことを特徴とする超硬合金のリサイクル装置。
【請求項6】
破砕された超硬合金を溶融、拡散する際、前記溶融炉に備わる密閉チャンバ内で不活性ガスを用いて加圧する手段をさらに含むことを特徴とする5項に記載の超硬合金のリサイクル装置。
【請求項7】
溶融Znに超硬合金が溶融、拡散するように収容された坩堝を上下駆動できるシリンダをさらに含むことを特徴とする請求項5又は6項に記載の超硬合金のリサイクル装置。
【請求項8】
溶融Znに超硬合金が溶融、拡散するように収容された坩堝を、段違いに配置された複数の搬送装置に配置し、段差箇所で前記坩堝が落下振動するようにされた落下振動機構をさらに含むことを特徴とする請求項5〜7項のいずれに記載の超硬合金のリサイクル装置。

【図1】
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【図4】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19019(P2013−19019A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152920(P2011−152920)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(390000022)サンアロイ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】