説明

超純水製造装置

【課題】逆浸透膜分離装置の設置数が少ない超純水製造装置を提供する。
【解決手段】一次純水システム2と、該一次純水システム2の処理水を処理するサブシステム3とを備え、少なくとも該一次純水システム2に逆浸透膜分離装置が設けられている超純水製造装置において、該一次純水システム2に設置された逆浸透膜分離装置が高圧型逆浸透膜分離装置であり、且つ単段にて設置されていることを特徴とする超純水製造装置。高圧型逆浸透膜分離装置は、標準運転圧力5.52MPa、純水フラックス0.5m/m・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超純水製造装置に係り、特に逆浸透膜分離装置(RO装置)を有する一次純水システムを備えた超純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体洗浄用水として用いられている超純水は、図2に示すように前処理システム1、一次純水システム2、サブシステム(二次純水システム)3から構成される超純水製造装置で、原水(工業用水、市水、井水、半導体工場から排出される使用済み超純水(以下「回収水」と称す。)等)を処理することにより製造される。図2において各システムの役割は次の通りである。
【0003】
凝集、加圧浮上(沈殿)、濾過(膜濾過)装置などよりなる前処理システム1では、原水中の懸濁物質やコロイド物質の除去を行う。また、この過程では高分子系有機物、疎水性有機物などの除去も可能である。
【0004】
逆浸透膜分離(RO)装置、脱気装置及びイオン交換装置(混床式又は4床5塔式など)を備える一次純水システム2では、原水中のイオンや有機成分の除去を行う。なお、逆浸透膜分離装置では、塩類を除去すると共に、イオン性、コロイド性のTOCを除去する。イオン交換装置では、塩類を除去すると共にイオン交換樹脂によって吸着又はイオン交換されるTOC成分の除去を行う。脱気装置では無機系炭素(IC)、溶存酸素(DO)の除去を行う。
【0005】
低圧紫外線酸化装置、イオン交換純水装置及び限外濾過膜分離装置を備えるサブシステム3では、一次純水システム2で得られた純水の純度をより一層高めて超純水にする。なお、低圧紫外線酸化装置では、低圧紫外線ランプより出される波長185nmの紫外線によりTOCを有機酸、さらにはCOまで分解する。分解により生成した有機物及びCOは後段のイオン交換樹脂で除去される。限外濾過膜分離装置では、微粒子が除去され、イオン交換樹脂の流出粒子も除去される。
【0006】
なお、図2では、一次純水システムの逆浸透膜分離装置が前段側と最後段部とに配置されているが、直列に2段に設置することもある。また、図2では、前処理システムが1系統のみ設置されているが、市水、工水等を処理する前処理システムと、半導体製造工程排水などの希薄系排水を処理する希薄系排水回収システムとを並列設置することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3468784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、超純水製造システムにおいては有機物濃度低減目的からRO分離装置を直列で2段通水する2段RO方式が一次純水あるいは排水回収システムにおいて主として採用されている。RO膜種としては処理対象となる原水が工業用水、水道水、井戸水あるいは塩類負荷の低い希薄系排水であることから、標準運転圧力0.75MPa、純水フラックス25m/m・D/本(8インチ)以上である超低圧RO膜、あるいは標準運転圧力1.47MPa、純水フラックス25m/m・D/本(8インチ)以上である低圧RO膜を用いるのが一般的であった。
【0009】
しかしながら、このように逆浸透膜分離装置を2段に設置すると、設置スペースが増大すると共に、装置運転管理が煩雑化する。即ち、半導体製造工場の超純水製造プラントでは、規模にもよるが、一次純水システムの第1段目の逆浸透膜分離装置として例えば4〜40個を並列設置し、第2段目にこれと同程度の逆浸透膜分離装置を並列設置しており、逆浸透膜分離装置の設置数が極めて多いものとなっており、逆浸透膜分離装置の設備コスト及びランニングコストが嵩むと共に、設置面積も大きいものとなっている。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、逆浸透膜分離装置の設置数が少ない超純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)の超純水製造方法は、一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、少なくとも該一次純水システムに逆浸透膜分離装置が設けられている超純水製造装置において、該一次純水システムに設置された逆浸透膜分離装置が高圧型逆浸透膜分離装置であり、且つ単段にて設置されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の超純水製造装置は、請求項1において、前記高圧型逆浸透膜分離装置は、標準運転圧力5.52MPa以上、標準運転圧力における純水フラックス0.5m/m・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の超純水製造装置は、請求項1又は2において、原水を処理する前処理システムを有し、該前処理システムの処理水が前記一次純水システム及びサブシステムで順次処理される超純水製造装置であって、前記高圧型逆浸透膜分離装置への給水のTDS(全溶解性物質)が1500mg/L以下であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の超純水製造装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記高圧型逆浸透膜分離装置の膜面有効圧力が1.5〜3MPaであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
高圧型逆浸透膜分離装置は、従来、海水淡水化プラントに用いられているものであり、塩分濃度の高い海水を逆浸透膜処理するために膜面有効圧力(1次側圧力と2次側圧力との差)を5.52MPa程度の高圧として使用される。
【0016】
本発明では、この高圧型逆浸透膜分離装置を超純水製造装置の一次純水システムに単段(1段)に設置する。一般に、海水淡水化用逆浸透膜は、脱塩や有機物除去に寄与するスキン層の分子構造が緻密であるため、有機物除去率が高い。海水淡水化においては、原水の塩類濃度が高く、これに伴い浸透圧が高くなるため、透過水量を確保するには、膜面有効圧力が5.5MPa以上となる。一方、電子産業分野における一般的なRO膜に適用する原水の塩類濃度は低く、TDS(全溶解性物質)が1500mg/L以下である。このような原水においては、浸透圧が低く、膜面有効圧力わずか2〜3MPa程度で十分な透過水量を得、かつ上述のごとく透過水の水質は、従来の逆浸透膜(超低圧RO膜、低圧RO膜)に比べ格段と向上する。
【0017】
このように一次純水システムに高圧型逆浸透膜分離装置を単段設置することにより、逆浸透膜分離装置の設置数が従来の2段設置の場合に比べて半分となり、逆浸透膜分離装置の設置スペースが半減すると共に、設備コスト、運転管理コストもほぼ半減する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の超純水製造装置の実施の形態の一例を示す系統図である。
【図2】従来の超純水製造装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の超純水製造装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明においては、図1に示すように、原水を好ましくは前処理システム、一次純水システム及びサブシステムで順次処理して超純水を製造するに当たり、一次純水システムに逆浸透膜分離装置(RO装置)として高圧型逆浸透膜分離装置を単段にて設置する。
【0021】
高圧型逆浸透膜分離装置は、従来、海水淡水化に用いられている逆浸透膜分離装置であり、標準運転圧力5.52MPa以上であり、標準運転圧力において、純水フラックス0.5m/m・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有する。このNaCl除去率は、NaCl濃度32000mg/LのNaCl水溶液に対する25℃における除去率である。なお、逆浸透膜のカタログ(技術資料を含む)には、膜メーカーよりスペック表示がなされており、高圧型であるか低圧型又は超低圧型であるかはカタログ値として判別できる。
【0022】
この高圧型逆浸透膜は、従来の超純水製造装置の一次純水システムに用いられている低圧又は超低圧型逆浸透膜に比べて膜表面のスキン層が緻密となっている。そのため、高圧型逆浸透膜は低圧型又は超低圧型逆浸透膜に比べて単位操作圧力当りの膜透過水量は低いものの有機物除去率は極端に高い。TDS(全溶解性物質)1500mg/L以下の塩類濃度の給水を逆浸透膜処理する場合においては、回収率90%時の運転条件下で逆浸透膜にかかる浸透圧は最大1.0MPa程度である。従って、TDS1500mg/L以下の給水の処理に高圧型逆浸透膜分離装置を用いた場合、好ましくは15〜3MPa、特に好ましくは2〜3MPa程度の膜面有効圧力(1次側と2次側との圧力差)で、低圧型又は超低圧型逆浸透膜と同程度の水量を確保することが可能となる。その結果、1段RO膜処理のみで従来の2段ROと同等の処理水水質・処理水量を得ることが可能となり、それに伴い膜本数、ベッセル、配管が削減でき低コスト、省スペース化が可能となる。
【0023】
逆浸透膜の膜形状は、特に限定されるものではなく、例えばスパイラル型、中空子型等、4インチRO膜、8インチRO膜、16インチRO膜などのいずれでもよい。
【0024】
なお、図1では、原水を前処理システムで処理して一次純水システムに供給しているが、この前処理システムと並列に希薄系排水処理システム(図示略)を設置し、この希薄系排水処理システムの処理水も一次純水システムに供給するようにしてもよい。この場合、図1のフローにおいて、一次純水システムの前段にタンクを設置し、このタンクに前処理システムからの処理水と希薄系排水の処理水とを流入させるのが好ましい。
【実施例】
【0025】
<実験例1>
電子デバイス工場排水(電気伝導率100mS/m、TDS600mg/L、TOC10mg/L)を1段のみ設置された高圧型逆浸透膜分離装置(RO膜はSWC4+:日東電工製。運転圧力5.52MPaにおけるフラックス24.6m/m・D、NaCl除去率99.8%(NaCl32000mg/L))に回収率73%の条件で通水した。その結果、透過水のTOCは0.85mg/Lとなった。膜面有効圧力は2.0MPaであった。
【0026】
<実験例2>
実験例1と同じ電子デバイス工場排水を、超低圧RO膜(ES−20:日東電工製)を充填した2段RO装置に前段RO回収率75%、後段RO回収率90%、全体水回収率73%の条件(後段RO濃縮水は前段RO給水に合流)で通水した。その結果、第1段目RO透過水のTOC濃度は1.35mg/L、第2段目RO透過水のTOC濃度は0.9mg/Lとなった。膜面有効圧力は1段目0.5MPa、2段目0.75MPaであった。
【0027】
この実験例1,2より、高圧型逆浸透膜分離装置単段通水と超低圧型逆浸透膜分離装置の2段通水とで、同等の水質の透過水が得られることが認められた。また、実験例2において、第1段目RO透過水のTOC濃度は1.35mg/Lと高く、超低圧型逆浸透膜分離装置の単段設置ではTOC及びTDSの除去が高圧型逆浸透膜分離装置よりも低いことが認められた。
【0028】
そこで、上記高圧型逆浸透膜分離装置を用い、図2に示す既存のフローの超純水製造装置の一次純水システムを図1のように高圧型逆浸透膜分離装置単独設置とし、膜面有効圧力を2.0MPaとして運転したところ、従前(2段RO。1段目の膜面有効圧力0.5MPa、2段目の膜面有効圧力0.75MPa)と同様の水質の超純水がほぼ同生産水量にて製造されることが認められた。
【符号の説明】
【0029】
1 前処理システム
2 一次純水システム
3 サブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、少なくとも該一次純水システムに逆浸透膜分離装置が設けられている超純水製造装置において、該一次純水システムに設置された逆浸透膜分離装置が高圧型逆浸透膜分離装置であり、且つ単段にて設置されていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記高圧型逆浸透膜分離装置は、標準運転圧力5.52MPa以上、標準運転圧力における純水フラックス0.5m/m・D以上、NaCl除去率99.5%(NaCl32000mg/L)以上の特性を有することを特徴とする超純水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、原水を処理する前処理システムを有し、該前処理システムの処理水が前記一次純水システム及びサブシステムで順次処理される超純水製造装置であって、前記高圧型逆浸透膜分離装置への給水のTDSが1500mg/L以下であることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記高圧型逆浸透膜分離装置の膜面有効圧力が1.5〜3MPaであることを特徴とする超純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−245439(P2012−245439A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117142(P2011−117142)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】