説明

超臨界水ガス化に伴う活性炭回収方法

【課題】活性炭の存在下でリンを含有するバイオマスを高温高圧ガスで処理し、処理後の排水から活性炭を回収する方法を提供すること。
【解決手段】活性炭の存在下において、リンを含有するバイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理し、熱水処理することにより得られた、前記活性炭を含む前記リンを含有するバイオマスのスラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理する。そして、前記水熱処理にて得られた排水に水より軽く、親油性及び揮発性の液体を添加し、攪拌して静置すると、2層(有機層と無機層)に分離する。有機層を回収することにより、活性炭を回収することができ、回収された有機層から揮発性の液体を揮発することにより、活性炭を精製することができる。一方、無機層を回収することにより、リン酸塩を回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭の存在下でリンを含有するバイオマスを高温高圧ガスで処理し、処理後の反応物から活性炭を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜排泄物は、堆肥化することにより農地に還元するといった、循環利用を行うことにより処理されていた。しかしながら、堆肥は供給過剰の状態になってきているため、上記方法とは異なる、家畜排泄物を処理するための新しい方法が望まれていた。
【0003】
このような現状から、近年、家畜糞尿、生ゴミ、食品廃棄物、下水汚泥等のバイオマスを原料としたエネルギー変換技術の開発がなされている。
【0004】
バイオマスを原料としたエネルギー変換技術としては、例えば、微生物によりバイオマスを発酵させて燃料ガスを生成する方法、バイオマスに含まれる水を利用して加圧熱水処理を行い、燃料ガスを生成する方法等が知られており、後者の改良方法としては、触媒を用いてウエット・バイオマスを超臨界水でガス化し、燃料ガスを生成する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−502891号公報
【特許文献2】特開2002−105466号公報
【特許文献3】特開2002−105467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バイオマスを原料としたエネルギー変換技術から得られた反応副産物は、有効利用されることはなかった。そこで、本発明は、活性炭の存在下においてリンを含有するバイオマスを高温高圧ガスで処理し、処理後の反応物から効率よく活性炭を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の実施例に示すように、活性炭の存在下で鶏糞を高温高圧ガスで処理したところ、得られた反応物(超臨界水ガス化副産物)から活性炭を回収できることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明に係る活性炭の回収方法は、活性炭の存在下においてリンを含有するバイオマスを高温高圧ガスで処理し、前記高温高圧ガス処理によって得られる反応物から前記活性炭を回収する方法であって、活性炭の存在下において、リンを含有するバイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理し、熱水処理することにより得られた、前記活性炭を含む前記リンを含有するバイオマスのスラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理し、前記水熱処理にて生成した、灰分及び活性炭を含有する液体に水より軽く、親油性及び揮発性を有する液体を加えて攪拌し、二層に分離させて、活性炭を含有する層を回収すること、を特徴とする。ここで、水熱処理にて生成した、生成ガス、灰分、活性炭、及び水を、前記生成ガスと、前記灰分、前記活性炭、及び水を含む混合液とに分離する工程を含むことが好ましい。
【0009】
なお、回収された、前記活性炭を含有する層から、前記親油性及び揮発性を有する液体を揮発させることによって、活性炭を精製することができる。
【0010】
また、二層のうち、リン酸塩を含有する他方の層を回収することによって、灰分を含有する液体から、リン酸塩を精製することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、活性炭の存在下において、リンを含有するバイオマスを高温高圧ガス処理して燃料ガスを製造する際に、処理後の排水から効率よく活性炭を回収することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態として説明するバイオマスガス化発電システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態において、連続運転が可能な流動層反応器の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態として説明するスラリー供給装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態として説明する活性炭回収システムの概略構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態において、発電装置の排熱温度が反応器での反応温度より高い場合のバイオマスガス化発電システムの全体構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態において、発電装置190の排熱の温度が反応器160での反応温度より低く、前処理装置140での処理温度より高い場合のバイオマスガス化発電システムの全体構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態において、活性炭回収における処理フローを示す図である。
【図8】本発明の一実施例における物質BとヒドロキシアパタイトとのXRDパターンを比較した図である。
【図9】本発明の一実施例における原料である鶏糞とヒドロキシアパタイトとのXRDパターンを比較した図である。
【図10】本発明の一実施例において、有機溶液層と無機溶液層の2層がある混合溶液では、活性炭が有機溶液層に来ることを示す図である。小瓶中の有機溶媒は、左から、軽油、サラダ油、ホワイトガソリン、n−ヘキサンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上記知見に基づき完成した本発明にかかる活性炭回収方法の好適な実施の形態を、実施例及び添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0015】
==システムの構成==
本発明にかかるシステムは、バイオマスをガス化してメタンや水素等の燃料ガスを効率的に生成し、得られた燃料ガスで発電して電力を供給するための「バイオマス化発電システム」と、このバイオマス化発電システムから得られた副産物から活性炭およびリン酸塩を回収するための「回収システム」からなる。これらのシステムは、それぞれ独立して設計することができるため、以下に、各システムの構成について、別個に説明する。なお、以下のシステムでは、リンを含有するバイオマスを使用する。
【0016】
==バイオマスガス化発電システムの構成==
図1は、本発明の一実施形態として説明するバイオマスガス化発電システムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200は、調整タンク100、破砕機110、供給ポンプ120、第一熱交換器130、第二熱交換器131、前処理装置140、スラリー供給装置150、反応器160、加熱器161、予熱器162、加熱器163、予熱器164、クーラー170、減圧器171、気液分離器180、ガスタンク181、触媒回収器182、固液分離器183、発電装置190等を備える。
【0017】
前処理装置140は、バイオマスのスラリー体を形成させる装置である。バイオマスのスラリー体の形成は、活性炭の存在下において、バイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理することにより行われる。
【0018】
調整タンク100は、バイオマスの種類、量、含水率等に応じて水や活性炭の混合量を調整しながら、バイオマス、水、活性炭等を混合するタンクである。
【0019】
破砕機110は、調整タンク100で混合した混合物を破砕して、混合物中のバイオマスをあらかじめ均一な大きさ(好ましくは平均粒径が500μm以下、より好ましくは平均粒径が300μm以下)にするための装置である。
【0020】
供給ポンプ120は、破砕機110で破砕した混合物を前処理装置140に移送する装置である。
【0021】
反応器160は、超臨界水によりバイオマスをガス化する装置である。超臨界水によるバイオマスのガス化は、前処理装置140において熱水処理された、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を、前記活性炭を利用して、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理することにより行われる。このようにスラリー体を超臨界水で処理することにより、バイオマスを分解し、水素ガス、メタン、エタン、エチレン等の燃料ガスを生成することができる。
【0022】
上述の反応器160としては、活性炭の存在下で、上述の条件下でバイオマスのスラリー体を水熱処理することができる装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、長い配管で構成された反応器、流動層反応器等を用いることができる。なお、本実施の形態においては、反応器160が連続運転が可能な流動層反応器である場合について説明する。
【0023】
図2に、本発明の一実施形態において、連続運転が可能な流動層反応器160の概略構成を示す。図2に示すような反応器160は、反応器160内に活性炭を含むバイオマスのスラリー体を下方から導入する導入口210と、反応器160内で前記スラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理することにより生成された燃料ガスを含む生成ガス及び灰分、並びに、活性炭及び水(超臨界水)を上方から反応器160外に排出する排出口220と、スラリー体の導入により反応器160内に流動層を形成する流動媒体230と、導入口210から導入したスラリー体を流動層の下方で分散させる分散部240と、を備えている。
【0024】
前記流動媒体230は、スラリー体の導入速度では排出されない形状で構成されている。すなわち、導入口210からスラリー体を導入する速度では流動層を形成するが、排出口220から排出できない重さで構成されている。なお、排出口220にメッシュ状のプレートが設置されている場合には、流動媒体230は当該プレートの網目より大きいサイズで構成されていてもよい。前記流動媒体230としては、超臨界状態でも粒径に変化を及ぼさない、すなわち、流動媒体が壊れにくいものであれば特に制限されるものではないが、例えば、アルミナボール、ジルコニアボール、シリカボール等の媒体を挙げることができる。
【0025】
分散部240は、例えば、流動層反応器等で用いられる既知の分散板(例えば、メッシュ状のプレート等)であってもよいが、スラリー体の目詰まりによって圧力が増加するのを防ぐために、スラリー体を導入する速度では流動しない形状(例えば、スラリー体を導入する速度では流動できない重さ)で構成された球状媒体(例えば、アルミナボール等の球状媒体)を積み重ねて形成した層であることが好ましい。
【0026】
以上のような反応器160を用いることにより、導入口210から導入したスラリー体に対して活性炭の存在下で超臨界水によるガス化反応を行うことができ、これにより生成された生成ガス(燃料ガスを含む)及び灰分、並びに、活性炭及び水(超臨界水)等の流動媒体230より軽く、径が小さな物質を排出口220から排出することができるようになる。また、このような反応器160は、上述のような構成により、反応器内160に灰分や活性炭等が堆積するのを抑制することができるので、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を連続的に導入し、超臨界水によるガス化反応を継続して行うことが可能となる。
【0027】
スラリー供給装置150は、前処理装置140において熱水処理を行うことにより得られた、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を反応器160に供給する装置である。スラリー供給装置150は、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を供給できる装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、高圧ポンプやモーノポンプ等を用いることができるが、図3に示すような固体成分と液体成分とに分離しやすい上述のスラリー体を一定濃度で反応器160に連続供給することができる装置を用いることが好ましい。
【0028】
図3は本発明の一実施形態として説明するスラリー供給装置150の概略構成を示す図である。図3に示すようなスラリー供給装置150は、前処理装置140において熱水処理を行うことにより得られた、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を前処理装置140から受け入れ、反応器160に供給する装置である。このスラリー供給装置150は、2つのシリンダー310,320、軸330、2つのピストン331,332、2つの攪拌機340,350、水注入装置360、バルブ361,362,363,364,373,374,375,376、三方弁371,372等を備える。
【0029】
水注入装置360は、水を注入するシリンダー310,320を交互に切り替えて各シリンダー310,320に水を注入する装置である。水注入装置360は、例えば、ポンプ、高圧ポンプ、背圧ポンプ等である。
【0030】
シリンダー310,320には、水注入装置360から水を注入し、注入した水を排出する注入/排出口が設けられている。また、シリンダー310,320には、前処理装置140からスラリー体を受け入れ、受け入れたスラリー体を反応器160に供給する受入/供給口が設けられている。
【0031】
シリンダー310,320内には、水注入装置360から注入された水と、前処理装置140から受け入れたスラリー体とを仕切るようにピストン331,332が配置されている。
【0032】
軸330の両端にはピストン331,332が備えられている。ピストン331,332は、水注入装置360からシリンダー310,320内に水が注入されることによりシリンダー310,320内を移動し、シリンダー310,320内のスラリー体を押圧して反応器160にスラリー体を供給する。また、一方のピストン331,332の移動に伴い、他方のピストン332,331が一方のピストン331,332と同軸方向に移動し、前処理装置140からスラリー体を受け入れるとともに、シリンダー320,310内の水を排出する。
【0033】
なお、シリンダー310,320内の水とスラリー体が混ざらないようにするために、ピストン331,332にピストンリングを設け、ピストン331,332とシリンダー310,320との気密性を高めてもよい。
【0034】
本実施の形態においては、軸330の中央部にストッパー333が設けられている。ストッパー333は、ピストン331,332と攪拌機340,350との接触を防止する装置である。このストッパー333がシリンダー310,320に接触すると、ピストン331,332が攪拌機340,350の方へ移動できなくなるような仕組みとなっている。
【0035】
バルブ361,362,363,364は、水を水注入装置360からシリンダー310,320に流れるように切り替えたり、シリンダー310,320内の水を排出するように切り替えたりする装置である。バルブ361,362,363,364は、例えば、電磁バルブ等である。
【0036】
本実施の形態においては、バルブ361,362,363,364は、水注入装置360の注水により、水がシリンダー310,320に流れるように切り替える。また、バルブ361,362,363,364は、シリンダー310,320からの排水により、水が排出されるように切り替える。このような切り替えは、例えば、水注入装置360からの注水やシリンダー310,320からの排水に伴い、電気的に行うことができる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、水注入装置360は水の注入先を当該シリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替え、バルブ363,361は水が水注入装置360からシリンダー320,310に流れるように開放し、バルブ364,362は水注入装置360からシリンダー320,310に注入される水が排出されないように閉鎖し、バルブ362,364はシリンダー310,320から水が排出されるように開放し、バルブ361,363はシリンダー310,320から排出される水が水注入装置360に流れないように閉鎖する制御をそれぞれ行えばよい。
【0037】
なお、本実施の形態においては、スラリー供給装置150にバルブ361,362,363,364を設けているが、これらのバルブ361,362,363,364の代わりに2つの三方弁を設けて、水注入装置360の注水により水がシリンダー310,320に流れるように切り替えたり、シリンダー320,310からの排水により水が排出されるように切り替えたりしてもよい。このような切り替えは、例えば、逆流を防止する弁等によって機械的に行うこともできるが、水注入装置360からの注水やシリンダー310,320からの排水に伴い、電気的に行うこともできる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、水注入装置360は水の注入先を当該シリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替え、一方の三方弁は水が水注入装置360からシリンダー320,310に流れるように切り替え、他方の三方弁はシリンダー310,320から水が排出されるように切り替える制御をそれぞれ行えばよい。
【0038】
三方弁371,372は、ピストン331,332の往復運動により、スラリー体を前処理装置140からシリンダー310,320に流れるように切り替えたり、シリンダー310,320内に受け入れたスラリー体をシリンダー310,320から反応器160に流れるように切り替えたりする装置である。
【0039】
本実施の形態においては、三方弁371,372は、前処理装置140からスラリー体を受け入れる際に、スラリー体が前処理装置140からシリンダー310,320に流れるように切り替える。また、三方弁371,372は、シリンダー310,320からのスラリー体供給により、スラリー体がシリンダー310,320から反応器160に流れるように切り替える。このような切り替えは、例えば、逆流を防止する弁等によって機械的に行うこともできるが、シリンダー310,320からのスラリー体供給や前処理装置140からのスラリー体供給に伴い、電気的に行うこともできる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、三方弁371,372は、スラリー体が前処理装置140から当該シリンダー310,320に流れるように切り替え、他方の三方弁372,371は、スラリー体が他方のシリンダー320,310から反応器160に流れるように切り替える制御をそれぞれ行えばよい。
【0040】
なお、上述のストッパー333とシリンダー310,320との接触の検知は、例えば、ストッパー333とシリンダー310,320とが接触する領域の一部にスイッチを設け、当該スイッチが押圧されたことにより行ってもよい。
バルブ373,374は、スラリー体を反応器160に供給するシリンダーを、一方のシリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替える際、すなわち、水注入装置360が水を注入するシリンダー310,320を、一方のシリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替える際に、シリンダー310,320から反応器160にスラリー体が流れる(供給される)のを一時的に遮断する装置である。バルブ375,376は、水注入装置360が水を注入するシリンダー310,320を、一方のシリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替える際に、前処理装置140からシリンダー310,320にスラリー体が流れる(うけいれられる)のを一時的に遮断する装置である。バルブ373,374,375,376は、例えば、電磁バルブ等である。
【0041】
上述のバルブ373,374,375,376による遮断は、例えば、水注入装置360からの注水やシリンダー310,320からの排水に伴い、電気的に行ってもよい。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、バルブ373,374はシリンダー310,320から反応器160へのスラリー体の流れ(供給)を遮断するように閉鎖し、バルブ376,375は前処理装置140からシリンダー320,310へのスラリー体の流れ(受入)を遮断するように閉鎖し、水注入装置360が水の注入先を当該シリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替えた後に、バルブ373,374のうち1のバルブ374,373が三方弁372,371を介してスラリー体をシリンダー320,310から反応器160に流れるように開放し、バルブ375,376のうち1のバルブ375,376がスラリー体を前処理装置140からシリンダー310,320に流れるように開放する制御をそれぞれ行えばよい。
【0042】
攪拌機340,350は、バルブ375,376及び三方弁371,372を介して前処理装置140からシリンダー310,320内に受け入れるスラリー体を攪拌する装置である。このように、シリンダー310,320内に攪拌機340,350を備えてスラリー体を攪拌することにより、スラリー体に含まれる活性炭やバイオマスの粒子等の固形物の沈殿を防止することができ、一定濃度のスラリー体を反応器160に供給することができるようになる。
【0043】
本実施の形態においては、スラリー供給装置150と反応器160との間に、スラリー供給装置150から供給されるスラリー体を蓄圧する蓄圧器380と、前処理装置140とスラリー供給装置150との間に、スラリー供給装置150に受け入れられるスラリー体を蓄圧する蓄圧器381と、を備える。これらを備えることにより、スラリー供給装置150と反応器160とを接続する配管内の圧力や、前処理装置140とスラリー供給装置150とを接続する配管内の圧力を一定に保つことができ、脈動やウォーターハンマー(水撃)等の発生を防止することが可能となる。
【0044】
なお、上述の水注入装置360が行う水の注入先の切り替えは、軸330に設けたストッパー333がシリンダー310,320に接触したタイミングで電気的に行ってもよいし、各シリンダー310,320内の圧力が上昇したのを検知して行ってもよい。また、水注入装置360がシリンダー310,320に注入する水は、シリンダー310,320に受け入れられるスラリー体の温度と同じ温度の水であることが好ましい。これにより、シリンダー310,320に注入された水によってシリンダー310,320が冷やされ、シリンダー310,320に受け入れられたスラリー体の温度が低下するのを抑制することができるようになる。なお、水注入装置360によるシリンダー310,320への注水は、反応器160にスラリー体が一定流量で供給されるように、一定流量で行うことが好ましい。
【0045】
また、上述においては、スラリー供給装置150の軸330にストッパー333を設けてピストン331,332と攪拌機340,350との接触を防止しているが、シリンダー310,320の長手方向の長さと軸330の長さとを調節して、ピストン331,332が攪拌機340,350と接触するのを防止してもよいし、ピストン331,332と攪拌機340,350とが接触しない量の水を、水注入装置360が各シリンダー310,320に交互に注入するようにして、ピストン331,332が攪拌機340,350と接触するのを防止してもよい。また、ピストン331,332と攪拌機340,350とが接触しないように、シリンダー310,320内にピストン331,332の移動を制御するストッパー(例えば、凹凸等)を設けてもよい。
【0046】
さらに、上述においては、水注入装置360から水を注入し、注入した水を排出する口(注入/排出口)をシリンダー310,320に1つ設けているが、水注入装置360から水を注入する注入口と、注入した水を排出する排出口との2つの口をシリンダー310,320に設けてもよい。
【0047】
また、上述においては、前処理装置140からスラリー体を受け入れ、受け入れたスラリー体を反応器160に供給する口(受入/供給口)をシリンダー310,320に1つ設けているが、前処理装置140からスラリー体を受け入れる受入口と、受け入れたスラリー体を反応器160に供給する供給口との2つの口をシリンダー310,320に設けてもよい。
【0048】
予熱器162は、スラリー供給装置150から反応器160に供給される、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を予め加熱する装置である。バイオマスガス化発電システム200に予熱器162を備えることにより、反応器160に所定の温度のスラリー体を供給することが可能となる。
【0049】
クーラー170は、反応器160から排出される排出物を冷却する装置である。反応器160から排出される排出物には、爆発性の高い燃料ガス(例えば、水素、メタン、エタン、エチレン等)や水蒸気(超臨界水)等の生成ガスが含まれているので、危険性を低減させたり、水蒸気を水に変換させたりする目的でクーラー170を本発明のバイオマスガス化発電システム200に設けている。なお、本実施の形態においては、反応器160から排出された排出物を冷却する装置としてクーラー170を例に挙げて説明したが、反応器160から排出された排出物を冷却することができる装置であればどのような装置を用いてもよい。
【0050】
減圧器171は、反応器160から排出される排出物の圧力を減圧する装置である。これにより、高圧状態の燃料ガスによる危険性を未然に防止することができるようになる。
【0051】
気液分離器180は、反応器160から排出された排出物を気体成分(例えば、燃料ガス等の生成ガス)と液体成分(水、あるいは、水、灰分、活性炭等を含む混合液)とに分離する装置である。気液分離器180は、例えば、セパレーター等の既存の気液分離器を用いることができる。
【0052】
ガスタンク181は、気液分離器180によって分離された気体成分(生成ガス)を貯える容器(好ましくは耐圧容器)である。
【0053】
加熱器161は、ガスタンク181に貯えられた生成ガス(燃料ガス)の一部を酸素を含むガス(例えば、酸素ガス、空気等)中で燃焼して反応器160を加熱し、スラリー体を所定の温度に加熱する装置である。また、加熱器163は、ガスタンク181に貯えられた生成ガス(燃料ガス)の一部を酸素を含むガス(例えば、酸素ガス、空気等)中で燃焼して予熱器162を加熱し、スラリー体を所定の温度に加熱する装置である。加熱器161,163は、例えば、バーナー等の、燃料ガスを燃焼して加熱する既存の装置である。
【0054】
揮発性液体貯蔵槽184は、気液分離器180によって分離された液体成分(水、灰分、活性炭等を含む混合液)に添加するための揮発性液体を貯える容器(好ましくは耐圧容器)である。揮発性液体貯蔵槽184内部を加圧状態にしておくことが好ましく、それによって、揮発性液体の揮発を抑制し、液体の状態で貯蔵することが可能になる。ここで、揮発性液体とは、水より軽く、親油性及び揮発性を有する液体のことであり、例えば、ヘキサン、ホワイトガソリンなどが挙げられる。
【0055】
揮発性液体分離槽182は、気液分離器180によって分離された液体成分と揮発性液体の混合溶液を攪拌した後静置することにより、揮発性液体を含む有機溶液層と水を含む無機溶液層の2層に分離するための容器である。気液分離器180によって分離された液体成分には、灰分、活性炭等が含まれているが、活性炭は親油性であるため、有機溶液層側に取り込まれ、リン酸塩は親油性でなく親水性であるため、無機溶液層側に取り込まれる。このようにして、活性炭とリン酸塩を異なる2層に分離することができる。なお、2層に分離するための方法としては、静置に限らず、例えば、より迅速に層分離するために遠心してもよく、そのための遠心分離装置などを設けてもよい。
【0056】
揮発性液体回収槽183は、揮発性液体分離槽182で分離された揮発性液体を含む有機溶液層を回収し、回収された有機溶液から、揮発性液体を揮発させることにより、活性炭を精製するための容器である。
【0057】
第一熱交換器130は、前処理装置140において熱水処理することにより得られ、反応器160で水熱処理される活性炭を含むバイオマスのスラリー体の熱を利用して、前処理装置140で熱水処理されるバイオマス等を予熱する装置である。
【0058】
第二熱交換器131は、反応器160において水熱処理することにより生成された生成ガス等を含む、反応器160から排出される排出物の熱を利用して、反応器160で水熱処理される活性炭を含むバイオマスのスラリー体を予熱する装置である。
【0059】
以上のように、本発明のバイオマスガス化発電システム200に熱交換器130,131を備えることにより、エネルギーを有効に利用することができるので、低エネルギー・低コストでバイオマスから燃料ガスを生成することができるようになる。また、各装置140,160での加熱時間が短縮されるのでバイオマスから燃料ガスの生成を効率的に行うことができるようになる。従って、熱交換器130,131を備えたバイオマスガス化発電システム200は、経済性に優れているといえる。
【0060】
発電装置190は、ガスタンク181に貯えられた生成ガス(燃料ガス)を燃料として利用し、発電する装置である。発電装置190は、例えば、ガスエンジン(レシプロエンジン、ロータリーエンジン)、ガスタービン、スターリングエンジン、燃料電池等の既存の装置である。
【0061】
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、発電装置190が生成ガスを燃料として発電することにより発電装置190から排出された排ガスの熱(排熱)を利用して、バイオマスを加熱する熱交換器を前処理装置140に備えたり、加熱器161,163で使用する酸素を含むガスを予熱する熱交換器を有する予熱器164をバイオマスガス化発電システム200に備えたりしている。このように、本発明のバイオマスガス化発電システム200に熱交換器を有する前処理装置140及び/又は予熱器164を備えることによりエネルギーを効率よく利用することができるので、低エネルギー・低コストでバイオマスからメタンや水素等の燃料ガスを生成することができるばかりではなく、低エネルギー・低コストで発電して電力を供給することも可能となる。従って、加熱燃料の使用量の削減、排ガス発生量の低減等を図ることができるようになる。
【0062】
上述のように、発電装置190の排熱の温度に関係なく、前処理装置140と予熱器164で発電装置190の排熱を利用してもよいが、発電装置190の排ガス温度に応じて排熱の利用の仕方を適宜変更してもよい。具体的には、発電装置190の排ガス温度が反応器160での反応温度より高い場合には、図5に示すように予熱器164のみで排熱を利用してもよいし、前処理装置140のみで排熱を利用してもよい。また、発電装置190の排ガス温度が反応器160での反応温度より低く、前処理装置140での処理温度より高い場合には、図6に示すように前処理装置140のみで排熱を利用してもよい。このように、発電装置190の排ガス温度に応じて排熱の利用の仕方を適宜変更することにより、発電装置190の排熱をより有効に利用することが可能となる。
【0063】
さらに、本実施の形態においては、図1、図5、及び図6に示すように、加熱器163により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスの熱を利用して、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を加熱する熱交換器を反応器160に備えている。また、反応器160で前記スラリー体を加熱するのに利用した排ガスの熱、及び/又は、加熱器161により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスの熱を利用して、バイオマスを加熱する熱交換器を前処理装置140に備えたり、加熱器161、163で使用する酸素を含むガスを予熱する熱交換器を有する予熱器164をバイオマスガス化発電システム200に備えたりしている。これらのように、反応器160、前処理装置140、予熱器164等に熱交換器を備え、加熱器163により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスの熱、反応器160で前記スラリー体を加熱するのに利用した排ガスの熱、加熱器161により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスの熱等を利用することにより、エネルギーをより有効に利用することが可能となる。
【0064】
なお、上述においては、加熱器163により得られた排ガスの熱は、反応器160で利用してから前処理装置140あるいは予熱器164で利用しているが、前処理装置140あるいは予熱器164で直接利用してもよい。また、本実施の形態においては、図1に示すように、前処理装置140や予熱器164に導入する導入物(具体的には、バイオマスや酸素を含むガス等)を、発電装置190の排熱を利用する熱交換器で加熱した後、反応器160で前記スラリー体を加熱するのに利用した排ガスの熱、及び/又は、加熱器161により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスの熱を利用する熱交換器で加熱しているが、これらの位置はそれぞれの排ガスの温度に応じて適宜変えてもよい。
【0065】
さらに、上述では、反応器160から排出される排出物の熱を利用して上記スラリー体を予熱する第二熱交換器131を本発明のバイオマスガス化発電システム200に備えているが、反応器160において水熱処理することにより生成された生成ガス等を含む、反応器160から排出される排出物の熱を利用して、前処理装置140で熱水処理されるバイオマス等を予熱する熱交換器を本発明のバイオマスガス化発電システム200に備えてもよい。
【0066】
また、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200にあらかじめバイオマスを熱水処理する前処理装置140を備えることにより、バイオマスを高分子から低分子に分解することができるので、反応器160において処理されるバイオマスと水や活性炭との接触効率を高め、チャーやタールの発生を防止するとともにバイオマスから燃料ガスを効率よく生成することが可能になる。
【0067】
さらに、前処理装置140においてバイオマスを熱水処理することにより流動性に優れたバイオマスのスラリー体を形成させることができるので、このスラリー体をスラリー供給装置150によって反応器160にスムーズに供給することができるようになり、反応器160への供給においてバイオマスによる機器や配管等の目詰まりを防止することが可能になる。
【0068】
また、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200により、前処理装置140での熱水処理において用いた活性炭を、反応器160での水熱反応においても利用することができるので、触媒の消費量を削減することが可能になる。
【0069】
さらに、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200に図2に示すような反応器160を備えることにより、超臨界水でバイオマスをガス化することにより得られる灰分(残渣)が反応器160内に溜まることがなくなり、バイオマスの超臨界水によるガス化処理を連続的に行うことができ、バイオマスから燃料ガスをより効率的に生成することが可能となる。
【0070】
また、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200に図3に示すようなスラリー供給装置150を備えることにより、固体成分と液体成分とに分離しやすい上述のスラリー体を一定濃度で反応器160に連続供給することができるので、超臨界水のガス化効率が最も高い濃度条件で活性炭やバイオマス等を含むスラリー体を反応器160に連続供給でき、バイオマスから燃料ガスをより効率的に生成することが可能となる。
【0071】
さらに、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200に、クーラー170、減圧器171、気液分離器180等を備えることにより、反応器160から排出される排出物から燃料ガスを含む生成ガスを安全に回収することができるようになる。
【0072】
また、本発明に係るバイオマスガス化発電システム200にバイオマスを破砕する破砕機110を備えることによりバイオマスをあらかじめ破砕することができるので、バイオマスのスラリー化やガス化の効率を高めることができるようになる。
【0073】
なお、本実施の形態においては、調整タンク100で活性炭とバイオマスと水を混合した混合物を破砕機110によって処理し、供給ポンプ120により前処理装置140に供給しているが、活性炭は前処理装置140に直接供給してもよいし、バイオマスと水との混合物を破砕機110で処理した後に活性炭を混合し、前処理装置140に供給してもよい。
【0074】
==バイオマスガス化発電方法==
次に、本実施の一形態として、超臨界水によるガス化反応によりバイオマスから燃料ガスを生成し、燃料ガスを利用して発電する方法について説明する。
【0075】
まず、調整タンク100でバイオマスと活性炭と水を混合した混合物を調製する。活性炭とバイオマス(乾燥状態のバイオマス)との質量比としては、1:5〜20:1の範囲内であることが好ましく、バイオマスのガス化効率が高い1:2〜20:1の範囲内であることが特に好ましい。また、混合する水の量は、バイオマスの含水率が70〜95wt%となるように調整することが好ましい。これにより、バイオマスの超臨界水によるガス化効率を高めることができる。
【0076】
上述のように、バイオマスに混合させる活性炭と水の量を調整して、これらを混合した混合物は、破砕機110で破砕され、供給ポンプ120により第一熱交換器130を介して前処理装置140に移送される。前処理装置140に供給されたバイオマスは、バイオマスとともに供給された活性炭の存在下で、所定の圧力及び所定の温度の条件下で熱水処理される。
【0077】
なお、熱水処理の条件としては、100〜250℃の範囲内の温度であって、0.1〜4MPaの範囲内の圧力下であれば特に制限されるものではないが、バイオマスを高分子から低分子へと分解する処理の効率の観点から、これらの範囲内の圧力下における水の飽和温度であることが好ましく、さらに省エネルギーの観点から、179.8℃の温度及び1.0MPaの圧力下であることが特に好ましい。ここで、熱水処理を100℃〜250℃の範囲内の温度で行うのは、100℃未満ではバイオマスの分解反応率が低く、250℃を超えるとタールやチャーの発生が懸念されるからである。また、熱水処理を0.1〜4MPaの範囲内の圧力で行うのは、0.1MPa未満ではバイオマスの分解反応率が低く、4MPaより高い圧力をかけても分解反応率に与える影響はそれ程ないのではないかと考えたためである。
【0078】
このようにバイオマスを活性炭の存在下で熱水処理することにより、バイオマスを高分子から低分子に効率よく分解することができるようになる。
【0079】
上述のようにして得られた、活性炭を含むバイオマスのスラリー体は、第一熱交換器130で供給ポンプ120から前処理装置140に供給される混合物に熱を提供し、スラリー供給装置150により第二熱交換器131及び予熱器162を介して反応器160に移送される。なお、予熱器162を通過したスラリー体は、所定の温度まで加熱される。
【0080】
反応器160に供給されたバイオマスのスラリー体は、反応器160に導入され、バイオマスとともに供給された活性炭の存在下で、所定の圧力及び所定の温度の条件下で水熱処理される。水熱処理の条件としては、374℃以上の温度で、かつ、22.1MPa以上の圧力下であれば特に制限されるものではないが、タールやチャーの発生を抑制するとともに反応効率を高めることができる温度(600℃)及び圧力(25〜35MPaの範囲内)下で行うことが好ましく、機器の負担や劣化防止、さらには省エネルギーの観点から、600℃,25MPaで行うことが特に好ましい。なお、バイオマスから変換された燃料ガス中の成分の比を制御したい場合には、これらの温度及び圧力の条件を調節するとともに、流体密度や反応時間(反応器160内でのバイオマスの滞留時間)を制御することにより可能となる。
【0081】
このようにバイオマスのスラリー体を超臨界水で反応させることにより、バイオマスのスラリー体から燃焼ガスを生成することが可能になる。また、バイオマスを予め高分子から低分子化させることにより、水や活性炭との接触効率を高めることができ、さらには、バイオマスのガス化反応時間を短縮させることができるので、バイオマスのスラリー体から水素ガス、メタン、エタン、エチレン等の燃料ガスをより効率的に生成することができるようになる。
【0082】
反応器160内でバイオマスのスラリー体を水熱処理することにより生成された生成ガス等は、反応器160から排出される。この排出物は、第二熱交換器131において、スラリー供給装置150から反応器160に供給される、活性炭を含むバイオマスのスラリー体に熱を提供した後、クーラー170及び減圧器171によって冷却・減圧され、気液分離器180へと移送される。気液分離器180に供給された上記排出物は、燃料ガスを含む生成ガス(気体成分)と、水、あるいは、水、灰分、活性炭等を含む混合液(液体成分)とに分離され、生成ガスはガスタンク181に貯えられる。なお、気液分離器180によって分離された混合液に、水以外の灰分や活性炭等が含まれている場合には、混合液を触媒回収器182によって活性炭、灰分、及び水にそれぞれ分離し、活性炭を回収してもよい。これにより、活性炭を再利用することができるようになる。また、気液分離器180によって分離された液体成分(灰分を含む)、又は、触媒回収器182によって分離された灰分、又は、固液分離器183によって分離された固体を、以下の「回収システム」に利用し、活性炭、及び、ヒドロキシアパタイトを含むリン酸塩を回収することもできる。
【0083】
ガスタンク181に貯えられた生成ガス(燃料ガス)は、発電装置190、加熱器161,163に供給される。発電装置190は、供給された生成ガスを利用して発電を行い、電力を提供する。また、加熱器161,163は、供給された生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼して反応器160や予熱器162を加熱し、スラリー体を所定の温度に加熱する。
【0084】
発電装置190が生成ガスを燃料として発電することにより発電装置190から排出された排ガスは、前処理装置140や予熱器164に供給され、供給ポンプ120から前処理装置140に供給される混合物に熱を提供したり、予熱器164において加熱器161,163で使用する酸素を含むガスに熱を提供したりする。
【0085】
また、加熱器163により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスは、反応器160に供給されてスラリー体に熱を提供する。反応器160で熱を提供した排ガス、及び、加熱器161により生成ガスを酸素を含むガス中で燃焼することによって得られた排ガスは、前処理装置140や予熱器164に供給され、供給ポンプ120から前処理装置140に供給される混合物に熱を提供したり、予熱器164において加熱器161,163で使用する酸素を含むガスに熱を提供したりする。
【0086】
なお、本実施の形態において、アルカリ金属系触媒ではなく、非金属系触媒である活性炭を用いることにより、アルカリ金属系触媒が引き起こす機器や配管等の腐食による劣化を防止することができ、バイオマスガス化発電システム200の長期使用が実現可能となる。また、アルカリ金属系触媒を中和する処理工程も不要となり、作業性の効率を高めることができるようになる。上記活性炭としては、平均粒径200μm以下の粉末を用いることが好ましく、多孔質であることがより好ましい。このような活性炭を用いることにより、表面積を増やして反応効率を高めるとともに、活性炭によるバイオマスガス化発電システム200内の機器、配管等の目詰まりを防止することができる。
【0087】
また、本実施の形態において処理されるバイオマスが砂等の異物を含む排水汚泥や糞尿等である場合には、前処理装置140においてバイオマスを熱水処理する前後に、公知の分離技術(例えば、ストレイナーを用いた分離法、沈殿層を用いた分離法)によってバイオマスに含まれる砂等の異物を取り除いてもよい。これにより、砂等の異物によって生じるトラブルを防止することができるようになる。
【0088】
===活性炭回収システムの構成===
図4に、揮発性液体分離槽182、揮発性液体回収槽183、揮発性液体貯蔵槽184の構成の一例を示し、活性炭及びリン酸塩の回収方法を説明する。また、図7には、活性炭回収の際の処理フローチャートを示す。
【0089】
活性炭回収システムは、揮発性液体分離槽182、揮発性液体回収槽183、揮発性液体貯蔵槽184の他に、気液分離器180から揮発性液体分離槽182へ排水を送液するための送液管410と制御バルブ412、揮発性液体貯蔵槽184から揮発性液体分離槽182へ揮発性液体を送液するための送液管420と制御バルブ422、424と圧力調整器(減圧弁)423、揮発性液体分離槽182から揮発性液体回収槽183へ有機溶液層を回収するための送液管430と制御バルブ432、揮発性液体回収槽183から揮発性液体貯蔵槽184へ揮発性液体を回収するための送液管440と制御バルブ442、444と圧力調整器(加圧弁)443、揮発性液体回収槽183から精製された活性炭を回収するための活性炭排出口450、揮発性液体分離槽182からリン酸塩を含む無機溶液層を回収するための送液管460と制御バルブ462、等を有する。なお、これらの制御バルブを電磁弁にすること等により、全体の処理をコンピュータ制御することも可能である。
【0090】
まず、気液分離器180によって分離された液体成分(水、灰分、活性炭等を含む混合液)を、制御バルブ412を開いて、揮発性液体分離槽182に送液する。そして、内部が加圧状態になっている揮発性液体貯蔵槽184から、制御バルブ422、424を開いて、揮発性液体を揮発性液体分離槽182に送液する。それぞれが適量送液されたところで、制御バルブ412、442、444を閉じ、気液分離器180に設けられた攪拌器を作動させる。所定時間攪拌した後で、しばらく静置すると、混合溶液は、活性炭を含む有機溶液層(上層)とリン酸塩を含む無機溶液層(下層)に分離する。そして、送液管430を通して、有機溶液層だけを揮発性液体回収槽183に送液する。送液管430は、揮発性液体分離槽182の上部に設けることにより、制御バルブ432を開くだけで、上層(有機溶液層)が揮発性液体回収槽183に送られるようにすることもできる。活性炭が揮発性液体中に多量に存在するような場合、揮発性液体分離槽182に可動式へら状の器具を設け、活性炭を含む揮発性液体を掻きだすようにして、送液管430に送り込んでもよい。この際、可動式へら状器具はコンピュータ等による自動制御であることが好ましい。
【0091】
揮発性液体回収槽183に回収された有機溶液に対し、制御バルブ442、444を開くと同時に、圧力調整器443によって揮発性液体回収槽183内を陰圧にすることにより、有機溶液から揮発性液体を揮発させることができる。気化した揮発性液体は、圧力調整器443で加圧され、液体の状態で揮発性液体貯蔵槽184に回収される。このようにすることで、揮発性液体を再利用することが可能になる。
【0092】
揮発性液体回収槽183の揮発性液体が完全に気化したところで、制御バルブ442、444を閉じ、活性炭排出口450から揮発性液体回収槽183内の活性炭を取り出して回収することができる。こうして得られた活性炭をさらに精製して再利用することもできる。
【0093】
一方、揮発性液体分離槽182で分離させた無機溶液層は、制御バルブ462を開くことにより、送液管460を通じて回収することができる。送液管460は、揮発性液体分離槽182の下部に設けることにより、制御バルブ462を開くだけで、下層(無機溶液層)を回収できるようにすることもできる。こうして回収された無機溶液には、リン酸塩が含有されており、さらにリン酸塩を精製して再利用することも可能である。
【0094】
このようにして、バイオマス処理後の排水から、活性炭を回収するとともに、リン酸塩を回収することが可能になる。
【実施例】
【0095】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0096】
[実施例1]
水97.6質量部、鶏糞2質量部、及び粒径20μmの活性炭0.4質量部を攪拌混合し、180℃,1.1MPaの条件下で熱水処理したバイオマスのスラリー体を、高圧ポンプにより管型反応器に圧入し、600℃,25MPaの条件下で、超臨界水による反応を行った。また、対照実験として、活性炭を添加しないで同様に超臨界水によるガス化反応を行った。その結果、活性炭を添加しない場合には、炭素ガス化率が73%であるのに対し、活性炭を0.4質量部添加した場合には、炭素ガス化率が88%と上昇することが明らかになった。
【0097】
[実施例2]
次に、水80質量部、セルロース粉末20質量部、及び平均粒径100μmの活性炭20質量部を攪拌混合してスラリーを調製した。その後、攪拌機を備えた167mlのオートクレーブにスラリー40mlを注入し、圧力25MPaで攪拌しながら400℃まで温度上昇させて1時間保持して超臨界水によるガス化反応を行った。反応後、室温まで冷却し、生成ガスを回収して炭素ガス化率を求めた。また、対照実験として、活性炭を添加せずに同様の処理を行った。その結果、活性炭を添加しない場合には炭素ガス化率が10%であるのに対し、活性炭を添加した場合には炭素ガス化率が30%と上昇することが明らかになった。
以上のことから、活性炭等の非金属触媒の添加によりバイオマスのガス化効率を高めることができることが明らかになった。
【0098】
[実施例3]
図2に示すように、導入口210及び排出口220を設けた流動層反応器160(φ12.3mm×2400mm)の下方に分散板(網)を備え、平均粒径が1mmのアルミナボールを流動媒体として設置した。この流動層反応器160に、バイオマス(灰)や活性炭の代わりにアルミナ粒子(平均粒径が180〜250μm、あるいは、平均粒径が250〜300μm)を水に混合した混合物を、アルミナ粒子が飛び出し、流動媒体であるアルミナボールが飛び出さない流量(0.19m/s〜0.60m/s)で導入口210から導入し、排出口220から排出されたアルミナ粒子を回収した。
その結果、平均粒径が180〜250μmのアルミナ粒子を流動層反応器160に導入した場合には97.5%のアルミナ粒子を回収することができ、平均粒径が250〜300μmのアルミナ粒子を流動層反応器60に導入した場合には98.9%のアルミナ粒子を回収することができることがわかった。このことから、上述のような流動層反応器160に、活性炭を含むバイオマスのスラリー体(平均粒径が300μm以下)を所定の流量(例えば、流動媒体が排出口から飛び出さない最大流量)で導入口210から導入しながら、所定の温度及び所定の圧力下で水熱反応を行うことにより、生成された生成ガスや灰分、並びに、活性炭や水(超臨界水)を排出口220から排出できることが示された。
【0099】
[実施例4]
(i)実験試料の調製
水85質量部、鶏糞10質量部、及び粒径10〜100μmの活性炭5質量部を攪拌混合し、180℃,1.1MPaの条件下で熱水処理したバイオマスのスラリー体を、高圧ポンプにより管型反応器に圧入し、600℃,25MPaの条件下で、超臨界水によるガス化反応を行った。また、対照実験として、活性炭を添加しないで同様に超臨界水によるガス化反応を行った。このガス化反応によって得られた固形分(灰分、活性炭混合:以下、「超臨界水ガス化副産物」と称する)を105℃で乾燥したものを、以下の実験に用いた。
まず、超臨界水ガス化副産物100.0gに1N塩酸1000mlを加え(L/S比=10[ml/g])、室温で1時間振盪(200rpm)し、超臨界水ガス化副産物からリンを溶出させた。次に、懸濁液をろ紙(No.5C)でろ別し、活性炭様固形分(以下、物質Aとする)とリン溶出液を得た。リン溶出液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを7.5に調整し、生成した白色沈殿物(以下、物質Bとする)をメンブランフィルター(孔径:1.0μm)でろ過した。最後に、物質A及び物質Bを105℃で乾燥した。
物質A及び物質Bを計量したところ、物質Aは69.3g、物質Bは28.0gであった。また、物質Bの色は白色であった。
【0100】
(ii)蛍光X線分析
次に、超臨界水ガス化副産物、及び物質Aに含まれる成分を比較するために、主要5成分(C、Ca、P、Si、Mg)に対して、蛍光X線分析を行った。
【表1】

表1より、超臨界水ガス化副産物の主要3成分は、C(57%)、CaO(21%)及びP(12%)であることが分かった。また、物質Aにおいて、Cの含有率は73%に上昇したが、Pは主要5成分の中に存在せず、また、Caの含有率も低下した。これより、超臨界水ガス化副産物からリン及びカルシウムが除去されていること、並びに、物質Aにおいて活性炭の純度が高くなったことが明らかになった。
(iii)X線解析(XRD)
化学工業日報社「15107の化学商品」(2007)に、リン酸一水素カルシウムは1kgあたり400〜550円、リン酸二水素カルシウムは1kgあたり460〜800円、リン酸三カルシウムは1kgあたり600〜650円、ヒドロキシアパタイトは1kgあたり10,000円と記載されている。そこで、上記リン溶出液に、ヒドロキシアパタイトが含まれているか、X線解析を行った。図8に物質BとヒドロキシアパタイトとのXRDパターンの比較を示す。
物質Bの主成分は、ヒドロキシアパタイトであることが確認できた。これより、鶏糞を用いた超臨界水ガス化副産物からヒドロキシアパタイトを回収できることが示された。なお、原料として用いた鶏糞の中にはヒドロキシアパタイトは含まれていない(図9)。
【0101】
[実施例5]
本実施例では、ヘキサンを含む有機溶液層と無機溶液層の2層がある混合溶液では、活性炭が有機溶液層に来ることを示す。
まず、小瓶に、熱水処理にて生成した灰分及び活性炭を含有する液体(水70 mL、活性炭15 mL、灰分5 mL)を入れ、軽油、サラダ油、ホワイトガソリン、n−ヘキサンをそれぞれ10 mL 加え、蓋をして良く攪拌する。その後、しばらく静置して、有機溶液層と無機溶液層の2層に分かれたところで、活性炭がどちらの層に来るか観察したところ、図10に示すように、いずれの場合も、上層の有機溶液層に捕捉された。
【符号の説明】
【0102】
100 調整タンク 110 破砕機
120 供給ポンプ 130 第一熱交換器
131 第二熱交換器 140 前処理装置
150 スラリー供給装置 160 反応器
161 加熱器 162 予熱器
163 加熱器 164 予熱器
170 クーラー 171 減圧器
180 気液分離器 181 ガスタンク
182 揮発性液体分離槽 183 揮発性液体回収槽
184 揮発性液体貯蔵槽 190 発電装置
200 バイオマスガス化発電システム
210 導入口 220 排出口
230 流動媒体 240 分散部
310、320 シリンダー 330 軸
331、332 ピストン 340 攪拌機
350 攪拌機 360 水注入装置
361〜364 バルブ 371、372 三方弁
373〜376 バルブ 380、381 蓄圧器
410、420、430、440、460 送液管
450 活性炭排出口 423、443 圧力調節器
412、422、424、432、442、444、462 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭の存在下においてリンを含有するバイオマスを高温高圧ガスで処理し、
前記高温高圧ガス処理によって得られる反応物から前記活性炭を回収する方法であって、
活性炭の存在下において、リンを含有するバイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理し、
熱水処理することにより得られた、前記活性炭を含む前記リンを含有するバイオマスのスラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理し、
前記水熱処理にて生成した、灰分及び活性炭を含有する液体に、水より軽く、親油性及び揮発性の液体を加えて攪拌し、
二層に分離させて、活性炭を含有する層を回収すること、
を特徴とする活性炭の回収方法。
【請求項2】
水熱処理にて生成した、生成ガス、灰分、活性炭、及び水を、前記生成ガスと、前記灰分、前記活性炭、及び水を含む混合液とに分離する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の活性炭の回収方法。
【請求項3】
回収された層から、前記揮発性の液体を揮発させるによって活性炭を精製することを特徴とする請求項1または2に記載の活性炭の回収方法。
【請求項4】
活性炭の存在下においてリンを含有するバイオマスを高温高圧ガスで処理し、
前記高温高圧ガス処理によって得られる反応物からリン酸塩を回収する方法であって、
活性炭の存在下において、リンを含有するバイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理し、
熱水処理することにより得られた、前記活性炭を含む前記リンを含有するバイオマスのスラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理し、
前記水熱処理にて生成した、灰分及び活性炭を含有する液体に、水より軽く、親油性及び揮発性の液体を加えて攪拌し、
二層に分離させて、リン酸塩を含有する層を回収すること、
を特徴とするリン酸塩の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−174190(P2010−174190A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20651(P2009−20651)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(592148878)株式会社東洋高圧 (49)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】