説明

超薄型軟性導電布の製造方法

【課題】新規な超薄型軟性導電布の製造方法の提供。
【解決手段】合成繊維を織布し、厚の減少及び軟性の増加のために少なくとも1回当該織布を熱カレンダー処理し、更に熱カレンダー処理した当該織布を無電解メッキにより金属コーティングする工程を含んでなる、電磁遮蔽効果を有する超薄型軟性導電布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電布の技術分野に関し、具体的には電磁遮蔽効果を有する超薄型軟性導電布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器から漏出する電磁波による、その電子機器自身又は他の電子機器への影響及びそれらの誤動作の発生を防止するための導電布は、電子機器が小型化する傾向に伴い、超薄型かつ軟性であることが求められている。従来の導電布は、導電性の感圧接着剤をコーティング又は積層し、導電布テープとして加工していた。かかる製品では薄い厚み及び軟性が必要とされるため、厚くて軟性が十分でない導電布の場合、超小型機器への用途はきわめて限定されたものとなる。
【0003】
現在、超薄型軟性導電性ファブリックは通常、特殊なヤーン(例えば約30デニール〜約80デニール、約2:1〜約10:1の扁平率を有するフラットヤーン)を織り、約50μm程度の薄さの布として製造される。約5デニール〜約150デニールで、少なくとも約80μmの厚みを有する一般的なヤーンを織り交ぜた導電布と比較して、超薄型軟性導電性ファブリックの厚みは約60%減少し、好適な軟性が得られる。ヤーンのワーピング処理の間、フラットヤーンの全てを平面的及び幅広な態様で配置する必要がある。織布工程の間、フラットヤーンが幅と高さに関して不適切に配置される場合、布面は不規則なテクスチャとなり、厚みは元の設計どおりにならなくなる。従って、フラットヤーンは高コストで、職布が容易でなく、また複雑なデザインのファブリックの製造可能性が一定限度に制限される。
【0004】
一般的な導電布は極端に厚く十分な軟性を有せず、フラットヤーンによる導電布は織布が容易でなく、また設計上の制約も存在するため、それらの用途は制限され、改良の余地が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の導電布の限界及び欠点の克服という課題に鑑み、本発明は、超薄型軟性導電布の製造方法の提供をその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超薄型軟性導電布の製造方法は次の工程を含む。すなわち、合成繊維で織布を形成する工程と、上記の織布を少なくとも1回熱カレンダー処理する工程と、熱カレンダー処理した上記の織布を無電解メッキして金属コーティングする工程である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の具体的実施態様では、超薄型軟性導電布の製造方法は、次の工程を含む。すなわち、合成繊維で織布を形成する工程と、スコアリング及び洗浄後、熱処理及び表面の粗面化を行い、少なくとも1回布を熱カレンダー処理し、厚みを減少させ、軟性を増加させる工程と、表面の調整後、布の表面に一様に無電解メッキにより銅、ニッケル、銀、金又はそれらの合金による金属層を形成する工程である。
【0008】
本発明の方法で使用する合成繊維はいかなる合成繊維であってもよく、限定されないが、例えばレーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル系繊維又はアクリル繊維が挙げられ、好ましくはポリエステル系繊維である。当該合成繊維は約5デニール〜約50デニールであって、約70μm〜約100μmの厚みを有する織布として形成される。
【0009】
布のスコアリング工程、洗浄工程及び熱処理工程は従来公知の方法で実施される。表面の粗面化工程は公知のアルカリ溶液による還元工程によって実施でき、その場合還元率は約5%〜約40%、好ましくは約10%〜約25%である。
【0010】
熱カレンダー処理工程は、2つ又は3つのローラー(好ましくは1つのゴム製ローラー及び1つ又は2つのステンレス鋼製ローラーを含む)により布を捻り、プレスすることによって実施される。本発明の方法では、熱カレンダー処理の工程は、厚を減少させ布の軟性を増加させるために、2回実施するのが好ましい。本発明の一実施態様では、熱カレンダー処理工程の条件は以下の通りである。すなわち、温度:約50℃〜約230℃、好ましくは約130℃〜約190℃、圧力:約50daN/cm〜約500daN/cm、好ましくは約150daN/cm〜約300daN/cm、カレンダー速度:約5m/分〜約80m/分、好ましくは約10m/分〜約50m/分、である。
【0011】
本発明の一実施態様では、熱カレンダー処理された超薄型軟性導電布は約40μm〜約60μmの厚を有する。
【0012】
例えば、無電解メッキ工程は当業者にとって公知であり、使用する金属は望ましい伝導率を有するいかなる金属であってもよく、限定されないが、例えば銅、ニッケル、銀、金又はそれらの合金が挙げられる。
【0013】
本発明の方法で製造される超薄型軟性導電布は、導電布テープとして機能させるために、導電性の感圧接着剤をコーティング又は積層してもよい。最終的な用途における簡便な使用のため、テープをカットして巻き取り、スライスし、カット及びスタンプして、超薄型軟性導電布テープをロール型又はシート型に形成してもよい。それらは放射防止及び帯電防止性能を有する。それにより、電子機器から漏出する電磁波がその電子機器自体又は他の電子機器に影響を及ぼすことや、それによる誤動作の発生を防止することができる。
【0014】
本発明の一実施態様では、ロール型の超薄型軟性導電布は約50cm〜約180cmの幅、好ましくは約90cm〜約155cmの幅を有し、約10μm〜約60μmの厚を有する公知の導電性の感圧接着剤でコーティング又は積層され、導電布テープとして形成される。更に、カッティング及び巻取り工程、スライシング工程、並びにカッティング工程を経て、最終的な用途で簡便に使用できる、約50μm〜約120μmの厚を有する超薄型軟性導電布テープが得られる。
【0015】
以下の実施例は例示のみを目的とし、本発明の限定を目的とするものではない。当業者が容易に実施できるいかなる修正や変形も、本明細書の開示及び添付の特許請求の範囲に包含される。
【実施例】
【0016】
以下の工程で超薄型軟性導電布を製造した。
【0017】
織布:
縦ヤーン:20デニール/24フィラメント、横ヤーン:30デニール/12フィラメント、縦ヤーン密度189ヤーン/インチ、及び横ヤーン密度125ヤーン/インチによりポリエステル系繊維を織布し、約81μmの厚を有する平坦な布を形成した。
【0018】
表面の粗面加工:
得られた平坦な布を80℃で15分間、20%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、還元率15%で還元させた。
【0019】
熱カレンダー処理:
温度160℃、圧力230daN/cm〜500daN/cm、及びカレンダー速度25m/分で熱カレンダー処理工程(2つのローラーを有する機械を用い、上記の平坦な布の同じ表面に2回実施)を実施し、布の厚を50μmに減少させた。
【0020】
無電解メッキ:
1.活性化:上記の布を30℃で3分間、塩化パラジウム100mg/L、塩化第一スズ10g/L及び塩化水素100ml/Lを含む溶液に浸漬し、十分に洗浄した。
2.促進化:上記の布を45℃で3分間、塩化水素100ml/Lを含む溶液に浸漬し、十分に洗浄した。
3.銅による無電解メッキ:上記の布を40℃で20分間、硫酸銅10g/L、ホルムアルデヒド7.5ml/L、水酸化ナトリウム8g/L、エチレンジアミン四酢酸 四ナトリウム塩(EDTA−4Na)30g/L及び安定化剤0.25ml/Lを含む溶液に浸漬し、それにより一様に布上に25g/mで銅のメッキが形成され、更に布を十分に洗浄した。
4.ニッケルによる無電解メッキ:上記の布を40℃で5分間、硫酸ニッケル22.5g/L、次亜リン酸ナトリウム18g/L、クエン酸ナトリウム0.1M/L及びアンモニア20ml/Lを含む溶液に浸漬し、それにより一様に布上に5g/mでニッケルのメッキが形成され、更に布を十分に洗浄した。最後に布を乾燥させ、約52μmの厚を有する導電布を得た。
【0021】
導電性の感圧接着剤の積層:
40μmの厚を有する、両面型の、剥離紙を有する、基材ではない導電性の感圧接着剤を、15Kgの張力及び20m/分の速度で導電布に積層させた。導電性の感圧接着剤が布の材料中に一部浸透することにより、積層後の、導電性感圧接着剤と超薄型軟性導電布を合計した厚は約70μmとなった。更に、カット及び巻取り、スライシング、並びにカットを経て、ロール型又はシート型の、剥離紙を有する導電性感圧性布のテープを得た。
【0022】
上記をまとめると、本発明の製造方法では単に熱カレンダー処理を無電解メッキ工程の前に実施する必要があるだけであり、それにより布の厚を著しく減少させることができ、更に無電解メッキ工程を経て、超薄型かつ軟性な導電布が得られる。フラットヤーン又は他の特別なヤーンで製造した従来の織布と比較して、本発明の製造方法は、単純かつ経済的であるのみならず、複雑なデザインの超薄型軟性導電性ファブリックの製造にも使用できるため、導電布の用途範囲の拡大に非常に有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超薄型軟性導電布の製造方法であって、合成繊維で織布を形成する工程と、上記の織布を少なくとも1回熱カレンダー処理する工程と、熱カレンダー処理した上記の織布を無電解メッキで金属コーティングする工程とを含んでなる製造方法。
【請求項2】
前記合成繊維がレーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル系繊維又はアクリル繊維を含んでなる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記合成繊維が約5デニール〜約50デニールの線密度を有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
熱カレンダー処理された前記織布が、約40μm〜約60μmの厚を有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記熱カレンダー処理の工程において、温度が約50℃〜約230℃であり、圧力が約50daN/cm〜約500daN/cmであり、カレンダー速度が約5m/分〜約80m/分である、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記無電解メッキの工程中に、前記織布の表面に銅、ニッケル、銀、金又はそれらの合金の金属層を均一にメッキする工程が含まれる、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
得られる前記超薄型軟性導電布に導電性の感圧接着剤をコーティング又は積層し、導電布テープとして形成する、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
前記導電布テープが約50μm〜約120μmの厚を有する、請求項7記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−118111(P2008−118111A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−231241(P2007−231241)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(505302694)フォーモサ タフェタ カンパニー,リミティド (7)
【Fターム(参考)】