説明

超電導ケーブルの端部構造

【課題】長尺なケーブルを引張りにより布設する場合でも、ケーブルコアの弛みの状態を維持できる超電導ケーブルの端部構造を提供する。
【解決手段】超電導ケーブルの端部構造は、ケーブルコア10と、ケーブルコア10が収納されるパイプ(断熱管20)と、ケーブルコア10が収納されたパイプの両端を塞ぐプーリングアイ4とを備える。超電導ケーブルは、パイプ内をパイプ軸方向に摺動可能に配置され、ケーブルコアの少なくとも一方の端部に固定される支持部材5と、この支持部材5とプーリングアイ4との間に、支持部材5に軸方向内方への押圧力を付与するように圧縮状態で配置される圧縮ばね6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの端部構造、超電導ケーブルの製造方法、および超電導ケーブルの布設方法に関するものである。特に、複数のケーブルコアを、弛みを有しながら撚り合わされた状態で断熱管内に配された超電導ケーブルに関して、超電導ケーブルを布設する際に、これらケーブルコアの弛みを維持しながら布設できる超電導ケーブルの端部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、超電導ケーブルは、断熱管内に単心又は多心のケーブルコアが収納された構成を有する。このようなケーブルは、その布設後に液体窒素などの冷媒をケーブル内に流し、超電導導体を臨界温度以下に冷却して利用される。
【0003】
ところで、液体窒素で超電導ケーブルを冷却する場合、ケーブルは、常温状態に比べて収縮する。そして、通常は、ケーブルの両端部は中間接続部や終端接続部が構成されるため、撚り合わせたケーブルコアが収縮すると撚りが締まる。
【0004】
このケーブルコアの収縮により、ケーブルコアに軸方向の応力(引張応力)がかかってしまうと、超電導導体がダメージを受け、超電導特性が低下してしまうことがある。そのため、超電導ケーブルには、この収縮を吸収する構成が必要となる。
【0005】
従来、このようなケーブルコアの収縮を吸収する手段として、予めケーブルコアの撚り合わせに弛みを持たせておくことが提案されている(例えば特許文献1および特許文献2)。
【0006】
特許文献1には、撚り合わされた複数のケーブルコアの外周に、内管および外管を備える断熱管を形成する超電導ケーブルの製造方法が開示されている。この製造方法は、上流工程から供給されるケーブルコアの外周に内管を形成する工程と、内管をコルゲート成形する工程とを備える。そして、コルゲート成形速度をケーブルコアの供給速度以下として、ケーブルコアの撚りに冷却時の熱収縮分を吸収できる弛みを生じさせるようになっている。
【0007】
特許文献2には、複数心のケーブルコアの撚り合わせ時にケーブルコア間にスペーサを設ける技術が開示されている。そして、この撚り合わせたケーブルコアを断熱管内に収納する前に、スペーサを取り除き、撚りを弛ませた状態で断熱内管内にケーブルコアを収納するようになっている。
【0008】
ところで、ケーブルを管路内に布設する場合、布設方法には、ケーブルを管路に押し込む方法と、引っ張る方法とがある。押し込む方法は、例えば、シューの付いたキャタピラでケーブルを挟み込んでケーブルを押し出していく。引っ張る方法の場合は、ケーブルの端部にプーリングアイを取り付けて、このプーリングアイを牽引することによりケーブルを管路内に引き込む。
【0009】
ケーブルを押し込みにより布設する場合、ケーブルには圧縮力がかかるため、ケーブルコアの弛みは殆ど無くならない利点がある。しかしながら、キャタピラでケーブルを挟んで、管路内にケーブルを押し込む場合、ケーブルの側面に当てたシューを動かすことによって推進力を得るが、この推進力はシューの摩擦にたよるため、大きな推進力が得られないという欠点もある。
【0010】
従って、ケーブルを押し込みにより布設する方法は、ケーブルが短い場合には、適しているが、長尺ケーブルに対しては、作業が困難となる問題がある。
【0011】
また、ケーブルを引っ張って布設する場合、ケーブルには、引張張力が作用するため、ケーブルが短い場合には、ケーブルコアが伸びて、撚りの弛みが無くなってしまう問題はほとんど生じないが、長尺ケーブルの場合には、ケーブルの重量が重くなるので、摩擦抵抗が大きくなり、ケーブルコアが伸びやすい。このようにケーブルコアが伸びてしまうと、撚りの弛みが無くなってしまう。
【0012】
以上のように、長尺ケーブルを管路内に布設する場合、押し込む方法でも、引っ張る方法でも、問題が生じるが、ケーブルが、引っ張りによっても、なるべく伸びない構造にすれば、引っ張る方法により長尺ケーブルの布設が可能となる。
【0013】
そこで、特許文献3にも開示されているように、テンションメンバーを用いることにより、ケーブルを管路に布設するときに生じる引張張力に対する伸びを抑えて、ケーブルコアの弛みがなるべく無くならないようにしている。
【0014】
特許文献3に開示されているテンションメンバーは、複数本のテープ状ステンレス線を用いて構成されている。まず、断熱管(二重コルゲート管)の外周に、コルゲートの谷部(凹部)を埋める谷埋め材を配置して、断熱管の外面を平滑にする。そして、表面が平滑になった断熱管の外周を、テンションメンバーで覆う。このテンションメンバーは、複数本のテープ状ステンレス線を並列させて所定のピッチで断熱管の外面に螺旋状に巻き付けて、ケーブル全長に亘ってケーブルを覆う構成になっている。
【0015】
【特許文献1】特開2001-67950号公報
【特許文献2】特開2002-216555号公報
【特許文献3】特開2006-59695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記したように、超電導ケーブルにテンションメンバーを設けることによって、布設時にケーブルが引っ張られても、ケーブルコアがなるべく伸びないようにすることができる。しかしながら、テンションメンバーも弾性体なので、僅かに伸びが生じる場合がある。
【0017】
特に、ケーブル長が長くなればなるほど、ケーブルが重たくなるため、摩擦抵抗も大きくなる。従って、布設管路内の勾配が大きい場合や、布設管路に湾曲した部分がある場合には、抵抗がさらに大きくなり、テンションメンバーが伸びる場合がある。
【0018】
このように、テンションメンバーが伸びてしまうと、ケーブルコアの弛みが小さくなっていき、ケーブルコアに引張応力がかかり過ぎると超電導導体が切れてしまい、超電導ケーブルとしての機能が達成できなくなる。
【0019】
また、既設管路にケーブルを布設する場合、管路径には制約があるのでケーブルの二重管の径も制約される。そのため、ケーブルを引っ張る際に生じるケーブルコアの伸びを考慮した弛み量を持たせるには限界がある。
【0020】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、長尺なケーブルを引張りにより布設する場合でも、ケーブルコアの弛みの状態を維持できる超電導ケーブルの端部構造、この超電導ケーブルの製造方法、および布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、ケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるパイプと、ケーブルコアが収納されたパイプの両端を塞ぐプーリングアイとを備える超電導ケーブルの端部構造であって以下の構成を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の超電導ケーブル端部構造は、パイプ内をパイプ軸方向に摺動可能に配置され、ケーブルコアの少なくとも一方の端部に固定される支持部材と、この支持部材とプーリングアイとの間に、支持部材に軸方向内方への押圧力を付与するように圧縮状態で配置される圧縮ばねとを備えていることを特徴とする。
【0023】
ケーブルコアが収納されるパイプとしては、例えば、二重のコルゲート管で構成される断熱管およびこの断熱管の軸方向端部に接続される保護管などが挙げられる。
【0024】
前記支持部材は、例えば、パイプの内径より小さい外径を有する円板状部材とすることができる。この円板状部材には、端部が段剥ぎされたケーブルコアのフォーマの端部を固定するための挿入孔を形成することが好ましい。なお、フォーマを支持部材に固定する場合、フォーマの端部に圧縮スリーブを固定し、この圧縮スリーブを支持部材に固定することがさらに好ましい。
【0025】
そして、支持部材を円板状部材で形成する場合には、円板の外周縁にパイプ内面に沿うフランジを形成してもよい。このフランジが支持部材をパイプ内で摺動させる際のガイドとなる。
【0026】
パイプの端部開口部は、内部にケーブルコアを配置させた状態で、プーリングアイにより塞ぐ構成となっている。本発明では、パイプ内にケーブルコアと、支持部材と、圧縮状態の圧縮ばねとを配置させた状態で、プーリングアイでパイプを塞ぐ構成となっている。
【0027】
前記した圧縮ばねは、支持部材に一端を圧接させ、他端をプーリングアイに圧接させることにより、自由長に対して所定の圧縮率で圧縮された状態で、パイプ内に配設される。
【0028】
パイプ内に圧縮ばねを圧縮状態で配設することにより、この圧縮ばねの反発力で、ケーブルコアの端部を支持する支持部材に、パイプの軸方向内方に向けて押圧力が付与される。支持部材が、圧縮ばねによる押圧力を受けると、ケーブルコアも軸方向内方に向けて押圧力を受ける。
【0029】
ケーブルに取り付けられたプーリングアイを牽引してケーブルを管路内に布設する場合、ケーブルのパイプ(断熱管)やこのパイプ外周に配設されるテンションメンバーが伸びたときには、この伸びに伴って圧縮ばねが伸びる。そして、圧縮ばねが伸びても、圧縮ばねは、自由長の状態ではないので、ケーブルコアは圧縮ばねにより常時押圧力を受けた状態になり、ケーブルコアの弛み状態は維持される。
【0030】
このように、ケーブルを牽引して布設する場合、ケーブルのパイプが伸びても、この伸びは、圧縮ばねの伸びで吸収され、しかも、ケーブルコアは圧縮ばねにより常時押圧力を受けた状態になるので、ケーブルコアの弛みが小さくなることはなく、超電導性能の低下は生じない。
【0031】
なお、前記した支持部材と圧縮ばねは、ケーブルコアの一端側だけに設けてもよいし、ケーブルコアの両端側に設けてもよい。ケーブルコアの両端側に圧縮ばねを設ける場合、各圧縮ばねは同じばね定数であってもよいし、異なるばね定数としてもよい。
【0032】
さらに、圧縮ばねは、支持部材とプーリングアイとの間に配置する際、一つの圧縮ばねを設けるようにしてもよいし、複数の圧縮ばねを設けるようにしてもよい。
【0033】
本発明の超電導ケーブルの端部構造は、ケーブルコアが、多心撚り合わせ構造である場合に好適である。多心撚り合わせ構造のケーブルであれば、ケーブルコアをパイプの軸方向内方に向けて圧縮することで、ケーブル布設前の状態において、元々の弛み状態を維持できるのはもちろんのこと、さらに、弛みを大きくすることもできる。多心撚り合わせケーブルコアの代表例としては、3心撚り合わせ構造のケーブルコアが挙げられる。なお、単心ケーブルでも、パイプ内でコアを蛇行させることで弛みを形成できるので、圧縮ばねを設けることにより、この弛みを維持できる。
【0034】
また、圧縮ばねの径方向内方には、長尺なガイド棒を配置させることが好ましい。この場合、プーリングアイを、プーリングアイ本体とプーリングキャップとを備える構成とし、長尺なガイド棒の一端を支持部材に固定し、他端をプーリングアイ本体に摺動可能に挿通させるようにする。
【0035】
このようにガイド棒を設けることにより、圧縮ばねを自由長の状態から圧縮させる際に、圧縮ばねはガイド棒で案内されながら圧縮されるので、圧縮ばねを、パイプ内で曲がったりすることなく圧縮させることができる。
【0036】
なお、ガイド棒は、プーリングキャップをプーリングアイ本体に取り付ける際にパイプ内から外すことができる。また、ガイド棒は、キャップの取り付けの妨げにならない長さまで切断して、ガイド棒をパイプ内およびプーリングアイ本体に配置させたままプーリングキャップを取り付けてもよい。
【0037】
前記した本発明の超電導ケーブルの端部構造を有する超電導ケーブルを製造する場合には、パイプ内にケーブルコアを収納し、ケーブルコアの少なくとも一方の端部に、パイプ内をパイプ軸方向に摺動可能に配置される支持部材を取り付ける。そして、この支持部材とプーリングアイとで圧縮ばねを挟持して、支持部材に軸方向内方への押圧力を付与するように圧縮ばねを圧縮させる。パイプ内に支持部材と圧縮状態の圧縮ばねを収納した状態で、プーリングアイをパイプの端部に固定する。
【0038】
圧縮ばねを圧縮状態でパイプ内に収納するには、例えば、自由長状態の圧縮ばねを、支持部材とプーリングアイ本体とで挟んだ状態にし、圧縮治具を用いてプーリングアイ本体を介して圧縮ばねをパイプ内に収まるまで圧縮させる。そして、この圧縮治具で、圧縮ばねの圧縮状態を維持したまま、プーリングアイ本体をパイプ開口部に固定する。プーリングアイ本体がパイプに固定されると、圧縮ばねは、圧縮状態のまま、支持部材とプーリングアイ本体とに圧接した状態となる。圧縮ばねが圧縮状態となっているので、支持部材を介してケーブルコアは、パイプ軸方向内方に押圧される。プーリングアイ本体がパイプに固定された後、プーリングアイ本体にプーリングキャップを取り付けることにより、超電導ケーブルは出荷できる状態となる。
【0039】
そして、前記した本発明の超電導ケーブルの端部構造を有する超電導ケーブルを管路内に布設する場合は、超電導ケーブルのプーリングアイを牽引して布設する。そして、布設管路内に超電導ケーブルを布設した後は、プーリングアイと圧縮ばねと支持部材とを取り除いて超電導ケーブルの端部を処理する。
【0040】
プーリングアイを牽引して超電導ケーブルを管路内に引き込んでいる際、ケーブルに引張力が作用して、ケーブルが伸びる場合が生じても、パイプ内では、圧縮ばねのみがこのパイプの伸びを吸収して伸び、ケーブルコアの弛みの状態は維持される。よって、ケーブルの布設作業中にケーブルが伸びても、圧縮ばねによる伸びの吸収で、ケーブルの超電導性能の低下は生じない。
【発明の効果】
【0041】
本発明超電導ケーブルの端部構造によれば、バイプ内に、ケーブルコアの端部に固定される支持部材とプーリングアイとの間に圧縮状態の圧縮ばねを配設しているので、パイプ内のケーブルコアは、支持部材を介して圧縮ばねによる押圧力で常にパイプ軸方向内方に向けて押圧される。
【0042】
この状態で、ケーブルの出荷を行い、ケーブルを現地で管路に布設する。プーリングアイを牽引することによりケーブルの布設を行う場合、ケーブルのパイプが伸びたときは、パイプ内の圧縮ばねが伸びて、パイプの伸びを吸収することができる。その結果、ケーブルを牽引により布設しても、パイプ内のケーブルコアの弛みは、出荷状態と同じ状態に維持でき、超電導性能の低下は阻止できる。
【0043】
さらに、本発明のケーブル端部構造では、ケーブルコアの弛みを、ケーブルコアをパイプ内に入れる際に持たせるようにするだけでなく、パイプ内にケーブルコアを配置した後、前記圧縮ばねによる押圧力によって、さらに弛みを大きくできる。
【0044】
そして、ケーブルの布設作業が完了した後、プーリング(プーリングキャップ、プーリングアイ本体)と圧縮ばねと支持部材とを外し、ケーブルの端末を組み立てることができる。このとき、ケーブルコアの弛みの状態は維持されているので、ケーブルの端末処理後に、パイプ内のケーブルコアを冷却してケーブルコアが収縮しても超電導性能は維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。本実施形態では、断熱管内に3心のケーブルコアが撚り合わされた状態で収納された超電導ケーブルの端部構造、その製造方法、そして、ケーブル布設方法について説明する。
【0046】
本実施形態では、ケーブルコアを断熱管内に配置する際に、予め、冷却時の熱収縮を吸収できる弛みを持たせた状態で配置する。このケーブルコアの弛みは、前記した特許文献1または特許文献2などに示す公知の技術を用いて行う。
【0047】
まず、本実施形態で用いるケーブルの構成を説明する。図11に示すように、この超電導ケーブル100は、3心のケーブルコア10と、そのコア10を収納する断熱管20とから構成される。
【0048】
各コア10は、中心から順に、フォーマ(芯材)11、超電導導体層12、絶縁層13、超電導シールド層14、保護層15を有する。
【0049】
一方、断熱管20は、内管21および外管22を備える2重管からなり、内外管21、22の間に真空断熱層が構成される。内管21および外管22は、いずれもコルゲート管で構成される。真空断熱層内には、プラスチックメッシュと金属箔を積層したいわゆるスーパーインシュレーション(商品名)が配置されている。さらに、外管の外側には、順次、防食層23、抗張力材(テンションメンバー)(図示せず)、保護被覆層(図示せず)が形成される。
【0050】
そして、ケーブル100の両端部の構造は、図1に示すような構造になっている。図1では、ケーブル100の一端側のみを示しているが、ケーブル100の他端側も同じ構造になっている。
【0051】
断熱管20の両端部は、図1に示すように、コルゲート管から構成される内管21および外管22の軸方向両端部のそれぞれに内側接続管24と外側接続管25とが溶接されており、これら内側接続管24と外側接続管25との間で形成される開口部を、真空ポート26を有するリング状部材27で封鎖した状態になっている。リング状部材27の真空ポート26には、フレキシブルチューブ28が装着されている。
【0052】
本実施形態では、断熱管20は、内管21、外管22、内側接続管24、外側接続管25、リング状部材27によって、真空断熱層が形成される。
【0053】
リング状部材27は、所定の厚みを有しており、その外周面の軸方向の一端側が外側接続管25と溶接され、他端側が第一保護管31の一端部と溶接されている。そして、この第一保護管31の他端部に、コルゲート管からなる第二保護管32の一端部が溶接され、さらに、この第二保護管32の他端部に、第三保護管33が溶接されている。これら第一保護管31と第二保護管32と第三保護管33により、断熱管20からはみ出してしまうケーブルコア10やフレキシブルチューブ28を覆う保護管3を構成する。
【0054】
本実施形態のケーブル100は、保護管3の端部にプーリングアイ4を固定する構造となっている。そして、保護管3の内部に、ケーブルコア10の端部に取り付けられる支持部材5と、この支持部材5とプーリングアイ4との間に配置される圧縮ばね6とを収納している。
【0055】
プーリングアイ4は、プーリングアイ本体41と、このプーリングアイ本体41に取り付けられるプーリングキャップ42とを備える。さらに、プーリングアイ本体41は、圧縮ばね6が支持されるばね支持部43と、プーリングキャップ42が装着されるキャップ取付部44とから構成されている。
【0056】
ばね支持部43は、円板状の部材から形成され、外周部に軸方向一方側に突出する筒状フランジ43aが形成されている。さらに、ばね支持部43には、後記するガイド棒7が挿通される第一挿通孔が3つ形成されている。ばね支持部43の筒状フランジ43aの先端部を第三保護管33に溶接する。この溶接により、断熱管20と保護管3とばね支持部43により密閉空間が形成される。
【0057】
キャップ取付部44は、ばね支持部43が嵌合される筒部44aと、この筒部44aの一端側を閉鎖する閉鎖部44bと、この閉鎖部44bの中心部から筒部44aとは軸方向反対方向に突出し、プーリングキャップ42と螺子締めされる螺子部44cとを備える。閉鎖部44bには、ガイド棒7が挿通する第二挿通孔が3つ形成されている。キャップ取付部44は、ばね支持部43に嵌合した後、図示していないが断熱管20と保護管3の上に巻き付けた抗張力材(ステンレステープ)に溶接される。
【0058】
プーリングキャップ42は、キャップ取付部44の螺子部44cと螺合する雌螺子部42aを備え、雌螺子部42aの開口部とは反対側に牽引部42bが形成されている。
【0059】
支持部材5は、円板状の支持部51と、この支持部51の外周部に形成される筒状のフランジ部52とを備えている。フランジ部52の外径は、第二保護管32の内径よりもやや小さくなるように形成し、支持部材5が第二保護管32内を軸方向に摺動できるようになっている。さらに、フランジ部52は、支持部51に対して軸方向両端側に突出させている。
【0060】
支持部材5の支持部51には、後記する圧縮スリーブ8の螺子部81が挿通される挿通孔が3つ形成されるとともに、これら挿通孔より径方向外側に、後記するガイド棒7の先端部が螺子込められる螺子穴が3つ形成されている。
【0061】
各ケーブルコア10の端部は、段剥ぎされており、露出されたフォーマに圧縮スリーブ8が固定されている。圧縮スリーブ8は、フォーマが挿入される挿入部82と、挿入部82とは軸方向反対側に形成される螺子部81とを備える。この螺子部81を、支持部材5の挿通孔に挿通させた状態で、螺子部81にナット83を締め付けて、支持部材5とケーブルコア10とが固定された状態になる。
【0062】
ガイド棒7は、圧縮ばね6を圧縮させる際のガイドとなる。ガイド棒7は、第三保護管33にプーリングアイ4のプーリングキャップ42を取り付けるまでは、図5に示すように、第三保護管33の開口部から、軸方向外方に向けて、この第三保護管33の長さの2倍以上が突出する長さを有している。そして、図1の状態では、キャップ取付部44の第二挿通孔に挿通された状態となるように、ガイド棒7を切断している。その長さは、プーリングアイ本体41のキャップ取付部44にプーリングキャップ42を取り付けたときに、プーリングキャップ42に当たらないように第二挿通孔からやや突出させた長さにしている。
【0063】
このガイド棒7の外側に、圧縮ばね6が配置される。圧縮ばね6は、支持部材5とプーリングアイ本体41のばね支持部43とにより挟持されて圧縮された状態となっている。圧縮ばね6は、コア10を、断熱管20の伸びに関係無くコア10の所定の弛み状態が維持できるように支持部材5を介して押圧する押圧力(通常は数百kg)が得られる反発力となるまで圧縮させている。この圧縮ばね6の反発力により、ケーブルコア10は、支持部材5を介して軸方向内方に向けて押圧されることになる。
【0064】
以上のように、本実施形態の超電導ケーブル100は、圧縮ばね6によりケーブルコア10に軸方向内方への押圧力が作用するので、例えば、ケーブル牽引時に断熱管20が伸びたとしても、ケーブルコア10の弛み状態は維持される。また、圧縮ばね6の反発力の大きさによっては、保護管3内に圧縮ばね6を配置させてプーリングアイ4の取り付けが完了したときに、ケーブルコア10の弛みを、圧縮ばね6が配置される前の弛み状態よりも、さらに大きくすることも可能となる。
【0065】
なお、図示していないが、断熱管20と保護管3の上に、抗張力材を巻き付けている。抗張力材としては、ステンレステープを用いている。ステンレステープを断熱管20の上に巻き付ける前に、断熱管20の谷部(凹部)を谷埋め材で埋めて、断熱管20の外面を平滑にする。そして、表面が平滑になった断熱管20の外周に、複数本のステンレステープを並列させて所定のピッチで螺旋状に巻き付ける。これらステンレステープの両端部は、プーリングアイ本体41のキャップ取付部44に溶接する。
【0066】
本実施形態にかかる超電導ケーブルの製造方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0067】
(1)3本のケーブルコア10を撚り合わせ、撚り合わされた3心のケーブルコア10の外周に内管21を形成する(図2参照)。
【0068】
(2)内管21の外側にスーパーインシュレーション(図示せず)を配置し、スーパーインシュレーションの外側に外管22を形成する(図2参照)。
【0069】
(3)内管21の端部に内側接続管24を接続し、外管22の端部に外側接続管25を接続した後、内側接続管24と外側接続管25とで形成される開口部に真空ポート26付きのリング状部材27を溶接し、断熱管20の真空層を作る。そして、内管21と外管22の間に形成される空間を真空ポート26から真空引きする(図2参照)。
【0070】
(4)各コア10の端部に圧縮スリーブ8を取り付け(図2参照)、圧縮スリーブ8の螺子部81を支持部材5の挿通孔に挿通してナット83の締め付けにより、圧縮スリーブ8を支持部材5に固定する(図3参照)。
【0071】
(5)第一保護管31と第二保護管32と第三保護管33を溶接により接続して保護管3を形成し、この保護管3でリング状部材27と各コア10と支持部材5とを覆い、保護管3をリング状部材27に溶接する(図4参照)。
【0072】
(6)3本のガイド棒7を支持部材5の螺子穴に螺子締めし、自由長状態の圧縮ばね6を、3本のガイド棒7が内部に配置されるように、これらガイド棒7に沿って保護管3の内部に挿入して、圧縮ばね6の端部を支持部材5に当接させる(図5参照)。圧縮ばね6は、自由長の状態では、端部を支持部材5に当接させたときに、図5のように第三保護管33から大きく突出した状態になっている。
【0073】
(7)プーリングアイ本体41のばね支持部43に形成した第一挿通孔にガイド棒7を挿通させ、ばね支持部43を圧縮ばね6の端部に当接させる(図6参照)。
【0074】
(8)ばね支持部43に、圧縮治具9を取り付け(図7参照)、この圧縮治具9で、ばね支持部43を介して圧縮ばね6を所定の反発力が得られる位置で、保護管3内に完全に収納される位置まで圧縮していく(図8参照)。圧縮ばね6は、自由長状態の圧縮ばね6の一端を支持部材5のフランジ部52の端面に当接させ、他端をばね支持部43に当接させながら、保護管3内に収納できる長さまで圧縮する。
【0075】
(9)圧縮治具9で圧縮ばね6とばね支持部43とを支持したまま、ばね支持部43を保護管3に溶接する(図8参照)。圧縮ばね6を圧縮した状態で、ばね支持部43を第三保護管33に溶接することにより、保護管3の内部に支持部材5と圧縮状態の圧縮ばね6とが収納された状態になる。
【0076】
(10)断熱管20と保護管3との上に、ステンレステープを巻き付ける。
【0077】
(11)圧縮治具9を取り外し、プーリングアイ本体41のキャップ取付部44に形成した第二挿通孔にガイド棒7を挿通させ、キャップ取付部44をばね支持部43に嵌め合わした後(図9参照)、このキャップ取付部44の筒部44aにステンレステープの端部を1本ずつ溶接する。
【0078】
(12)ガイド棒7を所定の長さに切断し、キャップ取付部44にプーリングキャップ42を取り付ける(図1参照)。なお、ガイド棒7は、支持部材5から取り外してもよい。
【0079】
以上の工程に従って、本実施形態にかかる超電導ケーブル100が製造される。そして、プーリングアイ4が取り付けられたケーブル100を、布設現場まで搬送する。
【0080】
超電導ケーブル100を管路内に布設する場合は、超電導ケーブル100のプーリングアイ4を牽引することにより行う。そして、布設管路内に超電導ケーブルを布設した後は、プーリングアイ4と圧縮ばね6と支持部材5とを取り除いて超電導ケーブルの端部を処理する。
【0081】
超電導ケーブルを管路に布設する前と布設した後の状態を図10に示す。プーリングアイ4を牽引して超電導ケーブル100を管路内に引き込んでいる際、ケーブルに引張力が作用して、ケーブルが伸びる場合が生じても、断熱管20および保護管3内では、圧縮ばねは、布設前の長さA1から布設後の長さA2になって、圧縮ばね6のみが断熱管20等の伸びを吸収して伸びる。その結果、ケーブルコア10の弛みの状態は維持され、ケーブルの超電導性能の低下は生じない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明超電導ケーブルの端部構造、製造方法、布設方法は、超電導ケーブルを製造、布設する分野において好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の超電導ケーブルの端部構造を示す部分断面図である。
【図2】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図3】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図4】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図5】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図6】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図7】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図8】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図9】超電導ケーブルの製造工程における端部構造説明図である。
【図10】布設前と布設後の超電導ケーブルの状態を示す説明図である。
【図11】超電導ケーブルの横断面図である。
【符号の説明】
【0084】
100 超電導ケーブル
10 ケーブルコア
11 フォーマ 12 超電導導体層 13 絶縁層
14 超電導シールド層 15 保護層
20 断熱管
21 内管 22 外管 23 防食層
24 内側接続管 25 外側接続管 26 真空ポート
27 リング状部材 28 フレキシブルチューブ
3 保護管
31 第一保護管 32 第二保護管 33 第三保護管
4 プーリングアイ
41 プーリングアイ本体
42 プーリングキャップ 42a 雌螺子部 42b 牽引部
43 ばね支持部 43a 筒状フランジ
44 キャップ取付部 44a 筒部 44b 閉鎖部 44c 螺子部
5 支持部材 51 支持部 52 フランジ部
6 圧縮ばね
7 ガイド棒
8 圧縮スリーブ 81 螺子部 82 挿入部 83 ナット
9 圧縮治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるパイプと、ケーブルコアが収納されたパイプの両端を塞ぐプーリングアイとを備える超電導ケーブルの端部構造であって、
パイプ内をパイプ軸方向に摺動可能に配置され、ケーブルコアの少なくとも一方の端部に固定される支持部材と、
この支持部材とプーリングアイとの間に、支持部材に軸方向内方への押圧力を付与するように圧縮状態で配置される圧縮ばねとを備えていることを特徴とする超電導ケーブルの端部構造。
【請求項2】
ケーブルコアと、ケーブルコアが収納されるパイプと、ケーブルコアが収納されたパイプの両端を塞ぐプーリングアイとを備える超電導ケーブルの製造方法であって、
パイプ内にケーブルコアを収納し、
ケーブルコアの少なくとも一方の端部に、パイプ内をパイプ軸方向に摺動可能に配置される支持部材を取り付けて、
この支持部材とプーリングアイとで圧縮ばねを挟持して、支持部材に軸方向内方への押圧力を付与するように圧縮ばねを圧縮させ、
パイプ内に支持部材と圧縮状態の圧縮ばねを収納した状態で、プーリングアイをパイプの端部に固定することを特徴とする超電導ケーブルの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の超電導ケーブルの端部構造を有する超電導ケーブルの布設方法であって、超電導ケーブルのプーリングアイを牽引することにより、布設管路内に超電導ケーブルを布設した後、プーリングアイと圧縮ばねと支持部材とを取り除いて超電導ケーブルの端部を処理することを特徴とする超電導ケーブルの布設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−124855(P2009−124855A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296107(P2007−296107)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】