超電導ケーブルコア及び超電導ケーブル
【課題】内部に配置された光ケーブルを外力から保護することができる超電導ケーブルコアを提供することである。
【解決手段】巻芯1の周囲に配置される第1の超電導体層3と、第1の超電導導体層3の周囲に配置される電気絶縁層6と、電気絶縁層6の周囲に配置される第2の超電導体層7と、少なくとも1本の光ファイバ11を収めた温度モニタリング層10とを有する。
【解決手段】巻芯1の周囲に配置される第1の超電導体層3と、第1の超電導導体層3の周囲に配置される電気絶縁層6と、電気絶縁層6の周囲に配置される第2の超電導体層7と、少なくとも1本の光ファイバ11を収めた温度モニタリング層10とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルコア及び超電導ケーブルに関し、より詳しくは、温度検出機能を有する超電導ケーブルコア及び超電導ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、送電路の送電容量を上げ、トータルの送電コストを削減することが可能であるが、温度が上昇すると超電導状態から常電導状態に転移するクェンチが発生することがある。クェンチは、超電導ケーブルの抵抗の発生により熱的な損失を生じさせ、さらにその熱により超電導ケーブルの温度をさらに上昇させ、ケーブルの焼損や冷却系の障害発生の原因となる。
【0003】
そこで、温度センサを超電導ケーブル内に配置して超電導ケーブルの温度上昇を監視し、超電導ケーブルを構成する超電導線を液体窒素温度以下に保持する必要がある。
【0004】
温度センサとして電気ノイズなどの影響を受けにくい光ファイバを使用し、この光ファイバを超電導ケーブルの超電導線に沿って取り付けることが下記の特許文献1、2に記載されている。また、特許文献3には、超電導機器内の絶縁筒の外周に巻き付けられる超電導線材に添って光ファイバを取り付けることが記載されている。光ファイバは温度変化により光特性が変化するので、その光特性の変化を測定することにより超電導ケーブルの温度を検出することができる。
【0005】
【特許文献1】実開平2−133817号公報
【特許文献2】特開平6−275144号公報
【特許文献3】特開平11−162269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超電導ケーブルとして、ケーブルコアの超電導線を極低温に保つためにケーブルコアを断熱管の内部に入れた構造を有するものがあり、その中に光ファイバを配置すると図10、図11に示すようになる。
【0007】
図10、図11において、巻芯(former)101の外周に、第1カーボン紙102、超電導導体層103、第2カーボン紙104、電気絶縁層105、超電導遮蔽層106、絶縁性保護層107、不織布110が順に巻き付けられ、これらはフレキシブルなコルゲート状の断熱用金属管111に収められている。絶縁性保護層107、不織布110は、断熱用金属管111と超電導遮蔽層106の接触を防止するために配置されている。
【0008】
また、絶縁性保護層107と不織布110の間においては、光ファイバ108が絶縁性保護層107上でケーブルの長さ方向に沿って配置され、また、光ファイバ108及び絶縁性保護層107の上には第3カーボン紙109が巻かれている。
【0009】
このような構造によれば、図12に示すように、波付き形状を有する断熱用金属管111の内側に一定間隔で山が現れるため、断熱用金属管111内のケーブルコアの自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力が断熱用金属管111内側の山から光ファイバ108に加わり、これにより光ファイバ108が損傷されるおそれがある。
【0010】
本発明の課題は、内部に配置された光ケーブルを外力から保護することができる超電導ケーブルコア及び超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1の態様は、巻芯の周囲に配置される第1の超電導体層と、前記第1の超電導導体層の周囲に配置される電気絶縁層と、前記電気絶縁層の周囲に配置される第2の超電導体層と、少なくとも1本の光ファイバを収めた温度モニタリング層とを有することを特徴とする超電導ケーブルコアである。
【0012】
本発明に係る第2の態様は、第1の態様に係る超電導ケーブルコアを管に収めたことを特徴とする超電導ケーブルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバを収めた温度モニタリング層を第1、第2の超電導体層のいずれか一方の周囲に配置しているので、ケーブルコア中の温度をモニタリングすることが出来ると同時に、超電導ケーブルコアを構成する要素を温度モニタリング層によって側圧等の応力から保護することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す超電導ケーブルの構成図であり、図2は、図1に示す超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【0015】
図1、図2において、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる可撓性を有する円筒状の巻芯1の外周には、テープ状の第1のカーボン紙2が巻かれ、さらに第1のカーボン紙2の上には超電導導体層3が配置されている。
【0016】
超電導導体層3は、第1のカーボン紙2の外周に沿ってテープ状の超電導線材を1層当たり複数本螺旋状に巻き、これを単層又は複数層に巻き付けて構成される。超電導線材を複数層に巻く場合には、上の層と下の層の間に絶縁テープを介在させてもよい。
【0017】
超電導導体層3を構成する超電導線材として、酸化物超電導体線材と金属超電導体線材のいずれでもよいが、本実施形態では、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導体線材、例えばBi2 Sr2 Ca2 Cu3 Ox 線材に銀マグネシウム合金シースを施してなる高温超電導テープを用いる。超電導線材の幅は、例えば幅4mm程度である。
【0018】
なお、酸化物超電導線材として、Bi系の他に、イットリウム(Y) 系、ネオジウム(Nd)系、水銀(Hg)系、鉛(Pb)系、タリウム(TI)系等の酸化物超電導線材を適用してもよい。また、金属超電導線材には、バナジウム・ガリウム(V3Ga)系等がある。
【0019】
また、シースの材料として、銀マグネシウムの他に、銀マンガン合金、銅、アルミニウム等を適用してもよい。さらに、超電導線材に施すシースの代わりに銀、ニッケルなどのテープ状基材を用いてもよい。
【0020】
そのような構成の超電導導電層3の外周には、超電導導電層3を押さえるためにテープ状の第2のカーボン紙4が巻き付けられている。
【0021】
第2のカーボン紙4の上には、光ファイバを備えた温度モニタリング層10が配置されている。この温度モニタリング層10は、図3に示すような光ファイバ11を内部に収めた金属管12と、金属管12を収める溝13を有する金属層14とから構成されている。
【0022】
金属層14は、テープ状の金属線を第2のカーボン紙4上に螺旋状に巻いて形成され、その構成材料として良導体である銅素材を用いることが好ましい。また、金属管12は、光ファイバ11を被覆するもので、金属層14と同じ材料から構成してもよいし、異なる材料から構成してもよい。また、金属管12と金属層14は、何等かの事故が起きた場合に電流を分流させる機能も有する。
【0023】
光ファイバ11が収められる金属管12は、巻芯1の長手方向に沿って螺旋状に配置され、1条の超電導ケーブルに対して少なくとも1本必要であるが、本実施形態では第2のカーボン紙4上の周方向にほぼ等間隔で複数本、例えば3本配置されている。
【0024】
金属層14は、金属管12とともに光ファイバ11を保護する役割を有効に果たすために、その厚さを金属管12の外径と一致させるかそれ以上であることが好ましい。金属管12の外径は1mm〜2mmであり、例えば、低温冷却時に金属管12が熱収縮することを考慮して1.4mmとする場合には、金属層14の厚さも1.4mm相当とする。
【0025】
また、金属層14を構成する金属線は、超電導層3を構成する超電導線材を巻き付ける機械を使用して巻き付けられる。従って、金属層14を構成する金属線の幅は、超電導層3を構成する超電導線材の幅と一致する大きさとする。例えば、その金属線の幅を、超電導体線材の幅と同じ幅、例えば4mmとする。これにより、応力に弱い超電導体線材の上にも金属線を巻き付けることができるようになる。
【0026】
即ち、剛性の高い材料を巻き付ける機械は一般に20N以上の張力で導体線材を巻き付ける構造を有しているのに対して、超電導体素線を巻き付ける機械はその張力を10N以下で巻き付けることができる構造を有している。金属線を20N未満の低張力で巻き付けることにより、超電導導体層3に加わる応力を低減することが可能になる。
【0027】
それらの条件を満たす金属線としては、素線の径と編み方によって幅と厚さが簡単に調整でき、且つ良導体からなる編組線を適用することが効率がよい。編組線を構成する素線として銅線を適用する。
【0028】
以上のような温度モニタリング層10は、その上に第3のカーボン紙5を巻き付けることにより押さえられる。
【0029】
第3のカーボン紙5の上にはクラフト紙、半合成紙等よりなる絶縁テープを巻き付けて構成される電気絶縁層6が形成されている。絶縁テープの層数は、超電導ケーブルに必要な耐電圧値に応じて適宜調整される。なお、半合成紙として、例えばオリエンテッドポリプロピレンラミネートペーパ、ポリプロピレンラミネートペーパ等が適用される。
【0030】
さらに、電気絶縁層6の外周には、複数本の超電導線材を螺旋状に巻くことにより形成される超電導遮蔽層7が配置されている。その超電導線材として、上記した酸化物超電導線材と金属超電導線材のいずれかを用い、例えば、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導線材に銀マグネシウム合金シースを施してなる高温超電導テープを用いる。その超電導線材の幅は、例えば4mm程度である。
【0031】
また、超電導遮蔽層7は、単層又は複数層形成して構成される。超電導線材を複数層で巻く場合には、上の層と下の層の間に絶縁テープを介在させてもよい。
【0032】
なお、シースとして超電導導体層3に用いられる他の材料を使用してもよく、さらに、シースの代わりに銀、ニッケルなどのテープ状基材を用いてもよい。
【0033】
超電導遮蔽層7の外周には、テープ状のカーボン紙、絶縁クラフト紙等を螺旋状に巻いて構成される絶縁性保護層8が配置され、その上には第3のカーボン紙9が巻かれている。さらに、第3のカーボン紙9の外周には不織布15が巻かれている。なお、不織布15の代わりに金巾を用いてもよい。
【0034】
巻芯1から不織布15までの各層により構成されるケーブルコアは、金属から構成されて可撓性を有するコルゲート状の断熱用内管16に収納されており、断熱用内管16内に流される液体窒素等の冷媒により極低温に保たれる。また、断熱用内管16は、その外径より口径の大きなコルゲート状の断熱用外管18の中に収納される。
【0035】
さらに、断熱用外管18と断熱用内管16の間に形成される空間は減圧されて真空状態に保持されることにより、外部から断熱用内管18への熱の侵入が抑制されている。また、その空間には、例えばスーパーインシュレーションを多層に巻き付けて形成された断熱層17が介在されている。
【0036】
以上のような構成を有する超電導ケーブルによれば、温度モニタリング用に配置される光ファイバ11を金属管12内に収めるとともに、その金属管12をその両側で金属層14により挟むようにしている。
【0037】
これによって、断熱用内管16内でのケーブルコア1〜15の自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力によって断熱用内管16内側での波形の突出部とケーブルコア1〜15の相互間に力が作用しても、光ファイバ11に加えられる応力が金属管12及び金属層14によって抑制されるので、光ファイバ11が保護されて損傷を受け難くなる。
さらに、超電導導電層3は、その外周に配置された温度モニタリング層10によって断熱用内管16の応力から保護される。
【0038】
温度モニタリング層10内の光ファイバ11を用いて超電導ケーブルの温度分布を測定する場合には、例えば光時間領域反射測定法(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)を用いるが、温度モニタリング層10の光ファイバ11が金属管12と金属層14により保護されているので、測定エラーが生じにくくなって超電導ケーブルの温度管理の信頼性が高まる。特に、超電導導体層3から最も近い位置に光ファイバ11が配置されているので、超電導導体層3の温度を正確に測定できる。
【0039】
ところで、温度モニタリング層10の配置位置は、ケーブルコア1〜15の中であれば特に制約されるものではなく、絶縁層6中であってもよい。そこで、次の実施形態では、温度モニタリング層10を超電導遮蔽層7の外周に配置した構造について説明する。
【0040】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態を示す超電導ケーブルの層構造を示す構成図であり、図5は、図4に示す超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。図4、図5において、図1、図2、図3と同じ符号は同じ要素を示している。
図4、図5において、円筒状の巻芯1の外周には、第1の実施の形態と同様に、第1のカーボン紙2、超電導導電層3、第2のカーボン紙4が順に配置されている。
【0041】
第2のカーボン紙4の上には、クラフト紙、半合成紙等よりなる絶縁テープを巻き付けて構成される電気絶縁層6が形成されている。絶縁テープの層数は、超電導ケーブルに必要な耐電圧値に応じて適宜調整される。
【0042】
さらに、電気絶縁層6の外周には、複数本の超電導線材を螺旋状に巻いて超電導遮蔽層7が形成されている。その超電導線材として、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導線材に銀マグネシウム合金シースを施してなる高温超電導テープを用いる。その超電導線材の幅は、例えば4mm程度である。なお、超電導線材を複数層で巻く場合には、上の層と下の層の間に絶縁テープを介在させてもよい。
【0043】
超電導遮蔽層7を構成する超電導線材として、第1の実施形態と同様に、Bi系以外の酸化物超電導導線材、又は金属超電導線材のいずれかを選択してもよい。また、シースとして、銀マグネシウムの他に第1実施形態で示した材料を適用してもよく、さらに、シースの代わりに銀、ニッケルなどのテープ状基材を用いてもよい。
【0044】
超電導遮蔽層7の外周には、テープ状のカーボン紙、絶縁クラフト紙等を螺旋状に巻いて構成される保護層8が形成されている。
【0045】
そして、保護層8の上には、光ファイバを備えた温度モニタリング層10が配置されている。この温度モニタリング層10は、第1の実施形態と同様に、光ファイバ11を内部に収めた金属管12と、金属管12を収める溝13を有する金属層14とから構成されている。金属管12、金属層14は、第1の実施形態と同じ構成である。
【0046】
金属管12は、巻芯1の長手方向に沿って螺旋状又は直線状に配置され、1条の超電導ケーブルに対して少なくとも1本必要であるが、本実施形態では保護層8の周方向に3本配置されている。
【0047】
金属層14の厚さは、第1の実施形態で説明したように、金属層14に光ファイバ11を保護する役割を有効に果たせるために、金属管12の外径と一致させるかそれ以上であることが好ましい。
【0048】
また、金属層14を構成する金属線は、超電導層3や超電導遮蔽層7を構成する超電導線材を巻き付ける機械を使用して巻き付けられる。従って、金属層14を構成する金属線の幅は、超電導層3や超電導遮蔽層7を構成する超電導線材の幅と一致する大きさであることが好ましい。例えば、その金属線の幅を、超電導体線材の幅と同じ幅、例えば4mmとする。これにより、応力に弱い超電導体線材の上にも金属線を巻き付けて、超電導導体層3、超電導遮蔽層7に加わる応力を低減することが可能になる。
【0049】
それらの条件を満たす金属線としては、素線径と編み方によって幅と厚さが簡単に調整でき、且つ良導体である銅の編組線を適用するのが効率がよい。
【0050】
以上のような温度モニタリング層10は、その上に第3のカーボン紙5が巻き付けられて束ねられている。さらに、第3のカーボン紙5の外周には不織布15が巻かれている。なお、不織布15の代わりに金巾を用いてもよい。
【0051】
以上の巻芯1から不織布15までのケーブルコアは、可撓性を有する金属からなるコルゲート状の断熱用内管16に収納されて、断熱用内管16内に流される液体窒素等の冷媒により極低温に保たれる。また、断熱用内管16は、その外径より口径の大きなコルゲート状の断熱用外管18の中に収納される。
【0052】
さらに、断熱用外管18と断熱用内管16の間には、断熱層17が介在され、さらに、その間に形成される空間は減圧されて真空状態に保持されることにより、外部から断熱用内管16への熱の侵入が抑制されている。
【0053】
以上のような超電導ケーブルによれば、温度モニタリングに用いられる光ファイバ11を金属管12内に収めるとともに、その金属管12をその両側で金属層14により挟むようにして超電導遮蔽層7の外周に巻かれている。
【0054】
従って、断熱用内管16内のケーブルコア1〜15の自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力が生じて、断熱用内管18内側の波状の山部からケーブルコア1〜15に力が加えられても、金属管12と金属層14によって光ファイバ11は保護されて損傷されにくくなる。これにより、光ファイバ11を用いて超電導ケーブルの温度分布を測定する場合の信頼性が高まる。
【0055】
また、超電導遮蔽層7及び超電導導電層3は、その外周に配置された温度モニタリング層10によって断熱用内管16の応力から保護される。なお、温度モニタリング層10は、超電導遮蔽層7の外周に配置されているので、高電圧の影響を受けずに信号出力装置の煩雑化が避けられる。
【0056】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態を示す超電導ケーブルの層構造を示す構成図であり、図7は、図6に示す超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。図6、図7において、図3、図4、図5と同じ符号は同じ要素を示している。
【0057】
図6、図7において、巻芯1の外周には、第2の実施の形態と同様に、第1のカーボン紙2、超電導導電層3、第2のカーボン紙4、電気絶縁層6、超電導遮蔽層7、絶縁性保護層8が順に配置されている。
【0058】
絶縁性保護層8の外周には、第1実施形態と同様な構成で、巻芯1の長手方向に沿って螺旋状又は直線状に配置される金属管12と、金属管12を収める隙間13を有する金属層14とを有する温度モニタリング層10が配置されている。金属管12内には、図3に示したように光ファイバ11が収められている。
【0059】
温度モニタリング層10の上には第3のカーボン紙5が巻き付けられている。さらに、第3のカーボン紙5の上には、良導体からなる金属編組線を巻き付けて構成される金属保護層20が一層以上配置されている。金属保護層20を構成する金属編組線は、例えば、温度モニタリング層10を構成する金属層14に適用されると同じ構造の金属編組線を選択してもよい。
【0060】
その金属保護層20は、その上に巻かれる第4のカーボン紙21によって押さえられている。第4のカーボン紙21の外周には不織布15が巻かれている。なお、不織布15の代わりに金巾を用いてもよい。
【0061】
以上の巻芯1から不織布15までのケーブルコアは、可撓性を有する金属からなるコルゲート状の断熱用内管16に収納され、断熱用内管16内に流される液体窒素等の冷媒により極低温に保たれる。また、断熱用内管16は、その外径より口径の大きなコルゲート状の断熱用外管18の中に収納される。
【0062】
さらに、断熱用外管18と断熱用内管16の間には、第1実施形態と同様に断熱層17が介在され、さらに、その間に形成される空間は減圧されて真空状態に保持されることにより、外部から断熱用内管16への熱の侵入が抑制されている。
【0063】
以上のような超電導ケーブルによれば、温度モニタリング用に配置される光ファイバ11を金属管12内に収めるとともに、その金属管12をその両側で金属層14により挟むようにしている。
【0064】
これによって、断熱用内管18内のケーブルコア1〜15,20,21の自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力が生じて、断熱用内管16の内側の突出部とケーブルコア部〜15,20,21の相互間に応力が発生しても、光ファイバ11は、金属管12と金属層14によって保護されて損傷され難くなる。
【0065】
しかも、光ファイバ11は、金属管12、金属層14のみならず外周で金属保護層20により囲まれているので、断熱用内管16からの応力が二重に防護され、外力による損傷をさらに受けにくくなる。特に、金属層14の剛性よりも金属管12の剛性が高く、金属層14が光ファイバ11を十分に保護できないおそれがある場合には、金属保護層20は光ファイバ11の予備的な保護に有効である。
【0066】
また、超電導遮蔽層7及び超電導導電層3は、温度モニタリング層10と金属保護層20の二層以上の構造により、断熱用内管18内側の波状の突出部からの押圧力による損傷を受けにくくなる。
なお、第1〜第3の実施の形態に示した温度モニタリング層10において、金属層14の替わりに導電性カーボンその他の導電性材料からなる層を適用してもよい。
【0067】
ところで、上述した実施形態の効果を確認するために、第2、第3の実施形態に係る超電導ケーブルと図10に示す比較例に係る超電導ケーブルを試作し、これらの試料に側圧を与え、それらの超電導ケーブル内の光ケーブルと超電導遮蔽層に与える影響を調査した。
なお、第3の実施形態に係る超電導ケーブルを試料1とし、第2の実施形態に係る超電導ケーブルを試料2とし、比較例に係る超電導ケーブルを試料3とした。比較例に係る超電導ケーブルにおいて、光ファイバは金属管に入れて配置した。
【0068】
それらの評価は、超電導ケーブルに0kN/m〜5kN/mまでの圧力を与えて、与えた毎に超電導遮蔽層の臨界電流値(Ic )測定と光ファイバのロス測定を行うことにより実施したところ、図8、図9に示すような結果が得られた。なお、臨界電流値、光ファイバロスともに0kN時の値を100%として表記した。
【0069】
図8,図9において、試料1では、超電導遮蔽層の臨界電流値の低下も光ファイバのロスの増加も認められないが、試料2では試料1に比べて臨界電流値がわずかに低下する一方、光ファイバのロスがわずかに増加した。これに対して、試料3では、臨界電流値は大幅に低下する一方、光ファイバのロスは大幅に増加した。
【0070】
また、光ファイバが収められた金属管の外観を調査したところ、試料1では金属管に特に異常が見られないが、試料2、試料3では断熱用の波付き断熱用内管の内側の山で金属管が潰れていることを目視により確認した。ただし、試料2の金属管の潰れは、試料3の金属管の潰れに比べて小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルに取り付けられる金属管とその中に収められる光ケーブルを示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施の形態に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルと従来技術に係る超電導ケーブルについて、側圧と光ファイバロス増加率の関係を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルと従来技術に係る超電導ケーブルについて、側圧と超電導導体臨界電流値低下率の関係を示す図である。
【図10】図10は、従来技術に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図11】図11は、従来技術に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図12】図12は、従来技術に係る問題点を示す超電導ケーブルの長手方向の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1:巻芯
2,4,5,9:カーボン紙
3:超電導導体層
6:電気絶縁層
7:超電導遮蔽層
8:絶縁性保護層
10:温度モニタリング層
11:光ファイバ
12:金属管
13:溝
14:金属層
15:不織布
16:断熱用内管
17:断熱層
18:断熱用外管
20:金属保護層
21:カーボン層
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルコア及び超電導ケーブルに関し、より詳しくは、温度検出機能を有する超電導ケーブルコア及び超電導ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、送電路の送電容量を上げ、トータルの送電コストを削減することが可能であるが、温度が上昇すると超電導状態から常電導状態に転移するクェンチが発生することがある。クェンチは、超電導ケーブルの抵抗の発生により熱的な損失を生じさせ、さらにその熱により超電導ケーブルの温度をさらに上昇させ、ケーブルの焼損や冷却系の障害発生の原因となる。
【0003】
そこで、温度センサを超電導ケーブル内に配置して超電導ケーブルの温度上昇を監視し、超電導ケーブルを構成する超電導線を液体窒素温度以下に保持する必要がある。
【0004】
温度センサとして電気ノイズなどの影響を受けにくい光ファイバを使用し、この光ファイバを超電導ケーブルの超電導線に沿って取り付けることが下記の特許文献1、2に記載されている。また、特許文献3には、超電導機器内の絶縁筒の外周に巻き付けられる超電導線材に添って光ファイバを取り付けることが記載されている。光ファイバは温度変化により光特性が変化するので、その光特性の変化を測定することにより超電導ケーブルの温度を検出することができる。
【0005】
【特許文献1】実開平2−133817号公報
【特許文献2】特開平6−275144号公報
【特許文献3】特開平11−162269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超電導ケーブルとして、ケーブルコアの超電導線を極低温に保つためにケーブルコアを断熱管の内部に入れた構造を有するものがあり、その中に光ファイバを配置すると図10、図11に示すようになる。
【0007】
図10、図11において、巻芯(former)101の外周に、第1カーボン紙102、超電導導体層103、第2カーボン紙104、電気絶縁層105、超電導遮蔽層106、絶縁性保護層107、不織布110が順に巻き付けられ、これらはフレキシブルなコルゲート状の断熱用金属管111に収められている。絶縁性保護層107、不織布110は、断熱用金属管111と超電導遮蔽層106の接触を防止するために配置されている。
【0008】
また、絶縁性保護層107と不織布110の間においては、光ファイバ108が絶縁性保護層107上でケーブルの長さ方向に沿って配置され、また、光ファイバ108及び絶縁性保護層107の上には第3カーボン紙109が巻かれている。
【0009】
このような構造によれば、図12に示すように、波付き形状を有する断熱用金属管111の内側に一定間隔で山が現れるため、断熱用金属管111内のケーブルコアの自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力が断熱用金属管111内側の山から光ファイバ108に加わり、これにより光ファイバ108が損傷されるおそれがある。
【0010】
本発明の課題は、内部に配置された光ケーブルを外力から保護することができる超電導ケーブルコア及び超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る第1の態様は、巻芯の周囲に配置される第1の超電導体層と、前記第1の超電導導体層の周囲に配置される電気絶縁層と、前記電気絶縁層の周囲に配置される第2の超電導体層と、少なくとも1本の光ファイバを収めた温度モニタリング層とを有することを特徴とする超電導ケーブルコアである。
【0012】
本発明に係る第2の態様は、第1の態様に係る超電導ケーブルコアを管に収めたことを特徴とする超電導ケーブルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバを収めた温度モニタリング層を第1、第2の超電導体層のいずれか一方の周囲に配置しているので、ケーブルコア中の温度をモニタリングすることが出来ると同時に、超電導ケーブルコアを構成する要素を温度モニタリング層によって側圧等の応力から保護することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す超電導ケーブルの構成図であり、図2は、図1に示す超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【0015】
図1、図2において、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる可撓性を有する円筒状の巻芯1の外周には、テープ状の第1のカーボン紙2が巻かれ、さらに第1のカーボン紙2の上には超電導導体層3が配置されている。
【0016】
超電導導体層3は、第1のカーボン紙2の外周に沿ってテープ状の超電導線材を1層当たり複数本螺旋状に巻き、これを単層又は複数層に巻き付けて構成される。超電導線材を複数層に巻く場合には、上の層と下の層の間に絶縁テープを介在させてもよい。
【0017】
超電導導体層3を構成する超電導線材として、酸化物超電導体線材と金属超電導体線材のいずれでもよいが、本実施形態では、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導体線材、例えばBi2 Sr2 Ca2 Cu3 Ox 線材に銀マグネシウム合金シースを施してなる高温超電導テープを用いる。超電導線材の幅は、例えば幅4mm程度である。
【0018】
なお、酸化物超電導線材として、Bi系の他に、イットリウム(Y) 系、ネオジウム(Nd)系、水銀(Hg)系、鉛(Pb)系、タリウム(TI)系等の酸化物超電導線材を適用してもよい。また、金属超電導線材には、バナジウム・ガリウム(V3Ga)系等がある。
【0019】
また、シースの材料として、銀マグネシウムの他に、銀マンガン合金、銅、アルミニウム等を適用してもよい。さらに、超電導線材に施すシースの代わりに銀、ニッケルなどのテープ状基材を用いてもよい。
【0020】
そのような構成の超電導導電層3の外周には、超電導導電層3を押さえるためにテープ状の第2のカーボン紙4が巻き付けられている。
【0021】
第2のカーボン紙4の上には、光ファイバを備えた温度モニタリング層10が配置されている。この温度モニタリング層10は、図3に示すような光ファイバ11を内部に収めた金属管12と、金属管12を収める溝13を有する金属層14とから構成されている。
【0022】
金属層14は、テープ状の金属線を第2のカーボン紙4上に螺旋状に巻いて形成され、その構成材料として良導体である銅素材を用いることが好ましい。また、金属管12は、光ファイバ11を被覆するもので、金属層14と同じ材料から構成してもよいし、異なる材料から構成してもよい。また、金属管12と金属層14は、何等かの事故が起きた場合に電流を分流させる機能も有する。
【0023】
光ファイバ11が収められる金属管12は、巻芯1の長手方向に沿って螺旋状に配置され、1条の超電導ケーブルに対して少なくとも1本必要であるが、本実施形態では第2のカーボン紙4上の周方向にほぼ等間隔で複数本、例えば3本配置されている。
【0024】
金属層14は、金属管12とともに光ファイバ11を保護する役割を有効に果たすために、その厚さを金属管12の外径と一致させるかそれ以上であることが好ましい。金属管12の外径は1mm〜2mmであり、例えば、低温冷却時に金属管12が熱収縮することを考慮して1.4mmとする場合には、金属層14の厚さも1.4mm相当とする。
【0025】
また、金属層14を構成する金属線は、超電導層3を構成する超電導線材を巻き付ける機械を使用して巻き付けられる。従って、金属層14を構成する金属線の幅は、超電導層3を構成する超電導線材の幅と一致する大きさとする。例えば、その金属線の幅を、超電導体線材の幅と同じ幅、例えば4mmとする。これにより、応力に弱い超電導体線材の上にも金属線を巻き付けることができるようになる。
【0026】
即ち、剛性の高い材料を巻き付ける機械は一般に20N以上の張力で導体線材を巻き付ける構造を有しているのに対して、超電導体素線を巻き付ける機械はその張力を10N以下で巻き付けることができる構造を有している。金属線を20N未満の低張力で巻き付けることにより、超電導導体層3に加わる応力を低減することが可能になる。
【0027】
それらの条件を満たす金属線としては、素線の径と編み方によって幅と厚さが簡単に調整でき、且つ良導体からなる編組線を適用することが効率がよい。編組線を構成する素線として銅線を適用する。
【0028】
以上のような温度モニタリング層10は、その上に第3のカーボン紙5を巻き付けることにより押さえられる。
【0029】
第3のカーボン紙5の上にはクラフト紙、半合成紙等よりなる絶縁テープを巻き付けて構成される電気絶縁層6が形成されている。絶縁テープの層数は、超電導ケーブルに必要な耐電圧値に応じて適宜調整される。なお、半合成紙として、例えばオリエンテッドポリプロピレンラミネートペーパ、ポリプロピレンラミネートペーパ等が適用される。
【0030】
さらに、電気絶縁層6の外周には、複数本の超電導線材を螺旋状に巻くことにより形成される超電導遮蔽層7が配置されている。その超電導線材として、上記した酸化物超電導線材と金属超電導線材のいずれかを用い、例えば、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導線材に銀マグネシウム合金シースを施してなる高温超電導テープを用いる。その超電導線材の幅は、例えば4mm程度である。
【0031】
また、超電導遮蔽層7は、単層又は複数層形成して構成される。超電導線材を複数層で巻く場合には、上の層と下の層の間に絶縁テープを介在させてもよい。
【0032】
なお、シースとして超電導導体層3に用いられる他の材料を使用してもよく、さらに、シースの代わりに銀、ニッケルなどのテープ状基材を用いてもよい。
【0033】
超電導遮蔽層7の外周には、テープ状のカーボン紙、絶縁クラフト紙等を螺旋状に巻いて構成される絶縁性保護層8が配置され、その上には第3のカーボン紙9が巻かれている。さらに、第3のカーボン紙9の外周には不織布15が巻かれている。なお、不織布15の代わりに金巾を用いてもよい。
【0034】
巻芯1から不織布15までの各層により構成されるケーブルコアは、金属から構成されて可撓性を有するコルゲート状の断熱用内管16に収納されており、断熱用内管16内に流される液体窒素等の冷媒により極低温に保たれる。また、断熱用内管16は、その外径より口径の大きなコルゲート状の断熱用外管18の中に収納される。
【0035】
さらに、断熱用外管18と断熱用内管16の間に形成される空間は減圧されて真空状態に保持されることにより、外部から断熱用内管18への熱の侵入が抑制されている。また、その空間には、例えばスーパーインシュレーションを多層に巻き付けて形成された断熱層17が介在されている。
【0036】
以上のような構成を有する超電導ケーブルによれば、温度モニタリング用に配置される光ファイバ11を金属管12内に収めるとともに、その金属管12をその両側で金属層14により挟むようにしている。
【0037】
これによって、断熱用内管16内でのケーブルコア1〜15の自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力によって断熱用内管16内側での波形の突出部とケーブルコア1〜15の相互間に力が作用しても、光ファイバ11に加えられる応力が金属管12及び金属層14によって抑制されるので、光ファイバ11が保護されて損傷を受け難くなる。
さらに、超電導導電層3は、その外周に配置された温度モニタリング層10によって断熱用内管16の応力から保護される。
【0038】
温度モニタリング層10内の光ファイバ11を用いて超電導ケーブルの温度分布を測定する場合には、例えば光時間領域反射測定法(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)を用いるが、温度モニタリング層10の光ファイバ11が金属管12と金属層14により保護されているので、測定エラーが生じにくくなって超電導ケーブルの温度管理の信頼性が高まる。特に、超電導導体層3から最も近い位置に光ファイバ11が配置されているので、超電導導体層3の温度を正確に測定できる。
【0039】
ところで、温度モニタリング層10の配置位置は、ケーブルコア1〜15の中であれば特に制約されるものではなく、絶縁層6中であってもよい。そこで、次の実施形態では、温度モニタリング層10を超電導遮蔽層7の外周に配置した構造について説明する。
【0040】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態を示す超電導ケーブルの層構造を示す構成図であり、図5は、図4に示す超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。図4、図5において、図1、図2、図3と同じ符号は同じ要素を示している。
図4、図5において、円筒状の巻芯1の外周には、第1の実施の形態と同様に、第1のカーボン紙2、超電導導電層3、第2のカーボン紙4が順に配置されている。
【0041】
第2のカーボン紙4の上には、クラフト紙、半合成紙等よりなる絶縁テープを巻き付けて構成される電気絶縁層6が形成されている。絶縁テープの層数は、超電導ケーブルに必要な耐電圧値に応じて適宜調整される。
【0042】
さらに、電気絶縁層6の外周には、複数本の超電導線材を螺旋状に巻いて超電導遮蔽層7が形成されている。その超電導線材として、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導線材に銀マグネシウム合金シースを施してなる高温超電導テープを用いる。その超電導線材の幅は、例えば4mm程度である。なお、超電導線材を複数層で巻く場合には、上の層と下の層の間に絶縁テープを介在させてもよい。
【0043】
超電導遮蔽層7を構成する超電導線材として、第1の実施形態と同様に、Bi系以外の酸化物超電導導線材、又は金属超電導線材のいずれかを選択してもよい。また、シースとして、銀マグネシウムの他に第1実施形態で示した材料を適用してもよく、さらに、シースの代わりに銀、ニッケルなどのテープ状基材を用いてもよい。
【0044】
超電導遮蔽層7の外周には、テープ状のカーボン紙、絶縁クラフト紙等を螺旋状に巻いて構成される保護層8が形成されている。
【0045】
そして、保護層8の上には、光ファイバを備えた温度モニタリング層10が配置されている。この温度モニタリング層10は、第1の実施形態と同様に、光ファイバ11を内部に収めた金属管12と、金属管12を収める溝13を有する金属層14とから構成されている。金属管12、金属層14は、第1の実施形態と同じ構成である。
【0046】
金属管12は、巻芯1の長手方向に沿って螺旋状又は直線状に配置され、1条の超電導ケーブルに対して少なくとも1本必要であるが、本実施形態では保護層8の周方向に3本配置されている。
【0047】
金属層14の厚さは、第1の実施形態で説明したように、金属層14に光ファイバ11を保護する役割を有効に果たせるために、金属管12の外径と一致させるかそれ以上であることが好ましい。
【0048】
また、金属層14を構成する金属線は、超電導層3や超電導遮蔽層7を構成する超電導線材を巻き付ける機械を使用して巻き付けられる。従って、金属層14を構成する金属線の幅は、超電導層3や超電導遮蔽層7を構成する超電導線材の幅と一致する大きさであることが好ましい。例えば、その金属線の幅を、超電導体線材の幅と同じ幅、例えば4mmとする。これにより、応力に弱い超電導体線材の上にも金属線を巻き付けて、超電導導体層3、超電導遮蔽層7に加わる応力を低減することが可能になる。
【0049】
それらの条件を満たす金属線としては、素線径と編み方によって幅と厚さが簡単に調整でき、且つ良導体である銅の編組線を適用するのが効率がよい。
【0050】
以上のような温度モニタリング層10は、その上に第3のカーボン紙5が巻き付けられて束ねられている。さらに、第3のカーボン紙5の外周には不織布15が巻かれている。なお、不織布15の代わりに金巾を用いてもよい。
【0051】
以上の巻芯1から不織布15までのケーブルコアは、可撓性を有する金属からなるコルゲート状の断熱用内管16に収納されて、断熱用内管16内に流される液体窒素等の冷媒により極低温に保たれる。また、断熱用内管16は、その外径より口径の大きなコルゲート状の断熱用外管18の中に収納される。
【0052】
さらに、断熱用外管18と断熱用内管16の間には、断熱層17が介在され、さらに、その間に形成される空間は減圧されて真空状態に保持されることにより、外部から断熱用内管16への熱の侵入が抑制されている。
【0053】
以上のような超電導ケーブルによれば、温度モニタリングに用いられる光ファイバ11を金属管12内に収めるとともに、その金属管12をその両側で金属層14により挟むようにして超電導遮蔽層7の外周に巻かれている。
【0054】
従って、断熱用内管16内のケーブルコア1〜15の自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力が生じて、断熱用内管18内側の波状の山部からケーブルコア1〜15に力が加えられても、金属管12と金属層14によって光ファイバ11は保護されて損傷されにくくなる。これにより、光ファイバ11を用いて超電導ケーブルの温度分布を測定する場合の信頼性が高まる。
【0055】
また、超電導遮蔽層7及び超電導導電層3は、その外周に配置された温度モニタリング層10によって断熱用内管16の応力から保護される。なお、温度モニタリング層10は、超電導遮蔽層7の外周に配置されているので、高電圧の影響を受けずに信号出力装置の煩雑化が避けられる。
【0056】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態を示す超電導ケーブルの層構造を示す構成図であり、図7は、図6に示す超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。図6、図7において、図3、図4、図5と同じ符号は同じ要素を示している。
【0057】
図6、図7において、巻芯1の外周には、第2の実施の形態と同様に、第1のカーボン紙2、超電導導電層3、第2のカーボン紙4、電気絶縁層6、超電導遮蔽層7、絶縁性保護層8が順に配置されている。
【0058】
絶縁性保護層8の外周には、第1実施形態と同様な構成で、巻芯1の長手方向に沿って螺旋状又は直線状に配置される金属管12と、金属管12を収める隙間13を有する金属層14とを有する温度モニタリング層10が配置されている。金属管12内には、図3に示したように光ファイバ11が収められている。
【0059】
温度モニタリング層10の上には第3のカーボン紙5が巻き付けられている。さらに、第3のカーボン紙5の上には、良導体からなる金属編組線を巻き付けて構成される金属保護層20が一層以上配置されている。金属保護層20を構成する金属編組線は、例えば、温度モニタリング層10を構成する金属層14に適用されると同じ構造の金属編組線を選択してもよい。
【0060】
その金属保護層20は、その上に巻かれる第4のカーボン紙21によって押さえられている。第4のカーボン紙21の外周には不織布15が巻かれている。なお、不織布15の代わりに金巾を用いてもよい。
【0061】
以上の巻芯1から不織布15までのケーブルコアは、可撓性を有する金属からなるコルゲート状の断熱用内管16に収納され、断熱用内管16内に流される液体窒素等の冷媒により極低温に保たれる。また、断熱用内管16は、その外径より口径の大きなコルゲート状の断熱用外管18の中に収納される。
【0062】
さらに、断熱用外管18と断熱用内管16の間には、第1実施形態と同様に断熱層17が介在され、さらに、その間に形成される空間は減圧されて真空状態に保持されることにより、外部から断熱用内管16への熱の侵入が抑制されている。
【0063】
以上のような超電導ケーブルによれば、温度モニタリング用に配置される光ファイバ11を金属管12内に収めるとともに、その金属管12をその両側で金属層14により挟むようにしている。
【0064】
これによって、断熱用内管18内のケーブルコア1〜15,20,21の自重や超電導ケーブル敷設時の側圧等の応力が生じて、断熱用内管16の内側の突出部とケーブルコア部〜15,20,21の相互間に応力が発生しても、光ファイバ11は、金属管12と金属層14によって保護されて損傷され難くなる。
【0065】
しかも、光ファイバ11は、金属管12、金属層14のみならず外周で金属保護層20により囲まれているので、断熱用内管16からの応力が二重に防護され、外力による損傷をさらに受けにくくなる。特に、金属層14の剛性よりも金属管12の剛性が高く、金属層14が光ファイバ11を十分に保護できないおそれがある場合には、金属保護層20は光ファイバ11の予備的な保護に有効である。
【0066】
また、超電導遮蔽層7及び超電導導電層3は、温度モニタリング層10と金属保護層20の二層以上の構造により、断熱用内管18内側の波状の突出部からの押圧力による損傷を受けにくくなる。
なお、第1〜第3の実施の形態に示した温度モニタリング層10において、金属層14の替わりに導電性カーボンその他の導電性材料からなる層を適用してもよい。
【0067】
ところで、上述した実施形態の効果を確認するために、第2、第3の実施形態に係る超電導ケーブルと図10に示す比較例に係る超電導ケーブルを試作し、これらの試料に側圧を与え、それらの超電導ケーブル内の光ケーブルと超電導遮蔽層に与える影響を調査した。
なお、第3の実施形態に係る超電導ケーブルを試料1とし、第2の実施形態に係る超電導ケーブルを試料2とし、比較例に係る超電導ケーブルを試料3とした。比較例に係る超電導ケーブルにおいて、光ファイバは金属管に入れて配置した。
【0068】
それらの評価は、超電導ケーブルに0kN/m〜5kN/mまでの圧力を与えて、与えた毎に超電導遮蔽層の臨界電流値(Ic )測定と光ファイバのロス測定を行うことにより実施したところ、図8、図9に示すような結果が得られた。なお、臨界電流値、光ファイバロスともに0kN時の値を100%として表記した。
【0069】
図8,図9において、試料1では、超電導遮蔽層の臨界電流値の低下も光ファイバのロスの増加も認められないが、試料2では試料1に比べて臨界電流値がわずかに低下する一方、光ファイバのロスがわずかに増加した。これに対して、試料3では、臨界電流値は大幅に低下する一方、光ファイバのロスは大幅に増加した。
【0070】
また、光ファイバが収められた金属管の外観を調査したところ、試料1では金属管に特に異常が見られないが、試料2、試料3では断熱用の波付き断熱用内管の内側の山で金属管が潰れていることを目視により確認した。ただし、試料2の金属管の潰れは、試料3の金属管の潰れに比べて小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルに取り付けられる金属管とその中に収められる光ケーブルを示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施の形態に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルと従来技術に係る超電導ケーブルについて、側圧と光ファイバロス増加率の関係を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルと従来技術に係る超電導ケーブルについて、側圧と超電導導体臨界電流値低下率の関係を示す図である。
【図10】図10は、従来技術に係る超電導ケーブルを示す構成図である。
【図11】図11は、従来技術に係る超電導ケーブルの長手方向に対して直角に切断した状態を示す断面図である。
【図12】図12は、従来技術に係る問題点を示す超電導ケーブルの長手方向の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1:巻芯
2,4,5,9:カーボン紙
3:超電導導体層
6:電気絶縁層
7:超電導遮蔽層
8:絶縁性保護層
10:温度モニタリング層
11:光ファイバ
12:金属管
13:溝
14:金属層
15:不織布
16:断熱用内管
17:断熱層
18:断熱用外管
20:金属保護層
21:カーボン層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯の周囲に配置される第1の超電導体層と、
前記第1の超電導導体層の周囲に配置される電気絶縁層と、
前記電気絶縁層の周囲に配置される第2の超電導体層と、
少なくとも1本の光ファイバを収めた温度モニタリング層と
を有することを特徴とする超電導ケーブルコア。
【請求項2】
前記温度モニタリング層は、前記第2の超電導体層の外周に配置されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項3】
前記温度モニタリング層は、前記光ファイバを金属線と同層で巻き付けて形成して構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項4】
前記金属線は良導体であることを特徴とする請求項3に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項5】
前記光ファイバは、金属管に収納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の超電導ケーブルコア。
【請求項6】
前記温度モニタリング層の外周に形成される一層以上の保護層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の超電導ケーブルコア。
【請求項7】
前記保護層は良導体からなることを特徴とする請求項6に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の超電導ケーブルコアを管に収めてなることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項1】
巻芯の周囲に配置される第1の超電導体層と、
前記第1の超電導導体層の周囲に配置される電気絶縁層と、
前記電気絶縁層の周囲に配置される第2の超電導体層と、
少なくとも1本の光ファイバを収めた温度モニタリング層と
を有することを特徴とする超電導ケーブルコア。
【請求項2】
前記温度モニタリング層は、前記第2の超電導体層の外周に配置されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項3】
前記温度モニタリング層は、前記光ファイバを金属線と同層で巻き付けて形成して構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項4】
前記金属線は良導体であることを特徴とする請求項3に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項5】
前記光ファイバは、金属管に収納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の超電導ケーブルコア。
【請求項6】
前記温度モニタリング層の外周に形成される一層以上の保護層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の超電導ケーブルコア。
【請求項7】
前記保護層は良導体からなることを特徴とする請求項6に記載の超電導ケーブルコア。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の超電導ケーブルコアを管に収めてなることを特徴とする超電導ケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−59753(P2006−59753A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242503(P2004−242503)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構 「交流超電導電力機器基盤技術研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構 「交流超電導電力機器基盤技術研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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