説明

超電導ケーブル

【課題】 複数のケーブルコアを用いていても撚り合わせ構造を形成し易い超電導ケーブル、及びこの超電導ケーブルを利用した直流送電方法を提供する。
【解決手段】 超電導ケーブル1は、構成の異なる2種類のケーブルコア(第一コア2,第二コア3)を撚り合わせ、断熱管7内に収納させた構成である。第一コア2は、直流送電において往路線路又は極の送電線に用いられる第一超電導層2aを具え、第一超電導層2a以外の超電導層を有していない。第二コア3は、直流送電において帰路線路又は中性線に用いられる第二超電導層3aを具え、第二超電導層3a以外の超電導層を有していない。第二超電導層3aは、第一超電導層2の外径よりも大きな内径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のケーブルコアを撚り合わせてなる超電導ケーブル、及びこの超電導ケーブルを利用した直流送電方法に関するものである。特に、撚り合わせ構造が形成し易い超電導ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流用超電導ケーブルとして、3条のケーブルコアを撚り合わせて具える三心一括型のケーブルが知られている。図7は、三心一括型の三相交流用超電導ケーブルの断面図である。この超電導ケーブル100は、断熱管101内に3条のケーブルコア102を撚り合わせて収納させた構成である。断熱管101は、外管101aと内管101bとからなる二重管の間に断熱材(図示せず)が配置され、かつ外管101aと内管101bとの間が真空引きされた構成である。断熱管101の外周には、防食層104を具える。各ケーブルコア102は、中心から順にフォーマ200、超電導導体層201、絶縁層202、超電導シールド層203、保護層204を具え、内管101bと各ケーブルコア102とで囲まれる空間103が液体窒素などの冷媒の流路となる。
【0003】
上記超電導ケーブルを用いて交流送電を行うと、インダクタンスによる交流損失が生じたり、短絡時の電流が大きく、このときの損失により温度が過度に上昇する恐れがある。これに対し、交流送電ではなく、超電導ケーブルによる直流送電の場合、交流損失がなく、短絡電流も小さくすることができる。直流用超電導ケーブルとして、特許文献1では、超電導導体と絶縁層とを有するケーブルコアを3条撚り合わせた超電導ケーブルが提案されている。この超電導ケーブルでは、各コアに超電導導体と、その外周に設けられる絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられる超電導線材からなる帰路導体とを具えるものを用い、超電導導体を往路線路、帰路導体を帰路線路に用いることで単極送電を行っている。
【0004】
【特許文献1】特開2003-249130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の超電導ケーブルでは、1条のケーブルで単極送電及び双極送電といった直流送電を行うことができる。また、複数のケーブルコアの撚り合わせ構造としていることから、ケーブル冷却時の収縮代を持たせることができる。しかし、このケーブルでは、超電導材料からなる超電導導体及び帰路導体を具えるケーブルコアを用いることから、各コアの超電導材料の使用量が多くなることで、コアの曲げ剛性が高くなる傾向にある。そのため、3条のケーブルコアを撚り合わせにくく、改善が望まれている。また、図7に示す交流用超電導ケーブルの場合も、超電導材料からなる超電導導体及び超電導シールド層を具えるケーブルコアを用いることから、コアの撚り合わせが行いにくい。
【0006】
そこで、本発明の主目的は、複数のケーブルコアを用いながら、撚り合わせ構造が形成し易い超電導ケーブルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、直流送電に適した超電導ケーブルを提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記超電導ケーブルを利用した直流送電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケーブル全体として超電導材料の使用量を少なくすることで、上記目的を達成する。
【0008】
(2種類の異なるケーブルコアを撚り合わせたタイプ:タイプ1)
ケーブル全体として超電導材料の使用量を少なくする手段として、まず、ケーブルコア1心あたりの超電導材料の使用量を少なくすることを提案する。
即ち、本発明は、超電導層と絶縁層とを有するケーブルコアを複数撚り合わせてなる超電導ケーブルであって、以下の構成のコアを具えることを特徴とする。
第一コア:第一超電導層を有する。
第二コア:第二超電導層を有する。この第二超電導層は、第一超電導層の外径よりも大きな内径を有する。
【0009】
本発明直流送電方法は、上記第一コア及び第二コアを具えるタイプ1の超電導ケーブルを用いた送電方法として以下を提案する。
(単極送電)
第一コアに具える第一超電導層を往路線路に用い、第二コアに具える第二超電導層を帰路線路に用いる。
(双極送電)
第一コアを複数具えておき、そのうち少なくとも一つの第一コアに具える第一超電導層を正極及び負極のいずれか一極の送電に用い、残りの第一コアに具える第一超電導層を他極の送電に用いる。そして、第二コアに具える第二超電導層を中性線として用いる。
【0010】
上記2種類の異なるケーブルコアを具えるタイプと別の形態として、超電導材料からなる超電導層を有するコアと、超電導層を有していない部材とを撚り合わせた構成を提案する。
【0011】
(冷媒管を具えるタイプ:タイプ2)
即ち、本発明は、複数のケーブルコアを撚り合わせてなる超電導ケーブルであって、このケーブルは、ケーブルコアと同径である冷媒管と、以下の構成を具える2条のケーブルコアとを撚り合わせて形成されることを特徴とする。
ケーブルコア:超電導導体層と、この超電導導体層の外周に設けられる絶縁層と、この絶縁層の外周に設けられる外部超電導層とを具える。
【0012】
また、本発明直流送電方法は、上記2条のコアと冷媒管とを撚り合わせてなるタイプ2の超電導ケーブルを用いた送電方法として以下を提案する。
(単極送電)
両コアに具える超電導導体層を往路線路に用い、両コアに具える外部超電導層を帰路線路に用いる。
(双極送電)
一方のコアに具える超電導導体層を正極及び負極のいずれか一極の送電に用い、他方のコアに具える超電導導体層を他極の送電に用いる。そして、各コアに具える外部超電導層を中性線として用いる。
【0013】
上述の図7に示す交流超電導ケーブルや、特許文献1の直流超電導ケーブルでは、ケーブル冷却時の収縮代を確保するべく、3心コアの撚り合わせ構造としている。また、特許文献1では、単極送電を行うにあたり、超電導導体と帰路導体とを超電導材料にて形成したコアを利用することを提案している。しかし、超電導ケーブルのケーブルコアにおいて超電導材料を多く用いると、各コアの曲げ剛性が高くなって、3条の撚り合わせが行いにくくなる。そこで、本発明では、ケーブルコア1心(1条)あたりの超電導材料の使用量を低減して、撚り合わせやすくすることを提案する。具体的には、外部超電導層(直流送電において帰路導体として利用される層、交流送電においてシールドとして利用される層)を有しておらず超電導導体層(直流送電において往路導体として利用される層、交流送電において導体として利用される層)のみを有するコア(第一コアに相当)と、このコアとは逆に上記超電導導体層を有しておらず上記外部導体層のみを有するコア(第二コアに相当)とを利用する。或いは、本発明では、3条のコアのうち1条を、超電導材料を全く使用しない部材とすることで、撚り合わせやすくすることを提案する。具体的には、1条のケーブルコアの代わりに冷媒管を用いる。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0014】
(タイプ1)
本発明の超電導ケーブルは、超電導層と絶縁層とを有する第一コア及び第二コアを撚り合わせてなるものとする。第一コアは、超電導材料から構成される第一超電導層を具え、かつ、この第一超電導層のほかに超電導材料からなる超電導層を具えていないものとする。第二コアは、超電導材料から構成される第二超電導層を具え、かつ、この第二超電導層の他に超電導材料からなる超電導層を具えていないものとする。即ち、第一コアは、コアの中心部側に超電導層を有し、コアの外周側に超電導層を有しておらず、第二コアは、コアの外周側に超電導層を有し、コアの内周側に超電導層を有していない。そして、第二コアの第二超電導層は、第一超電導層の外径よりも大きな内径を有するように形成する。
【0015】
第一コア及び第二コアの超電導層は、例えば、Bi2223系超電導材料からなる複数本のフィラメントが銀シースなどのマトリクス中に配されたテープ状線材を螺旋状に巻回することで形成するとよく、単層でも多層でもよい。多層とする場合、層間絶縁層を設けてもよい。層間絶縁層は、クラフト紙などの絶縁紙やPPLP(住友電気工業株式会社 登録商標)などの半合成絶縁紙を巻回して設けることが挙げられる。
【0016】
第一超電導層は、上記超電導材料からなる線材をフォーマの外周に巻回して形成する。フォーマは、銅やアルミニウムなどの金属材料にて形成した中実体でも中空体でもよく、例えば、銅線を複数本撚り合わせた構成のものが挙げられる。上記銅線は、絶縁被覆されたものを利用してもよい。このフォーマは、第一超電導層の形状維持部材として機能する。フォーマと第一超電導層との間にクッション層を介在させてもよい。クッション層は、フォーマと超電導線材との間における金属同士の直接接触を回避し、超電導線材の損傷を防止する。特に、フォーマを撚り線構造とした場合、クッション層はフォーマ表面をより平滑な面にする機能も有する。クッション層の具体的材質としては、絶縁紙やカーボン紙が好適に利用できる。
【0017】
第二超電導層は、上記超電導材料からなる線材を芯材の外周に巻回して形成する。芯材は、剛性を高めることがない材料にて形成するとよく、絶縁材料にて形成してもよいし、導電性材料(超電導材料を除く)にて形成してもよい。例えば、後述する絶縁層の形成材料と同様の絶縁材料にて形成してもよいし、プラスチックを用いてもよいし、銅線などの金属線を撚り合わせて形成してもよいし、プラスチックや金属撚り線の外周に絶縁材料を巻回した構成としてもよい。
【0018】
上記芯材として、冷媒管を利用してもよい。このとき、第一コア及び第二コアと後述する断熱管とで囲まれる冷媒流路を冷媒の往路とし、芯材とした冷媒管を冷媒の復路(リターン)として利用することが好適である。第二コアの内周側に冷媒管を有することで、第一コア及び第二コアと断熱管とで囲まれる空間が冷媒管の存在により縮小されることなく、断熱管内に冷媒の往路及び復路を具えることができる。従って、第二コア内に冷媒管を具える構成では、断熱管内にコアと別個に復路用の冷媒管を具える構成と比較して、第一コア及び第二コアと断熱管とで囲まれる空間を十分に確保することができる。即ち、十分な冷媒往路を確保し、冷媒往路に冷媒を十分流通させられる。ここで、往路と復路とでつくられる冷媒の循環路には、冷媒を冷却するための冷凍機や冷媒を圧送させるためのポンプなどが具えられ、これらの機器により冷媒が適切な温度で循環されるように循環路の大きさ(冷却区間)が決められる。上記のように冷媒往路に冷媒が十分流通される構成の場合、冷媒流量が多いことで侵入熱などによる冷媒の温度上昇がより小さく、適切な温度状態にある冷媒を長距離に亘り輸送できるため、1冷却区間を長尺にできる。また、上記のように冷媒が流通するための十分な空間を確保できることから、冷媒の流通圧力を低減でき、圧力損失の低減、例えば、ポンプの駆動電力の低減を図ることができる。
【0019】
上記冷媒管は、冷媒温度においても強度に優れる金属材料からなるものが好ましい。例えば、金属管、スパイラル鋼帯、スパイラル鋼帯上に金属線(銅素線など)を巻き付けた中空形状のものが挙げられる。金属コルゲート管は、可撓性に優れるため、ケーブル冷却時に収縮し易く好ましい。なお、冷媒管として金属材料からなるものを用いる場合、冷媒管の外周には絶縁材料にて絶縁層を形成し、この絶縁層上に第二超電導層を設けるようにする。特に、コルゲート管を用いる場合、この絶縁層は、第二超電導層を形成する面が平滑になるようにコルゲート管上に設けることが好ましい。
【0020】
第一コアにおいて第一超電導層の外周には、絶縁層を設ける。また、第二コアにおいて第二超電導層の外周には、絶縁層を設ける。これら絶縁層は、PPLP(登録商標)などの半合成絶縁紙やクラフト紙などの絶縁紙を巻回して形成することが挙げられる。第一コアに設ける絶縁層は、第一超電導層が対地電圧に対して絶縁されるのに必要な絶縁強度を具えるように第一超電導層上に設ける。第二コアに設ける絶縁層は、第二超電導層が対地電圧に対して絶縁されるのに必要な絶縁強度を具えるように第二超電導層上に設ける。
【0021】
本発明超電導ケーブルを直流送電に用いる場合、上記絶縁層には、その径方向(厚さ方向)の直流電界分布が平滑化されるように、絶縁層の内周側の抵抗率が低く、外周側の抵抗率が高くなるようにρグレーディングを施してもよい。このようにρグレーディングを施して、絶縁層の厚さ方向において段階的に抵抗率を異ならせることで、絶縁層の厚さ方向全体の直流電界分布を平滑化でき、絶縁層の厚みを低減することができる。抵抗率を異ならせる層数は、特に問わないが、実用的には、2,3層程度である。特に、これら各層の厚みを均等にすると、直流電界分布の平滑化をより効果的に行える。
【0022】
ρグレーディングを施すには、抵抗率(ρ)の異なる絶縁材料を用いるとよく、例えば、クラフト紙といった絶縁紙を利用する場合、クラフト紙の密度を変化させたり、クラフト紙にジシアンジアミドを添加するなどにより、抵抗率を変えることができる。絶縁紙とプラスチックフィルムからなる複合紙、例えばPPLP(登録商標)の場合、複合紙全体の厚みTに対するプラスチックフィルムの厚みtpの比率k=(tp/T)×100を変えたり、絶縁紙の密度、材質、添加物などを変えることにより、抵抗率を変えることができる。比率kの値は、例えば40%〜90%程度の範囲が好ましい。通常、比率kが大きいほど抵抗率ρが大きくなる。
【0023】
更に、絶縁層は、超電導層の近傍に、他の箇所よりも誘電率が高い高ε層を有すると、直流耐電圧特性の向上に加えて、Imp.耐圧特性も向上させることができる。なお、誘電率ε(20℃)は一般的なクラフト紙で3.2〜4.5程度、比率kが40%の複合紙で2.8程度、同60%の複合紙で2.6程度、同80%の複合紙で2.4程度である。特に、比率kが高く、かつ気密度も高めのクラフト紙を用いた複合紙により絶縁層を構成すれば、直流耐電圧とImp.耐圧の双方に優れて好ましい。
【0024】
上記ρグレーディングに加えて、絶縁層は、その内周側ほど誘電率εが高く、外周側ほど誘電率εが低くなるように構成してもよい。このεグレーディングも絶縁層の径方向全域に亘って形成する。また、上述のようにρグレーディングを施すことで本発明超電導ケーブルは、直流特性に優れたケーブルとなり、直流送電に好適である。一方、現行の送電線路は、大半が交流で構成されている。今後、送電方式を交流から直流へ移行することを考えた場合、直流送電に移行する前に、過渡的に本発明ケーブルを用いて交流を送電するケースが想定される。例えば、送電線路の一部のケーブルを本発明超電導ケーブルに交換したが残部が交流送電用ケーブルのままであるとか、送電線路の交流送電用ケーブルを本発明超電導ケーブルに交換したが、ケーブルに接続される送電機器は交流用のままとなっている場合などである。この場合、本発明ケーブルで過渡的に交流送電を行い、その後、最終的に直流送電に移行されることになる。そのため、本発明ケーブルにおいては、直流特性に優れているのみならず、交流特性をも考慮した設計とすることが好ましい。交流特性をも考慮した場合、内周側ほど誘電率εが高く、外周側ほど誘電率εが低い絶縁層とすることで、サージなどのインパルス特性に優れたケーブルを構築することができる。そして、上記過渡期が過ぎて直流送電が行われることになった場合には、過渡期に用いていた本発明ケーブルをそのまま直流ケーブルとして利用することができる。即ち、ρグレーディングに加えてεグレーディングを施した本発明ケーブルは、交流直流両用のケーブルとして好適に利用することができる。
【0025】
通常、上述したPPLP(登録商標)は、比率kを高くすると高ρ低εとなる。そのため、絶縁層の外周側ほど比率kの高いPPLP(登録商標)を用いて絶縁層を構成すれば、外周側ほど高ρになり、同時に外周側ほど低εにできる。
【0026】
一方、クラフト紙は、一般に気密度を高くすると高ρ高εになる。そのため、クラフト紙だけで外周側ほど高ρであると共に外周側ほど低εの絶縁層を構成することは難しい。そこで、クラフト紙を用いる場合は、複合紙と組み合わせて絶縁層を構成することが好適である。例えば絶縁層の内周側にクラフト紙層を形成し、その外側にPPLP層を形成することで、抵抗率ρはクラフト紙層<PPLP層となり、誘電率εはクラフト紙層>PPLP層となるようにすればよい。
【0027】
その他、第一超電導層と絶縁層との間や、絶縁層と第二超電導層との間に半導電層を形成してもよい。このような半導電層を形成することで、超電導層と絶縁層の間での密着性を高め、部分放電の発生などに伴う劣化を抑制する。
【0028】
本発明超電導ケーブルは、上記構成を具える第一コア、第二コアをそれぞれ1条ずつ合計2条以上撚り合わせた多心ケーブルとする。第一コアの数と第二コアの数とは、それぞれ同数としてもよいし、異ならせてもよいが、第一コアの第一超電導層に使用した超電導材料の量と、第二コアの第二超電導層に使用した超電導材料の量とが同等になるように各コアの数を調整する。例えば、第一コアを第二コアよりも多く具える場合、第二コア1心(1条)あたりの超電導材料の使用量を第一コア1心(1条)あたりの使用量よりも多くするとよい。本発明ケーブルは、上記のように、第一超電導層の外径よりも第二超電導層の内径が大きくなるように第一超電導層、第二超電導層を設ける。従って、第一コアの数を第二コアの数よりも多くして、同量の超電導材料を使用しても、第二コアの第二超電導層の厚みを過度に厚くすることがない。そのため、第二コアの曲げ剛性を過度に大きくすることがない。単極送電を行う場合は、第一コア、第二コアのそれぞれを少なくとも1条ずつ用意して撚り合わせ、第一コアを少なくとも1心、第二コアを少なくとも1心具える超電導ケーブルを利用する。単極送電だけでなく双極送電も行う場合は、少なくとも第一コア2条と第二コア1条とを撚り合わせ、第一コアを2心、第二コアを1心具える多心超電導ケーブルを利用し、第一コアを極の送電に、第二コアを中性線として利用するとよい。また、これら第一コアの外径及び第二コアの外径は、同径としておくと撚り合わせやすく好ましい。
【0029】
上記第一コア及び第二コアを具えるタイプ1の超電導ケーブルは、第一コア及び第二コアを撚り合わせたものを断熱管内に収納して構成するとよい。断熱管は、例えば、外管と内管とからなる二重構造の管の間に断熱材を配置し、内管と外管間を真空引きする構成が挙げられる。内管内の第一コア及び第二コアの外周面と内管の内周面とで囲まれる空間には、第一コア及び第二コアを冷却する液体窒素などの冷媒を充填する。断熱管の外周には、ポリ塩化ビニルなどの樹脂にて防食層などを設けてもよい。これら断熱管に関する事項は、後述するタイプ2の超電導ケーブルにおいても同様である。
【0030】
上記タイプ1の超電導ケーブルは、複数のコアの撚り合わせ構造であるため、従来の3心撚り合わせ構造の超電導ケーブルと同様に、ケーブル冷却時の収縮代を持たせることができる。収縮代を設けるには、例えば、弛みを持たせてコアを撚り合わせることが挙げられる。弛みを持たせる方法としては、コア間にスペーサを配置してコアを撚り合わせ、撚り合わせたコアを断熱管に収納する際(断熱管形成時)、スペーサを除去する方法が挙げられる。スペーサは、例えば、5mm程度の厚さのフェルトなどが挙げられる。スペーサの厚さは、ケーブルコア径に応じて適宜変更するとよい。これら収縮代に関する事項は、後述するタイプ2の超電導ケーブルにおいて同様である。
【0031】
上記構成を具えるタイプ1の超電導ケーブルは、第一コアの第一超電導層を往路線路に用い、第二コアの第二超電導層を帰路線路に用いることで、単極送電を行うことができる。
【0032】
また、上記構成を具えるタイプ1の超電導ケーブルは、第一コアを複数具えておき、少なくとも一つの第一コアに具える第一超電導層を正極及び負極のいずれか一極の送電に用い、残りの第一コアに具える第一超電導層を他極の送電に用い、第二コアに具える第二超電導層を中性線として用いることで、双極送電を行うことができる。更に、双極送電を行っている際、一方の極に異常が生じた場合、例えば、その極の第一超電導層やケーブルに接続される直交流変換器などに異常が生じて、一方の極の送電を停止する場合、異常が生じていない極の第一コアと第二コアとを利用して、単極送電を行うことができる。このとき、第一コアの第一超電導層を往路線路、第二コアの第二超電導層を帰路線路とするとよい。
【0033】
なお、単極送電、双極送電のいずれの送電においても、第二超電導層は、接地電位としておく。双極送電を行う場合、通常、正極電流と負極電流とは、ほとんど同じ大きさであり互いにキャンセルし合うため、中性線として機能する第二超電導層には、電圧がほとんどかからない。しかし、本発明では、正極と負極でアンバランスが生じた際のアンバランス電流を流したり、一方の極に異常が生じて双極送電から単極送電に変更する際、送電電流と同等の電流を流す(単極送電の帰路線路として機能させる)ため、第二超電導層を接地電位にしておく。
【0034】
第一コア及び第二コアを具える本発明超電導ケーブルは、直流送電だけでなく、上述のようにεグレーディングを施した絶縁層を設けることで、交流送電にも好適に利用することができる。交流送電を行う場合、第一コア及び第二コアはシールドとして機能する導体部分を有していないため、この超電導ケーブルにて高圧送電を行うと、漏洩電界が大きくなる恐れがある。従って、この超電導ケーブルにて交流送電を行う場合は、低圧送電とすることが好ましい。また、単相交流送電を行う場合、第一コア及び第二コアをそれぞれ1条ずつ撚り合わせ、各コアを1心ずつ具える超電導ケーブルを利用するとよく、両コアの超電導層を相の送電に利用してもよいし、いずれか一方のコアの超電導層を相の送電に利用し、残り1心を予備心としてもよい。この超電導ケーブルにて単相交流送電後に直流送電を行う場合、単極送電に利用することができる。一方3相交流送電を行う場合、第一コア及び第二コアを合計で3心以上具えた超電導ケーブルを利用する。余条のコアは、予備心とするとよい。この超電導ケーブルにて3相交流送電後に直流送電を行う場合、単極送電、双極送電のいずれも行うことができる。或いは、3相交流送電を行う場合、第一コア及び第二コアをそれぞれ1条ずつ撚り合わせ、それぞれ1心ずつ具える超電導ケーブルを2条又は3条用意して、コア数の合計が3心以上となるようにしてもよい。2条のケーブルを用いる場合、コア数の合計は、4心となるため、1心を予備心とするとよい。3条のケーブルを用いる場合、各ケーブルをそれぞれの相の送電に利用するとよい。即ち、2心のコアで1相の送電を行うとよい。
【0035】
(タイプ2)
タイプ2の本発明超電導ケーブルは、2条のケーブルコアと、1つの冷媒管とを撚り合わせてなる3心撚り合わせ構造である。各ケーブルコアは、中心から順に、超電導材料から構成される超電導導体層、絶縁材料から構成される絶縁層、超電導材料からなる外部超電導層とを具える。
【0036】
超電導導体層は、上記第一コアの第一超電導層や第二コアの第二超電導層と同様にBi2223系超電導材料からなる線材を螺旋状に巻回することで形成することが挙げられる。また、上記第一コアの第一超電導層や第二コアの第二超電導層と同様に超電導導体層は、単層でも多層でもよい。この超電導導体層は、第一コアの第一超電導層と同様にフォーマの外周に形成する。
【0037】
絶縁層は、上記第一コアの絶縁層と同様に半合成絶縁紙やクラフト紙などを上記超電導導体層上に巻回して形成することが挙げられる。この絶縁層は、超電導導体層と対地間の絶縁に必要な絶縁強度を具えるようにする。また、この絶縁層は、上記第一コアや第二コアの絶縁層と同様に、内周側の抵抗率が低く、外周側の抵抗率が高くなるようにρグレーディングを施して、絶縁層の厚さ方向全体の直流電界分布を平滑化させるようにしてもよい。更に、この絶縁層は、上記第一コアや第二コアの絶縁層と同様に、超電導導体層の近傍に、他の箇所よりも誘電率が高い高ε層を具えてもよい。このようなρグレーディングや高ε層を具えることで、直流送電により適した超電導ケーブルとすることができる。加えて、この絶縁層は、上記第一コアや第二コアの絶縁層と同様に、ρグレーディングと共に、内周側ほど誘電率εが高く、外周側ほど誘電率εが低くなるように構成することで、直流送電及び交流送電の双方により適した超電導ケーブルとすることができる。
【0038】
外部超電導層は、超電導導体層と同様に超電導材料にて、絶縁層の外周に形成する。超電導導体層の形成に利用したものと同様の材料にて形成してもよい。この外部超電導層は、接地電位にしておく。タイプ2の超電導ケーブルを利用して双極送電を行う場合、通常、正極電流と負極電流とは、ほとんど同じ大きさであり互いにキャンセルし合うため、中性線として機能する外部超電導層には、電圧がほとんどかからない。しかし、本発明では、正極と負極でアンバランスが生じた際のアンバランス電流を流したり、一方の極に異常が生じて双極送電から単極送電に変更する際、送電電流と同等の電流を外部導体層に流す(単極送電の帰路線路として機能させる)ため、外部超電導層を超電導材料にて形成する。外部超電導層の外周には、絶縁を兼ねた保護層を設けることが好ましい。
【0039】
その他、絶縁層の内外周の少なくとも一方、つまり超電導導体層と絶縁層との間や、絶縁層と外部超電導層との間に半導電層を形成してもよい。前者の内部半導電層、後者の外部半導電層を形成することで、超電導導体層と絶縁層の間或いは絶縁層と外部超電導層の間での密着性を高め、部分放電の発生などに伴う劣化を抑制する。
【0040】
上記2条のケーブルコアと撚り合わせる冷媒管は、両コア及び冷媒管と断熱管とで囲まれる冷媒流路を冷媒の往路とするのに対して、冷媒の復路(リターン)として利用する。このような冷媒管は、上記第二コアに具える冷媒管と同様に冷媒温度においても強度に優れる金属材料からなるものが好ましい。特に、冷媒管は、可撓性に優れる形状のもの、具体的には金属コルゲート管を用いることが好ましい。コルゲート管は、伸縮自在であるため、両コアと撚り合わせる際、ケーブル冷却時の収縮代を弛みを設けなくても、管自体の伸縮性で熱収縮分の吸収を行うことができる。即ち、冷媒管としてコルゲート管を利用する場合、上記弛みを設けることなくコアと撚り合せても、ケーブル冷却時の収縮に対して十分対応することができる。また、本発明では、冷媒復路として十分な大きさを確保すると共に、2条のケーブルコアとの撚り合わせ構造を安定して形成することができるように、この冷媒管の外径をコアの外径と同等(同径)とする。そして、このタイプ2の超電導ケーブルは、上記2条のケーブルコアと冷媒管とを撚り合わせたものを上記断熱管内に収納して構成する。
【0041】
上記冷媒管として金属製のものを利用する場合、両コアと冷媒管との撚り合わせた一体化物を断熱管(内管)に収納する際に冷媒管が断熱管と接触して、断熱管や冷媒管が損傷したり、金属粉が発生して、この金属粉が冷媒の流通によりケーブル端部に流され、端部において電気的な不具合を生じる恐れがある。そこで、冷媒管の外周には、断熱管との接触による不具合を防止するべく、断熱管と接触しないようにするための保護層を設けてもよい。保護層は、例えば、クラフト紙を巻回して構成することが挙げられる。
【0042】
上記構成を具えるタイプ2の超電導ケーブルは、両コアに具える超電導導体層を往路線路に用い、両コアに具える外部超電導層を帰路線路に用いることで、単極送電を行うことができる。また、一方のコアの超電導導体層を正極及び負極のいずれか一極の送電に用い、他方のコアの超電導導体層を他極の送電に用い、各コアの外部超電導層を中性線に用いることで、双極送電を行うことができる。更に、双極送電を行っている際に一方の極に異常が生じた場合、例えば、その極の超電導導体層やケーブルに接続される直交流変換器などに異常が生じて、一方の極の送電を停止する場合、異常が生じていない極のコアを利用して、単極送電を行うことができる。このとき、異常が生じていない極のコアの超電導導体層を往路線路、外部超電導層を帰路線路として用いるとよい。なお、単極送電、双極送電のいずれの送電の場合も、両コアの外部超電導層は、接地電位にしておく。
【0043】
また、タイプ2の本発明超電導ケーブルは、直流送電だけでなく、上述のようにεグレーディングを施した絶縁層を設けることで、交流送電にも好適に利用することができる。単相交流送電を行う場合、この超電導ケーブルを1条用い、各コアの超電導導体層を相の送電に、各コアの外部超電導層をシールド層として利用してもよいし、1心のコアの超電導導体層を相の送電に、このコアの外部超電導層をシールド層として利用し、残り1心を予備心としてもよい。一方、3相交流送電を行う場合、この超電導ケーブルを2条又は3条用意して、コア数の合計が3心以上となるようにする。2条のケーブルを用いる場合、コア数の合計は、4心となるため、1心のコアを予備心とし、残り3心のコアの超電導導体層をそれぞれの相の送電に利用し、これら超電導層の外周に設けられた外部超電導層をシールド層として利用するとよい。3条のケーブルを用いる場合、各ケーブルの超電導導体層をそれぞれの相の送電に利用し、これら超電導層の外周に設けられた外部超電導層をシールド層として利用するとよい。即ち、2心のコアで1相の送電を行うとよい。
【発明の効果】
【0044】
上記構成を具える本発明超電導ケーブルは、ケーブルコア1心あたりの超電導材料の使用量を少なくして曲げ剛性を小さくしたり、超電導材料を用いていないコア(冷媒管)を用いて撚り合わせやすくすることで、撚り合わせ構造を形成し易いという特有の効果を奏する。
【0045】
特に、異なる2種類のコアを撚り合わせたタイプ1の超電導ケーブルにおいて、冷媒管を内蔵する第二コアを用いた場合、コアと断熱管とで囲まれる空間を十分に確保しながら、冷媒の復路を有することができる。一方、コア2条と冷媒管とを撚り合わせたタイプ2の超電導ケーブルでは、1心のコアの代わりに冷媒管を具えることで、冷媒の復路として最大容積を有する流路を確保することができる。また、この冷媒管の外周に保護層を設けることで、冷媒管が断熱管に接触するのを防止して、この接触による冷媒管や断熱管の損傷や金属粉の生成などを抑制することができる。
【0046】
更に、本発明超電導ケーブルに具えるコアにおいて、ρグレーディングを施した絶縁層とすることで、絶縁層の厚さ方向の全体にわたって直流電界分布を平滑化して、直流耐電圧特性を改善し、絶縁層の厚みを減少することができる。ρグレーディングに加えて導体として利用される超電導層の近傍が高εとなるように絶縁層を設けることで、上述した直流耐電圧特性の向上に加えて、Imp.耐圧特性も向上できる。特に、絶縁層の内周側ほど高εとし外周側ほど低εとすることで、本発明超電導ケーブルは、交流の電気特性にも優れたケーブルとすることができる。そのため、本発明超電導ケーブルは、直流送電用、交流送電用のそれぞれに好適に利用できるだけでなく、送電方式を交流と直流の間で変更する過渡期においても好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を説明する。まず、構成の異なる2種類のコアを撚り合わせたタイプ1の本発明の超電導ケーブルについて説明する。
【実施例1】
【0048】
図1は、本発明の超電導ケーブルを用いて単極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。以下、図面において同一符号は同一物を示す。この超電導ケーブル1は、構成の異なる2種類のケーブルコア(第一コア2、第二コア3)を撚り合わせ、断熱管7内に収納させたケーブルである。具体的には、第一コア2は、絶縁層4の内周側に超電導材料からなる第一超電導層2aを具え、絶縁層4の外周側に超電導材料からなる層を具えていない。第二コア3は、中心部側に芯材5bを具え、この芯材5bの外周側に超電導材料からなる第二超電導層3aを具え、芯材5bの内周側に超電導材料からなる層を具えていない。そして、第二超電導層3aの内径を第一超電導層2aの外径よりも大きくしている。
【0049】
(第一コア2)
本例において第一超電導層2aは、Bi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)を用い、フォーマ5aの外周にこのテープ線を多層に螺旋状に巻回して構成した。フォーマ5aは、銅線を複数本撚り合わせたものを用い、フォーマ5aと第一超電導層2aとの間には、絶縁紙によりクッション層(図示せず)を形成した。第一超電導層2aの外周には、絶縁層4を設けている。絶縁層4は、第一超電導層2aと対地間の絶縁に必要な絶縁強度を有するように、半合成絶縁紙(PPLP:住友電気工業株式会社 登録商標)を巻回して構成した。本例では、このような第一コア2を2条用意した。また、いずれの第一コア2も同径とした。
【0050】
(第二コア3)
本例において第二コア3は、1条(1心)とし、その外径が上記第一コア2の外径と同径となるように形成した。まず、芯材5bを形成した。本例では銅線を撚り合わせた芯材(図示せず)の外周に、半合成絶縁紙(PPLP:住友電気工業株式会社 登録商標)を巻回して芯材5bを構成した。この芯材5bの外周に第二超電導層3aを設けている。第二超電導層3aは、上記第一コア2の第一超電導層2aと同様の超電導材料(Bi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線))を用い、同様に多層に螺旋状に巻回して構成した。第二超電導層3aの形成に用いたテープ線の量は、上記2条の第一コア2の第一超電導層2aを構成するのに用いたテープ線の量と同量とした。そして、第二コア3において芯材5bの大きさを調整し、第一コア2の第一超電導層2aの外径(絶縁層4の内径)よりも、第二コア3の第二超電導層3aの内径(芯材5bの外径)が大きくなるようにした。そのため、第二超電導層3aの巻き付け数(層数)を過剰に多くすることなく第二超電導層3aを形成することができ、第二コア3の曲げ剛性が過度に大きくなることがなかった。そして、この第二超電導層3aの外周に絶縁層6を設けた。絶縁層6は、第二超電導層3aと対地間の絶縁に必要な絶縁強度を有するように、クラフト紙を巻回して形成した。
【0051】
(超電導ケーブル1)
超電導ケーブル1は、超電導材料からなる層として第一超電導層2aのみを有する第一コア2と、超電導材料からなる層として第二超電導層3aのみを有する第二コア3とを撚り合わせて、断熱管7に収納して構成している。本例においてこれら3条のコア2,コア3は、冷媒により冷却されて熱収縮を生じた際、その収縮代を有するように弛みを持たせて撚り合わせた。具体的には、第一コア2間、第一コア2と第二コア3間にそれぞれスペーサ(図示せず)を介在させて撚り合わせ、断熱管7に収納する際(断熱管7を形成する際)にスペーサを除去することで、弛みを持たせた状態で断熱管7に収納されるようにした。本例においてスペーサは、断面矩形状の5mm厚みのフェルトを用いた。また、本例において断熱管7は、SUSコルゲート管を用い、図7に示す従来の超電導ケーブルと同様に、外管7aと内管7bとからなる二重管の間に断熱材(図示せず)を多層に配置し、かつ二重管内を真空引きした真空多層断熱構成とした。内管7bと3心のコア2,コア3とで囲まれる空間8が液体窒素などの冷媒の流路となる。断熱管7の外周には、ポリ塩化ビニルで防食層(図示せず)を形成した。
【0052】
上記構成を具える本発明の超電導ケーブル1は、直流送電、具体的には双極送電、単極送電のいずれにも用いることができる。まず、単極送電を行う場合を説明する。単極送電を行うには、図1に示すような送電線路を構築するとよい。具体的には、一方の第一コア2に具える第一超電導層2aの一端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器10aがリード20,リード21を介して接続され、同第一超電導層2aの他端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器10bがリード22を介して接続される。また、他方の第一コア2に具える第一超電導層2aの一端側に、直交流変換器10aがリード23,リード21を介して接続され、同第一超電導層2aの他端側に、直交流変換器10bがリード22を介して接続される。第二コア3に具える第二超電導層3aの一端側には、直交流変換器10aがリード24を介して接続され、同第二超電導層3aの他端側に、直交流変換器10bがリード25を介して接続される。そして、リード24を接地している。この接地により、第二超電導層3aは接地電位となる。なお、本例では片端接地としたが、リード25も接地して両端接地としてもよい。リード20〜25は、超電導層2a,3aと直交流変換器10a,10bとを電気的に接続するものである。
【0053】
上記構成を具える直流送電線路では、2心の第一コア2に具える第一超電導層2aに単極の電流を流して往路線路として用い、第二コア3に具える第二超電導層3aに帰路電流を流して帰路線路として用いることで単極送電を行うことができる。また、この超電導ケーブル1は、弛みをとって3条のコアを撚り合わせているため、この弛みにより、冷却時、熱収縮分を吸収することができる。更に、この超電導ケーブル1は、超電導材料からなる層(超電導導体及び外部超電導層)を二層具えるケーブルコアを3条撚り合わせた従来の超電導ケーブルと比較して、コア1条あたり超電導材料の使用量が少ない。そのため、コアの曲げ剛性が小さく、撚り合わせ構造を形成し易い。
【実施例2】
【0054】
次に、双極送電を行う場合を説明する。図2(A)は、本発明の超電導ケーブルを用いて双極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図、(B)は2心の第一コアのうち一方の第一コアと第二コアとを用いて単極送電を行う直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。実施例1で用いた超電導ケーブル1は、双極送電にも用いることができる。双極送電を行うには、図2(A)に示すような送電線路を構築するとよい。具体的には、2心の第一コアのうち一方の第一コア2(図2(A)のおいて上側の第一コア2)に具える第一超電導層2aの一端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器11aがリード30を介して接続され、同第一超電導層2aの他端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器11bがリード31を介して接続される。他方の第一コア2(図2(A)において左側の第一コア2)に具える第一超電導層2aの一端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器12aがリード32を介して接続され、同第一超電導層2aの他端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器12bがリード33を介して接続される。第二コア3に具える第二超電導層3aの一端側にリード34を介して直交流変換器11a,12aが接続され、同第二超電導層3aの他端側に、リード35を介して直交流変換器11b,12bが接続される。そして、リード34を接地している。この接地により、第二超電導層3aは接地電位となる。本例では、リード34のみ接地して片端接地としたが、リード35も接地して両端接地としてもよい。なお、リード30〜35は、超電導層2a,3aと直交流変換器11a,11b,12a,12bとを電気的に接続するものである。
【0055】
上記構成により、直交流変換器11b、リード31、図2(A)において上側の第一コア2の第一超電導層2a、リード30、直交流変換器11a、リード34、第二コア3の第二超電導層3a、リード35という正極順路が構築される。また、直交流変換器12b、リード33、図2(A)において左側の第一コア2の第一超電導層2a、リード32、直交流変換器12a、リード34、第二コア3の第二超電導層3a、リード35という負極順路が構築される。これら正極順路,負極順路により双極送電を行うことができる。このとき、第二コア3の第二超電導層3aは、中性線として利用される他、正負極のアンバランス電流や異常電流を流すのに利用される。なお、本例では、図2(A)において上側の第一コア2を正極、左側の第一コア2を負極に用いたがもちろん逆でもよい。
【0056】
一方、いずれかの極の第一超電導層や直交流変換器に異常が生じて、その極の送電を停止した際、異常を生じていない極の第一超電導層を利用して単極送電を行うことができる。例えば、図2(A)において左側の第一コア2や直交流変換器12a,12bなどに異常が生じた場合、即ち、負極に異常が生じた場合、図2(A)において左側の第一コア2を利用した送電を停止する。このとき、図2(B)に示すように一方の第一コア2(図2において上側の第一コア2)を用いた単極送電用の送電線路が構築され、この第一コア2の第一超電導層2aを往路線路、第二コア3の第二超電導層3aを帰路線路として単極送電を行うことができる。なお、本例では、負極に異常が生じた場合を説明したが、正極に異常が生じた場合も同様である。このとき、他方の第一コア2(図2において左側の第一コア2)の第一超電導層2aを往路線路、第二コア3の第二超電導層3aを帰路線路として単極送電を行うとよい。
【0057】
上記のように本発明の超電導ケーブルは、双極送電及び単極送電の双方を行うことができる。
【0058】
上記のように直流送電を行う場合、第一コア1の絶縁層4,第二コア2の絶縁層6において内周側の抵抗率が低く、外周側の抵抗率が高くなるようにρグレーディングを施すと、絶縁層の厚み方向の直流電界分布を平滑化することができる。抵抗率は、比率kが異なるPPLP(登録商標)を用いることで変化させることができ、比率kが大きくなると抵抗率が高くなる傾向にある。また、絶縁層4において第一超電導層2aの近傍に高ε層を設けると、直流耐電圧特性の向上に加えて、Imp.耐圧特性も向上させることができる。高ε層は、例えば、比率kが小さいPPLP(登録商標)を用いて形成することが挙げられる。このとき、高ε層は、低ρ層ともなる。更に、上記ρグレーディングに加えて、内周側ほど誘電率εが高く、外周側ほど誘電率εが低くなるように絶縁層4,6を形成すると、交流特性にも優れる。従って、上記超電導ケーブル1を交流送電にも好適に利用することができる。例えば、以下のように比率kが異なるPPLP(登録商標)を用いて、抵抗率及び誘電率が3段階に異なるように絶縁層を設けることが挙げられる。以下の三層は、内周側から順に具えるとよい(X,Yは定数)。
低ρ層:比率k=60%、抵抗率ρ(20℃)=X Ω・cm、誘電率ε=Y
中ρ層:比率k=70%、抵抗率ρ(20℃)=約1.2X Ω・cm、誘電率ε=約0.95Y
高ρ層:比率k=80%、抵抗率ρ(20℃)=約1.4X Ω・cm、誘電率ε=約0.9Y
【0059】
超電導ケーブル1を用いて3相交流送電を行う場合、各コア2,3の超電導層2a,3aをそれぞれ相の送電に利用するとよい。超電導ケーブル1を用いて単相交流送電を行う場合、各コア2,3の超電導層2a,3aを同じ相の送電に利用するとよい。なお、各コア2,3はいずれもシールドとして機能させる超電導層を有していないため、超電導ケーブル1を用いて交流送電を行う場合、低圧送電とすることが好ましい。
【0060】
超電導ケーブル1は、上記交流送電を行った後、上述した単極送電や双極送電といった直流送電を行うことも可能である。このようにρグレーディングやεグレーディングを施した絶縁層を具える本発明超電導ケーブルでは、直流交流両用ケーブルとして好適に利用することができる。これらρグレーディング、εグレーディングに関する事項は、後述の実施例3についても同様である。
【実施例3】
【0061】
上記実施例1,2では、第二コアの芯材として、銅撚り線を利用した構成について説明したが、芯材として冷媒管を用いてもよい。図3は、第二コアの第二超電導層の内側に冷媒管を具える本発明超電導ケーブルの断面模式図である。この例に示す第二コア3は、基本的構成は実施例1、2に示したものと同様であり、芯材5bの芯材として冷媒管9aを具える点が異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0062】
本例において冷媒管9aは、SUSコルゲート管を用いており、この冷媒管9aの外周に半合成絶縁紙を巻き付けて絶縁層9bを形成した。特に本例では、第二超電導層2aに対して均一な絶縁厚さを有するように、コルゲート管の凹凸をならすように半合成絶縁紙を巻き付け、絶縁層9bの外周面が平滑になるように絶縁層9bを設けた。絶縁層9bの外周には、実施例1と同様にして第二超電導層3a、次いで絶縁層6を設け、第二コア3の外径が第一コア2の外径と同径となるようにした。
【0063】
上記冷媒管9aを具える第二コア3を用いることで、内管7bと3心のコア2,3とで囲まれる空間8を液体窒素などの冷媒の往路とし、冷媒管9aを冷媒の復路(リターン)として用いることができる。特に、冷媒管9aを第二コア3内に具えるため、冷媒管9aを第二コア3の外部である空間8内に設ける場合と比べて、空間8の体積を減らすことなく、冷媒の復路を具えることができる。また、本例では、冷媒管9aとして可撓性に優れるコルゲート管を利用したことで、ケーブル冷却時に冷媒管9a自体が容易に収縮することができる。このように第二超電導層3aの内側に設ける芯材5bは、異なる材料(本例では冷媒管9aと絶縁層9b)にて形成してもよい。
【0064】
次に、ケーブルコア2条と冷媒管とを撚り合わせたタイプ2の本発明の超電導ケーブルについて説明する。
【実施例4】
【0065】
図4は、本発明の超電導ケーブルを用いて単極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。なお、図4及び後述する図5において冷媒循環路は省略している。超電導ケーブル40は、超電導材料からなる超電導導体層44及び外部超電導層46を同軸状に具える2条のケーブルコア41と、1条の冷媒管42とを撚り合わせ、断熱管7内に収納させたケーブルである。各ケーブルコア41は、中心から順にフォーマ43、超電導導体層44、絶縁層45、外部超電導層46、保護層47を具える。
【0066】
(ケーブルコア41)
本例において超電導導体層44及び外部超電導層46は、Bi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)にて形成した。超電導導体層44はフォーマ43の外周に、外部超電導層46は絶縁層45の外周にそれぞれ、上記超電導テープ線を螺旋状に多層に巻回して構成した。フォーマ43は、銅線を複数本撚り合わせたものを用い、フォーマ43と第超電導導体層44との間には、絶縁紙によりクッション層(図示せず)を形成した。絶縁層45は、超電導導体層44の外周に半合成絶縁紙(PPLP:住友電気工業株式会社 登録商標)を巻回して構成した。この絶縁層45は、超電導導体層44と対地間の絶縁に必要な絶縁強度を有するように設けた。保護層47は、外部超電導層46の外周にクラフト紙を巻回して設けた。このようなケーブルコア41を2条用意した。また、いずれのコア41の外径も同径である。
【0067】
(冷媒管42)
上記2条のケーブルコア41と撚り合わせる冷媒管42として、本例では、コア41の外径と同径の外径を有するSUSコルゲート管を用いた。
【0068】
(超電導ケーブル40)
超電導ケーブル40は、上記超電導導体層44及び外部超電導層46を具える2条のケーブルコア41と冷媒管42とを撚り合わせ、断熱管7内に収納して構成している。2条のコア41は、冷媒により冷却された際、熱収縮に必要な収縮代を有するように弛みをもたせて撚り合わせた。弛みは、実施例1と同様にコア41間にスペーサ(5mm厚のフェルト)を配置して撚り合わせ、断熱管7に収納する際にスペーサを除去することで形成した。冷媒管42は、伸縮可能なコルゲート管を利用しているため、特に弛みを持たせることなくコア41と撚り合わせても、十分な収縮代を確保することができる。本例において断熱管7は、SUSコルゲート管を用い、図7に示す従来の超電導ケーブルと同様に、外管7aと内管7bとからなる二重管の間に断熱材(図示せず)を多層に配置し、かつ二重管内を真空引きした真空多層断熱構成とした。内管7bと2心のケーブルコア41及び冷媒管42とで囲まれる空間8が液体窒素などの冷媒の往路となり、冷媒管42が冷媒の復路となる。また、断熱管7の外周には、ポリ塩化ビニルで防食層(図示せず)を形成した。
【0069】
上記構成を具える本発明の超電導ケーブル40は、直流送電、具体的には双極送電、単極送電のいずれにも用いることができる。まず、単極送電を行う場合を説明する。単極送電を行うには、図4に示すような送電線路を構築するとよい。具体的には、図4において右側のコア41に具える超電導導体層44の一端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器13aがリード50,リード51を介して接続され、同超電導導体層44の他端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器13bがリード52を介して接続される。図4において左側のコア41に具える超電導導体層44の一端側には、同様に直交流変換器13aがリード53,リード51を介して接続され、同超電導導体層44の他端側に、直交流変換器13bがリード52を介して接続される。両コア41の外部超電導層46は、リード54,リード55,リード56を介して直交流変換器13aに接続され、リード57を介して直交流変換器13bに接続される。そして、本例では、リード56を接地している。この接地により、外部超電導層46は接地電位となる。なお、本例では片端接地としたが、リード57も接地して両端接地としてもよい。また、リード50〜57は、超電導導体層44や外部超電導層46と直交流変換器13a,13bとを電気的に接続するものである。
【0070】
上記構成を具える直流送電線路では、両コア41に具える超電導導体層44に単極の電流を流して往路線路として用い、両コア41に具える外部超電導層46に帰路電流を流して帰路線路として用いることで単極送電を行うことができる。また、この超電導ケーブル40は、2条のケーブルコア41に弛みを持たせると共に、伸縮可能なコルゲート管からなる冷媒管42を撚り合わせているため、この弛み及び伸縮機能により、冷却時、熱収縮分を吸収することができる。更に、この超電導ケーブル40は、超電導材料からなる超電導導体層及び外部超電導層を具える3条のコアを撚り合わせた超電導ケーブルと比較して、1心のコアの代わりに冷媒管42を具えた構成であるため、空間8の体積を減らすことなく冷媒の復路(リターン)を有することができる。特に、冷媒管42の外径がケーブルコア41の外径と同径であるため、このケーブル40は、最大容積の冷媒復路を有することができる。また、このケーブル40は、3心撚り合わせ構造のケーブルのケーブル径と同径とできるため、ケーブル径を大きくすることがない。
【実施例5】
【0071】
次に、双極送電を行う場合を説明する。図5(A)は、本発明の超電導ケーブルを用いて双極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図、(B)は一方のコアの超電導導体層及び外部超電導層を用いて単極送電を行う直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。実施例4で用いた超電導ケーブル40は、双極送電にも用いることができる。双極送電を行うには、図5(A)に示すような送電線路を構築するとよい。具体的には、一方のコア41(図5(A)のおいて右側のコア41)に具える超電導導体層44の一端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器14aがリード60を介して接続され、同超電導導体層44の他端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器14bがリード61を介して接続される。また、このコア41に具える外部超電導層46の一端側に直交流変換器14aがリード62,リード63を介して接続され、同外部超電導層46の他端側に、直交流変換器14bがリード64を介して接続される。他方のコア41(図5(A)において左側のコア41)に具える超電導導体層44の一端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器15aがリード65を介して接続され、同超電導導体層44の他端側に、交流系統(図示せず)に接続される直交流変換器15bがリード66を介して接続される。また、このコア41に具える外部超電導層46の一端側に直交流変換器15aがリード67,リード63を介して接続され、同外部超電導層46の他端に、直交流変換器15bがリード64を介して接続される。そして、リード63を接地している。この接地により、両コア41の外部超電導層46は接地電位となる。本例では、リード63のみ接地して片端接地としたが、リード64も接地して両端接地としてもよい。なお、リード60〜67は、超電導導体層44や外部超電導層46と直交流変換器14a,14b,15a,15bとを電気的に接続するものである。
【0072】
上記構成により、直交流変換器14b、リード61、図5(A)において右側のコア41の超電導導体層44、リード60、直交流変換器14a、リード63、リード62、右側のコア41の外部超電導層46、リード64という正極順路が構築される。また、直交流変換器15b、リード66、図5(A)において左側のコア41の超電導導体層44、リード65、直交流変換器15a、リード63、リード67、左側のコア41の外部超電導層46、リード64という負極順路が構築される。これら正極順路,負極順路により双極送電を行うことができる。このとき、両コア41の外部超電導層46は、中性線として利用される他、正負極のアンバランス電流や異常電流を流すのに利用される。なお、本例では、図5(A)において右側のコアを正極、左側のコアを負極に用いたがもちろん逆でもよい。
【0073】
一方、いずれかの極の超電導導体層や直交流変換器に異常が生じて、その極の超電導導体層による送電を停止した際、異常を生じていない極の超電導導体層及び外部超電導層を利用して単極送電を行うことができる。例えば、図5(A)において左側のコア41や直交流変換器15a,15bなどに異常が生じた場合、即ち、負極に異常が生じた場合、図5(A)において左側のコア41を利用した送電を停止する。このとき、図5(B)に示すように一方のコア41(図5において右側のコア41)を用いた単極送電用の送電線路が構築され、このコア41の超電導導体層44を往路線路、外部超電導層46を帰路線路として単極送電を行うことができる。なお、本例では、負極に異常が生じた場合を説明したが、正極に異常が生じた場合も同様である。このとき、他方のコア41(図5において左側のコア41)の超電導導体層44を往路線路、外部超電導層46を帰路線路として単極送電を行うとよい。
【0074】
上記のように本発明の超電導ケーブルは、双極送電及び単極送電の双方を行うことができる。特に、1条のケーブルに具えるケーブルコア数を2心とし、1心を冷媒管としたため、3心のケーブルコアを具える構成と比較して、ケーブル全体として超電導材料の使用量を低減し、撚り合わせ構造をより簡単に形成することができる。
【0075】
上記のように直流送電を行う場合、コア41の絶縁層45も上述のようにρグレーディングを施して、絶縁層の厚み方向の直流電界分布を平滑化させてもよいし、絶縁層45において超電導導体層44の近傍に高ε層を設けて、直流耐電圧特性及びImp.耐圧特性を向上させてもよい。また、絶縁層45において上記ρグレーディングに加えて、上述のようにεグレーディングを施して、交流特性にも優れるようにして、直流送電だけでなく、超電導ケーブル40を交流送電にも公的に利用できるようにしてもよい。例えば、以下のように比率kが異なるPPLP(登録商標)を用いて、抵抗率及び誘電率が3段階に異なるように絶縁層を設けることが挙げられる。以下の三層は、内周側から順に具えるとよい(X,Yは定数)。
低ρ層:比率k=60%、抵抗率ρ(20℃)=X Ω・cm、誘電率ε=Y
中ρ層:比率k=70%、抵抗率ρ(20℃)=約1.2X Ω・cm、誘電率ε=約0.95Y
高ρ層:比率k=80%、抵抗率ρ(20℃)=約1.4X Ω・cm、誘電率ε=約0.9Y
【0076】
超電導ケーブル40を用いて3相交流送電を行う場合、超電導ケーブル40を2条又は3条を用意して行うとよい。2条のケーブル40を用いる場合、2条のケーブル40に具える4心のコア41のうち、1心のコア41を予備心とし、残りの3心のコア41の超電導導体層44をそれぞれ相の送電に利用し、これらのコア41の外部超電導層46をシールド層として利用するとよい。3条のケーブル40を用いる場合、各ケーブル40をそれぞれ相の送電に利用する。即ち、各ケーブル40に具える2心のコア41で1相の送電を行う。このとき、各ケーブル40に具える2心のコア41の超電導導体層44を相の送電に利用し、これら超電導導体層44の外周に具える外部超電導層46をシールド層として利用する。超電導ケーブル40を用いて単相交流送電を行う場合、超電導ケーブル1を1条用意し、各コア41の超電導導体層44を同じ相の送電に利用し、これら超電導導体層44の外周に具える外部超電導層46をシールド層として利用するとよい。
【0077】
超電導ケーブル40は、上記交流送電を行った後、上述した単極送電や双極送電といった直流送電を行うことも可能である。このようにρグレーディングやεグレーディングを施した絶縁層を具える本発明超電導ケーブルでは、直流交流両用ケーブルとして好適に利用することができる。これらρグレーディング、εグレーディングに関する事項は、後述の実施例6についても同様である。
【0078】
次に、ケーブルコア2条と冷媒管とを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルにおいて、別の構成を説明する。図6は、冷媒管の外周に保護層を具える例を示す断面模式図である。
【実施例6】
【0079】
実施例4,5に示す構造では、2条のケーブルコア41と冷媒管42とを撚り合わせて断熱管(図4,5参照)に挿入する際、冷媒管42の外周面と断熱管(内管)の内周面とが接触して、金属粉が生じたり、冷媒管42や断熱管が損傷する恐れがある。そこで、図6に示すように冷媒管42aの外周に、冷媒管42aと断熱管との接触を防止する保護層42bを設けてもよい。本例において保護層42bは、クラフト紙を巻回して形成した。また、本例では、保護層42bを設けた状態でケーブルコア41の外径と同径となるように冷媒管42aの径を選択した。この構成により、冷媒管42aと断熱管とが接触することがなく、接触による不具合を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の超電導ケーブルは、電力送電を行う線路に利用することが好適である。特に、本発明超電導ケーブルは、直流の電力輸送手段の他、送電方式を交流から直流に移行する過渡期において、交流を送電することにも好適に利用できる。また、本発明直流送電方法は、上記本発明超電導ケーブルを用いて直流送電を行う際に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第一コアと第二コアとを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルを用いて単極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。
【図2】(A)は、第一コアと第二コアとを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルを用いて双極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図、(B)は同超電導ケーブルにおいて、一方の第一コアの第一超電導層及び第二コアの第二超電導層を用いて単極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。
【図3】第一コアと第二コアとを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルにおいて、第二コアの第二超電導層の内側に冷媒管を具える例を示す断面模式図である。
【図4】2条のコアと冷媒管とを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルを用いて単極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。
【図5】(A)は、2条のコアと冷媒管とを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルを用いて双極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図、(B)は同超電導ケーブルにおいて、一方のコアの超電導導体層及び外部超電導層を用いて単極送電用の直流送電線路を構築した状態を示す概略構成図である。
【図6】2条のコアと冷媒管とを撚り合わせてなる本発明の超電導ケーブルにおいて、別の構成を示す断面模式図であり、冷媒管の外周に保護層を具える例である。
【図7】三心一括型の三相交流用超電導ケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1,40 超電導ケーブル 2 第一コア 2a 第一超電導層
3 第二コア 3a 第二超電導層 4,6,9b 絶縁層 5a フォーマ 5b 芯材
7 断熱管 7a 外管 7b 内管 8 空間 9a 冷媒管
10a,10b,11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b 直交流変換器
20〜25,30〜35,50〜57,60〜67 リード
41 ケーブルコア 42,42a 冷媒管 42b 保護層 43 フォーマ
44 超電導導体層 45 絶縁層 46 外部超電導層 47 保護層
100 三相交流用超電導ケーブル 101 断熱管 101a 外管 101b 内管
102 ケーブルコア 103 空間 104 防食層
200 フォーマ 201 超電導導体層 202 絶縁層 203 超電導シールド層
204 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導層と絶縁層とを有するケーブルコアを複数撚り合わせてなる超電導ケーブルであって、
第一超電導層を有する第一コアと、
前記第一超電導層の外径よりも大きな内径である第二超電導層を有する第二コアとを具えることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
第二コアは、第二超電導層の内側に冷媒管を有していることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
冷媒管は、金属管、スパイラル鋼帯、金属コルゲート管のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
第一コア2条と第二コア1条とを撚り合わせてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
第一コアの外径と第二コアの外径とは同径であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の超電導ケーブル。
【請求項6】
コアの撚り構造が、ケーブル冷却時の収縮代を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の超電導ケーブル。
【請求項7】
絶縁層は、その径方向の直流電界分布が平滑化されるように、絶縁層の内周側の抵抗率が低く、外周側の抵抗率が高くなるようにρグレーディングが施されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の超電導ケーブル。
【請求項8】
絶縁層は、超電導層の近傍に、他の箇所よりも誘電率が高い高ε層を有することを特徴とする請求項7に記載の超電導ケーブル。
【請求項9】
絶縁層は、その内周側ほど誘電率εが高く、外周側ほど誘電率εが低く構成されていることを特徴とする請求項7に記載の超電導ケーブル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の超電導ケーブルを用いた直流送電方法であって、
第一コアに具える第一超電導層を往路線路に用い、
第二コアに具える第二超電導層を帰路線路に用いて単極送電を行うことを特徴とする直流送電方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の超電導ケーブルを用いた直流送電方法であって、
超電導ケーブルは、第一コアを複数具え、
少なくとも一つの第一コアに具える第一超電導層を正極及び負極のいずれか一極の送電に用い、
残りの第一コアに具える第一超電導層を他極の送電に用い、
第二コアに具える第二超電導層を中性線として双極送電を行うことを特徴とする直流送電方法。
【請求項12】
複数のケーブルコアを撚り合わせてなる超電導ケーブルであって、
このケーブルは、ケーブルコア2条と冷媒管とを撚り合わせて形成され、
前記ケーブルコアは、
超電導導体層と、
前記超電導導体層の外周に設けられる絶縁層と、
前記絶縁層の外周に設けられる外部超電導層とを具え、
冷媒管は、ケーブルコアと同径であることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項13】
2心コアの撚り構造が、ケーブル冷却時の収縮代を有することを特徴とする請求項12に記載の超電導ケーブル。
【請求項14】
冷媒管は、ケーブル冷却時に収縮可能な伸縮性を有し、ケーブル冷却時に収縮するための弛みを持たせることなく、2条のコアと撚り合わされていることを特徴とする請求項12又は13に記載の超電導ケーブル。
【請求項15】
冷媒管は、金属コルゲート管であることを特徴とする請求項14に記載の超電導ケーブル。
【請求項16】
冷媒管の外周に保護層を具えることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の超電導ケーブル。
【請求項17】
絶縁層は、その径方向の直流電界分布が平滑化されるように、絶縁層の内周側の抵抗率が低く、外周側の抵抗率が高くなるようにρグレーディングが施されていることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の超電導ケーブル。
【請求項18】
絶縁層は、超電導導体層の近傍に、他の箇所よりも誘電率が高い高ε層を有することを特徴とする請求項17に記載の超電導ケーブル。
【請求項19】
絶縁層は、その内周側ほど誘電率εが高く、外周側ほど誘電率εが低く構成されていることを特徴とする請求項17に記載の超電導ケーブル。
【請求項20】
請求項12〜19のいずれかに記載の超電導ケーブルを用いた直流送電方法であって、
両コアに具える超電導導体層を往路線路に用い、
両コアに具える外部超電導層を帰路線路に用いて単極送電を行うことを特徴とする直流送電方法。
【請求項21】
請求項12〜19のいずれかに記載の超電導ケーブルを用いた直流送電方法であって、
一方のコアに具える超電導導体層を正極及び負極のいずれか一極の送電に用い、
他方のコアに具える超電導導体層を他極の送電に用い、
各コアに具える外部超電導層を中性線として双極送電を行うことを特徴とする直流送電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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