説明

超電導ケーブル

【課題】プーリングアイ部を取り外すことなく、断熱管の真空度を調べることができる超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】超電導ケーブル1は、超電導導体Sを有するケーブルコア2と、コア2を収納する断熱管3と、断熱管3の端部を覆うように配置され、コア2が固定されるプーリングアイ部4とを具える。断熱管3は、コア2が収納される内管31及びこの内管31の外周に設けられる外管32とからなり、両管31,32の間が真空引きされて封止されている。断熱管3とプーリングアイ部4との間には、断熱管3から突出させたコア2の端部を覆うように補助管43が配置される。この補助管43に、断熱管3の真空度を感知するセンサ部5を収納させている。センサ部5に計測手段5cを接続することで、プーリングアイ部4を取り外すことなく、真空度を容易に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導導体を有するケーブルコアと、このコアが収納される真空の断熱管とを具え、更に、断熱管の端部にプーリングアイ部を具える超電導ケーブルに関するものである。特に、プーリングアイ部を取り外すことなく、断熱管の真空度を容易に確認することができる超電導ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力ケーブルとして、超電導ケーブルが検討されている。超電導ケーブルとして、例えば、図2に示す構成のものが提案されている。この超電導ケーブル100は、3条のケーブルコア110を撚り合わせて断熱管120内に収納させた3心超電導ケーブルである。各コア110は、中心から順にフォーマ111、超電導導体112、電気絶縁層113、外部超電導層114、保護層115を具える。断熱管120は、内管121及び外管122からなる二重管であり、両管121,122の間を真空引きした真空断熱構造である。断熱管120の外側には、防食層123を具える。超電導ケーブル100は、この内管121にコア110を冷却する液体窒素などの冷媒を流通させて利用される。
【0003】
このような超電導ケーブルは、ドラムに巻き取った状態で布設現場に搬送し、ドラムから引き出して管路などに布設する。管路などに布設するにあたり、超電導ケーブルをワイヤなどで牽引するために、ケーブルの端部には、プーリングアイが取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。プーリングアイを装着した状態で超電導ケーブルは布設され、布設後、ケーブル端部において終端接続や中間接続を形成するにあたり、上記プーリングアイを取り外す。これら接続構造を適宜形成して超電導ケーブル線路を構築し、ケーブルに具える断熱管を含む冷媒流通路に冷媒を流通させて線路の運転が行われる。
【0004】
超電導ケーブルで利用される冷媒は、液体窒素などといった極低温の流体であるため、断熱管は、高真空であることが望まれる。布設現場において高真空に真空引きを行うと、真空引き用の設備の搬送や設置などが大変であるだけでなく、時間もかかる。そのため、超電導ケーブルは、予め工場で断熱管の真空引きを行っておき、断熱管の真空状態を維持したまま、布設現場に搬送させることが検討されている。例えば、特許文献1には、断熱管を真空引きして断熱管封止金具で封止した後、断熱管とケーブルコアとを一体化する一体化金具を上記封止金具に接続し、この一体化金具にプーリングアイを取り付けることで、ケーブルコアと真空状態にある断熱管とを一体化させて布設できることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−153311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の超電導ケーブルでは、プーリングアイを取り外すまで、断熱管の真空状態を確認できないという問題がある。極低温の冷媒が流通される超電導ケーブルでは、断熱管の真空状態が長期に亘り維持されることが望まれる。ところが、工場内での保管時、工場からの出荷時、布設現場への搬送時、管路などへの布設時などで、何らかの異常が生じて真空が破られることがある。特に、この異常がプーリングアイで覆われる断熱管の端部において生じた場合、プーリングアイを取り外すまで、真空が破られていることが確認できない。プーリングアイを取り外すのは、通常、管路などへの布設が終わり、接続構造を形成する際である。そのため、断熱管の端部において異常が生じていることが、プーリングアイを取り外した後に発見された場合、再度プーリングアイを取り付けて超電導ケーブルを管路などから抜き取ってドラムに巻き取り、工場に持ち帰って破損箇所の修繕や交換を行った後、真空引きを行うという操作を行わなければならず、莫大な時間がかかるだけでなく、線路の構築も遅滞する上、費用もかかる。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、プーリングアイを取り外すことなく、断熱管の真空状態を簡単に把握することができる超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーブルコアと断熱管とを同時に布設できるように、コアと断熱管とを一体化するようにプーリングアイ部を具える超電導ケーブルにおいて、ケーブル製造後から線路構築途中までの間に断熱管の真空度を簡単に確認できるように、断熱管の真空度を感知するセンサ部を具えることを提案する。具体的には、本発明超電導ケーブルは、超電導導体を有するケーブルコアと、このコアを収納する内管及びこの内管の外周に設けられる外管からなり、これら両管の間が真空引きされて封止された断熱管と、この断熱管の端部を覆うように配置されると共に、ケーブルコアが固定されるプーリングアイ部とを具える。特に、本発明超電導ケーブルでは、この断熱管の真空度を感知するセンサ部を具える。
【0009】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明超電導ケーブルの基本的構成は、超電導導体を有するケーブルコアと、このコアを収納する断熱管とを具えるものとする。ケーブルコアのより具体的な構成としては、例えば、中心から順に、フォーマ、超電導導体、電気絶縁層を具えるものが挙げられる。電気絶縁層の外周に超電導導体と同様に超電導材料からなる外部超電導層、その外周に保護層を具えるケーブルコアとしてもよい。更に、超電導導体と電気絶縁層との間、電気絶縁層と外部超電導層との間にそれぞれ半導電層を設けたケーブルコアとしてもよい。
【0010】
フォーマは、常電導材料、例えば、銅やアルミニウムなどの導電性の金属材料からなる中実体又は中空体が挙げられる。具体的には、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を具える被覆銅線を複数本撚り合わせた撚り線構造が挙げられる。超電導導体は、超電導材料、例えば、Bi2223系超電導材料といった酸化物超電導材料からなる線材を上記フォーマの外周に単層又は多層に巻回して形成することが挙げられる。超電導導体を多層とする場合、層間絶縁層を設けてもよい。層間絶縁層は、クラフト紙などの絶縁紙などで形成するとよい。電気絶縁層は、クラフト紙といった絶縁紙や、絶縁紙とプラスチックフィルムとからなる半合成絶縁紙などの絶縁材を超電導導体の外周に巻回して形成することが挙げられる。半合成絶縁紙としては、例えば、クラフト紙にポリプロピレンフィルムをラミネートしたPPLP(登録商標)が挙げられる。電気絶縁層の外周に外部超電導層を具えたケーブルコアとする場合、外部超電導層は、上記超電導導体と同様に超電導材料からなる線材を単層又は多層に巻回することで形成することが挙げられる。電気絶縁層の内外周に半導電層を具えたケーブルコアとする場合、半導電層は、カーボン紙などを巻回して形成するとよい。外部超電導層の外周に保護層を具えたケーブルコアとする場合、保護層は、外部超電導層の外周にクラフト紙などの絶縁紙を巻回して形成するとよい。本発明ケーブルは、このようなケーブルコアを1心具える単心ケーブルでもよいし、複数心具える多心ケーブルでもよい。
【0011】
上記ケーブルコアは、断熱管に収納される。本発明において断熱管は、内管と外管とからなる二重構造とする。内管と外管との間は、所定の真空度に真空引きされて、真空状態が維持されるように封止されたものとする。断熱性能を高めるために内管の外周にスーパーインシュレーション(商品名)などの断熱材からなる断熱材層を具えてもよい。これら内管及び外管は、表面に凹凸がなく平滑なフラット管でもよいが、表面に凹凸を有するコルゲート管とすると、可撓性に優れて好ましい。これら両管は、ステンレス鋼などの強度に優れる材料からなるものを利用するとよい。
【0012】
更に、本発明超電導ケーブルは、その端部にプーリングアイ部を具える。プーリングアイ部は、コア及び断熱管を具える超電導ケーブル本体を管路などに布設する際、ケーブル本体に牽引用ワイヤなどを取り付けるために利用される他、コア及び断熱管を一体化するために利用される部材であり、布設後、ケーブル本体の端部に接続構造を形成するときに取り外される。即ち、プーリングアイ部は、製造後から接続構造形成までの間の過渡期にある超電導ケーブルに具えられる部材である。プーリングアイ部の具体的な構成としては、例えば、コアを支持するコア支持部と、コア支持部が固定され、断熱管を覆うように配置されるキャップ部と、キャップ部に装着され、牽引用ワイヤなどが取り付けられるアイ部とを具える構成が挙げられる。このようなプーリングアイ部は、牽引時、大きな張力が加えられるため、強度に優れるステンレス鋼などの金属材料にて形成することが好ましい。
【0013】
CVケーブルなどの常電導ケーブルは、一般に、ケーブル端部を段剥ぎして銅などからなる導体を露出させ、露出された導体端部をプーリングアイ本体で圧縮保持し、この本体がプーリングキャップに固定される。しかし、超電導ケーブルにプーリングアイを装着するにあたり、超電導導体を圧縮保持する構成とすると、超電導導体を形成する超電導材料が銅などと比較して脆性であるため、超電導導体が破損する恐れがある。そこで、プーリングアイ部を超電導ケーブルのコアに固定するにあたり、超電導導体を圧縮などしない構成、例えば、銅などの常電導材料からなるフォーマをコア支持部に固定する構成とすることが好ましい。
【0014】
また、コア支持部をキャップ部に直接固定すると、牽引時、キャップ部及びコア支持部を介して、超電導導体や外部超電導層といった超電導層に牽引時の振動が伝わることで、これら超電導層が破損する恐れがある。そこで、コア支持部をキャップ部に直接固定するのではなく、コア支持部とキャップ部との間に圧縮バネなどの弾性部材を介在させて、牽引時の衝撃を緩和できる構成とすることが好ましい。
【0015】
更に、牽引時の張力がコアに加わることで、超電導導体などのコア構成部材が破損する恐れがある。そこで、キャップ部は、断熱管に固定し、牽引時の張力の大部分が断熱管に加えられる構成とすることが好ましい。
【0016】
加えて、コアの端部をコア支持部に固定させ易いように、コアの端部は、断熱管の端部から突出させた状態としておくことが好ましい。断熱管の端部から突出させたコアの外周を覆うように、断熱管とキャップ部との間に補助管を配置させると、コアにおける断熱管から突出させた部分を保護することができる。なお、断熱管とキャップ部、或いは断熱管と補助管、キャップ部と補助管の接合は、溶接などにより行うとよい。この補助管は、布設後、接続構造を形成する際にプーリングアイ部と同様に取り外される。
【0017】
キャップ部は、断熱管の端部を覆うことが可能な大きさを有するものを用いる。例えば、キャップ部として、湾曲面を有する半球状の部材が挙げられ、中実体でも中空体でもよい。キャップ部を中実の半球状体とする場合、円状面をコアの固定側とし、湾曲面を外部に曝される側とし、この湾曲面を布設時において布設方向先頭に配置させると、管路などへの布設時、先頭部分が湾曲していることで管路に引っかかりにくく、挿通性がよく好ましい。キャップ部を中空の半球状体とする場合、凹側をコアの固定側とし、上記と同様に凸側を外部に曝される側とするとよい。凹側には、コアを固定できるような板状部材などを配置させる。
【0018】
アイ部は、牽引用のワイヤなどの取付孔を有するものであればよく、例えば、U字シャックルなどが利用できる。このようなアイ部は、キャップ部において外部に曝される面(上記半球状のキャップ部の場合、湾曲面)の中央近傍に断熱管の長手方向に突出するように取り付けると、牽引時の張力をケーブル(断熱管)に均一に加え易く、また、断熱管の径方向に突出するようにアイ部が取り付けられた場合に比較して、プーリングアイ部の最大径を小さくできて好ましい。
【0019】
プーリングアイ部の最大径は、断熱管(外管)の外径と同等以下とすることが好ましい。断熱管の外周に防食層を具える場合、プーリングアイ部の最大径は、防食層の外径と同等以下とすることが好ましい。管路などといった布設スペースに制約がある箇所に超電導ケーブルを布設する場合、ケーブル外径は、管路に布設可能な大きさで、布設し易い大きさあることが望まれる。従って、本発明においてもプーリングアイ部の最大径は、断熱管(或いは防食層)の外径と同等以下とすることが好適である。
【0020】
上記プーリングアイ部は、断熱管の真空引き終了後、ケーブルコア及び断熱管の端部に取り付けられる。そのため、プーリングアイ部を取り付けた後、プーリングアイ部で覆われる断熱管の端部において異常が生じ、断熱管の真空が破られた場合、超電導ケーブルの外観からその異常を確認することができない。そこで、本発明ケーブルは、上記プーリングアイ部を具えた状態であっても、断熱管の真空度を測定できるようにセンサ部を具えることを最大の特徴とする。センサ部は、断熱管の真空度を測定できるものであればよく、例えば、シリコンなどからなるダイヤフラムを有するマイクロセンサなどが挙げられる。センサ部からの感知結果を真空度として計測する計測手段をセンサ部と一体に具える構成のものを利用してもよい。この場合、センサ部及び計測手段を駆動させる電源部を具えたものを利用する。計測手段は、測定結果を表示できる表示機能を具えるものを利用すると、作業者が確認し易く好ましい。もちろん、センサ部と計測手段とは独立した構成のものを利用してもよい。このとき、センサ部には、センサ部からの感知結果を伝送可能な信号線を取り付けておき、計測手段を適宜接続可能な構成としておけばよい。また、この場合、センサ部には、センサ部の感知に必要な電源部のみ具えておけばよい。センサ部や計測手段は、公知のセンサ装置、計測装置を利用してもよい。
【0021】
上記センサ部は、超電導ケーブルの任意の箇所に取り付けることができる。しかし、超電導ケーブル本体の表面(外周面)からその径方向に突出するように取り付けた場合、管路への挿入が行いにくかったり、搬送時などでセンサ部を破損する恐れがある。そこで、センサ部は、ケーブル本体、例えば、断熱管の内管内や、上述した断熱管とプーリングアイ部のキャップ部との間に配置される補助管内に収納させると、プーリングアイ部がケーブル本体の径方向に大きくならないことから管路への挿通性を低減させることがなく、また、センサ部自身の破損を防止できて好ましい。この場合、センサ部は、ケーブル本体につくられる隙間、例えば、補助管の内周面とコアの外周面とで囲まれる隙間に収納可能な大きさのものを利用する。或いは、センサ部は、プーリングアイ部に収納させてもよい。具体的には、中実のプーリングアイ部とする場合、プーリングアイ部にセンサ部を収納可能な切り欠きを設け、この切り欠きにセンサ部を収納したり、中空のプーリングアイ部とする場合、プーリングアイ部の凹部にセンサ部を収納させることが挙げられる。補助管を含むケーブル本体やプーリングアイ部にセンサ部を収納させる場合、計測手段が一体となった構成では、プーリングアイ部を取り外さないと、計測結果を確認できない。そのため、この場合は、センサ部と計測手段とが独立した構成のものを利用する。そして、センサ部をケーブル本体やプーリングアイ部に収納させた状態でも真空度が検出できるように、上記信号線をプーリングアイ部に貫通配置させ、信号線の端部に計測手段を接続可能な端子部を具えておく。この構成により、計測手段を端子部に接続させるだけで、簡単に真空度を調べることができる。上記端子部は、プーリングアイ部のキャップ部から脱落しないようにキャップ部に固定することが好ましい。また、キャップ部において断熱管の径方向に突出させて端子部を固定すると、プーリングアイ部の最大径が断熱管の最大径(防食層を具えるケーブルの場合は防食層の最大径)よりも大きくなる恐れがある。そこで、端子部は、例えば、アイ部の近傍などに配置して、端子部を具えたプーリングアイ部の最大径が断熱管の最大径(同)と同等以下となるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成を具える本発明超電導ケーブルは、プーリングアイ部を取り外すことなく、断熱管の真空度を簡単に確認することができるという優れた効果を奏し得る。特に、センサ部を補助管などのケーブル本体やプーリングアイ部に収納させた構成とすることで、管路などの布設スペースが限られた布設箇所であっても、本発明ケーブルは、従来の超電導ケーブルのケーブル外径と同等程度の大きさを維持できるため、十分布設することができる。このような本発明超電導ケーブルを利用することで、出荷時、搬送時、布設前後などにおいて真空漏れが生じた場合、早期に把握することができ、その修復に費やす時間や費用を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1(A)は、本発明超電導ケーブルの概略構成を示す部分断面図であり、プーリングアイ部を具えるケーブル端部を拡大して示しており、(B)は、(A)に示す超電導ケーブルの正面図である。図1に示す超電導ケーブル1は、超電導導体Sを有するケーブルコア2と、このコア2を収納する断熱管3とを具える。断熱管3は、内管31と外管32とからなる二重管であり、内管31と外管32との間が真空引きされ、端部が封止されている。また、ケーブル1の端部には、プーリングアイ部4を具え、断熱管3の端部は、プーリングアイ部4に覆われている。そして、超電導ケーブル1の最も特徴とするところは、断熱管3の真空度を感知するセンサ部5を具える点にある。以下、各構成をより詳しく説明する。
【0024】
超電導ケーブル1は、3条のケーブルコア2を撚り合わせて断熱管3内に収納させた三心ケーブルであり、基本的構成は図2に示すケーブルと同様である。なお、図1では、一心のコアを省略しており、コア2の端部が二心しか示されていないが実際には三心存在する。各コア2は、中心から順にフォーマf、超電導導体S、電気絶縁層、外部超電導層、保護層を具える。フォーマfは、超電導導体を保形する芯となる部材であると共に、事故電流が超電導導体Sに流れた場合に、その分流路となって導体Sの損傷を抑制する機能を有する。このフォーマfは、銅線にエナメルの絶縁被覆が形成された被覆素線を複数撚り合わせた撚り線体と、この撚り線体の端部に接続された銅製の棒状体とからなる構成である。棒状体の端部には、その外周にネジ加工が施されている。超電導導体S及び外部超電導層は、Bi2223系Agシーステープ線材をそれぞれフォーマfの上、電気絶縁層の上に多層に巻回して形成される。外部超電導層は、交流送電において、超電導導体とほぼ同じ大きさで逆方向の電流が誘導されることで超電導導体Sから生じる磁場を相殺し、ケーブル外部への磁場の漏洩を防止するシールドとして機能し、直流送電において、超電導導体Sを往路とする場合、帰路として利用することができる。電気絶縁層は、ポリプロピレンとクラフト紙とが接合されたPPLP(登録商標)を超電導導体Sの外周に多層に巻回して形成される。電気絶縁層の内周側、即ち超電導導体Sの外周に内部半導電層、電気絶縁層の外周側、即ち外部超電導層の内周側に外部半導電層を形成してもよい。保護層は、外部超電導層の上にクラフト紙を巻回して形成される。この保護層は、外部超電導層の機械的保護を図ると共に、上記のように絶縁材にて形成することで、外部超電導層と断熱管3(内管31)との間を電気的に絶縁し、断熱管3に誘導電流や帰路電流が分流されることを防ぐことができる。
【0025】
断熱管3は、冷媒(この実施形態では液体窒素)が充填される内管31と、その外周を覆うように配置される外管32とからなる二重構造であり、ステンレス鋼からなるコルゲート管からなる。内管31の外周には、スーパーインシュレーション(商品名)を巻回し、内管31と外管32との間に断熱材層(図示せず)を具える構成である。断熱管3の外周には、ポリ塩化ビニルからなる防食層33が形成されている。
【0026】
ケーブルコア2を3条撚り合わせたものを上記断熱管3に収納させた状態とした後、内管31と外管32との間を所定の真空度に真空引きし、断熱管3の端部を封止している。ケーブルコア2の端部は、図1(A)に示すように断熱管3の端部から突出させた状態とし、突出されたコア2の端部の外周を覆うように補助管43を配置し、その一端を断熱管3に固定し、他端をプーリングアイ部4に取り付けている。プーリングアイ部4に補助管43を固定することで、断熱管3の端部は、プーリングアイ部4に覆われる。プーリングアイ部4を取り付けるにあたり、断熱管3の端部から突出されたコア2の端部は、段剥ぎされて超電導導体S、フォーマfを露出させ、超電導導体Sの端部にステンレス鋼製のキャップCを被せて、超電導導体Sを保護すると共に、超電導導体Sがばらけないようにしている。
【0027】
プーリングアイ部4は、コア2を支持するコア支持部40と、コア支持部40が固定され、断熱管3を覆うように配置されるキャップ部41と、キャップ部41に装着され、牽引用のワイヤなどが取り付けられるアイ部42とを具える。コア支持部40は、断面]状の円板状部材であり、コア2の端部において段剥ぎされて露出されたフォーマfの端部が挿通される貫通穴を中央部に有する。円板状部材の最大径は、断熱管3の最大径よりも小さくしている。フォーマfは、ねじ加工を施した端部にナットを締め付けて端部を突出させ、突出した端部をコア支持部40の貫通穴に挿通させ、更に、貫通穴から突出した端部に別途ナットを装着し、このナットと、フォーマfに予め装着したナットとでコア支持部40を挟むようにこれらのナットを締め付けることで、コア支持部40に固定される。剛性に優れるフォーマfをコア支持部40にて支持する構成とすることで、プーリングアイ部4の装着にあたり、超電導導体Sが損傷することがない。また、コア支持部40は、キャップ部41に設けられた固定片40aとの間に圧縮バネ40bを介在させて、キャップ部41に固定される。この構成により、牽引などによりキャップ部41が振動しても、その振動が圧縮バネ40bにて緩和されるため、この振動によりコア2が破損することを低減できる。
【0028】
キャップ部41は、円状面と湾曲面とを有する半球状の中実体であり、円状面にコア支持部40を固定する固定片40a及び補助管43が取り付けられ、湾曲面にアイ部42が取り付けられる。キャップ部41の最大径は、断熱管3の外周に設けられる防食層33の最大径とほぼ同等である。キャップ部41には、円状面から湾曲面に貫通する直線状の貫通孔41aが設けられており、後述する信号線5aがケーブルの長手方向に沿って貫通配置される。キャップ部41の円状面には、後述する補助管43を接続させており、この補助管43は、コア支持部40の外周及び断熱管3から突出したコア2の外周を覆うように配置される。また、キャップ部41には、図1(B)に示すように後述するアイ部42を取り付けるための切欠41bと、ボルト42aを取り付けるための切欠41c及びボルト42aが挿通される挿通部41dとを具える。
【0029】
アイ部42は、U字シャックルを用いており、U字の湾曲部分にキャップ部41に挿通配置されるボルト42aが挿通され、図1(A)の矢印で示すようにボルト42aを中心として回転自在にキャップ部41に固定されている。図1(B)では、アイ部42を取り外した状態を示す。このようなプリーリングアイ部4は、上記断熱管3の封止後、コア2に取り付けられる。
【0030】
補助管43は、コア支持部40や圧縮バネ40bなどの外周を覆うように配置される第一管43aと、コア2の外周を覆うように配置される第二管43bとを具え、両管43a,43bは、溶接にて接続している。第一管43aには、表面に凹凸がないストレート管、第二管43bには、表面に凹凸を有するコルゲート管を用いている。第一管43aは、ボルトにてキャップ部41に固定され、第二管43bは、溶接にて断熱管3に固定される。補助管43の最大径は、キャップ部41の最大径とほぼ同等である。このような補助管43は、コア2をキャップ部41に固定させた後、コア2の外周などに配置して断熱管3及びキャップ部41に固定させる。
【0031】
センサ部5は、断熱管3の真空度の測定に利用されるものであり、この実施形態では、Teledyne Hastings Instruments社製真空ゲージ管DV−6を用いている。このセンサ部5は、ケーブル本体に収納させている。具体的には、キャップ部41と断熱管3との間に配置される補助管43内において、補助管43の内周面とケーブルコア2の外周面とがつくる隙間に配置している。このセンサ部5には、感知結果を伝送する信号線5aを接続させており、この信号線5aをキャップ部41の貫通孔41aに貫通配置させている。また、信号線5aの端部に設けられた端子部5bをキャップ部41の湾曲面に固定させている。この端子部5bは、図1(B)に示すようにキャップ部41の中心からの距離がキャップ部41の最大径部分における半径よりも小さい箇所に配置させている。即ち、端子部5bは、キャップ部41においてケーブルの長手方向に突出するように固定されている。このようにケーブル外径の制限に影響のないケーブル本体(補助管43内)にセンサ部5を収納したり、キャップ部41に端子部5bを固定することで、図1(B)に示すようにプーリングアイ部4(キャップ部41)の最大径を不必要に大きくすることがない。即ち、超電導ケーブル1では、センサ部5などを具えることで、ケーブル外径を不必要に大きくすることがなく、ケーブル1の最大径を防食層3の最大径とすることができる。この端子部5bには、別途用意した計測手段5cを適宜接続させることで、断熱管3の真空度を容易に確認することができる。計測手段5cは、表示機能を有するものであり、この実施形態では、Teledyne
Hastings Instruments社製真空ゲージメータDV−6を用いている。このようなセンサ部5は、断熱管3を真空引き後、補助管43をキャップ部41及び断熱管3に接合させる前に封止された断熱管3の端部に配置するとよい。
【0032】
上記構成を具える本発明超電導ケーブル1は、断熱管3を真空引き後、センサ部5に計測手段5cを接続させることで、プーリングアイ部4を取り外すことなく、断熱管3の真空度を測定することができる。従って、工場での保管時、工場からの出荷時、搬送時、管路などへの布設前後において容易に断熱管3の真空度の測定を行うことができる。そのため、従来の超電導ケーブルと比較して真空破れといった異常をより早期に発見することができ、補修着手をより早く行える。その結果、補修に要する時間や費用を飛躍的に低減することができる。
【0033】
また、上記に示す超電導ケーブル1では、センサ部5を補助管43に収納させることで、超電導ケーブル1を搬送する際や、布設現場でドラムから引き出す際、管路などに布設する際などにおいて、センサ部5を破損する恐れがほとんど無い。更に、プーリングアイ部4の最大径及び補助管43の最大径を防食層33の最大径とほぼ同等とすることで、超電導ケーブル1の最外径は、センサ部5を有しない状態と同等であり、センサ部5を有することに伴ってケーブル径が大きくなることがない。従って、超電導ケーブル1を管路などの設置スペースに制約がある箇所に布設する場合であっても、問題なく布設することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明超電導ケーブルは、電力供給線路の構成部材として好適に利用することができる。特に、製造されてから、布設現場に布設されて接続構造などが形成されるまでの間において、本発明ケーブルのような構成としておくと、真空度の確認を随時行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(A)は、本発明超電導ケーブルの端部において概略構成を示す部分断面図、(B)は、(A)の正面図である。
【図2】従来の3心超電導ケーブルの断面を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 超電導ケーブル 2 ケーブルコア
3 断熱管 31 内管 32 外管 33 防食層
4 プーリングアイ部 40 コア支持部 40a 固定片 40b 圧縮バネ
41 キャップ部 41a 貫通孔 41b,41c 切欠 41d 挿通部
42 アイ部 42a ボルト 43 補助管 43a 第一管 43b 第二管
5 センサ部 5a 信号線 5b 端子部 5c 計測手段
100 超電導ケーブル 110 ケーブルコア 111 フォーマ
112 超電導導体 113 電気絶縁層 114 外部超電導層 115 保護層
120 断熱管 121 内管 122 外管 123 防食層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体を有するケーブルコアと、
前記コアを収納する内管及びこの内管の外周に設けられる外管とからなり、両管の間が真空引きされて封止された断熱管と、
前記断熱管の端部を覆うように配置され、前記コアが固定されるプーリングアイ部と、
前記断熱管の真空度を感知するセンサ部とを具えることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
センサ部は、プーリングアイ部に収納されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
断熱管の端部とプーリングアイ部との間には、補助管が接続され、
センサ部は、前記補助管に収納されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
センサ部には、感知結果が伝送される信号線が接続され、
この信号線は、プーリングアイ部に貫通配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載の超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−179746(P2007−179746A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373382(P2005−373382)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】