説明

超電導ケーブル

【課題】機械的な強度特性の異なる超電導線材を適切に使い分けるようにした多心一括型の超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】超電導導体層2の外側に絶縁層3を介して超電導シールド層4が形成されるケーブルコア9を複数本撚り合わせてなる多心一括型の超電導ケーブルにあって、超電導シールド層4は、EI値によって特定される曲げ剛性の優れた超電導線材21が螺旋状に巻回されて形成され、超電導シールド層4に用いられる超電導線材21は、ビスマス系酸化物超電導体を金属安定化材で覆って形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導層の座屈の発生を抑制できるようにした超電導ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材として、Bi-Sr-Ca-Cu-Oテープ線材に代表されるBi系超電導テープ線材が実用化されつつある。Bi系超電導テープ線材は、例えばBi2223相からなる複数本の超電導フィラメントを銀などの安定化材中に埋設した構造のテープ線材である。このBi系超電導テープ線材は、曲げ剛性に優れているため、圧縮応力に対する耐力が優れ座屈しにくいが、引張力に対する強度が、後述するRE(希土類)系超電導薄膜よりもやや弱い。このようなBi系超電導テープ線材を用いた3心一括型の超電導ケーブルは、例えば図3に示すように構成される。即ち、同図にて、中心から順に、フォーマ1、Bi系超電導テープ線材からなる超電導導体層2、絶縁層3、Bi系超電導テープ線材からなる超電導シールド層4が形成され、これらでケーブルコア9が構成される。そして、3本のケーブルコア9が互いに撚り合わされて内管6と外管7とで形成される二重断熱管によって被覆され、内管6内に冷媒流通路5が形成される。また、外管7は防食層8によって覆われ、内管6と外管7の間は真空引きされて真空層とされる。
【0003】
超電導ケーブルの構成についてより詳しく説明すると、まず、例えば図4に示すように、Bi系超電導テープ線材21の断面は、Bi系酸化物超電導体からなる多数本の超電導フィラメント21bを銀材等からなる金属シース(金属安定化材)21aで覆ってテープ状に形成される。このBi系超電導テープ線材21により、例えば図5に示すようなケーブルコア9が形成される。即ち、ケーブルコア9は、中心から順に、Cuなどの常電導材料からなる素線を撚り合せた撚り線又は中空パイプ等で構成されるフォーマ1と、Bi系超電導テープ線材21からなる超電導導体層2と、クラフト紙やクラフト紙とポリオレフィンフィルムをラミネートした複合紙等からなる絶縁層3と、Bi系超電導テープ線材21からなる超電導シールド層4と、常電導金属層25と、保護層26とが形成される。このようなケーブルコア9は、例えば図6に示すように、引張力を作用させた状態下で3本が強制的に撚り合わされて、その外周に内管6と外管7で形成される二重断熱管が被嵌され、図3に示すような3心一括型の超電導ケーブルが形成される。
【0004】
一方、次世代超電導線材として、RE系超電導薄膜線材の開発が進められている(例えば特許文献1)。例えば図7に示すように、このRE系超電導薄膜線材11は、テープ状の金属基板12上に順次中間層13、超電導薄膜14、保護層15を積層してなるテープ線材である。具体例としては、例えば金属基板12としてハステロイ(登録商標)、中間層13としてYSZ、超電導薄膜14としてY系123構造(YBa2Cu3Oy)薄膜、保護層15として銀が用いられている。通常、これら中間層13や超電導薄膜14はレーザ蒸着などにより金属基板12の片面のみに形成される。このようなRE系超電導薄膜線材11は、厚みを薄く形成することができ、金属基板12の存在によって引張力に対しては比較的に優れた強度を有しているが、金属基板12や保護層15を薄くすると、曲げ剛性が低いため座屈しやすいという難点がある。このようなRE系超電導薄膜線材11を用いて3心一括型の超電導ケーブルを形成する場合にもBi系超電導テープ線材21の場合と同様に構成される。
【特許文献1】特開2001-31418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような3心一括型の超電導ケーブルの製作段階では、3本のケーブルコア9に引張力を作用させつつ強制的に互いに撚り合わせる作業が行われる。その際に、特に、コア同士の接触点では、外側の超電導シールド層4において、コア同士が互いに局部的に強制的に曲げられるため、座屈等の損傷が発生しやすくなるという問題があった。つまり、3本のケーブルコア9に引張力を作用させて互いに撚り合わせる際には、各ケーブルコア9の外側が引っ張られるのに対して、内側が局部的に屈曲して弛みが生じる。このような弛みが発生したコア同士が弛んだ部分で圧縮状態となり、線材がそれに耐えきれなくなると折れ曲がる現象が発生する。これを座屈という。
【0006】
このような座屈は、ケーブル製作後の取り扱い段階においても発生する。例えばケーブルをドラムに巻回する際やケーブルを現地で布設する際等に、超電導ケーブルが曲げられると、ケーブル内の超電導層にも強制的な曲げ力が作用する。その曲げ力によって、超電導層の径が大きいほど、その外側部分に大きな引張力が作用し、内側部分には大きな圧縮力が作用する。このような大きな引張力と圧縮力が超電導層に作用すると歪みが大となり座屈が発生しやすくなる。このような歪みεは、例えば超電導ケーブルの曲げ半径をR、超電導層の径をDとすれば、ε∝D/Rとして表すことができる。つまり、超電導ケーブルを同程度に曲げた場合には、超電導層の径Dが大きい程、歪みεが大きくなり座屈が発生しやすくなる。このようなケーブルの曲げにより発生する座屈の問題は、上述のような3心一括型等の多心一括型の超電導ケーブルに限られることなく、単心型の超電導ケーブルにおいても発生する。尚、複数の超電導層を有する単心型の超電導ケーブルでは、外側の超電導層に座屈が発生しやすくなる。
【0007】
しかるに、超電導ケーブルの構成を検討する段階で、許容伸びに優れて線材の厚さを薄く形成できるというRE系超電導薄膜線材の特徴や曲げ剛性が優れているというBi系超電導テープ線材や、交流損失を低減させる目的で線材寸法を細く薄くしたBi系超電導テープ線材等が選択できるように超電導線材の開発が進められた。しかし、それらを超電導ケーブルの超電導層に取り込む際に、各線材の特徴をそれぞれ充分に活用させることができるような超電導線材の適材適所の選択がなされていなかった。そのため、上述のような座屈がしばしば発生し、その対策が求められていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、超電導層の座屈の発生を抑制できるようにした超電導ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超電導ケーブルは、超電導線材で形成される超電導層を複数層備えた超電導ケーブルであって、
超電導線材のヤング率をE、断面二次モーメントをIとした場合、外側に形成される外側超電導層は、内側に形成される内側超電導層を構成する超電導線材よりもEI値の大きな超電導線材を備えていることを特徴とする。
【0010】
超電導層が複数層形成される場合には、外側超電導層の方が、内側超電導層よりも、ケーブルの曲げによる歪みが大きくなるため、外側超電導層を形成する超電導線材のEI値を内側超電導層を形成する超電導線材よりも大に設定することによって、超電導ケーブルの製作段階や取り扱い時等に発生するケーブルが曲げに対して必要な座屈耐力を確保できる設計が可能になる。
【0011】
前記超電導層の径に略比例して該超電導層を構成する超電導線材のEI値が選択されるようにしてもよい。超電導ケーブルをドラムに巻回する際や現地で敷設する際等に、ケーブルが曲げられると、超電導層の径が大きいほど、曲げの外側部分にはより大きな引張力が作用し内側部分には大きな圧縮力が作用するため、歪みが大きくなり座屈が発生しやすくなる。このような歪みεは、例えば超電導ケーブルの曲げ半径をR、超電導層の径をDとすれば、ε∝D/Rとして表すことができる。つまり、超電導ケーブルを同程度に曲げた場合には、超電導層の径Dが大きい程、歪みεが大きくなる。従って、このような歪みに耐えることができるように、径の大きい超電導層では、EI値を大に設定するのが好ましい。このような対応により、超電導ケーブルの取り扱い時等におけるケーブルの曲げに対して超電導層が座屈しにくくなる。
【0012】
前記超電導ケーブルは3心一括型であってもよい。例えば交流用の3心一括型の超電導ケーブルでは、内側の超電導導体層の外側に超電導シールド層が形成されるが、この場合、超電導ケーブルが曲げられると、超電導シールド層の歪みが超電導導体層よりも大きくなる。そのため、径の大きい超電導シールド層を形成する超電導線材のEI値を、その径に応じて、超電導導体層を形成する超電導線材よりも大きな適切な値に設定することによって、曲げに対する充分な座屈耐力を確保することができる。また、その製作段階で3本のケーブルコアに引張力を作用させつつ強制的に互いに撚り合わせる作業において、特に、外側の超電導シールド層のコア同士が互いに局部的に強制的に曲げられるため、座屈等の損傷が発生しやすくなるが、径の大きい超電導シールド層には、EI値の大きな超電導線材を充当しているため、このような座屈が発生しにくくなる。
【0013】
前記外側超電導層に用いられる超電導線材は、ビスマス系酸化物超電導体を金属安定化材で覆って形成されるようにしてもよい。ビスマス系酸化物超電導体を金属安定化材で覆って形成されるBi系超電導テープ線材は、比較的に曲げ剛性に優れ、EI値が比較的に高いため、外側超電導層に適用した場合、ケーブルコア同士を撚り合わせる際にも座屈等の損傷の発生を回避することができる。また、超電導ケーブルが曲げられた際にも、座屈が発生しにくくなる。
【0014】
前記外側超電導層に用いられる超電導線材は、金属基板の少なくとも片面側にRE系超電導薄膜が形成されるものであってもよい。RE系超電導薄膜の場合、金属基板を厚くすること等によって、曲げ剛性を向上させることができるため、所要のEI値を確保できる場合には、RE系超電導薄膜を外側超電導層に好適に使用することができる。このようなRE系超電導薄膜としては、Ho系超電導体またはY系超電導体を主体とするものが挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超電導ケーブルは、外側超電導層が、内側超電導層を形成する超電導線材よりも大きなEI値を有する超電導薄膜線材を備えるので、超電導ケーブルの製作段階や取り扱い時等に発生するケーブルが曲げられても、超電導層が座屈しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態に係る超電導ケーブルについて説明する。図1は、3心一括型の超電導ケーブルの断面構成を示し、図2はケーブルコアの構成を示す。まず、図1に示すように、この超電導ケーブルは、3本のケーブルコア9が互いに撚り合わされて、内管6と外管7で形成される二重断熱管内に収納されている。そして、その内管6内に液体窒素等の冷却媒体を流通させる冷媒流通路5が形成され、外管7は保護層8によって覆われ、内管6と外管7の間は真空引きされて真空層とされる。このような構成により、超電導ケーブルが運転可能な超電導状態に保持される。
【0017】
そのケーブルコア9は、例えば図2に示すように構成される。即ち、ケーブルコア9は、中心から順に、フォーマ1と、層間絶縁24と、超電導導体層(本発明の内側超電導層)2と、絶縁層3と、超電導シールド層(本発明の外側超電導層)4と、常電導金属層25と、保護層26とで構成される。フォーマ1は、Cuなどの常電導材料からなる素線を撚り合せた撚り線又は中空パイプ等で形成され、超電導導体層2は、超電導薄膜線材11(図7参照)で形成され、絶縁層3は、クラフト紙やクラフト紙とポリオレフィンフィルムをラミネートした複合紙等により形成され、超電導シールド層4は、Bi系超電導テープ線材21(図4参照)で形成される。
【0018】
超電導導体層2を形成する超電導薄膜線材11として、例えば図7に示すような、Ho系超電導体またはY系超電導体を主体とするRE系超電導薄膜14を金属基板12上に形成したRE系超電導薄膜線材を用いることができる。このようなRE系超電導薄膜線材11は、曲げ剛性が比較的に低く、圧縮応力に対する強度、つまり座屈耐力がやや低いという難点があるが、厚みを薄く形成することができ、金属基板12の存在によって引張力に対して優れた強度を有し、比較的に大きな許容伸びを備えている。一方、超電導シールド層4を形成するBi系超電導テープ線材21は、引張力に対する強度がやや低いが、曲げ剛性に優れ、圧縮応力に対する強度、つまり座屈耐力に優れている。即ち、超電導線材のヤング率をE、断面二次モーメントをIとした場合の曲げ剛性を表すEI値が比較的に高い。本超電導ケーブルでは、このような強度特性の異なるRE系超電導薄膜線材11とBi系超電導テープ線材21を、上述のように、超電導導体層2と超電導シールド層4とに、適切に使い分けるようにしている。
【0019】
まず、超電導シールド層4については、図6を参照して説明したように、3本のケーブルコア9に引張力を作用させつつ互いに撚り合わせる工程において、特に、ケーブルコア9,9同士の接触点では、コア同士が互いに局部的に強制的に曲げられるため、ケーブルコア9の外側に配設されている超電導シールド層4に座屈が発生しやすくなる。この点に鑑みて、本発明では、その超電導シールド層4に、曲げ剛性に優れたBi系超電導テープ線材21を用いているため、座屈等の損傷が発生しにくくなる。また、ケーブル製作後の取り扱い段階では、超電導ケーブルをドラムに巻回する際や現地で敷設する際等に、ケーブルが曲げられると、径の大きい超電導シールド層4には、曲げの外側部分に大きな引張力が作用し内側部分には大きな圧縮力が作用するため、歪みが大きくなるが、その超電導シールド層4を、EI値の大きいBi系超電導テープ線材21で構成しているので、座屈が発生しにくくなる。
【0020】
次いで、超電導導体層2では、フォーマ1の外周に比較的に薄い層間絶縁24を介して超電導線材が巻回されている。そのため、使用段階において、ケーブルコア9が冷媒の流通によって冷却されると、超電導線材が収縮するが、層間絶縁24が薄いため、収縮代があまりなく、破断等のトラブルが発生しやすくなる。この点に鑑みて、本実施の形態では、超電導導体層2に、許容伸びと引張強度に優れたRE系超電導薄膜線材11を用いているため、充分な耐力を発揮することができ、破断等のトラブルが発生しにくくなる。
【0021】
上述のように、本発明では、機械的な強度特性の異なる超電導薄膜線材(RE系超電導薄膜線材)11とBi系超電導テープ線材21を、超電導導体層2と超電導シールド層4とに、適切に使い分けているため、例えば従来必要とされたケーブルコア9の撚り合わせ時に緩みをもたせたり、超電導線材を巻回する際の張力を調整するような配慮が大幅に緩和されるようになった。これにより、製作段階では、RE系超電導薄膜線材11に適切な張力を作用させて巻き崩れのない超電導導体層2を形成しやすくなった。また、3本のケーブルコア9同士を緩みなく撚り合わせても超電導シールド層4に座屈が発生するようなトラブルが少なくなり、ケーブル製作時の作業能率を格段に向上できるようになった。さらには、超電導ケーブルをドラムに巻回する際や現地で敷設する際等に、ケーブルが曲げられても、超電導シールド層4に座屈が発生しにくくなった。
【0022】
〔超電導線材の強度特性についての検討〕
超電導ケーブルの超電導層に使用される超電導線材に求められる機械的な強度特性として、(1)引張力に対する耐力、(2)伸びの許容度:伸びδ(許容伸び)、(3)圧縮応力に対する耐力(曲げ剛性EI:E;縦弾性係数(ヤング率),I;断面二次モーメント)等が挙げられる。これらの機械的な強度特性に関し、Bi系超電導テープ線材と、超電導薄膜線材(Y系超電導体)について行った数値検討の結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
尚、1)線材の厚さは、矩形状の断面における断面二次モーメントを与える式bh3/12におけるhに相当する。2)ヤング率E(GPa)は、絶対温度77K時〜常温時の値を示す。3)伸びδ(%)は、δ={(l’−l)/l}×100で表され、破断前後における標点間距離の差の割合を示し、表中、常温時の値を示す。4)断面二次モーメントIは、線材の幅b=1mmとした場合の値に換算している。5)線材の幅b=1mmに換算したEI値(使用状態時)につき、好ましくは、EI≧150×10-4GPa・mm4であることが確認されている。従って、超電導薄膜線材中のBとCの間に許容されるべき境界が存在する。
【0025】
表1から、Bi系超電導テープ線材は曲げ剛性EIに優れているが、伸びδは低いことが判る。一方、超電導薄膜線材(Y系超電導体)は伸びδは大であるが、曲げ剛性EIは低いことが判る。このようなことから、大きな伸びδが求められる部位、即ち、超電導導体層2には超電導薄膜線材(Y系超電導体)11を充当し、大きな曲げ剛性が求められる部位、即ち、超電導シールド層4にはBi系超電導テープ線材を充当するのが好ましい。
【0026】
また、外側超電導層4の超電導線材として、EI値(ケーブル使用状態時)が、超電導線材の幅b=1mmに換算した場合に、EI≧150×10-4GPa・mm4の条件を満たすRE系超電導薄膜11(表1参照)を選択することもできる。この程度の曲げ剛性を有していれば、ケーブルコア9同士を撚り合わせる際やドラムに巻回する際等にも、座屈の発生を回避することができる。従って、この場合は、内側超電導層2と外側超電導層4を共にRE系超電導薄膜11で形成することができる。
【0027】
そして、超電導線材のヤング率をE、断面二次モーメントをIとした場合、超電導層の径に略比例して該超電導層を形成する超電導線材のEI値が選択されるようにしてもよい。即ち、径の大きい外側超電導層4には、その径に比例したEI値の大きい超電導線材を選択することによって、必要な曲げ剛性を確保することができるため、超電導ケーブルの取り扱い時等におけるケーブルの曲げに対して超電導層が座屈しにくくなる。このような対応は、超電導線材の素材の如何に関わらず適用することができる。また、同一超電導層内においても、巻回される超電導線材の径に略比例して該超電導層を形成する超電導線材のEI値が選択されるようにしてもよい。さらに、最外層に巻回される超電導線材ついては、必要に応じて、上述のような比例関係に拘束されることなく、適切なEI値が選択されるようにしてもよい。
【0028】
あるいは、内側超電導層4を構成する超電導線材として、例えば伸びδ(常温時)が0.2%以上、好ましくは0.3%以上の超電導線材、例えば超電導薄膜線材(又はBi系超電導テープ線材)(表1参照)を選択すれば、使用時にケーブルコア9が冷媒の流通によって冷却される際の収縮に対して伸びることによって追従できるため、収縮代が不足して破断したり破損するようなトラブルの発生を回避することができる。
【0029】
尚、本発明は、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて改良、変更等は自由である。本発明の超電導ケーブルは、3心一括型に限定されることなく、心線の本数は適宜に選択されてよい。また、交流用に限らず、直流用の超電導ケーブルやその他の交流用の超電導ケーブルにも本発明の構成を適用することができる。即ち、超電導導体層と超電導シールド層を備えた単心交流型の超電導ケーブル、内側超電導層と外側超電導層とで往路と帰路を構成する単心直流型の超電導ケーブルにも適用することができる。あるいは、超電導導体層の各相が絶縁層を介して同軸状に配列され、さらに絶縁層を介して超電導シールド層が配列された3相交流型の超電導ケーブルにも適用することができる。これらの場合にも、超電導層の径の大小に略比例して、その超電導層を形成する超電導線材のEI値を選択することによって、ケーブルの曲げ等に起因する座屈の発生を効果的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の超電導ケーブルは、超電導ケーブルの製作段階や取り扱い時等に発生するケーブルが曲げられても、超電導層が座屈しにくくなるので、高い信頼性が要求される送電用ケーブル等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る3心一括型の超電導ケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】同ケーブルコアの部分破断斜視図である。
【図3】従来の3心一括型の超電導ケーブルの断面図である。
【図4】同Bi系超電導テープ線材の断面図である。
【図5】同ケーブルコアの部分破断斜視図である。
【図6】同ケーブルコアの撚り合わせ状態を示す説明図である。
【図7】同超電導薄膜線材の部分破断斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 フォーマ 2 超電導導体層(内側超電導導体層) 3 絶縁層
4 超電導シールド層(外側超電導導体層) 6 内管 7 外管 8防食層
9 ケーブルコア 11 超電導薄膜線材(RE系超電導薄膜線材)
21 Bi系超電導テープ線材 21a 金属シース
21b 超電導フィラメント 24 層間絶縁 25 常電導金属層
26 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材で形成される超電導層を複数層備えた超電導ケーブルであって、
超電導線材のヤング率をE、断面二次モーメントをIとした場合、外側に形成される外側超電導層は、内側に形成される内側超電導層を構成する超電導線材よりもEI値の大きな超電導線材を備えていることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
前記超電導層の径に略比例して該超電導層を構成する超電導線材のEI値が選択されることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
前記超電導ケーブルは3心一括型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
前記外側超電導層に用いられる超電導線材は、Bi系酸化物超電導体を金属安定化材で覆って形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
前記外側超電導層に用いられる超電導線材は、金属基板の少なくとも片面側にRE系超電導薄膜が形成されてなることを特徴とする請求項2又は3に記載の超電導ケーブル。
【請求項6】
前記RE系超電導薄膜が、Ho系超電導体またはY系超電導体を主体とすることを特徴とする請求項5に記載の超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−76401(P2009−76401A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246218(P2007−246218)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】