説明

超電導導体の接続方法、及び超電導導体の接続装置

【課題】超電導導体の接続部の低抵抗化を保持し、簡易な接続作業で超電導導体同士を接続する方法及び装置を提供する。
【解決手段】中心部にチャネルが形成され、その周囲に超電導素線束が配置されてなる超電導導体において、前記超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を、前記チャネルを欠く状態において導電性部材で被覆する被覆する。次いで、導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する複数の成形型を用い、これら複数の成形型により形成されるキャビティ内に前記導電性部材を配置する配置する。次いで、前記複数の成形型の前記押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する縮径し、縮径した前記導電性部材と、上記工程で形成された別の超電導導体の超電導素線束の周囲を被覆する縮径した導電性部材とを、導電性の接続体に形成された溝部に嵌合させて、電気的及び機械的に接合する接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導導体の接続方法、及び超電導導体の接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合機器や超電導エネルギー貯蔵システム装置など高磁場を発生させる大型の超電導コイル、並びに送電線等に使用する超電導コイルは、一般に複数の超電導導体を準備しておき、これらを相互に接続することによって製造している。
【0003】
例えば、特許文献1には、双方の超電導導体のコンジットを除去して超電導素線から一定の長さのフィラメントを硝酸などで露出させ、双方のフィラメントを適当数の束毎に重ね合わせ、このフィラメントを接続ピースで覆い、所定の温度および圧力を加えてフィラメントおよび安定化銅を固相接合し、双方の導体を一体化する方法が開示されている。また、特許文献2では、双方の超電導素線から接続箇所の安定化材を取り除いてフィラメントを露出させ、互いに重ね合わせて加圧しながら熱処理して接続する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、双方の化合物系超電導素線から接続端部の安定化材を除去した後に、チューブ状のフィラメントを互いに重ね合わせて圧力および温度を加え、チューブ状のフィラメント間を固相拡散接合する方法が開示されている。特許文献4には、超電導導体の接続すべき双方の端部をそれぞれ銅スリーブでスウェージング加工して一体化し、これらの端部をつき合わせて接続するバットジョイント法による接続方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献5には、超電導フィラメントを約10000本埋め込んだ構造の素線を49本束ね、さらにコンジットで被覆して所定の外径の複合導体を形成した後、この複合導体からコンジットを約200mmの長さで剥ぎ取って内部の素線を取り出し、各素線を加工ロールで断面が六角形状となるように加工した後、加工後の各素線を銅製の型枠に7本づつ挿入して、合計7つのブロックを形成する。その後、この7つのブロックを正六角形状にスウェージング加工して6次の回転対称形の複数の複合導体を得、これら複数の複合導体の端部同士を突き合わせることによって、これら複数の複合導体、すなわち超電導フィラメント同士を接続する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献6には、超電導フィラメントをスリーブ内に挿入し、その後、このスリーブを例えば上枠及び下枠から構成される型内に挿入し、この上枠及び下枠の当たり面同士が当たるまでスリーブを押圧して縮径することにより、スリーブ内で超電導フィラメント同士を互いに接続する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−163140号
【特許文献2】特開昭63−55875号
【特許文献3】特開平2−197017号
【特許文献4】特開平10−21976号
【特許文献5】特開平8−138821号
【特許文献6】特開平6−196341号
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1〜6に開示された接続方法においては、はんだ付による方法と比べると接続部の低抵抗化およびコンパクト化の利点があるものの、いずれも双方の超電導素線から安定化材を、硝酸溶液等の酸を用いて安定化銅を溶解・除去してフィラメントを露出させる工程を必須とする方法であったため、超電導線のフィラメントおよび安定化材に関する取り扱いが煩雑となって、必ずしも作業効率が良いものではなかった。
【0009】
例えば、フィラメントについては数十μmの極細線であるため、取り扱い上、フィラメント同士の摩擦に起因してフィラメントが発火したり、あるいは接続後の洗浄が悪いと接続部のフィラメントが酸化して接続抵抗値が大きくなったりして、機器設計から要求される接続部抵抗の仕様値をクリヤーしないなどの問題があった。また、安定化材を除去する際に、硝酸溶液等の強酸を使用する工程が必須であったため、溶液の取り扱いや接続作業エリアの作業環境などに制約が多々あり、作業性としては効率のいいものではなかった。
【0010】
また、特許文献4に記載の接続方法は、熱処理された超電導導体を、接続すべき端面を高度な加工(平面度、直角度、粗度、清浄度他)を施し、真空あるいは不活性ガス雰囲気中において、加熱(例えば700℃前後)及び加圧(例えば1〜10MPa)する条件において、所定の低抵抗の接続が得られるようになる。したがって、極めて高度な技術や接続装置が必要であった。
【0011】
さらに、特許文献5に記載の方法では、上述した複合導体を得るに際して、コンジットから露出した素線毎に加工ロールにて加工するため、工程が煩雑になるという問題があった。また、特許文献6に記載の方法では、スリーブ内の超電導フィラメントの縮径は、上枠及び下枠の当たり面同士が当たるまでしか行うことができず、上述した接続に際して超電導フィラメント間に隙間が生じてしまい、抵抗が増大して十分な超電導特性を得ることができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、超電導導体の接続部の低抵抗化を保持し、簡易な接続作業で超電導導体同士を接続する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、中心部に冷媒通路のチャネルを形成した超電導素線束をコンジット内に収容してなる超電導導体の接続方法において、前記超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を、前記チャネルを欠く状態において導電性部材で被覆する被覆工程と、導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する複数の成形型を用い、これら複数の成形型により形成されるキャビティ内に前記導電性部材を配置する配置工程と、前記複数の成形型の前記押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する縮径工程と、縮径した前記導電性部材と、上記工程で形成された別の超電導導体の超電導素線束の周囲を被覆する縮径した導電性部材とを、導電性の接続体に形成された溝部に嵌合させて、電気的及び機械的に接合する接合工程と、を具えることを特徴とする、超電導導体の接続方法(第1の接続方法)に関する。
【0014】
また、本発明の一態様は、超電導導体における超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を導電性部材で被覆する被覆工程と、導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する複数の成形型を用い、これら複数の成形型により形成されるキャビティ内に前記導電性部材を配置する配置工程と、前記複数の成形型の前記押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する縮径工程と、縮径した前記導電性部材と、上記工程で形成された別の超電導導体の超電導素線束の周囲を被覆する縮径した導電性部材とを、導電性の接続体に形成された溝部に嵌合させて、電気的及び機械的に接合する接合工程と、を具えることを特徴とする、超電導導体の接続方法(第2の接続方法)に関する。
【0015】
さらに、本発明の一態様は、超電導導体における超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を被覆してなる導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する、前記導電性部材を縮径するための複数の成形型と、前記複数の成形型に対して、前記導線性部材を縮径するための押圧力を負荷するための圧力供給手段と、前記複数の成形型及び前記圧力供給手段を保持する円筒形状の保持部材と、を具えることを特徴とする、超電導導体の接続装置に関する。
【0016】
上記第1の接続方法及び第2の接続方法によれば、超電導導体における超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を導電性部材で被覆した後、この導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面、すなわちアール型の押圧面を有する複数の成形型で押圧し、縮径するようにしている。したがって、前記コンジットから露出した超電導素線を構成する複数の超電導線間の隙間を低減させることができ、前記超電導素線の低抵抗化を実現することができるようになる。すなわち、上記超電導導体の、接続に供する超電導素線束の低抵抗化を図ることができる。
【0017】
また、素線毎ではなく、前記コンジットから露出した超電導素線を一括して縮径するので、縮径に伴う低抵抗化の工程を簡易化することができる。
【0018】
さらに、超電導導体の接続は、超電導導体を上述のようにして低抵抗化した後、超電導素線束を被覆する縮径された導電性部材を、導電性の接続体に形成された溝部に嵌合させるとともに、同様にして形成した別の超電導導体の縮径された導電性部材を、同じく前記接続体に形成された溝部に嵌合させ、前記接続体を介して間接的に接続するようにしている。したがって、超電導導体と別の超電導導体とを極めて簡易に接合することができる。
【0019】
なお、上述した第1の接続方法及び第2の接続方法における基本的な接続方法及びそれに伴う作用効果は互いに同一であるが、第1の接続方法と第2の接続方法とでは、接続に供する超電導導体の基本構成が異なる。すなわち、第1の接続方法においては、接続に供する超電導導体は、中心部にチャネルが形成され、その周囲に超電導素線束が配置されたような構造を呈しているが、第2の接続方法においては、接続に供する超電導導体は、中心部にチャネルが形成されておらず、超電導素線束からなるような構造を呈している。
【0020】
本発明の一例において、縮径工程は、所定の回転機構を用いて、複数の成形型を、導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させ、縮径した導電性部材の、複数の成形型の隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部を、複数の成形型の前記押圧面で押圧する工程を含むことができる。
【0021】
上述した第1の接続方法及び第2の接続方法のいずれにおいても、コンジットから露出した超電導素線束を被覆する導電性部材を、複数の成形型を用いて一度で所定の径となるように縮径するのは困難であるので、通常は複数回に分けて縮径を行うことになる。この際、初期の縮径においては、複数の成形型で導電性部材を押圧する際に、隣接する成形型同士が密着せずに離隔するようになる。このような場合、隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部が形成されることになる。この非押圧部は、導電性部材の押圧面(縮径面)に対して突起状物として形成される。
【0022】
超電導導体の縮径された導電性部材において、上述のような突起状の非押圧部が存在すると、上述したように、接続体に形成された溝部に導電性部材を嵌合させることができず、超電導導体同士の、接続体を介した接続が困難となる場合がある。
【0023】
したがって、上述のように、所定の回転機構を用いて、複数の成形型を、導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させ、縮径した導電性部材の、複数の成形型の隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部を、複数の成形型の前記押圧面で押圧するようにすれば、上記非押圧部の形成を抑制することができる。この結果、上述した不利益を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の一例において、縮径工程は、複数の成形型の少なくとも一部が導線性部材の、先に縮径した部分と重複するようにして、複数の成形型を、所定の軸方向移動機構を用いて、導電性部材の軸方向において移動させ、複数の成形型による導電性部材の縮径を、導電性部材の軸方向において連続して行うようにすることができる。
【0025】
すなわち、複数の成形型を移動させる際に、複数の成形型の少なくとも一部が導電性部材の先に縮径した部分と重複するようにしているので、導電性部材が長尺であって、この導電性部材に対して長尺の縮径を行う場合においても、先に縮径した部分と連続して縮径した部分との間に段差が生じるのを抑制することができ、導電性部材を接続体の溝部内に嵌合できるようになる。したがって、長尺の導電性部材に対しても上述した縮径操作を実行することができ、このような長尺の導電性部材を有する超電導導体同士の電気的及び機械的接続を、上記接続体を介して良好に行うことができるようになる。
【0026】
さらに、本発明の一例においては、配置工程において、複数の成形型を、導電性部材の周囲において等間隔で配置し、縮径工程において、複数の成形型の等間隔配置を保持した状態で、複数の成形型の押圧面で導電性部材を押圧して縮径することができる。この場合、上述したように、導電性部材の縮径を複数回に分けて行う場合に、縮径毎の複数の成形型の配置を簡易に決定することができ、複数回に亘る縮径を効率的に実施することができる。特に、上述した例における、複数の成形型の隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部を、複数の成形型を所定角度回転させ、それらの押圧面で再度押圧して上記非押圧部の形成を抑制するという操作において、複数の成形型の配置を簡易に決定することができるようになる。また、超電導導体の超電導素線束が偏よることなく、中央に集束した状態で縮径を行うことができるようになる。
【0027】
また、本発明の一例において、複数の成形型は、第1の複数の成形型及び第2の複数の成形型であり、第1の複数の成形型は第1の曲率で円弧状に凹んだ第1の押圧面を有し、第2の複数の成形型は、第1の曲率よりも小さい第2の曲率で円弧状に凹んだ第2の押圧面を有し、縮径工程は、第1の複数の成形型の第1の押圧面で導電性部材を押圧して縮径する第1の縮径工程、及び第1の縮径工程の後、第2の複数の成形型の第2の押圧面で導電性部材を押圧して縮径する第2の縮径工程を含むことができる。
【0028】
この場合、第1の縮径工程は粗縮径工程に相当し、第2の縮径工程は精縮径工程に相当する。すなわち、第1の複数の成形型を用いて導電性部材をある程度まで縮径しておき、次いで、第2の複数の成形型を用いて導電性部材を目的とする径まで縮小する。このように2種類の成形型を用い、2段階で導電性部材の縮径を行うことにより、たとえ導電性部材の径が大きくても、縮径によって目的とする径を高精度に得ることができる。
【0029】
なお、本例では、第1の複数の成形型及び第2の複数の成形型を用い、2段階で導電性部材の縮径を行うようにしているが、3種類以上の複数の成形型を用い、3段階以上で導電性部材の縮径を行うこともできる。
【0030】
また、第1の複数の成形型及び第2の複数の成形型を用いた場合においても、それぞれの成形型に対し、上述した例の総てを適用することができ、当該例による作用効果を奏することができる。
【0031】
本発明の接続方法及び接続装置においては、1つの超電導導体の長さが数百メートルであり、このような長さを有する複数の超電導体を接続して数千メートルの長さの超電導導体を得る場合に有効である。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、超電導導体の接続部の低抵抗化を保持し、簡易な接続作業で超電導導体同士を接続方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態の、接続に供する超電導導体の構成図である。
【図2】同じく、第1の実施形態の、接続に供する超電導導体の構成図である。
【図3】同じく、第1の実施形態の、接続に供する超電導導体の構成図である。
【図4】第1の実施形態で使用する超電導導体接続装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す接続装置を、長さ方向に垂直な平面で切った場合の断面図である。
【図6】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図7】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図8】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図9】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図10】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図11】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図12】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図13】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図14】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図15】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図16】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図17】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図18】第1の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図19】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図20】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図21】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図22】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図23】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図24】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図25】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【図26】第2の実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1〜図3は、本実施形態の、接続に供する超電導導体の構成図であり、図4は、本実施形態で使用する超電導導体接続装置の概略構成を示す斜視図であり、図5は、図4に示す接続装置を、長さ方向に垂直な平面で切った場合の断面図である。なお、実施形態で示す総ての図面において、類似及び同一の構成要素に関しては、同一の参照数字を用いて表している。
【0036】
本実施形態における超電導導体10は、図1に示すように、例えばステンレス製テープ12によってブロック状に離隔された複数の超電導素線11が、超電導導体10の長さ方向に所定の冷媒を流すために形成されたチャネル孔14の周囲を囲むようにして構成され、束を構成している。また、複数の超電導素線11はコンジット13によって被覆されている。
【0037】
あるいは、図2に示すように、テープによってブロック状に離隔されることなく、また、冷媒を流すためのチャネル孔を有することなく、複数の超電導素線11がコンジット13によって被覆されてなる、超電導導体10−1としてもよい。
【0038】
図1及び図2に示すいずれの超電導素線11も、例えば1本の超電導線111と2本の銅線とを撚ってなる合計3本の線をさらに3本に撚るとともに、得られた撚り線をさらに3本に撚り、結果として得られた依り線を再度2本に撚ることなどによって構成することができる。
【0039】
超電導線111は、例えば、図3に示すように、超電導フィラメント111Aの周囲を安定化銅111Bで被覆し、これを銅材111C中に複数埋設させるとともに、その周囲を銅又はアルミニウムなどの管状部材111Dで被覆することによって得ることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、複数の超電導素線11は超電導素線束と同義である。したがって、以下において、参照数字11は、適宜単一の超電導素線を意味する場合もあれば、上記超電導素線束を意味する場合もある。
【0041】
また、超電導導体10においては、超電導素線11の数を6としているが、その数は必要に応じて任意に決定することができる。また、チャネル孔14についても必要に応じて省略することができる。
【0042】
超電導導体10は、チャネル孔14中に冷媒を流すことにより、主として核融合機器や超電導エネルギー貯蔵システム装置など高磁場を発生させる大型の超電導コイルに使用する場合を想定しており、超電導導体10−1は、冷媒を流す必要のない、主として送電線などに使用する場合を想定している。本実施形態で以下に説明する接続方法及び接続装置は、1つの超電導導体の長さが数百メートルであり、このような長さを有する複数の超電導体を接続して数千メートルの長さの超電導導体を得る場合に有効であるので、主として図1に示す超電導導体10を接続する場合を想定しているが、図2に示す超電導導体10−1を排除するものではない。
【0043】
図4及び図5に示すように、本実施形態で使用する接続装置20は、複数の成形型21と、これら成形型21に応じて設けられた複数の油圧シリンダー22と、円筒形状の保持部材23とを有している。複数の成形型21は、それぞれ所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面21Aを有し、対応する油圧シリンダー22の先端に取り付けられている。油圧シリンダー22は保持部材23の側面に形成された貫通孔中に嵌合するとともに、図示しないビスなどの固定部材を介して保持部材23に対して固定されている。また、保持部材23は、回転ローラ24を介して支持台25上に固定され、保持部材23が、回転ローラ24によってその円周方向に回転することにより、以下に示すような超電導導体の接続に供することができるようになっている。
【0044】
また、保持部材23の一端面にはフランジ孔231Aが等間隔に形成されたフランジ231が溶接等によって接続されている。フランジ231(フランジ孔231A)は、以下に説明する接続方法において、複数の成形型21の配置角度を調整するために使用されるものである。例えば、フランジ孔231Aを等間隔に12個形成すれば、隣接するフランジ孔231Aのなす角度は30度となるので、複数の成形型21の配置角度は、前記角度を参照して決定することができる。
【0045】
油圧シリンダー22には、図示しない油圧ユニット及び油圧制御装置が接続され、これら油圧ユニット及び油圧制御装置を介して、適当な油圧が油圧シリンダー22に供給されるようになっている。
【0046】
なお、本実施形態では、成形型21の数を3とし、これに接続する油圧シリンダーの数も3としているが、これらの数については特に限定されるものではない。但し、これらの数は3以上であることが好ましい。また、以下に説明する導電性部材の周囲において等間隔で配置し、複数の成形型の等間隔配置を保持した状態で、複数の成形型の押圧面で導電性部材を押圧することが好ましい。これによって、以下に説明する接続方法における縮径の工程を効率的かつ効果的に行うことができる。また、超電導導体の超電導素線束が偏よることなく、中央に集束した状態で縮径を行うことができるようになる。
【0047】
次に、図4及び図5に示す接続装置20を用いた場合の、図1〜3に示す構成の超電導導体10、10−1の接続方法について説明する。図6〜図18は、本実施形態における接続方法を説明するための図である。なお、図7、図8、及び図13〜図16は、接続に供する超電導導体の、長さ方向の中心線を含む面に沿って切った場合における断面図であり、図9〜図12は、図8に示す超電導導体の、成形型を含む長さ方向に垂直なI−I線に沿って切った場合の断面図である。
【0048】
本実施形態では、図4及び図5に示すように、接続装置20は3つの成形型を有し、それらが互いに120度の角度をなし、保持部材23の側面に沿って等間隔で配置されている場合について説明する。また、本実施形態では、超電導導体10に関する接続方法について説明する。超電導導体10−1の場合も、チャネル孔14を有しない点を除き、超電導導体10に関する接続方法と同じである。
【0049】
最初に、図6に示すように、コンジット13の端部を除去し、超電導素線束11を露出させる。この際、表面に露出したステンレステープ12も必要に応じて除去するか、若しくは可能であればコンジット13内に引っ込めてもよい。また、超電導素線束11の露出した部分におけるチャネル孔14も併せて除去する。この結果、超電導素線束11内には、チャネル孔14の除去に伴う孔部14Aが形成(残留)されることになる。なお、超電導素線11がクロムメッキ、ニッケルメッキなどで被覆されている場合は、この被覆を化学的処理あるいは機械的処理によって適宜除去する。
【0050】
次いで、図7に示すように、露出した超電導素線束11を導電性部材16によって被覆する。図7では、導電性部材16によって、露出した超電導素線束11の全体を覆うようにしているが、少なくとも以下に説明する超電導導体同士の接続に寄与する端部を被覆すれば足りる。
【0051】
次いで、図7に示す状態の超電導導体10を、図4及び図5に示す接続装置20の保持部材23中において、成形型21で画定されるキャビティに位置するようにして配置する。次いで、図示しない油圧ユニット及び油圧制御装置を介して、適当な油圧が油圧シリンダー22に供給され、図8に示すように、成形型21の押圧面21Aで導電性部材16、すなわち超電導導体21の円周面を押圧する。
【0052】
この際、成形型21を用いて、導電性部材16を一度で所定の径となるように縮径するのは困難であるので、図9〜図12に示すように、通常は複数回に分けて縮径を行うことになる。例えば、図9に示すように、最初に3つの成形型21を用いて、導電性部材16の所定箇所を押圧して縮径する。このとき、隣接する成形型21同士は密着せずに離隔するようになるので、隣接する成形型21間にはギャップが生じ、これに基づいて当該箇所は押圧されずに非押圧部16Aが形成されることになる。この非押圧部16Aは、特に図示しないものの、導電性部材16の押圧面(縮径面)に対して凸状となり、突起状物として形成される。
【0053】
縮径された導電性部材16において、上述のような突起状の非押圧部16Aが存在すると、以下に説明するように、接続体に形成された溝部に導電性部材16、すなわち超電導導体10を嵌合させることができず、超電導導体10同士の、接続体を介した接続が困難となる場合がある。
【0054】
したがって、回転機構としての回転ローラ24を用いて保持部材23を所定の角度回転させることにより、導電性部材16の周囲に3つの成形型21を同じ角度回転させ、図10に示すように、縮径した導電性部材16の、隣接する成形型21間に生じるギャップに起因した非押圧部16Aを、成形型21の押圧面21Aで押圧するようにして、導電性部材16を、同じく成形型21の押圧面21Aで再度押圧するようにすれば、非押圧部16Aを消滅させることができる。保持部材23の回転は手動で行うこともできるし、図示しないモータ等によって行うこともできる。
【0055】
なお、図10に示す状態においても、隣接する成形型21間にはギャップが形成されるので、このギャップに基づいて突起状の非押圧部16Aが再度形成されるようになる。したがって、この場合においても、上記同様に、回転ローラ24を用いて保持部材23を所定の角度回転させることにより、導電性部材16の周囲に3つの成形型21を同じ角度回転させ、図11に示すように、縮径した導電性部材16の、隣接する成形型21間に生じるギャップに起因した非押圧部16Aを、成形型21の押圧面21Aで押圧するようにして、導電性部材16を、同じく成形型21の押圧面21Aで再度押圧するようにすれば、非押圧部16Aを消滅させることができる。
【0056】
以上のような操作を繰り返し、非押圧部16Aを消滅させながら導電性部材16、すなわち超電導導体10の縮径を実施した後は、図12に示すように、隣接する成形型21間にギャップが生じないようにして押圧する。この場合は、前記ギャップに起因した非押圧部16Aは形成されず、さらに隣接する成形型21同士が接触するようになるので、最早これ以上の圧力を負荷して導電性部材16を押圧することができなくなるので、導電性部材16、すなわち超電導導体10の縮径は終了する。
【0057】
図9〜図12に示す工程間の移行は、成形型21による導電性部材16の押圧を一旦解放した後に行う。押圧した状態で工程間を移行する、すなわち成形型21を所定の角度回転させると、成形型21の回転に対して巨大な外力が必要となるとともに、成形型21の押圧面21Aによって導電性部材16の表面を傷つけてしまうことになるので、後に説明する接続体の溝部内への嵌合を行うことができず、超電導導体10同士の接合を行うことができなくなる場合がある。
【0058】
なお、本実施形態においては、3つの成形型21を、導電性部材16の周囲において等間隔で配置しているので、図9〜図12に示すように、導電性部材16の縮径を複数回に分けて行う場合に、特に保持部材23のフランジ231に形成したフランジ孔231Aを参照して、図9〜図12における縮径毎の成形型21の配置を簡易に決定することができ、複数回に亘る縮径を効率的に実施することができる。また、隣接する成形型21間に生じるギャップに起因した非押圧部16Aを、成形型21を所定角度回転させ、それらの押圧面21Aで押圧して非押圧部16Aを消滅させ、導電性部材16を再度縮径するという操作において、成形型21の配置を簡易に決定することができるようになる。
【0059】
また、図8からも明らかなように、一般には、成形型21の、超電導導体10の長さ方向における押圧面21Aの長さに比較して、同方向における導電性部材16の長さの方が大きくなっている。したがって、図9〜図12に示す導電性部材16の縮径の操作は、導電性部材16の長さ方向における特定部位の円周面に対して行われるに過ぎない。
【0060】
したがって、本実施形態では、図示しない軸方向移動機構によって導電性部材16を軸方向、すなわちその長さ方向に順次に移動させ、導電性部材16の長さ方向の全体に亘り、図9〜図12に示すような導電性部材16の縮径の操作を実施し、導電性部材16の全体的な縮径を行う。このような縮径は、例えば、図13〜図15に示すような操作に基づいて行う。
【0061】
最初に、図13に示すように、導電性部材16の長さ方向の、コンジット13に近接した部位Aにおいて、例えば図9〜図12に示したような操作によって縮径を実施した後、縮径した部位Aと次に縮径すべき部位Bとが一部重複するようにして成形型21を導電性部材16の長さ方向に移動させ、再度図9〜図12に示すような操作を実施し、部位Bの縮径を行う。続いて、図14に示すように、縮径した部位Bと次に縮径すべき部位Cとが一部重複するようにして成形型21を導電性部材16の長さ方向に移動させ、再度図9〜図12に示すような操作を実施し、部位Cの縮径を行う。同様に、図15に示すように、縮径した部位Cと次に縮径すべき部位Dとが一部重複するようにして成形型21を導電性部材16の長さ方向に移動させ、再度図9〜図12に示すような操作を実施し、部位Dの縮径を行う。
【0062】
以上のような操作を繰り返すことによって、導電性部材16を長さ方向の全体に亘って縮径することができ、図16に示すような、導電性部材16が縮径されてなる超電導導体10を得る。
【0063】
なお、図13〜図16から明らかなように、縮径が終了した部位においては成形型21の押圧によって孔部14Aが押し潰されて消滅する。
【0064】
次いで、図17に示すように、導電性材料からなる接続体31を準備し、この一方の溝部31Aに、図16に示すような導電性部材16が縮径されてなる超電導導体10の、縮径された導電性部材16を嵌合させ、他方の溝部31Aに、同様にして製造した同じ超電導導体10の、縮径された導電性部材16を嵌合させる。これによって、2本の超電導導体10は、接続体31によって電気的及び機械的に接続されるようになる。
【0065】
なお、本実施形態では、溝部31Aに縮径させた導電性部材16を嵌合させた超電導導体10が溝部31Aから離脱しないように、溝部31Aの相当する箇所に、それぞれ溝部32A及び33Aが設けられた上金型32及び下金型33を準備し、超電導導体10の導電性部材16を、接続体31の溝部31Aと、上金型32の溝部32A及び下金型33の溝部33Aとで狭持して、締結するようにしている。この場合、上金型32及び下金型33も導電性材料から構成するようにすれば、超電導導体10同士の電気的接続をより良好な状態で実現することができる。
【0066】
以上のように、超電導導体10における超電導素線束11の、コンジット端部13から露出した部分を導電性部材16で被覆した後、この導電性部材16の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、円弧状に凹んだ押圧面21A、すなわちアール型の押圧面21Aを有する複数(3つ)の成形型21で押圧し、縮径するようにしている。したがって、コンジット13から露出した超電導素線11を構成する複数の超電導線111間の隙間を低減させることができ、超電導素線11の低抵抗化を実現することができるようになる。すなわち、超電導導体10の、接続に供する超電導素線束11の低抵抗化を図ることができる。
【0067】
また、素線毎ではなく、コンジット13から露出した超電導素線11を一括して縮径するので、縮径に伴う低抵抗化の工程を簡易化することができる。
【0068】
さらに、超電導導体10の接続は、超電導導体10を上述のようにして低抵抗化した後、超電導素線束11を被覆する縮径された導電性部材16を、導電性の接続体31に形成された溝部31Aに嵌合させるとともに、同様にして形成した別の超電導導体10の縮径された導電性部材16を、同じく接続体31に形成された溝部31Aに嵌合させ、接続体31を介して間接的に接続するようにしている。したがって、超電導導体10同士を極めて簡易に接合することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
図19〜図26は、本実施形態における超電導導体の接続方法を説明するための図である。なお、接続に供する超電導導体の構成は図1〜図3と同様である。また、接続に使用する装置の構成も基本的には図4及び図5に示す装置と同様であるが、成形型の大きさ及び形状が異なる。
【0070】
すなわち、上記第1の実施形態では、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する1種類の成形型を用いて超電導導体10の導電性部材16の縮径を行ったが、本実施形態では、第1の実施形態で使用した成形型に比較し、より小さい曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する別種の成形型を追加で用いて超電導導体10の導電性部材16の縮径を行う。換言すれば、最初に、上記第1の実施形態で説明したようにして、曲率の大きな円弧状に凹んだ押圧面を有する成形型で超電導導体10の導電性部材16の縮径を行った後、より小さい曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する別種の成形型で再度超電導導体10の縮径を行う。
【0071】
この場合、第1の実施形態で実施した縮径は粗縮径に相当し、本実施形態で行う縮径は精縮径に相当する。すなわち、第1の複数の成形型を用いて導電性部材をある程度まで縮径しておき、次いで、第2の複数の成形型を用いて導電性部材を目的とする径まで縮小する。このように2種類の成形型を用い、2段階で導電性部材の縮径を行うことにより、たとえ導電性部材の径が大きくても、縮径によって目的とする径を高精度に得ることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、上述したように、第1の実施形態で使用した成形型21の押圧面21Aの曲率よりも小さい曲率で円弧状に凹んだ押圧面41Aを有する3つの成形型41を、それらが互いに120度の角度をなし、保持部材23の側面に沿って等間隔で配置して縮径する場合について説明する。
【0073】
最初に、第1の実施形態における図6〜図16に示す工程を実施して、チャネル孔14を取り除いた後の孔部14Aを完全に消滅させることなく、狭小化された孔部14Bが残留するようにして超電導導体10の導電性部材16の粗縮径を行う。
【0074】
次いで、図19及び図20〜図23に示すように、粗縮径された導電性部材16の長さ方向における特定部位の円周方向に対して精縮径を行う。この工程は、基本的には、上記第1の実施形態における図8及び図9〜図12に示す工程と同様にして行う。すなわち、成形型21よりも小さい曲率で凹んだ円弧状の押圧面41Aを有する成形型41を用いて、導電性部材16、すなわち超電導導体10を一度で所定の径となるように縮径するのは困難であるので、図20〜図23に示すように、複数回に分けて縮径を行う。
【0075】
この際、図20に示すように、3つの成形型41を用いて、導電性部材16の所定箇所を押圧して縮径すると、隣接する成形型41同士は密着せずに離隔するようになるので、隣接する成形型41間にはギャップが生じ、これに基づいて当該箇所は押圧されずに非押圧部16Bが形成されることになる。したがって、図21及び図22に示すように、図4及び図5に示す回転ローラ24を用いて保持部材23を所定の角度回転させることにより、導電性部材16の周囲に3つの成形型21を順次所定の角度回転させ、隣接する成形型41間に生じるギャップに起因した非押圧部16Bを順次消滅させながら縮径を行う。
【0076】
次いで、図23に示すように、隣接する成形型41間にギャップが生じないようにして押圧する。この場合は、前記ギャップに起因した非押圧部16Bは形成されず、さらに隣接する成形型41同士が接触するようになるので、最早これ以上の圧力を負荷して導電性部材16を押圧することができなくなるので、導電性部材16、すなわち超電導導体10の縮径は終了する。
【0077】
なお、図20〜図23に示す工程間の移行は、成形型41による導電性部材16の押圧を一旦解放した後に行う。
【0078】
また、本実施形態においても、3つの成形型41を、導電性部材16の周囲において等間隔で配置しているので、図20〜図23に示すように、導電性部材16の縮径を複数回に分けて行う場合に、特に保持部材23のフランジ231に形成したフランジ孔231Aを参照して、図20〜図23における縮径毎の成形型41の配置を簡易に決定することができ、複数回に亘る縮径を効率的に実施することができる。また、隣接する成形型41間に生じるギャップに起因した非押圧部16Bを、成形型41を所定角度回転させ、それらの押圧面41Aで押圧して非押圧部16Bを消滅させ、導電性部材16を再度縮径するという操作において、成形型41の配置を簡易に決定することができるようになる。
【0079】
次いで、図24〜図26に示す工程に従って、導電性部材16の縮径をその軸方向、すなわち長さ方向に亘って行う。この縮径は、第1の実施形態における図13〜図15に示す工程と同様にして行うことができる。
【0080】
最初に、図24に示すように、導電性部材16の長さ方向の、コンジット13に近接した部位A’において、例えば図20〜図23に示したような操作によって縮径を実施した後、縮径した部位A’と次に縮径すべき部位B’とが一部重複するようにして成形型41を導電性部材16の長さ方向に移動させて、再度図20〜図23に示すような操作を実施し、次いで、図25及び図26に示すように、縮径した部位B’と次に縮径すべき部位C’とが一部重複するようにして成形型41を導電性部材16の長さ方向に移動させ、再度図20〜図23に示すような操作を実施し、縮径した部位C’と次に縮径すべき部位D’とが一部重複するようにして成形型41を導電性部材16の長さ方向に移動させ、再度図20〜図23に示すような操作を実施し、部位D’の縮径を行う。
【0081】
以上のような操作を繰り返すことによって、導電性部材16を長さ方向の全体に亘って縮径することができ、図16に示すような、導電性部材16が縮径されてなる超電導導体10を得る。
【0082】
次いで、第1の実施形態と同様に、図17に示すように、導電性材料からなる接続体31を準備し、この一方の溝部31Aに、図16に示すような導電性部材16が縮径されてなる超電導導体10の、縮径された導電性部材16を嵌合させ、他方の溝部31Aに、同様にして製造した同じ超電導導体10の、縮径された導電性部材16を嵌合させる。これによって、2本の超電導導体10を、接続体31によって電気的及び機械的に接続させる。
【0083】
また、必要に応じて、溝部31Aに縮径させた導電性部材16を嵌合させた超電導導体10が溝部31Aから離脱しないように、溝部31Aの相当する箇所に、それぞれ溝部32A及び33Aが設けられた上金型32及び下金型33を準備し、超電導導体10の導電性部材16を、接続体31の溝部31Aと、上金型32の溝部32A及び下金型33の溝部33Aとで狭持して、締結するようにすることもできる。
【0084】
したがって、本実施形態では、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができることに加えて、2種類の成形型を用い、2段階で導電性部材の縮径を行うことにより、たとえ導電性部材の径が大きくても、縮径によって目的とする径を高精度に得ることができるという作用効果をも奏することができる。
【0085】
なお、本実施形態は、押圧面の曲率が異なる2種類の成形型21及び41を用い、2段階で導電性部材16の縮径を行うようにしているが、3種類以上の複数の成形型を用い、3段階以上で導電性部材16の縮径を行うこともできる。
【0086】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能
である。
【符号の説明】
【0087】
10,10−1 超電導導体
11 超電導素線(超電導素線束)
12 ステンレス製テープ
13 コンジット
14 チャネル孔
16 導電性部材
20 超電導導体の接続装置
21,41 成形型
21A,41A 押圧面
22 油圧シリンダー
23 保持部材
24 回転ローラ
25 支持台
31 接続体
31A 溝部
32 上金型
33 下金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に冷媒通路のチャネルを形成した超電導素線束をコンジット内に収容してなる超電導導体の接続方法において、
前記超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を、前記チャネルを欠く状態において導電性部材で被覆する被覆工程と、
導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する複数の成形型を用い、これら複数の成形型により形成されるキャビティ内に前記導電性部材を配置する配置工程と、
前記複数の成形型の前記押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する縮径工程と、
縮径した前記導電性部材と、上記工程で形成された別の超電導導体の超電導素線束の周囲を被覆する縮径した導電性部材とを、導電性の接続体に形成された溝部に嵌合させて、電気的及び機械的に接合する接合工程と、
を具えることを特徴とする、超電導導体の接続方法。
【請求項2】
超電導導体における超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を導電性部材で被覆する被覆工程と、
導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する複数の成形型を用い、これら複数の成形型により形成されるキャビティ内に前記導電性部材を配置する配置工程と、
前記複数の成形型の前記押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する縮径工程と、
縮径した前記導電性部材と、上記工程で形成された別の超電導導体の超電導素線束の周囲を被覆する縮径した導電性部材とを、導電性の接続体に形成された溝部に嵌合させて、電気的及び機械的に接合する接合工程と、
を具えることを特徴とする、超電導導体の接続方法。
【請求項3】
前記縮径工程は、前記複数の成形型を、前記導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させ、縮径した前記導電性部材の、前記複数の成形型の隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部を、前記複数の成形型の前記押圧面で押圧する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項4】
前記縮径工程は、前記複数の成形型の少なくとも一部が前記導電性部材の先に縮径した部分と重複するようにして、前記複数の成形型を前記導電性部材の軸方向において移動させ、前記複数の成形型による前記導電性部材の縮径を、前記導電性部材の軸方向において連続して行う工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項5】
前記配置工程において、前記複数の成形型は、前記導電性部材の周囲において等間隔で配置し、前記縮径工程において、前記複数の成形型の等間隔配置を保持した状態で、前記複数の成形型の前記押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項6】
前記複数の成形型は、第1の複数の成形型及び第2の複数の成形型であり、前記第1の複数の成形型は第1の曲率で円弧状に凹んだ第1の押圧面を有し、前記第2の複数の成形型は、前記第1の曲率よりも小さい第2の曲率で円弧状に凹んだ第2の押圧面を有し、
前記縮径工程は、前記第1の複数の成形型の前記第1の押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する第1の縮径工程、及び前記第1の縮径工程の後、前記第2の複数の成形型の前記第2の押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径する第2の縮径工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項7】
前記第1の縮径工程は、前記第1の複数の成形型を、前記導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させ、縮径した前記導電性部材の、前記第1の複数の成形型の隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部を、前記第1の複数の成形型の前記第1の押圧面で押圧する工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項8】
前記第1の縮径工程は、前記第1の複数の成形型の少なくとも一部が前記導線性部材の先に縮径した部分と重複するようにして、前記第1の複数の成形型を前記導電性部材の軸方向において移動させ、前記第1の複数の成形型による前記導電性部材の縮径を、前記導電性部材の軸方向において連続して行う工程を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項9】
前記第2の縮径工程は、前記第2の複数の成形型を、前記導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させ、縮径した前記導電性部材の、前記第2の複数の成形型の隣接する成形型間に生じるギャップに起因した非押圧部を、前記第2の複数の成形型の前記第2の押圧面で押圧する工程を含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項10】
前記第2の縮径工程は、前記第2の複数の成形型の少なくとも一部が前記導線性部材の先に縮径した部分と重複するようにして、前記第2の複数の成形型を前記導電性部材の軸方向において移動させ、前記第2の複数の成形型による前記導電性部材の縮径を、前記導電性部材の軸方向において連続して行う工程を含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項11】
前記配置工程において、前記第1の複数の成形型は、前記導電性部材の周囲において等間隔で配置し、前記第1の縮径工程において、前記複数の成形型の等間隔配置を保持した状態で、前記第1の複数の成形型の前記第1の押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径することを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項12】
前記配置工程において、前記第2の複数の成形型は、前記導電性部材の周囲において等間隔で配置し、前記第2の縮径工程において、前記複数の成形型の等間隔配置を保持した状態で、前記第2の複数の成形型の前記第2の押圧面で前記導電性部材を押圧して縮径することを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一に記載の超電導導体の接続方法。
【請求項13】
超電導導体における超電導素線束の、コンジット端部から露出した部分を被覆してなる導電性部材の円周方向において所定の間隔で離隔配置され、所定の曲率で円弧状に凹んだ押圧面を有する、前記導電性部材を縮径するための複数の成形型と、
前記複数の成形型に対して、前記導線性部材を縮径するための押圧力を負荷するための圧力供給手段と、
前記複数の成形型及び前記圧力供給手段を保持する円筒形状の保持部材と、
を具えることを特徴とする、超電導導体の接続装置。
【請求項14】
前記複数の成形型を、前記導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させるための回転機構を具えることを特徴とする、請求項13に記載の超電導導体の接続装置。
【請求項15】
前記複数の成形型の少なくとも一部が前記導線性部材の先に縮径した部分と重複するようにして、前記複数の成形型を前記導電性部材の軸方向において移動させるための、軸方向移動機構を具えることを特徴とする、請求項13又は14に記載の超電導導体の接続装置。
【請求項16】
前記複数の成形型は、第1の複数の成形型及び第2の複数の成形型であり、前記第1の複数の成形型は第1の曲率で円弧状に凹んだ第1の押圧面を有し、前記第2の複数の成形型は、前記第1の曲率よりも小さい第2の曲率で円弧状に凹んだ第2の押圧面を有することを特徴とする、請求項13に記載の超電導導体の接続装置。
【請求項17】
前記回転機構は、前記第1の複数の成形型を、前記導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させることを特徴とする、請求項16に記載の超電導導体の接続装置。
【請求項18】
前記回転機構は、前記第2の複数の成形型を、前記導電性部材の周囲に少なくとも1回以上所定の角度回転させることを特徴とする、請求項16又は17に記載の超電導導体の接続装置。
【請求項19】
前記軸方向移動機構は、前記第1の複数の成形型の少なくとも一部が前記導線性部材の先に縮径した部分と重複するようにして、前記第1の複数の成形型を前記導電性部材の軸方向において移動させることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一に記載の超電導導体の接続装置。
【請求項20】
前記軸方向移動機構は、前記第2の複数の成形型の少なくとも一部が前記導線性部材の先に縮径した部分と重複するようにして、前記第2の複数の成形型を前記導電性部材の軸方向において移動させることを特徴とする、請求項16〜19のいずれか一に記載の超電導導体の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−210421(P2011−210421A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74875(P2010−74875)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】