説明

超電導素子及び関連する作成プロセス

【課題】従来の欠点を克服した超電導素子及び超電導素子を作成するプロセスを提供する。
【解決手段】理論密度の値の少なくとも85%に等しい密度を有する超電導材料を含む溝によって形成された少なくとも1つの超電導軌道を含む、非超電導材料で作られた剛体の支持材を含む超電導素子、及び該素子を作成するプロセスについて説明する。本発明はまた、超電導素子の考えられる用途にも関し、上記超電導素子を含む超電導デバイスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導素子及び関連する作成プロセスに関する。
【0002】
本発明は、超電導材料の技術分野に含まれる。
【背景技術】
【0003】
超電導材料を使用する様々な工業用途では、これらの材料が、特定の電気技術的機能に加え、熱的及び機械的安定性に適した特性を有することが保証されなければならない。
【0004】
最新技術では、通常、超電導材料は、ワイヤ、厚い又は薄いストリップ、或いは塊状体の形で作成される。通常1ミリメートル未満の厚みのワイヤ及びストリップは、金属又は電気絶縁型の非超電導材料で作られた支持材と共に組み立てられる。支持材の機能は、適当な電気的及び熱的特性に加え、必要時には適当な機械的強度の特性を超電導材料に与えることである。しかしながら、超電導ワイヤ又はストリップと支持材との組立体では、超電導電流の経路に利用できるワイヤ又はストリップの断面が実質的に減少する。極端な場合には、上記断面と支持されるワイヤ又はストリップの断面全体との比率が、当初の超電導ワイヤ又はストリップの値の20〜30%未満の値に低下して、伝えられる超電導電流の密度が大幅に低下することがある。
【0005】
文献には、非超電導性支持材で囲まれた超電導インサートからなる漏電リミッタも記載されている。しかしながら、これらの漏電リミッタは、その応用分野が低電流に限定される。実際これらは、多結晶形の超電導酸化物などの超電導材料を使用して作成された超電導インサートをベースとしており、これらの超電導酸化物は、結晶粒間に障壁が存在するため、これらを高磁場などの他の電気技術用途などにも使用できるようにする限界電流密度を有していない。具体的には、これらの超電導酸化物の限界電流密度は、通常の電磁石又は従来の永久磁石を使用して生成される磁束密度に匹敵する、或いはこれに勝る経済的な磁束密度を生成することができず、この磁束密度は、通常1テスラ未満の値に制限される。
【0006】
ワイヤ又はストリップとは異なり、塊状体の形においては、超電導電流が超電導材料の全ての部分を通過することができる。一般にこれらは、様々なミリメートルの厚みを有するプレート、シリンダ、リング又はパイプの形で作成される。超電導材料が、例えば(9K未満の温度において超電導材料となる)Pb及びNbなどの展性を有するものである場合、これらを薄いシート又はラミナの形で作成することができる。
【0007】
10Kよりも高い温度における用途では、超電導塊状体は、
‐例えば、イットリウム及びバリウムをベースとするセラミック銅酸塩(約90Kの臨界温度Tcまで超電導性)、又は例えばSr2CuO3.4などのストロンチウムをベースとする銅酸塩(Tc=95K)、或いはビスマス、ストロンチウム及びカルシウムをベースとする銅酸塩(Tc=110K)などのセラミック酸化物、
‐例えば、FeTe0.5Se0.5(Tc=13K)又はBa0.60.4Fe2As2(Tc=38K)或いはFeAsNdO0.85(Tc=51K)などの鉄ベースの材料、
‐二ホウ化マグネシウム(Tc=39K)、
‐例えばNb3Sn(Tc=18.7K)、Nb3Al(Tc=21.3K)又はNb3Ge(Tc=23.6K)などの金属間化合物、からなることができる。
【0008】
限界電流密度の面では、高度に圧縮された形の、特に高い結晶完全性の状態(単結晶状態)にあるときの塊状材料によって最高の性能が得られる。
【0009】
しかしながら、高度に圧縮された形であるとともに単結晶状態にある超電導塊状材料の作成は容易でない。実際に、結晶粒の成長及び配向プロセスはかなりの長期にわたる複雑なプロセスであり、これには特に結晶化プロセス中における注意深い温度制御が必要であり、このプロセスによる超電導性最終生産物の最大寸法は2、3センチメートルに限定される。
【0010】
塊状に形成され10Kよりも高い臨界温度を有する上記超電導材料のうち、二ホウ化マグネシウム(MgB2)は、多結晶形態においても実用的に採用できることが知られている。この理由として、この材料内における超電導電流の通過が、結晶粒間の境界を通過すること及び結晶粒の配向自体に大きく影響されないことが挙げられる。
【0011】
二ホウ化マグネシウムのさらに特殊な特性は、これを高密度に圧縮された形で作成できることである。
【0012】
しかしながら、10Kよりも高い臨界温度を有する他の超電導材料と同様に、二ホウ化マグネシウムは脆弱な材料であり、従って二ホウ化マグネシウムをその多くの用途において効果的に使用できるようにするための適切な機械的補強も必要とされる。例えば問題となる電流が数千アンペアであり、磁束密度が一般に1テスラよりも高い高磁場用の磁石内などの、特に強力な電磁力の存在を特徴とする用途では、適切な機械的強度が特に不可欠である。
【0013】
しかしながら、ほとんどの用途では、超電導材料にかかわらず、(約1センチメートル又はそれ以上の)かなりの厚みを有する塊状の超電導性最終生産物の使用は不便である。この理由として、一方では、超電導電流が超電導性最終生産物の一部(多くは表面上)にのみ分布する傾向があるという事実が挙げられ、他方では、機能中に超電導状態から通常の電導状態への大量の熱エネルギーの瞬間的放出を伴う遷移が生じる際に、大きな厚みにより超電導材料の急速な冷却が妨げられるという事実が挙げられる。
【0014】
剛体の支持材上にインサートを有する超電導デバイスの最新技術において知られているさらなる技術的問題点は、公知の技術ではこれらのデバイスを常に所望の形及び寸法に形成できるわけではないという事実にある。
【0015】
特に密度の高いセラミック材料の焼結体を得るためには、及び大気圧におけるこの材料の自発的焼結が熱力学的理由で材料の種類によって妨げられるときには、ホットプレス緻密化技術を使用することができる。これらの技術は、事前圧縮したセラミック粉末に、通常の焼結温度(材料の絶対溶融温度の約3/4)で圧力を印加して焼結プロセスに役立てるステップを含む。一般に、温度範囲は約700℃〜約1600℃であり、圧力は数百気圧に達し得る。圧力を印加する手順に応じて、a)一軸圧縮、b)静水圧圧縮、が存在し得る。一軸圧縮では、粉末容器及び一般的にはグラファイトで作られた圧縮ピストンを有するプレス機が使用され、これを例えば誘導により、又は炭化ケイ素で作られた特定の抵抗器で加熱することができる。この技術の主な不利点は容器の機械的抵抗性によるものであり、これがプレスされる断片の寸法を著しく制限する。
【0016】
従って、一軸圧縮は、二つの空間方向において寸法が極端に異なる最終生産物(例えば、プレート又はラミナ)を、圧力の印加方向と直角方向の大きな変形が無くなるように作成するのに適している。
【0017】
静水圧圧縮は、焼結される粉末に印加される圧力を伝えるための流体として高温気体を使用する。静水圧圧縮は、ガスから断片への圧力転写を支援するために、金属シース、又は高処理温度で可塑化するガラス質材料の層のいずれかで覆われた、圧縮する断片を挿入する大型の圧力密閉チャンバを備えた機械内で行われる。この技術を以てしても、生産できる超電導性最終生産物の寸法は数十cmに制限される。
【0018】
上述の技術の限界を考慮すれば、高い機械的抵抗性を提供する、例えば金属又はセラミック材料で作られた剛体の支持材上に超電導インサートをインレー加工したデバイスの作成にこれらの技術がほとんど役に立たないことは明白である。特に、一軸技術では、非平面構造の支持材を有するデバイスを作成することは不可能である。
【0019】
ホットプレスを必要とする材料の場合、非平面基材上に一軸圧力を加える場合のように、粉末に対する変形の直接伝達が基材の構造によって妨害されるので、インレーの形により粉末への十分かつ単純な圧力の印加が妨げられる。静水圧の場合も、インレーの露出面上及びこれと直角方向の粉末を覆う材料の変形しか有効でないので、基材が粉末にかかる圧力伝達の大きな障害となる。
【0020】
最新技術では、剛体の支持材上に超電導インサートを有するデバイスを作成するために、溶融緻密化技術という手段にも訴えている。例えば、米国特許第5,426,408号には、導電性材料で作られた片側と絶縁材料で作られた反対側とを有する平坦な支持材が記載されている。インサートは、ビスマス又はイットリウム銅酸化物をベースにした超電導材料で作られる。このインサートは、支持材の表面上に超電導材料を分布(スクリーン印刷)させ、その後超電導材料の融点で熱処理(溶融緻密化)を行うことにより作成される。米国特許第5,426,408号にはまた、超電導材料で満たされた支持材内の孔によって互いに接続された複数の上記デバイスからなる超電導磁気モジュールも記載されている。これらの超電導接続部は、第1のデバイスのインサートを第2のデバイスのインサートに電気的に接触させる。しかしながら、米国特許第5,426,408号に記載されるデバイス及び磁気モジュールの超電導インサートの厚みは非常に限定されており、50〜200μmの範囲内で変化する。さらに、イットリウム銅酸化物ベースの超電導体の場合、上述の技術を使用してインサート及び超電導接続部で得られる超電導材料の密度は、せいぜいその理論密度の約70%に等しい程度である。このことは、例えば、J.O.Willis他による、IEEE磁気学部会会報、第25巻、第2号、1989年3月、2502〜2504ページの発表により当業者に公知である。
【0021】
欧州特許第0503447号の文献には、非超電導性剛体支持材上の超電導インサートからなる超電導デバイスが記載されている。この場合にもまた、導電性インサートは、いわゆる「溶融緻密化」技術によって得られる。しかしながら、上述したように、この技術では密度の高い超電導材料のインサートを得ることができない。欧州特許第0503447号に記載されるデバイスもまた、高電流密度を伝送する能力が限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第5,426,408号
【特許文献2】欧州特許第0503447号
【特許文献3】特許出願MI2002A001004号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】J.O.Willis他による、IEEE磁気学部会会報、第25巻、第2号、1989年3月、2502〜2504ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、最新技術で明らかになった欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の第1の対象は、非超電導材料で作られた剛体の支持材を含む超電導素子に関し、上記支持材は、その理論密度の値の少なくとも85%に等しく、好ましくは少なくとも88%に等しい真密度の超電導材料を含む溝によって形成された少なくとも1つの超電導軌道を含む。
【0026】
本発明の第2の対象は、超電導素子を作成するプロセスに関し、このプロセスは、
a)非超電導材料で作られた剛体の支持材の表面上に少なくとも1つの溝を作成するステップと、
b)この溝の内部に超電導材料の粉末前駆体を挿入し、これを理論密度値の少なくとも50%に等しい真密度値にまで圧縮するステップと、
c)前駆体粉末に接触させて、或いは粉末を含む溝に隣接する位置に少なくとも1つの固体反応剤を位置決めするステップと、
d)反応剤と粉末を含む溝とを、反応剤が液化し、その後前駆体粉末内部に浸透して溝内に超電導軌道を形成するまで加熱処理にかけるステップと、を含む。
【0027】
本発明の特徴をより良く理解するために、説明では次の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による超電導素子の上部から見た概略図である。
【図2】密閉可能な蓋を有する反応容器内に封入された本発明による超電導素子の垂直断面の概略図である。
【図3】本発明による超電導素子のさらなる実施形態の上部から見た概略図である。
【図4A】超電導フィラメントを使用した同じ超電導素子の2つの超電導軌道間の考えられる接続モードの概略図である。
【図4B】2つの異なる超電導素子に属する2つの超電導軌道を接続する超電導フィラメントによって互いに接続された2つの超電導素子を含む超電導デバイスの概略図である。
【図5】らせん型のインレーを有する超電導素子の概略図である。
【図6】実施例1の超電導素子において4.2Kで計測した、(テスラで示す)磁束密度Bに対する(アンペアで示す)臨界電流Icの傾向を示すグラフである。
【図7A】平行な織り交ぜたインレーからなるストリップの形の超電導素子の概略図を上部から見た平面図である。
【図7B】図7Aの平面A−A’に沿った断面図である。
【図7C】図7Aの平面B−B’に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の対象である超電導素子は、非超電導材料で作られた剛体の支持材を含み、その表面上には断面が数mm2の超電導材料からなる少なくとも1つの導電性軌道がエッチングされる。
【0030】
図1に示す実施形態を参照すると、本発明の対象である超電導素子1は、この例では円板である支持材2からなり、その表面上に同心リングの形で配列された円形超電導軌道3を含む。
【0031】
超電導素子1の超電導軌道3は、理論密度の値の85%以上の密度を有しているものであればあらゆる超電導材料で作成することができる。密度は88%よりも高いことが好ましい。好ましい超電導材料は、MgB2、FeNdAsO0.85、FeTe0.5Se0.5、Sr2CuO3.4である。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態は、導電性軌道が超電導材料としてMgB2を含む超電導素子であるが、この理由は、MgB2からなる軌道は、最新技術におけるその他の公知の超電導材料よりも非常に単純な方法で高度に圧縮された形に作成することができ、通常の多結晶形内に粒界が存在することに起因して電流密度が限定されることに関する問題を有していないからである。
【0033】
本発明の解釈上、「高度に圧縮された、又は高度に密度が高くされた」という用語は、密度が理論密度の値の85%以上の材料のことを意味する。
【0034】
高度に圧縮された形の超電導体の薄型インレーからなる導電性軌道は、他の種類の圧縮度が少ない超電導材料で作成された軌道を有する同じ超電導素子と比較して、超電導素子へ、より高い電流伝達特性を与える。また、この有用な軌道の厚みが高密度に由来して減少することで、超電導材料がより迅速に冷却されるとともに、常電導状態への遷移中に超電導ストリームの分散の破壊性がより低くなる。
【0035】
インレーを有する超電導素子のさらなる利点は、これを支持材の表面周りにらせん状にインレー加工された軌道で作成することもできる点である。らせん形インレーにより、ワイヤの編み込みをシミュレートした巻線を形成できるようになる。この形態の超電導巻線は、高磁場を有する磁石において、充電時又は交流での使用で発生するような電流トランジェントが存在するときの不安定性の現象を低減させるために特に有用である。
【0036】
インレーを有する超電導素子の別の利点は、これを互いに重なり合う平行な超電導軌道の群の交点からなるストリップの形で作成できる点である。超電導軌道を有するストリップは、支持材の溝の形成法、例えば剪断又はレーザー切断などにより作成することができる。超電導素子の全体の作成プロセスは連続して行うことができ、溝内に前駆体物質を装入する動作と、反応剤を配置する動作と熱処理とが連続的して行われる。このようにして、ストリップをあらゆる所望の長さに作成することが可能である。
【0037】
本発明の対象である超電導素子の支持材は、非超電導材料で作られたいずれかの幾何学的な形を有する剛体の支持材である。
【0038】
支持材の形は、超電導素子を使用する用途に関して選択される。支持材は、2mm〜30mm、好ましくは3〜20mmの範囲の厚みを有するプレート、ディスク、リング、ストリップ又は中空シリンダであることが好ましい。その形に関わらず、支持材の表面全体に貫通又は非貫通溝を作成することが可能であり、例えばプレート又はディスクの形の平面支持材の場合には、支持材の両方の主要面、すなわちより大きな表面の側に溝を刻むことができ、中空シリンダ型支持材の場合には、空洞の内面及び外面の両方に軌道をインレー加工することができる。本発明の以下の説明では、「支持材の表面」という用語は、溝のインレー加工に利用できる支持材の全表面のことを意味する。
【0039】
支持材の材料は非超電導材料であり、この材料は、低導電性、高力学特性、及び超電導素子を得るための反応温度よりも400℃を超える高さの溶融温度を有することが好ましい。支持材の作成に適した材料の例として、非磁性ステンレス鋼、鉄/ニッケル合金、ニッケル及び高ニッケル含量(すなわち50%よりも高いニッケル含量)のニッケル/銅合金、チタン、これらの材料の銅との複合材料、さらに亜鉛テルル化合物などの1100℃よりも高い融点を有する金属間化合物が挙げられる。
【0040】
電磁石用途を見込まれる超電導素子のほとんどの場合、支持材の材料は非磁性でなければならない。これらの場合、AISI 316鋼又はモネル型のニッケル‐銅合金で作られた支持材を使用することが好ましい。
【0041】
支持材を形成する材料は、超電導材料のストリップ内、すなわち超電導軌道内の溝の内部に存在する前駆体粉末の変換を得るために適用される処理に対して耐性がなければならない。前駆体の超電導材料への変換は、前駆体と1又はそれ以上の付加反応剤との間の高温化学反応を含む処理によって行われる。粉末形状の前駆体が溝に挿入され、好ましくは塊状体の形のその他の反応剤が、溝の外側の加熱の結果液化したら前駆体と接触するような位置に置かれる。
【0042】
本発明の解釈上、「前駆体」という用語は、適当な物理化学処理を受けた場合にその結晶性質を変質させて、高密度になるとともに電流の通過に有用な超電導特性を得る粉末形状の固体材料を示す。前駆体を超電導材料の第1の成分とすることもでき、これが第2の成分との化学反応によって超電導材料に変換される。
【0043】
図2は、本発明による超電導素子を得るために使用できる最終生産物の垂直断面を概略的に示している。上述の変換に必要な、支持材2及び前駆体を含む溝(軌道3)に対して重ね合わされた固形物の形の反応剤6が、前駆体の超電導材料への変換処理を行うために密閉された蓋5を有する容器4(反応容器)の内部に挿入される。
【0044】
使用する反応剤に対して支持材の材料を適切に選択することより、さらに支持材2上に不活性耐熱材料の薄い塗膜(図示せず)を施すことにより、支持材と前駆体との間、又は支持材と前駆体の超電導材料への変換に必要なその他の反応剤との間の望ましくない反応を回避することができる。施される膜の厚みは約0.5〜20ミクロン程度であることが好ましい。
【0045】
支持材の表面及び溝の内面の両方を被覆するために、支持材上に溝を形成した後に塗膜が施される。
【0046】
塗膜の材料は、導電性軌道を形成する超電導材料に関して選択される。酸化物型の電気絶縁材料で作成された塗膜、好ましくは、MgO、SiO2、Al23、NiO、Fe23、TiO2、ZnO、ZrO2、Y23又はこれらの化合物からなる膜、或いはFe、Ni又はTiの金属タイプの塗膜を使用することが好ましい。
【0047】
最新技術で公知の技術を使用して膜を施すことができる。酸化技術、又は例えば化学蒸着(CVD)と呼ばれる技術などの蒸気相における材料の堆積による塗膜の付加が特に好ましい。
【0048】
支持材の表面上の溝は、ミリング、ターニング、カッティング又は電食インレー加工などの、最新技術で公知の従来の加工技術で形成することができる。溝は、様々な形及び寸法で形成することができる。支持材上に形成される溝は、一般に深さ/幅(D/W)比が0.5以上であり、これが1を超えることが好ましく、2を超えることがさらに好ましい。支持材の厚みが2〜20mmの範囲の場合、溝の幅は3mm以下であることが好ましく、その深さは1.5から9mmに及ぶ。時には、超電導素子の電磁的要件により良く対応するために、線形の展開部に沿って可変部分を有する溝を作成することが有用である。しかしながら、特定の適用要求を満たすために、超電導軌道の深さを最終ステップで0.5未満のD/W値に低減させることが可能である。
【0049】
超電導素子の支持材は、開放タイプ又は閉鎖タイプの超電導軌道を有することができる。「閉鎖」軌道とは、例えば図1の軌道3の溝又は図3の軌道3及び軌道7の溝の組み合わせのような、支持材上に閉じた線を定める溝から開始して得られる超電導軌道のことである。
【0050】
「開放」軌道とは、支持材上の開いた線、すなわち、例えば図3の軌道3のポイント8とポイント9、又はポイント8’とポイント9’を接続する線のような、支持材の異なるポイントで終端する2つの端部を有する線を定める溝から開始して得られる導電性軌道のことである。好ましい実施形態では、開放軌道はらせん形、すなわちらせん構造の展開を伴う。
【0051】
本発明の対象である超電導素子が閉鎖軌道を含み、該軌道を電流が通過する場合、超電導素子は、印加のための関心時間によらずほぼ一定の磁化を有する永久磁石として機能する。
【0052】
超電導素子が開放軌道を含み、該軌道を電流が通過する場合、超電導素子は、軌道を通過する電流強度に関連する可変磁場を生じる。
【0053】
閉鎖軌道はあらゆる形を有することができる。閉鎖軌道は、同じ支持材の表面の異なる領域(例えば、平坦な支持材の2つの反対側の面)に位置する複数の開放軌道で構成することもでき、これら開放軌道は、超電導フィラメントによって、又は支持材の2つの反対側の面に存在する場合には超電導材料で満たされた支持材内の孔によって互いに接続される。以後、この超電導材料で満たされた孔を超電導パススルーとしても示す。超電導パススルーは、2つの異なる溝に属する任意の2つのポイントを連結する。
【0054】
本発明による超電導素子は、1又はそれ以上の開放及び/又は閉鎖導電性軌道を同時に含むことができる。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明の対象である閉鎖軌道を有する超電導素子が、1又はそれ以上の円形の同心軌道を含む(図1)。第2の好ましい実施形態では、超電導素子が、平坦な支持材の両側又は円筒形支持材の両壁に沿ってインレー加工されたらせん形の開放軌道を有し、該軌道が超電導パススルーによって互いに接続される。
【0056】
本発明のさらなる対象は、各々が少なくとも1つの開放軌道を有する第1及び第2の超電導素子を含む超電導デバイスに関し、第1の超電導素子の第1の開放軌道が、1又はそれ以上の超電導フィラメントにより第2の超電導素子の第2の開放軌道に接続される。場合によっては、超電導デバイスを形成する超電導素子の支持材を互いに電気的に接続することができる。
【0057】
超電導素子の開放軌道を、1又はそれ以上の超電導フィラメントにより互いに接続することができる。これらの超電導フィラメントは、溝内に挿入された超電導材料の前駆体粉末間にフィラメントの端部を捕捉し、これらのフィラメントの存在下で前駆体‐超電導体変換反応を行うことにより、軌道の超電導材料と一体化される。詳細には、接続される超電導軌道が同じ超電導素子に(図4B)、又は異なる超電導素子に属することができ、すなわち超電導デバイスを形成する(図4A)。後者の場合、超電導素子を互いに直列に又は並列に接続することができる。
【0058】
本発明の超電導デバイスにより大きな機械的強度を与えるために、例えば非超電導材料で作られた支持材間の接続スタンドにより、超電導素子を互いに接続することができる。同様に、超電導素子に接続された超電導フィラメントを機械的に補強するために、超電導素子の支持材と同じ支持材上、又は追加の支持材上に位置する特定の溝内に超電導フィラメントを挿入することができる。反応容器内部で液化される反応剤の塊状体を、前駆体を含む溝内部のみならず超電導フィラメントを含む溝内部にも浸透できるようなポイントに配置することにより、超電導フィラメントを溝内部の適所に保持することができる。前駆体‐超電導体変換反応の終わりには、超電導フィラメント内に浸透した液体反応材が固化してフィラメントを支持材にしっかりと固定する。
【0059】
本発明の対象である超電導デバイス内部の2つの超電導素子の第1の接続例を図4Aに示す。2つの超電導素子ES及びES’が、超電導素子ESの開放軌道3の端部9を第2の超電導素子ES’上に位置する開放軌道3’の端部9’に接続する超電導フィラメント12により接続される。
【0060】
2つの超電導素子の第2の接続例を図4Bに示す。図4Bは、同じ超電導素子ES上に位置する2つの開放軌道3及び3”を接続する超電導フィラメント12によって得られる接続を示している。 図4A及び図4Bには、超電導フィラメントを機械的に補強するための接続スタンドは示していない。
【0061】
上述の接続は、本発明の対象である2又はそれ以上の超電導素子を接続する様々な考えられる方法を例示したものにすぎず、従って本発明の保護範囲を限定するものであると見なすべきではない。
【0062】
本発明による超電導材料のさらに好ましい実施形態を図3に示す。図3の超電導素子では、同じ導電性軌道3の2つのポイント8及び8’が、サーマル超電導スイッチとして機能する超電導フィラメント13によって接続され、この超電導フィラメント13は、軌道3よりもさらに細い(全体の超電導断面積が、軌道3の断面積よりも少なくとも20%小さい)、好ましくは非誘導モードの状態に巻かれて配列された1又はそれ以上の超電導フィラメントで構成される。サーマル超電導スイッチ13を、軌道3の断面よりも小さい適当な断面を有する超電導軌道に置き換えることもできる。軌道3はまた、2つのスイッチ10及び10’を備えた、ポイント11及び11’の2つの外部電流源にポイント9及び9’で接続される。
【0063】
サーマル超電導スイッチ13がホットの場合、すなわちスイッチの温度がこれを構成する超電導材料の臨界温度よりも高い場合、スイッチが高い電流抵抗を与え、軌道3は実質的に開放軌道のように挙動する。これらの条件下で、ポイント11及び11’の電流源のスイッチ10及び10’を閉じることにより、軌道3に外部から電流を供給することができる。
【0064】
サーマル超電導スイッチ13がコールドである場合、すなわちスイッチの温度が臨界温度よりも低い場合、軌道3及びこれに接続するサーマル超電導スイッチ13が閉鎖軌道のように挙動して、電流が全体の軌道‐サーマル超電導スイッチの回路を途切れなく循環できるようになる。この構成では、すなわち電流が循環している場合には、スイッチ10及び10’を開くことにより、ポイント11及び11’の電流源を介した電流の供給を停止することができる。
【0065】
本発明の超電導素子で得ることができる接続の汎用性は大きな利点を提供する。具体的には、同じ支持材上の互いに接続された、場合によっては2又はそれ以上の超電導軌道も有する2又はそれ以上の半導体素子の直列又は並列接続により、予定される特定の用途に最も適したトポロジー及び長さを有する超電導デバイスを作成することが可能となる。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、超電導素子が、らせん形にインレー加工された軌道を有する支持材で構成される。らせん型のインレー加工された軌道を有し、軌道がいくつかの数の旋回後に閉じられた超電導素子の例を図5に示す。図5の超電導素子は、リング形状の長方形断面を有する支持材を含む。中心Oのパススルーリングのメジアン軸に対して傾斜した直線の形の軌道(斜行軌道)が、長方形の大きい方の面上にインレー加工される。支持材の2つの大きな面の一方に属する斜行軌道の傾斜は偏差角βに等しく、逆の面に属する軌道は180−βに等しい偏差角を有する。傾斜した軌道は、半径r1を有する支持材の内周と半径r2を有する外周とに沿ってそれぞれ配置された2つの連続するポイントP1i及びP2iを接続する。軌道の必要ならせん形の連続性を得るために、ポイントP1iは、支持材の同じ面上の対応するポイントP2iと接続されるだけでなく、超電導パススルーを通じて、支持材の反対面上にインレー加工された対応する超電導軌道とも接続される。
【0067】
軌道のらせん形の展開がリング形の支持材全体を均一に被覆して閉じることを、すなわちらせん形の展開の出発点及び到達点が一致することを確実にするために、支持材の2つの反対側の、及び対応する接続パススルーの同じポイント(図5のP10)から出発する2つの軌道からなる1つの渦の範囲を定める図5の角度α、及びリングのメジアン軸に対する軌道の方向を定める上述の角度βは、以下の関係を満たさなければならない。

【0068】
支持材の面上のポイントP1i及びP2iの位置は、下記の方法で示すことができる。リング全体を包む1つのらせんの渦の数をnで定め、mは各々が前のらせんから角度α*だけシフトし、第1のらせんの出発点に再結合するのに必要ならせんの整数を示す。角度α*は、n及びmを使用して、α*=360/[n*m]の関係にある。
【0069】
従って、軌道によって接続される各ポイントP1i及びP2iの極座標P(r,θ)は以下のように定められる。
1i=(r1,α*(1/2+i/m))、
2i=(r2,iα/m)、
式中i=0,1,2,...,n*m。
【0070】
傾斜直線の形の軌道により接続される一対のポイント間の距離は次式に等しい。

【0071】
本発明の別の実施形態では、超電導素子を、所望の長さを有するストリップの形で作成することができる。図7A〜図7Cを参照すると、ストリップ13の形の超電導素子は少なくとも3つの重なった層を含む。最も外側の層14及び16は、溝20の内部に位置する平行な超電導軌道3でインレー加工された支持材からなる(図7Aには、支持材14上に存在する空の溝20のみを示している)。支持材14及び16は、中心の金属支持材15の2つの反対側に接触して位置し、第1の層14の超電導軌道3が第2の層16の超電導軌道3に対して異なる方向に沿って展開するように配向される。3つの層14、15及び16を重ね合わせることで、織り交ぜた超電導軌道を有する超電導素子が形成される。中心の金属支持材15は、反応材を収容するためのキャビティ17と、層14の超電導軌道を層16の超電導軌道に接続するように適切に配列された接続孔18(パススルー孔)と、3つの層のリベットポイント19とを有する。
【0072】
上述したように、本発明のさらなる対象は、上述した種類の超電導素子を作成するプロセスに関し、上記プロセスは、
a)非超電導材料で作られた剛体の支持材の表面上に少なくとも1つの溝を作成するステップと、
b)この溝の内部に超電導材料の粉末前駆体を挿入し、これを理論密度値の少なくとも50%に等しい真密度値にまで圧縮するステップと、
c)前駆体粉末に接触させて、或いは粉末を含む溝に隣接する位置に少なくとも1つの固体反応剤を位置決めするステップと、
d)反応剤と粉末を含む溝とを、反応剤が液化し、その後前駆体粉末内部に浸透して溝内に超電導軌道を形成するまで加熱処理にかけるステップと、を含む。
【0073】
ステップa)は、剛体の支持材の表面上の少なくとも1つの溝の形成を含み、該溝は、前駆体の挿入及び関連する超電導材料への変換後に超電導材料の軌道を形成する。
【0074】
プロセスのステップb)は、溝を超電導材料の前駆体で充填するステップと前駆体の圧縮とを含む。
【0075】
前駆体は、通常、室温で固体の粉末形状となる材料からなる。前駆体は溝内に置かれ、超電導材料への変換反応を受けてから、前駆体の理論密度の値の少なくとも50%に等しい真密度を有するようになるまで圧縮される。この粉末の圧縮により、溝を完全に満たすとともに密度が理論値の85%よりも高く、好ましくは88%よりも高い超電導材料がステップd)の変換反応から得られるようになる。
【0076】
本発明の解釈上、真密度とは、粉末の質量と、粉末を挿入する溝内の粉末粒子間の隙間を含む粉末で占められた全体の容積との間の比率のことを意味する。
【0077】
圧縮は、従来の技術及び当分野で粉末圧縮に使用する加圧器(例えば一軸又は静水圧冷間圧縮、ローリング)によって行うことができる。
【0078】
超電導材料の前駆体の例として、
‐場合によってはサブミクロンカーボン粉末、サブミクロンSiC粉末、或いはMg‐Zn又はMg‐Co合金粉末、を加えたホウ素粉末、
‐Cu‐Sr合金粉末と過酸化ストロンチウム粉末との混合物、
‐鉄粉と、好ましくはネオジムである希土類(ランタノイド)に属する元素の粉末との混合物、
‐場合によっては硫黄を加えたFe及びTeの粉末の混合物、
‐場合によっては硫黄を加えたFe及びSeの粉末の混合物、が挙げられる。
【0079】
特に好ましい前駆体は、機械的に活性化された粉末形状の微結晶ホウ素であり、これを液体金属マグネシウムの存在下で適当な反応条件により超電導材料MgBr2に変換することができる。
【0080】
プロセスのステップc)は、少なくとも1つの固体反応剤(以後固形物とも称する)、すなわち粉末前駆体と反応して超電導材料を形成することができる化合物の配置を含む。1又は複数の固形物は、支持材の溝の上部で前駆体粉末と接触して、又は適当な温度及び圧力条件下での加熱により固形物が液体状態になると、液体反応剤が溝内に浸透して前駆体に接触できるように溝に隣接して位置する。溝内に含まれる前駆体粉末と液体反応剤との間の化学反応により超電導材料が、従ってインレー加工された超電導軌道が支持材内に形成される。
【0081】
Sr2CuO3.4の形の超電導軌道を有する超電導素子が作成される場合、ステップb)において、Cu‐Sr合金と過酸化ストロンチウム粉末との粉末混合物からなる前駆体が使用され、ステップc)において、固形物は過酸化ストロンチウムからなる。
【0082】
FeNdAsO0.85の形の超電導素子が作成される場合、プロセスのステップb)において、Fe及びNd粉末の混合物からなる前駆体が使用される。ステップc)において、使用される固体反応体は、AsとAs酸化物との複合体からなる。
【0083】
FeTe0.5Se0.5の形の超電導軌道を有する超電導素子が作成される場合、プロセスのステップb)において、Fe及びTe粉末の混合物、又はFe及びSe粉末の混合物からなる前駆体が使用される。ステップc)において、使用される固体反応体は、Se、Te又はSe‐Te合金からなることができる。
【0084】
支持材の溝に含まれる液体反応剤の圧縮された前駆体粉末内への浸透によりステップd)において発生する化学反応は、密閉容器からなる閉環境内で行われる。一般的には、この反応は、前駆体で満たされた溝と、溝の外側に位置する固形物の形のその他の反応剤とを有する支持材を含む容器全体を、400℃〜1100の範囲の温度で30分〜30時間の範囲にわたる持続時間で加熱することにより行われる。
【0085】
Sr2CuO3.4の軌道の場合、加熱を400〜1000℃の範囲の温度で1時間〜20時間の持続時間で行うことが好ましい。この処理の後、超電導材料の所望の化学量論的酸素含量を達成するために、人工雰囲気中(酸化性又は還元性)で、室温〜300℃の範囲の温度で1〜10時間にわたるさらなる熱処理が行われる。
【0086】
FeNdAsO0.85の軌道の場合、加熱を900〜1200℃の範囲の温度で30分〜30時間の範囲の持続時間で行うことが好ましい。
【0087】
FeTe0.5Se0.5の軌道の場合、加熱を500〜900℃の範囲の温度で30分〜10時間の範囲の持続時間で行うことが好ましい。
【0088】
一般に、容器の密閉は、内部の空気をアルゴンなどの不活性ガスに置換した後に行われる。場合によっては、例えば超電導材料Sr2CuO3.4又はFeNdAsO0.85が作成されるときには、密閉前の容器の雰囲気の不活性化は不必要である。
【0089】
前駆体を超電導特性を有する材料に変換(ステップd)するために、1又はそれ以上の剛体の支持材と、異なる支持材を接続する考えられる超電導フィラメントとを収容するための適切な形及び寸法を有する反応容器が使用される。
【0090】
容器を構成する材料は、使用する前駆体の種類に関して選択される。容器の材料は、ステップd)の動作条件下で前駆体及びその他の反応剤と反応しないようなものでなければならない。MgB2の形の軌道を有する超電導素子を得るためには、約1000℃の温度にまで耐性のあるいずれかの材料、例えば鋼、好ましくはステンレス鋼で容器を形成することができる。
【0091】
この場合も、ステップd)中の望ましくない反応を避けるために、反応容器の内部を特定の不活性かつ耐熱性の材料の保護層で被覆することができる。Sr2CuO3.4の形の軌道を有する超電導素子を作成するためには、容器を、鋼、チタン又はニッケル基合金などの約1100℃の温度にまで耐性のある材料で構成する必要があり、これらの材料の保護は酸化雰囲気内における表面酸化によって得ることができる。FeNdAsO0.85の形の軌道を有する超電導素子を作成するためには、容器を約1200℃の温度にまで耐性のある材料、例えばチタン又はステンレス鋼で構成する必要があり、この場合、容器の内部をSiO2又はAl23からなる塗膜で被覆する必要がある。塗膜は、例えばCVD技術を使用して施すことができる。
【0092】
同様に、材料FeTe0.5Se0.5からなる超電導軌道を有する超電導素子を得る場合、例えば膜を形成する元素の真空堆積により、SiO2の薄い塗膜又はZnTe型の薄い合金膜で被覆された鋼を容器の材料として使用することができる。
【0093】
上述したように、本発明の特に好ましい実施形態では、超電導素子が、高度に圧縮したMgB2を含む超電導軌道を有する。
【0094】
高度に圧縮したMgB2を含む超電導軌道を有する超電導素子の場合、剛体の支持材は、特にタイプAISI 304及びAISI 316の鋼である非磁性鋼と、鉄/ニッケル合金と、チタンと、例えばモネルなどのニッケル及び銅をベースとする合金とを含む群から選択された材料で作成される。支持材は、非磁性鋼、チタン又はモネルで作成されることが好ましい。
【0095】
溝の内分及び溝間に電気絶縁性保護塗膜が必要な場合、この塗膜を、MgO、Fe酸化物、Ni酸化物、Ti酸化物などの酸化物化合物として真空蒸着することができる。例えば、銅支持材を使用する場合にこれを適用することができる。
【0096】
MgB2を含む導電性軌道を形成するために、プロセスのステップb)は、ステップa)において支持材上に形成された1又は複数の溝を、機械的に活性化され、場合によってはサブミクロンSiC粉末又はサブミクロンカーボン粉末或いはMg‐Zn合金又はMg‐Co合金粉末を付加された粉末形状の結晶性又はアモルファスホウ素で充填するステップを含む。アモルファスホウ素の機械的活性化は、例えば回転シリンダを有するミル内で粉砕することにより得られる。この活性化動作によって粒間集合体の寸法が減少して、添加粉末がより良く分散し、溝の充填時の圧縮粉末の真密度、すなわち充填密度が増加する。
【0097】
数ミリメートルの寸法を有し、好ましくは純度が99.4%以上の結晶性ホウ素フレークを反復粉砕することにより、機械的に活性化された結晶性ホウ素を得ることができる。
【0098】
例えばオレオダイナミックプレスの「ほとんど静的」の条件下で、或いは回転シリンダ間の粉砕による「動的」条件下で圧縮し、高負荷を印加することにより粉砕を行うことができる。この活性化によって、より微細な粒径(100マイクロメートル未満、好ましくは40ミクロン未満)を含む粉末が取得されることに加え、ホウ素結晶粒子の露出表面が酸素及び湿気などの不純物によって汚染されにくくなり、従って粉末が、ホウ素との反応によりMgB2を生み出す液体マグネシウムに浸透しやすくなる。
【0099】
詳細には、活性化された結晶性ホウ素粉末は、平均体積径が10〜70ミクロンの範囲の粒子を含むことができるように選択される。
【0100】
プロセスのステップb)において、機械的に活性化されたホウ素粉末が、結晶性ホウ素の理論密度(菱面体結晶ホウ素の理論密度:2.35g/cm3)よりも50%高い真密度が得られるまで溝の内部で圧縮される。
【0101】
溝を満たす粉末形状のホウ素はまた、混合物の状態で、20%原子のマグネシウムまでの量の金属マグネシウムを含むこともできる。この場合にも、支持材上の溝の内部に位置する前駆体は、上記で定めた真密度要件を満たす必要がある。
【0102】
上述したホウ素とマグネシウムとの混合物の代替として、前駆体は、機械的に活性化されたホウ素粉末と、粒径が30ミクロン未満の、好ましくは10ミクロン未満のMgB2とを機械的に混合することにより得られる混合物からなることができる。MgB2粉末のモル量は、ホウ素粉末のモル以下、好ましくはホウ素粉末のモルの50%未満であり、より好ましくはホウ素粉末のモルの30%未満である。支持材上の溝内部に圧縮された、ホウ素粉末とMgB2との混合物の真密度は、1.2g/cm3よりも高くなければならず、1.4g/cm3よりも高いことが好ましい。
【0103】
MgB2を含む超電導軌道を得るために、プロセスのステップc)において、純度が99%を超える1又はそれ以上の結晶性金属マグネシウム体が使用される。1又は複数のマグネシウム体の位置は、ステップd)の動作条件下での後続するマグネシウムの液化に続き、液体マグネシウムが、活性化されたホウ素粉末に浸透し、又は上述したホウ素粉末を含むその他の混合物に浸透し、これに反応してMgB2を超電導材料として含む溝内に導電性軌道を形成するような位置でなければならない。
【0104】
ホウ素で満たされた溝の近くに位置するマグネシウム体の全体的質量は、0.5よりも大きい原子比Mg/Bpowderを有するようにされる。
【0105】
好ましい実施形態では、マグネシウム体が1〜5mmの厚みを有するラミナの形をとり、溝が前駆体で満たされた後でこのラミナが支持材に対して重ねられる(図2、ラミナ6)。
【0106】
或いは、高純度マグネシウム体と共に、マグネシウムと、例えばGa、Sn、In及びZnなどのマグネシウムよりも融点の低い1又はそれ以上の金属との合金体を使用することも可能であり、該低融点金属は、マグネシウムの大部分に対応する合金の共融点の組成に対応する重量パーセンテージ未満のいずれかの量で存在する。
【0107】
上記マグネシウム合金を使用して得られるMgB2ベースの軌道は、高純度金属マグネシウムを使用して得られるものと同様の超電導特性を有する。
【0108】
純マグネシウムの融点よりも融点の低いこれらの合金を使用することにより、超電導材料からなる前駆体の変換反応(ステップd)がより迅速に及び/又はより低温で行われるようになり、このため、これらの合金の使用は、本発明の対象である超電導素子の作成プロセスのコストを削減させるための、及び剛体の支持材の熱膨張/収縮の影響を低減させるための有用な技術であることが判明している。
【0109】
その後、超電導材料の前駆体で満たされた溝を有する剛体の支持材は、1又は複数のマグネシウム体とともに前述した種類の特定の容器に移される。容器は、不活性ガスの雰囲気又は酸素含量が20原子%よりも低い雰囲気を容器内部に封じ込めるために密閉される。容器内部の雰囲気の圧力は、次のステップd)の全体処理中に液相の形のマグネシウムの存在を確実にするようなものにされる。容器の密閉は、最新技術で公知の技術及び手段を使用して行われる。例えば、金属製容器の場合、閉鎖蓋を溶接することにより密閉を得ることができる(図2、蓋5)。
【0110】
MgB2を含む軌道を有する超電導素子を作成するためには、前駆体を超電導材料に変換するステップd)が、容器内部に密閉された支持材の少なくとも700℃の温度での熱処理を含む。
【0111】
熱処理は少なくとも30分間行われる。ステップd)は、750〜900℃の範囲の温度で1〜5時間行われることが好ましい。
【0112】
容器内に存在するガス雰囲気による温度及び圧力に起因して(塊状体又はラミナの形の)固体マグネシウムが液化し、溝内に存在する前駆体の粉末に浸透する。液体マグネシウムと(場合によってはマグネシウム粉末又はMgB2粉末と混合された)活性化された結晶性ホウ素との間の反応により、支持材上に形成された軌道内部に超電導MgB2のインレーが形成されるようになる。
【0113】
本発明の対象である超電導素子を得るための支持材の熱処理は、例えば加熱炉内で容器全体を加熱することによって行われる。
【0114】
フェーズd)の処理の終わりには、容器が冷却されて開かれ、MgB2の軌道を有する超電導素子が取り出される。
【0115】
その後、超電導素子は、特に再固化した液体マグネシウムの(又は、MgB2とは異なる超電導材料の軌道の場合には、その他の再固化した液体反応剤の)残渣である支持材上の残留反応物質を除去され、ターニング、ミリング、カッティング及びグラインディング作業によって適当な寸法にされる。
【0116】
本発明の対象であるプロセスを、僅かな修正により、1又はそれ以上の超電導フィラメントに接続された1又はそれ以上の超電導軌道を有する超電導素子の作成に使用して、超電導の臨界温度よりも低い温度で、接続領域の電気抵抗が10-8オーム未満、好ましくは10-9オーム未満であり、接続領域が少なくとも103Aを伝送できるようにすることもできる。接続に使用できる超電導フィラメントは、反応浸透プロセスから得られるような中空ファイバの形のMgB2フィラメントであることが好ましい。この目的に使用できるファイバの例は、特許出願MI2002A001004号に記載されているものである。
【0117】
超電導軌道と超電導フィラメントとの間の接続を得るために、2つの異なる方法で動作を行うことが可能である。第1のモードでは、上記超電導フィラメントの端部を被覆する非超電導材料が除去されて超電導フィラメントが溝内部に挿入され、溝が超電導材料の前駆体で満たされる。第2のモードでは、超電導フィラメントの前駆体スレッド、すなわち粉末前駆体と同じ材料からなるスレッドが、外側金属シースを前駆体粉末が現れるまで除去されて溝内部に挿入され、溝が超電導材料の前駆体粉末で満たされる。その後、前駆体で満たされた溝内に挿入された超電導フィラメント又は前駆体フィラメントを有する支持材が、不活性ガスの雰囲気又は酸素含量が20原子%未満の雰囲気内で反応容器内部に密閉される。第1の作成方法では、反応容器に1又はそれ以上の追加の密閉可能な開口部を備えることができ、これに支持材の外に突き出た超電導フィラメントの一部を通すことができる。このようにして、フィラメントの軌道内部に挿入された部分のみがプロセスのステップd)の処理を受ける。
【0118】
説明したプロセスにより、高い超電導電流密度の伝送を保証できるMgB2及びその他の高密度超電導体をベースにした軌道を有する超電導素子を作成できるようになる。
【0119】
本発明の対象である超電導素子は、材料、形及び使用できる状態の最終生産物の全体の体積が同じである類似の塊状超電導体よりも高い電磁的、機械的及び熱的性能を有する。超電導材料は、高度に圧縮された形ではあるが薄い厚みで形成されるので、本発明の超電導素子には、塊状体の形の超電導体によくある表面上の超電導電流の分散問題が無い。さらに、この薄い厚みは、使用中の超電導材料の冷却に役立つ。MgB2ベースの軌道を含む超電導素子の作成はまた、他の形態の超電導材料に比較して実施が容易であるという追加の利点も提供する。
【0120】
本発明の超電導素子のさらなる利点は、例えば従来の永久磁石と置き換えて定常磁場を得るのに特に適した閉鎖軌道を有する超電導素子の用途において明らかになる。この場合、超電導塊状体とは異なり、超電導素子を高励起磁場に置く必要なくこれらを充電することができる。素子は、上述のような素子の軌道に接続されたサーマル超電導スイッチのシステムによって必要な電流を供給する電流発生器により、はるかに容易に充電される。
【0121】
本発明の対象である、実質的に電気抵抗がゼロの超電導軌道を有する超電導素子の使用はまた、エネルギー消費量を減少させた電磁デバイスの製造を可能とするという利点も提供する。
【0122】
本発明の対象である超電導素子は、様々な技術分野における数多くの産業上の用途を有する。
【0123】
本発明はまた、本発明による以下のような超電導素子の使用法にも関する。
‐超電導システムのための電流リード、又は電気ネットワーク間の高密度電流伝送ロッド、
‐高効率電動機又は発電機のための磁石、
‐電流制限器、
‐電気エネルギーを蓄積するための磁石、
‐変圧器コイル、
‐廃水浄化のための、又は硫黄性物質から炭塵を浄化するためのデバイス内の磁石、
‐反磁性極低温冷却のための可変磁場磁石、
‐高効率磁気誘導加熱装置、
‐回転システムのための、極低摩擦浮揚磁気ベアリング、
‐材料を磁気分離するための、又は異方性反磁性物質を配向するための高磁場磁石、
‐浮上型車両のための超電導リニアモータ、
‐磁気共鳴装置内に静磁場を生じるための磁石、
‐粒子加速器のための磁石、
‐核融合の研究のための大型磁石、
‐マイクロウェーブ領域内で電磁波を送信及び受信するためのアンテナ。
【0124】
特に、電気技術の分野において、開放軌道を有する超電導素子をステータ内に設置して、閉鎖軌道を有する超電導素子をロータ内に設置することにより、本発明の対象である超電導素子を高効率電気モータ又は発電機の製造に使用することができる。本発明の対象である超電導素子を使用して得ることができる高磁場により、現在最新技術で公知のものに比較して、同じ出力でより小型かつ軽量なモータの製造が可能となり、またこれを非常に急速に加速させることもできる。
【0125】
本発明の対象である超電導素子を使用して、例えば電気ネットワークの漏電の管理において特に有効な電流制限器を作成することもできる。
【0126】
環境分野では、廃水の浄化プロセス及び硫黄性物質の炭塵の浄化に本発明の対象である超電導素子を有利に使用して、数テスラの磁気誘導量を有する大型の永久磁石を形成することができる。
【0127】
以下の実施形態例は、本発明を説明する目的のみで提供するものであり、添付の特許請求の範囲により定義される保護範囲を限定するものであると見なすべきではない。
【0128】
(実施例1)
本発明による超電導素子を以下のように作成した。0.5〜1mmの幅及び4.5mmの深さを有する溝を、60mmの直径を有するディスクの形の鋼製支持材の表面上に電気浸食により形成した。溝は、20mmの内径から開始し、これが54mmの外径に達するまで7回に巻かれたらせんの形で支持材上に開放軌道を生成するようにして形成した。結晶性ホウ素からなる前駆体粉末で溝を満たした。回転シリンダを有するミル内で粉砕することにより、ホウ素粉末を機械的に活性化した。その後、このように粉砕した粉末を、40マイクロメートルの網目の篩で篩分した。粉末は、25ミクロンの平均直径を有していた。粉末を、1.2g/cm3に等しい真密度に達するまで溝内部でロールにより手動で圧縮した。圧縮粉末で満たされた溝を有する支持材に、99.9%の純度及び7mmの厚みを有する金属マグネシウムラミナを重ね合わせた。このようにして得られた支持材を、内部を100マイクロメートルの厚みを有するNbの層で被覆された(合計厚み200ミクロン)鋼製容器に移した。各々が100ミクロンの厚みを有する2つのNbラミナを、鋼製容器の底部及び蓋の下に配置した。容器内への支持材の移送は大気中で行い、その後容器内にアルゴンの流れを通し、次に容器を内部に同じ雰囲気を有した状態で密閉した。容器を加熱炉内で900℃の温度で3時間加熱した。冷却したら、MgB2の開放らせん軌道を有する超電導素子を容器から取り出し、印加した磁束密度Bに対する臨界電流Icを4.2Kで計測することにより、その超電導挙動を図6で示すように検証した。
【0129】
(実施例2)
70mmの直径及び8mmの厚みを有するディスクの形の鋼製支持材を超電導素子として使用し、この上に2つのらせん溝(寸法:幅1.5mm、深さ2.5〜3.0mm)を面の両側にディスクの中心から周辺に向けて等方向に16回展開させて、すなわち支持材の垂直軸に2つのらせんを同じ方向で巻き、インレー加工して超電導永久磁石を作成した。2つの中心を互いに接続するとともにらせん溝の2つの端部を接続するために支持材内に位置する3mmの直径を有する2つの孔を介して2つの溝を連結させた。
【0130】
実施例1と同じ結晶性ホウ素粉末を支持材の溝及び孔に挿入し、1.2g/cm3に等しい真密度に達するまで手動で圧縮した。実施例1で使用したものと同じ種類の2つのマグネシウムラミナを、ディスクの両側で互いに向かい合わせて支持材上に配置した。次に、このようにして作成した支持材を鋼製容器内に挿入し、実施例1で説明した手順と同じ手順に従って、アルゴン雰囲気内で900℃の温度で3時間熱処理した。その後、閉鎖らせん軌道を有するMgB2の超電導素子を容器から取り出した。詳細には、パススルー超電導体によって直列に連結された2つの溝が閉鎖軌道を形成し、これは、内部に等回転方向の電流を生み出し、この結果等方向磁場を生じる。
【0131】
超電導磁石内部に超電導素子を配置することにより、超電導素子内で電流が誘起され、励起磁石がスイッチオフされた後であっても永続的に保持された。超電導軌道内で誘起された電流は、12Kの温度で、2つのらせんの一方の中心に対応する、超電導素子の表面から1mmの地点で、1.15テスラの捕捉永続磁束密度を計測できたほどのものであった。比較として、本発明の超電導素子に比べて3倍大きな超電導材料の量を含むほどの寸法を有するMgB2の塊状ディスクは、同様の温度条件及び充電方式のもとで0.90テスラの捕捉磁束密度を保持した。
【0132】
(実施例3)
8mmの厚みと60mmの直径を有するディスクの形の非磁性AISI 316鋼製支持材からなる超電導素子を使用して、その両面に0.5mmの厚み、52mm〜10mmの範囲の直径及び3〜4mmの深さを有する同心円、及び5mmの直径を有する中央シリンダの形の19本のMgB2の超電導閉鎖軌道をインレー加工した。超電導素子を実施例2のように作成し、この捕捉磁束密度を中心の表面から1mmの距離で計測した。21Kの温度で1テスラの永続的磁束密度が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非超電導材料で作成された剛体の支持材を含む超電導素子であって、
前記支持材が、理論密度の値の少なくとも85%に等しい、好ましくは少なくとも88%に等しい真密度を有する超電導材料を含む溝で形成された少なくとも1つの超電導軌道を含む、ことを特徴とする超電導素子。
【請求項2】
前記超電導軌道が、MgB2、FeNdAsO0.85、FeTe0.5Se0.5、Sr2CuO3.4からなる群から選択された、好ましくはMgB2である超電導材料で作成された、ことを特徴とする請求項1に記載の超電導素子。
【請求項3】
前記超電導軌道が、
(i)好ましくは円形形状を有する閉鎖軌道、及び/又は、
(ii)らせん形の延長部を有する閉鎖又は開放軌道、及び/又は、
(iii)直線タイプの開放軌道、及び/又は、
(iv)バンドタイプのねじれた延長部を有する開放軌道、
であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超電導素子。
【請求項4】
平坦な支持材の両面上、又は円筒形支持材の対向壁に沿ってインレー加工された1又はそれ以上の開放らせん軌道を含み、該軌道が、超電導材料で満たされた支持材内の孔を通じてともに接続された、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超電導素子。
【請求項5】
前記剛体の支持材の表面及び前記溝の表面が、好ましくはMgO、SiO2、Al23、NiO、Fe23、TiO2、ZnO、ZrO2、Y23又はこれらの化合物から選択された材料の膜、或いはFe、Ni又はTiの膜である電気絶縁材料の塗膜で被覆された、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導素子。
【請求項6】
前記剛体の支持材が、非磁性ステンレス鋼、鉄/ニッケル合金、ニッケル及びニッケル含量が50%を超えるニッケル/銅合金、チタン、これらの材料と銅との化合物、融点が1100℃を超える金属間化合物、亜鉛‐テルル化合物から選択された材料で作成された、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超電導素子。
【請求項7】
前記導電性軌道の2つのポイントが、サーマル超電導スイッチの機能を有する超電導フィラメントを介して接続された、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超電導素子。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の第1及び第2の超電導素子を含む超電導デバイスであって、
第1及び第2の超電導素子の各々が、少なくとも1つの開放軌道を有し、
前記第1の超電導軌道の第1の開放軌道が、1又はそれ以上の超電導フィラメントを介して前記第2の超電導素子の第2の開放軌道に接続された、ことを特徴とする超電導デバイス。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の超電導素子を含む磁石。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の超電導素子を、
‐超電導システムのための電流リード、又は電気ネットワーク間の高密度電流伝送ロッド、
‐高効率電動機又は発電機のための磁石、
‐電流制限器、
‐電気エネルギーを蓄積するための磁石、
‐変圧器コイル、
‐廃水浄化のための、又は硫黄性物質から炭塵を浄化するためのデバイス内の磁石、
‐反磁性極低温冷却のための可変磁場磁石、
‐高効率磁気誘導加熱装置、
‐回転システムのための、極低摩擦浮揚磁気ベアリング、
‐材料を磁気分離するための、又は異方性反磁性物質を配向するための高磁場磁石、
‐浮上型車両のための超電導リニアモータ、
‐磁気共鳴装置内に静磁場を生じるための磁石、
‐粒子加速器のための磁石、
‐核融合の研究のための大型磁石、
‐マイクロウェーブ領域内で電磁波を送信及び受信するためのアンテナ、
として使用する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の超電導素子を作成するプロセスであって、
a)非超電導材料で作られた剛体の支持材の表面上に少なくとも1つの溝を作成するステップと、
b)前記溝内部に超電導材料の粉末前駆体を挿入し、これを理論密度値の少なくとも50%に等しい真密度値にまで圧縮するステップと、
c)前記前駆体粉末に接触させて、或いは前記前駆体粉末を含む前記溝に隣接した位置に少なくとも1つの固体反応剤を位置決めするステップと、
d)前記反応剤が液化し、その後前記前駆体粉末内部に浸透して前記溝内に超電導軌道を形成するまで、前記反応剤と前記前駆体粉末を含む前記溝とを加熱処理にかけるステップと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項12】
ステップb)が、ステップa)において前記支持材上に作成された前記1又は複数の溝を、
‐場合によってはサブミクロンカーボン粉末、サブミクロンSiC粉末、或いはMg‐Zn又はMg‐Co合金粉末、を加えたホウ素粉末、
‐Cu‐Sr合金粉末と過酸化ストロンチウム粉末との混合物、
‐鉄と好ましくはネオジムである希土類(ランタノイド)に属する元素との粉末の混合物、
‐場合によっては硫黄を加えたFeとTeとの粉末の混合物、
‐場合によっては硫黄を加えたFeとSeとの粉末の混合物、
からなる群から選択された超電導材料の前駆体で満たすステップを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
ステップb)が、ステップa)において前記支持材上に作成された前記溝を、機械的に活性化された結晶性又はアモルファスホウ素粉末からなる前駆体で満たすステップを含む、ことを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップc)において、前記反応剤が、99%を超える純度の、好ましくはラミナ形状の結晶性金属マグネシウム体である、ことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップd)が、前記支持材に挿入された前記前駆体及び容器内部に密閉された前記反応剤の、少なくとも700℃の温度における少なくとも30分間の、好ましくは750℃から900℃の温度の間までの1〜5時間の熱処理を含む、ことを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップc)において、前記反応剤が、
‐前記前駆体がCu‐Sr合金粉末と過酸化ストロンチウム粉末との混合物である場合、Sr2CuO3.4の超電導軌道を得るために過酸化ストロンチウム、
‐前駆体がFe及びTeの粉末の混合物或いはFe及びSeの粉末の混合物である場合、FeTe0.5Se0.5の超電導軌道を得るためにテルル、セレン又はテルル‐セレン合金、
‐前駆体が鉄及びネオジムの粉末の混合物である場合、FeNdAsO0.85の超電導軌道を得るためにAsとAs酸化物との混合物、
の固形物であることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップd)が、前記支持材内に挿入された前記前駆体及び容器内部に密閉された前記反応剤の、400℃から1100℃の間の温度における30分から30時間の間の可変時間の熱処理を含む、ことを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップd)が、前記支持材内に挿入された前記前駆体及び容器内部に密閉された前記反応剤の、
‐FeNdAsO0.85の超電導軌道を得るために、900℃から1200℃の間の温度における30分から30時間の間の可変時間の熱処理、
‐FeTe0.5Se0.5の超電導軌道を得るために、500℃から900℃の間の温度における30分から10時間の間の可変時間の熱処理、
‐Sr2CuO3.4の超電導軌道を得るために、400℃から1000℃の間の温度における1時間から20時間の間の熱処理、
を含み、続いて、酸化又は還元雰囲気内での室温から300℃の間の温度における1時間から10時間の間の第2の熱処理を含む、ことを特徴とする請求項16に記載のプロセス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公開番号】特開2011−14539(P2011−14539A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−153397(P2010−153397)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(502353778)エディソン ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】