説明

超音波によって活性化可能なエマルション及びその製造方法

本発明は、水溶液中のエマルションにおいて、20μm未満の直径(D)を有し、第1乳化剤(4)によってカプセル化された、活性剤と、超音波によって活性化可能な液体状態の気体前駆体(3)とを含む、ミクロ粒子(1)を含む、超音波によって活性化可能なエマルションであって、前記ミクロ粒子(1)が、前記気体前駆体(3)中のエマルションにおいて5μm未満の直径(d)を有するナノ粒子(5)を包含し、前記ナノ粒子(5)の各々が、前記活性剤を包含し、第2乳化剤(7)によってカプセル化された、内部液体(6)を含み、前記気体前駆体が前記活性剤の拡散に対するバリアを形成している、エマルションに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波によって活性化可能なエマルション及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波によって活性化可能なエマルションが現在知られている。例えば、これらは局所的活性化の目的で人体のターゲット領域へと薬物を輸送するために使用される。このような周知のエマルションは、例えば、界面活性剤でカプセル化され、かつ輸送されるべき薬物を含有する、懸濁液状態の気体前駆体のミクロ粒子を含有する水溶液の形態であり得る。使用の間、この溶液は患者に注射され、循環系に拡散した後、ターゲット領域に超音波を集束させることによってミクロ粒子がターゲット領域において破裂する。その結果、ミクロ粒子中に含まれた薬剤は、ターゲット領域のみに放出され、ミクロ粒子の残りの部分は患者の代謝によって排せつされる。
【0003】
この種のエマルションの例は、特許文献1(US−A−2002/159952(Unger))に記載されている。
しかし、この種のエマルションの欠点は、ミクロ粒子によって輸送される活性剤がこれらのミクロ粒子の表面に存在するため、輸送される活性剤の量が制限される。
【0004】
特許文献2(WO2007/010442)には、気体前駆体とは異なる相を形成し、油に溶解された疎水性活性剤と、超音波によって活性化可能な液体の気体前駆体とを含有する、高分子膜によってカプセル化されたミクロ粒子が開示されている。しかし、この種のミクロ粒子は、実際に得ることが非常に困難であるかまたは不可能でさえあり、活性剤の最適な投入量が許容されず、かつ活性剤の不随意な放出のリスクが存在するようである。最後に、この文献では、疎水性活性剤を使用する必要があり、この技術の利用が大幅に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/159952号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/010442号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Holze et al,“Biocompatible surfactants for water−in−fluorocarbon emulsions”, Lab Chip, 2008, 1632−1639, the Royal Society of Chemistry 2008
【非特許文献2】Duffy et al,“Rapid prototyping of microfluidic systems in Poly(dimethylsiloxane)”, Analytical Chemistry, Vol.70, No. 23, Dec 1, 1998, pp.4974−4984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の特定の目的は、上記の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的のため、本発明は、水溶液中のエマルションにおいて、20μm未満の直径を有し、第1乳化剤によってカプセル化された、活性剤(マーカーまたは薬物)と、超音波によって活性化可能な液体状態の気体前駆体とを含む、ミクロ粒子を含む、超音波によって活性化可能なエマルションであって、
前記ミクロ粒子が、気体前駆体中のエマルションにおいて、5μm未満の直径を有するナノ粒子を包含し、ナノ粒子の各々が、活性剤を包含し、第2乳化剤によってカプセル化された、内部液体を含み、前記気体前駆体が活性剤の拡散に対するバリアを形成している、エマルションを提案する。
【0009】
従って、活性剤は、もはや単純なエマルションの形態ではなく、二重エマルションの形態で輸送される。
【0010】
これらの手段によって、活性剤はミクロ粒子の全体(ナノ粒子内部)を通して輸送されるため、輸送される活性剤の量が増加する。
【0011】
さらに、本発明のエマルションの安定性は特に高く、製造と使用との間の製品の貯蔵寿命が延長される。
【0012】
また、液体状態にある気体前駆体が活性剤の拡散に対するバリアとして機能するため、超音波で照射されるターゲット領域の外部にある患者の組織内に活性剤が不随意に放出されることが避けられる。
【0013】
最後に、二重エマルションは、疎水性活性剤と同様に容易に親水性活性剤を運ぶことができるため、本発明の二重エマルションは非常に順応性がある。
【0014】
本発明のエマルションの多様な実施形態では、以下の1つまたは複数を採用することができる:
−気体前駆体がフッ素化油である;
−気体前駆体がペルフルオロカーボンである;
−気体前駆体がペルフルオロヘキサン及び/またはペルフルオロペンタンである;
−第2乳化剤がフッ素系界面活性剤を含む;
−フッ素系界面活性剤がポリ(ペルフルオロプロピレングリコール)カルボキシレートを含む;
−フッ素系界面活性剤がポリ(ペルフルオロプロピレングリコール)カルボキシレート、ペルフルオロカーボン、及び水酸化アンモニウムから得られる;
−活性剤がマーカーと、薬物とからなる群から選択される;
−活性剤が光学色素と、医療画像用の造影剤とからなる群から選択されるマーカーである;
−活性剤がフルオレセインを含む光学色素である;
−活性剤が癌の化学療法薬剤と、メッセンジャーRNAとからなる群から選択される治療薬である;
−内部液体が水性であり、活性剤が親水性である;
−内部液体が油であり、活性剤が疎水性である;
−内部液体が水性であり、活性剤が疎水性であり、内部液体中のエマルションにおいて1μmより小さな粒子内部に封入されている;
−ミクロ粒子の直径が10μm未満であり、有利には約5マイクロmであり、ナノ粒子の直径が4μm未満であり、有利には約0.3から1μmである。
【0015】
本発明の別の目的は、上記で定義した超音波によって活性化可能なエマルションの製造方法であって、
(a)一方は活性剤を含む内部液体と、他方は液体形態の気体前駆体及び第2乳化剤との間の一次エマルションを調製して、気体前駆体中のエマルションにおける前記ナノ粒子(5)を得るステップと、
(b)一方は一次エマルションと、他方は水溶液及び第1乳化剤との間の二次エマルションを調製して、水溶液中に前記ミクロ粒子を得るステップと、を含む方法である。
【0016】
本発明の多様な実施形態では、以下の1つまたは複数を採用することができる:
−二次エマルションを調製するステップを、それぞれ一次エマルションならびに水溶液及び第1乳化剤を供給する少なくとも1つの第1及び第2マイクロ流体供給管の間の合流点で、マイクロ流体素子における流体力学的集中によって実施し、前記供給管が超音波によって活性化可能なエマルションを運び出すマイクロ流体排出管へと通じている;
−第1及び第2供給管、並びに排出管が前記合流点に親水性の内部表面を有する;
−第1供給管及び排出管が、第1及び第2供給管の間の合流点で、20μm未満の幅及び20μm未満の深さを有する;
−第1供給管及び排出管が、第1及び第2供給管の間の合流点で、10μm未満の幅及び10μm未満の深さを有する;
−マイクロ流体素子が、第1供給管に実質的に垂直であり、かつ前記合流点で互いに向かい合う2つの第2供給管を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1実施形態における、水溶液中のエマルションにおけるミクロ粒子の概略図である。
【図2】図1のようなエマルションにおけるミクロ粒子を得るためのマイクロ流体素子の例の図である。
【図3】患者の体のターゲット領域における図1のようなミクロ粒子を含有するエマルションを局所的に活性化するための超音波装置を示す図である。
【図4】図3の装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、非限定的な実施例として提供された実施形態の1つの説明から明らかになるであろう。
別々の図面において、同一の参照符号は同一または類似の要素を示す。
【0019】
本発明は、二重エマルションを提案する。該二重エマルションは、患者に注射され、患者の体内のターゲット領域において、前記ターゲット領域に集束した超音波でターゲット領域を照射することによって、局所的に活性化され得る。
【0020】
図1に概略的に示されているように、この二重エマルションは、水溶液2中にミクロ粒子1の二次エマルションを含む。これらのミクロ粒子1は、20μm未満の直径Dを有する。簡略化のために、図1にはミクロ粒子1の1つのみが示されている。
【0021】
直径Dは、有利には20μm未満、好ましくは10μm未満、例えば8μm未満、特に約5μmであり、以下で説明されるように、二重エマルションが注射されると、患者の毛細血管中をミクロ粒子が循環することを可能にする。
【0022】
ミクロ粒子1は外壁4を有し、これは実質的に球形であり、第1乳化剤、特に例えばPluronic F68(登録商標)などの界面活性剤によって形成される。
【0023】
この外壁4(液体状の泡の壁)は、ナノ粒子5の一次エマルションを含有する、超音波によって気化可能な気体前駆体液体3(またはより一般的に超音波で活性化可能な化合物)を封入する。気体前駆体は、フッ素化油、特に、例えばペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロペンタンなどのペルフルオロカーボンとすることができる。
【0024】
ナノ粒子5は、5μm未満、好ましくは0.3から1μm、例えば約500nmの直径を有する。これらのナノ粒子5の各々は、第2乳化剤、例えばポリ(ペルフルオロプロピレングリコール)カルボキシレート(デュポン社からKrytox157FSH(登録商標)として販売)などのフッ素系界面活性剤によって形成される、実質的に球形の外壁7 (液体状の泡の壁)を有する。より具体的には、フッ素系界面活性剤は、ポリ(ペルフルオロプロピレングリコール)カルボキシレート、ペルフルオロカーボン、及び水酸化アンモニウムから調製され得る。例として、この界面活性剤は、10mgのKrytox157FSH(登録商標)及び10mlの水酸化アンモニウムを10mgのペルフルオロヘキサンに加えることによって得ることができる(非特許文献1参照)。
【0025】
外壁7は、活性剤、特にトレーサーまたは薬物を含む、例えば水またはより一般的に水溶液である内部液体6を封入する。
【0026】
より具体的には、活性剤は、
−光学色素(例えばフルオレセインフルオレセイン)及び医用画像用の造影剤(特にMRI、X線、超音波、またはその他の画像用の造影剤)からなる群から選択されるマーカー、
−治療薬用のターゲットとして作用することを意図されたマーカー、
−癌の化学療法薬剤、血管標的薬剤、毒素、及びメッセンジャーRNA、DNAなどからなる群から選択される治療薬、とすることができる。
【0027】
活性剤は、親水性とすることができる。
活性剤は、疎水性とすることができ、その場合は例えば、
−例えばフッ素化油などの非水性内部液体中の溶液、または、
−水性内部液体中のエマルションであって、内部液体中のエマルションにおける1μm未満(例えば0.3から0.4μm)の径の粒子内に、活性剤が(例えばフッ素化油で)内部に封入されたエマルション、のいずれか中に存在するものとすることができる。
【0028】
活性剤がミクロ粒子1の体積全体(ナノ粒子内部)に分散されることを考慮すると、ミクロ粒子で輸送される活性剤の量は、現在使用されている超音波によって活性化可能な単純なエマルションと比較して増加する。
【0029】
さらに、気体前駆体が活性剤の拡散に対するバリアを形成するため、本発明の二重エマルションの安定性は特に高く、製造と使用との間の製品の貯蔵寿命を延長し、超音波によって照射されるターゲット領域の外部にある患者の組織内に活性剤が不随意に放出されることが避けられる。
【0030】
前述の二重エマルションは、以下の2つの基本ステップを有する方法によって得ることができる:
(a)一方は活性剤を含有する内部液体と、他方は液体状態の気体前駆体及び第2乳化剤との間で一次エマルションを調製し、前記気体前駆体中のエマルションにおけるナノ粒子を得るステップ、及び、
(b)一方は一次エマルションと、他方は水溶液及び第1乳化剤との間で二次エマルションを調製し、水溶液中のミクロ粒子を得るステップ。
【0031】
[一次エマルションの調製の実施例]
実施例として、特定の初期量のペルフルオロヘキサンまたはフッ素化油形態のその他の気体前駆体、さらに第2乳化剤、特に、10mgのKrytox157FSH(登録商標)及び10mlの水酸化アンモニウムを10mgのペルフルオロヘキサンに加えることによって得られる前述のようなフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0032】
例えば活性剤(例えばフルオレセイン)を含有する水溶液である内部液体20重量%をペルフルオロへキサンに加える。
【0033】
その後、一次エマルションは、例えば円筒形のクエットセル(Couette cell)においてせん断加工することによって、例えばPolytron PT100(登録商標)ホモジナイザーを15,000rpmで15分間使用することによって、得られる。
【0034】
これにより、約500nmの直径dを有するナノ粒子5のエマルションが得られる。
【0035】
このエマルションは、次いで、油中水エマルション中のナノ粒子の体積割合が増加するように(例えば最大70%)遠心分離され得る。
【0036】
[二次エマルションの調製の実施例]
二次エマルションを調製するステップは、図2に示されるようなマイクロ流体素子10における、第1のマイクロ流体供給管11と、例えば第1の供給管11と一直線上に配置されたマイクロ流体排出管13へと開放された少なくとも1つの第2の供給管12(好ましくは互いに向かい合い、第1の供給管11に垂直な2つの第2の管12)との間の合流点で、流体力学的集中(hydrodynamic focusing)によって実施され得る。
【0037】
マイクロ流体素子は特に、例えば非特許文献2に記載されたようなポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたソフトリソグラフィー技術を使用して作製することができる。
【0038】
管11−13は、例えば0.5マイクロメートル超10μm未満、特に10μm未満、さらには3μm未満、例えば約2.5μmの深さの長方形の断面を有する溝の形態とすることができる。管11−13の深さは、管11と管12との間の合流点に近接しない場合には、より大きい(例えば約30μm)ほうが有利であり得る。
【0039】
これらの管の幅Lは、20μm未満、特に10μm未満、例えば約5から10μmとすることができる。この幅Lは、実施例に示されているように管11〜13の全てにおいて同一とすることができ、または異なるものとすることができる。幅が異なる場合、前述の寸法は、少なくとも管11、13に適用される。
【0040】
管の内壁の表面処理は、直接エマルションの形成を促進するために、好ましくは親水性である。
【0041】
第1の供給管11は、例えば約5barであり得る圧縮空気からの外部圧力の影響によって、排出管に向かう矢印11aの方向に流れる一次エマルション3、5を供給する。
【0042】
第2の供給管12は、例えば約2barであり得る圧縮空気からの外部圧力の影響によって、水溶液2及び第1乳化剤(例えば蒸留水にPluronic F68(登録商標)などの界面活性剤を特に1重量%であり得る濃度で加えたもの)を、第1の供給管11との合流点に向かう矢印12aの方向に供給する。
【0043】
流体力学的集中の配置によって、図2に表されるように、外部水相に分散されたミクロ粒子1が形成される。この配置がミクロ粒子1の直径Dを決定し、その形成の条件によって形成される粒子1の優れた単分散が保証される。(D付近での分散は典型的に3%未満)。ここでは、液滴は約5μmの直径Dを有するように形成される。
【0044】
素子10におけるミクロ粒子1のための伝送周波数は、典型的に約10kHzである。
【0045】
[適用例]
超音波によって活性化可能なエマルションを使用する場合、ミクロ粒子1が循環系によって患者の体29の全体または一部に拡散されるように、このエマルションは例えば静脈注射によって患者に注射される。
【0046】
これらのミクロ粒子いくつかは、図3に見られる超音波装置21によって放出される集束超音波の影響によって該ミクロ粒子を破裂させることによって、ターゲット領域30、例えば腫瘍中で活性化される。
【0047】
超音波装置21は、
−例えば超音波検査において一般的に使用されるタイプのアレイである、n個の超音波トランスデューサ22a(例えば約2.5MHzで伝送する例えば約100から300のトランスデューサ)を有する超音波トランスデューサのネットワーク22と、
−伝送の間にトランスデューサのネットワーク22を制御し、該ネットワークによってキャプチャされた信号を得るコントローラ23と、
−コントローラ23を制御するためのマイクロコンピュータ24であって、該マイクロコンピュータ24がトランスデューサのネットワーク22によってキャプチャされた超音波画像をその上で見ることができるスクリーン25を含むユーザーインターフェースを備え、該ユーザーインターフェースが例えばマウスまたは類似のデバイス(図示せず)と連結されたキーボード26、及び可能であれば、例えば以下で説明されるように、操作者28がスクリーン25上の領域を囲むことを可能にする、ライトペンまたは類似のデバイスなどの指示デバイス27を含む、マイクロコンピュータ24と、を備える超音波診断装置である。
【0048】
以下で説明されるように、トランスデューサのネットワーク22は、ターゲット媒体中の1つまたは複数の対象領域30を画定及びマークするために、例えば人間または動物の体の一部などの固体ターゲット媒体29と接して配置されるように設計されている。対象領域30は、例えば腫瘍などの病変であり得る。
【0049】
コントローラ23及びマイクロコンピュータ24は共に、トランスデューサのネットワーク22を制御し、かつ該ネットワークからの信号をキャプチャ及び処理するための制御装置を形成する。コントローラ23及びマイクロコンピュータ24の役割を単一の電子機器によって果たすことも可能である。
【0050】
図4に示されるように、コントローラ23は例えば、
−トランスデューサのネットワーク22のうちのn個のトランスデューサ(T−T)に(例えばケーブルによって)個別に接続されているn個のアナログ・デジタル変換器31(A/D−A/D)と、
−アナログ・デジタル変換器31にそれぞれ接続されたn個のバッファ32(B−B)と、
−バッファ32及びマイクロコンピュータ24と連結された中央処理ユニット33(CPU)と、
−中央処理ユニット33に接続された中央メモリ34(MEM)と、
−中央処理ユニット33に接続されたデジタル信号プロセッサ35(DSP)と、を備え得る。
【0051】
デバイス21は、最初は、スクリーン25上でターゲット30の画像を見るために、超音波画像診断モードで通常使用され得る。操作者2は、例えば前述のライトペン27または指示デバイスとして機能する任意のその他のユーザーインターフェースを使用して、例えばスクリーン25上の画像の縁をトレースすることによってターゲット領域30を画定することができる。
【0052】
対象領域30が操作者によって画定されると、ターゲット領域30全体が、ミクロ粒子のフッ素化油3を気化させることによってミクロ粒子1を破裂させる超音波を受けるように、前記ターゲット領域30の異なる点に集束する活性化超音波ビームの連続的放射を引き起こすことによって、エマルション活性化ステップが開始される。ナノ粒子5の封入はもはや気相では有効でないため、ナノ粒子5内に当初含まれていた活性剤が放出される。この放出後、活性剤は、拡散及び対流によって外部媒体中に拡散される。ミクロ粒子1の気化相の拡大及び音場に起因するソノポレーション(sonoporation)は、活性剤の組織への効果的な分散に寄与する。活性剤がフルオレセインなどの任意の色素である場合、ターゲット領域30の組織は、長期的に染色されるため、切除の間に外科医によって容易に見分けられる。
【0053】
活性化超音波ビームの各々の圧力及び時間は、患者29の組織を損傷せずにマーカーを活性化させるのに適当なものである。例えば、活性化超音波ビームの各々は、1から1000μs、特に10から1000μs(マイクロ秒)の時間を有し、該活性化超音波ビームは、8MPa未満、特に6MPa(メガパスカル)未満の圧力を組織に加え、該圧力は、従来のイメージング圧力に対応する。
【符号の説明】
【0054】
1 マイクロ粒子
2 水溶液
3 気体前駆体
4 第1乳化剤
5 ナノ粒子
6 内部液体
7 第2乳化剤
11、12 供給管
13 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中のエマルションにおいて、20μm未満の直径(D)を有し、第1乳化剤(4)によってカプセル化された、活性剤と、超音波によって活性化可能な液体状態の気体前駆体(3)とを含む、ミクロ粒子(1)を含む、超音波によって活性化可能なエマルションであって、
前記ミクロ粒子(1)が、前記気体前駆体(3)中のエマルションにおいて5μm未満の直径(d)を有するナノ粒子(5)を包含し、前記ナノ粒子(5)の各々が、前記活性剤を包含し、第2乳化剤(7)によってカプセル化された、内部液体(6)を含み、前記気体前駆体が前記活性剤の拡散に対するバリアを形成している、エマルション。
【請求項2】
前記気体前駆体がフッ素化油である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記気体前駆体がペルフルオロカーボンである、請求項2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記気体前駆体がペルフルオロヘキサン及び/またはペルフルオロペンタンである、請求項3に記載のエマルション。
【請求項5】
前記第2乳化剤がフッ素系界面活性剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項6】
前記フッ素系界面活性剤がポリ(ペルフルオロプロピレングリコール)カルボキシレートを含む、請求項5に記載のエマルション。
【請求項7】
前記フッ素系界面活性剤が、ポリ(ペルフルオロプロピレングリコール)カルボキシレート、ペルフルオロカーボン、及び水酸化アンモニウムから得られる、請求項6に記載のエマルション。
【請求項8】
前記活性剤が、マーカーと、薬物とからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項9】
前記活性剤が、光学色素と、医用画像用の造影剤とからなる群から選択されるマーカーである、請求項8に記載のエマルション。
【請求項10】
前記活性剤が、フルオレセインを含む光学色素である、請求項9に記載のエマルション。
【請求項11】
前記活性剤が、癌の化学療法薬剤と、メッセンジャーRNAとからなる群から選択される治療薬である、請求項8に記載のエマルション。
【請求項12】
前記内部液体(6)が水性であり、前記活性剤が親水性である、請求項1から11のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項13】
前記内部液体が油であり、前記活性剤が疎水性である、請求項1から11のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項14】
前記内部液体が水性であり、前記活性剤が疎水性であり、かつ前記内部液体中のエマルションにおいて1μmより小さな粒子内に封入されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項15】
前記ミクロ粒子(1)の直径(D)が10μm未満であり、有利には約5μmであり、前記ナノ粒子(5)の直径(d)が4μm未満であり、有利には約0.3から1μmである、請求項1から14のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の超音波によって活性化可能なエマルションの製造方法であって、
(a)一方は前記活性剤を含む前記内部液体と、他方は液体形態の前記気体前駆体及び前記第2乳化剤との間の一次エマルションを調製して、前記気体前駆体(3)中のエマルションにおける前記ナノ粒子(5)を得るステップと、
(b)一方は前記一次エマルションと、他方は前記水溶液及び前記第1乳化剤との間の二次エマルションを調製して、前記水溶液(2)中に前記ミクロ粒子(1)を得るステップと、を含む方法。
【請求項17】
前記二次エマルションを調製するステップを、それぞれ前記一次エマルションならびに前記水溶液及び前記第1乳化剤を供給する少なくとも1つの第1及び第2マイクロ流体供給管(11,12)の間の合流点で、マイクロ流体素子(10)における流体力学的集中によって実施し、前記供給管(11,12)が前記超音波によって活性化可能なエマルションを運び出すマイクロ流体排出管(13)へと通じている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2供給管(11,12)、ならびに前記排出管(13)が前記合流点に親水性の内部表面を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1供給管(11)及び前記排出管(13)の各々が、前記第1及び第2供給管(11,12)の間の合流点で、20μm未満の幅(L)及び20μm未満の深さを有する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1供給管(11)及び前記排出管(13)の各々が、前記第1及び第2供給管(11,12)の間の合流点で、10μm未満の幅(L)及び10μm未満の深さを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクロ流体素子が、前記第1供給管(11)に実質的に垂直でありかつ前記合流点で互いに向かい合う2つの第2供給管(12)を備える、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−533531(P2012−533531A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520068(P2012−520068)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051439
【国際公開番号】WO2011/007082
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(507033059)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク・(セ・エン・エール・エス) (17)
【Fターム(参考)】