説明

超音波を用いた卵殻膜からのコラーゲンを含む卵殻膜加水分解タンパク質の抽出方法

【課題】従来の酸やアルカリによる加水分解によって卵殻膜分解物を得る方法では、卵殻膜の分解に長時間を要するとともに、予め卵殻と卵殻膜を分離しておく必要があり、工程が煩雑であり、得られる卵殻膜加水分解物は、卵殻膜のタンパク質が分解されすぎてしまって、コラーゲン、コラーゲン分解物のみを分離精製することは困難であった。
【解決手段】卵殻膜が付着した状態の卵殻を粉砕し、粉砕した卵殻を溶液中で超音波を照射することにより、上記卵殻膜からコラーゲンを含む加水分解タンパク質を抽出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波を用いた卵殻膜からのコラーゲンを含む卵殻膜加水分解タンパク質の抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵殻膜は、古くから創傷の治療などに利用されてきた。この卵殻膜をいろんなものに添加して使用し易くするため、卵殻膜を強酸や強アルカリの溶液に入れ、加熱し還流状態で卵殻膜を加水分解して卵殻膜分解物を得る方法がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
さらに、異臭、着色がない卵殻膜分解物を作るため、アルカリ性の含水有機溶媒中で卵殻膜を加水分解して卵殻膜分解物を得る方法(特開平1−275512)がある(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、酢酸な等の弱酸性の溶液に浸漬することにより卵殻膜からコラーゲンを含むタンパク質が溶液中に抽出されることが知られている。
【特許文献1】特開昭48−40968号公報
【特許文献2】特開平1−275512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの方法は卵殻膜を加水分解する前に、あらかじめ卵殻と卵殻膜を分離しておく必要があった。卵殻膜と卵殻の分離には、破砕した卵殻を水中に入れて撹拌や超音波照射によって剥離する方法や、卵殻を酸性水溶液に浸漬して卵殻のみを溶かす方法があるが、機械的な分離では分離の効率が悪い。超音波照射による分離では超音波発生のために大量のエネルギーを必要とする。さらに、卵殻の溶解は酸に浸漬する必要があり、長時間を要する。いずれの方法でも経済的に効率が悪いと考えられる。
【0006】
卵殻膜を酸やアルカリで加水分解するとことによって得られる卵殻膜加水分解物は、卵殻膜のタンパク質が分解されすぎてしまって、コラーゲン、コラーゲン分解物のみを分離精製することは困難である。
【0007】
化学物質により卵殻膜を加水分解すると未溶解の卵殻膜も化学物質の浸食を受けて大きく変性してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、上記の目的を達しようと鋭意研究した結果、本発明を完成した。卵殻膜に超音波を照射することによってタンパク質加水分解物を抽出することを特徴とするものである。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいう卵殻膜の加水分解物とは、鳥卵の卵殻の内側にある卵殻膜を加水分解したものをいう。卵殻膜の代表的な例として鶏卵の卵殻膜が挙げられる。
【0010】
本発明の卵殻膜分解物は、化粧品、医薬、食品などの原料として使用することができる。
【0011】
以下、本発明の卵殻膜分解物の代表的製造方法について述べる。まず、殻付鶏卵を割卵して卵液を除去して卵殻を得、この卵殻を水洗した後、破砕してから水中に入れ超音波を照射することにより、卵殻膜加水分解物を抽出し、卵殻膜加水分解物含有溶液をえる。
【0012】
このようにして得られた卵殻膜の加水分解物は、分解物が溶液中に存在したままとしてもよいが、通常溶解していない成分と分離するためのフィルター濾過遠心分離、酸剤を添加してのpH調整(中和処理)、ミクロフィルターによる除菌処理、電気透析などの脱塩処理などを行って精製する。さらに、必要に応じて乾燥して製品とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波によって抽出される卵殻膜加水分解物中にはコラーゲン、コラーゲン分解物が含まれており、またこれをゲル化することによりコラーゲンを容易に分離精製することが可能である。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明の方法をさらに具体的に説明する。卵殻を割卵して卵液を除き、得られた卵殻を水洗してから、直径5mmのメッシュを通過するように卵殻を粉砕した。この卵殻2250gと水2630mLを混合し1300W、15KHz、4Aの超音波を、4分間照射し、卵殻膜加水分解物含有溶液を得た。
【0015】
試験例<分解物の組成の調査>本発明により得られた、卵殻膜加水分解物含有溶液中にコラーゲンが含まれていることを確認するために、実施例で得られた卵殻膜加水分解物含有溶液(本発明品)を使用し、下記の条件で電気泳動(SDS-PAGE)を行った。コラゲナーゼタイプI(和光純薬)0.01mgをバッファー(Tris 500mM, NaCl 2M, CaCl 21mM, NaN3 0.2%)0.1mLに溶解し、卵殻膜加水分解物含有溶液中1mLと混合し、37℃で一晩反応させ、電気泳動を行いコラーゲンが分解されていることを確認した。その結果は図1に示すとおりである。
その結果は図1に示すとおりである。タンパク質の分子量マーカーはBIO RAD protein standard IIを用いた、分子量は高分子側からそれぞれ97400, 66200, 55000, 42700, 40000 kDaである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による卵殻膜加水分解物にコラーゲンが含有されていることを示すための写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵殻膜を溶液中で超音波を照射することにより、卵殻膜からコラーゲンを含む加水分解タンパク質を抽出することを特徴とする、超音波を用いた卵殻膜からのコラーゲンを含む卵殻膜加水分解タンパク質の抽出方法。

【図1】
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