説明

超音波カラードップラー映像システムおよび前記超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法

【課題】本発明は、超音波カラードップラー映像システムに関する。
【解決手段】複数のピクセルを含む超音波カラードップラー映像の前記各ピクセルにおいて、IQ信号に関連する平均値を算出し、前記算出された平均値を用いて乗算演算値を生成する演算部と、前記生成された乗算演算値を前記平均値と比較する比較部と、前記比較結果に基づいて前記ピクセルをマスキングするマスキング部とを備え、前記演算部は前記複数のピクセルにおいて前記算出された平均値のスケールを考慮して基準平均値を選別し、前記選別された基準平均値に予め設定されたスケールファクタを乗算して前記乗算演算値を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、超音波カラードップラー映像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波カラードップラー映像システムは、人体に超音波を発射し、血流から反射してくる超音波のドップラーシフト(doppler shift)周波数を測定することによって血流の分布をリアルタイムで検出することができる。
【0003】
このとき、発射される超音波は、適切にフォーカシング(focusing)して血流に集中させているが、それでも一部の超音波は所望しない方向に伝達される。この結果、反射信号には、血流からの信号だけでなく血流以外の所望しない信号も共に混ざって戻ってくる。このとき、一般的に、血流からの信号をドップラー信号(doppler signal)といい、その他の組織から戻ってくる所望しない信号をクラッタ信号(clutter signal)という。
【0004】
通常、超音波が適切にフォーカシングされていれば、焦点に大部分のエネルギーが伝達され、その外部には僅かの超音波が漏れるため、大部分は所望する焦点から信号が戻ってくる。しかしながら、血流の反射率(reflectivity)は、周辺組織(血管壁、筋肉など)に比べて極めて小さいため、一般には、クラッタ信号の方が血流からのドップラー信号よりも大きい。
【0005】
クラッタ信号は、周辺組織の動きが殆どない場合にはドップラーシフト周波数がほぼ0に近くなるため、容易に高域クラッタフィルタ(high−pass clutter filter)によって除去できることは良く知られている。しかし、組織の動きが速くなると、クラッタ信号のドップラーシフト周波数が高くなるため、一般的なクラッタフィルタではクラッタ信号が完全に除去されず、その結果、画面に色相が現われるようになる。このように、組織の速い動きがあたかも血流であるかのように色相として画面上に現われるアーチファクト(artifact)は、通常は画面で瞬間的に光る様相を示すため、フラッシュアーチファクト(flash artifact)と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−80791
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような課題を改善するために案出されたものであって、クラッタ信号をフィルタリングすることにより、カラードップラー映像からフラッシュアーチファクト成分を除去できるようにすることを目的とする。
【0008】
また、本発明は、狭帯域のクラッタ信号のみならず、広帯域のクラッタ信号からもクラッタ信号を除去できるようにすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成して従来技術の問題点を解決するために、本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムは、複数のピクセルを含む超音波カラードップラー映像の前記各ピクセルにおいて、IQ(In-phase/Quadrature-phase)信号の平均値を算出し、前記算出された平均値を用いて乗算演算値を生成する演算部と、前記生成された乗算演算値を前記平均値と比較する比較部と、前記比較部での比較結果に基づいて前記ピクセルをマスキングするマスキング部とを備えている。
【0010】
ここで、前記演算部は、前記複数のピクセルにおいて前記算出された平均値の大きさを考慮して基準平均値を選別し、前記選別された基準平均値に予め設定されたスケールファクタを乗算して前記乗算演算値を生成する。
【0011】
本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法は、複数のピクセルを含む超音波カラードップラー映像の前記各ピクセルにおいてIQ信号の平均値を算出するステップと、前記算出された平均値を用いて乗算演算値を生成するステップと、前記生成された乗算演算値を前記平均値と比較するステップと、前記比較結果に基づいて前記ピクセルをマスキングするステップとを含む。
【0012】
ここで、前記平均値を算出するステップでは、前記ピクセル毎に前記IQ信号の平均値を算出する。また、前記乗算演算値を生成するステップでは、前記算出された平均値の大きさを考慮して基準平均値を選別し、前記選別された基準平均値にスケールファクタを乗算して前記乗算演算値を生成する。
【0013】
本発明の利点および特徴、またはこれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に記載される実施形態により明確になるであろう。しかしながら、本発明は以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、他の異なる多様な形態で実現することが可能である。即ち、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば他の実施形態を考案することが可能であり、それは本発明の請求範囲により規定される。なお、明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、クラッタ信号をフィルタリングすることにより、カラードップラー映像からフラッシュアーチファクト成分を除去することができる。
【0015】
また、本発明の実施形態によれば、狭帯域のクラッタ信号のみならず、広帯域のクラッタ信号からもクラッタ信号を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態によってアンサンブルI/Q信号で互いに隣り合う2つの信号の偏角と大きさ(振幅)を求める例示図である。
【図3】本発明の実施形態によってアンサンブルI/Q信号で互いに隣り合う2つの信号の偏角と大きさ(振幅)を求める例示図である。
【図4】本発明の実施形態によってアンサンブルI/Q信号で互いに隣り合う2つの信号の偏角と大きさ(振幅)を求める例示図である。
【図5】本発明の実施形態によってカラー映像内のピクセルにマスキング処理をする例示図である。
【図6】本発明の実施形態によってカラードップラー映像からフラッシュアーチファクトを除去する前と除去した後を示す例示図である。
【図7】本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムのブロック図である。
【0019】
図1を参照すれば、超音波カラードップラー映像システム100は、演算部110と、比較部120と、マスキング部130と、制御部140とを備えている。また、超音波カラードップラー映像システム100は、図示しない、超音波データ取得部と、超音波映像形成部と、ディスプレイ部とをさらに備える。
【0020】
超音波データ取得部は、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を受信して超音波データを取得する。該超音波データは、I/Q(in−phase/quadrature)データを含んでいる。
【0021】
超音波映像形成部は、超音波データ取得部から超音波データが提供されると、超音波データを用いて超音波カラードップラー映像を形成する。超音波映像形成部は、超音波データを用いて、クラッタ信号を含む超音波カラードップラー映像を形成する。なお、該超音波カラードップラー映像は、複数のピクセルで構成されている。
【0022】
演算部110は、超音波映像内のカラー映像(color image)(フレーム)の各ピクセル(pixel)に対応する第1信号(超音波信号)の平均偏角(mean phase:偏角値の平均値)および平均振幅(mean magnitude:振幅の平均値)を算出して、それに予め設定されたスケールファクタ(scale factor)を乗算する。ここで、前記のカラー映像は、クラッタ信号が除去される前の映像であって、そこには、血流と周辺組織(血管壁、筋肉など)からの信号が混在している。また、前記第1信号は、フレーム単位で得られたI/Q(In−phase/Quadrature−phase)信号のうちの1ピクセル毎のI/Q信号である。
【0023】
このとき、演算部110は、前記第1信号(IQ信号)とその信号に時間上で隣り合う第2信号(他のIQ信号)を用いて前記第1信号に対する第2信号の平均偏角および平均振幅を算出する。例えば、演算部110は、下記の数式(1)を用いて前記第1信号に対する第2信号の平均偏角および平均振幅を算出する。このようにして、各ピクセル毎に第1信号に対する第2信号の平均偏角および平均振幅を算出する。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、MeanPhaseは平均偏角、MeanMagnは平均振幅、uはスキャンラインナンバー(scanline number)、vはサンプル(ピクセル)ナンバー(sample number)、kはアンサンブルナンバー(ensemble number)、ELはアンサンブルの長さ(ensemble length:平均化回数)、*は共役複素数、E(k、u、v)は変調されたI/Q信号を複素数形態で表現(I+jQ)したものをそれぞれ表す。
【0026】
演算部110は、前記で算出された平均偏角および平均振幅のそれぞれの最大値に予め設定されたスケールファクタ(scale factor)を乗算演算して第1乗算演算値および第2乗算演算値を生成する。ここで、前記スケールファクタは、ユーザまたはシステム環境に応じて予め設定(setting)される。
【0027】
すなわち、演算部110は、前記で算出された平均偏角の最大値(最大平均偏角)にスケールファクタを乗算して第1乗算演算値(スケールファクタ×最大平均偏角)を生成する。同様に、演算部110は、前記で算出された平均振幅の最大値(最大平均振幅)にスケールファクタを乗算して第2乗算演算値(スケールファクタ×最大平均振幅)を生成する。
【0028】
このために、演算部110は、下記の数式(2)を用いて、前記で算出された平均偏角の最大値と前記で算出された平均振幅の最大値を求める。すなわち、演算部110は、前記平均偏角のそれぞれを互いに比較して前記平均偏角に対する最大値を求め、また、前記平均振幅のそれぞれを互いに比較して前記平均振幅に対する最大値を求める。
【0029】
【数2】

【0030】
ここで、MaxPhaseは平均偏角に対する最大値を、MaxMagnは平均振幅に対する最大値を表す。そして演算式の中の記号は、uはスキャンラインナンバー(scanline number)を、vはサンプル(ピクセル)ナンバー(sample number)を、Uはスキャンラインナンバーの最大値を、Vはサンプル(ピクセル)ナンバーの最大値を、MeanPhaseは平均偏角を、また、MeanMagnは平均振幅をそれぞれ表す。
【0031】
参考までに、超音波カラードップラー映像システム100は、演算部110による演算を実行する前に、アンサンブル(ensemble)単位のI/Q(In−phase/Quadrature−phase)信号内のすべてのピクセルに対して1つのピクセル単位で変調(modulation)を実行してもよい。したがって、前記第1信号は変調された信号であってもよい。
【0032】
比較部120は、前記で生成された第1乗算演算値および前記で生成された第2乗算演算値を前記平均偏角および前記平均振幅のそれぞれと比較する。すなわち、比較部120は、前記第1乗算演算値と前記平均偏角を比較し、前記第2乗算演算値と前記平均振幅を比較する。
【0033】
マスキング部130は、前記での比較結果に基づいて前記カラー映像の各ピクセルをマスキング(masking)する。
【0034】
例えば、前記による比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合(第1乗算演算値<平均偏角&第2乗算演算値>平均振幅)、マスキング部130は前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングする。
【0035】
同様にして前記による比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも大きく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合(第1乗算演算値>平均偏角&第2乗算演算値>平均振幅)、マスキング部130は前記カラーイ映像の該条件に該当するピクセルをマスキングする。
【0036】
さらにまた、前記での比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも小さい場合(第1乗算演算値<平均偏角&第2乗算演算値<平均振幅)、マスキング部130は前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングする。
【0037】
一方、前記での比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも大きく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも小さい場合には(第1乗算演算値>平均偏角&第2乗算演算値<平均振幅)、マスキング部130は前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングしない。
【0038】
これを簡単に示せば、下記の表1の如くなる。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、超音波カラードップラー映像システム100は、前記第1乗算演算値と前記平均偏角および前記第2乗算演算値と前記平均振幅をそれぞれ比較し、その結果に従って、マスキング値を0または1に設定する。このようにして、マスキング部130は、前記のマスキング値が0である場合には前記カラー映像の該当するピクセルをマスキング処理する一方、前記のマスキング値が1である場合には前記カラー映像の該当するピクセルをマスキング処理しない。
【0041】
制御部140は、超音波カラードップラー映像システム100、すなわち、演算部110、比較部120、マスキング部130などの動作を全般的に制御する。また、制御部140は、超音波カラードップラー映像システム100の超音波データ取得部、超音波映像形成部およびディスプレイ部の動作を制御する。
【0042】
ディスプレイ部は、超音波映像形成部で形成された超音波カラードップラー映像を表示する。また、ディスプレイ部は、マスキング部130によりマスキング処理された超音波カラードップラー映像を表示する。
【0043】
図2〜図4は、本発明の実施形態によってアンサンブルI/Q信号で互いに隣り合う2つの信号の偏角と振幅を求める例示図である。以下、演算部110が算出する平均偏角と平均振幅の求め方を説明する。
【0044】
図2〜図4には、EL(Ensemble Length:1ピクセルのカラー映像を演算するのに必要な超音波ビームの数)だけ変調(modulate)されたI/Q信号、すなわち、E(0)、E(1)、E(2)、E(3)、・・・、E(EL−2)、E(EL−1)に対するグラフが示されている。同図で、時間的に隣り合う2つのI/Q信号を用いてその2つの信号の偏角と振幅を求める。
【0045】
まず、図2に示すように、本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムは、時間的に隣り合う2つの信号、すなわち、E(0)とE(1)を用いてそれぞれの信号の偏角と振幅を求める。
【0046】
すなわち、前記超音波カラードップラー映像システムは、時間的に隣り合う2つの信号、すなわち、E(0)とE(1)を乗算し(E(0)×E(1)*)、その結果(式3)から2つの信号(E(0)、E(1))の偏角(式4)と振幅(式5)を求める。
【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

【0049】
【数5】

【0050】
また、図3に示すように、前記超音波カラードップラー映像システムは、時間的に隣り合う2つの信号、すなわち、E(1)とE(2)を用いてE(1)とE(2)に対し偏角と振幅を求める。
【0051】
すなわち、前記超音波カラードップラー映像システムは、時間的に隣り合う2つの信号、すなわち、E(1)とE(2)を乗算し((E(1)×E(2)*)、その結果(式6)から2つの信号(E(1)、E(2))に対する偏角(式7)と振幅(式8)を求める。
【0052】
【数6】

【0053】
【数7】

【0054】
【数8】

【0055】
前記超音波カラードップラー映像システムは、図2および図3のような方法によって他の2つの信号、すなわち、E(2)とE(3)、E(3)とE(4)、・・・、E(EL−3)とE(EL−2)のそれぞれに対する偏角および振幅を継続して求めた後、最後に図4のような方法によって2つの信号E(EL−2)とE(EL−1)に対する偏角および振幅を求めれば、カラー映像の演算に必要なアンサンブルI/Q信号の各ピクセル(またはサンプル)に対する偏角および振幅がすべて求まる。
【0056】
図4に示すように、前記超音波カラードップラー映像システムは、時間的に隣り合う2つの信号、すなわち、E(EL−2)とE(EL−1)を乗算し((E(EL−2)×E(EL−1)*)、その結果(式9)から信号(E(EL−2)、E(EL−1))に対する偏角(式10)と振幅(式11)を求める。
【0057】
【数9】

【0058】
【数10】

【0059】
【数11】

【0060】
このように、前記超音波カラードップラー映像システムは、時間上で隣り合う2つの信号を用いて、アンサンブルI/Q信号の各ピクセル(サンプル点)に対する偏角および振幅をすべて求める。これにより、前記超音波カラードップラー映像システムは、図2〜図4で求めた偏角および振幅を用いて、下記の(式12)のように平均偏角(偏角の平均値)および平均振幅(振幅の平均値)を求めることができる。
【0061】
【数12】

【0062】
ここで、MeanPhaseは平均偏角、MeanMagnitudeは平均振幅、nは偏角および振幅の演算に用いたデータ数、(式13)は偏角の総合加算値、(式14)は振幅の総合加算値をそれぞれ示す。
【0063】
【数13】

【0064】
【数14】

【0065】
図5は、本発明の実施形態に従ってカラー映像内のピクセルにマスキング処理をする場合の一例を示す図である。参考までに、図5において、四角いブロックのそれぞれはピクセルを示し、四角ブロック内の数字はピクセル番号を示す。また、図5の右図において、斜線(黒色)のブロックは、マスキング値(masking value)が0を、また、白色のブロックはマスキング値が1であることを表す。
【0066】
図5に示すように、ピクセル番号1、2、4、5、9、11、12、13、14に該当するピクセルのマスキング値は0であり、ピクセル番号3、6、7、8、10、15、16に該当するピクセルのマスキング値は1である。
【0067】
したがって、本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムは、マスキング値が0であるピクセル、すなわち、ピクセル番号1、2、4、5、9、11、12、13、14に相当するピクセルをマスキング処理する。(ここでは斜線で示しているが、実際の実現時には黒色で表示される)。
【0068】
一方、前記超音波カラードップラー映像システムは、マスキング値が1であるピクセル、すなわち、ピクセル番号3、6、7、8、10、15、16に該当するピクセルをマスキング処理しない。
【0069】
このように、前記超音波カラードップラー映像システムは、カラー映像内の各ピクセルに対して演算、比較などの過程を経てマスキング値を設定し、前記で設定されたマスキング値を用いて該当するピクセルをマスキング処理する。したがって、本発明の実施形態によれば、クラッタ信号をフィルタリングできるので、カラードップラー映像からフラッシュアーチファクト成分を効果的に除去することができる。
【0070】
このように、前記超音波カラードップラー映像システムは、カラードップラー映像からフラッシュアーチファクト成分を効果的に除去することにより、図6のようにより正確なカラードップラー映像を提供することができる。参考までに、図6は、本発明の実施形態によってカラードップラー映像からフラッシュアーチファクトを除去する前(左側映像)と除去した後(右側映像)の映像の一例を示す。
【0071】
図7は、本発明の実施形態に係る超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法を説明するフローチャートである。
【0072】
図7を参照すれば、ステップ(S710)において、前記超音波カラードップラー映像システムは、超音波映像内のカラー映像(color image)の各ピクセル(pixel)に対応する第1信号に対する平均偏角(mean phase)および平均振幅(mean magnitude)を算出する。ここで、前記カラー映像は、クラッタ信号が除去される前の映像、すなわち、血流と周辺組織(血管壁、筋肉など)が混合した映像である。また、前記第1信号は、1ピクセル毎に演算したI/Q(In−phase/Quadrature−phase)信号のアンサンブル(ensemble:平均値)を表す。
【0073】
このとき、前記超音波カラードップラー映像システムは、前記第1信号および前記第1信号と時間上で隣り合う第2信号を用いて前記第1信号に対する第2信号の平均偏角および平均振幅を算出する。
【0074】
次に、ステップ(S720)において、前記超音波カラードップラー映像システムは、算出された前記平均偏角および前記平均振幅のそれぞれに対する最大値に予め設定されたスケールファクタ(scale factor)を乗算して第1乗算演算値および第2乗算演算値を生成する。ここで、前記スケールファクタは、ユーザによって予め設定(setting)され、スケーリング(scaling)をするための係数は、1、1.5、2、2.5などのような正の実数である。
【0075】
すなわち、前記超音波カラードップラー映像システムは、前記で算出された平均偏角の最大値(最大平均偏角)にスケールファクタを乗算して第1乗算演算値(スケールファクタ×最大平均偏角)を生成する。また、前記超音波カラードップラー映像システムは、前記で算出された平均振幅の最大値(最大平均振幅)にスケールファクタを乗算して第2乗算演算値(スケールファクタ×最大平均振幅)を生成する。
【0076】
次に、ステップ(S730)において、前記超音波カラードップラー映像システムは、前記で生成された第1乗算演算値および前記で生成された第2乗算演算値を前記平均偏角および前記平均振幅のそれぞれと比較する。すなわち、前記超音波カラードップラー映像システムは、前記第1乗算演算値と前記平均偏角を比較し、前記第2乗算演算値と前記平均振幅を比較する。
【0077】
次に、ステップ(S740)において、前記超音波カラードップラー映像システムは、前記での比較結果に従って前記カラー映像の各ピクセルをマスキング(masking)する。
【0078】
例えば、前記における比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合(第1乗算演算値<平均偏角&第2乗算演算値>平均振幅)は、前記超音波カラードップラー映像システムは前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングする。
【0079】
また同様に、前記での比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも大きく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合(第1乗算演算値>平均偏角&第2乗算演算値>平均振幅)は、前記超音波カラードップラー映像システムは前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングする。
【0080】
さらにまた、前記での比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも小さい場合(第1乗算演算値<平均偏角&第2乗算演算値<平均振幅)は、前記超音波カラードップラー映像システムは前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングする。
【0081】
一方、前記での比較の結果、前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも大きく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも小さい場合(第1乗算演算値>平均偏角&第2乗算演算値<平均振幅)には、前記超音波カラードップラー映像システムは前記カラー映像の該条件に該当するピクセルをマスキングしない。
【0082】
このように、前記超音波カラードップラー映像システムは、カラー映像内の各ピクセルに対して演算、比較などの過程を経てマスキングするか否かを決定し、前記での決定に従って該当するピクセルをマスキング処理する。したがって、本発明の実施形態によれば、ドップラー信号からクラッタ信号をフィルタリングすることにより、カラードップラー映像からフラッシュアーチファクト成分を効果的に除去することができる。
【0083】
なお、本発明に係る実施形態は、コンピュータにより実現される多様な動作を実行するためのプログラム命令を含むコンピュータで読取可能な記録媒体を含む。当該記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独または組み合わせて含むこともでき、記録媒体およびプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計されて構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知であり使用可能なものであってもよい。コンピュータで読取可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び磁気テープのような磁気媒体、CD−ROM、DVDのような光記録媒体、オプティカルディスクのような磁気−光媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。また、記録媒体は、プログラム命令、データ構造などを保存する信号を送信する搬送波を含む光または金属線、導波管などの送信媒体であってもよい。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行され得る高級言語コードを含む。
【0084】
上述したように、本発明に係る実施形態に関して説明したが、本発明の請求範囲を逸脱しない限度内で多様な変形が可能であることはもちろんである。そのため、本発明の請求範囲は上述した実施形態に限定されて定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定められなければならない。
【0085】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、これは本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は、添付の特許請求の範囲によってのみ把握されなければならず、この均等または等価的な変形の全ては本発明の思想の範疇に属する。
【符号の説明】
【0086】
100:超音波カラードップラー映像システム
110:演算部
120:比較部
130:マスキング部
140:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピクセルを含む超音波カラードップラー映像を表示する超音波カラードップラー映像システムであって、
前記超音波カラードップラー映像の前記各ピクセルにおいて、IQ信号の平均値を算出し、前記算出された平均値を用いて乗算演算値を生成する演算部と、
前記生成された乗算演算値を前記平均値と比較する比較部と、
前記比較結果に基づいて前記ピクセルをマスキングするマスキング部と、
を備え、
前記演算部は、
前記複数のピクセルにおいて前記算出された平均値のスケールを考慮して基準平均値を選別し、前記選別された基準平均値に予め設定されたスケールファクタを乗算して前記乗算演算値を生成する超音波カラードップラー映像システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記平均値として平均偏角および平均振幅を算出し、前記乗算演算値は、前記平均偏角に関連する第1乗算演算値と、前記平均振幅に関連する第2乗算演算値とを含む請求項1に記載の超音波カラードップラー映像システム。
【請求項3】
前記比較部は、前記マスキングの対象となる前記ピクセルに対して算出された前記平均偏角と前記第1乗算演算値を比較し、前記マスキングの対象となる前記ピクセルに対して算出された前記平均振幅と前記第2乗算演算値を比較する請求項2に記載の超音波カラードップラー映像システム。
【請求項4】
前記マスキングの対象となる前記ピクセルに対し、前記マスキング部は、(1)前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合、(2)前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも大きく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合、または(3)前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも小さい場合のうちのいずれか1つである場合、前記ピクセルをマスキングする請求項2または3に記載の超音波カラードップラー映像システム。
【請求項5】
前記演算部は、前記IQ信号および前記IQ信号と時間上で隣り合う他のIQ信号を用いて前記平均偏角および前記平均振幅を算出する請求項2ないし4のいずれかに記載の超音波カラードップラー映像システム。
【請求項6】
超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して、複数の超音波データを取得する超音波データ取得部と、
前記超音波データを用いて前記超音波カラードップラー映像を形成する超音波映像形成部と、
前記超音波カラードップラー映像を表示するディスプレイ部と、
をさらに備える請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波カラードップラー映像システム。
【請求項7】
複数のピクセルを含む超音波カラードップラー映像の前記各ピクセルにおいて、IQ信号の平均値を算出するステップと、
前記算出された平均値を用いて乗算演算値を生成するステップと、
前記生成された乗算演算値を前記平均値と比較するステップと、
前記比較結果に基づいて前記ピクセルをマスキングするステップと、
を含み、
前記乗算演算値を生成するステップは、
前記複数のピクセルにおいて前記算出された平均値のスケールを考慮して基準平均値を選別するステップと、
前記選別された基準平均値に予め設定されたスケールファクタを乗算して前記乗算演算値を生成するステップと、
を含む超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法。
【請求項8】
前記平均値は、平均偏角および平均振幅を含み、
前記乗算演算値を生成するステップは、前記平均偏角に関連する第1乗算演算値と、前記平均振幅に関連する第2乗算演算値とを生成するステップをさらに含む請求項7に記載の超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法。
【請求項9】
前記乗算演算値を前記平均値と比較するステップは、前記マスキングの対象となる前記ピクセルに対して算出された前記平均偏角と前記第1乗算演算値を比較するステップと、
前記マスキングの対象となる前記ピクセルに対して算出された前記平均振幅と前記第2乗算演算値を比較するステップと、
を含む請求項8に記載の超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法。
【請求項10】
前記マスキングの対象となる前記ピクセルに対し、前記ピクセルをマスキングするステップは、(1)前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合、(2)前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも大きく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも大きい場合、または(3)前記第1乗算演算値が前記平均偏角よりも小さく、前記第2乗算演算値が前記平均振幅よりも小さい場合のうちのいずれか1つである場合、前記ピクセルをマスキングするステップを含む請求項8または9に記載の超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法。
【請求項11】
前記平均値を算出するステップは、前記IQ信号および前記IQ信号と時間上で隣り合う他のIQ信号を用いて前記平均偏角および前記平均振幅を算出するステップを含む請求項8ないし10のいずれかに記載の超音波カラードップラー映像システムのクラッタ信号フィルタリング方法。
【請求項12】
請求項7〜11のうちのいずれか一項の方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115587(P2011−115587A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267203(P2010−267203)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(597096909)株式会社 メディソン (269)
【氏名又は名称原語表記】MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】