説明

超音波システム内のデータ伝送を制御するための方法及びシステム

【課題】超音波システム内におけるデータの伝送を制御するための方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】超音波システム内におけるデータの伝送を制御するための方法及びシステムを提供する。一方法(50)は、超音波システム内の超音波探触子の複数のチャンネルから超音波データを受け取るステップ(52)と、受け取った超音波データをディジタル復調し該ディジタル復調した超音波データのデータ転送速度が受け取った超音波データのデータ転送速度より低くなるようにするステップ(54)と、を含む。本方法はさらに、ディジタル復調した超音波データを処理する超音波システムのプロセッサを用いて実行される処理ステップ(56)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は、全般的には超音波システムに関し、またさらに詳細には超音波システム内部でデータを伝送するため、特に超音波システムのフロントエンドからのデータを処理のためにバックエンドまで転送するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
診断用医学撮像システムは、操作部分とディスプレイを有する制御部分とを含むのが一般的である。例えば超音波撮像システムは通常、様々な超音波走査(例えば、ボリュームや身体の撮像)を実施することによって超音波データの収集を制御するように超音波システムに接続されたトランスジューサを有する超音波探触子などの超音波走査デバイスを含む。超音波システムは、異なる動作モードで動作すること及び異なる走査を実施することを行わせるように制御可能である。超音波システムのフロントエンドで受け取った信号は次いで、バックエンドに伝送されてここで処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7477999 B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の超音波システムのフロントエンドは一般に、受け取った信号をビーム形成する特定用途向け集積回路(ASIC)または現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)を含む。しかし、このハードウェア実現のビーム形成器は柔軟性がより低い。例えば、実施されるビーム形成のタイプが当該ハードウェアの実現形態によって制限され、特定のビーム形成しか実施することができない。したがって、フロントエンド内のハードウェア構成要素が特殊化されて、ビーム形成アルゴリズムをASICやFPGA内部に実装した後はこのアルゴリズムに対する変更が不可能である。
【0005】
さらに、例えば4次元(4D)撮像の間では複数のビームが同時に生成されることがある。ハードウェア実現のビーム形成器では、これら複数ビームを同時に生成すると集約的処理や大幅な処理が必要となり、このため超音波システムの実現が高コストとなりかつそのサイズが増大する可能性がある。
【0006】
ソフトウェア実現のビーム形成器では、ビーム形成器が超音波システムのバックエンド内で実現されている。これらのソフトウェア実現のビーム形成器では、受け取った信号から生成したビーム形成済みデータのチャンネルをすべてバックエンド処理のためにフロントエンドからバックエンドに伝送しなければならない。これらのソフトウェア実現のビーム形成器においてフロントエンドからバックエンドに伝送を要するデータ量は大きく、実施している走査のタイプによっては極めて増大する可能性がある。したがって、これらの超音波システムを動作させるには、より高バンド幅のバス、より多くの伝送ライン及び/またはより大きな処理パワーが必要である。これらの構成要素はさらに、超音波システムに対してサイズ及びコストを上昇させる。さらに、処理するデータ量を転送するのに要するデータ速度は、システムの伝送ライン(例えば、周辺装置相互接続(PCI)バス)の最大データ転送速度を超えることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
様々な実施形態では、超音波データを処理するための方法を提供する。本方法は、超音波システム内の超音波探触子の複数のチャンネルから超音波データを受け取るステップと、受け取った超音波データをディジタル復調し該ディジタル復調した超音波データのデータ転送速度が受け取った超音波データのデータ転送速度より低くなるようにするステップと、を含む。本方法はさらに、超音波システムのプロセッサを用いて実行されるディジタル復調した超音波データに対する処理ステップを含む。
【0008】
別の様々な実施形態では、超音波データを復調するための方法を提供する。本方法は、超音波システム内の超音波探触子の複数のチャンネルから超音波データを受け取るステップと、複数のチャンネルに関して受け取った超音波データのサンプル速度をディジタル復調を用いて低減させるステップと、を含む。本方法はさらに、低減サンプル速度超音波データを超音波システムのプロセッサに伝送するステップと、プロセッサを用いて低減サンプル速度超音波データに対してビーム形成を含む処理を実施するステップと、を含む。
【0009】
さらに別の様々な実施形態では、関心対象に関する超音波データを収集するための超音波探触子と、超音波探触子から複数チャンネル分のアナログ超音波データを受け取り、該アナログ超音波データをディジタル超音波データに変換するように構成されたアナログ対ディジタル変換器(ADC)と、を含む超音波システムを提供する。本超音波システムはさらに、ディジタル超音波データのサンプル速度をADCのサンプル速度と比べてより低くなるように低減するように構成された復調器と、該低減サンプル速度ディジタル超音波データをビーム形成するように構成されたプロセッサと、を含む
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】様々な実施形態に従って形成した超音波システムの簡略ブロック図である。
【図2】様々な実施形態に従って実施されるデータ伝送過程を表したブロック図である。
【図3】様々な実施形態によるディジタル復調のための方法の流れ図である。
【図4】図3に示した方法に従って実施されるデータ伝送過程を表した例示的なブロック図である。
【図5】様々な実施形態によるディジタル復調のための別の方法の流れ図である。
【図6】様々な実施形態によるディジタル復調のための別の方法の流れ図である。
【図7】様々な実施形態によるディジタル復調のための別の方法の流れ図である。
【図8】様々な実施形態をそれと連携して実現し得る超音波システムのブロック図である。
【図9】様々な実施形態に従って形成された図8の超音波システムの超音波プロセッサモジュールのブロック図である。
【図10】様々な実施形態をその中で実現し得る3次元(3D)機能小型化超音波システムを表した図である。
【図11】様々な実施形態をその中で実現し得る3D機能の携行式またはポケットサイズ超音波撮像システムを表した図である。
【図12】様々な実施形態をその中で実現し得る3D機能コンソールタイプ超音波撮像システムを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した要約並びにある種の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことによってさらに十分な理解が得られよう。これらの図面が様々な実施形態の機能ブロックからなる図を表している場合も、必ずしもこれらの機能ブロックがハードウェア回路間で分割されることを意味するものではない。したがって例えば、1つまたは複数の機能ブロック(例えば、プロセッサやメモリ)を単一のハードウェア(例えば、汎用の信号プロセッサ、ランダムアクセスメモリの1ブロック、ハードディスク、その他)の形、あるいは複数のハードウェアの形で実現させることがある。同様にそのプログラムは、スタンドアロンのプログラムとすること、オペレーティングシステム内のサブルーチンとして組み込まれること、インストールしたソフトウェアパッケージの形で機能させること、その他とすることができる。こうした様々な実施形態は図面に示した配置や手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0012】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素やステップは、これに関する複数の要素やステップも排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴も組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、当該性状を有しない追加的な構成要素も含むことがある。
【0013】
様々な実施形態により、超音波システム内部において処理のためにデータを伝送するためのシステム及び方法を提供する。幾つかの実施形態は、ソフトウェアビーム形成器による処理のために送られるデータ量を制御する。例えば幾つかの実施形態では、一般処理用または汎用の中央処理ユニット(CPU)やグラフィックス処理ユニット(GPU)の形で実現させたソフトウェアビーム形成器に対して処理のために伝送される超音波データの量を低減させている。こうした処理をして画像を形成することには例えば、所望の各画像再構成点ごとに、時間遅延及び/または位相シフトさせたチャンネルデータの一般的線形合成を生成することを含み、ここでこのチャンネルデータは同じ超音波送信事象から生じることも異なる超音波送信事象から生じることもあり、かつ時間遅延/位相シフトは画像を画像再構成点にまたはその近傍に集束させるように選択される。画像再構成点の組はさらに、走査線(ベクトル)、ディスプレイの画素、または適当な別の幾何学構造を含むことがある。
【0014】
少なくとも幾つかの実施形態の技術的効果の1つは、超音波システムのバックエンドの位置で処理ユニットにより処理させるために超音波システムのフロントエンドから伝送される受け取りデータ量が低減されることである。少なくとも幾つかの実施形態の技術的効果の1つはまた、ビーム形成を含む無線周波数(RF)処理がソフトウェアの形で実行されるような汎用プロセッサの使用が可能であることを含む。
【0015】
画像を作成または形成する本明細書に記載した様々な実施形態は、幾つかの実施形態ではビーム形成を含みかつ別の実施形態ではビーム形成を含まないような画像形成のための処理を含むことがあることに留意すべきである。例えば、復調済みデータの行列に係数行列を乗算しその積が画像を成すようにするなどビーム形成を伴わずに画像を形成することが可能であり、またこの際の処理過程では「ビーム」を全く形成していない。さらに画像の形成は、複数の送信事象から生じ得るチャンネル合成を用いて実施することがある。
【0016】
様々な実施形態では、画像を形成するための超音波処理が実施されており、例えば受信ビーム形成などの超音波ビーム形成は、ソフトウェアの形、ハードウェアの形あるいはこれらを組み合わせた形で実施される。様々な実施形態に従って形成されるソフトウェアビーム形成器アーキテクチャを有する超音波システムの一実現形態を図1に示しており、本図は超音波システム30の簡略ブロック図を表している。超音波システム30は、探触子32を用いて超音波データを収集するように構成されており、この際に超音波信号の送信及び受信などの送信及び受信機能は、図示したようにハードウェア実現の受信ビーム形成器を含まないフロントエンド34によって提供されている。しかし任意選択では、例えば部分ビーム形成を実行するためにハードウェア実現の受信ビーム形成器が設けられることもあることに留意すべきである。フロントエンド34は一般に、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)または現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)の形で実現させ得る送信器/受信器を含む。
【0017】
フロントエンド34は、高速型周辺装置相互接続(PCIe)バスなどの1つまたは複数のバス、あるいはその他のバス(例えば、少なくとも数GB/secの転送速度を有する高バンド幅バス)を含み得る例えば1つまたは複数の伝送ライン38を介してバックエンド36に接続されている。伝送ライン(複数のこともある)38はフロントエンド34からバックエンド36に超音波データを伝送しており、これには1つまたは複数のデータチャンネルを含むことがある。バックエンド36は処理ユニットを含むのが一般的であり、これには以下でより詳細に記載するようなソフトウェア実現のビーム形成器やIQ/RFプロセッサが含まれる。これらの処理機能は汎用のCPUまたはGPUによって実施されることがある。
【0018】
様々な実施形態では、フロントエンド34からバックエンド36に送られるデータ量が、使用する超音波データサンプル及び/または転送速度をより低くするように低減されている。例えば超音波システム30は、約25GB/sのデータ速度を生成するように65MHzのサンプル速度で256個の超音波チャンネルからのデータをサンプリングしている12ビットのアナログ対ディジタル変換器(ADC)を含むことがある。データを25GB/sで転送するためには、第2世代PCIe(PCIe G2)ラインを50本以上必要とすることになり、またこれはバス全体にわたる転送することは不可能である。しかし様々な実施形態では、バス全体にわたって低減データ速度データを転送可能とするようにデータ速度を低減するための方法を提供している。したがって様々な実施形態は、よりバンド幅の狭いデータチャンネルを使用したデータの伝送を可能とするようなデータサンプル速度または転送速度の低減を提供する。
【0019】
したがって、超音波フロントエンドチャンネル(ADCの利用を含むことがある)から、ビーム形成計算、組織処理、その他を実行するバックエンドプロセッサなどのデータプロセッサまでのデータの流れが制御される。幾つかの実施形態では、フロントエンド34からバックエンド36に伝送されるデータは、当該処理操作で必要となるかつ/または伝送バンド幅に基づくデータだけが転送されるようにデータの伝送を制御することを含む。超音波システム30は、異なる用途に関して異なる種類の超音波走査を実行して超音波画像データを収集するために使用されることがある。例えば幾つかの実施形態では超音波システム30は、複数のビームを同時にあるいは並行して収集するリアルタイム4次元(4D)走査を実行するように動作する。超音波システム30は様々な実施形態において、チャンネル38のすべてからのデータを受け取る汎用プロセッサ(例えば、CPUまたはGPU)の形に実現させたソフトウェア実現のビーム形成器を含む。したがってチャンネル38のすべてからのデータ転送が幾つかの実施形態では、適当な任意のビーム形成法を用いたビーム形成計算などのビーム形成処理を実行する汎用のプロセッサによって提供される。
【0020】
ソフトウェアビーム形成には、ハードウェアで実行可能なビーム形成技法をソフトウェアの形で実行することを含むような任意のタイプのビーム形成技法の実行を含むことに留意すべきである。さらに、本明細書ではビーム形成技法に言及しているが、これは一般に超音波システムにより実行し得る任意のタイプの画像形成を指すことに留意すべきである。したがってビームを形成させるか否かによらず画像の形成に連携した様々な実施形態を実現することができる。
【0021】
様々な実施形態は、当該超音波データの転送を制御するために超音波データ経路内での信号バンド幅(例えば、入力信号搬送周波数やバンド幅)に関するアプリオリの情報または知見を使用する。超音波データの転送を制御するためにはさらに、時間領域における関連するまたは必要なデータのシステムチャンネル間での分布に関するアプリオリ情報または知見も使用される。
【0022】
例えば、超音波データの伝送を制御するために様々な実施形態に従って実施される超音波処理ワークフローを示す図2に示すように、超音波システムまたは探触子の動作モードに基づいて超音波データ40が収集される。収集した超音波データ40は複数の受信チャンネル42を介して受け取られる。超音波システムのフロントエンドから処理ユニットへの間の伝送のために低減させた超音波データ組44が特定される。低減超音波データ組42は収集超音波データ40に基づく1組の超音波データであり、処理のために伝送させるべき低減データ量を有している。低減超音波データ組42内に含めるデータの決定は、1つまたは複数の要因、例えばバンド幅使用量や要求量、処理に必要な関連データ(例えば、臨床関連のデータ)、その他に基づくことがある。低減超音波データ組42は次いで、例えばソフトウェアビーム形成46の実行などデータを処理するために処理ユニットに伝送される。伝送される低減超音波データ組42は受信チャンネルの各々に対応するすべてのデータチャンネルに関するデータを含むことに留意すべきである。
【0023】
超音波データの伝送を制御するための方法は、後続のビーム形成のためのデータ転送のために(方法の中でもとりわけ)ディジタル復調並びにフィルタ処理及び/または可変デシメーションを用いることがある。超音波データに関する伝送を制御するための様々な方法について以下でより詳細に記載する。
【0024】
一実施形態では、データ速度低減のためにディジタル復調、フィルタ処理及びデシメーションを含む方法50を提供する。方法50は後続のビーム形成のために超音波データの各チャンネルに対して実施される。具体的には方法50は、52における具体的なある走査に関する関連信号バンド幅を特定するステップと、54における該特定した関連バンド幅に基づいて(処理しようとする)超音波データに関するサンプル速度を低減するステップと、を含む。
【0025】
例えば成人心臓高調波撮像では、関連する信号バンド幅は2MHz未満である(一方、ADCは例えば50MHzでサンプリングする)。したがって関連するバンド幅は関連するバンド幅周波数に基づいて規定することができ、当該バンド幅周波数の上側には所定の分散またはマージン(この例では追加の1MHzとし得る)を含めることがある。したがって、超音波システム受信器からの複素IQ信号のサンプル速度は3MHzに設定することがある。しかし、分散またはマージンを所望によりまたは必要に応じて変更することによって別に最小の周波数バンド幅レベルを規定することもあることに留意すべきである。
【0026】
様々な実施形態では信号のディジタル復調は、その信号に対して同相(I)成分を生成するためにコサイン係数を乗算しかつ直角位相(Q)成分を生成するためにサイン係数を乗算してIQ信号を得ることによって実現される。これらの係数は関連する信号バンド幅に関する復調周波数に基づくことがある。例えば信号に対してcos(ωdt)及びsin(ωdt)を乗算することがある(ここで、ωd=2πFdでありかつFdは復調周波数である)。幾つかの実施形態では復調周波数が信号ベクトルに沿って一定であると共にすべてのデータチャンネルについて同じであることに留意すべきである。しかし別の実施形態では、復調周波数を変動させることがある。
【0027】
その後、信号は(復調の一部として)フィルタ処理され、データのデシメーションが実施される。例えば、デシメーションの前にベースバンド復調信号のバンド幅を制限するような復調フィルタを設けることがある。復調フィルタは様々な実施形態においてプログラム可能であると共に、例えばデシメーション1つあたり所定数のタップ(例えば、16個のタップ)とした低域通過有限インパルス応答(FIR)フィルタとして実現されるような低域通過フィルタとして動作する。デシメーション係数は走査モード及び信号バンド幅に応じて異ならせることが可能であることに留意すべきである。デシメーション係数はさらに、撮像が基本モードで実施されるか第2高調波モードで実施されるかに基づいて異ならせることが可能である。例えば復調フィルタ処理は、収集信号のうちの第2高調波成分だけが後続のビーム形成のために転送されるように実現させることがある。さらに、デシメーション係数及び復調周波数は各ベクトルごとに異ならせることが可能であるが、すべてのチャンネルについて同じでありかつ1つのベクトルの中では一定である。様々な実施形態によるフィルタ処理では復調器のバンド幅を設定することに留意すべきである。
【0028】
次いで60において、ビーム形成(また具体的には、ソフトウェアによるビーム形成)がデータに対して実施される。したがって、信号スペクトルのうちのビーム形成または当該撮像に関連しないまたは必要でない部分はビーム形成に先立って削除される。例えば、2MHzサンプリング周波数に関する中心周波数は約3.5MHzである。様々な実施形態は中心周波数をゼロに移動させると共に、関連する関心対象の周波数バンド(すなわち、関連する周波数バンド幅)を通過させるようにそのフィルタ処理がプログラムされている。
【0029】
様々な実施形態の復調には、複雑な信号包絡線を抽出するなどのために複雑な指数形及び低域通過のフィルタ処理による乗算が含まれることに留意すべきである。
【0030】
したがって、予測される信号のバンド幅に基づいてデシメーション比を変化させまたは制御し、デシメーション及びフィルタ処理をこれに従って構成することがある。図4に示すように複数の受信チャンネルからのデータは、ADC70で受け取られて、さらにソフトウェアでのビーム形成などの処理のために1つまたは複数のディジタル処理ユニット72への送信前にフィルタ処理及びデシメーションを含み得るディジタル復調を受けている。このディジタル処理はチャンネル領域内で実施されると共に、得られる信号はより低いサンプル速度を有する。
【0031】
方法50では、ビット幅がデシメーション比に基づくことがある。したがって、可変のビット幅が設けられることがある。したがって、データ組ごとに異なるビット幅またはビット桁が選択されることがある。実施するデシメーションが大きいほど、信号のダイナミックレンジがより大きくなることに留意すべきである。具体的なあるダイナミックレンジを保つために、1サンプルあたりより多くのビットが伝送されることがある。
【0032】
方法50は、各受信チャンネルごとのデータに対するディジタル復調によって転送データ速度を低減させ、後続のフィルタ処理及びデシメーションに繋げている。このフィルタ処理及びデシメーションは、関連する信号バンド幅に応じて異ならせている。方法50は、後続の処理(例えば、ビーム形成)のために関連する信号バンド幅だけが転送されるようにサンプル速度を低減することによってデータ速度の低減を提供する。
【0033】
方法50はさらに、さらに小さいバンド幅及びデータ低減係数によるパルス波(PW)ドプラ撮像に応用することもできる。さらに、様々な実施形態では転送サンプリング速度が受け取る信号の最大周波数を制限することがなく、影響を受けるのは信号バンド幅のみであることに留意すべきである。
【0034】
図5に示すような別の方法80では、ビーム形成しようとするデータの転送データ速度を低減するようにチャンネル時間空間で関心領域(ROI)を規定している。方法80では、82において走査のための走査パラメータが決定される。例えばその走査パラメータは、集束ゾーン、拡張アパーチャ、撮像モード、その他を含むことがある。この走査パラメータは84において、ROIの規定のために使用される。このROIは、そのチャンネルについて処理のために伝送されるデータを制限するために使用される。例えばROIは走査パラメータに基づいて、そのデータを伝送して処理させるべきチャンネル及びタイムスロットが規定される一方、その他のデータチャンネルやタイムスロットは処理のために伝送されない(例えば、棄却される)ように選択される。
【0035】
次いで86において、有効ROIの内部からデータが転送される。したがってチャンネル領域内部において、あるタイムスロット内部のあるチャンネルからのデータだけが転送される。例えばそのROIがある受信アパーチャを規定している場合、そのアパーチャ内部で受け取ったデータのみが伝送されかつこのアパーチャの外にあるデータは伝送されない。その後で88において、ビーム形成(例えば、ソフトウェアによるビーム形成)が実施される。
【0036】
したがって、1つまたは複数の走査パラメータによる決定に従って規定されたROIに基づいてビーム形成に関連するデータが転送される。例えば拡張アパーチャ用途では、アパーチャがベクトル(例えば、ベクトルビーム)に沿う時間に沿って拡張されており、これにより処理のために伝送されるデータ量が変更される。別の例として、走査している対象のより深い深度位置で走査を実施するときはより多くのチャンネルのデータが処理のために伝送される。
【0037】
したがって方法80は、チャンネル時間空間でのROIの規定並びにこのROI内部からだけのデータの転送によって転送データ速度を低減している。このROIは各チャンネルごとに、ベクトルの始点を基準とした開始時間と、データ転送の持続時間と、を規定する。このROI規定は、集束ゾーン、拡張アパーチャ、撮像モード(B、カラーフロー、PWドプラ)その他などの1つまたは複数の走査パラメータに依存する。様々な実施形態においてROIはソフトウェアにより計算されており、次いでフロントエンドハードウェアが有効ROIの内部からのデータを転送するように設定またはプログラムされる。低減データ転送は、3つの集束ゾーンを有する線形アレイや湾曲アレイによる走査(例えば、線形アレイ探触子による走査)に関して得られており、この際に生じるビームは3つの集束ゾーンからの合成である。転送されるデータは3つの集束ゾーンから受け取った信号に制限されており、すべてのデータを転送して3つの集束ゾーンに関連するデータのみを処理するのとは異なる。
【0038】
図6に示すような別の方法90では、92において合成しようとする複数のチャンネルが特定される。この特定は、複数の近傍または隣接チャンネル(例えば、超音波探触子の隣接受信素子に対応するチャンネル)の決定を含む。この決定は、受信素子のグループ化及び/または合成しようとする所定のチャンネル数に基づくことがある。近傍チャンネルからのデータは次いで、94において単一のベクトルに合成される。複数のチャンネルからのデータの単一のベクトルへの合成は適当な任意のベクトル合成方法を用いて実施することができる。96では、データを合成しながらベクトルに沿って遅延が付与される。例えば、関連する遅延(例えば、位相回転)が付与されかつこれがベクトルに沿って変化する。その後このデータが、ビーム形成(例えば、98において実施されるソフトウェアによるビーム形成)のために伝送される。
【0039】
したがって方法90は、転送されるデータのチャンネル数が低減されるように複数のチャンネル(例えば、4つのチャンネル)からのデータを合成することによって転送データ速度を低減させている。方法90は、関連する遅延に基づいたデータの合成のために位相回転を使用し得るようなディジタルサブアパーチャビーム形成を実行する。
【0040】
図7に示すような別の方法100では、処理のために伝送しようとするデータ(具体的には、データサンプル)が、102において複数のデータパケットに分割される。データパケットの各々のサイズ(すなわち、各データパケット内に含まれるデータサンプルの数)は所定の数及び/または可変の数とし得る。例えば、最大値が100であれば7つのビットを利用することがある。
【0041】
その後104において、データパケットの各々のデータサンプルに関する最大値に基づいて、データパケットの各々についてビット深度が決定される。したがって各データパケットは、当該パケット内のデータサンプルの最大深度に基づいて異なるビット深度値を有する。各データパケットごとに決定されたビット深度は次いで106において保存される(例えば、各データパケットのパケットヘッダー内に保存される)。次いで108においてビーム形成のために、例えば超音波システムのフロントエンドからバックエンドへ低減データが転送される。その後110において、ビーム形成が実行される(例えば、ソフトウェアビーム形成が実行される)。
【0042】
したがって方法100は、転送されるデータ量を低減するように転送されるデータパケットに関するビット数を低減することによって転送データ速度を低減している。したがって、パケットベースの可変ビット深度を用いた復調IQデータに対するデータ圧縮が提供される。方法100は、エンコード及びデコードを実行していると共に超音波信号SNRがベクトルに沿って低下するという情報を用いており、これにより対象内のより深い距離から収集した信号ではデータに必要なビットがより少なくなる。上で検討したように、最大値が100の場合、12ビットADCから受け取った場合であっても12ビットではなく7つのビットの使用とすることができる。
【0043】
本明細書に記載した様々な方法は単独で実施されることがあること、あるいはデータ速度低減係数を上昇させるように組み合わせられることがあることに留意すべきである。例えば幾つかの実施形態では、本明細書に記載した方法のうちの1つがビーム形成のために転送されるデータ速度の低減に使用される。別の実施形態では、ビーム形成のために転送されるデータ速度をさらに低減させるために2つ以上の方法が任意の順序で実施されることがある。
【0044】
様々な実施形態では受信ビーム形成器が使用するのは、逓降させたIQデータであり、ADCがサンプリングした元のRFデータではない。しかし別の実施形態では、元のRFデータあるいは異なるデータの組み合わせを用いることがある。RFデータの逓降変換(復調)は受信チャンネルの各々に対して実行されており、これは例えばADC変換を実行するASIC内で実行されることがある。本明細書でより詳細に記載しているように、復調の後に信号をフィルタ処理し、次いで信号バンド幅に基づいてこれをデシメーションすることが可能である。
【0045】
超音波撮像の復調に関する様々な実施形態(特に、ソフトウェアビーム形成を提供する場合)は、図8に示すような超音波システム200内で実現させることがある。データ転送速度を(例えば、様々な復調技法を使用して)低減するための様々な実施形態は、超音波システム200の様々な部分または構成要素で実現し得ることに留意すべきである。例えばディジタル復調は、さらにADCも実現しているASIC内で実施されることがあり、あるいはシステムのフロントエンドまたはバックエンド内で実行し得るような別のハードウェアまたはソフトウェアで実施することがある。
【0046】
具体的に図8は、様々な実施形態によるソフトウェアビーム形成として例証したビーム形成のために超音波データのディジタル復調を実行するように動作する超音波システム200を表したブロック図である。このソフトウェアビーム形成は例えば、有形で非一時的な(non−transitory)コンピュータ読み取り可能媒体上で命令を実行するプロセッサによって実現させることもある。超音波システム200は、探触子206を用いて超音波データを収集するように構成されており、この際に超音波信号の送信及び受信は、図示したようにハードウェア実現の受信ビーム形成器を含まないフロントエンド201によって提供されている。しかし任意選択では、ある種のビーム形成の実行のためにハードウェア実現の受信ビーム形成器が設けられることもあることに留意すべきである。フロントエンド201はバックエンド203に複数のデータチャンネルを介して接続されており、この複数のデータチャンネルによってフロントエンド201からの超音波データがバックエンド203に伝送される。
【0047】
超音波システム200は、音響ビームを(例えば、3D空間内で)電気的または機械的にステアリングすることが可能であると共に、対象物や患者内の関心領域(ROI)の複数の2D描出または画像(また任意選択では、3D画像や4D画像)に対応した(本明細書でより詳細に記載したように規定または調整し得るような)情報を収集するように構成可能である。超音波システム200は、2D画像を(例えば、1つまたは複数の方向面で)収集するように構成可能である。
【0048】
超音波システム200は、ビーム形成器(送信ビーム形成器)のガイド下においてパルス状の超音波信号を身体内に放出するように探触子206内部にあるアレイ状の素子204(例えば、圧電素子)を駆動する送信器202を含む。多種多様な幾何学構成を使用することができる。超音波信号は血球や筋肉組織などの身体内の構造で後方散乱され、素子204に戻されるエコーが生成される。このエコーは受信器208によって受け取られ、次いで異なる構成要素とし得るあるいは単一の構成要素内(例えば、ASIC内)に実現させ得るようなADC210及び復調器212に伝送される。復調器212は、ディジタル復調を実行し、また任意選択では本明細書でより詳細に記載したようなフィルタ処理及びデシメーションを実行する。復調した(逓降サンプリングした)超音波データはメモリ214内に保存することがある。
【0049】
復調器212は、様々な実施形態ではADC210の転送速度に対して低減データ転送速度を有するエコー信号を表すIQデータ対を形成するようにRF信号を復調させる。RFまたはIQ信号データは次いで、保存のためにメモリ214に直接導かれることがある。幾つかの実施形態では任意選択で、フロントエンド201内にハードウェア受信ビーム形成器が設けられることがある。代替的な一実施形態では探触子206は任意選択で、探触子内部におけるサブアパーチャ受信ビーム形成を伴う2Dアレイを含む。
【0050】
復調器112は、複数の走査面または異なる走査パターンに関して異なるデータタイプ(例えば、Bモード、カラードプラ(速度/パワー/分散)、組織ドプラ(速度)及びドプラエネルギー)を生成することがある。例えば復調器112は、マルチ走査面に関する組織ドプラデータを生成することがある。復調器112は、複数のデータスライスに関連する情報(例えば、I/Q、Bモード、カラードプラ、組織ドプラ及びドプラエネルギー情報)を収集し、かつこのタイムスタンプ及び向き/回転情報を含み得るデータ情報をメモリ214内に保存する。
【0051】
超音波システム200はさらに、収集した超音波情報(例えば、RF信号データまたはIQデータ対)を処理すると共に、本明細書でより詳細に記載したように画質や分解能を改善させてディスプレイ218上に表示させるための超音波情報フレームを準備するプロセッサ216を含む。プロセッサ216は、収集した超音波データに対して複数の選択可能な超音波モダリティに基づいて1つまたは複数の処理動作を実行するように適応させている。プロセッサ216はさらに、図示した実施形態ではソフトウェアとしているビーム形成器230を用いてビーム形成動作を実行する。
【0052】
プロセッサ216は、プロセッサ216の動作を制御し得るユーザインタフェース224(マウス、キーボードその他を含むことがある)に接続されている(これについては、以下でさらに詳細に説明することにする)。ディスプレイ218は、ユーザに対して診断や解析のための診断用超音波画像を含む患者情報を提示する1つまたは複数のモニタを含む。メモリ214とメモリ222の一方または両方は、超音波データの2次元(2D)や3次元(3D)のデータ組を保存することがあり、こうした2Dや3Dのデータ組はビーム形成の状態が異なることがある2D(及び/または、3Dや4D画像)を提示するようにアクセスを受ける。これらの画像は修正されることがあり、またディスプレイ218の表示設定はさらにユーザインタフェース224を用いて手作業で調整されることがある。
【0053】
プロセッサ216に接続するように示したビーム形成器230は、プロセッサ216上またはプロセッサ216の一部として設けられたハードウェア上で実行するソフトウェアとすることがある。ビーム形成器230は、本明細書でより詳細に記載した受信ビーム形成を実行しRF信号を出力する。ビーム形成器230は、各電気信号を受け取った他の信号とで、遅延、アポダイゼーション及び加算を行うことがある。加算された信号によって超音波ビームまたはラインからのエコーが示される。
【0054】
様々な実施形態について超音波システムと連携させて説明することがあるが、本方法及びシステムは超音波撮像やその具体的な一構成に限定されないことに留意すべきである。この様々な実施形態は、例えば超音波撮像システムと、X線撮像システム、磁気共鳴撮像(MRI)システム、コンピュータ断層(CT)撮像システム、陽電子放出断層(PET)撮像システム(ただし、これらに限らない)のうちの1つと、を有するマルチモダリティ撮像システムを含む様々なタイプの撮像システムと連携して実現させることができる。さらにこの様々な実施形態は非医用の撮像システム(例えば、超音波式溶接試験システムや空港の手荷物走査装置などの非破壊検査システム)で実現することできる。
【0055】
図9は、図8のプロセッサ216またはその一部分として具現化し得る超音波プロセッサモジュール236の例示的なブロック図を表している。超音波プロセッサモジュール236は、概念的にサブモジュールの集合体として図示しているが、専用のハードウェア基板、DSP、プロセッサ、その他の任意の組み合わせを利用して実現することもできる。別法として図9のサブモジュールは、単一のプロセッサやプロセッサ間で機能動作を分散させた複数のプロセッサを備えた市販のPCを利用して実現することもできる。別の選択肢として図9のサブモジュールは、あるモジュール型機能は専用のハードウェアを利用して実行させる一方、残りのモジュール型機能は市販のPCその他を利用して実行させるような混成構成を利用して実現することもできる。これらのサブモジュールはさらに、処理ユニット内部のソフトウェアモジュールの形で実現することもできる。
【0056】
図9に示したサブモジュールの動作は、ローカルの超音波制御器250によって制御されることや、プロセッサモジュール236によって制御されることがある。サブモジュール252〜264は中間プロセッサ動作を実行する。超音波プロセッサモジュール236は超音波データ270を幾つかの形態のうちの1つの形態で受け取ることがある。図9の実施形態では、受け取った超音波データ270は、各データサンプルと関連付けされた実数成分と虚数成分を表すI、Qのデータ対からなる。このI、Qデータ対は、カラーフローサブモジュール252、パワードプラサブモジュール254、Bモードサブモジュール256、スペクトルドプラサブモジュール258及びMモードサブモジュール260のうちの1つまたは幾つかに提供される。任意選択では、音響放射力インパルス(Acoustic Radiation Force Impulse:ARFI)サブモジュール262及び組織ドプラ(TDE)サブモジュール264(ただし、これらに限らない)などの別のサブモジュールを含むこともある。
【0057】
サブモジュール252〜264のそれぞれは、カラーフローデータ272、パワードプラデータ274、Bモードデータ276、スペクトルドプラデータ278、Mモードデータ280、ARFIデータ282及び組織ドプラデータ284を作成するような対応する方式によってI、Qのデータ対を処理するように構成させており、これらのデータはすべて後続の処理の前に一時的にメモリ290(あるいは、図8に示したメモリ214やメモリ222)内に保存されることがある。例えばBモードサブモジュール256は、本明細書でより詳細に記載しているような2面式や3面式(triplane)画像収集の場合などで複数のBモード画像面を含むBモードデータ276を作成することがある。
【0058】
データ272〜284は例えば、その各組が個々の1つの超音波画像フレームを規定しているようなベクトルデータ値の組として保存されることがある。これらのベクトルデータ値は一般に、極座標系に基づいて整理される。
【0059】
走査変換器サブモジュール292は、メモリ290にアクセスしてここから画像フレームと関連付けされたベクトルデータ値を取得すると共に、このベクトルデータ値の組をデカルト座標に変換し表示向けに形式変換した超音波画像フレーム294を作成する。走査変換器モジュール292が作成した超音波画像フレーム295は、後続の処理のためにメモリ290に戻すように提供されることや、メモリ214またはメモリ222に提供されることがある。
【0060】
走査変換器サブモジュール292が、例えばBモード画像データその他に関連付けされた超音波画像フレーム295を作成した後、この画像フレームはメモリ290内に再保存されることや、バス296を介してデータベース(図示せず)、メモリ214、メモリ222及び/または別のプロセッサに伝達されることがある。
【0061】
走査変換されたデータは、超音波画像フレームを作成するために映像表示向けのX、Y形式に変換されることがある。走査変換した超音波画像フレームは、映像を映像表示向けのグレイスケールマッピングに対してマッピングする映像プロセッサを含むことがある表示制御器(図示せず)に提供される。このグレイスケールマッピングは、表示グレイレベルに対する未処理画像データの伝達関数を表すことがある。この映像データをグレイスケール値にマッピングした後に表示制御器は、画像フレームを表示するために1つまたは複数のモニタまたは表示ウィンドウを含むことがあるディスプレイ118(図8参照)を制御する。ディスプレイ218に表示される画像は、その各データがディスプレイ内のそれぞれの画素の強度または輝度を示している画像データフレームから作成される。
【0062】
再度図9を見ると、2D映像プロセッササブモジュール294は異なるタイプの超音波情報から作成されたフレームの1つまたは幾つかを合成する。例えば2D映像プロセッササブモジュール294は、あるタイプのデータをグレイマップに対してマッピングしかつ別のタイプのデータはカラーマップに対してマッピングして映像表示することによって異なる画像フレームを合成することがある。表示させる最終画像では、カラー画素データがグレイスケール画素データ上に重ね合わせられて単一の多重モード画像フレーム298(例えば、機能画像)を形成しており、この画像フレーム298は再度メモリ290内に再保存されるか、バス296を介して伝達されている。連続した画像フレームがメモリ290またはメモリ222(図8参照)内にシネループとして保存されることがある。このシネループは、ユーザに対して表示させる画像データを取り込むための先入れ先出し式の循環画像バッファを意味している。ユーザは、ユーザインタフェース224でフリーズコマンドを入力することによってこのシネループをフリーズさせることがある。ユーザインタフェース224は例えば、超音波システム200(図8参照)内への情報入力に関連付けさせたキーボード及びマウス、並びに別のすべての入力制御子を含むことがある。
【0063】
3Dプロセッササブモジュール300はさらに、ユーザインタフェース124によって制御を受けてメモリ290にアクセスし、3D超音波画像データを取得すると共に周知のボリュームレンダリングやサーフェスレンダリングアルゴリズムを介するなどによって3次元画像を作成する。この3次元画像は、レイキャスティング(ray−casting)、最大強度画素投影、その他などの様々な撮像技法を利用して作成されることがある。
【0064】
図8の超音波システム200は、ラップトップコンピュータやポケットサイズシステムなどの小型のシステム内や、より大型のコンソールタイプのシステムの形で具現化させることがある。図10及び11は小型システムを表しており、また図12はより大型のシステムを表している。
【0065】
図10は、3D超音波データまたは多重面超音波データを収集するように構成し得る探触子332を有する3D機能小型化超音波システム300を表している。例えば探触子332は、図8の探触子206に関連して上で検討したような2D素子アレイ104を有することがある。オペレータからコマンドを受け取るためにユーザインタフェース334(一体型ディスプレイ336を含むこともあり得る)が設けられている。本明細書で使用する場合に「小型化」とは、超音波システム330がハンドヘルド型または携行式のデバイスであるか、あるいはスタッフの手中、ポケット、書類カバンサイズのケースあるいはリュックサックで持ち運べるように構成されていることを意味している。例えば超音波システム330は、典型的なラップトップコンピュータのサイズを有する携行式デバイスとすることがある。超音波システム330はオペレータにより容易に運搬することができる。一体型ディスプレイ336(例えば、内部ディスプレイ)は例えば、1つまたは複数の医用画像を表示するように構成されている。
【0066】
超音波データは、有線式またはワイヤレス式のネットワーク340(または、例えばシリアルケーブルやパラレルケーブルあるいはUSBポートを介した直接接続)によって外部デバイス338に送られることがある。幾つかの実施形態では、外部デバイス338はディスプレイを有するコンピュータまたはワークステーションとすることや、様々な実施形態のDVRとすることがある。別法として外部デバイス338は、携行式超音波システム330からの画像データの受け取り並びに一体型ディスプレイ336を超える分解能を有することがある画像の表示またはプリントアウトが可能な単独の外部ディスプレイまたはプリンタとすることがある。
【0067】
図11は、ディスプレイ352及びユーザインタフェース354が単一のユニットを形成するような携行式またはポケットサイズの超音波撮像システム350を表している。一例として、ポケットサイズ超音波撮像システム350は、幅が概ね2インチ、長さが概ね4インチ及び奥行が概ね0.5インチのポケットサイズや掌サイズの超音波システムとすることがあり、かつ重さは3オンス未満である。ポケットサイズ撮像システム350は一般にディスプレイ352及びユーザインタフェース354を含んでおり、これらはキーボードタイプのインタフェース及び走査用デバイス(例えば、超音波探触子356)に接続するための入力/出力(I/O)ポートを含むことや含まないことがある。ディスプレイ352は例えば、320×320画素のカラーLCDディスプレイ(この上に医用画像390を表示することができる)とすることがある。ユーザインタフェース354内には任意選択で、ボタン382からなるタイプライター様のキーボード360が含まれることがある。
【0068】
マルチ機能制御子384にはそれぞれ、システムの動作モードに従った機能(例えば、異なるビューの表示)を割り当てることができる。したがってマルチ機能制御子384のそれぞれは、複数の異なる作用を提供するように構成されることがある。ディスプレイ352上には、必要に応じてマルチ機能制御子384に関連付けされたラベル表示エリア386が含まれることがある。システム350はさらに、「フリーズ」、「深度制御子」、「利得制御子」、「カラーモード」、「プリントアウト」及び「保存」(ただし、これらに限らない)を含み得る特殊目的の機能のために追加的なキー及び/または制御子388を有することがある。
【0069】
1つまたは複数のラベル表示エリア386は、表示させるビューを指示するため、あるいはユーザが表示する撮像対象の異なるビューを選択できるようにするためのラベル392を含むことがある。異なるビューの選択はまた、関連するマルチ機能制御子384を介して提供されることがある。ディスプレイ352はまた、表示させた画像ビューに関する情報を表示するためのテキスト表示エリア394(例えば、表示させた画像に関連するラベル)を有することがある。
【0070】
寸法、重量及び電力消費が異なる小型化超音波システムや小型超音波システムと連係して様々な実施形態を実現できることに留意すべきである。例えばポケットサイズ超音波撮像システム350と小型化超音波システム300はシステム200(図8参照)と同じ走査機能及び処理機能を提供することができる。
【0071】
図12は、移動式台座402上に設けられた超音波撮像システム400を表している。可搬式超音波撮像システム400のことを、カート式システムと呼ぶこともある。ディスプレイ404及びユーザインタフェース406が設けられると共に、このディスプレイ404はユーザインタフェース406と分離されていることや分離可能とさせることがあることを理解されたい。ユーザインタフェース406は任意選択ではタッチ式画面であり、これによってオペレータは表示されたグラフィックス、アイコン、その他に触れることによってオプションを選択することが可能となる。
【0072】
ユーザインタフェース406はさらに、可搬式超音波撮像システム400を(希望または必要に応じかつ/または典型的な提供形態で)制御するために使用できる制御ボタン408を含む。ユーザインタフェース406は、超音波データや表示可能なその他のデータと対話するための物理的な取扱い、並びに情報の入力及び走査パラメータ、観察角度その他の設定や変更をユーザに対して可能にさせる複数のインタフェースオプションを提供する。例えばキーボード410、トラックボール412及び/またはマルチ機能制御子414が設けられることがある。
【0073】
この様々な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェアあるいはこれらの組み合わせの形で実現し得ることに留意すべきである。さらに、様々な実施形態及び/または構成要素(例えば、モジュール、あるいはこれらの内部にある構成要素や制御器)は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサの一部として実現させることができる。このコンピュータやプロセッサは、コンピュータ処理デバイス、入力デバイス、表示ユニット、及び例えばインターネットにアクセスするためのインタフェースを含むことがある。このコンピュータやプロセッサは、マイクロプロセッサを含むことがある。このマイクロプロセッサは、通信バスと接続させることがある。このコンピュータやプロセッサはさらにメモリを含むことがある。このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)や読出し専用メモリ(ROM)を含むことがある。このコンピュータやプロセッサはさらに、ハードディスクドライブ、あるいはフロッピー(商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブその他などの取外し可能な記憶ドライブとし得る記憶デバイスを含むことがある。この記憶デバイスはさらに、コンピュータプログラムその他の命令をコンピュータやプロセッサにロードするための別の同様の手段とすることがある。
【0074】
本明細書で使用する場合、「コンピュータ」や「モジュール」という用語は、マイクロコントローラを用いたシステム、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、ASIC、論理回路、及び本明細書に記載した機能を実行可能な別の任意の回路やプロセッサを含めプロセッサベースまたはマイクロプロセッサベースの任意のシステムを含むことができる。上述の例は単に例示であり、またしたがっていかなる意味においても「コンピュータ」という用語の定義及び/または意味を限定することを意図していない。
【0075】
このコンピュータやプロセッサは、入力データを処理するために1つまたは複数の記憶素子内に格納された1組の命令を実行する。この記憶素子はさらに、所望によりまたは必要に応じて、データやその他の情報も保存することがある。この記憶素子は情報ソースの形態とすることや、処理装置内部にある物理的な記憶素子とすることがある。
【0076】
この命令の組は、本発明の様々な実施形態の方法や処理などの指定の動作を実行するように処理装置としてのコンピュータまたはプロセッサに指令するための様々なコマンドを含むことがある。この命令の組はソフトウェアプログラムの形態とすることがある。このソフトウェアは、システムソフトウェアやアプリケーションソフトウェアなど様々な形態とすることがあり、またこれを有形で非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体として具現化させることもある。さらにこのソフトウェアは、単独のプログラムやモジュール、より大きなプログラムの内部のプログラムモジュール、あるいはプログラムモジュールの一部分からなる集合体の形態とすることがある。このソフトウェアはさらに、オブジェクト指向プログラミングの形態をしたモジュール型プログラミングを含むことがある。処理装置による入力データの処理は、オペレータコマンドに応答すること、以前の処理結果に応答すること、あるいは別の処理装置が発した要求に応答することがある。
【0077】
本明細書で使用する場合、「ソフトウェア」と「ファームウェア」という用語は置き換え可能であり、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含めコンピュータによって実行するためにメモリ内に保存された任意のコンピュータプログラムを含む。上述のメモリタイプは単に例示であり、またしたがってコンピュータプログラムの記憶に使用可能なメモリのタイプを限定するものではない。
【0078】
上の記述は例示であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、具体的な状況や材料を様々な実施形態の教示に適応させるようにその趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書内に記載した材料の寸法及びタイプが様々な実施形態のパラメータを規定するように意図していても、これらの実施形態は決して限定ではなく実施形態の例示である。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。様々な実施形態の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いる場合を除く)。
【0079】
この記載では、様々な実施形態(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む様々な実施形態の実施を可能にするために例を使用している。この様々な実施形態の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、その例が本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、その例が本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0080】
30 超音波システム
32 探触子
34 フロントエンド
36 バックエンド
38 伝送ライン
40 超音波データ
42 チャンネル
44 超音波データ組
46 ソフトウェアビーム形成
50 方法
52 走査に基づいて関連信号バンド幅を特定する
54 特定した関連するバンド幅に基づいて処理しようとする超音波データに関するサンプル転送/速度を低減させる
56 データのビーム形成を実行する
70 ADC
72 ディジタル処理ユニット
80 方法
82 走査パラメータを決定する
84 走査パラメータに基づいて関心領域(ROI)を規定する
86 有効ROI内部のデータを処理ユニットに転送する
88 データのビーム形成を実行する
90 方法
92 合成しようとする近傍チャンネルを特定する
94 近傍チャンネルからのデータを1つのベクトルに合成させる
96 データ合成の間にベクトルに沿って遅延を付与する
98 データのビーム形成を実行する
100 方法
102 データサンプルをデータパケットに分割する
104 データパケット内のデータサンプルの最大値に基づいて各データパケットごとにビット深度を決定する
106 データパケットのビット深度をパケットヘッダー内に保存する
108 低減済みデータを転送する
110 データのビーム形成を実行する
112 復調器
118 ディスプレイ
124 ユーザインタフェース
200 超音波システム
201 フロントエンド
202 送信器
203 バックエンド
204 素子
206 探触子
208 受信器
210 ADC
212 復調器
214 メモリ
216 プロセッサ
218 ディスプレイ
222 メモリ
224 ユーザインタフェース
230 ビーム形成器
236 超音波プロセッサモジュール
250 ローカル超音波制御器
252 カラーフローサブモジュール
254 パワードプラサブモジュール
256 Bモードサブモジュール
258 スペクトルドプラサブモジュール
260 Mモードサブモジュール
262 ARFIサブモジュール
264 組織ドプラサブモジュール
270 超音波データ
272 カラーフローデータ
274 パワードプラデータ
276 Bモードデータ
278 スペクトルドプラデータ
280 Mモードデータ
282 ARFIデータ
284 組織ドプラデータ
290 メモリ
292 走査変換器サブモジュール
294 2D映像プロセッササブモジュール
295 超音波画像フレーム
296 バス
298 画像フレーム
300 3Dプロセッササブモジュール
330 超音波システム
332 探触子
334 ユーザインタフェース
336 一体型ディスプレイ
338 外部デバイス
340 ワイヤレスネットワーク
350 超音波撮像システム
352 ディスプレイ
354 ユーザインタフェース
356 超音波探触子
380 タイプライタ様キーボード
382 ボタン
384 マルチ機能制御子
386 ラベル表示エリア
388 制御子
390 医用画像
392 ラベル
394 テキスト表示エリア
400 超音波撮像システム
402 移動式台座
404 ディスプレイ
406 ユーザインタフェース
408 制御ボタン
410 キーボード
412 トラックボール
414 マルチ機能制御子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波データを処理するための方法(50)であって、
超音波システム内の超音波探触子の複数のチャンネルから超音波データを受け取るステップ(52)と、
受け取った超音波データをディジタル復調し該ディジタル復調した超音波データのデータ転送速度が受け取った超音波データのデータ転送速度より低くなるようにするディジタル復調ステップ(54)と、
超音波システムのプロセッサを用いて実行される超音波画像を形成するためのディジタル復調した超音波データに対する処理ステップ(56)と、
を含む方法。
【請求項2】
受け取った超音波データに関連する信号バンド幅を特定(52)し、該特定した関連する信号バンド幅を用いて受け取った超音波データを復調するステップをさらに含む請求項1に記載の方法(50)。
【請求項3】
超音波走査に関する走査パラメータを決定(82)し、該決定した走査パラメータに基づいて関心領域(ROI)により規定(84)される関連する超音波データを用いて受け取った超音波データを復調するステップをさらに含む請求項1に記載の方法(50、80)。
【請求項4】
前記ディジタル復調のステップは、複数のチャンネルのうちの少なくとも幾つかから受け取った超音波データを合成するステップ(94)を含む、請求項1に記載の方法(50、90)。
【請求項5】
前記ディジタル復調のステップは、受け取った超音波データを複数のデータパケットに分割するステップ(102)を含む、請求項1に記載の方法(50、100)。
【請求項6】
前記複数のデータパケットの各々に関するビット深度を最大深度値に基づいて変更するステップ(104、106)をさらに含む請求項5に記載の方法(50、100)。
【請求項7】
前記複数のデータパケットの各々に関するビット幅をデシメーション比に基づいて変更するステップ(104、106)をさらに含む請求項5に記載の方法(50、100)。
【請求項8】
関心対象に関する超音波データを収集するための超音波探触子(206)と、
前記超音波探触子から複数チャンネル分のアナログ超音波データを受け取り、該アナログ超音波データをディジタル超音波データに変換するように構成されたアナログ対ディジタル変換器(ADC)(210)と、
ディジタル超音波データのサンプル速度をADCのサンプル速度と比べてより低くなるように低減するように構成された復調器(212)と、
前記低減サンプル速度ディジタル超音波データを処理するように構成されたプロセッサ(216)と、
を備える超音波システム(200)。
【請求項9】
前記復調器(212)は、超音波データのデータサンプル速度を低減するために処理前にディジタル超音波データに対してフィルタ処理とデシメーションのうちの一方を行うように構成されている、請求項8に記載の超音波システム(200)。
【請求項10】
前記復調器(212)は、サンプル速度を低減するためにバンド幅情報と関連するデータ情報のうちの一方を使用するように構成されている、請求項8に記載の超音波システム(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−20127(P2012−20127A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151332(P2011−151332)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】