説明

超音波センサーおよび電子機器

【課題】送信時に送受信素子を個別に駆動でき、受信感度を向上できる超音波センサーを提供すること。
【解決手段】超音波センサー10は、複数の送受信兼用素子310と、各送受信兼用素子の第1電極に接続された第1電極側スイッチ71,73と、各送受信兼用素子の第2電極に接続された第2電極側スイッチ72,74と、制御回路60と、送信回路40と、受信回路50と、共通電極接続配線80と、直列接続用配線81とを備える。制御回路60は、超音波信号の送信時は、スイッチ71,73を送信回路40に接続し、スイッチ72,74を共通電極接続配線80に接続し、各送受信兼用素子310を送信回路40および共通電極接続配線80に対して並列に接続する。制御回路60は、超音波信号の受信時は、スイッチ71,73およびスイッチ72,74を直列接続用配線81に接続し、各送受信兼用素子310を受信回路50に対して直列に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサーおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アレイ状に配置した超音波振動子(超音波トランスデューサー)により超音波ビームを整形し生体内の情報を測定する超音波センサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような超音波センサーでは、複数の送受信素子(超音波トランスデューサー)を送信回路や受信回路に対して並列接続していた。すなわち、各送受信素子の一対の電極のうち、一方の電極を共通電極(GND)に接続し、他方の電極を個別に送信回路および受信回路に接続していた。
これにより、送信時には各素子を個別に駆動できるため、複数の送受信素子を配置したアレイ構造の超音波センサーにおいて、超音波ビームの照射方向を可変して、測定対象に対して走査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4408974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の超音波センサーは、主に心臓や胎児の状態を測定していた。これに対し、近年、血管や血液のように、心臓などに比べて小さいものを検査対象とする超音波センサーが要望されている。
この超音波センサーは、従来に比べて、高分解能が要求されるため、使われる超音波は5MHz以上の高い周波数である。
【0006】
このような超音波の高周波化に伴い、各送受信素子のサイズや、配置ピッチ(アレイピッチ)を小さくする必要がある。
素子サイズが小さくなると、特に受信時の感度が低下し、受信信号のS/N比を確保できないという問題が発生する。
【0007】
本発明は、送信時には送受信素子を個別に駆動でき、かつ、受信感度を向上できる超音波センサーおよびこの超音波センサーを有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超音波センサーは、第1電極および第2電極を備えて超音波を送受信する複数の送受信兼用素子と、前記複数の送受信兼用素子の各第1電極にそれぞれ接続された複数の第1電極側スイッチと、前記複数の送受信兼用素子の各第2電極にそれぞれ接続された複数の第2電極側スイッチと、前記複数の送受信兼用素子の超音波の送信および受信を制御する制御回路と、前記複数の送受信兼用素子に超音波送信用の信号を出力する送信回路と、前記複数の送受信兼用素子で超音波を受信した際に出力される信号が入力される受信回路と、共通電極に接続された共通電極接続配線と、前記複数の送受信兼用素子を直列接続するための直列接続用配線と、を備え、前記制御回路は、超音波信号を送信する場合は、前記各第1電極側スイッチを前記送信回路に接続し、前記各第2電極側スイッチを前記共通電極接続配線に接続して、前記複数の送受信兼用素子を前記送信回路および前記共通電極に対して並列に接続し、超音波信号を受信する場合は、前記各第1電極側スイッチおよび第2電極側スイッチを前記直列接続用配線に接続して、前記複数の送受信兼用素子を前記受信回路に対して直列に接続することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、制御回路は、第1電極側スイッチおよび第2電極側スイッチを操作し、超音波の送信時には、各送受信兼用素子の第1電極を送信回路に接続し、第2電極を共通電極に接続する。このため、各送受信兼用素子は、送信回路および共通電極に対して並列に接続し、各送受信兼用素子を個別に駆動して超音波を送信できる。従って、基板上に各送受信兼用素子を配置したアレイ構造の超音波センサーにおいて、各送受信兼用素子の駆動タイミングを制御することで、超音波の送信方向(超音波ビームの走査方向)を可変することができる。
また、制御回路は、超音波の受信時には、前記各スイッチを操作し、各送受信兼用素子を、受信回路に対して直列に接続する。このため、各送受信兼用素子で超音波を受信した際に、各送受信兼用素子が受信回路に並列に接続されている場合に比べて、受信信号の電圧を高めることができ、受信感度を向上できる。
【0010】
本発明の超音波センサーにおいて、前記複数の送受信兼用素子は、n個(nは2以上の整数)設けられ、前記第1電極側スイッチおよび第2電極側スイッチは、それぞれn個設けられ、前記直列接続用配線は、各送受信兼用素子の第1電極側スイッチを、異なる各送受信兼用素子の第2電極側スイッチに接続してn個の送受信兼用素子を直列に接続するn−1本の素子間接続用配線と、前記素子間接続用配線に接続されない1つの第1電極側スイッチを受信回路に接続する1本の素子回路間接続用配線と、前記素子間接続用配線に接続されない1つの第2電極側スイッチを受信回路に接続する1本の素子回路間接続用配線とを備えることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、制御回路は、超音波の送信時には、n個の第1電極側スイッチおよびn個の第2電極側スイッチを操作し、n個の送受信兼用素子の各第1電極をそれぞれ送信回路に接続し、各第2電極を共通電極接続配線を介して共通電極に接続する。このため、n個の送受信兼用素子は、送信回路および共通電極に対して並列に接続し、n個の送受信兼用素子を個別に駆動して超音波を送信できる。従って、基板上にn個の送受信兼用素子を配置したアレイ構造の超音波センサーにおいて、各送受信兼用素子の駆動タイミングを制御することで、超音波の送信方向(超音波ビームの走査方向)を可変することができる。
また、制御回路は、超音波の受信時には、n個の第1電極側スイッチおよびn個の第2電極側スイッチを操作し、各送受信兼用素子の第1電極を、n−1本の素子間接続用配線を介して各送受信兼用素子の第2電極にそれぞれ接続し、n個の送受信兼用素子を互いに直列に接続する。
すなわち、n個の送受信兼用素子のうち、m番目(m=1〜n−1)の送受信兼用素子の第1電極を、m+1番目の送受信兼用素子の第2電極に、m番目の素子間接続用配線を用いて接続することで、1番目の送受信兼用素子からn番目の送受信兼用素子までが直列に接続される。
そして、1番目の送受信兼用素子の第2電極を第2の素子回路間接続用配線を介して受信回路に接続し、n番目の送受信兼用素子の第1電極を第1の素子回路間接続用配線を介して受信回路に接続することで、n個の送受信兼用素子は、受信回路に対して直列に接続する。
このため、n個の送受信兼用素子で超音波を受信した際に、n個の送受信兼用素子が受信回路に並列に接続されている場合に比べて、受信信号の電圧を高めることができ、受信感度を向上できる。
【0012】
本発明の超音波センサーは、第1電極および第2電極を備えて超音波を送受信する第1および第2の送受信兼用素子と、前記第1の送受信兼用素子の第1電極に接続された第1スイッチと、前記第1の送受信兼用素子の第2電極に接続された第2スイッチと、前記第2の送受信兼用素子の第1電極に接続された第3スイッチと、前記第2の送受信兼用素子の第2電極に接続された第4スイッチと、前記送受信兼用素子の超音波の送信および受信を制御する制御回路と、前記送受信兼用素子に超音波送信用の信号を出力する送信回路と、前記送受信兼用素子で超音波を受信した際に出力される信号が入力される受信回路と、共通電極に接続された共通電極接続配線と、直列接続用配線と、を備え、前記制御回路は、超音波信号を送信する場合は、前記第1スイッチおよび第3スイッチを前記送信回路に接続し、前記第2スイッチおよび第4スイッチを前記共通電極接続配線に接続し、超音波信号を受信する場合は、前記第1スイッチおよび第4スイッチを前記直列接続用配線に接続し、前記第2スイッチおよび第3スイッチを前記受信回路に接続することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、制御回路は、超音波の送信時には、第1〜4スイッチを操作し、各送受信兼用素子の第1電極を送信回路に接続し、第2電極を共通電極接続配線を介して共通電極に接続する。このため、各送受信兼用素子は、送信回路および共通電極に対して並列に接続し、各送受信兼用素子を個別に駆動して超音波を送信できる。従って、基板上に各送受信兼用素子を配置したアレイ構造の超音波センサーにおいて、各送受信兼用素子の駆動タイミングを制御することで、超音波の送信方向(超音波ビームの走査方向)を可変することができる。
また、制御回路は、超音波の受信時には、第1〜4スイッチを操作し、第1の送受信兼用素子の第1電極を、直列接続用配線を介して第2の送受信兼用素子の第2電極に接続し、第1の送受信兼用素子の第2電極および第2の送受信兼用素子の第1電極をそれぞれ受信回路に接続する。従って、2つの送受信兼用素子を受信回路に対して直列に接続できる。このため、各送受信兼用素子で超音波を受信した際に、各送受信兼用素子が受信回路に並列に接続されている場合に比べて、受信信号の電圧を高めることができ、受信感度を向上できる。
【0014】
本発明の超音波センサーは、第1電極および第2電極を備えて超音波を送受信する第1〜第4の送受信兼用素子と、前記第1の送受信兼用素子の第1電極に接続された第1スイッチと、前記第1の送受信兼用素子の第2電極に接続された第2スイッチと、前記第2の送受信兼用素子の第1電極に接続された第3スイッチと、前記第2の送受信兼用素子の第2電極に接続された第4スイッチと、前記第3の送受信兼用素子の第1電極に接続された第5スイッチと、前記第3の送受信兼用素子の第2電極に接続された第6スイッチと、前記第4の送受信兼用素子の第1電極に接続された第7スイッチと、前記第4の送受信兼用素子の第2電極に接続された第8スイッチと、前記送受信兼用素子の超音波の送信および受信を制御する制御回路と、前記送受信兼用素子に超音波送信用の信号を出力する送信回路と、前記送受信兼用素子で超音波を受信した際に出力される信号が入力される受信回路と、共通電極に接続された共通電極接続配線と、第1〜第3の直列接続用配線と、を備え、前記制御回路は、超音波信号を送信する場合は、前記第1,3,5,7スイッチを前記送信回路に接続し、前記第2,4,6,8スイッチを前記共通電極接続配線に接続し、超音波信号を受信する場合は、前記第1スイッチおよび第4スイッチを前記第1の直列接続用配線に接続し、前記第3スイッチおよび第6スイッチを前記第2の直列接続用配線に接続し、前記第5スイッチおよび第8スイッチを前記第3の直列接続用配線に接続し、前記第2スイッチおよび第7スイッチを前記受信回路に接続することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、制御回路は、超音波の送信時には、第1〜8スイッチを操作し、各送受信兼用素子の第1電極を送信回路に接続し、第2電極を共通電極接続配線を介して共通電極に接続する。このため、各送受信兼用素子は、送信回路および共通電極に対して並列に接続し、各送受信兼用素子を個別に駆動して超音波を送信できる。従って、基板上に各送受信兼用素子を配置したアレイ構造の超音波センサーにおいて、各送受信兼用素子の駆動タイミングを制御することで、超音波の送信方向(超音波ビームの走査方向)を可変することができる。
また、制御回路は、超音波の受信時には、第1〜8スイッチを操作し、第1〜4の送受信兼用素子同士を直列に接続し、これらの直列に接続された送受信兼用素子を受信回路に接続する。従って、4つの送受信兼用素子を受信回路に対して直列に接続できる。このため、各送受信兼用素子で超音波を受信した際に、各送受信兼用素子が受信回路に並列に接続されている場合に比べて、受信信号の電圧を高めることができ、受信感度を向上できる。
【0016】
本発明の超音波センサーは、前記複数の送受信兼用素子の配置位置にそれぞれ開口部が形成されたセンサー基板を備え、前記複数の送受信兼用素子は、前記センサー基板の一面側に積層されて前記開口部を閉塞するとともに、可撓性を有する支持膜と、前記支持膜に積層された前記第1電極と、前記第1電極に積層された圧電膜と、前記圧電膜に積層された前記第2電極と、を備えて構成されることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、センサー基板の開口部を閉塞する支持膜によってダイアフラムが構成され、このダイアフラム上に第1電極、圧電膜、第2電極を積層して圧電体を形成して送受信兼用素子を構成する。
このため、センサー基板上に、支持膜、第1電極、圧電膜、第2電極を順次積層することで送受信兼用素子を構成でき、フォトリソグラフィー技術を用いて製造できるため、各素子の微細化も容易に対応できる。
さらに、すべての送受信兼用素子が同じ素子構造であるため、センサー基板上の複数の送受信兼用素子を同じ製造工程で同時に形成でき、超音波センサーを容易に製造できる。
その上、送受信兼用素子は共通プロセスで製造されるため、各素子の周波数特性等の特性が揃い、直列接続された場合の受信特性を向上できる。
【0018】
本発明において、第1電極および第2電極を備えて超音波を送信する複数の送信素子を備え、前記送信素子の第1電極は、前記送信回路に接続され、前記送信素子の第2電極は、前記共通電極に接続されていることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、複数の送受信兼用素子に加えて、複数の送信素子を備えるため、送受信兼用素子の数を増やすことなく、送信用に用いられる素子の数を増やすことができる。この際、送信素子の第1電極と送信回路とを接続する電極線は、各送信素子毎に設ける必要があるが、第2電極と共通電極とを接続する電極線は、複数の送信素子において兼用することができる。このため、送信時の超音波の出力を確保するために必要な数の素子をすべて送受信兼用素子で構成する場合に比べ、送受信兼用素子は受信に必要な数に抑え、残りを送信素子で構成できるので、配線数を少なくできる。このため、配線用のスペースも小さくでき、回路の微細化や高密度化を容易に実現できる。
【0020】
本発明において、前記送受信兼用素子および送信素子が、X軸およびY軸の互いに直交する二方向に沿って配置されたセンサー基板を備え、前記各素子は、X軸方向およびY軸方向に等間隔で配列され、前記送受信兼用素子は、前記各素子が配置された領域の中心点に最も近い位置に配置されていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、各素子をセンサー基板上に二次元に配列することで、二次元アレイの超音波センサーを構成できる。この際、送受信兼用素子を、二次元アレイの中心点に最も近い位置に配置しているので、各送受信兼用素子における超音波の受信タイミングのずれも殆ど無くすことができる。このため、遅延回路を用いることなく、受信モード時に直列に接続された送受信兼用素子を回路的に1つの受信素子として利用できる。
【0022】
本発明において、前記センサー基板は、前記中心点を通る前記X軸およびY軸により分割される4つの領域を備え、前記各領域内において、前記送受信兼用素子の第1電極および第2電極にそれぞれ接続する電極線と、各送信素子の第1電極に接続する電極線が、前記Y軸から離れるX軸方向に延びていることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、各領域内において、送受信兼用素子の第1電極および第2電極にそれぞれ接続する電極線と、送信素子の第1電極に接続する各電極線は、Y軸から離れるX軸方向に延びているので、Y軸を跨いで他の領域に向けて引き出されることがない。従って、センサー基板を分割することなく、各電極線を同じ方向のみに引き出す場合と比べて、各領域内において配線される電極線の本数を少なくできる。
【0024】
本発明において、前記Y軸に沿って配線され、かつ前記共通電極に接続された送信素子用の共通電極線を備え、前記各領域内において、前記各送信素子の第2電極から引き出される電極線は、前記送信素子用の共通電極線に接続されていることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、送信素子用の共通電極線には、送信素子の第2電極から引き出される電極線がそれぞれ接続され、この共通電極線は、Y軸に沿って配置されているのみである。従って、共通電極線は、Y軸に沿った1本のみ配置すればよいので、構成を簡素化できる。
また、送受信兼用素子の各電極と、各送信素子の第1電極から引き出される各電極線は、Y軸から離れる方向に延長され、Y軸を跨いで配置されることがないため、共通電極線が、これらの電極線と接触することを防止できる。
【0026】
本発明の電子機器は、上述の超音波センサーを備えることを特徴とする。
本発明では、上述の超音波センサーを備えるので、超音波の送信方向(超音波ビームの走査方向)を可変することができ、かつ、受信信号の電圧を高めることができ、受信感度を向上できる効果を奏する電子機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波センサーの概略構成を示す平面図。
【図2】前記第1実施形態に係る超音波トランスデューサーを示す平面図及び断面図。
【図3】前記第1実施形態に係る超音波センサーの送信モード時を示す回路図。
【図4】前記第1実施形態に係る超音波センサーの受信モード時を示す回路図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る超音波センサーの概略構成を示す平面図。
【図6】本発明の第3実施形態に係る超音波センサーの概略構成を示す平面図。
【図7】本発明の第4実施形態に係る超音波センサーの概略構成を示す平面図。
【図8】前記第4実施形態に係る超音波センサーの受信モード時を示す回路図。
【図9】本発明の第5実施形態に係る超音波センサーの概略構成を示す平面図。
【図10】本発明の実施例である血管径測定装置の外観を示す図。
【図11】血管径測定装置の超音波センサーから血管の中心位置を通る超音波を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
[超音波センサーの概略構成]
図1は、本実施形態に係る超音波センサー10の概略構成を示す平面図である。
超音波センサー10は、センサー基板20上に実装される複数の超音波トランスデューサー30を備える。この超音波センサー10は、図1に示すように、センサー基板20上に4つの超音波トランスデューサー30が、X軸L1及びY軸L2に沿って均等間隔に配置されたマトリクス状の二次元アレイ構造に構成されている。なお、X軸L1およびY軸L2は、センサー基板20の平面内で直交する軸であり、矩形上のセンサー基板20の各辺に沿った軸である。
そして、本実施形態では、4つの超音波トランスデューサー30のうち、2つを送受信兼用素子310A,310Bとして用い、他の2つを送信素子320として用いている。なお、以下の説明において、2つの送受信兼用素子310A,310Bを区別せずに説明する場合には送受信兼用素子310と表記する場合がある。
【0029】
センサー基板20は、例えばシリコン(Si)などの半導体形成素材により形成される。このセンサー基板20は、当該基板20の厚み方向に見る平面視において、各素子310,320による二次元アレイの中心点O(交差点、素子領域の中心点)を通り、互いに直交するX軸L1(分割仮想線)及びY軸L2(分割仮想線)により分割される4つの領域(第1領域Ar1、第2領域Ar2、第3領域Ar3、及び第4領域Ar4)を有する。
【0030】
[超音波トランスデューサーの構成]
ここで、超音波トランスデューサー30の概略構成について説明する。図2は、本実施形態の超音波トランスデューサー30の概略構成を示す平面図、および断面図である。
超音波トランスデューサー30は、後述する送信回路40からの信号に基づいて超音波を送信する素子であり、また、被検出体等で反射された超音波を受信して電気信号に変換し、受信回路50に出力する素子である。
【0031】
超音波トランスデューサー30は、図2に示すように、開口部31Aが形成された支持部31と、支持部31上を覆い、開口部31Aを閉塞する支持膜32と、支持膜32上に形成される圧電体33とを備えている。
【0032】
支持部31は、センサー基板20の前記支持膜32が積層される部分、すなわち超音波トランスデューサー30が形成される部分である。また、支持部31に形成される開口部31Aは、例えば、平面視で円形状に形成されている。これにより、支持膜32において開口部31Aの内側に位置する部分によってダイアフラム321が構成され、このダイアフラム321が平面円形に形成されるため、ダイアフラム321の撓みに対する応力を均一にすることができる。
【0033】
支持膜32は、支持部31上で、開口部31Aを閉塞する状態に成膜されている。この支持膜32は、例えばSiO層32AとZrO層32Bとの2層構造により構成されている。ここで、SiO層32Aは、支持部31がSi基板である場合、基板表面を熱酸化処理することで成膜することができる。また、ZrO層32Bは、SiO層32A上に例えばスパッタリングなどの手法により成膜される。ここで、ZrO層32Bは、圧電膜332として例えばPZTを用いる場合に、PZTを構成するPbがSiO層32Aに拡散することを防止するための層である。また、ZrO層32Bは、圧電体33の歪みに対する撓み効率を向上させるなどの効果もある。
【0034】
圧電体33は、支持膜32の上層に積層される下部電極331(第1電極)と、下部電極331上に形成される圧電膜332と、圧電膜332上に形成される上部電極333(第2電極)とを備えている。
【0035】
圧電膜332は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、圧電膜332としてPZTを用いるが、電圧を印加することで、面内方向に収縮することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)などを用いてもよい。
【0036】
[超音波トランスデューサーの配線構造]
各送受信兼用素子310、送信素子320の下部電極331には、下部電極線334(第1電極線)が引き出されている。下部電極線334は、図1に示すように、送受信兼用素子310、送信素子320からセンサー基板20の端縁に向かって、支持膜32上のX軸方向に沿って配線されている。
【0037】
送受信兼用素子310の上部電極333には、上部電極線3351(第2電極線)が引き出されている。上部電極線3351は、図1に示すように、送受信兼用素子310から支持膜32上のX軸L1に向かってY軸方向に配線された後、センサー基板20の端縁に向かってX軸方向に配線されている。
【0038】
送信素子320の上部電極333にも、上部電極線3352(第2電極線)が引き出されている。この上部電極線3352は、送信素子320からY軸L2に向かってX軸方向に配線されている。
そして、上部電極線3352は、Y軸L2に沿って配線された共通電極線336に接続されている。
なお、以下の説明において、上部電極線3351,3352を区別せずに説明する場合には、図2に示すように、上部電極線335と表記する場合がある。また、図2の平面図では、上部電極線335は、上部電極333から左右2方向に延長されている。しかしながら、図1に示すように、本実施形態では、上部電極線335は、各素子310,320の上部電極333から一方向のみに形成すればよい。このため、上部電極線335が上部電極333から左右2方向に延長されている場合は、一方の上部電極線335のみを端子361や共通電極線336に接続すればよい。
【0039】
センサー基板20には、各電極線334,335に接続する端子が形成されている。
すなわち、2つの送受信兼用素子310のうち、第1の送受信兼用素子310Aの下部電極線334には第1の下部電極端子351が接続され、上部電極線3351には第1の上部電極端子361が接続されている。
また、第2の送受信兼用素子310Bの下部電極線334には第2の下部電極端子352が接続され、上部電極線3351には第2の上部電極端子362が接続されている。
【0040】
また、2つの送信素子320の下部電極線334には下部電極端子355がそれぞれ接続され、共通電極線336には共通電極端子365が接続されている。
これらの各端子351,352,355,361,362,365は、図1に示すように、センサー基板20の3辺に分散して配置されている。
【0041】
このような超音波トランスデューサー30(送受信兼用素子310、送信素子320)では、下部電極(第1電極)331と、上部電極(第2電極)333とに電圧を印加することで、圧電膜332が面内方向に伸縮する。このとき、圧電膜332の一方の面は、下部電極331を介して支持膜32に接合されるが、他方の面には、上部電極333が形成されるものの、この上部電極333上には他の層が積層形成されないため、圧電膜332の支持膜32側が伸縮しにくく、上部電極333側が伸縮し易くなる。このため、圧電膜332に電圧を印加すると、開口部31A側に凸となる撓みが生じ、ダイアフラム321を撓ませる。したがって、圧電膜332に交流電圧を印加することで、ダイアフラム321が膜厚方向に対して振動し、このダイアフラム321の振動により超音波が出力される。
【0042】
また、超音波トランスデューサー30は、被検出体により反射された超音波をダイアフラム321で受信することでダイアフラム321が膜厚方向に振動する。超音波トランスデューサー30では、このダイアフラム321の振動により、圧電膜332の下部電極331側の面と上部電極333側の面とで電位差が発生し、上部電極333および下部電極331から圧電膜332の変位量に応じた電気信号(電流)が出力される。送受信兼用素子310は、この電気信号を受信信号として出力する。
【0043】
[超音波トランスデューサーの配置構成]
4つの超音波トランスデューサー30は、図1に示すように、二次元アレイの中心点Oに対して等距離であり、かつ、X軸方向およびY軸方向の距離が等距離となるように2次元に配列されている。
すなわち、第1領域Ar1および第4領域Ar4には、送信素子320が前記中心点Oを中心に点対称位置に配置されている。また、第2領域Ar2には、第1の送受信兼用素子310Aが配置され、第3領域Ar3には、第2の送受信兼用素子310Bが配置され、これらの送受信兼用素子310A,310Bも、前記中心点Oを中心に点対称位置に配置されている。
そして、送受信兼用素子310A,310Bと送信素子320のX軸方向の間隔(ピッチ)と、Y軸方向の間隔(ピッチ)は、同じ寸法に設定されている。この各素子のピッチは、例えば、発信する超音波の波長の1/2程度に設定されるため、超音波の周波数が高くなるにつれてピッチを小さくする必要がある。
【0044】
[超音波トランスデューサーの回路構成]
図3は、図1に示す超音波センサー10を駆動するための回路構成を示す回路図である。
図3に示すように、超音波センサー10は、前記センサー基板20と、送信回路40と、受信回路50と、制御回路60と、第1〜4スイッチ71〜74と、共通電極接続配線80と、直列接続用配線81,82,83とを備えている。
【0045】
送信回路40は、送受信兼用素子310、送信素子320の下部電極331に駆動信号を出力し、各送受信兼用素子310、送信素子320から超音波を出力させる。ここで、各送受信兼用素子310、送信素子320が二次元に配列されて二次元アレイとされているので、各素子310,320から超音波を発信させるタイミングを遅延させることで、所望の方向に平面波として伝搬するビーム状の超音波を発信可能となる。
【0046】
受信回路50は、各素子310,320から送信された超音波ビームが測定対象物に反射して送受信兼用素子310で受信した際に出力される受信信号を処理することで、超音波発信タイミングから超音波受信タイミングまでの時間(TOFデータ:Time Of Flightデータ)を計測し、超音波素子から測定対象物までの距離を検出することができる。
【0047】
制御回路60は、前記送信回路40、受信回路50と、各スイッチ71〜74とを制御して、超音波センサー10を送信モードまたは受信モードで動作させるものである。
【0048】
各スイッチ71〜74は、トランジスターで構成され、それぞれ以下に説明するように、送受信兼用素子310の接続先を切り替える切替スイッチである。
第1スイッチ71は、第1の下部電極端子351を、送信回路40に接続される接点711と、直列接続用配線81の接点712とに選択的に接続する切替スイッチである。
第2スイッチ72は、第1の上部電極端子361を、受信回路50に接続された直列接続用配線82の接点721と、共通電極COMに接続される共通電極接続配線80の接点722とに選択的に接続する切替スイッチである。
【0049】
第3スイッチ73は、第2の下部電極端子352を、送信回路40に接続される接点731と、受信回路50に接続される直列接続用配線83の接点732とに選択的に接続する切替スイッチである。
第4スイッチ74は、第2の上部電極端子362を、共通電極COMに接続される共通電極接続配線80の接点741と、直列接続用配線81の接点742とに選択的に接続する切替スイッチである。
従って、第1スイッチ71、第3スイッチ73により、送受信兼用素子310の第1電極(下部電極331)に接続された第1電極側スイッチが構成され、第2スイッチ72、第4スイッチ74により、第2電極側スイッチが構成されている。
また、2つの送受信兼用素子310を直列に接続する直列接続用配線81により、素子間接続用配線が構成される。さらに、第1電極側スイッチである第3スイッチ73を受信回路50に接続する直列接続用配線83により、第1の素子回路間接続用配線が構成され、第2電極側スイッチである第2スイッチ72を受信回路50に接続する直列接続用配線82により、第2の素子回路間接続用配線が構成される。
【0050】
これらのスイッチ71〜74は、制御回路60により連動して動作する。すなわち、制御回路60は、超音波センサー10を送信モードに制御する場合、図3に示すように、スイッチ71,73を接点711,731に接続し、スイッチ72,74を接点722,741に接続する。
このため、送受信兼用素子310は、送信素子320と同じく送信回路40および共通電極COMに接続され、送信素子として機能する。
【0051】
一方、制御回路60は、超音波センサー10を受信モードに制御する場合、図4に示すように、スイッチ71,73を接点712,732に接続し、スイッチ72,74を接点721,742に接続する。
このため、送受信兼用素子310Aと、第2の送受信兼用素子310Bとは、直列接続用配線81〜83を介して、受信回路50に直列に接続される。
【0052】
[第1実施形態の効果]
上述した第1実施形態における超音波センサー10によれば、以下の効果を奏する。
(1)送受信兼用素子310の各電極331,333に接続されるスイッチ71〜74と、直列接続用配線81〜83とを設けることで、受信モード時に、各送受信兼用素子310A,310Bを、受信回路50に対して直列に接続することができる。
このため、受信回路50に対して受信素子を並列に接続した場合に比べて、受信信号の電圧を約2倍に高めることができ、受信感度を向上できる。従って、血管や血液などの高分解能が要求される測定対象を測定するために高周波の超音波を発信できるように、素子サイズやピッチを小さくした場合でも、各送受信兼用素子310A,310Bを直列に接続することで受信感度を向上でき、受信信号のS/N比も確保できる。
【0053】
(2)送受信兼用素子310は、送信モード時は、送信素子320と同じ送信素子として機能するため、各素子310,320を等ピッチで二次元に配置できる。このため、送信波形を乱すことがなく、微細で高密度のアレイ構造を実現できる。
特に、送受信兼用素子310を設けずに、送信素子と、受信素子とを別々に設けた場合、送信素子間のピッチを小さくすると、送信素子間に受信素子を配置することが困難となるため、送信素子間のピッチを小さくすることができず、高周波の超音波を送信することが難しい。これに対し、本実施形態では、送受信兼用素子310を用いているので、送信素子間のピッチを小さくすることができ、5MHz以上の周波数の超音波を送信することができる。従って、血管や血液などの微細な測定対象物の状態も検出することができる。
【0054】
(3)その上、送受信兼用素子310A,310Bは、4個の素子による二次元アレイの中心点Oに最も近い位置で、かつ、中心点Oを中心とする点対称位置に配置されているので、各送受信兼用素子310A,310Bにおける超音波の受信タイミングのずれも殆ど無い。このため、遅延回路を用いることなく、受信モード時に直列に接続された送受信兼用素子310A,310Bを回路的に1つの受信素子として利用できる。従って、遅延回路が不要なため、回路構成も簡素化できる。
【0055】
(4)2つの送受信兼用素子310の他に、2つの送信素子320を配置しているので、4つの素子をすべて送受信兼用素子310で構成する場合に比べて、配線数(端子数)を少なくできる。
すなわち、送受信兼用素子310は、各電極331,333に接続する配線をそれぞれ別々に設ける必要があるため、送受信兼用素子310を4つ配置した場合には、配線(端子)を8個配置しなければならない。
これに対し、本実施形態では、送受信兼用素子310は2つのみ設置し、他の2つは送信素子320を配置している。そして、送信素子320は、上部電極333側の上部電極線3352は共通電極線336にまとめることができるので、全体で配線(端子)の数を7個に減少できる。従って、この点でも、各素子のピッチを小さくでき、微細化・高密度化を実現できる。
【0056】
(5)センサー基板20の4つの領域Ar1〜Ar4に、各素子310,320を個別に配置し、かつ、各素子310,320から引き出される下部電極線334、上部電極線3351、上部電極線3352も、各領域Ar1〜Ar4内に配置しているので、配線や端子をセンサー基板20において分散して配置でき、配線などの過密化を防止できる。
【0057】
(6)センサー基板20には、各素子310,320と、電極線334,3351,3352,336と、端子351,352,355,361,362,365のみを配置し、トランジスターのスイッチ71〜74はセンサー基板20の外部に設けている。このため、フォトリソグラフィー技術を用いて、支持部31上に支持膜32や薄膜圧電体33、電極線334,3351,3352,336を積層、パターニングしてセンサー基板20を製造でき、各素子310,320の微細化なども容易に対応できる。
【0058】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る超音波センサー10Bの主要部を拡大して示す平面図である。
超音波センサー10Bでは、送受信兼用素子310および送信素子320を直線上に配置したラインアレイ構造である点で前記二次元アレイ構造の超音波センサー10と相違するが、回路構成等は同一である。
【0059】
すなわち、送受信兼用素子310A,310Bは、センサー基板20上に所定ピッチ離れて配置され、送信素子320は、送受信兼用素子310A,310Bの外側にかつ各素子310A,310Bから所定ピッチ離れて配置されている。このため、各素子310A,310B,320は、一方向にかつ等間隔離れて配置されている。
【0060】
そして、各素子310A,310B,320の各電極331,333からは、第1実施形態と同じく電極線334,3351,3352,336が引き出されている。
すなわち、下部電極線334は、図5において、送受信兼用素子310A,310Bおよび送信素子320の各下部電極331から−Y軸方向に引き出されている。
また、上部電極線3351は、送受信兼用素子310A,310Bの上部電極333から、送信素子320の下部電極線334に向かって斜め方向に引き出された後、各下部電極線334と平行に−Y軸方向に引き出されている。
【0061】
さらに、上部電極線3352は、送信素子320の上部電極333から+Y軸方向に引き出された後、Y軸L2に向かってX軸方向に引き出され、Y軸L2上に配線された共通電極線336に接続されている。
各電極線334,3351,3352,336の端部には、前記第1実施形態と同じ端子351,352,355,361,362,365が設けられる。従って、超音波センサー10Bの回路構成は、第1実施形態の超音波センサー10と同じである。
【0062】
[第2実施形態の効果]
このような第2実施形態においては、各素子310A,310B,320が直線上に配置されているので、超音波ビームの走査方向が限定される点を除き、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、第2実施形態では、電極線334,3351,336が−Y軸方向に引き出されているので、端子351,352,355,361,362,365をセンサー基板20の一辺側にまとめることができる。ただし、第1実施形態においても、各電極線334,3351,336を同じ方向に引き回すことで、各端子をセンサー基板20の一辺側にまとめることができる。
【0063】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る超音波センサー10Cの主要部を拡大して示す平面図である。
第1実施形態の超音波センサー10は、2個の送受信兼用素子310と、2個の送信素子320との計4個の素子310,320を二次元に配列していたのに対し、超音波センサー10Cは2個の送受信兼用素子310と、14個の送信素子320との計16個の素子310,320を二次元に配列した点が相違する。すなわち、超音波センサー10Cは、X軸方向に4個、Y軸方向に4個の素子310,320を配列している。
【0064】
二次元アレイの中心点Oに近接配置される4つの素子は、前記第1実施形態と同じである。すなわち、2つの送受信兼用素子310A,310Bは、X軸L1およびY軸L2で区分される4つの領域のうち、第2、第3領域Ar2,Ar3に配置されている。他の2つの送信素子320は、第1,第4領域Ar1,Ar4に配置されている。
【0065】
これらの4個の素子310,320の外周側には、12個の送信素子320A,320B,320Cが配置されている。なお、本実施形態でも、送信素子320,320A,320B,320Cを区別せずに説明する場合には、送信素子320と表記する場合がある。
ここで、4個の送信素子320Aは二次元アレイの四隅に配置され、4個の送信素子320Bは送信素子320AのX軸方向の内側(Y軸L2側)に配置され、4個の送信素子320Cは送信素子320AのY軸方向の内側(X軸L1側)に配置されている。
従って、外周側の12個の送信素子320は、各領域Ar1〜Ar4に、各送信素子320A,320B,320Cがそれぞれ1個ずつ配置される構成となっている。
【0066】
これらの16個の素子310,320は、X軸方向およびY軸方向に隣接する他の素子に対して、等間隔(等ピッチ)で配置されている。
【0067】
第1の送受信兼用素子310Aの各電極331,333からは、下部電極線334および上部電極線3351が引き出されている。各電極線334,3351は、図6において、第2、第4領域Ar2,Ar4を分割するX軸L1に向かって斜めに引き出された後、X軸L1に沿って+X軸方向に引き出されている。
【0068】
第2の送受信兼用素子310Bの各電極331,333からは、下部電極線334および上部電極線3351が引き出されている。各電極線334,3351は、図6において、第1、第3領域Ar1,Ar3を分割するX軸L1に向かって斜めに引き出された後、X軸L1に沿って−X軸方向に引き出されている。
【0069】
第1,第4領域Ar1,Ar4において、内周側(中心点O側)の2つの送信素子320の下部電極331からは、各領域における送信素子320A,320B間に向かって下部電極線334が引き出されている。
【0070】
送信素子320A、320Cの下部電極331からは、X軸方向外周側に向かって下部電極線334が引き出されている。すなわち、第1、第3領域Ar1,Ar3の送信素子320A、320Cからは−X軸方向に下部電極線334が引き出され、第2、第4領域Ar2,Ar4の送信素子320A、320Cからは+X軸方向に下部電極線334が引き出されている。
【0071】
送信素子320Bの下部電極331からは、Y軸方向外周側に向かって引き出された後、X軸方向外周側に向かって下部電極線334が引き出されている。
すなわち、第1領域Ar1の送信素子320Bの下部電極線334は、+Y軸方向に引き出された後、−X軸方向に引き出されている。
第2領域Ar2の送信素子320Bの下部電極線334は、+Y軸方向に引き出された後、+X軸方向に引き出されている。
第3領域Ar3の送信素子320Bの下部電極線334は、−Y軸方向に引き出された後、−X軸方向に引き出されている。
第4領域Ar4の送信素子320Bの下部電極線334は、−Y軸方向に引き出された後、+X軸方向に引き出されている。
【0072】
一方、各送信素子320,320A,320B,320Cの上部電極333から引き出された上部電極線335は、Y軸L2に沿って配線された共通電極線336に向かってX軸方向に引き出されている。
すなわち、第1領域Ar1では、送信素子320Aの上部電極333から送信素子320Bの上部電極333を介して+X軸方向に上部電極線335が引き出され、前記共通電極線336に接続されている。
また、送信素子320Cの上部電極333から送信素子320の上部電極333を介して+X軸方向に上部電極線335が引き出され、前記共通電極線336に接続されている。
ここで、送信素子320および320Bにおいては、図2に示すように、上部電極線335が上部電極333から左右2方向に延長され、一方は各々が隣接する送信素子320C、320Aの上部電極線335に接続され、他方は共通電極線336に接続されている。なお、この構造は、以下に説明する図7や図9において、上部電極線335が2方向に延長されている各送信素子320A,320B,320Dにおいても同様である。
【0073】
第2領域Ar2では、送信素子320Aの上部電極333から送信素子320Bの上部電極333を介して−X軸方向に上部電極線335が引き出され、前記共通電極線336に接続されている。
一方、送信素子320CのY軸L2側には送受信兼用素子310Aが配置されており、送信素子320Cから−X軸方向に上部電極線335を引き出すことができない。このため、送信素子320Cの上部電極333から+Y軸方向に上部電極線3353が引き出されて前記送信素子320Aの上部電極333に接続されている。
【0074】
第3領域Ar3では、第2領域Ar2と同様に、送信素子320CのY軸L2側に第2の送受信兼用素子310Bが配置されている。このため、送信素子320Cの上部電極333から−Y軸方向に上部電極線3353が引き出されて送信素子320Aの上部電極333に接続されている。さらに、送信素子320Aの上部電極333から送信素子320Bの上部電極333を介して+X軸方向に上部電極線335が引き出され、共通電極線336に接続されている。
【0075】
第4領域Ar4では、送信素子320Aの上部電極333から送信素子320Bの上部電極333を介して−X軸方向に上部電極線335が引き出され、前記共通電極線336に接続されている。
また、送信素子320Cの上部電極333から送信素子320の上部電極333を介して−X軸方向に上部電極線335が引き出され、前記共通電極線336に接続されている。
【0076】
送受信兼用素子310から引き出された各下部電極線334、上部電極線3351は、前記第1実施形態と同様に、端子351,352,361,362に接続されている。従って、超音波センサー10Cにおいても、送受信兼用素子310は、制御回路60により制御されるスイッチ71〜74を介して、送信モード時には送信回路40および共通電極COMに対して並列に接続され、受信モード時には受信回路50に対して直列に接続される。
【0077】
一方、各送信素子320A,320B,320Cは、送信素子320と同様に、下部電極331は下部電極線334および下部電極端子355を介して個別に送信回路40に接続され、上部電極333は上部電極線335、共通電極線336および共通電極端子365を介して共通電極COMに接続されている。すなわち、各送信素子320,320A,320B,320Cは、送信回路40および共通電極COMに対して並列に接続されている。
【0078】
[第3実施形態の効果]
このような本実施形態においても、送受信兼用素子310を送信モード時には送信回路40および共通電極COMに対して並列に接続し、受信モード時には受信回路50に対して直列に接続しているので、前記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
また、第1,2実施形態の超音波センサー10,10Bでは、送受信兼用素子310を含んでX軸方向に2個、Y軸方向に2個の計4個の送信素子で超音波を送信しているのに対し、本実施形態の超音波センサー10Cは、X軸方向に4個、Y軸方向に4個の計16個の送信素子で超音波を送信できる。このため、超音波の送信出力を高めることができ、かつ、超音波の走査範囲も広げることができる。
【0080】
さらに、センサー基板20を、X軸L1および軸L2によって4つの領域Ar1〜Ar4に分割し、各領域Ar1〜Ar4内において、送信素子320,320A,320B,320Cの下部電極331から引き出される各下部電極線334を、中心点Oから離れる方向に引き出している。
すなわち、Y軸L2を挟んだ2つの領域Ar1,Ar2またはAr3,Ar4において、下部電極線334がY軸を跨いでX軸方向に引き出されることがない。このため、各領域Ar1〜Ar4内において、送信素子320,320A,320B,320Cの下部電極331から引き出される下部電極線334の本数を、均等に分散できる。
その上、送受信兼用素子310A,310Bの各電極線334,3351も、X軸L1を挟んで配置することで、各領域Ar1〜Ar4に配置される配線数を均等に分散できる。
従って、配線が一部分に集中することがなく、配線や素子の微細化・高密度化を容易に実現できる。
【0081】
また、送信素子320,320A,320B,320Cを14個配置しているが、これらの上部電極333は共通電極線336を介して共通電極COMに接続しているので、各送信素子に対して個別に2本ずつ配線した場合に比べて引き出し配線数を低減でき、この点でも配線の微細化・高密度化を容易に実現できる。
また、共通電極線336は、Y軸L2に沿って配置されるので、Y軸L2から離れる方向に配線されて、X軸L1に沿う下部電極線334との接触を防止できる。
【0082】
さらに、送受信兼用素子310A,310Bは、16個の素子による二次元アレイの中心点Oに最も近い位置で、かつ、中心点Oを中心とする点対称位置に配置されているので、各送受信兼用素子310A,310Bにおける超音波の受信タイミングのずれも殆ど無い。このため、遅延回路を用いることなく、受信モード時に直列に接続された送受信兼用素子310A,310Bを回路的に1つの素子として利用できる。
すなわち、受信素子として用いられる送受信兼用素子310A,310Bを、例えば、二次元アレイの外周側、つまり送信素子320A、320B,320Cが配置された位置に設けると、二次元アレイの中心点Oから離れるため、超音波の受信タイミングのズレが大きくなる。この場合、送受信兼用素子310A,310Bを直列接続すると、受信タイミングのズレによって正しい受信信号を取得することができないおそれがある。このため、一方の送受信兼用素子を遅延回路に接続して調整する必要がある。
これに対し、本実施形態のように、送受信兼用素子310A,310Bを中心点Oに最も近い位置に配置すれば、受信タイミングのズレも殆ど無いため、各送受信兼用素子310A,310Bを直列に接続した場合も遅延回路を設けることなく1つの受信素子として利用できる。
【0083】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係る超音波センサー10Dの主要部を拡大して示す平面図である。
第3実施形態の超音波センサー10Cは、中心点Oに近接する内周側の4個の素子を、2個の送受信兼用素子310と、2個の送信素子320とで構成していたのに対し、本実施形態の超音波センサー10Dは、中心点Oに近接する内周側の4個の素子をすべて送受信兼用素子310にした点が相違する。
【0084】
中心点Oに近接配置される4つの素子は、すべて送受信兼用素子310(310A,310B,310C,310D)で構成されている。
これらの4個の送受信兼用素子310の外周側には、第3実施形態と同じ12個の送信素子320A,320B,320Cが配置されている。
これらの16個の素子310,320は、X軸方向およびY軸方向に隣接する他の素子に対して、等間隔(等ピッチ)で配置されている。
【0085】
各送受信兼用素子310A〜310Dの各電極331,333からは、下部電極線334および上部電極線3351が引き出されている。各電極線334,3351は、図7に示すように、各領域Ar1〜Ar4における送信素子320Aに向かって斜めに引き出された後、送信素子320A,320C間をX軸方向に沿って外側(Y軸L2から離れる方向)に引き出されている。
【0086】
送信素子320A、320B,320Cの下部電極331から引き出された下部電極線334の配線は、第3実施形態の超音波センサー10Cと同じであるため、説明を省略する。
【0087】
送信素子320A,320Bの上部電極333から引き出された上部電極線335は、Y軸L2に沿って配線された共通電極線336に向かってX軸方向に引き出されている。
すなわち、各領域Ar1〜Ar4において、送信素子320Aの上部電極333から送信素子320Bの上部電極333を介してY軸L2に向かってX軸方向に上部電極線335が引き出され、前記共通電極線336に接続されている。
【0088】
一方、送信素子320Cは、Y軸L2側に送受信兼用素子310が配置されており、かつ、送信素子320A側には送受信兼用素子310の配線が配置されているので、X軸L1に沿って配線した共通電極線337を利用している。
すなわち、各送信素子320Cの上部電極333から引き出された上部電極線335は、X軸L1に向かってY軸方向に沿って配線され、X軸L1に沿って配線された共通電極線337を介して共通電極線336に接続されている。
【0089】
[超音波トランスデューサーの回路構成]
図8は、超音波センサー10Dを駆動するための回路構成を示す回路図である。
本実施形態では、第1実施形態に比べて、第3,4の送受信兼用素子310C,310Dが追加されたため、対応して第3,4の下部電極端子353,354と、第3,4の上部電極端子363,364とが追加されている。
また、各端子353,354,363,364に接続する第5〜8スイッチ75,76,77,78と、直列接続用配線81A,81B,81Cとが追加されている。
なお、本実施形態では、スイッチ71,73,75,77により第1電極側スイッチが構成され、スイッチ72,74,76,78により第2電極側スイッチが構成されている。
【0090】
なお、各送信素子320(320A,320B,320C)は下部電極線334を介して下部電極端子355に接続され、上部電極線335、共通電極線336,337を介して共通電極COMに接続されており、この回路構成は第1実施形態と同じである。このため、図8では、代表して4個の送信素子320のみを表示し、残りの8個の送信素子320の回路は省略している。
【0091】
直列接続用配線81Aは、スイッチ71,74を介して端子351,362を接続するものである。同様に、直列接続用配線81Bは、スイッチ73,76を介して端子352,363を接続し、直列接続用配線81Cは、スイッチ75,78を介して端子353,364を接続するものである。
そして、端子361は、第2スイッチ72および直列接続用配線82を介して受信回路50に接続され、端子354は第7スイッチ77および直列接続用配線83を介して受信回路50に接続可能とされている。
従って、本実施形態では、直列接続用配線81A,81B,81Cにより素子間接続用配線が構成され、直列接続用配線83により第1の素子回路間接続用配線が構成され、直列接続用配線82により第2の素子回路間接続用配線が構成される。
【0092】
[送信モード時の動作]
制御回路60は、送信モードになると、スイッチ71,73,75,77を送信回路40側の接点に接続し、スイッチ72,74,76,78を共通電極接続配線80の接点に接続する。
このため、送受信兼用素子310および送信素子320は、すべて送信回路40および共通電極COMに並列に接続される。そして、制御回路60は、送信回路40を作動して各素子310,320を駆動して超音波を送信する。この際、各素子310,320を駆動するタイミングを調整することで、超音波ビームの走査方向は制御できる。
【0093】
[受信モード時の動作]
制御回路60は、受信モードになると、スイッチ71,73,75,77およびスイッチ72,74,76,78を直列接続用配線81A,81B,81C,82,83側の接点に接続する。
このため、4つの送受信兼用素子310A,310B,310C,310Dは、受信回路50に対して直列に接続される。
【0094】
[第4実施形態の効果]
このような本実施形態においても、送受信兼用素子310を送信モード時には送信回路40および共通電極COMに対して並列に接続し、受信モード時には受信回路50に対して直列に接続しているので、前記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0095】
また、受信モード時には、4個の送受信兼用素子310を受信回路50に対して直列に接続しているので、受信回路50に対して受信素子を並列に接続した場合に比べて、受信信号の電圧を約4倍に高めることができ、受信感度を向上できる。従って、血管や血液などの高分解能が要求される測定対象を測定できるように、素子サイズやピッチを小さくした場合でも、必要な受信感度を維持でき、受信信号のS/N比も確保できる。
【0096】
さらに、センサー基板20を、X軸L1および軸L2によって4つの領域Ar1〜Ar4に分割し、各送信素子320A,320B,320Cから引き出される各下部電極線334と、送受信兼用素子310から引き出される電極線334,3351とを各領域Ar1〜Ar4に均等に分散配置しているので、回路の微細化・高密度化を容易に実現できる。
【0097】
さらに、送受信兼用素子310A,310B,310C,310Dは、16個の素子による二次元アレイの中心点Oに最も近い位置に配置されているので、各送受信兼用素子310A,310B,310C,310Dにおける超音波の受信タイミングのずれも殆ど無い。このため、遅延回路を用いることなく、受信モード時に直列に接続された送受信兼用素子310A,310B,310C,310Dを回路的に1つの受信素子として利用できる。
【0098】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係る超音波センサー10Eの主要部を拡大して示す平面図である。
第4実施形態の超音波センサー10Dは、X軸方向に4個、Y軸方向に4個の計16個の素子を配置していたのに対し、本実施形態の超音波センサー10Eは、超音波センサー10Dの外周にさらに送信素子320を配置して、X軸方向に6個、Y軸方向に6個の計36個の素子を配置した点が相違する。
【0099】
すなわち、超音波センサー10Eにおいて、中心点Oに近接配置される4つの素子は、すべて送受信兼用素子310(310A,310B,310C,310D)で構成されている。
これらの4個の送受信兼用素子310の外周側には、第4実施形態と同じ12個の送信素子320A,320B,320Cが配置されている。
さらに、12個の送信素子320A,320B,320Cの外周側に、20個の送信素子320Dが配置されている。
これらの36個の素子310,320は、X軸方向およびY軸方向に隣接する他の素子に対して、等間隔(等ピッチ)で配置されている。
【0100】
各送受信兼用素子310A〜310Dの下部電極線334および上部電極線3351おの配線構造は、超音波センサー10Dと同じため、説明を省略する。
【0101】
[送信素子の下部電極線の配置]
また、図9において、アレイの一列目(最も+Y軸側)に配列された6個の送信素子320Dの下部電極331から引き出された下部電極線334は、+Y軸方向に引き出された後、Y軸L2から離れる方向に向かってX軸方向に引き出されている。
図9において、アレイの二列目に配列された6個の送信素子320D,320A,320Bの下部電極331から引き出された下部電極線334も、+Y軸方向に引き出された後、Y軸L2から離れる方向に向かってX軸方向に引き出されている。
【0102】
同様に、図9において、アレイの五列目に配列された6個の送信素子320D,320A,320Bの下部電極331から引き出された下部電極線334と、六列目に配列された6個の送信素子320Dの下部電極331から引き出された下部電極線334は、−Y軸方向に引き出された後、Y軸L2から離れる方向に向かってX軸方向に引き出されている。
【0103】
さらに、図9において、アレイの三列目に配列された送信素子320Cの下部電極331から引き出された下部電極線334は、+Y軸方向に引き出された後、Y軸L2から離れる方向に向かってX軸方向に引き出されている。
また、アレイの四列目に配列された送信素子320Cの下部電極331から引き出された下部電極線334は、−Y軸方向に引き出された後、Y軸L2から離れる方向に向かってX軸方向に引き出されている。
【0104】
また、図9において、アレイの三列目および四列目に配列された送信素子320Dの下部電極331から引き出された下部電極線334は、Y軸L2から離れる方向に向かってX軸方向に引き出されている。
【0105】
[送信素子の上部電極線の配置]
アレイの一列目、二列目、五列目、六列目の各送信素子320A,320B,320Dの上部電極333から引き出された上部電極線335は、Y軸L2に沿って配線された共通電極線336に向かってX軸方向に引き出されている。
【0106】
一方、アレイの三列目、四列目の送信素子320C,320Dは、Y軸L2側に送受信兼用素子310が配置されており、かつ、X軸外側には送受信兼用素子310の配線が配置されているので、X軸L1に沿って配線した共通電極線337を利用している。
すなわち、各送信素子320C,320Dの上部電極333から引き出された上部電極線335は、X軸L1に向かってY軸方向に沿って配線され、X軸L1に沿って配線された共通電極線337を介して共通電極線336に接続されている。
なお、図9においても、共通電極線336,337と各軸L1,L2とを区別して認識できるようにずらして表示しているが、実際には、共通電極線336,337は、それぞれY軸L2、X軸L1上に配線されている。
【0107】
本実施形態の超音波センサー10Eを駆動する回路構成は、送受信兼用素子310Dが増えた点を除き、図8に示す超音波センサー10Dを駆動するための回路と同じであるため、説明を省略する。
送信モード時および受信モード時の動作も超音波センサー10Dと同じであるため、説明を省略する。
【0108】
[第5実施形態の効果]
このような本実施形態においても、送受信兼用素子310を送信モード時には送信回路40および共通電極COMに対して並列に接続し、受信モード時には受信回路50に対して直列に接続しているので、前記各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0109】
また、超音波センサー10Dに比べて、送信素子320の数を増やしたので超音波の送信出力を高めることができ、かつ、超音波の走査範囲も広げることができる。
【0110】
さらに、センサー基板20を、X軸L1および軸L2によって4つの領域Ar1〜Ar4に分割し、各送信素子320A,320B,320Cから引き出される各下部電極線334と、送受信兼用素子310から引き出される電極線334,3351とを各領域Ar1〜Ar4に均等に分散配置しているので、回路の微細化・高密度化を容易に実現できる。
【0111】
また、1,2,5,6列目の下部電極線334を、各送信素子320A,320B,320Dの片側(X軸L1から離れる側)に配線したので、送受信兼用素子310の2つの配線を、各素子の2列目および3列目間と、4列目および5列目間に配線しても、各素子間に配置される配線数を最大3本に限定できる。このため、各素子間のピッチを小さくでき、配線や素子の微細化および高密度化を容易に実現できる。
【0112】
[実施形態の変形]
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
前記各実施形態では、各領域Ar1〜Ar4内において、下部電極線334の引き出し方向は、X軸またはY軸に沿って延びていたが、中心点Oから離間する方向に延びていればよく、例えば、斜め方向に延びていてもよい。
【0113】
さらに、各電極線の引き出し方法は、前記各実施形態のものに限らない。すなわち、各素子に接続される各電極線は、X軸やY軸に沿って一直線状に形成してもよいし、配線の途中で折曲して階段状に形成してもよいし、X軸およびY軸に対して傾斜する斜め方向に引き出された後、X軸やY軸に沿って延長してもよい。要するに、各電極線の配置構造は、各素子の数や位置、端子の位置等に応じて適宜設計すればよい。
また、前記各実施形態では、共通電極接続配線80、直列接続用配線81〜83、スイッチ71〜78は、センサー基板20の外部に設けられていたが、センサー基板20内に形成してもよい。この場合、共通電極接続配線80は、共通電極線336や337に接続されてもよい。
【0114】
前記各実施形態では、送信素子320の数は、超音波の出力に必要な数で設定すればよく、前記実施形態の数に限定されない。
また、X軸方向およびY軸方向の送信素子の数を同じにしていたが、これらが異なる数となるように各素子を配列してもよい。
【0115】
前記各実施形態では、送受信兼用素子310の他に送信素子320を配置していたが、本発明の超音波センサーは、2個あるいは4個の送受信兼用素子310のみで構成してもよい。さらに、送受信兼用素子310の数は、主に信号処理時に必要となる受信信号の電圧に応じて設定すればよい。すなわち、送受信兼用素子310は、受信時に直列に接続されるため、受信信号として必要な電圧が得られる数の送受信兼用素子310を設ければよい。
【実施例】
【0116】
次に、本発明の超音波センサーを用いた電子機器の例として、第2実施形態の超音波センサー10Bを用いた血管径測定装置1を説明する。
血管径測定装置1は、図10に示すように、装置本体2と、装置本体2を人体などの生体に装着するためのバンド3とを備える。そして、この血管径測定装置1は、装置本体2の裏面に対して生体を接触させた状態で、バンド3を締めることで生体に装着されて、生体内の血管の外径及び内径を測定する。
【0117】
装置本体2の裏面側には、超音波センサー10Bが3セット設けられている。この超音波センサー10Bは、血管径測定装置1により生体内の血管の外径及び内径を測定する際に、生体に密着される。
また、装置本体2の表面側には、特に図示を省略したが、血管径測定装置1を操作する操作部や測定結果を表示する表示部などが設けられている。
【0118】
各超音波センサー10Bは、前述の通り、送受信兼用素子310A,310Bおよび送信素子320から超音波を発信させるタイミングを遅延させることで、超音波の発信角度を変化させることができる。ここで、超音波センサー10Bは、ライン状アレイ構造(1次元アレイ構造)を有しているため、そのスキャンエリアは、各素子310,320の配置方向(走査方向)を通り、センサー基板20に対して直交するスキャン面に制限される。そして、血管がスキャンエリアを通過するように、超音波センサー10Bを生体に密着させておけば、超音波センサー10Bからスキャンエリアに超音波を発信させて、血管で反射された超音波を受信することで、図11に示すように、血管とスキャンエリアとの交点を検出することが可能となる。
【0119】
すなわち、図11に示すように、超音波センサー10Bから発信された超音波は、血管の外壁と内壁とで反射する。ここで、各超音波センサー10Bからスキャンエリアに超音波を発信させた際に、最も短い時間で受信されるのは、各超音波センサー10Bと血管中心点Obvを結ぶ線上において、超音波センサー10Bに最も近い外壁部分である(図11におけるA1〜C1)。したがって、超音波が発信されてから受信されるまでの時間(TOFデータ:Time Of Flightデータ)が最も短い場合の発信角度により、各超音波センサー10Bに対する血管中心点Obvの位置が確認できる。
【0120】
各超音波センサー10Bから血管中心点Obvに向けて超音波を発信した場合、超音波は、血管の外壁(A1〜C1)、その内壁、血管中心点Obvを挟んだ内壁(A2〜C2)、その外壁の4箇所で反射される。
このため、反射波の第1波が受信されるまでの時間と超音波の発信角度θa〜θcによって、超音波センサー10Bに対する血管外壁のA1〜C1の位置を求めることができる。同様に、反射波の第3波が受信されるまでの時間と超音波の発信角度θa〜θcによって、超音波センサー10Bに対する血管内壁のA2〜C2の位置を求めることができる。
なお、図11では、A1〜C1,A2〜C2の6点の座標位置は、3つの超音波センサー10Bのうち、中央の超音波センサー10Bの中心位置をX−Y軸の原点とし、各超音波センサー10BまでのY軸方向の長さをPとした場合の位置座標で表すことができる。
【0121】
外壁の3点(A1,B1,C1)の座標位置が分かれば、その3点を通る円が確定するため、血管の外径Rおよび中心座標Obv (x、y)を算出できる。また、内壁の3点(A2,B2,C2)の座標位置が分かれば、その3点を通る円が確定するため、血管の内径rおよび中心座標Obv (x、y)を算出できる。
この際、外壁の3点から求めた中心座標と、内壁の3点から求めた中心座標のずれが所定の閾値を超えている場合には、正しく測定できていない可能性が高い。したがって、この場合には、血管径測定装置1を再度、取り付け直して測定するように、装置本体2の表示部などに報知すればよい。
以上にように、本発明の超音波センサー10を用いた血管径測定装置1により、血管の内径および外径を測定できる。
【0122】
なお、前記実施例では、電子機器として血管径測定装置1を例示したが、これに限定されるものではない。例えばロボットや自動車などに組み込まれて、被検出物までの距離や速度を測定する近接センサーや距離測定センサー、配管の非破壊検査や配管中の流体の流速などの監視する測定センサー、生体の体内の状態を超音波により検査する生体検査装置など、超音波の出力および受信により測定処理を実施するいかなる装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1…血管径測定装置、2…装置本体、10,10B,10C,10D,10E…超音波センサー、20…センサー基板、30…超音波トランスデューサー、40…送信回路、50…受信回路、60…制御回路、71〜78…第1〜第8スイッチ、80…共通電極接続配線、81〜83…直列接続用配線、310…送受信兼用素子、320…送信素子、331…下部電極(第1電極)、333…上部電極(第2電極)、334…下部電極線、335…上部電極線、336、337…共通電極線、Ar1〜Ar4…領域、L1…X軸(分割仮想線)、L2…Y軸(分割仮想線)、O…中心点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を備えて超音波を送受信する複数の送受信兼用素子と、
前記複数の送受信兼用素子の各第1電極にそれぞれ接続された複数の第1電極側スイッチと、
前記複数の送受信兼用素子の各第2電極にそれぞれ接続された複数の第2電極側スイッチと、
前記複数の送受信兼用素子の超音波の送信および受信を制御する制御回路と、
前記複数の送受信兼用素子に超音波送信用の信号を出力する送信回路と、
前記複数の送受信兼用素子で超音波を受信した際に出力される信号が入力される受信回路と、
共通電極に接続された共通電極接続配線と、
前記複数の送受信兼用素子を直列接続するための直列接続用配線と、
を備え、
前記制御回路は、
超音波信号を送信する場合は、前記各第1電極側スイッチを前記送信回路に接続し、前記各第2電極側スイッチを前記共通電極接続配線に接続して、前記複数の送受信兼用素子を前記送信回路および前記共通電極に対して並列に接続し、
超音波信号を受信する場合は、前記各第1電極側スイッチおよび第2電極側スイッチを前記直列接続用配線に接続して、前記複数の送受信兼用素子を前記受信回路に対して直列に接続する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサーにおいて、
前記複数の送受信兼用素子は、n個(nは2以上の整数)設けられ、
前記第1電極側スイッチおよび第2電極側スイッチは、それぞれn個設けられ、
前記直列接続用配線は、
各送受信兼用素子の第1電極側スイッチを、異なる各送受信兼用素子の第2電極側スイッチに接続してn個の送受信兼用素子を直列に接続するn−1本の素子間接続用配線と、
前記素子間接続用配線に接続されない1つの第1電極側スイッチを受信回路に接続する第1の素子回路間接続用配線と、
前記素子間接続用配線に接続されない1つの第2電極側スイッチを受信回路に接続する第2の素子回路間接続用配線とを備える
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項3】
第1電極および第2電極を備えて超音波を送受信する第1および第2の送受信兼用素子と、
前記第1の送受信兼用素子の第1電極に接続された第1スイッチと、
前記第1の送受信兼用素子の第2電極に接続された第2スイッチと、
前記第2の送受信兼用素子の第1電極に接続された第3スイッチと、
前記第2の送受信兼用素子の第2電極に接続された第4スイッチと、
前記送受信兼用素子の超音波の送信および受信を制御する制御回路と、
前記送受信兼用素子に超音波送信用の信号を出力する送信回路と、
前記送受信兼用素子で超音波を受信した際に出力される信号が入力される受信回路と、
共通電極に接続された共通電極接続配線と、
直列接続用配線と、
を備え、
前記制御回路は、
超音波信号を送信する場合は、前記第1スイッチおよび第3スイッチを前記送信回路に接続し、前記第2スイッチおよび第4スイッチを前記共通電極接続配線に接続し、
超音波信号を受信する場合は、前記第1スイッチおよび第4スイッチを前記直列接続用配線に接続し、前記第2スイッチおよび第3スイッチを前記受信回路に接続する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項4】
第1電極および第2電極を備えて超音波を送受信する第1〜第4の送受信兼用素子と、
前記第1の送受信兼用素子の第1電極に接続された第1スイッチと、
前記第1の送受信兼用素子の第2電極に接続された第2スイッチと、
前記第2の送受信兼用素子の第1電極に接続された第3スイッチと、
前記第2の送受信兼用素子の第2電極に接続された第4スイッチと、
前記第3の送受信兼用素子の第1電極に接続された第5スイッチと、
前記第3の送受信兼用素子の第2電極に接続された第6スイッチと、
前記第4の送受信兼用素子の第1電極に接続された第7スイッチと、
前記第4の送受信兼用素子の第2電極に接続された第8スイッチと、
前記送受信兼用素子の超音波の送信および受信を制御する制御回路と、
前記送受信兼用素子に超音波送信用の信号を出力する送信回路と、
前記送受信兼用素子で超音波を受信した際に出力される信号が入力される受信回路と、
共通電極に接続された共通電極接続配線と、
第1〜第3の直列接続用配線と、
を備え、
前記制御回路は、
超音波信号を送信する場合は、前記第1,3,5,7スイッチを前記送信回路に接続し、前記第2,4,6,8スイッチを前記共通電極接続配線に接続し、
超音波信号を受信する場合は、
前記第1スイッチおよび第4スイッチを前記第1の直列接続用配線に接続し、前記第3スイッチおよび第6スイッチを前記第2の直列接続用配線に接続し、前記第5スイッチおよび第8スイッチを前記第3の直列接続用配線に接続し、前記第2スイッチおよび第7スイッチを前記受信回路に接続する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波センサーにおいて、
前記複数の送受信兼用素子の配置位置にそれぞれ開口部が形成されたセンサー基板を備え、
前記複数の送受信兼用素子は、
前記センサー基板の一面側に積層されて前記開口部を閉塞するとともに、可撓性を有する支持膜と、
前記支持膜に積層された前記第1電極と、
前記第1電極に積層された圧電膜と、
前記圧電膜に積層された前記第2電極と、
を備えて構成される
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の超音波センサーにおいて、
第1電極および第2電極を備えて超音波を送信する複数の送信素子を備え、
前記送信素子の第1電極は、前記送信回路に接続され、
前記送信素子の第2電極は、前記共通電極に接続されている
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波センサーにおいて、
前記送受信兼用素子および送信素子が、X軸およびY軸の互いに直交する二方向に沿って配置されたセンサー基板を備え、
前記各素子は、X軸方向およびY軸方向に等間隔で配列され、
前記送受信兼用素子は、前記各素子が配置された領域の中心点に最も近い位置に配置されている
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波センサーにおいて、
前記センサー基板は、前記中心点を通る前記X軸およびY軸により分割される4つの領域を備え、
前記各領域内において、前記送受信兼用素子の第1電極および第2電極にそれぞれ接続する電極線と、各送信素子の第1電極に接続する電極線が、前記Y軸から離れるX軸方向に延びている
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波センサーにおいて、
前記Y軸に沿って配線され、かつ共通電極に接続された送信素子用の共通電極線を備え、
前記各領域内において、前記各送信素子の第2電極から引き出される電極線は、前記送信素子用の共通電極線に接続されている
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の超音波センサーを備える
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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