説明

超音波センサ

【課題】 超音波振動素子を接着する基板の厚さを保ち、耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減し、小型化できる超音波センサを実現する。
【解決手段】 基板12の表面12a、裏面12b及び端面12cのうち、少なくとも1つの面から基板12内部に向けて溝14や穴部15などの空洞を形成することにより、基板12の厚さを保ったまま、基板12の剛性を低減することができる。従って、超音波センサ10の耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減することができる。つまり、基板12の厚さを保ち、耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減し、小型化できる超音波センサ10を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に超音波振動子を接着した超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属、樹脂材料等の基板に超音波振動子を接着した超音波センサとして、例えば、自動車(車両)に搭載されたものが知られている。この超音波センサは、超音波の送受信が可能な素子から超音波を送信して、被検出体に当たって反射された超音波をこの素子によって受信することにより、自動車の周囲にある物体の位置測定または距離測定や、当該物体の2次元形状または3次元形状の測定などを行う。
例えば、図8に示すように、車両120に取り付けられた円筒状のアルミケース119の先端に設けられた基板112に、超音波を検出する圧電式超音波振動子111を直接取り付けて、基板112の振動によって超音波を送受信する超音波センサ110が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−58097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、この種の超音波センサは、外部から見える位置に取り付けられるため、美観を損ねることがないように、超音波センサを小型化することが求められている。しかし、超音波センサを小型化すると共振周波数が大きくなってしまい、信号の減衰が大きくなる、または、指向性の悪くなる、などによりセンサ特性が悪くなるという問題があった。
共振周波数を低減するためには、超音波振動子を貼り付ける基板の剛性を下げればよい。基板の剛性を下げる方策としては、基板を薄くする、または、低ヤング率の基板を用いる、などが考えられるが、いずれも基板の耐衝撃性の大幅な低下を招くため、適当ではない。
【0004】
そこで、この発明では、基板の厚さを保ち、耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減し、小型化できる超音波センサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、超音波を発生及び検出する超音波振動子と、この超音波振動子が接着され、超音波を送受信する基板と、を備えた超音波センサにおいて、前記超音波振動子は、前記基板の表面に接着されており、前記基板の表面、裏面及び端面のうち、少なくとも1つの面から基板内部に向けて空洞が形成されている、という技術的手段を用いる。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、基板の表面、裏面及び端面のうち、少なくとも1つの面から基板内部に向けて空洞が形成されているので、基板の厚さを保ったまま、基板の剛性を低減することができる。従って、超音波センサの耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減することができる。
つまり、基板の厚さを保ち、耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減し、小型化できる超音波センサを実現することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の超音波センサにおいて、前記空洞は、前記基板の表面及び裏面のうち、少なくとも1つの面から基板内部に向けて溝状に形成されている、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、切削、プレスなどの簡単な方法で溝状に空洞を形成するだけで共振周波数を低減することができるので、他の部品を使用する必要がなく、従来の超音波センサに比べて、安価に製造することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の超音波センサにおいて、前記溝状に形成された空洞は、格子状に配列されている、という技術的手段を用いる。
【0010】
特に請求項3に記載の発明のように、溝状に形成された空洞を格子状に配列することにより、基板の剛性の異方性を少なくすることができるので、特定の方向の耐衝撃性が低下することを防止することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の超音波センサにおいて、前記空洞は、穴状に形成されている、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、切削、プレスなどの簡単な方法で穴状に空洞を形成するだけで共振周波数を低減することができるので、他の部品を使用する必要がなく、従来の超音波センサに比べて、安価に製造することができる。また、穴状の空洞を分散して形成した場合には、基板の剛性の異方性を少なくすることができるので、特定の方向の耐衝撃性が低下することを防止することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記基板の端面から前記基板内部に向けて、前記端面に沿って切り欠き状に形成された空洞が更に設けられている、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、基板を保持する端面近傍の剛性を低減することができるので、基板の剛性を更に低減することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記空洞は、前記超音波振動子を接着した接着面には形成されていない、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、空洞は、超音波振動子を接着した接着面には形成されていないので、超音波振動子と基板との接着面積を大きくすることができる。これにより、超音波振動子と基板との接着強度を向上させることができるとともに、超音波振動子と基板との界面における超音波の減衰を小さくすることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記空洞の内部に、前記基板より弾性率が低い材料が充填されている、という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、空洞の内部に、基板より弾性率が低い材料が充填されているため、空洞の内部に異物が侵入して超音波が減衰することにより超音波センサの感度が低下することを防止することができる。また、充填材は基板より弾性率が低いので、空洞による基板の剛性の低減効果に及ぼす影響が少ない。
【0019】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記超音波振動子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体を用いて形成される、という技術的手段を用いる。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、超音波振動子を、圧電定数の大きいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体を用いて形成することにより、大きな超音波の発信、小さな超音波の受信をすることができ、超音波センサの感度を向上させることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記基板は、樹脂基板である、という技術的手段を用いる。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、基板に樹脂基板を用いることにより、樹脂成型加工や切削等により、安価で容易に基板を加工することができる。
【0023】
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記基板は、半導体基板である、という技術的手段を用いる。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、基板に半導体基板を用いることにより、半導体加工技術を用いることができ、安価で容易に基板を加工することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の超音波センサにおいて、前記基板は、ガラス基板である、という技術的手段を用いる。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、基板にガラス基板を用いることにより、切削等により、安価で容易に基板を加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明に係る超音波センサの最良の形態について、図を参照して説明する。ここでは、超音波センサを車両に搭載して使用する場合を例に説明する。
図1は、本実施形態の超音波センサの説明図である。図1(A)は、本実施形態の超音波センサを超音波振動子側から見た平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面図である。図2は、本実施形態の超音波センサの変更例の説明図である。図2(A)は、超音波センサを超音波振動子側から見た平面説明図であり、受信素子の平面説明図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B矢視断面図である。図3は、超音波センサの基板構造の変更例の説明図である。図3(A)〜(C)は、溝の形状の変更例の説明図であり、図3(D)は、基板の表面に穴部を形成した基板構造の説明図である。図4は、基板の端面から対向する端面に向かって貫通孔が形成された基板構造の断面説明図である。図4(A)は、貫通孔が複数個並列して設けられた基板構造の断面説明図であり、図4(B)は、溝と貫通孔とが組み合わされて形成された基板構造の断面説明図である。図5(A)及び(B)は、基板の端面に切り欠き部が形成された基板構造の断面説明図である。図6は、溝または穴部に、基板より弾性率が低い充填材が充填された基板構造の断面説明図である。図7は、超音波センサの基板構造の変更例の説明図である。図7(A)及び(B)は、基板の裏面に溝を形成した基板構造の断面説明図であり、図7(C)及び(D)は、基板の表面及び裏面に溝を形成した基板構造の断面説明図である。
ここで、図1及び図2において、図(A)の手前側及び図(B)の下方向が車両の外部を示す。なお、各図では、例えば、溝の寸法、数などについて、説明のために一部を拡大し、一部を省略して示している。
【0028】
図1に示すように、超音波センサ10は、超音波を発生及び検出する超音波振動子11と、超音波を送受信し、振動を伝達する基板12とを備えている。
超音波振動子11は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体薄膜を上下面から電極で挟んで、厚さ100μm、1mm角の四角形状に形成されている。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、圧電定数が大きいので、大きな超音波の発信、小さな超音波の受信をすることができ、超音波センサの感度を向上させることができる。
基板12は、エンジニアリングプラスチックなどの耐久性に優れた樹脂材料により、厚さ0.5mm、3mm角の四角形状に形成されている。基板12に樹脂基板を用いると、樹脂成型加工や切削等により、安価で容易に基板を加工することができる。
基板12の表面12aの中央には、超音波振動子11が接着剤13により接着されている。基板12は、車両20の所定の位置に、超音波振動子11が車両20の内側になるように、端面12cを保持されて固定される。
なお、基板12として樹脂材料を例としているが、半導体基板やガラス基板等どのような材料を用いても共振周波数の低減効果を発現することができる。基板12に半導体基板を用いた場合、半導体加工技術を用いることができ、ガラス基板を用いた場合、切削等により安価で容易に基板12を加工することができる。
【0029】
超音波センサ10は、超音波振動子11により基板12を振動させて裏面12bから超音波を送信し、車両20付近に存在する障害物などで反射された超音波を、裏面12bから基板12を介して受信する。
基板12は、超音波振動子11が接着された状態において所定の共振周波数を有している。基板12は、障害物などで反射された超音波を受信すると共振し、この共振によって生じる変位を超音波振動子11により検出して電圧信号に変換する。
超音波振動子11と電気的に接続された回路素子(図示せず)は、ECUに電気的に接続されており、超音波振動子11から出力される電圧信号に基づいて演算処理を行う。例えば、送信した超音波と受信した超音波との時間差や位相差を求めることにより、障害物との距離測定などを行うことができる。
【0030】
超音波センサ10の耐衝撃性を確保するために、基板12に厚さ0.5mmの樹脂製の平板を用いると、共振周波数を超音波センサ10の感度が良好である数10kHz程度にするには、基板12を5mm角程度の大きさにする必要があり、小型化が困難である。
一般に平板の共振周波数は、剛性の平方根に比例するため、基板12の寸法を増大させずに共振周波数を低減するためには、基板12の曲げ剛性を下げればよい。本実施形態では、耐衝撃性を確保するために、基板12の外寸をそのままにして、基板12の表面12aに溝14を形成することにより、基板12の剛性を低減した。
【0031】
基板12の表面12aには、基板12内部に向かって形成された溝14が、格子状に配列されている。ここで、溝14は、幅が100μm、深さが基板12の約半分(約0.25mm)の矩形断面を有しており、隣り合った溝14との間隔が100μmになるように形成されている。
基板12をこのような構造にすると、表面12aの半分以上の領域で溝14が形成されているため、基板12の剛性を大幅に低減することができる。その結果、基板12の厚さは0.5mmのままで、耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を、例えば、120kHzから60kHzまで低減することができる。
ここで、溝14の縦断面形状は、半円状でもよいし、くさび型でもよく、形状は任意である。
【0032】
溝14は格子状に配列されているので、基板12の剛性の異方性を少なくすることができ、特定の方向の耐衝撃性が低下することを防止することができる。
また、超音波振動子11の接着部の下まで溝14が形成されているため、超音波振動子11を撓みやすくすることができるので、超音波の出力を大きくすることができる。
更に、裏面12bには、溝14が形成されておらず一様な平面状であるため、平面波である超音波の受信感度が低減しない。超音波の送信時にも、超音波が裏面12bの凹凸による干渉を受けることがないため、安定した超音波の送信が可能である。
【0033】
ここで、図2に示すように、溝14は、超音波振動子11との接着部には形成しないようにしてもよい。この構成を用いると、超音波振動子11と基板12との接着面積を大きくすることができるため、超音波振動子11と基板12との接着強度を向上させることができるとともに、超音波振動子11と基板12との界面における超音波の減衰を小さくすることができる。
【0034】
溝14の形状は、図3(A)に示すように、四角形の四辺状に形成された相似形状の複数の溝を中心から同心状に配置してもよいし、図3(B)に示すように、溝14を同心円状に形成してもよい。
また、図3(C)に示すように、溝14は、基板12の端面12cと平行で、基板12の中心部で交差する十字型に形成してもよい。
更に、図3(D)に示すように、溝14の代わりに、例えば、開口部が100μm角の四角形状、深さが基板12の約半分(約0.25mm)の角柱状の穴部15を100μm間隔に形成してもよい。
穴部15は均等に分散して配列されているので、基板12の剛性の異方性を少なくすることができ、特定の方向の耐衝撃性が低下することを防止することができる。
溝14の縦断面形状は、半円状でもよいし、くさび型でもよく、形状は任意である。穴部15は、開口部が円形の円柱状等に形成してもよい。穴部15の縦断面形状は、半円状でもよいし、くさび型でもよく、形状は任意である。上述したいずれの場合においても、基板12の剛性を低減することができる。
【0035】
溝14や穴部15の形状、幅、配置間隔、等は任意に設定可能である。また、溝14や穴部15の深さは、基板12の約半分(約0.25mm)に限定されるものではなく、基板12に形成される位置によって深さが異なっていてもよい。更に、溝14や穴部15は、組み合わせて形成してもよい。
【0036】
ここで、上述したいずれの場合においても、超音波振動子11と基板12との接着部には、溝14や穴部15を形成しないようにしてもよい。この構成を用いると、超音波振動子11と基板12との接着面積を大きくすることができるため、超音波振動子11と基板12との接着強度を向上させることができるとともに、超音波振動子11と基板12との界面における超音波の減衰を小さくすることができる。
【0037】
また、本実施形態の超音波センサ10では、基板12の表面12aに、溝14、または、穴部15を形成するだけで共振周波数を低減することができるので、他の部品を使用する必要がなく、従来の超音波センサに比べて、大幅なコストアップが無く小型で製造することができる。
なお、本実施形態では、四角形状の超音波振動子11及び基板12を用いた例について説明したが、超音波振動子11及び基板12の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、それぞれ円板状でもよい。
【0038】
(変更例1)
基板12の端面12cから対向する端面12cに向かって貫通孔17を形成する構成を用いてもよい。図4(A)に示すように、貫通孔17は、基板12の表面12aに沿って複数個を並列して設けてもよい。ここで、貫通孔17を直交方向にも形成して、格子状に配列してもよい。また、図4(B)に示すように、端面12c近傍にのみ貫通孔17を形成し、溝14を組み合わせて形成してもよい。ここで、貫通孔17の縦断面形状は、任意に選択することができる。
これらの構成を使用した場合にも、基板12の剛性を低減することができる。
【0039】
(変更例2)
基板12に溝14、または、穴部15を形成する上記の構造に加えて、基板12の端面12cに切り欠き部16を形成してもよい。図5(A)に示すように、基板12の表面12aに溝14を形成し、更に表面12aの外周の端部に切り欠き部16を形成してもよいし、図5(B)に示すように、端面12cの中央部に切り欠き部16を形成してもよい。ここで、切り欠き部16は、対向する1組の端面12cのみに形成してもよいし、全ての端面12cに形成してもよい。
これにより、車両20が基板12を保持する端面12c近傍の剛性を低減することができるので、基板12の剛性を更に低減することができる。
【0040】
(変更例3)
図6に示すように、溝14、または、穴部15に、基板12より弾性率が低い充填材18、例えば、ウレタンフォームやゲルなどを充填した構成を用いることができる。この構成を使用すると、溝14、または、穴部15に異物が侵入して超音波が減衰することにより超音波センサ10の感度が低下することを防止することができる。また、充填材18は基板12より弾性率が低いので、溝14、または、穴部15による基板12の剛性の低減効果に及ぼす影響が少ない。
【0041】
[最良の形態による効果]
(1)基板12の表面12a、裏面12b及び端面12cのうち、少なくとも1つの面から基板12内部に向けて溝14や穴部15などの空洞が形成されているので、基板12の厚さを保ったまま、基板12の剛性を低減することができる。従って、超音波センサ10の耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減することができる。
つまり、基板12の厚さを保ち、耐衝撃性を確保しつつ、共振周波数を低減し、小型化できる超音波センサ10を実現することができる。
【0042】
(2)切削、プレスなどの簡単な方法で溝14や穴部15などの空洞を形成するだけで共振周波数を低減することができるので、他の部品を使用する必要がなく、従来の超音波センサに比べて、大幅なコストアップが無く小型で製造することができる。
【0043】
(3)溝14を格子状に配列した場合には、基板12の剛性の異方性を少なくすることができるので、特定の方向の耐衝撃性が低下することを防止することができる。
【0044】
(4)溝14や穴部15に加えて、基板12を保持する端面12c近傍に切り欠き部16を更に形成した場合には、端面12c近傍の剛性を低減することができるので、基板12の剛性を更に低減することができる。
【0045】
(5)溝14や穴部15などの空洞を、超音波振動子11を接着した接着面に形成しない場合には、超音波振動子11と基板12との接着面積を大きくすることができる。これにより、超音波振動子11と基板12との接着強度を向上させることができるとともに、超音波振動子11と基板12との界面における超音波の減衰を小さくすることができる。
【0046】
(6)溝14や穴部15などの空洞の内部に、基板12より弾性率が低い充填材18を充填した場合には、空洞の内部に異物が侵入して超音波が減衰することにより超音波センサ10の感度が低下することを防止することができる。また、充填材18は基板12より弾性率が低いので、溝14や穴部15などの空洞による基板12の剛性の低減効果に及ぼす影響が少ない。
【0047】
[その他の実施形態]
(1)室内で使用する場合などのように、溝14、または、穴部15に異物が侵入する可能性が低い場合には、図7(A)及び(B)に示すように、裏面12bに、溝14、穴部15などの空洞を形成する構成を採用することもできる。この構成を用いると、超音波振動子11と基板12との接着面積を大きくすることができるため、超音波振動子11と基板12との接着強度を向上させることができるとともに、超音波振動子11と基板12との間で伝達される超音波の減衰を小さくすることができる。
【0048】
(2)基板12の表面12a及び裏面12bの両面に、溝14、または、穴部15を形成する構成を用いてもよい。図7(C)に示すように、表面12aに形成される溝14と裏面12bに形成される溝14とが対向するように配置してもよい。この構成を用いると、基板12が薄くなる部分に、直接異物が衝突するおそれが少なくなるため、耐衝撃性を向上させることができる。
また、図7(D)に示すように、表面12aに形成される溝14と裏面12bに形成される溝14とが対向しないように配置してもよい。この構成を用いると、溝14同士が対向して、基板12が薄くなる部分が形成されないため、耐衝撃性を向上させることができる。
【0049】
(3)基板12だけでなく、超音波振動子11の表面にも溝、または、穴部を形成してもよい。これにより、超音波センサ10の共振周波数を更に低減することができるとともに、超音波振動子11が撓みやすくなるため、超音波の出力を向上させることができる。
【0050】
[各請求項と実施形態との対応関係]
溝14、穴部15、切り欠き部16及び貫通孔17が請求項1に記載の空洞に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態の超音波センサの説明図である。図1(A)は、本実施形態の超音波センサを超音波振動子側から見た平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面図である。
【図2】本実施形態の超音波センサの変更例の説明図である。図2(A)は、超音波センサを超音波振動子側から見た平面説明図であり、受信素子の平面説明図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B矢視断面図である。
【図3】超音波センサの基板構造の変更例の説明図である。図3(A)〜(C)は、溝の形状の変更例の説明図であり、図3(D)は、基板の表面に穴部を形成した基板構造の説明図である。
【図4】基板の端面から対向する端面に向かって貫通孔が形成された基板構造の断面説明図である。図4(A)は、貫通孔が複数個並列して設けられた基板構造の断面説明図であり、図4(B)は、溝と貫通孔とが組み合わされて形成された基板構造の断面説明図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、基板の端面に切り欠き部が形成された基板構造の断面説明図である。
【図6】溝または穴部に、基板より弾性率が低い充填材が充填された基板構造の断面説明図である。
【図7】超音波センサの基板構造の変更例の説明図である。図7(A)及び(B)は、基板の裏面に溝を形成した基板構造の断面説明図であり、図7(C)及び(D)は、基板の表面及び裏面に溝を形成した基板構造の断面説明図である。
【図8】従来の超音波センサの構造の断面説明図である。
【符号の説明】
【0052】
10 超音波センサ
11 超音波振動子
12 基板
12a 表面
12b 裏面
12c 端面
13 接着剤
14 溝(空洞)
15 穴部(空洞)
16 切り欠き部(空洞)
17 貫通孔(空洞)
18 充填材
20 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生及び検出する超音波振動子と、この超音波振動子が接着され、超音波を送受信する基板と、を備えた超音波センサにおいて、
前記超音波振動子は、前記基板の表面に接着されており、
前記基板の表面、裏面及び端面のうち、少なくとも1つの面から基板内部に向けて空洞が形成されていることを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記空洞は、前記基板の表面及び裏面のうち、少なくとも1つの面から基板内部に向けて溝状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記溝状に形成された空洞は、格子状に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記空洞は、穴状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記基板の端面から前記基板内部に向けて、前記端面に沿って切り欠き状に形成された空洞が更に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記空洞は、前記超音波振動子を接着した接着面には形成されていないことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記空洞の内部に、前記基板より弾性率が低い材料が充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記超音波振動子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体を用いて形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項9】
前記基板は、樹脂基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項10】
前記基板は、半導体基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項11】
前記基板は、ガラス基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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