説明

超音波センサ

【課題】残響特性がよい超音波センサを提供する。
【解決手段】超音波センサ10は、アルミニウムや亜鉛などからなる有底筒状のケース12を含む。ケース12の内底面には、長方形状の圧電素子18の一方主面が配置され導電性接着剤で接着される。圧電素子18の両主面の電極には、入出力端子20、22がそれぞれ電気的に接続される。入出力端子20は、圧電素子18の他方主面側の電極に接続される断面L字状のばね端子20aを有する。このばね端子20aは、その材質、幅、厚み、長さなどを調整することによって、その共振周波数が超音波センサ10から発生する信号の共振周波数すなわち超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波センサに関し、特に、圧電素子およびそれに電気的に接続される入出力端子を有し、たとえば、自動車のコーナソナーやバックソナーなどに用いられる超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の周囲に存在する障害物を検知するためのコーナソナーやバックソナーが、自動車のコーナや後部のバンパなどに取り付けられることがある。これらのコーナソナーやバックソナーには超音波センサが使用され、超音波センサから送信されて障害物から反射された超音波の送受信時間により障害物との距離が検知される。これらの超音波センサでは、自動車から数10cm程度の近距離に存在する障害物を検知する必要がある。
【0003】
従来の超音波センサでは、圧電素子の電極を電気的にケースの外部へ引き出すために圧電素子との導通に関しては細くて柔らかい電線が使用されていたが、電線は手作業により圧電素子に半田付けしなければならなく手間と時間がかかっていた。また、電線の半田付け位置のばらつきにより、センサ特性が変動するという問題もあった。
【0004】
上述のような問題を改善するために、図29に示す構造を持つ超音波センサが考え出された。図29は、従来の超音波センサの一例を示す断面図解図である。図29に示す超音波センサ1は、絶縁体からなる有底筒状のケース2を含み、ケース2の内底部に圧電素子3が配置され、ケース2の筒部に入出力端子4、5が埋設されている。この構造により、圧電素子3と入出力端子4、5との接続が簡素化され、接続位置のばらつきの低減による特性のばらつきの改善が可能となる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−266497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、図29に示す超音波センサ1では、圧電素子3に直接接続されている入出力端子4がケース2の筒部に埋設されているため、圧電素子3の振動が入出力端子4を介してケース2の筒部に漏れて伝わり、ケース2の側面の振動が減衰されず、残響特性が劣化するという問題があった。
さらに、図29に示す超音波センサ1では、ケース2の側面から圧電素子3までの距離が長くなると入出力端子4の長さが長くなり、入出力端子4の共振周波数と超音波センサの駆動周波数が同じ程度になり、超音波センサ全体の残響特性が悪化したりするという問題があった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、残響特性がよい超音波センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる超音波センサは、有底筒状のケースと、一方主面および他方主面を有し、一方主面がケースの内底部に配置される圧電素子と、圧電素子に電気的に接続され、ケースの外部に引き出される入出力端子とを有する超音波センサであって、圧電素子の他方主面に接続される入出力端子としてばね端子が使用され、ばね端子の共振周波数が超音波センサから発生する信号の共振周波数よりも高くなるように形成された、超音波センサである。
この発明にかかる超音波センサでは、入出力端子は金属で一体的に形成されてもよい。
また、この発明にかかる超音波センサでは、ケースの内部において圧電素子の他方主面側に合成樹脂からなる支持部材が配置され、入出力端子と支持部材とが一体的に形成されてもよい。この場合、折り返し構造を持つばね端子を使用し、そのばね端子において支持部材に接触する部分が、支持部材に固定されていることが好ましい。また、ばね端子において支持部材に接触する部分の幅が、ばね端子において圧電素子の他方主面に接続される側の幅よりも広いことが好ましい。
さらに、この発明にかかる超音波センサでは、ばね端子において圧電素子の他方主面に接続される端部に第1の中空部が形成され、ばね端子において第1の中空部に対向する所定の位置に第2の中空部が形成されてもよい。
また、この発明にかかる超音波センサでは、ケースは金属で形成され、圧電素子の一方主面側に接続される入出力端子はケースの所定の位置に接続されてもよい。
さらに、この発明にかかる超音波センサでは、ケースは、金属で形成された有底筒状ケース部および有底筒状ケース部に接合される金属で形成された筒状ケース部を含み、筒状ケース部の内部に支持部材が配置され、圧電素子の一方主面側に接続される入出力端子は筒状ケース部の所定の位置に接続されてもよい。
また、この発明にかかる超音波センサでは、圧電素子として、たとえば、長方形状の圧電体基板、楕円形状の圧電体基板、または、分極方向の異なる2枚以上の圧電体基板が用いられてもよい。
【0009】
この発明にかかる超音波センサでは、圧電素子の他方主面に接続される入出力端子としてばね端子が使用されているので、圧電素子の振動を阻害することなく、圧電素子の振動がばね端子で充分に吸収され、ケースやセンサ内部への振動漏れがなくなり、残響特性が向上する。
しかも、この発明にかかる超音波センサでは、そのばね端子の共振周波数が超音波センサから発生する信号の共振周波数よりも高くなるように形成されているので、ばね端子と超音波センサとの共振現象が発生せず、残響時間が短くなり、すなわち残響特性が改善される。
また、この発明にかかる超音波センサでは、入出力端子が金属で一体的に形成されると、入出力端子を安価で大量にかつ精度よく容易に作製することができ、超音波センサの製造コストを抑えることができ、しかも、センサ特性の変動も少なくできる。
また、この発明にかかる超音波センサでは、ケースの内部において圧電素子の他方主面側に合成樹脂からなる支持部材が配置され、入出力端子と支持部材とが一体的に形成されると、入出力端子を支持部材で支持することができる。この場合、ばね端子において支持部材に接触する部分が支持部材に固定されていると、その部分が支持部材に固定されていない場合に比べて、その部分が安定し、特性も安定する。また、ばね端子において支持部材に接触する部分の幅が、ばね端子において圧電素子の他方主面に接続される側の幅よりも広いと、ばね端子において圧電素子の他方主面に接続される側も広い場合に比べて、ばね端子の共振周波数が高くなり、ばね端子と超音波センサとの共振現象がさらに発生しにくくなる。
さらに、この発明にかかる超音波センサでは、ばね端子において圧電素子の他方主面に接続される端部に第1の中空部が形成され、ばね端子において第1の中空部に対向する所定の位置に第2の中空部が形成されていると、第2の中空部を利用して、ばね端子の端部を圧電素子に容易に接続することができる。
また、この発明にかかる超音波センサでは、ケースが金属で形成され、圧電素子の一方主面側に接続される入出力端子がケースの所定の位置に接続されると、ケースを電気的な導通路としても働かせることができる。
さらに、この発明にかかる超音波センサでは、ケースが、金属で形成された有底筒状ケース部および有底筒状ケース部に接合される金属で形成された筒状ケース部を含み、筒状ケース部の内部に支持部材が配置され、圧電素子の一方主面側に接続される入出力端子が筒状ケース部の所定の位置に接続されると、ケースの有底筒状ケース部および筒状ケース部を電気的な導通路としても働かせることができる。
また、この発明にかかる超音波センサでは、圧電素子として、たとえば、長方形状の圧電体基板、楕円形状の圧電体基板、または、分極方向の異なる2枚以上の圧電体基板が用いられると、高次振動モードによって圧電体基板に発生する電荷を相殺することができ、高次振動モードによる不要振動を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、残響特性がよい超音波センサが得られる。
【0011】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、この発明にかかる超音波センサの一例を示す断面図解図である。図1に示す超音波センサ10は、たとえば有底筒状のアルミニウムや亜鉛などの金属からなるケース12を含む。ケース12は、閉塞面を有するアルミニウムなどの金属からなる有底筒状ケース部14およびそれにはめ込まれる亜鉛などの金属からなる筒状ケース部16を含む。有底筒状ケース部14には、筒状ケース部16がはめ込まれて接着剤で接着される。そのため、ケース12において有底筒状ケース部14および筒状ケース部16は、有底筒状に一体となるように固着されるとともに、電気的に接続されて全体として1つの導通路となる。
【0013】
ケース12において有底筒状ケース部14の内底部には、たとえば長方形状の圧電素子18の一方主面が配置され、導電性接着剤で接着される。このように一端が開口するとともに他端が閉塞面であるケース12の閉塞面の内側に圧電素子18が配置されるので、ケース12の閉塞面が圧電素子18と一体となって振動することにより音波の送受を行うことができる。この圧電素子18は、異方性を有した形状たとえば長方形状に形成された圧電体基板を含み、圧電体基板においてケース12の閉塞面に対向する主面とその逆の主面との両主面には、それぞれ電極が形成されている。そして、圧電素子18のこれらの電極などを介して、圧電素子18の圧電体基板に電気的信号を印加することによって、圧電素子18などを振動することができる。さらに、この圧電素子18は、その圧電体基板の長辺がケース12において閉塞された振動面の振動分布に対して長手方向に合わされ、たとえば3次振動モードなどの高次振動モードの振動分布で電界分布が正負逆転する部分を跨ぐように配置されている。
【0014】
圧電素子18には、金属からなる入出力端子20および22が電気的に接続される。また、これらの入出力端子20および22は、ケース12の内部からケース12の外部に引き出される。
【0015】
一方の入出力端子20は、圧電素子18の他方主面側の電極に電気的に接続されるものであって、ばね性を有するばね端子20aを有する。また、ばね端子20aは、その材質、幅、厚み、長さなどを調整することによって、その共振周波数が超音波センサ10から発生する信号の共振周波数すなわち超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなるように形成される。この入出力端子20は、たとえば、フレーム100からのびて形成された状態を図2に示すように、断面L字状のばね端子20a、断面L字状の中間部分20bおよびピン状の引出側部分20cからなる。ばね端子20a、中間部分20bおよび引出側部分20cは、一連にのびて一体的に形成される。また、ばね端子20aにおいて圧電素子18の他方主面側の電極に直接接続される先端部20dは、固着強化および位置固定のために、その中央に円形の中空部20eが形成されることによって円環形状に形成される。さらに、引出側部分20cは、強度を高めるために断面コ字状に形成される。この入出力端子20は、ばね性を有する1枚の金属板をプレス加工などで所定の形状に打抜くとともに曲げることによって形成される。
【0016】
他方の入出力端子22は、ケース12を介して、圧電素子18の一方主面側の電極に電気的に接続されるものである。この入出力端子22は、たとえば図2に示すように、一連にのびて形成される接続側部分22a、中間部分22bおよび引出側部分22cからなる。接続側部分22aは、図1に示すように、ケース12の筒状ケース部16の内面に対向するように折り曲げられ、その先端部が筒状ケース部16の内面に接続されるものである。また、中間部分22bは、L字状に形成される。さらに、引出側部分22cは、強度を高めるために断面コ字状に形成される。この入出力端子22も、ばね性を有する1枚の金属板をプレス加工などで所定の形状に打抜くとともに曲げることによって形成される。
【0017】
これらの入出力端子20および22は、絶縁性を有する合成樹脂からなる円柱状の支持部材24で支持される。この場合、入出力端子20および22は、図1および図3に示すように、それらの中間部分20bおよび22bが支持部材24に埋め込まれて固定され、支持部材24と一体的に形成される。なお、支持部材24は、たとえばインサートモールド工法で樹脂成型することによって、入出力端子20および22と一体的に形成される。そのため、支持部材24は、安価に大量に生産することが可能である。入出力端子20および22は、支持部材24に埋め込まれている中間部分20bおよび22bが断面L字状およびL字状にそれぞれ形成されているため、支持部材24から抜けることがない。なお、入出力端子20および22は、図3に示すように支持部材24に固定された状態において、フレーム100から切り離される。
【0018】
支持部材24は、ケース12の内部において圧電素子18の他方主面側に配置され、筒状ケース部16に固着される。この場合、筒状ケース部16はケース12の閉塞面側に凸部16aを有し、支持部材24はその凸部16aによって圧電素子18に当たらないようにケース12の閉塞面から浮かされる。また、この場合、入出力端子20および22は、ばね端子20aの先端部20dおよび接続側部分22aが圧電素子18の他方主面側の電極および筒状ケース部16の内面にそれぞれ対向するように配置され、それらの引出側部分20cおよび22cがケース12の内部から外部に配置される。ばね端子20aの先端部20dは、圧電素子18の他方主面側の電極に導電性接着剤で接着されて電気的に接続される。この場合、支持部材24においてばね端子20aの先端部20dに対応する部分に貫通孔24aが形成されていて、この貫通孔24aを通して、ばね端子20aの先端部20dと圧電素子18の電極とが導電性接着剤で接着される。また、入出力端子22の接続側部分22aの先端部は、筒状ケース部16の内面に導電性接着剤で接着されて電気的に接続される。なお、入出力端子20および22は、導電性接着剤で接着される代わりに、他の手段たとえば導電性樹脂、リフロー半田などの半田、溶接、溶着、ワイヤボンダなどによって、所定の部分に接続されてもよい。
【0019】
ケース12において圧電素子18が形成された閉塞面側には、支持部材24の貫通孔24aを通して、ゲル状の合成樹脂材料を塗布して乾燥したり発泡性を有するシリコン樹脂などの充填材を充填して発泡したりすることによって、不要振動や空気中を伝播・反射する音波を吸収するためのダンピング材26が形成される。
【0020】
また、支持部材24の貫通孔24aは、そこに発泡性を有するシリコン樹脂などの充填材を充填して発泡することによって塞がれる。さらに、ケース12の内部において支持部材24の外側は、そこに発泡性を有するシリコン樹脂などの充填材を充填して発泡することによって封止される。
【0021】
この超音波センサ10では、入出力端子20および22に駆動電圧を印加することにより、圧電素子18が励振される。圧電素子18の振動により、圧電素子18はケース12の閉塞面とともに振動し、圧電素子18の主面に直交する向きに超音波が発せられる。超音波センサ10から発せられた超音波が被検出物で反射し、超音波センサ10に到達すると、圧電素子18が振動して電気信号に変換されて、入出力端子20および22から電気信号が出力される。したがって、駆動電圧を印加してから電気信号が出力されるまでの時間を測定することにより、超音波センサ10から被検出物までの距離を測定することができる。
【0022】
この超音波センサ10では、圧電素子18に接続される入出力端子20として断面L字状のばね端子22aが使用されているので、圧電素子18の振動を阻害することなく、圧電素子18の振動が入出力端子20のばね部分(ばね端子20a)で充分に吸収され、ケース12やセンサ内部への振動漏れがなくなり、残響特性が向上する。
【0023】
また、この超音波センサ10では、ばね端子20aの共振周波数が超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなるように形成されているので、ばね端子20aの基本波成分および高調波成分のすべてが超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなり、超音波センサ10の信号がばね端子20aから発生する信号によって妨害されることがなく、また、ばね端子20aと超音波センサ10との共振現象も発生せず、残響特性が改善され、ばね端子20aの破損も防止される。
【0024】
さらに、この超音波センサ10では、入出力端子20および22が1枚の金属板からプレス加工などによってそれぞれ一体的に形成されるので、入出力端子20および22を安価で大量にかつ精度よく容易に作製することができ、超音波センサ10の製造コストを抑えることができ、しかも、センサ特性の変動も少なくできる。
【0025】
また、この超音波センサ10では、圧電素子18は、その圧電体基板の長辺がケース12において閉塞された振動面の振動分布に対して長手方向に合わされ、たとえば3次振動モードなどの高次振動モードの振動分布で電界分布が正負逆転する部分を跨ぐように配置されているので、すなわち、圧電素子18の圧電体基板の長さを高調波成分が相殺する程度の長さとしているので、圧電体基板の中央部で発生する電荷と圧電体基板の端部で発生する電荷とを相殺して高調波成分の発生を抑制することができる。そのため、高次振動モードによる不要振動を防止することができ、それによって、残響を抑制することができ、障害物を検知することができる最短距離についての分解能を上げることができる。
【0026】
さらに、この超音波センサ10では、入出力端子20および22において支持部材24に接触する部分が支持部材24に固定されているので、それらの部分が支持部材24に固定されていない場合に比べて、それらの部分が安定し、特性も安定する。
【0027】
また、この超音波センサ10では、圧電素子18への電線の半田付けなどの煩雑な手作業が必要でなくなり、自動化が容易となる。
【0028】
さらに、この超音波センサ10では、振動面を支持する側面(ケース12の側面)が剛性の高い金属で形成されているため、振動漏れを防ぎ残響特性の劣化をもたらす恐れがない。
【0029】
また、この超音波センサ10では、入出力端子20および22の引出側部分20cおよび22cがそれぞれ断面コ字状に形成されているため、それらの機械的強度が高い。なお、それらの引出側部分20cおよび22cは、それぞれ断面ロ字状や断面L字状などに形成されても、同様に、機械的強度が高くなる。
【0030】
さらに、この超音波センサ10では、ばね端子20aを用いた入出力端子20で圧電素子18の振動を阻害することがないため、系の振動モードの共振抵抗値をこれまでより低下させることができ、結果として、全体として電気機械結合係数を上げることができる。
【0031】
また、この超音波センサ10では、入出力端子20としてばね端子20aを使用することによって、圧電素子18の振動を外部へ伝わらせずに閉じ込めるように設計することができる。そのため、圧電素子18と接するばね端子20aに対して圧電素子18の電歪振動で発生する応力が発生した際にも、ばね端子20aが金属疲労を起こさずに、継続的に電気的な接続を保ち続けることが可能となる。
【0032】
さらに、この超音波センサ10では、ケース12の内部に設けられた支持部材24がケース12の側面に対していわゆる筋交いの役割を果たし、ケース12の側面の剛性を上げることに繋がる。このようにケース12の側面の剛性が上がることによって、ケース12の側面から漏洩する振動エネルギーを減少させることができるため、この点でもやはり残響特性によい効果をもたらすことができる。
【0033】
また、この超音波センサ10では、ケース12の閉塞面側にダンピング材26が形成されているので、不要振動や空気中を伝播・反射する音波が吸収されてダンピングされる。
【0034】
さらに、この超音波センサ10では、ダンピング材26となるゲル状の合成樹脂材料や発泡性を有する充填材の量により硬化後における振動面への質量負荷を制御することによって、共振周波数の調整や機械的品質係数Qの尖鋭度の調整を行うことができる。
【0035】
ここで、上述の超音波センサ10において、圧電素子18に直接接続されるばね端子20aの共振周波数が6kHzである場合と72kHzである場合とのそれぞれの場合について、ケース12の振動面を削って超音波センサ10の共振周波数を下げていったときに残響時間がどのようになるかを調べた。
ばね端子20aの共振周波数が6kHzである場合の結果を表1に示し、ばね端子20aの共振周波数が72kHzである場合の結果を表2に示し、それらの結果を図4(A)のグラフに示した。
【0036】
【表1】

【表2】

【0037】
表1、表2および図4(A)のグラフにおいて、残響時間とは、ある駆動回路で測定した際の残響時間の尾引きの程度を表す量であり、図4(B)に示すように、本実施例においては駆動を停止してから信号が1Vにまで低下する時間を示している。
【0038】
表1、表2および図4(A)のグラフに示す結果から明らかなように、超音波センサの共振周波数がばね端子の共振周波数に近付くと残響時間が長くなりすなわち残響特性が悪くなるのに対して、超音波センサの共振周波数がばね端子の共振周波数から遠くなると残響時間が短くなりすなわち残響特性がよくなることがわかる。また、ばね端子20aの共振周波数が超音波センサの共振周波数よりも高い場合、安定して残響時間が短くなることがわかる。また、ばね端子20aの共振周波数が高ければ、残響時間のばらつきも小さいため、超音波センサの共振周波数間に多少のばらつきがあっても問題ないことがわかる。このため、超音波センサの共振周波数に影響を与える超音波センサの各ケース12および各圧電素子18の固有振動数に若干のばらつきがあったとしても、残響特性への影響を小さくすることができ、歩留まりを高くすることができる。
【0039】
図5は、この発明にかかる超音波センサに用いられる入出力端子および支持部材の他の例を示す斜視図である。
図5に示す支持部材24では、ケース12の閉塞面側に対向する対向部分25が凹凸状に形成されている。そのため、支持部材24においてそのように凹凸状に形成された対向部分25によってケース12の振動面である閉塞面から空気中を伝播する音波の反射を減衰させることができ、残響特性の悪化を防ぐ効果がある。また、このような支持部材24は、ケース12の振動面から一定の距離を離して設置されるため、支持部材24に設けられた切欠部24bに音波吸収効果を持つスポンジやフェルトなどの吸収材を詰めることによって、空気中を伝播する音波を効率よく吸収し、内部空間の確保と封止の効果ももたらすことができる。
さらに、図5に示す入出力端子20では、ばね端子20aの先端部20dが、固着強化および位置固定のために、フォーク型形状に形成されている。
図5に示すように、入出力端子や支持部材の形状などは変更されてもよい。
【0040】
図6は、この発明にかかる超音波センサの他の例を示す分解斜視図である。図6に示す超音波センサ10では、図1に示す超音波センサ10と比べて、入出力端子20および22において部分的に形状や向きが異なる。このように入出力端子20および22の形状や向きは変更されてもよい。
また、図6に示す超音波センサ10では、支持部材24に、図5に示す支持部材24と同様に切欠部24bが設けられている。
さらに、図6に示す超音波センサ10では、支持部材24上に、音波吸収効果を持つスポンジなどからなる円柱状の音波吸収材28が接着剤で接着される。
なお、図6中の濃く示している部分は、接着剤である。
【0041】
図7は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す断面図解図である。図7に示す超音波センサ10では、図1に示す超音波センサ10と比べて、特に、入出力端子20および22の形状が異なるとともに、入出力端子20および22の引出側部分20cおよび22c間の間隔が狭められている。このように入出力端子20および22の形状および位置は変更されてもよい。
【0042】
上述の図6および図7に示す各超音波センサ10でも、図1に示す超音波センサ10と同様の効果を奏する。
【0043】
図8は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す断面図解図である。図8に示す超音波センサ10でも、圧電素子18の他方主面側の電極に直接接続される入出力端子20は、折り返し構造を持ちばね性を有するばね端子20aを有し、ばね端子20aは、その材質、幅、厚み、長さなどを調整することによって、その共振周波数が超音波センサ10から発生する信号の共振周波数すなわち超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなるように形成されている。
【0044】
図8に示す超音波センサ10では、特に、入出力端子20のばね端子20aが、図9(A)〜(F)に示すように、断面コ字状に形成されている。図9(A)は、そのばね端子20aを示す斜視図であり、図9(B)、(C)、(D)、(E)および(F)は、それぞれ、その平面図、底面図、正面図、左側面図および展開図である。図9に示すばね端子20aは、圧電素子18の他方主面側の電極に直接接続される先端部20dを含む。先端部20dは、その中央にたとえば直径0.8mmの円形の第1の中空部20e1が形成されることによって、たとえば外径1.5mmの円環形状に形成される。先端部20dには、その端部から同一平面にのびて、細長い細長部20fが形成される。細長部20fは、先端部20dの中心までの長さA(図9(C)参照)がたとえば4.5mmに形成され、一番細い中間部分などの幅B(図9(C)参照)がたとえば0.5mmに形成される。また、細長部20fは、先端部20d側とは反対側のたとえば0.9mmの部分が、端部に接近するに従って徐々に広がるように形成される。細長部20fには、先端部20d側とは反対側の端部から垂直方向にのびて、たとえば高さ1.1mmの台形状の垂直部20gが形成される。垂直部20gは、細長部20f側の端部からその反対側の端部に従って徐々に広がるように形成される。なお、細長部20fと垂直部20gとの間の部分は、たとえば半径2mmの丸みを有するように曲げられている。垂直部20gには、細長部20f側とは反対側の端部から細長部20fおよび先端部20dに対向するように直角方向にのびて、たとえば長さ6.0mmで幅2.5mmの長方形状の対向部20hが形成される。対向部20hは、細長部20fの幅や先端部20dの幅より広い幅に形成されている。なお、垂直部20gと対向部20hとの間の部分も、たとえば半径2mmの丸みを有するように曲げられている。対向部20hにおいて先端部20dおよび第1の中空部20e1に対向する部分には、たとえば直径1.5mmの円形の第2の中空部20e2が形成される。第2の中空部20e2は、先端部20dを圧電素子18の他方主面側の電極に接続する際に接続用の材料や工具を通すために用いられるものである。
【0045】
ばね端子20aの対向部20hにおいて垂直部20g側とは反対側の端部には、図1に示す超音波センサ10と同様の入出力端子20の中間部分20bおよび引出側部分20cが一連にのびて形成されている。図8に示す超音波センサ10における入出力端子20は、ばね性を有するたとえば厚さ0.1mmのリン青銅C5210Hからなる板材をプレス加工などで所定の形状に打抜くとともに曲げることによって形成される。
【0046】
図8に示す超音波センサ10では、ばね端子20aは、先端部20dが圧電素子18の他方主面側の電極に対向するとともに対向部20hが支持部材24の下面に対向するように配置される。この場合、対向部20hに形成された第2の中空部20e2は、支持部材24に形成された貫通孔24aに対応される。そして、支持部材24に形成された貫通孔24aおよびばね端子20aに形成された第2の中空部20e2に接続用の材料や工具を通して、ばね端子20aの先端部20dが圧電素子18の他方主面側の電極に接続される。なお、支持部材24に形成された貫通孔24aは、板状の蓋30を接着することにより塞がれる。
【0047】
また、入出力端子20において、中間部分20bは支持部材24にインサートモールド工法などで埋め込まれ、引出側部分20cはケース12の内部から外部に配置される。
【0048】
さらに、他方の入出力端子22は、接続側部分22aがケース12の内面に接続され、中間部分22bが支持部材24の側面から上面に沿わされ、引出側部分22cがケース12の内部から外部に配置される。
【0049】
図8に示す超音波センサ10では、圧電素子18に接続される入出力端子20として断面コ字状の折り返し構造を持つばね端子20aが使用されているので、圧電素子18の振動を阻害することなく、圧電素子18の振動が入出力端子20のばね端子20aで充分に吸収され、ケース12やセンサ内部への振動漏れがなくなり、残響特性が向上する。
【0050】
また、図8に示す超音波センサ10でも、ばね端子20aの共振周波数が超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなるように形成されているので、ばね端子20aの基本波成分および高調波成分のすべてが超音波センサ10の駆動周波数よりも高くなり、超音波センサ10の信号がばね端子20aから発生する信号によって妨害されることがなく、また、ばね端子20aと超音波センサ10との共振現象も発生せず、残響特性が改善され、ばね端子20aの破損も防止される。
【0051】
さらに、図8に示す超音波センサ10では、図1に示す超音波センサ10と同様の他の効果も奏する。
【0052】
また、図8に示す超音波センサ10では、ばね端子20aにおいて支持部材24に接触する部分の幅が、ばね端子20aにおいて圧電素子18の他方主面側の電極に接続される側よりも広いので、ばね端子20aにおいて圧電素子18の他方主面側の電極に接続される側も広い場合に比べて、ばね端子20aの共振周波数が高くなり、ばね端子20aと超音波センサ10との共振現象がさらに発生しにくくなる。
【0053】
さらに、図8に示す超音波センサ10では、ばね端子20aが断面コ字状に形成されているにもかかわらず、ばね端子20aにおいて圧電素子18の他方主面側の電極に接続される先端部20dおよび第1の中空部20e1に対向する所定の位置に第2の中空部20e2が形成されているので、第2の中空部20e2を利用して接続用の材料や工具を通すことができ、ばね端子20aの先端部20dを圧電素子18の他方主面側の電極に容易に接続することができる。
【0054】
ここで、図9に示すばね端子20aにおいて、対向部20hを拘束した状態で先端部20dに図9(A)の矢印で示す方向に強制変位を与えたときの応力調和解析を行った。この場合、強制変位は、48kHzで0.6m/sに相当する2.39μmを与えた。この48kHzとは、センサ振動面が駆動する駆動周波数と同じ周波数であり、0.6m/sとは、実際に超音波センサをある電圧で駆動させレーザ変位計から読み取った振動面中心の最大振幅である。また、その対象となるモデルとして、2つのモデルを選択した。図9(C)における長さAを変化させることで共振周波数が変化することから、その長さAが4.5mmであるモデルとその長さAが3.0mmであるモデルとの2つのモデルを選択した。
【0055】
長さAが4.5mmであるモデルの場合、共振解析を行なうと、一番小さな共振モードが24.7kHzに存在することがわかった。
【0056】
図10は、長さAが4.5mmであるモデルの共振周波数24.7kHzにおける振動モードを斜め下から見た斜視図である。
【0057】
図10から明らかなように、それらの振動は、先端部20dおよび細長部20fの振動を垂直部20gおよび対向部20hに伝えないような振動であり、腹1つの振動が起きている。このとき、ばね端子20aの共振周波数は24.7kHzのため、センサの使用周波数(駆動周波数)の48kHzを下回っていることがわかる。
【0058】
次に、長さAが3.0mmであるモデルの場合、共振解析を行なうと、最初に生じる共振周波数が61.1kHzであり、センサの使用周波数(駆動周波数)を上回っている。
【0059】
図11は、長さAが3.0mmであるばね端子20aのモデルの共振周波数61.1kHzにおける振動モードを斜め下から見た斜視図である。
【0060】
図11から明らかなように、それらの振動は、先端部20dおよび細長部20fの振動を垂直部20gおよび対向部20hに伝えないような振動であり、腹1つの振動が起きている。
【0061】
このモードで調和解析を行なうと、図12に示すグラフの結果が得られた。
【0062】
図12は、図11に示すばね端子20aにおけるy方向座標に対する最大主応力を示すグラフであり、図13は、そのばね端子20aにおけるy方向座標を説明するための図解図である。ここで、y方向座標は、図13に示すライン上の点を取っている。
【0063】
図12のグラフより、センサの周波数が高くなるにつれて、すなわち、センサの周波数とばね端子20aの周波数が近づくにつれて、最大主応力の最大値が大きくなっていく様子がわかる。ただし、図12のグラフでは、厚みが0.1mmのばね端子20aを考えているが、ばね端子20aの先端部20dおよび細長部20fがたわむと、先端部20dおよび細長部20f側と対向部20h側とで異なる場所で引っ張り応力がかかっている。たとえば、図14(A)は、図11に示すばね端子20aにおいて48kHzの調和解析の振動モードを斜め上から見た斜視図であり、図14(B)は、その振動モードを斜め下から見た斜視図である。そして、図12のグラフでは、図14に示すように先端部20dおよび細長部20f側と対向部20h側との両方で発生している応力を合わせて描いている。
ばね端子20aの共振モードよりも低い周波数で使用することで疲労が起こりにくいと推測される。以下には、このモデルについて調和解析を行った結果を図12のグラフに示す。
【0064】
また、図12のグラフより、長さAが3.0mmであるモデルでは、周波数54kHzの場合に疲れ限界の150MPaを超えてしまっている点が見られるが、52kHz以下であれば疲れ限界の150MPaよりも低く、48kHzの場合の最大主応力は80MPa程度であることがわかる。これより、ばね端子20aの共振周波数に対してセンサの周波数が1.175倍(61.1kHz/52kHz)以上高い場合、最大主応力が低減され好ましいことがわかる。
【0065】
以上のようなシミュレーション解析から、ばね端子20aの長さが長い方が、ばね端子の最初に生じる共振周波数が低いため、超音波センサの共振周波数より低くなることがわかる。また、ばね端子の共振周波数が超音波センサの共振周波数よりも高くすることによって残響は抑制されるが、ばね端子20aの共振周波数が超音波センサの共振周波数に近い場合、最大主応力が大きいため、金属疲労などが生じやすくなる。しかし、ばね端子20aの共振周波数が超音波センサの周波数の1.175倍以上である場合、ばね端子の両端20d、20gおよび中央部20fにかかる最大主応力を低減することができ、ばね端子の金属疲労を防ぐことができるため、ばね端子としてより好ましいことがわかる。
このように、ばね端子の長さを変化させるだけでなく、たとえば、材質、幅、厚みなどを変化させることで、超音波センサの共振周波数とばね端子の共振周波数とを異ならせることができ、超音波センサの残響特性に悪影響を引き起こさないようすることができる。
【0066】
たとえば、共振周波数は、ばね端子が短く、狭く、厚いほど高くなる。その長さを3mmとしたときの共振周波数の変化を図15に示す。なお、図15(A)は、長さ3mmのばね端子における幅などに対する共振周波数を示すグラフであり、図15(B)は、ばね端子の長さおよび幅を示す図解図である。
【0067】
図16は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す断面図解図である。図16に示す超音波センサ10では、図8に示す超音波センサ10と比べて、入出力端子20および22の引出側部分20cおよび22cがそれぞれリード線で形成されている。
図16に示す超音波センサ10でも、図8に示す超音波センサ10と同様の効果を奏する。
【0068】
図17(A)は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、図17(B)は、その平面図解図であり、図17(C)は、その側面図解図である。図17に示す超音波センサ10では、特に、ケース12が有底円筒状に形成されている。ケース12は、有底筒状ケース部14および筒状ケース部16を含む。有底筒状ケース部14は、有底円筒状に形成され、筒状ケース部16の外側に配置される。また、筒状ケース部16は、円筒状に形成され、有底筒状ケース部14の内側に配置される。そして、有底筒状ケース部14および筒状ケース部16は、有底円筒状に一体的に接合される。
【0069】
また、筒状ケース部16には、ケース12の振動部側の端部において対向する2つの部分に、たとえば矩形状の切欠17、17が形成されている。図18に超音波センサ10の基本振動の振動状態を有限要素法により解析した結果を示す。これらの切欠17、17によって、超音波センサ10の基本振動モードの実効振動面積が円形ではなく、図18に濃く示した部分のように、実効振動面積の大きい方向と小さい方向とが存在する楕円形状となる。この実効振動面積の大きい方向は、2つの切欠17、17を直線で結ぶ方向であり、実効振動面積の小さい方向は、2つの切欠17、17を直線で結ぶ方向に直交する方向である。このように超音波センサ10の実効振動面積が異方性を有するのは、たとえば、その超音波センサ10を自動車のコーナソナーやバックソナーとして用いて、障害物を縦方向には狭く検知し横方向には広く検知したいという場合などに有効である。
【0070】
さらに、図17に示す超音波センサ10では、長方形状の圧電素子18が用いられ、圧電素子18は、その長辺が実効振動面積の大きい方向に沿い、かつ、その短辺が実効振動面積の小さい方向に沿うように配置される。なお、図17に示す超音波センサ10における実効振動面積や圧電素子18の配置について、図1に示す超音波センサ10においても同様な実効振動面積や圧電素子の配置を有している。
【0071】
図17に示す超音波センサ10では、圧電素子18に駆動電圧を印加すると、振動面は図18に濃く示した楕円形状の部分が基本振動モードで振動する。図19(A)に超音波センサ10の高次の振動モードの振動状態を有限要素法により解析した結果を示す。それと同時に、その基本振動の高調波も励起されてしまい、たとえば図19(A)に濃く示した部分が振動し、振動面は振動面に複数の節を持つ高次の振動モードで振動する。このような高次の振動モードの振動は、実効振動面積の大きい方向において振動面に複数の節を持ち、振動面には、たとえば図19(A)の線B−Bにおける断面図解図である図19(B)に示すように、実効振動面積の大きい方向において中心部分が振動する位相とは逆の位相で振動する部分が存在する。
したがって、図17に示す超音波センサ10では、圧電素子18が、超音波センサ10のたとえば3次振動モードなどの高次振動モードの振動分布で電界分布が正負逆転する部分を跨ぐように配置されることなる。そのため、高次の振動モードによる電歪効果で発生する電荷が打ち消しあって、振動として早く減衰することになる。以上の作用により、基本振動よりも高次の不要振動を抑えることができ、その結果、残響の尾引きを低下し、すなわち、残響時間を短くし、障害物を検知することができる最短距離についての分解能を上げることができる。
なお、このような効果は、圧電素子18の圧電体基板が長方形状の角部を丸くした形状に形成されていても奏する効果であって、圧電素子18の圧電体基板がそのような形状や長方形状などの略長方形状に形成されていれば奏する効果である。
【0072】
また、図17に示す超音波センサ10では、圧電素子18が長方形状に形成されているため、圧電素子18に用いられる長方形状の圧電体基板は、シート成型された大型の圧電板を個々の片にカットすることで寸法精度よく大量に生産することができ、特性のばらつきを緩和することができる。
【0073】
ここで、圧電素子を正方形状に(幅および長さをそれぞれ6.2mmに、厚みを0.15mmに)形成した場合と、圧電素子を長方形状に(幅を5.0mmに、長さを8.0mmに、厚さを0.15mmに)形成した場合とのそれぞれの場合について、圧電素子における周波数に対するインピーダンスを計算により求めた。圧電素子を正方形状に形成した場合の結果を図20のグラフに示し、圧電素子を長方形状に形成した場合の結果を図21のグラフに示す。
【0074】
図20のグラフおよび図21のグラフより、基本周波数40kHzの振動に対して、正方形状に形成した圧電素子では、100kHz、120kHzに高次の共振点が見られるが、長方形状に形成した圧電素子では、100kHz、120kHzの振動モードを抑える効果が見られるのがわかる。
【0075】
また、基本振動モードにおける長方形状の圧電素子のひずみを有限要素法を用いて調べ、それを示す斜視図を図22(A)に示し、それを示す側面図を図22(B)に示した。図22より、基本振動モードにおける長方形状の圧電素子のひずみは、圧電素子の中心が大きくひずんで変位しているのがわかり、また、圧電素子の長さ方向における端はほとんど変位していないことがわかる。
【0076】
さらに、3次高調波振動モードにおける長方形状の圧電素子のひずみを有限要素法を用いて調べ、それを示す斜視図を図23(A)に示し、それを示す側面図を図23(B)に示した。図23より、3次高調波振動モードにおける長方形状の圧電素子のひずみは、圧電素子の中心の変位方向と圧電素子の長さ方向における端の変位方向とは互いに逆方向である。このような場合、ひずみによって圧電素子全体に発生する電荷の正負が中心と端とで異なるため、圧電素子の片面全体を覆っている電極を伝わって発生電荷が互いに相殺され、振動モードとして抑制されることになる。
【0077】
また、高次の振動モードにおける正方形状の圧電素子のひずみを有限要素法を用いて調べ、それを示す斜視図を図24(A)に示し、それを示す側面図を図24(B)に示した。図24より、圧電素子が正方形状の場合、長方形状の場合と異なり、圧電素子の中心の変位方向と長さ方向における端の変位方向とは互いに逆方向であるが、それらの変位量が異なる。このため、ひずみによって圧電素子全体に発生する電荷の相殺量が異なり、振動モードとして残ってしまうことになる。
【0078】
図25(A)は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、図25(B)は、その平面図解図であり、図25(C)は、その側面図解図である。図25に示す超音波センサ10では、図17に示す超音波センサ10と比べて、特に圧電素子18の圧電体基板が楕円形状に形成され、圧電素子18は、その長辺が実効振動面積の大きい方向に沿い、かつ、その短辺が実効振動面積の小さい方向に沿うように配置される。
図25に示す超音波センサ10では、圧電素子18の圧電体基板が楕円形状に形成され、その長辺および短辺が実効振動面積の大きい方向および小さい方向にそれぞれ沿わされているので、圧電素子18の圧電体基板が高次の振動モードで振動する部分に大きく重なるので、最も多くの不要高次振動を抑制することができる。
【0079】
図26(A)は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、図26(B)は、その平面図解図であり、図26(C)は、その側面図解図である。図26に示す超音波センサ10では、図17に示す超音波センサ10と比べて、特に圧電素子18の圧電体基板が6角形状に形成され、圧電素子18の一番長い対角線が実効振動面積の大きい方向に沿わされることによって、高次の振動モードが抑制される。
なお、圧電素子18を他の多角形状に形成し、その一番長い対角線が実効振動面積の大きい方向に沿わされても高次の振動モードを抑制することが可能である。
また、そのように圧電素子18の圧電体基板を6角形状などの多角形状に形成すると、1枚の大きな圧電板から無駄を少なくして多数の圧電体基板を製造することができ、圧電体基板の製造コストを抑えることが可能である。
【0080】
図27(A)は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、図27(B)は、その平面図解図であり、図27(C)は、その側面図解図である。図27に示す超音波センサ10では、特に、圧電素子18として、3枚の圧電体基板18a、18bおよび18cが用いられる。これらの圧電体基板18a、18bおよび18cは、実効振動面積の大きい方向に間隔を隔てて配置される。また、両側の圧電体基板18aおよび18cは小さく形成され、中央の圧電体基板18bは大きく形成される。さらに、両側の圧電体基板18aおよび18cと中央の圧電体基板18bとは、互いに逆の厚み方向に分極され、分極方向が異なる。また、これらの圧電体基板18a、18bおよび18cには、それらの一方主面側に一方の電極が共通に形成され、それらの他方主面側に他方の電極が共通に形成される。
図27に示す超音波センサ10では、高次モードによって両側の圧電体基板18aおよび18cに発生する電荷と中央の圧電体基板18bに発生する電荷とが相殺される。
このように高次モードによって発生する電荷を相殺するためには、圧電体基板18a、18bおよび18cを同じ厚み方向に分極するとともに、一方の電極および他方の電極を圧電体基板18a、18bおよび18cごとに分割して形成し、それらの電極を信号線で交互に接続することによって、高次モードによって両側の圧電体基板18aおよび18cに発生する電荷と中央の圧電体基板18bに発生する電荷とを相殺するようにしてもよい。
なお、高次モードによって発生する電荷を相殺するためには、圧電素子として、3枚の圧電体基板が用いられる代わりに、形状は変形する必要がある場合はあるが、2枚または4枚以上の圧電体基板が用いられてもよい。
【0081】
図28(A)は、この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、図28(B)は、その平面図解図であり、図28(C)は、その側面図解図であり、図28(D)は、その超音波センサに用いられる圧電素子を示す拡大図である。図28に示す超音波センサ10では、図17に示す超音波センサ10と比べて、圧電素子18が、長方形状の圧電体基板19aを、ケース12の材料と異なる異種金属からなる金属板19bに接合することによって形成されている。なお、圧電体基板19aにおいて、金属板19b側の主面とは反対側の主面には、電極が形成されている。この圧電素子18は、金属板19bがケース12の振動面に導電性接着剤などで接続される。
図28に超音波センサ10では、図17に示す超音波センサ10と同様の効果を奏するとともに、1枚の大きい圧電板を1枚の大きな金属板に接合した後に個々に切り出すことによって多数の圧電体基板を製造することができるため、圧電体基板の製造工数の削減を図ることができ、また、異種金属からなる金属板19bがケース12と圧電体基板19aとの間に存在するので、ケース12と圧電体基板19aとの線膨張係数差の緩和に繋がり、温度特性が向上する。
【0082】
なお、上述の各超音波センサ10では、各部が特定の大きさ、形状、配置、材料、数で規定されているが、この発明では、それらは任意に変更されてもよく、このように変更することによって、残響特性などの特性がさらに改善されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
この発明にかかる超音波センサは、たとえば、自動車のコーナソナーやバックソナーなどに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明にかかる超音波センサの一例を示す断面図解図である。
【図2】図1に示す超音波センサに用いられる入出力端子を示す斜視図である。
【図3】図2に示す入出力端子に支持部材を形成した状態を示す斜視図である。
【図4】(A)は超音波センサの共振周波数に対する残響時間を示すグラフであり、(B)は残響時間を説明するためのグラフである。
【図5】この発明にかかる超音波センサに用いられる入出力端子および支持部材の他の例を示す斜視図である。
【図6】この発明にかかる超音波センサの他の例を示す分解斜視図である。
【図7】この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す断面図解図である。
【図8】この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す断面図解図である。
【図9】(A)は図8に示す超音波センサに用いられるばね端子を示す斜視図であり、(B)、(C)、(D)、(E)および(F)はそれぞれその平面図、底面図、正面図、左側面図および展開図である。
【図10】図9に示すばね端子において長さAが4.5mmの場合の共振周波数24.7kHzにおける振動モードを斜め下から見た斜視図である。
【図11】図9に示すばね端子において長さAが3.0mmの場合の共振周波数61.1kHzにおける振動モードを斜め下から見た斜視図である。
【図12】図11に示すばね端子におけるy方向座標に対する最大主応力を示すグラフである。
【図13】図11に示すばね端子のy方向座標を説明するための図解図である。
【図14】(A)は図11に示すばね端子において48kHzの調和解析の振動モードを斜め上から見た斜視図であり、(B)はその振動モードを斜め下から見た斜視図である。
【図15】(A)は長さ3mmのばね端子における幅などに対する共振周波数を示すグラフであり、(B)はばね端子の長さおよび幅を示す図解図である。
【図16】この発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す断面図解図である。
【図17】(A)はこの発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、(B)はその平面図解図であり、(C)はその側面図解図である。
【図18】超音波センサにおける基本振動モードを示す斜視図である。
【図19】(A)は超音波センサにおける高次の振動モードを示す斜視図であり、(B)はその高調波の振動モードを示す(A)の線B−Bにおける断面図解図である。
【図20】6.2mm×6.2mmの正方形状の圧電素子の周波数−インピーダンス特性を示すグラフである。
【図21】5.0mm×8.0mmの長方形状の圧電素子の周波数−インピーダンス特性を示すグラフである。
【図22】(A)は基本振動モードにおける長方形状の圧電素子のひずみを示す斜視図であり、(B)はその側面図である。
【図23】(A)は3次高調振動モードにおける長方形状の圧電素子のひずみを示す斜視図であり、(B)はその側面図である。
【図24】(A)は高次の振動モードにおける正方形状の圧電素子のひずみを示す斜視図であり、(B)はその側面図である。
【図25】(A)はこの発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、(B)はその平面図解図であり、(C)はその側面図解図である。
【図26】(A)はこの発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、(B)はその平面図解図であり、(C)はその側面図解図である。
【図27】(A)はこの発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、(B)はその平面図解図であり、(C)はその側面図解図である。
【図28】(A)はこの発明にかかる超音波センサのさらに他の例を示す斜視図解図であり、(B)はその平面図解図であり、(C)はその側面図解図であり、(D)はその超音波センサに用いられる圧電素子を示す部分拡大図である。
【図29】従来の超音波センサの一例を示す断面図解図である。
【符号の説明】
【0085】
10 超音波センサ
12 ケース
14 有底筒状ケース部
16 筒状ケース部
16a 凸部
17 切欠
18 圧電素子
18a、18b、18c、19a 圧電体基板
19b 金属板
20、22 入出力端子
20a ばね端子
20b、22b 中間部分
20c、22c 引出側部分
20d 先端部
20e 中空部
20e1 第1の中空部
20e2 第2の中空部
20f 細長部
20g 垂直部
20h 対向部
22a 接続側部分
24 支持部材
24a 貫通孔
24b 切欠部
25 対向部分
26 ダンピング材
28 音波吸収材
30 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のケースと、
一方主面および他方主面を有し、前記一方主面が前記ケースの内底部に配置される圧電素子と、
前記圧電素子に電気的に接続され、前記ケースの外部に引き出される入出力端子とを有する超音波センサであって、
前記圧電素子の他方主面に接続される入出力端子としてばね端子が使用され、前記ばね端子の共振周波数が超音波センサから発生する信号の共振周波数よりも高くなるように形成された、超音波センサ。
【請求項2】
前記入出力端子は金属で一体的に形成された、請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記ケースの内部において前記圧電素子の他方主面側に合成樹脂からなる支持部材が配置され、前記入出力端子と前記支持部材とが一体的に形成された、請求項1または請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記ばね端子は折り返し構造を持つばね端子であって、前記ばね端子の前記支持部材に接触する部分が、前記支持部材に固定されている、請求項3に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記ばね端子において前記支持部材に接触する部分の幅が、前記ばね端子において前記圧電素子の他方主面に接続される側の幅よりも広い、請求項4に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記ばね端子は折り返し構造を持つばね端子であって、前記ばね端子の前記圧電素子の他方主面に接続される端部に第1の中空部が形成され、前記ばね端子において前記第1の中空部に対向する所定の位置に第2の中空部が形成された、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記ケースは金属で形成され、前記圧電素子の一方主面側に接続される入出力端子は前記ケースの所定の位置に接続された、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記ケースは、金属で形成された有底筒状ケース部および前記有底筒状ケース部に接合される金属で形成された筒状ケース部を含み、前記筒状ケース部の内部に前記支持部材が配置され、前記圧電素子の一方主面側に接続される入出力端子は前記筒状ケース部の所定の位置に接続された、請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項9】
前記圧電素子として長方形状の圧電体基板が用いられた、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項10】
前記圧電素子として楕円形状の圧電体基板が用いられた、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項11】
前記圧電振動素子として分極方向の異なる2枚以上の圧電体基板が用いられた、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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