超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法
【課題】曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法を提供する。
【解決手段】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500は工作物の表面に接触して超音波振動により工作物を打撃する超音波ナノ改質器100;前記超音波ナノ改質器100の下部に設置されて工作物回転軸260に対して水平方向に左右運動をするX軸移送系200、X軸移送系200と直交方向に設置されていて超音波ナノ改質器100が工作物回転軸260に対して水平方向に前後運動をすることができるようにするY軸移送系220及び超音波ナノ改質器100が結合されて超音波ナノ改質器100を回転断続または連続させて加工角度を制御するC軸駆動系240で構成される本体250;及び工作物すなわち、ベアリングを固定して回転させるチャック(Chuck、300)が具備されている工作物回転軸260;で構成されている。
【解決手段】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500は工作物の表面に接触して超音波振動により工作物を打撃する超音波ナノ改質器100;前記超音波ナノ改質器100の下部に設置されて工作物回転軸260に対して水平方向に左右運動をするX軸移送系200、X軸移送系200と直交方向に設置されていて超音波ナノ改質器100が工作物回転軸260に対して水平方向に前後運動をすることができるようにするY軸移送系220及び超音波ナノ改質器100が結合されて超音波ナノ改質器100を回転断続または連続させて加工角度を制御するC軸駆動系240で構成される本体250;及び工作物すなわち、ベアリングを固定して回転させるチャック(Chuck、300)が具備されている工作物回転軸260;で構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法に関するものであって、さらに詳細には超音波を利用したナノ改質器を利用してベアリング加工時ベアリング表面に加える打撃速度、打撃進行速度及び打撃角度などを精密に制御することによって、ベアリング表面にマイクロディンプルまたはオイルポケット(Oil Pockets)を生成させて、表層部の組織をナノ結晶質に改質させると同時に圧縮残留応力を付加して硬度を向上させることによって、スライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時にベアリングに発生する摩擦係数と摩耗率を減らして、接触疲労強度(Rolling Contact Fatigue Strength)を向上させて、曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベアリングとは回転している機械の軸を一定な位置に固定して軸の自重と軸に掛かる荷重を支持しながら軸を回転させる役割をする機械要素を言う。このようにベアリングは高い荷重と高速回転によって相当な摩擦力と曲げ、ねじり、引張または圧縮力を受けるため高い精密度と強度が要求される機械要素である。したがってベアリングの寿命を増加させて、摩擦損失を減らすために多様な特殊加工法が開発されている。
【0003】
ベアリングの硬度向上を介する摩耗率低減または相対摩擦係数低減のための特殊加工法としてPVD(Physical Vapor Deposition、物理的蒸気蒸着法)またはCVD(ChemicalVapor Deposition、化学的蒸気蒸着法)を利用したコーティングやイオン注入法(ionimplanting)等がある。しかしこのような表面硬化処理方法は複雑な形状に均等な表面処理が難しくて、ベアリングが転がり運動をする場合に剥離現象が発生する問題点がある。
【0004】
次に、ベアリングの表面に圧縮残留応力を付加して機械加工の方向性を除去して、疲労寿命を向上させるための方法で、ショットピーニング(Shot Peening)、レーザショットピーニング(LaserShot Peening)、ディープローリング(Deep Rolling)、超音波ショットピーニング(UltrasonicShot peening)、ウォータージェットピーニング(Water Jet Peening)等がある。
【0005】
図1は、従来技術による超音波を利用した表面改質方法を示す図面であって、図2は従来技術によるショットピーニングを利用した表面改質方法を示す図面である。
【0006】
図1及び図2を参照すると、従来技術による超音波を利用した加工原理とショットピーニングを利用した加工原理は二種類全部複数の微細な研磨粒子(abrasive particles、13)またはショットボール(shotball、23)を加工物14に衝突させて相対的に突出した部位に局部的な塑性変形を引き起こすことによって滑らかな表面粗さ(surface roughness)を得ることができる。
【0007】
それぞれの加工原理をさらに詳細に説明すると、まず超音波を利用した加工方法は電源供給を受けるジェネレータ(Generator、18)が一般電源を高周波の電気的エネルギーに変換してピエゾセラミック17に伝達すれば、ピエゾセラミック17はこれを機械的エネルギーに変換する。ピエゾセラミック17により変換された機械的エネルギーはブースター16によって増幅されて、増幅された機械的エネルギーはブースター16の終端に連結された工具15を超音波振動(ultrasonic vibration)させて容器10に含まれたラップ剤12を遊動させることによって、ラップ剤12の遊動により無秩序に運動する複数個の微細な研磨粒子13を無作為で容器10の内部に含まれた加工物14の表面を打撃する方法である。
【0008】
一方、ショットピーニングを利用した加工方法は空気圧、遠心力などの力で無数に多くのショットボール23を瞬間的に加工物14の表面に衝突させて加工物14の表面層に圧縮残留応力を付加することを主目的にする表面処理技術で、塑性加工ディンプル(dimples)を形成させる表面処理を遂行し、ショットボール23が噴射される排出口20を加工物14の上段から移動させて連続的な加工領域を得ることができる。
【0009】
上のような従来の加工方法は一定な加工領域内で無作為で複数個の微細なショット23を瞬間的に加工物に衝突させて打撃(Hammering)する方法で加工粒子の運動による亀裂、破壊の進展によるチッピング(chipping)現象を利用する。すなわち、このような従来の加工方法は加工粒子の運動エネルギーを受けて塑性変形の痕跡であるディンプルを加工物の表面に形成させるようになる。
【0010】
ところがこのようなディンプルが形成される従来の加工方法は運動エネルギーを有する無数に多くの粒子を加工物の表面に不規則に衝突させるため平均的な表面粗さの数値を有するように加工するしかないし、大部分の場合加工前より表面粗さが悪くなって、表面層に潤滑油を含むことができるオイルポケットやマイクロディンプルが形成されるが大きさ、密度、配列(pattern)を制御することができない。したがって、加工物の特定部位を区分して制限的に特定数値の表面粗さを有するようにディンプル加工をすることにおいて加工方法上その適用が難しい問題点がある。また、加工物の形状が非常に不規則な場合や加工物の内径などにディンプルを形成させる場合にも従来の加工方法を適用しにくい問題点がある。そして前記加工方法のうちディープローリング(Deep Rolling)による表面加工方法は大きい圧縮残留応力を付加するには有利であるが、ディンプル構造を作ることが不可能であるだけでなく工作物の表面硬度と形状に限界があるという問題点がある。
【0011】
また、従来の加工方法を用いると加工物の表面に加工粒子による打撃ディンプルが無作為で形成されるため高強度を要求する特定部位にだけ圧縮残留応力を発生させるのが難しい。また、ショットボールが加工物を打撃する強度が弱ければ圧縮応力の大きさや深さが小さくてベアリング素材で用いるのに充分な強度を得ることができず、逆にショットボールが加工物を打撃する強度が大きくなれば圧縮応力の大きさや深さにおいて優秀な効果を得ることができるが表面層が熱変形または過度な塑性変形チッピング(chipping)現象によって表面が粗くなるため追加加工が必要な短所がある。
【0012】
したがって、優秀な品質のベアリングを得るためにはベアリングの表面硬度及び圧縮残留応力を増加させて、スライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時発生する摩擦係数を減らして潤滑を円滑にできる表面改質装置及び方法が必要であり、これのためには加工物の表面に打撃を強めながらも加工物の表面に熱変形や表面粗さの悪化を起すことなく生成されるディンプルの大きさ、密度、配列を制御することができる装置及び方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、超音波ナノ改質器の打撃速度、打撃進行速度及び打撃角度などを精密に制御することによって、マイクロディンプルの大きさ、方向性及び単位面積当たりの数量などを制御してスライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時ベアリングに発生する摩擦係数と摩耗率を減らして、曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置は、工作物の表面に接触して超音波振動によって工作物の表面を打撃する超音波ナノ改質器;と前記超音波ナノ改質器の直線運動を制御する少なくとも1つの移送系と前記超音波ナノ改質器の加工角度を制御する少なくとも1つの駆動系で構成された本体;及び工作物を固定して回転させる手段が具備された少なくとも1つの工作物回転軸;で構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法は、ベアリングの形状によって超音波ナノ改質器の移動経路を生成する段階と;前記ベアリングの用途によって要求される機械的特性を有するベアリングを加工するために加工パラメーターを選定する段階と;前記移動経路及び加工パラメーターによって加工プログラムを作成する段階と;前記超音波ナノ改質器をセッティングする段階;及び前記ベアリングの大きさと形状によって専用ジグを設置する段階と;で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によれば、超音波ナノ改質器の打撃速度、打撃進行速度及び打撃角度などを精密に制御することによって、マイクロディンプルの大きさ、方向性及び単位面積当たりの数量などを自由に制御してスライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時ベアリングに発生する摩擦係数と摩耗率を減らして、圧縮残留応力付加及び表面硬度向上で接触疲労強度(Rolling Contact Fatigue Strength)を向上させて、曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術による超音波を利用した表面改質方法を示す図面。
【図2】従来技術によるショットピーニングを利用した表面改質方法を示す図面。
【図3】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の構成を示す図面。
【図4】本発明による超音波ナノ改質器の構成を示す図面。
【図5】図5(a)は本発明の一実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面。図5(b)は、本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面。
【図6】図6(a)は本発明の1実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの内部曲面を加工する状態を示している図面。図6(b)は本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの外部曲面を加工する状態を示している図面。図6(c)は本発明による超音波ナノ改質器の打撃位置を示している図面。
【図7】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の作業工程を示す順序図。
【図8】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度が硬度に及ぼす影響を示すグラフ。
【図9】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と移送速度が表面粗さに及ぼす影響を示すグラフ。
【図10】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度及び移送速度が圧縮残留応力に及ぼす影響を示すグラフ。
【図11】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度がナノ化深さに及ぼす影響を示すグラフ。
【図12】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力、打撃強度及び移送速度が単位面積当たりディンプル個数とディンプルの深さに及ぼす影響を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。但し、本発明はその要旨を離脱しない限り以下の実施形態に限定されない。
【0019】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置は、超音波振動によって工作物を打撃する超音波ナノ改質器、前記超音波ナノ改質器の直線運動を制御する少なくとも1つの移送系、前記超音波ナノ改質器の加工角度を制御する少なくとも1つの駆動系及び工作物を固定して回転させる少なくとも1つの工作物回転軸を含んで構成されている。
【0020】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の具体的な形態は工作物の形状や大きさまたは設置場所などによって多様な形状で具現されることができる。以下ではベアリングの内輪及び外輪を加工するために工作物回転軸水平面と超音波ナノ改質器の打撃チップ中心が同様な位置に置かれて、二個の移送系と1個の駆動系及び1個の工作物回転軸を備えたベアリング加工装置の実施形態に対して詳細に説明する。
【0021】
図3は、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の構成を示す図面である。
【0022】
図3を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500は工作物の表面に接触して超音波振動により工作物を打撃する超音波ナノ改質器100;前記超音波ナノ改質器100の下部に設置されて工作物回転軸260に対して水平方向に左右運動をするX軸移送系200、X軸移送系200と直交方向に設置されていて超音波ナノ改質器100が工作物回転軸260に対して水平方向に前後運動をすることができるようにするY軸移送系220及び超音波ナノ改質器100が結合されて超音波ナノ改質器100を回転断続または連続させて加工角度を制御するC軸駆動系240で構成される本体250;及び工作物すなわち、ベアリングを固定して回転させるチャック(Chuck、300)が具備されている工作物回転軸260;で構成されている。
【0023】
超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500の本体250部分に具備されているX軸移送系200及びY軸移送系220は案内面上にX軸テーブル210及びY軸テーブル215が置かれていて、前記X軸テーブル210及びY軸テーブル215はそれぞれ移送スクリュー(Feed screw、225)及びサーボモーター(servomotor、230)によって速度と位置が精密に制御されながら案内面上で往復直線運動をする。
【0024】
C軸駆動系240は超音波ナノ改質器100がボルト等のような締結機構(図示せず)によって結合される工具台で、駆動モーター(図示せず)によって左右回転、断続または連続制御されるように構成されている。
【0025】
以上のような超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500は通常のCNC(computer numerical control)方式により駆動・断続されることであって、X軸移送系200とY軸移送系220は超音波ナノ改質器100を左右方向と前後方向へ移送制御し、C軸駆動系240は超音波ナノ改質器100の打撃角度を断続または連続制御してベアリングを精密に加工することができて、特にベアリングの曲面部分を精密に加工することに有利である。
【0026】
サーボモーターによる位置制御装置及び方法は公知の技術であるのでこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0027】
図4は、本発明による超音波を利用したナノ改質器の構成を示す図面である。
【0028】
図4を参照すると、超音波ナノ改質器100はベアリング表面に衝撃を加える打撃チップ112、打撃チップ112が固定されて超音波振動を増幅伝達するホーン(horn、114)、超音波振動を増幅させるブースター(Booster、116)、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換させる振動発生部(Transducer、118)及び高周波の電気的エネルギーを超音波ナノ改質器100に供給してくれるジェネレータ(Generator、120)で構成される。
【0029】
ジェネレータ120は一般電源を高周波数の電気的エネルギーに変調して振動発生部118に供給する。
【0030】
振動発生部118は電気的信号によって体積が変わる特性を有した素子で、ジェネレータ120から高周波数の電気的エネルギーを供給を受ければ膨脹と収縮を反復しながら電気的エネルギーを機械的エネルギーに変える。
【0031】
ブースター116は振動発生部118によって発生した振動を増幅して、ブースター116と連結されているホーン114を介して打撃チップ112に伝達する。
【0032】
ホーン114はブースター116によって増幅された振動エネルギーを打撃チップ112にも一度増幅伝達したり単純伝達する役割をする。増幅比はホーンの形状を介して決定される。
【0033】
打撃チップ112は加工物の表面に直接接触して打撃しながら強塑性加工とマイクロディンプルを形成させるが、ホーン114に連結されていて、金属鋼球または多様な形状の突出物が露出された状態で固定されている。
【0034】
打撃チップ112の突出物は超硬合金材やセラミック材が用いられる。
【0035】
打撃チップ112の突出物の形状は球(球、楕円球包含)、三角・四角・六角・八角などの多様な形状で形成されることができて、これにより加工物の表面に形成されるディンプルの形状が変わる。
【0036】
一方、ベアリング表面を超音波ナノ改質器100を利用して一定な力で打撃するためには打撃チップ112を一定な圧力でベアリング表面に接触させなければならない。これのために超音波ナノ改質器100の本体後部分には加圧部(図示せず)が具備される。
【0037】
加圧部はスプリングなどの弾性力を利用した加圧方式、油圧・空気圧などを利用した加圧方式等多様な方式で具備されることができる。
【0038】
図5(a)は、本発明の一実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面であって、図5(b)は本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面である。
【0039】
図5(a)及び図5(b)を参照すると、本発明による超音波をナノ改質器を利用したベアリング加工装置500のチャック300にはベアリング400を密着させることができるマグネット部(Magnet、310)が具備されており、前記マグネット部310にはベアリング400の外径及び内径に対応するジグ(Jig)320、330、350が一つ以上具備されることができる。
【0040】
ベアリング400加工時高い精密度と優秀な品質を得るためには被加工物であるベアリング400の振動を最大限抑制する必要がある。しかし一般的なチャックを用いる場合にはベアリングを堅く固定することはできるがベアリング400外部の特定部位に高い荷重を加えるようになるので、ベアリング400外部の特定部位に損傷を与えたり塑性変形を加えるようになる問題点が生じる。したがってベアリング加工装置500を利用してベアリング400を加工する時には専用ジグ(Jig)320、330、350を具備して、ベアリング400がチャック300に固く密着するようにして、ベアリング400が振動することを抑制する。ジグ320、330、350の形状はベアリングの種類と大きさ、形状などによって多様に選択できるが、例えば転がり軸受の外輪、内輪、ボールまたはローラの表面を效率的に加工するための専用のジグを用いることができる。また、専用ジグを利用する場合ジャーナル軸受など多様な種類のベアリング加工が可能である。
【0041】
チャックは電磁石(electromagnet)、油圧、空気圧または手動式(Manual)等多様な固定手段が用いられることができる。
【0042】
図6(a)は、本発明の1実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの内部曲面を加工する状態を示している図面であって、図6(b)は本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの外部曲面を加工する状態を示している図面であって、図6(c)は本発明による超音波ナノ改質器の打撃位置を示している図面である。
【0043】
図6(a)及び図6(b)を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500はX軸移送系200及びY軸移送系220を制御してベアリング400の平面を加工することができるだけでなく、C軸駆動系240すなわち、超音波ナノ改質器100が具備された工具台の回転を同時に制御することによってベアリング400の曲面部分410を加工することに特に有利である。
【0044】
超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500を利用してベアリング400の曲面部分410を加工する場合に、C軸駆動系240は超音波ナノ改質器100の打撃チップ112が常にベアリングの曲面部分410の法線と一致するように制御されなければならない。
【0045】
また、図6(c)を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器100の打撃チップ112は常にベアリング400の同心軸の中心と一直線上に置かれるように設置したりベアリングの放射線軸と打撃チップ112が可能な限り一直線上にあるように設置することが必要である。なぜなら、超音波ナノ改質器100の打撃チップ112がベアリング400同心軸の中心と一直線上に置かれなかったりベアリング400の放射線軸と一直線上に位置しなかったりして加工面と打撃チップ112が垂直にならないと、ベアリング400表面上にマイクロディンプルの形状が一定に維持できないだけでなくベアリング400表面に不要な塑性変形が加わるからである。
【0046】
このように打撃チップ112がベアリング400同心軸の中心と一直線上に置かれたりベアリング400の放射線軸と一直線上に置かれて、曲面部分410を垂直方向で打撃する場合にマイクロディンプルの形状、大きさ及び方向性を一定に維持することができて不要な塑性変形またはチッピングを防止できるため、超音波ナノ改質器100が固定されて斜め方向から打撃する場合または同心軸の中心より低かったり高い位置から打撃する場合に比べてベアリングの硬度及び表面粗さがさらに改善する効果がある。
【0047】
図7は、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の作業工程を示す順序図である。
【0048】
図7を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500を利用してベアリング400の加工のためには先に工具経路を生成する(S100)。工具経路はベアリング400の形状によってX軸、Y軸及びC軸を同時にまたは個別的に制御することによって超音波ナノ改質器100の移動経路を生成することを言う。
【0049】
工具経路を生成する場合に、超音波ナノ改質器100の打撃チップ112は常にベアリング400の接触面の法線と一致するようにC軸駆動系240の経路を設定しなげればならない。
【0050】
工具経路生成が完了すると、ベアリング加工に必要な加工パラメーターを選定する(S200)。加工パラメーターはベアリング400の特性によって適切な強度と適切な大きさ及び形状のマイクロディンプルを得るための条件を設定することであって、加圧部によって超音波ナノ改質器100に加わる圧力、打撃チップ112に供給される周波数と振幅、ベアリング加工時超音波ナノ改質器100の打撃チップ112の大きさ、加工速度、移送速度、打撃チップの大きさと形状などを選定することを言う。
【0051】
超音波ナノ改質器100によってベアリング400を加工する時にベアリング400に加わる全体力(Total contact load)は加圧部から加わる定圧力(Staticload)と打撃チップ112がベアリング400表面を打撃する打撃強度(Dynamic load)によって決定されて、単位面積当たりマイクロディンプルの個数(Contact count per unit area)はベアリング400の回転速度、打撃チップ112に供給される周波数(kHz)、移送速度(mm/rev)及び加工速度(m/min)によって決定される。ここで移送速度は加工物が1回転する間超音波ナノ改質器100が移送する距離を言って、加工速度は打撃点における線速度を言う。それぞれの加工条件がベアリングの表面性質に及ぼす影響に関しては以後に説明する。
【0052】
加工パラメーター選定(S200)が終われば、前記工具経路及びパラメーターを利用して実際加工に必要なプログラムを生成する(S300)。
【0053】
プログラム生成が完了すると、超音波ナノ改質器100を加工条件に合うようにセッティング(setting)する(S400)。セッティング段階ではマイクロディンプルの大きさと形状及び深さによって超音波ナノ改質器100の定圧力、打撃チップの材質、形状、大きさ及び周波数を設定する(S400)。
【0054】
加工プログラム入力が完了して超音波ナノ改質器のセッティングが完了すると、加工しようとするベアリングの大きさと形状によって専用ジグ(Jig)を設置して工作物をセッティングして(S500)、加工を開始する(S600)。
【0055】
超音波ナノ改質器500を利用して加工されたベアリング400の性質はそれぞれの加工パラメーター条件によって変わるので、ベアリングの用途と利用環境及びそれぞれの利用環境で頻繁に発生する故障原因などを把握しなければならない。表1はベアリングの破損内容、破損原因及び破損を防止するための解決方案を示している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に現われた通りピッチング(Pitting)及びスポーリング(Spalling)は高荷重または振動荷重によって主に発生して、これを防止するためにはベアリングに圧縮残留応力を印加して表面硬度を増加させなければならなくて、表面摩耗(Wear)、フレーキング(Flaking)またはフレッチング(Fretting)は不適切な潤滑油または振動荷重によって主に発生して、これを防止するためにはベアリングの硬度を向上させて摩擦係数を低減させるべきで、インデンテーション(Indentation)または圧痕(Brinnelling)は高荷重、振動荷重または衝撃荷重によって主に発生して、これを防止するためにはベアリングの硬度を向上させながら圧縮残留応力を付加しなげればならない。
【0058】
図8は、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度が硬度に及ぼす影響を示すグラフであって、図9は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と移送速度が表面粗さに及ぼす影響を示すグラフであって、図10は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度及び移送速度が圧縮残留応力に及ぼす影響を示すグラフであって、図11は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度がナノ化深さに及ぼす影響を示すグラフであって、図12は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力、打撃強度及び移送速度が単位面積当たりディンプル個数とディンプルの深さに及ぼす影響を示すグラフである。
【0059】
図8を参照すると、ベアリング400加工時定圧力(Static load)と打撃強度(Dynamic load)を高めるとナノ化の深さが深くなって、ベアリング400の硬度が増加するようになる。しかし定圧力と打撃強度によって硬度が増加することは一定な限界があり、定圧力が過度に高くなればベアリング400の表面粗さが悪くなる問題点が生じるのでベアリング400の材質と打撃チップ112の形状等を考慮してそれぞれのベアリング400に適切な定圧力と打撃強度を設定する必要がある。
【0060】
超音波ナノ改質器の定圧力と打撃強度を高めてベアリング400の表面硬度を増加させれば、ベアリング400の表面摩耗(Wear)現象を減らして、ベアリング400が高速で回転したり高い荷重を受ける時表面が剥けたり離れて行く現象または表面に塑性変形が発生する現象などを防止できる。
【0061】
図9を参照すると、ベアリング400の表面粗さは定圧力に反比例して移送速度に比例する。但し、定圧力が一定圧力以上になればベアリング400の表面に定圧力による塑性変形が発生するのでむしろ表面粗さが悪くなる現象が現われる。この場合定圧力によるベアリング400の表面粗さはベアリング400の材質と打撃形状によって差が生じるので適切な圧力を実験を介して設定する必要がある。移送速度による表面粗さは移送速度が遅いほど単位面積当たり打撃回数が増加するため表面粗さが良くなる。
【0062】
ベアリング400の表面粗さが良くなれば、ベアリング400の摩擦係数が減少するので摩耗現象を防止するのに助けになる。
【0063】
図10を参照すると、ベアリング400表面の圧縮残留応力は定圧力及び打撃強度に比例して移送速度に反比例して、図11を参照すると、ベアリング400表面のナノ化深さは定圧力と打撃強度に比例する。
【0064】
ベアリング400の圧縮残留応力及び表面層ナノ化の深さが増加すると、ベアリングがすべり(Sliding)または回転(Rolling)時接触疲労強度(ContactFatigue Strength)が向上して、曲げ、ねじり、引張/圧縮の単独や複合状態で発生する疲労寿命を向上させることができる。
【0065】
図12を参照すると、ベアリング表面の単位面積当たりディンプルの個数は一般的に定圧力と打撃強度の変化に影響を受けない。但し、定圧力が一定値を超える場合には打撃チップの圧力による塑性変形で正常的なディンプルが形成されるに難しくて、打撃強度が一定値に達しない場合には加工物の表面にディンプルを形成するに難しいので正常的なディンプルが形成されない。単位面積当たりディンプルの個数は加工速度が増加するほど減る。
【0066】
ディンプルの深さは打撃強度が増加すると共に増加して、接触点の大きさが大きくなれば減少する関係を示す。
【0067】
本発明でそれぞれの加工パラメーターの変換範囲は定圧力の場合0.1kgf〜10kgf、打撃強度は1kgf〜100kgf、加工速度は0.1〜100m/min、移送速度0.01〜1mm/revの範囲で決定されて、打撃チップは曲面の直径大きさは0.1〜6mmの球型または三角、四角、六角などの多角形が利用されることができる。
【0068】
以上のように本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置は、X軸、Y軸及びC軸を同時にまたはそれぞれ制御することによってベアリング加工装置の移動経路を生成して、ベアリングに加わる定圧力、打撃圧力及び移送速度などを調節して希望する強度と表面粗さを有するベアリングを加工することができる。
【0069】
また、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングを加工する場合に、ベアリングの表面に熱変形やチッピング(chipping)現象または不要な塑性変形を発生させないながらマイクロディンプルの大きさと単位面積当たり個数及び形状を精密に生成させることができるので、ベアリングの硬度と表面粗さを向上させることができ、希望する圧縮残留応力を付加して、マイクロディンプルによるオイルポケット(Oil Pockets)を生成させて摩耗率低減を具現すると同時に発熱量低減、接触疲労強度向上などでベアリングの寿命を増加させることができる利点がある。
【符号の説明】
【0070】
100:超音波ナノ改質器
200:X軸移送系
220:Y軸移送系
240:C軸駆動系
210:X軸テーブル
215:Y軸テーブル
260:工作物回転軸
300:チャック
310:マグネット部
320、330、350:ジグ
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法に関するものであって、さらに詳細には超音波を利用したナノ改質器を利用してベアリング加工時ベアリング表面に加える打撃速度、打撃進行速度及び打撃角度などを精密に制御することによって、ベアリング表面にマイクロディンプルまたはオイルポケット(Oil Pockets)を生成させて、表層部の組織をナノ結晶質に改質させると同時に圧縮残留応力を付加して硬度を向上させることによって、スライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時にベアリングに発生する摩擦係数と摩耗率を減らして、接触疲労強度(Rolling Contact Fatigue Strength)を向上させて、曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベアリングとは回転している機械の軸を一定な位置に固定して軸の自重と軸に掛かる荷重を支持しながら軸を回転させる役割をする機械要素を言う。このようにベアリングは高い荷重と高速回転によって相当な摩擦力と曲げ、ねじり、引張または圧縮力を受けるため高い精密度と強度が要求される機械要素である。したがってベアリングの寿命を増加させて、摩擦損失を減らすために多様な特殊加工法が開発されている。
【0003】
ベアリングの硬度向上を介する摩耗率低減または相対摩擦係数低減のための特殊加工法としてPVD(Physical Vapor Deposition、物理的蒸気蒸着法)またはCVD(ChemicalVapor Deposition、化学的蒸気蒸着法)を利用したコーティングやイオン注入法(ionimplanting)等がある。しかしこのような表面硬化処理方法は複雑な形状に均等な表面処理が難しくて、ベアリングが転がり運動をする場合に剥離現象が発生する問題点がある。
【0004】
次に、ベアリングの表面に圧縮残留応力を付加して機械加工の方向性を除去して、疲労寿命を向上させるための方法で、ショットピーニング(Shot Peening)、レーザショットピーニング(LaserShot Peening)、ディープローリング(Deep Rolling)、超音波ショットピーニング(UltrasonicShot peening)、ウォータージェットピーニング(Water Jet Peening)等がある。
【0005】
図1は、従来技術による超音波を利用した表面改質方法を示す図面であって、図2は従来技術によるショットピーニングを利用した表面改質方法を示す図面である。
【0006】
図1及び図2を参照すると、従来技術による超音波を利用した加工原理とショットピーニングを利用した加工原理は二種類全部複数の微細な研磨粒子(abrasive particles、13)またはショットボール(shotball、23)を加工物14に衝突させて相対的に突出した部位に局部的な塑性変形を引き起こすことによって滑らかな表面粗さ(surface roughness)を得ることができる。
【0007】
それぞれの加工原理をさらに詳細に説明すると、まず超音波を利用した加工方法は電源供給を受けるジェネレータ(Generator、18)が一般電源を高周波の電気的エネルギーに変換してピエゾセラミック17に伝達すれば、ピエゾセラミック17はこれを機械的エネルギーに変換する。ピエゾセラミック17により変換された機械的エネルギーはブースター16によって増幅されて、増幅された機械的エネルギーはブースター16の終端に連結された工具15を超音波振動(ultrasonic vibration)させて容器10に含まれたラップ剤12を遊動させることによって、ラップ剤12の遊動により無秩序に運動する複数個の微細な研磨粒子13を無作為で容器10の内部に含まれた加工物14の表面を打撃する方法である。
【0008】
一方、ショットピーニングを利用した加工方法は空気圧、遠心力などの力で無数に多くのショットボール23を瞬間的に加工物14の表面に衝突させて加工物14の表面層に圧縮残留応力を付加することを主目的にする表面処理技術で、塑性加工ディンプル(dimples)を形成させる表面処理を遂行し、ショットボール23が噴射される排出口20を加工物14の上段から移動させて連続的な加工領域を得ることができる。
【0009】
上のような従来の加工方法は一定な加工領域内で無作為で複数個の微細なショット23を瞬間的に加工物に衝突させて打撃(Hammering)する方法で加工粒子の運動による亀裂、破壊の進展によるチッピング(chipping)現象を利用する。すなわち、このような従来の加工方法は加工粒子の運動エネルギーを受けて塑性変形の痕跡であるディンプルを加工物の表面に形成させるようになる。
【0010】
ところがこのようなディンプルが形成される従来の加工方法は運動エネルギーを有する無数に多くの粒子を加工物の表面に不規則に衝突させるため平均的な表面粗さの数値を有するように加工するしかないし、大部分の場合加工前より表面粗さが悪くなって、表面層に潤滑油を含むことができるオイルポケットやマイクロディンプルが形成されるが大きさ、密度、配列(pattern)を制御することができない。したがって、加工物の特定部位を区分して制限的に特定数値の表面粗さを有するようにディンプル加工をすることにおいて加工方法上その適用が難しい問題点がある。また、加工物の形状が非常に不規則な場合や加工物の内径などにディンプルを形成させる場合にも従来の加工方法を適用しにくい問題点がある。そして前記加工方法のうちディープローリング(Deep Rolling)による表面加工方法は大きい圧縮残留応力を付加するには有利であるが、ディンプル構造を作ることが不可能であるだけでなく工作物の表面硬度と形状に限界があるという問題点がある。
【0011】
また、従来の加工方法を用いると加工物の表面に加工粒子による打撃ディンプルが無作為で形成されるため高強度を要求する特定部位にだけ圧縮残留応力を発生させるのが難しい。また、ショットボールが加工物を打撃する強度が弱ければ圧縮応力の大きさや深さが小さくてベアリング素材で用いるのに充分な強度を得ることができず、逆にショットボールが加工物を打撃する強度が大きくなれば圧縮応力の大きさや深さにおいて優秀な効果を得ることができるが表面層が熱変形または過度な塑性変形チッピング(chipping)現象によって表面が粗くなるため追加加工が必要な短所がある。
【0012】
したがって、優秀な品質のベアリングを得るためにはベアリングの表面硬度及び圧縮残留応力を増加させて、スライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時発生する摩擦係数を減らして潤滑を円滑にできる表面改質装置及び方法が必要であり、これのためには加工物の表面に打撃を強めながらも加工物の表面に熱変形や表面粗さの悪化を起すことなく生成されるディンプルの大きさ、密度、配列を制御することができる装置及び方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、超音波ナノ改質器の打撃速度、打撃進行速度及び打撃角度などを精密に制御することによって、マイクロディンプルの大きさ、方向性及び単位面積当たりの数量などを制御してスライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時ベアリングに発生する摩擦係数と摩耗率を減らして、曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置及び加工方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置は、工作物の表面に接触して超音波振動によって工作物の表面を打撃する超音波ナノ改質器;と前記超音波ナノ改質器の直線運動を制御する少なくとも1つの移送系と前記超音波ナノ改質器の加工角度を制御する少なくとも1つの駆動系で構成された本体;及び工作物を固定して回転させる手段が具備された少なくとも1つの工作物回転軸;で構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法は、ベアリングの形状によって超音波ナノ改質器の移動経路を生成する段階と;前記ベアリングの用途によって要求される機械的特性を有するベアリングを加工するために加工パラメーターを選定する段階と;前記移動経路及び加工パラメーターによって加工プログラムを作成する段階と;前記超音波ナノ改質器をセッティングする段階;及び前記ベアリングの大きさと形状によって専用ジグを設置する段階と;で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によれば、超音波ナノ改質器の打撃速度、打撃進行速度及び打撃角度などを精密に制御することによって、マイクロディンプルの大きさ、方向性及び単位面積当たりの数量などを自由に制御してスライディング(Sliding)またはローリング(Rolling)時ベアリングに発生する摩擦係数と摩耗率を減らして、圧縮残留応力付加及び表面硬度向上で接触疲労強度(Rolling Contact Fatigue Strength)を向上させて、曲げ、ねじり、引張または圧縮状態で発生する疲労寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術による超音波を利用した表面改質方法を示す図面。
【図2】従来技術によるショットピーニングを利用した表面改質方法を示す図面。
【図3】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の構成を示す図面。
【図4】本発明による超音波ナノ改質器の構成を示す図面。
【図5】図5(a)は本発明の一実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面。図5(b)は、本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面。
【図6】図6(a)は本発明の1実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの内部曲面を加工する状態を示している図面。図6(b)は本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの外部曲面を加工する状態を示している図面。図6(c)は本発明による超音波ナノ改質器の打撃位置を示している図面。
【図7】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の作業工程を示す順序図。
【図8】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度が硬度に及ぼす影響を示すグラフ。
【図9】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と移送速度が表面粗さに及ぼす影響を示すグラフ。
【図10】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度及び移送速度が圧縮残留応力に及ぼす影響を示すグラフ。
【図11】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度がナノ化深さに及ぼす影響を示すグラフ。
【図12】本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力、打撃強度及び移送速度が単位面積当たりディンプル個数とディンプルの深さに及ぼす影響を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。但し、本発明はその要旨を離脱しない限り以下の実施形態に限定されない。
【0019】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置は、超音波振動によって工作物を打撃する超音波ナノ改質器、前記超音波ナノ改質器の直線運動を制御する少なくとも1つの移送系、前記超音波ナノ改質器の加工角度を制御する少なくとも1つの駆動系及び工作物を固定して回転させる少なくとも1つの工作物回転軸を含んで構成されている。
【0020】
本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の具体的な形態は工作物の形状や大きさまたは設置場所などによって多様な形状で具現されることができる。以下ではベアリングの内輪及び外輪を加工するために工作物回転軸水平面と超音波ナノ改質器の打撃チップ中心が同様な位置に置かれて、二個の移送系と1個の駆動系及び1個の工作物回転軸を備えたベアリング加工装置の実施形態に対して詳細に説明する。
【0021】
図3は、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の構成を示す図面である。
【0022】
図3を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500は工作物の表面に接触して超音波振動により工作物を打撃する超音波ナノ改質器100;前記超音波ナノ改質器100の下部に設置されて工作物回転軸260に対して水平方向に左右運動をするX軸移送系200、X軸移送系200と直交方向に設置されていて超音波ナノ改質器100が工作物回転軸260に対して水平方向に前後運動をすることができるようにするY軸移送系220及び超音波ナノ改質器100が結合されて超音波ナノ改質器100を回転断続または連続させて加工角度を制御するC軸駆動系240で構成される本体250;及び工作物すなわち、ベアリングを固定して回転させるチャック(Chuck、300)が具備されている工作物回転軸260;で構成されている。
【0023】
超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500の本体250部分に具備されているX軸移送系200及びY軸移送系220は案内面上にX軸テーブル210及びY軸テーブル215が置かれていて、前記X軸テーブル210及びY軸テーブル215はそれぞれ移送スクリュー(Feed screw、225)及びサーボモーター(servomotor、230)によって速度と位置が精密に制御されながら案内面上で往復直線運動をする。
【0024】
C軸駆動系240は超音波ナノ改質器100がボルト等のような締結機構(図示せず)によって結合される工具台で、駆動モーター(図示せず)によって左右回転、断続または連続制御されるように構成されている。
【0025】
以上のような超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500は通常のCNC(computer numerical control)方式により駆動・断続されることであって、X軸移送系200とY軸移送系220は超音波ナノ改質器100を左右方向と前後方向へ移送制御し、C軸駆動系240は超音波ナノ改質器100の打撃角度を断続または連続制御してベアリングを精密に加工することができて、特にベアリングの曲面部分を精密に加工することに有利である。
【0026】
サーボモーターによる位置制御装置及び方法は公知の技術であるのでこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0027】
図4は、本発明による超音波を利用したナノ改質器の構成を示す図面である。
【0028】
図4を参照すると、超音波ナノ改質器100はベアリング表面に衝撃を加える打撃チップ112、打撃チップ112が固定されて超音波振動を増幅伝達するホーン(horn、114)、超音波振動を増幅させるブースター(Booster、116)、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換させる振動発生部(Transducer、118)及び高周波の電気的エネルギーを超音波ナノ改質器100に供給してくれるジェネレータ(Generator、120)で構成される。
【0029】
ジェネレータ120は一般電源を高周波数の電気的エネルギーに変調して振動発生部118に供給する。
【0030】
振動発生部118は電気的信号によって体積が変わる特性を有した素子で、ジェネレータ120から高周波数の電気的エネルギーを供給を受ければ膨脹と収縮を反復しながら電気的エネルギーを機械的エネルギーに変える。
【0031】
ブースター116は振動発生部118によって発生した振動を増幅して、ブースター116と連結されているホーン114を介して打撃チップ112に伝達する。
【0032】
ホーン114はブースター116によって増幅された振動エネルギーを打撃チップ112にも一度増幅伝達したり単純伝達する役割をする。増幅比はホーンの形状を介して決定される。
【0033】
打撃チップ112は加工物の表面に直接接触して打撃しながら強塑性加工とマイクロディンプルを形成させるが、ホーン114に連結されていて、金属鋼球または多様な形状の突出物が露出された状態で固定されている。
【0034】
打撃チップ112の突出物は超硬合金材やセラミック材が用いられる。
【0035】
打撃チップ112の突出物の形状は球(球、楕円球包含)、三角・四角・六角・八角などの多様な形状で形成されることができて、これにより加工物の表面に形成されるディンプルの形状が変わる。
【0036】
一方、ベアリング表面を超音波ナノ改質器100を利用して一定な力で打撃するためには打撃チップ112を一定な圧力でベアリング表面に接触させなければならない。これのために超音波ナノ改質器100の本体後部分には加圧部(図示せず)が具備される。
【0037】
加圧部はスプリングなどの弾性力を利用した加圧方式、油圧・空気圧などを利用した加圧方式等多様な方式で具備されることができる。
【0038】
図5(a)は、本発明の一実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面であって、図5(b)は本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置のチャックにベアリングが装着された状態を示している図面である。
【0039】
図5(a)及び図5(b)を参照すると、本発明による超音波をナノ改質器を利用したベアリング加工装置500のチャック300にはベアリング400を密着させることができるマグネット部(Magnet、310)が具備されており、前記マグネット部310にはベアリング400の外径及び内径に対応するジグ(Jig)320、330、350が一つ以上具備されることができる。
【0040】
ベアリング400加工時高い精密度と優秀な品質を得るためには被加工物であるベアリング400の振動を最大限抑制する必要がある。しかし一般的なチャックを用いる場合にはベアリングを堅く固定することはできるがベアリング400外部の特定部位に高い荷重を加えるようになるので、ベアリング400外部の特定部位に損傷を与えたり塑性変形を加えるようになる問題点が生じる。したがってベアリング加工装置500を利用してベアリング400を加工する時には専用ジグ(Jig)320、330、350を具備して、ベアリング400がチャック300に固く密着するようにして、ベアリング400が振動することを抑制する。ジグ320、330、350の形状はベアリングの種類と大きさ、形状などによって多様に選択できるが、例えば転がり軸受の外輪、内輪、ボールまたはローラの表面を效率的に加工するための専用のジグを用いることができる。また、専用ジグを利用する場合ジャーナル軸受など多様な種類のベアリング加工が可能である。
【0041】
チャックは電磁石(electromagnet)、油圧、空気圧または手動式(Manual)等多様な固定手段が用いられることができる。
【0042】
図6(a)は、本発明の1実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの内部曲面を加工する状態を示している図面であって、図6(b)は本発明のもう一つの実施形態による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングの外部曲面を加工する状態を示している図面であって、図6(c)は本発明による超音波ナノ改質器の打撃位置を示している図面である。
【0043】
図6(a)及び図6(b)を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500はX軸移送系200及びY軸移送系220を制御してベアリング400の平面を加工することができるだけでなく、C軸駆動系240すなわち、超音波ナノ改質器100が具備された工具台の回転を同時に制御することによってベアリング400の曲面部分410を加工することに特に有利である。
【0044】
超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500を利用してベアリング400の曲面部分410を加工する場合に、C軸駆動系240は超音波ナノ改質器100の打撃チップ112が常にベアリングの曲面部分410の法線と一致するように制御されなければならない。
【0045】
また、図6(c)を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器100の打撃チップ112は常にベアリング400の同心軸の中心と一直線上に置かれるように設置したりベアリングの放射線軸と打撃チップ112が可能な限り一直線上にあるように設置することが必要である。なぜなら、超音波ナノ改質器100の打撃チップ112がベアリング400同心軸の中心と一直線上に置かれなかったりベアリング400の放射線軸と一直線上に位置しなかったりして加工面と打撃チップ112が垂直にならないと、ベアリング400表面上にマイクロディンプルの形状が一定に維持できないだけでなくベアリング400表面に不要な塑性変形が加わるからである。
【0046】
このように打撃チップ112がベアリング400同心軸の中心と一直線上に置かれたりベアリング400の放射線軸と一直線上に置かれて、曲面部分410を垂直方向で打撃する場合にマイクロディンプルの形状、大きさ及び方向性を一定に維持することができて不要な塑性変形またはチッピングを防止できるため、超音波ナノ改質器100が固定されて斜め方向から打撃する場合または同心軸の中心より低かったり高い位置から打撃する場合に比べてベアリングの硬度及び表面粗さがさらに改善する効果がある。
【0047】
図7は、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置の作業工程を示す順序図である。
【0048】
図7を参照すると、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置500を利用してベアリング400の加工のためには先に工具経路を生成する(S100)。工具経路はベアリング400の形状によってX軸、Y軸及びC軸を同時にまたは個別的に制御することによって超音波ナノ改質器100の移動経路を生成することを言う。
【0049】
工具経路を生成する場合に、超音波ナノ改質器100の打撃チップ112は常にベアリング400の接触面の法線と一致するようにC軸駆動系240の経路を設定しなげればならない。
【0050】
工具経路生成が完了すると、ベアリング加工に必要な加工パラメーターを選定する(S200)。加工パラメーターはベアリング400の特性によって適切な強度と適切な大きさ及び形状のマイクロディンプルを得るための条件を設定することであって、加圧部によって超音波ナノ改質器100に加わる圧力、打撃チップ112に供給される周波数と振幅、ベアリング加工時超音波ナノ改質器100の打撃チップ112の大きさ、加工速度、移送速度、打撃チップの大きさと形状などを選定することを言う。
【0051】
超音波ナノ改質器100によってベアリング400を加工する時にベアリング400に加わる全体力(Total contact load)は加圧部から加わる定圧力(Staticload)と打撃チップ112がベアリング400表面を打撃する打撃強度(Dynamic load)によって決定されて、単位面積当たりマイクロディンプルの個数(Contact count per unit area)はベアリング400の回転速度、打撃チップ112に供給される周波数(kHz)、移送速度(mm/rev)及び加工速度(m/min)によって決定される。ここで移送速度は加工物が1回転する間超音波ナノ改質器100が移送する距離を言って、加工速度は打撃点における線速度を言う。それぞれの加工条件がベアリングの表面性質に及ぼす影響に関しては以後に説明する。
【0052】
加工パラメーター選定(S200)が終われば、前記工具経路及びパラメーターを利用して実際加工に必要なプログラムを生成する(S300)。
【0053】
プログラム生成が完了すると、超音波ナノ改質器100を加工条件に合うようにセッティング(setting)する(S400)。セッティング段階ではマイクロディンプルの大きさと形状及び深さによって超音波ナノ改質器100の定圧力、打撃チップの材質、形状、大きさ及び周波数を設定する(S400)。
【0054】
加工プログラム入力が完了して超音波ナノ改質器のセッティングが完了すると、加工しようとするベアリングの大きさと形状によって専用ジグ(Jig)を設置して工作物をセッティングして(S500)、加工を開始する(S600)。
【0055】
超音波ナノ改質器500を利用して加工されたベアリング400の性質はそれぞれの加工パラメーター条件によって変わるので、ベアリングの用途と利用環境及びそれぞれの利用環境で頻繁に発生する故障原因などを把握しなければならない。表1はベアリングの破損内容、破損原因及び破損を防止するための解決方案を示している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に現われた通りピッチング(Pitting)及びスポーリング(Spalling)は高荷重または振動荷重によって主に発生して、これを防止するためにはベアリングに圧縮残留応力を印加して表面硬度を増加させなければならなくて、表面摩耗(Wear)、フレーキング(Flaking)またはフレッチング(Fretting)は不適切な潤滑油または振動荷重によって主に発生して、これを防止するためにはベアリングの硬度を向上させて摩擦係数を低減させるべきで、インデンテーション(Indentation)または圧痕(Brinnelling)は高荷重、振動荷重または衝撃荷重によって主に発生して、これを防止するためにはベアリングの硬度を向上させながら圧縮残留応力を付加しなげればならない。
【0058】
図8は、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度が硬度に及ぼす影響を示すグラフであって、図9は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と移送速度が表面粗さに及ぼす影響を示すグラフであって、図10は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度及び移送速度が圧縮残留応力に及ぼす影響を示すグラフであって、図11は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力と打撃強度がナノ化深さに及ぼす影響を示すグラフであって、図12は本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工において定圧力、打撃強度及び移送速度が単位面積当たりディンプル個数とディンプルの深さに及ぼす影響を示すグラフである。
【0059】
図8を参照すると、ベアリング400加工時定圧力(Static load)と打撃強度(Dynamic load)を高めるとナノ化の深さが深くなって、ベアリング400の硬度が増加するようになる。しかし定圧力と打撃強度によって硬度が増加することは一定な限界があり、定圧力が過度に高くなればベアリング400の表面粗さが悪くなる問題点が生じるのでベアリング400の材質と打撃チップ112の形状等を考慮してそれぞれのベアリング400に適切な定圧力と打撃強度を設定する必要がある。
【0060】
超音波ナノ改質器の定圧力と打撃強度を高めてベアリング400の表面硬度を増加させれば、ベアリング400の表面摩耗(Wear)現象を減らして、ベアリング400が高速で回転したり高い荷重を受ける時表面が剥けたり離れて行く現象または表面に塑性変形が発生する現象などを防止できる。
【0061】
図9を参照すると、ベアリング400の表面粗さは定圧力に反比例して移送速度に比例する。但し、定圧力が一定圧力以上になればベアリング400の表面に定圧力による塑性変形が発生するのでむしろ表面粗さが悪くなる現象が現われる。この場合定圧力によるベアリング400の表面粗さはベアリング400の材質と打撃形状によって差が生じるので適切な圧力を実験を介して設定する必要がある。移送速度による表面粗さは移送速度が遅いほど単位面積当たり打撃回数が増加するため表面粗さが良くなる。
【0062】
ベアリング400の表面粗さが良くなれば、ベアリング400の摩擦係数が減少するので摩耗現象を防止するのに助けになる。
【0063】
図10を参照すると、ベアリング400表面の圧縮残留応力は定圧力及び打撃強度に比例して移送速度に反比例して、図11を参照すると、ベアリング400表面のナノ化深さは定圧力と打撃強度に比例する。
【0064】
ベアリング400の圧縮残留応力及び表面層ナノ化の深さが増加すると、ベアリングがすべり(Sliding)または回転(Rolling)時接触疲労強度(ContactFatigue Strength)が向上して、曲げ、ねじり、引張/圧縮の単独や複合状態で発生する疲労寿命を向上させることができる。
【0065】
図12を参照すると、ベアリング表面の単位面積当たりディンプルの個数は一般的に定圧力と打撃強度の変化に影響を受けない。但し、定圧力が一定値を超える場合には打撃チップの圧力による塑性変形で正常的なディンプルが形成されるに難しくて、打撃強度が一定値に達しない場合には加工物の表面にディンプルを形成するに難しいので正常的なディンプルが形成されない。単位面積当たりディンプルの個数は加工速度が増加するほど減る。
【0066】
ディンプルの深さは打撃強度が増加すると共に増加して、接触点の大きさが大きくなれば減少する関係を示す。
【0067】
本発明でそれぞれの加工パラメーターの変換範囲は定圧力の場合0.1kgf〜10kgf、打撃強度は1kgf〜100kgf、加工速度は0.1〜100m/min、移送速度0.01〜1mm/revの範囲で決定されて、打撃チップは曲面の直径大きさは0.1〜6mmの球型または三角、四角、六角などの多角形が利用されることができる。
【0068】
以上のように本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置は、X軸、Y軸及びC軸を同時にまたはそれぞれ制御することによってベアリング加工装置の移動経路を生成して、ベアリングに加わる定圧力、打撃圧力及び移送速度などを調節して希望する強度と表面粗さを有するベアリングを加工することができる。
【0069】
また、本発明による超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置によってベアリングを加工する場合に、ベアリングの表面に熱変形やチッピング(chipping)現象または不要な塑性変形を発生させないながらマイクロディンプルの大きさと単位面積当たり個数及び形状を精密に生成させることができるので、ベアリングの硬度と表面粗さを向上させることができ、希望する圧縮残留応力を付加して、マイクロディンプルによるオイルポケット(Oil Pockets)を生成させて摩耗率低減を具現すると同時に発熱量低減、接触疲労強度向上などでベアリングの寿命を増加させることができる利点がある。
【符号の説明】
【0070】
100:超音波ナノ改質器
200:X軸移送系
220:Y軸移送系
240:C軸駆動系
210:X軸テーブル
215:Y軸テーブル
260:工作物回転軸
300:チャック
310:マグネット部
320、330、350:ジグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物の表面に接触して超音波振動によって工作物の表面を打撃する超音波ナノ改質器;と
前記超音波ナノ改質器の直線運動を制御する少なくとも1つの移送系と前記超音波ナノ改質器の加工角度を制御する少なくとも1つの駆動系で構成された本体;及び
工作物を固定して回転させる手段が具備された少なくとも1つの工作物回転軸;
を含んで構成されることを特徴とする超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項2】
前記駆動系は超音波ナノ改質器の加工角度を調節することができる回転軸と前記回転軸の角度を制御することができる駆動モーターで構成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項3】
前記工作物回転軸には一般的な旋盤チャックまたはマグネットを用いることができ、前記チャックまたはマグネット部にはベアリングの構成品を固定させるジグを具備してベアリング加工時ベアリングの振動を抑制することができることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項4】
前記超音波ナノ改質器の打撃チップの形状は球または多角形で具備されることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項5】
前記駆動系は、超音波ナノ改質器を利用してベアリングを加工する場合に、超音波ナノ改質器の打撃チップがベアリングの接触面の法線と一致するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項6】
前記ジグは転がり軸受の外輪、内輪、ボールまたはローラをそれぞれ支持する専用ジグであることを特徴とする請求項3に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項7】
前記ジグはジャーナル軸受を加工するための専用ジグであることを特徴とする請求項3に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項8】
超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法において、
ベアリングの形状によって超音波ナノ改質器の移動経路を生成する段階と;
前記ベアリングの用途によって要求される機械的特性を有するベアリングを加工するために加工パラメーターを選定する段階と;
前記移動経路及び加工パラメーターによって加工プログラムを作成する段階と;
前記超音波ナノ改質器をセッティングする段階;及び
前記ベアリングの大きさと形状によって専用ジグを設置する段階と;
を含むことを特徴とする超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項9】
前記移動経路生成は超音波ナノ改質器の打撃チップがベアリングの接触面の法線と一致するようにすることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項10】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングの硬度を調節するためのパラメーターは定圧力及び打撃強度の中いずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項11】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングの表面粗さ及びマイクロディンプルの構造を調節するためのパラメーターは定圧力、打撃強度、移送速度、打撃チップ突出物の曲面の大きさ及び形状のうちいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項12】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングの圧縮残留応力を調節するためのパラメーターは定圧力、打撃強度及び移送速度の中いずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項13】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングのナノ化深さを調節するためのパラメーターは定圧力及び打撃強度の中いずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項14】
前記加工パラメーターの変換範囲は定圧力は1Kgf〜10Kgf、打撃強度は5Kgf〜100Kgf、移送速度は0.03〜0.15mm/rev、加工速度は6〜32m/min、打撃チップ突出物の曲面の直径大きさは0.1〜6mmの球型または多角形であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項1】
工作物の表面に接触して超音波振動によって工作物の表面を打撃する超音波ナノ改質器;と
前記超音波ナノ改質器の直線運動を制御する少なくとも1つの移送系と前記超音波ナノ改質器の加工角度を制御する少なくとも1つの駆動系で構成された本体;及び
工作物を固定して回転させる手段が具備された少なくとも1つの工作物回転軸;
を含んで構成されることを特徴とする超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項2】
前記駆動系は超音波ナノ改質器の加工角度を調節することができる回転軸と前記回転軸の角度を制御することができる駆動モーターで構成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項3】
前記工作物回転軸には一般的な旋盤チャックまたはマグネットを用いることができ、前記チャックまたはマグネット部にはベアリングの構成品を固定させるジグを具備してベアリング加工時ベアリングの振動を抑制することができることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項4】
前記超音波ナノ改質器の打撃チップの形状は球または多角形で具備されることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項5】
前記駆動系は、超音波ナノ改質器を利用してベアリングを加工する場合に、超音波ナノ改質器の打撃チップがベアリングの接触面の法線と一致するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項6】
前記ジグは転がり軸受の外輪、内輪、ボールまたはローラをそれぞれ支持する専用ジグであることを特徴とする請求項3に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項7】
前記ジグはジャーナル軸受を加工するための専用ジグであることを特徴とする請求項3に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工装置。
【請求項8】
超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法において、
ベアリングの形状によって超音波ナノ改質器の移動経路を生成する段階と;
前記ベアリングの用途によって要求される機械的特性を有するベアリングを加工するために加工パラメーターを選定する段階と;
前記移動経路及び加工パラメーターによって加工プログラムを作成する段階と;
前記超音波ナノ改質器をセッティングする段階;及び
前記ベアリングの大きさと形状によって専用ジグを設置する段階と;
を含むことを特徴とする超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項9】
前記移動経路生成は超音波ナノ改質器の打撃チップがベアリングの接触面の法線と一致するようにすることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項10】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングの硬度を調節するためのパラメーターは定圧力及び打撃強度の中いずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項11】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングの表面粗さ及びマイクロディンプルの構造を調節するためのパラメーターは定圧力、打撃強度、移送速度、打撃チップ突出物の曲面の大きさ及び形状のうちいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項12】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングの圧縮残留応力を調節するためのパラメーターは定圧力、打撃強度及び移送速度の中いずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項13】
前記加工パラメーターを選定する段階において、
ベアリングのナノ化深さを調節するためのパラメーターは定圧力及び打撃強度の中いずれか一つ以上であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【請求項14】
前記加工パラメーターの変換範囲は定圧力は1Kgf〜10Kgf、打撃強度は5Kgf〜100Kgf、移送速度は0.03〜0.15mm/rev、加工速度は6〜32m/min、打撃チップ突出物の曲面の直径大きさは0.1〜6mmの球型または多角形であることを特徴とする請求項8に記載の超音波ナノ改質器を利用したベアリング加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−520042(P2011−520042A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509392(P2011−509392)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003006
【国際公開番号】WO2009/139516
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(502075973)デザインメカ・カンパニー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003006
【国際公開番号】WO2009/139516
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(502075973)デザインメカ・カンパニー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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