説明

超音波プローブおよび超音波診断装置、並びに超音波トランスデューサ

【課題】ケーブル伝送による検出信号の電圧降下をなくし、超音波トランスデューサの送受信感度をさらに向上させる。
【解決手段】超音波トランスデューサ(UT)27は、第1圧電体35と、第2圧電体36と、第1〜第4電極37〜40とを備える。各電極37〜40には第1〜第5スイッチ(SWa〜SWe)41〜45が接続され、超音波の送信時は第1、第2圧電体35、36を並列接続し、反射波の受信時は直列接続する。受信アンプ47は、反射波を受信して第1、第2圧電体35、36から出力される検出信号を増幅する。受信アンプ47は、第2電極38と電気容量性の伝送線路を介さずに直接接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブおよび超音波診断装置、並びに超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブを利用した医療診断が盛んに行われている。超音波プローブの先端には、超音波トランスデューサ(以下、UTと略す)が配されている。UTは、バッキング材、圧電体およびこれを挟む電極、音響整合層、および音響レンズから構成される。UTから被検体(人体)に超音波を照射し、被検体からの反射波をUTで受信する。これにより出力される検出信号を超音波観測器で電気的に処理することによって、超音波画像が得られる。
【0003】
また、超音波を走査しながら照射することにより、超音波断層画像を得ることも可能である。超音波断層画像を得る方法としては、UTを機械的に回転あるいは揺動、もしくはスライドさせるメカニカルスキャン走査方式や、複数のUTをアレイ状に配列(以下、UTアレイという)し、駆動するUTを電子スイッチ等で選択的に切り替える電子スキャン走査方式が知られている。
【0004】
被検体のより深部を高精細な画像で観察したいという要求が高まっている。この要求に応えるためには、UTの送受信感度を高めることが必要である。従来、UTの送受信感度を高めるための対策として、UTの部材の材料選定、最適化が行われてきた。例えば1−3複合圧電体や単結晶圧電体(PMN−PT、PZN−PT等)、積層圧電体を用いたり、音響整合層、音響レンズの音波減衰を低減させたりしている。また、別の対策として、UTに印加する電圧を上げて超音波の送信パワーを増大させることも考えられる。
【0005】
しかしながら、前者の材料選定、最適化の対策は、改善がいきつくところまでいった感があり、その効果も頭打ちの状況である。現況では飛躍的なUTの送受信感度向上は見込めない。また、後者の超音波の送信パワーを増大させる対策は、人体への影響を考えると好ましくない。
【0006】
特許文献1には、圧電体の電極を複数に分割した超音波プローブが開示されている。電極を分割したので、1個の圧電体を複数の圧電体として扱うことができ、超音波の送信時には複数の圧電体を並列接続し、反射波の受信時は直列接続することで送受信感度の向上を達成している。
【0007】
ところで、例えば腹部用の超音波プローブとして、UT1個あたりの静電容量Cz=150pFのものを一例として考える。いま、UTが出力した検出信号を超音波観測器に伝送するケーブルの静電容量Cc=200pF(1mあたり100pFの静電容量で長さが2mのケーブルを使用した場合を想定)とし、入力抵抗が無限大で超音波観測器の受信アンプで検出信号を受けたとする。また、UTが出力した検出信号の電圧をVutとする。このとき、受信アンプの入力端で観測される検出信号の電圧Vaは、Va=Cz/(Cc+Cz)・Vutより、Va=150/(200+150)・Vut=0.43Vutとなる。
【0008】
特許文献1のように、反射波の受信時に例えば2個の圧電体を直列接続した場合、その合成静電容量Cgは1/4・Czである。このときの受信アンプの入力端で観測される検出信号の電圧Vbは、Vb=n・{Cg/(Cg+Cz)・Vut}(nは直列接続される圧電体の個数)より、Vb=2・{37.5/(37.5+200)・Vut}=0.32Vutとなる。
【0009】
複数の圧電体を直列接続しない場合の受信アンプの入力端で観測される検出信号の電圧Va(=0.43Vut)よりも、複数の圧電体を直列接続した場合の電圧Vbのほうが低くなる。折角、複数の圧電体を直列接続して受信感度を向上させても、静電容量の低下によって電圧降下が起きてしまう。特許文献1では、複数の圧電体を直列接続して合成静電容量が低下したことに起因する検出信号の電圧降下の影響を軽減するため、UTとケーブルとの間にインピーダンス変換器を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平03−110998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のようにUTとケーブルとの間にインピーダンス変換器を接続してインピーダンス整合を図るだけでは、ケーブル伝送による検出信号の電圧降下を免れることは困難である。
【0012】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブル伝送による検出信号の電圧降下をなくし、超音波トランスデューサの送受信感度をさらに向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の超音波プローブは、超音波および反射波の送受波面に平行な方向に並べられた複数の圧電体を有する超音波トランスデューサと、複数の圧電体を挟む各電極に繋がれ、複数の圧電体の接続を並列または直列に切り替える切り替えスイッチと、超音波の送信時は複数の圧電体を並列接続し、反射波の受信時は直列接続するよう、前記切り替えスイッチを動作させる駆動制御手段と、反射波を受信して圧電体から出力される検出電圧を増幅する増幅器であり、圧電体の電極と電気容量性の伝送線路を介さずに直接接続された増幅器とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記増幅器は、前記超音波トランスデューサの圧電体が載置される台材の、送受波面に垂直な側面に配されていることが好ましい。この場合、前記増幅器は回路基板に実装されており、該回路基板が台材の送受波面に垂直な側面に配されている。前記増幅器とともに前記切り替えスイッチを前記回路基板に実装してもよい。
【0015】
前記増幅器は、前記超音波トランスデューサの圧電体が載置される台材の内部に埋設されていることが好ましい。この場合、前記増幅器は回路基板に実装されており、該回路基板が台材の内部に埋設されている。前記増幅器とともに前記切り替えスイッチを前記回路基板に実装してもよい。
【0016】
前記台材に、前記増幅器の駆動熱を冷却する冷却機構を設けることが好ましい。なお、前記台材は、いわゆるバッキング材、またはバッキング材のさらに背面にある台座である。
【0017】
前記増幅器は、電圧帰還型や電荷蓄積型等が考えられる。
【0018】
前記超音波トランスデューサは、超音波の送信能力および反射波の受信感度が異なる複数の圧電体、並びに隣り合う圧電体の一方の上面電極および他方の下面電極を兼ねる兼用電極を含む電極を有し、該電極により複数の圧電体が直列接続された構成を有する。前記駆動制御手段は、1個以外の圧電体に電極を介して駆動電圧を印加して超音波を発生させ、且つ反射波を受信して圧電体から出力される検出電圧が全ての圧電体の分加算されるよう、前記切り替えスイッチを動作させる。
【0019】
なお、「超音波の送信能力および反射波の受信感度が異なる複数の圧電体」とは、複数の圧電体の1個1個が互いに異なる場合と、複数の圧電体のうち、少なくとも1個が他と異なる場合を含む。
【0020】
複数の圧電体は、超音波および反射波の送受波面の法線と平行な同じ方向に分極されている。また、複数の圧電体は、等価圧電定数d33、電圧出力係数g33、または超音波および反射波の送受波面の面積比率が異なる。
【0021】
直列接続の一方の端の第1圧電体と、前記第1圧電体よりも超音波の送信能力が低く反射波の受信感度が高く、超音波および反射波の送受波面の面積比率が低い直列接続の他方の端の第2圧電体と、前記第1圧電体の兼用電極ではない電極に接続され、駆動電圧を供給するパルサとを備えることが好ましい。前記増幅器は、前記第2圧電体の兼用電極ではない電極に接続され、前記切り替えスイッチは、前記第1圧電体、前記第2圧電体の電極と前記パルサおよび前記増幅器の接続のオン/オフを切り替える。前記駆動制御手段は、前記第2圧電体以外の圧電体に駆動電圧が印加され、且つ全ての圧電体からの検出信号の和が前記増幅器に入力されるよう、前記切り替えスイッチを動作させる。
【0022】
前記第2圧電体は、前記第1圧電体よりも等価圧電定数d33が低く、電圧出力係数g33が高く、超音波および反射波の送受波面の面積比率が小さい。例えば、前記第1圧電体はソフト・リラクサー系、前記第2圧電体はハード系の圧電セラミックスである。
【0023】
前記超音波トランスデューサは、複数アレイ状に配列されている。この場合、圧電体に駆動電圧を供給するパルサと、前記パルサを駆動させ、超音波を走査させる走査制御手段と、前記増幅器で増幅された検出電圧をデジタルの検出信号とするA/D変換器と、検出信号から超音波画像を生成するための信号処理を実行する信号処理手段と、各部を統括的に制御する主制御手段とを備えることが好ましい。
【0024】
超音波および反射波を送受波する前記超音波トランスデューサを選択的に切り替えるマルチプレクサを備えてもよい。さらに、各部に電源を供給する電源供給手段と、超音波画像を表示する超音波観測器に信号処理後の検出信号を無線送信する無線送信手段とを備えてもよい。
【0025】
本発明の超音波診断装置は、超音波および反射波の送受波面に平行な方向に並べられた複数の圧電体を有する超音波トランスデューサと、複数の圧電体を挟む各電極に繋がれ、複数の圧電体の接続を並列または直列に切り替える切り替えスイッチと、超音波の送信時は複数の圧電体を並列接続し、反射波の受信時は直列接続するよう、前記切り替えスイッチを動作させる駆動制御手段と、反射波を受信して圧電体から出力される検出電圧を増幅する増幅器であり、圧電体の電極と電気容量性の伝送線路を介さずに直接接続された増幅器とを備える超音波プローブと、前記超音波プローブと接続され、超音波画像を表示する超音波観測器とからなることを特徴とする。
【0026】
本発明の超音波トランスデューサは、超音波および反射波を送受波する圧電体と、前記圧電体が載置される台材と、前記台材に埋設され、反射波を受信して前記圧電体から出力される検出電圧を増幅する増幅器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、超音波の送信時は複数の圧電体を並列接続し、反射波の受信時は直列接続して検出信号の和を受信アンプに入力させ、受信アンプを超音波トランスデューサの圧電体の電極に直接接続するので、ケーブル伝送による検出信号の電圧降下がなくなり、超音波トランスデューサの送受信感度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】超音波診断装置の構成を示す外観図である。
【図2】超音波トランスデューサアレイの構成を示す斜視図である。
【図3】超音波トランスデューサの構成を示す拡大断面図である。
【図4】(A)超音波の送信時および(B)反射波の受信時の超音波トランスデューサの等価回路を示す説明図である。
【図5】超音波診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】バッキング材の側面に受信アンプ付きフレキシブルプリント基板を配置した超音波トランスデューサの構成を示す拡大断面図である。
【図7】バッキング材の内部に受信アンプを配置した超音波トランスデューサの構成を示す拡大断面図である。
【図8】バッキング材の内部に受信アンプ付きフレキシブルプリント基板を配置した超音波トランスデューサの構成を示す拡大断面図である。
【図9】冷却機構を設けた超音波トランスデューサの構成を示す拡大断面図である。
【図10】別の例の超音波診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図11】マルチプレクサを接続したさらに別の例を示すブロック図である。
【図12】超音波の送信能力および反射波の受信感度が異なる複数の圧電体を有する超音波トランスデューサの構成を示す拡大断面図である。
【図13】(A)超音波の送信時および(B)反射波の受信時の図12に示す超音波トランスデューサの等価回路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、超音波診断装置2は、携帯型超音波観測器10と体外式の超音波プローブ11とで構成される。携帯型超音波観測器10は、装置本体12とカバー13とからなる。装置本体12の上面には、携帯型超音波観測器10に種々の操作指示を入力するための複数のボタンやトラックボールが設けられた操作部14が配されている。カバー13の内面には、超音波画像をはじめとして様々な操作画面を表示するモニタ15が設けられている。
【0030】
カバー13は、ヒンジ16を介して装置本体12に取り付けられており、操作部14とモニタ15とを露呈させる図示する開き位置と、装置本体12の上面とカバー13の内面を対面させて、操作部14とモニタ15を互いに覆って保護する閉じ位置(図示せず)との間で回動自在である。装置本体12の側面には、グリップ(図示せず)が取り付けられており、装置本体12とカバー13を閉じた状態で携帯型超音波観測器10を持ち運ぶことができる。装置本体12のもう一方の側面には、超音波プローブ11が着脱自在に接続されるプローブ接続部17が設けられている。
【0031】
超音波プローブ11は、術者が把持して被検体にあてがう走査ヘッド18と、プローブ接続部17に接続されるコネクタ19と、これらを繋ぐケーブル20とからなる。走査ヘッド18の先端部には、超音波トランスデューサアレイ(以下、UTアレイと略す)21が内蔵されている。
【0032】
図2において、UTアレイ21は、ガラス−エポキシ樹脂等の平板状の台座25上に、バッキング材26、超音波トランスデューサ(以下、UTと略す)27、音響整合層28a、28b、および音響レンズ29が順次積層された構造を有する。
【0033】
バッキング材26は、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂からなり、UT27から台座25側に発せられる超音波を吸収する。バッキング材26は、エレベーション方向(以下、EL方向と略す)に垂直な断面が略蒲鉾様に形成された凸状である(図1も参照)。
【0034】
UT27は、EL方向に長い短冊状をしており、EL方向と直交するアジマス方向(以下、AZ方向と略す)に複数等間隔で配列されている。各UT27の隙間およびその周囲には、充填材30が充填されている。
【0035】
音響整合層28a、28bは、UT27と被検体との間の音響インピーダンスの差異を緩和するために設けられている。音響レンズ29は、シリコーン樹脂等からなり、UT27から発せられる超音波を被検体内の被観察部位に向けて集束させる。なお、音響レンズ29は無くてもよく、音響レンズ29の代わりに保護層を設けてもよい。後述する第1電極37とパルサ46との間に遅延線を設け、励振パルスをUT27に与えるタイミングをずらすことで、電気的に超音波を集束させてもよい。
【0036】
図3において、UT27は、第1圧電体35、第2圧電体36、および第1、第2、第3、第4電極37、38、39、40から構成される。(台座25、音響整合層28a、28b、および音響レンズ29は図示せず)。
【0037】
第1、第2圧電体35、36は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系の同じ材質からなる圧電セラミックスである。第1、第2圧電体35、36は、ともに同じ方向(矢印で示す下から上の方向)に分極している。
【0038】
第1、第2圧電体35、36は、AZ方向に平行な線で分断されている。第1、第2圧電体35、36のEL方向の長さは同じであり、従ってその上面である送受波面の面積も同じである。
【0039】
第1、第2電極37、38はそれぞれ、第1、第2圧電体35、36の上面電極であり、第3、第4電極39、40はそれぞれ、第1、第2圧電体35、36の下面電極である。第1、第2電極37、38は、第1、第2圧電体35、36の分断箇所で略直角に曲げられて、バッキング材26と台座25の内部を貫通し、台座25の下面まで設けられている。第3、第4電極39、40は、第1、第2圧電体35、36の上面から、バッキング材26と台座25の側面に沿って下方に延び、台座25の下面まで設けられている。第1、第2圧電体35、36の外側面および第1、第2圧電体35、36の分断箇所には、充填材30が充填されている。
【0040】
第1〜第4電極37〜40には、第1、第2、第3、第4、第5スイッチ(以下、SWa、SWb、SWc、SWd、SWeという)41、42、43、44、45がそれぞれ接続されている。より詳しくは、第1電極37の一端にSWa41、第2電極38の一端にSWb42、第1、第2電極37、38の他端にSWc43がそれぞれ接続され、第3、第4電極39、40の一端にSWd44、第4電極40の一端にSWe45がそれぞれ接続されている。SWc〜SWe43〜45は台座25の下面に配され、下面の各電極37〜40の延設部分と接続している。
【0041】
SWa41、SWb42はそれぞれ、第1電極37とパルサ46、第2電極38と電圧帰還型または電荷蓄積型の受信アンプ47の接続をオン/オフする。SWc43、SWd44は二股のスイッチであり、SWc43は第1電極37と第2電極38または第4電極40とを選択可能に繋ぎ、SWd44は第3電極39と第4電極40またはグランドとを選択可能に繋ぐ。SWc43、SWd44は、第4電極40に繋がる出力端子が共通となっており、2入力3出力のスイッチを構成する。SWe45は、第4電極40とグランドの接続をオン/オフする。第2電極38、SWb42、および受信アンプ47は、電気容量性の伝送線路を介さずに互いに直接接続されている。
【0042】
表1に示すように、SWa〜SWe41〜45は、超音波の送信時と反射波の受信時で選択状態が変わる。超音波の送信時、SWa41はオン、SWb42はオフとなる。SWc43は第2電極38側に倒され、SWd44は第4電極40側に倒される。また、SWe45はオンとなる。図3に示す状態と同じである。この場合の等価回路は、図4(A)に示すようになる。すなわち、パルサ46、第1電極37、第2電極38が繋がれ、第3電極39、第4電極40、グランドが繋がれる。そして、第1、第2電極37、38と第3、第4電極39、40に挟まれた第1、第2圧電体35、36にパルサ46からの励振パルス(駆動電圧)が印加され、第1、第2圧電体35、36の上面から超音波(点線矢印で示す)が発せられる。
【0043】
一方、反射波の受信時、SWa41はオフ、SWb42はオンとなる。SWc43は第4電極38側に倒され、SWd44はグランド側に倒される。また、SWe45はオフとなる。この場合の等価回路は、図4(B)に示すように、第2電極38と受信アンプ47が繋がれる。そして、第1電極37と第4電極38が繋がれ、第3電極39とグランドが繋がれる。第1、第2圧電体35、36は、各電極37〜40によって受信アンプ47に直列接続される。第1、第2圧電体35、36の上面に反射波(点線矢印で示す)が入射すると、これに応じた検出信号(検出電圧)が第1、第2圧電体35、36から出力される。第1、第2圧電体35、36は、ともに矢印で示す同じ方向に分極しているため、各検出信号も同極性で打ち消し合わない。また、第1、第2圧電体35、36は直列接続されているため、第2電極38、SWb42を介して受信アンプ47に入力される検出信号は、第1、第2圧電体35、36から出力された各検出信号の和である。
【0044】
【表1】

【0045】
図5において、受信アンプ47にはレシーバ50が接続され、レシーバ50にはA/D変換器(以下、A/Dと略す)51が接続されている。レシーバ50は、受信アンプ47で増幅された検出信号を受信する。A/D51は、レシーバ50からの検出信号にデジタル変換を施し、検出信号をデジタル化する。このレシーバ50、A/D51と、前述のパルサ46、受信アンプ47は、ここでは1組しか図示していないが、1個のUT27に対して1個ずつ、つまりUT27の個数分設けられている。
【0046】
パルサ46は、CPU52の制御の下、走査制御部53によって駆動制御される。走査制御部53は、複数のパルサ46の中から、駆動させるパルサ46を選択して、これを所定の時間間隔で順次切り替える。具体的には、例えばUT27が128個配されている場合、128個のUT27のうち、隣接する48個のUT27を1つのブロックとして各UT27に任意の遅延差を与えて駆動させるように選択し、超音波および反射波の1回の送受信毎に、駆動させるUT27を1〜数個ずつずらす。パルサ46は、走査制御部53から送信される駆動信号に基づいて、UT27に超音波を発生させるための励振パルスを送信する。
【0047】
また、走査制御部53は、SWa〜SWe41〜45のスイッチング動作を制御する。
【0048】
A/D51は、ビームフォーマ(以下、BFと略す)54と接続している。BF54は、A/D51でデジタル化された検出信号に対して、位相整合演算を施す。検波Log圧縮回路55は、BF54から出力される検出信号の振幅を検波し、Log圧縮を施す。検波Log圧縮回路55から出力された検出信号は、メモリ(図示せず)に一旦格納される。
【0049】
携帯型超音波観測器10は、デジタルスキャンコンバータ(以下、DSCと略す)60を有する。DSC60は、コネクタ19、プローブ接続部17等を介して超音波プローブ11のメモリからデジタルの検出信号を受け取る。DSC60は、CPU61の制御の下、検出信号をテレビ信号に変換する。DSC60で変換されたテレビ信号は、D/A変換器(図示せず)でD/A変換が施され、モニタ15に超音波画像として表示される。
【0050】
CPU61は、携帯型超音波観測器10の各部の動作を統括的に制御する。CPU61は、操作部14からの操作入力信号に基づいて各部を動作させる。また、CPU61は、電源供給部62を駆動制御し、超音波プローブ11への電源供給を行わせる。
【0051】
上記構成を有する超音波診断装置2の作用について説明する。まず、超音波プローブ11のコネクタ19を携帯型超音波観測器10のプローブ接続部17に挿入固定し、携帯型超音波観測器10と超音波プローブ11の電気的機械的接続を得る。そして、操作部14を操作して携帯型超音波観測器10の電源を立ち上げるとともに、電源供給部62から超音波プローブ11に電源を供給する。術者は、超音波プローブ11の走査ヘッド18を被検体に押し当てながら、携帯型超音波観測器10のモニタ15に表示される超音波画像を観察して診断を行う。
【0052】
超音波プローブ11では、走査制御部53によって選択されたパルサ46からUT27に励振パルスが送信され、UT27から被検体に超音波が照射される。走査制御部53により駆動されるパルサ46は、超音波および反射波の1回の送受信毎に順次切り替えられる。これにより被検体に超音波が走査される。
【0053】
このとき、走査制御部53により、超音波を照射するUT27のSWa41がオン、SWb42がオフされる。また、SWc43が第2電極38側に倒され、SWd44が第4電極40側に倒される。さらに、SWe45がオンされる。パルサ46からの励振パルスは、各電極37〜40を介して第1、第2圧電体35、36に印加され、第1、第2圧電体35、36から被検体に向けて超音波が発せられる。
【0054】
第1、第2圧電体35、36から発せられた超音波は被検体で反射され、その反射波に応じた検出信号がUT27から出力される。このとき、走査制御部53により、反射波を受信するUT27のSWa41がオフ、SWb42がオンされる。また、SWc43が第4電極38側に倒され、SWd44がグランド側に倒される。さらに、SWe45がオフされる。各電極37〜40によって、第1、第2圧電体35、36が受信アンプ47に直列接続される。受信アンプ47には、第1、第2圧電体35、36から出力された各検出信号の和が入力される。
【0055】
UT27からの検出信号は、受信アンプ47で増幅された後、レシーバ50に受信され、A/D51でA/D変換されてデジタル化される。A/D51でデジタル化された検出信号は、BF54に送られてBF54で位相整合演算され、さらに検波Log圧縮回路55で検波、Log圧縮された後、メモリに一旦格納される。
【0056】
検波、Log圧縮後の検出信号は、コネクタ19、プローブ接続部17等を介して携帯型超音波観測器10のDSC60に送信され、DSC60でテレビ信号に変換される。DSC60で変換されたテレビ信号は、D/A変換されてモニタ15に超音波画像として表示される。
【0057】
以上説明したように、超音波の送信時は第1、第2圧電体35、36を並列接続し、反射波の受信時は直列接続して検出信号の和を受信アンプ47に入力させるので、送受信感度を向上させることができる。受信アンプ47をUT27の直近に配置して、第2電極38、SWb42、および受信アンプ47を互いに直接接続するので、伝送線路による電圧降下を低減することができる。
【0058】
上記実施形態では、第1、第2圧電体35、36の2個の圧電体を有するUT27を例示したが、圧電体の個数は2個以上でもよい。圧電体の個数が増えると、直列接続したときの合成静電容量はさらに低下する。このため、伝送線路による電圧降下をさらに低減する必要がある。この対策として、受信アンプ47をUT27のさらに近くに配置することが考えられる。
【0059】
図6〜図8に示すUT70、75、80は、受信アンプ47との間をさらに近付けるための対策を講じたものである。なお、図6〜図8の例は、その構造が上記実施形態と異なるだけで、超音波の送信時と反射波の受信時のSWa〜SWe41〜45の選択状態は、表1と同じである。
【0060】
図6に示すUT70は、その側面にポリイミド等のフレキシブルプリント基板(以下、FPCという)71が取り付けられている。FPC71は、第2圧電体35の側面を埋める充填材30の側面からバッキング材26の上部側面にかけて配置されている。
【0061】
第2電極38は、上記実施形態よりも側面に向けて長く形成され、その一端が下方に鉤の手状に曲げられている。FPC71は、第2電極38の鉤の手状の屈曲部分とグランドにハンダ等で接続されている。点線の丸囲いで示すように、FPC71には、SWb42と受信アンプ47が実装されている。上記実施形態と同様、SWb42は第2電極38に、受信アンプ47のグランド端子はグランドにそれぞれ接続されている。なお、図では1個分のUT70のSWb42と受信アンプ47しか1つのFPC71に実装されていないが、実際には、UT70の個数分のSWb42と受信アンプ47が1つのFPC71に実装されている。
【0062】
受信アンプ47が実装されたFPC71をバッキング材26の側面に取り付けるので、受信アンプ47をUTのさらに近くに配置することができ、伝送線路による電圧降下をより低減することができる。
【0063】
図7に示すUT75は、SWa〜SWe41〜45、受信アンプ47をバッキング材26内に埋め込んでいる。第1、第2電極37、38は、上記実施形態の如くバッキング材26と台座25の内部を貫通しておらず、バッキング材26の上面までしか設けられていない。第1、第2電極37、38は、バッキング材26の上面付近でSWc43と接続している。第2電極38は、図6のUT70と同様、側面に向けて長く形成され、その一端が下方に鉤の手状に曲げられ、さらにバッキング材26の上部側面にかけて延設されており、全体として断面略コの字状に形成されている。この第2電極38の延設部分にSWb42が接続している。
【0064】
第3、第4電極39、40は、上記実施形態とは異なり、台座25の下面まで延設されておらず、バッキング材26の上部付近までしか設けられていない。第3、第4電極39、40は、バッキング材26の上部でSWd44、SWe45と接続している。
【0065】
受信アンプ47をバッキング材26内に埋め込むので、図6の場合と同様に伝送線路による電圧降下をより低減することができる。また、図6の場合はFPC71をバッキング材26の側面に配置する分、UTがEL方向に若干大型化するが、本例では小型化することができる。
【0066】
図8に示すUT80は、図7でバッキング材26に埋め込んだSWa〜SWe41〜45、受信アンプ47を、1つのFPC81に集積した例である。電極等の構成は図7と同じであるため説明を省略する。この場合も図6のFPC71と同様、図では1個分しか描いていないが、実際には、UT80の個数分のSWa〜SWe41〜45と受信アンプ47が1つのFPC81に実装されている。各部品の集積度を高めたので、各部品が散逸した図7の場合と比べてUTアレイをよりコンパクトにすることができ、UTアレイの製造時の取扱も容易になる。
【0067】
図6〜図8では、受信アンプ47等をバッキング材26の側面に配置したり内部に埋め込んでいるが、受信アンプ47には駆動熱の問題がある。図6の場合はバッキング材26の側面に配置しているため、図7、図8の場合と比べて多少の放熱効果は期待できるが、受信アンプ47を高集積度で実装すると、その駆動熱による悪影響が懸念される。
【0068】
そこで、図9に示すように、冷却水等の液状冷媒85を流す管路86をバッキング材26内のFPC81の近傍に配管する。管路86には冷却機と循環ポンプ(ともに図示せず)が繋がれており、FPC81の受信アンプ47の駆動熱を奪った液状冷媒85を冷却機で冷却しつつ、循環ポンプで管路86内を循環させる。こうすれば、受信アンプ47を高集積度で実装したことによる駆動熱を冷却することができ、その悪影響をなくすことができる。なお、図9では、図8のUT80を例に挙げているが、図6、図7のUT70、75に上記の冷却機構を設けてもよい。
【0069】
図6、図7の例を個別に説明したが、全UTのうちのあるものは受信アンプ47をバッキング材26の側面に配置し、他のものはバッキング材26の内部に埋め込む、というように、これらを複合させてもよい。また、受信アンプ47等をバッキング材26の側面に配したり、内部に埋め込む例を説明したが、バッキング材26ではなく台座25でもよい。
【0070】
上記実施形態では、携帯型超音波観測器10と超音波プローブ11がケーブル20で有線接続される例を挙げたが、図10に示す超音波診断装置90のように、携帯型超音波観測器91と超音波プローブ92間のデータの送受信を無線で行うものに適用してもよい。
【0071】
図10において、携帯型超音波観測器91と超音波プローブ92にはそれぞれ、A/D変換後の検出信号を無線で遣り取りするための無線受信部93と無線送信部94が設けられている。また、超音波プローブ92には、バッテリ95が内蔵されており、バッテリ95からの電源が電源供給部96を介して超音波プローブ92の各部に供給される。
【0072】
本発明によれば、伝送線路による電圧降下を抑えた分、比較的低い電圧でUTを駆動しても、比較的高い送受信感度が得られるので、超音波プローブ92のようにバッテリ95で駆動するタイプの耐用時間を従来よりも長引かせることができる。また、低電圧駆動であるためパルサ等の回路規模を小さくすることができ、ひいては超音波プローブの小型化にも寄与することができる。
【0073】
なお、図11に示すように、UTアレイ21とパルサ46およびレシーバ50の間に、駆動するUT27を選択的に切り替えるマルチプレクサ(以下、MUXと略す)100を介挿してもよい。例えばUT27が128個で、隣接する48個のUT27を1つのブロックとして各UT27に任意の遅延差を与えて駆動させる場合、MUX100で駆動させる48個を選択する。こうすれば、一度に駆動するUT27の個数分(この場合は48個分)、パルサ46とレシーバ50を用意すればよいので、超音波プローブをさらに小型化することができる。
【0074】
上記実施形態では、第1、第2圧電体35、36を同じ材質からなる圧電セラミックスとし、これらの送受波面の面積も同じとしているが、図12に示すUT105のような構成としてもよい。図12において、UT105は、第1圧電体(以下、Psと略す)106、第2圧電体(以下、Phと略す)107、および第1、第2、第3電極108、109、110から構成される。
【0075】
Ps106は、一般にソフト・リラクサー系と呼ばれる圧電セラミックスであり、例えばPb(Mn、Nb)O−PbTiO、Pb(Ni、Nb)O−PbTiO、Pb(Zn、Nb)O−PbTiO等を主体とする。Ph107は、Ps106とは異なり、一般にハード系と呼ばれる圧電セラミックスであり、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系である。Ps106とPh107は、ともに同じ方向(矢印で示す下から上の方向)に分極している。
【0076】
Ps106とPh107は、AZ方向に平行な線で分断されている。Ps106は、EL方向の長さがPh107よりも長く、従ってその上面である送受波面の面積はPh107よりも大きい。送受波面の面積比率は、例えばPs:Ph=4:1である。
【0077】
本例では、Ps106として富士セラミックス社製の型番C−92Hを、Ph107として同社製の型番C−5を用いる。表2に示すように、Ps106に用いる型番C−92Hは、比誘電率ε33が5300、等価圧電定数d33が770、電圧出力係数g33が16.4である。一方、Ph107に用いる型番C−5は、比誘電率ε33が1170、等価圧電定数d33が333、電圧出力係数g33が32.1である。型番C−5は、等価圧電定数d33が型番C−92Hの約0.43倍、電圧出力係数g33が約1.95倍である。等価圧電定数d33が大きいほど超音波の送信能力が高く、電圧出力係数g33が大きいほど反射波の受信感度が高いので、Ps106はPh107よりも送信能力が高く、Ph107はPs106よりも受信感度が高いといえる。
【0078】
【表2】

【0079】
第1電極108、第2電極109はそれぞれ、Ps106の下面電極、Ph107の上面電極である。第3電極110は、Ps106の上面電極とPh107の下面電極を兼ねる。第3電極110は、Ps106とPh107の分断箇所で略乙字状に屈曲した接続部111を有する。接続部111は、Ps106の上面電極の部分とPh107の下面電極の部分を繋ぐ。Ps106とPh107の外側面および接続部111があるPs106とPh107の分断箇所には、充填材30が充填されている。なお、第1電極108、第2電極109をそれぞれ、Ps106の上面電極、Ph107の下面電極とし、第3電極110がPs106の下面電極とPh107の上面電極を兼ねる構成としてもよい。
【0080】
第1〜第3電極108〜110には、第1、第2、第3スイッチ(以下、SWa’、SWb’、SWc’という)112、113、114がそれぞれ接続されている。SWa’112は二股のスイッチであり、第1電極108とパルサ46またはグランドとを選択可能に繋ぐ。SWb’113、SWc’114はそれぞれ、第2電極109と受信アンプ47、第3電極110とグランドの接続をオン/オフする。第2電極109、SWb’113、および受信アンプ47は、上記実施形態と同様、電気容量性の伝送線路を介さずに互いに直接接続されている。
【0081】
表3に示すように、SWa’〜SWc’112〜114は、超音波の送信時と反射波の受信時で選択状態が変わる。超音波の送信時、SWa’112は、パルサ46側に倒される。また、SWb’113はオフ、SWc’114はオンとなる。図12に示す状態と同じである。この場合の等価回路は、図13(A)に示すようになる。すなわち、パルサ46と第1電極108、第3電極110とグランドが繋がれる。そして、第1電極108と第3電極110に挟まれたPs106にパルサ46からの励振パルス(駆動電圧)が印加され、Ps106の上面から超音波(点線矢印で示す)が発せられる。SWb’113がオフなので、第2電極109と第3電極110に挟まれたPh107には励振パルスは印加されず、従ってPh107から超音波は発せられない。
【0082】
一方、反射波の受信時、SWa’112は、グランド側に倒される。また、SWb’113はオン、SWc’114はオフとなる。この場合の等価回路は、図13(B)に示すように、グランドと第1電極108、第2電極109と受信アンプ47が繋がれる。Ps106とPh107は、各電極108〜110によって受信アンプ47に直列接続される。上記実施形態と同様、第2電極109、SWb’113を介して受信アンプ47に入力される検出信号は、Ps106とPh107から出力された各検出信号の和である。
【0083】
【表3】

【0084】
なお、表3の「active」は駆動、「inactive」は非駆動を示す。超音波の送信時はPs106のみから超音波が発せられるので、Ps106は「active」、Ph107は「inactive」である。反射波の受信時は、Ps106とPh107両方で反射波を受けて検出信号を出力するので、両方とも「active」である。
【0085】
超音波の送信時は比較的送信能力が高いPs106で超音波を発し、反射波の受信時はPs106と、比較的受信感度が高いPh107で反射波を受けるので、Ps106、Ph107の互いの長所を活かした(短所を補った)駆動方法であるといえる。
【0086】
送受信感度は、(送波面の面積比率)×{(Ps106の受信感度)+(Ph107の受信感度)}=(送波面の面積比率)×{1+(Ps106に対するPh107の電圧出力係数g33の比)}=0.80×(1+1.95)=2.36(=+7.46dB)となる。単純に同じ種類の圧電体を直列接続した場合、送受信感度は圧電体の個数倍にしかならないが、本例では個数倍以上に送受信感度が向上する。
【0087】
比較的送信能力に長けたPs106と比較的受信感度が高いPh107を各電極108〜110で直列接続し、超音波の送信時はPs106を用い、反射波の受信時はPs106とPh107の両方で検出信号を出力してその和を受信アンプ47に入力するので、従来よりもさらに送受信感度を向上させることができる。送受信感度が向上すれば、UT105に与える駆動電圧を上げる必要がなくなり、低電圧駆動が可能となる。
【0088】
UTを構成する圧電体の個数がn個(nは2以上の自然数)であった場合、隣り合う圧電体の一方の上面電極および他方の下面電極を兼ねる、第3電極110等の兼用電極はn−1個必要である。兼用電極を含む電極の総数はn+1個であり、兼用電極以外の電極は第1電極108と第2電極109の2個である。
【0089】
隣り合う圧電体の一方の上面電極および他方の下面電極を兼ねる兼用電極である第3電極110に接続部111を設けているが、接続部の代わりにワイヤボンディング等で隣り合う圧電体の一方の上面電極および他方の下面電極を導通させてもよい。また、ハード系の圧電セラミックスの代わりに、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の圧電樹脂を用いてもよい。
【0090】
上記実施形態では、EL方向に沿って各圧電体を並べているが、AZ方向に沿って並べても構わない。上記実施形態では、いわゆるコンベックス電子走査型の体外式の超音波プローブを例示したが、ラジアル電子走査型、あるいは1個のUTを機械的に回転あるいは揺動、もしくはスライドさせるメカニカルスキャン走査方式の超音波プローブでもよい。電子内視鏡の鉗子チャンネルに挿入される体内式の超音波プローブや、電子内視鏡と一体化された超音波内視鏡についても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
2、90 超音波診断装置
10、91 携帯型超音波観測器
11、92 超音波プローブ
21 超音波トランスデューサアレイ(UTアレイ)
25 台座
26 バッキング材
27、70、75、80、105 超音波トランスデューサ(UT)
35 第1圧電体
36 第2圧電体
37〜40 第1〜第4電極
41〜45 第1〜第5スイッチ(SWa〜SWe)
46 パルサ
47 受信アンプ
51 A/D変換器(A/D)
52 CPU
53 走査制御部
54 ビームフォーマ(BF)
55 検波Log圧縮回路
71、81 フレキシブルプリント基板(FPC)
85 液状冷媒
86 管路
94 無線送信部
95 バッテリ
100 マルチプレクサ(MUX)
106 第1圧電体(Ps)
107 第2圧電体(Ph)
108〜110 第1〜第3電極
111 接続部
112〜114 第1〜第3スイッチ(SWa’〜SWc’)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波および反射波の送受波面に平行な方向に並べられた複数の圧電体を有する超音波トランスデューサと、
複数の圧電体を挟む各電極に繋がれ、複数の圧電体の接続を並列または直列に切り替える切り替えスイッチと、
超音波の送信時は複数の圧電体を並列接続し、反射波の受信時は直列接続するよう、前記切り替えスイッチを動作させる駆動制御手段と、
反射波を受信して圧電体から出力される検出電圧を増幅する増幅器であり、圧電体の電極と電気容量性の伝送線路を介さずに直接接続された増幅器とを備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記増幅器は、前記超音波トランスデューサの圧電体が載置される台材の、送受波面に垂直な側面に配されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記増幅器は回路基板に実装されており、該回路基板が台材の送受波面に垂直な側面に配されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記切り替えスイッチは、前記増幅器とともに前記回路基板に実装されていることを特徴とする請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記増幅器は、前記超音波トランスデューサの圧電体が載置される台材の内部に埋設されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記増幅器は回路基板に実装されており、該回路基板が台材の内部に埋設されていることを特徴とする請求項5に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記切り替えスイッチは、前記増幅器とともに前記回路基板に実装されていることを特徴とする請求項6に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記台材に、前記増幅器の駆動熱を冷却する冷却機構を設けることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記増幅器は、電圧帰還型または電荷蓄積型であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記超音波トランスデューサは、超音波の送信能力および反射波の受信感度が異なる複数の圧電体、並びに隣り合う圧電体の一方の上面電極および他方の下面電極を兼ねる兼用電極を含む電極を有し、該電極により複数の圧電体が直列接続された構成を有し、
前記駆動制御手段は、1個以外の圧電体に電極を介して駆動電圧を印加して超音波を発生させ、且つ反射波を受信して圧電体から出力される検出電圧が全ての圧電体の分加算されるよう、前記切り替えスイッチを動作させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項11】
複数の圧電体は、超音波および反射波の送受波面の法線と平行な同じ方向に分極されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項12】
複数の圧電体は、等価圧電定数d33、電圧出力係数g33、または超音波および反射波の送受波面の面積比率が異なることを特徴とする請求項10または11に記載の超音波プローブ。
【請求項13】
直列接続の一方の端の第1圧電体と、
前記第1圧電体よりも超音波の送信能力が低く反射波の受信感度が高く、超音波および反射波の送受波面の面積比率が低い直列接続の他方の端の第2圧電体と、
前記第1圧電体の兼用電極ではない電極に接続され、駆動電圧を供給するパルサとを備え、
前記増幅器は、前記第2圧電体の兼用電極ではない電極に接続され、
前記切り替えスイッチは、前記第1圧電体、前記第2圧電体の電極と前記パルサおよび前記増幅器の接続のオン/オフを切り替え、
前記駆動制御手段は、前記第2圧電体以外の圧電体に駆動電圧が印加され、且つ全ての圧電体からの検出信号の和が前記増幅器に入力されるよう、前記切り替えスイッチを動作させることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記第2圧電体は、前記第1圧電体よりも等価圧電定数d33が低く、電圧出力係数g33が高く、超音波および反射波の送受波面の面積比率が小さいことを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項15】
前記第1圧電体はソフト・リラクサー系、前記第2圧電体はハード系の圧電セラミックスであることを特徴とする請求項10ないし14のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項16】
前記超音波トランスデューサは、複数アレイ状に配列されており、
圧電体に駆動電圧を供給するパルサと、
前記パルサを駆動させ、超音波を走査させる走査制御手段と、
前記増幅器で増幅された検出電圧をデジタルの検出信号とするA/D変換器と、
検出信号から超音波画像を生成するための信号処理を実行する信号処理手段と、
各部を統括的に制御する主制御手段とを備えることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項17】
超音波および反射波を送受波する前記超音波トランスデューサを選択的に切り替えるマルチプレクサを備えることを特徴とする請求項16に記載の超音波プローブ。
【請求項18】
各部に電源を供給する電源供給手段と、
超音波画像を表示する超音波観測器に信号処理後の検出信号を無線送信する無線送信手段とを備えることを特徴とする請求項16または17に記載の超音波プローブ。
【請求項19】
超音波および反射波の送受波面に平行な方向に並べられた複数の圧電体を有する超音波トランスデューサと、
複数の圧電体を挟む各電極に繋がれ、複数の圧電体の接続を並列または直列に切り替える切り替えスイッチと、
超音波の送信時は複数の圧電体を並列接続し、反射波の受信時は直列接続するよう、前記切り替えスイッチを動作させる駆動制御手段と、
反射波を受信して圧電体から出力される検出電圧を増幅する増幅器であり、圧電体の電極と電気容量性の伝送線路を介さずに直接接続された増幅器とを備える超音波プローブと、
前記超音波プローブと接続され、超音波画像を表示する超音波観測器とからなることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項20】
超音波および反射波を送受波する圧電体と、
前記圧電体が載置される台材と、
前記台材に埋設され、反射波を受信して前記圧電体から出力される検出電圧を増幅する増幅器とを備える超音波トランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−50571(P2011−50571A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202321(P2009−202321)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】