説明

超音波プローブ及び超音波診断装置

【課題】超音波プローブを落とした場合において、その落下の衝撃によって超音波振動子が破損することを防止する。
【解決手段】プローブ本体50に取り付けられ、液状の音響伝搬媒体を収容する音響窓材51と、超音波振動子を含み、音響伝搬媒体52中に浸漬されて揺動可能に音響窓材51内に収容される超音波振動子アセンブリ3と、プローブ本体50が操作者の手から離れたことを検知する検知手段8と、音響窓材51の内側に設けられ、プローブ本体50が落下した場合に超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することを阻止する保護位置に移動可能な保護体9と、保護体9の音響窓材51の内面に対向する部分に設けられた弾性材54と、検知手段8の検知結果に基づき、保護体9を保護位置に移動させる移動手段10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、生体の断層画像を得るために医療用の超音波診断装置に接続して使用される超音波プローブが知られている。超音波プローブは、アレイ状に配列された複数の超音波振動子を備えており、この超音波振動子はセラミックス等の硬くて脆い材料を用いて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−198261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波プローブを落とした場合、落下時の衝撃によって脆い材料で形成されている超音波振動子が破損しやすい。超音波振動子が破損すると、超音波走査によって得られる画像が欠陥画像となり、超音波診断の精度が低下する。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、超音波プローブを落とした場合において、その落下の衝撃によって超音波振動子が破損することを防止することができる超音波プローブ及びこの超音波プローブを使用する超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る超音波プローブは、プローブ本体に取り付けられ、液状の音響伝搬媒体を収容する音響窓材と、超音波振動子を含み、前記音響伝搬媒体中に浸漬されて揺動可能に前記音響窓材内に収容される超音波振動子アセンブリと、前記プローブ本体が操作者の手から離れたことを検知する検知手段と、前記音響窓材の内側に設けられ、前記プローブ本体が落下した場合に前記超音波振動子アセンブリが落下面に衝突することを阻止する保護位置に移動可能な保護体と、前記保護体の前記音響窓材の内面に対向する部分に設けられた弾性材と、前記検知手段の検知結果に基づき、前記保護体を前記保護位置に移動させる移動手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る超音波プローブであって、保護体が保護解除位置に位置する場合を示す正面図(a)と側面図(b)とである。
【図2】保護体が保護位置に位置する場合を示す正面図(a)と側面図(b)とである。
【図3】超音波振動子アセンブリを示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る超音波プローブを示す正面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る超音波プローブを示す正面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る超音波プローブにおける保護体を移動させる移動手段の動作を説明する正面図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る超音波プローブであって、保護体が保護解除位置に位置する場合を示す正面図(a)と側面図(b)とである。
【図8】保護体が保護位置に位置する場合を示す正面図(a)と側面図(b)とである。
【図9】本発明の第6の実施の形態に係る超音波プローブを示す側面図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態に係る超音波プローブを示す側面図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る超音波プローブについて、図1ないし図3に基づいて説明する。
【0010】
図1及び図2に示すように、超音波プローブ1は、直方体形状に形成されたプローブ本体2と、このプローブ本体2内に収容される超音波振動子アセンブリ3とを備えている。
【0011】
超音波振動子アセンブリ3は、図3に示すように、アレイ状に配列されて超音波の送受信を行う短冊形状の複数の超音波振動子4と、背面への超音波の発生を防ぐバッキング材5と、音響インピーダンスを整合する音響整合層6と、超音波の焦点を機械的に定める音響レンズ7とを備えている。プローブ本体2内に収容された超音波振動子アセンブリ3は、音響レンズ7の表面がプローブ本体2の下端縁2aと同一となる位置又は下端縁2aより外方に露出する位置に収容され、超音波診断時には音響レンズ7の表面が被検体の体表面に当接される。
【0012】
プローブ本体2には、超音波診断時に操作者により把持されるグリップ部が形成されている。このグリップ部には、プローブ本体2が操作者の手から離れたことを検知する検知手段である圧力センサ8が設けられている。「プローブ本体2が操作者の手から離れる」とは、例えば、超音波診断中に操作者が超音波プローブ1をテーブル等の載置部の上に置いた場合、操作者が超音波プローブ1を落とした場合等である。圧力センサ8は、操作者がプローブ本体2を把持している場合にオンとなり、プローブ本体2から操作者の手が離れた場合にオフとなる。圧力センサ8は、超音波プローブ1の各部を制御する制御部(図示せず)に接続されている。
【0013】
さらに、プローブ本体2には、保護体9と移動手段10とが取り付けられている。
【0014】
保護体9は、超音波プローブ1が落下した場合に、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することを阻止するための部材である。なお、ここでいう「落下面」とは、超音波プローブ1を落とした場合に落下した超音波プローブ1が衝突する面を意味し、例えば、室内の床面などが該当する。
【0015】
保護体9は、棒状部材を用いてD字形の形状に形成され、プローブ本体2の平行に対向する2面の外側面に取り付けられている。D字形に形成された保護体9は、平行に対向する一対の直線部9aと、直線部9aと一体に形成されて一対の直線部9aの一端側を連結する湾曲した形状の当接部9bと、一対の直線部9aの他端側にねじ止め等により連結された直線状の押圧部9cとにより形成されている。プローブ本体2の外周面における保護体9が取り付けられる面にはそれぞれ一対の保持部11が固定され、これらの保持部11により直線部9aがスライド可能に保持されている。保護体9は、当接部9bを音響レンズ7の表面と同じ方向である下向きにして保持部11に保持されている。
【0016】
移動手段10は、保護体9を図2に示す保護位置と、図1に示す保護解除位置とに移動
させる機構である。移動手段10は、カム13と、モータ14と、スプリング12とにより構成されている。モータ14は、超音波プローブ1の各部を制御する制御部に接続されている。
【0017】
カム13は、プローブ本体2の外側であって押圧部9cに当接する位置に配置されている。モータ14は、プローブ本体2の内側に配置され、このモータ14がカム13に連結されている。スプリング12は、保持部11と押圧部9cとの間に設けられ、保護体9の押圧部9cをカム13の外周面に押圧する向きに付勢している。モータ14の駆動によりカム13が回転し、カム13は図1に示す位置と図2に示す位置とのいずれかの位置で停止する。
【0018】
保護体9が図1に示す保護解除位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bがプローブ本体2の下端縁2aより上側に位置している。保護体9が図2に示す保護位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bが音響レンズ7の表面及びプローブ本体2の下端縁2aより下側に突出して位置している。
【0019】
プローブ本体2における保護体9とカム13とが設けられている面には、これらの保護体9とカム13とを覆うカバー15が設けられている。
【0020】
このような構成において、操作者が超音波プローブ1を把持している場合には、グリップ部に設けられている圧力センサ8が操作者により握られ、圧力センサ8がオンになっている。圧力センサ8がオンの場合には、モータ14により駆動されたカム13が図1に示す位置で停止している。カム13が図1に示す位置で停止している場合には、保護体9は、スプリング12の付勢力により押圧部9cがカム13の短径側外周面に当接する位置(保護解除位置)に位置する。保護体9が図1に示す保護解除位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bはプローブ本体2の下端縁2aより上側に位置している。このため、音響レンズ7の表面を被検体の体表面に当接させて行う超音波診断に際しては、当接部9bを被検体の体表面に接触させることなく超音波診断を行える。
【0021】
超音波診断中に超音波プローブ1が操作者の手から離れた場合、例えば、超音波プローブ1を診察台の上に置いた場合や超音波プローブ1が落下した場合には、圧力センサ8がオフになる。圧力センサ8がオフになると、圧力センサ8がオフになったことの検知結果が制御部に入力され、制御部から駆動信号がモータ14に対して出力されてモータ14が駆動される。圧力センサ8がオフになったことの検知結果に基づいてモータ14が駆動された場合には、カム13が図2に示す位置に回動し、カム13の長径側外周面が押圧部9cに当接される。カム13の長径側外周面が押圧部9cに当接されることにより、保護体9はカム13に押されて図2に示す保護位置に移動する。保護体9が図2に示す保護位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bが音響レンズ7の表面及びプローブ本体2の下端縁2aより下側に突出する。
【0022】
超音波プローブ1の重心位置は、超音波振動子アセンブリ3が設けられている側に片寄っている。このため、超音波プローブ1が落下する場合、超音波プローブ1は超音波振動子アセンブリ3が下側となる向きに落下する。しかし、保護体9の当接部9bが図2に示すように音響レンズ7の表面及びプローブ本体2の下端縁2aより下側に突出する位置(保護位置)に位置するため、保護体9の当接部9bが落下面に衝突し、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止される。このため、超音波プローブ1が落下しても超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0023】
超音波プローブ1の落下距離が約1メートルであるとすれば、保護解除位置に位置する
保護体9を保護位置に移動させる場合には、圧力センサ8による検知後の約0.4秒以内に保護体9を保護位置に移動させることが必要である。このように、保護体9の移動速度を速めるためには保護体9を軽量化することが必要であり、本実施の形態で説明したように棒状部材によりD字形の保護体9を形成することにより、保護体9の軽量化を図ることができる。
【0024】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る超音波プローブについて、図4に基づいて説明する。なお、第2の実施の形態及び以下に説明する他の実施の形態において、第1の実施の形態で説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
第2の実施の形態の超音波プローブ1Aは、第1の実施の形態で説明した保護体9に代えて保護体20を用いたものであり、保護体20以外の構成要素は第1の実施の形態の超音波プローブ1と同じである。
【0026】
保護体20は、棒状部材を用いてU字形の形状に形成され、プローブ本体2の平行に対向する2面の外側面に取り付けられている。U字形に形成された保護体20は、平行に対向する一対の直線状の当接部20aと、当接部20aと一体に形成されて一対の当接部20aの一端側を連結する直線状の押圧部20bとにより形成されている。プローブ本体2の外周面における保護体20が取り付けられる面にはそれぞれ一対の保持部11が固定され、これらの保持部11により当接部20aがスライド可能に保持されている。保護体20は、当接部20aの先端を音響レンズ7の表面と同じ方向である下向きにして保持部11に保持されている。保持部11と押圧部20bとの間には、保護体20の押圧部20bをカム13の外周面に押圧する向きに付勢するスプリング12が設けられている。
【0027】
このような構成において、超音波診断中に超音波プローブ1が操作者の手から離れた場合、例えば、超音波プローブ1を診察台の上に置いた場合や超音波プローブ1が落下した場合には、圧力センサ8がオフになり、モータ14が駆動されてカム13が図4において実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に90度回転する。カム13が図4において二点鎖線で示す位置に回転することにより、保護体20がカム13により押され、保護体20は、一対の当接部20aの先端部が二点鎖線で示すように音響レンズ7の表面及びプローブ本体2の下端縁2aより下側に突出する位置(保護位置)に移動する。
【0028】
保護体20が保護位置に移動することにより、超音波プローブ1Aが落下した場合に保護体20の当接部20aが落下面に衝突し、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止される。このため、超音波プローブ1Aが落下しても超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0029】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る超音波プローブについて、図5に基づいて説明する。
【0030】
第3の実施の形態の超音波プローブ1Bは、第1の実施の形態で説明した保護体9に代えて保護体30を用いたものであり、保護体30以外の構成要素は第1の実施の形態の超音波プローブ1と同じである。
【0031】
保護体30は、板状部材により形成されている。保護体30には、直線状の一対の軸部31が固定され、一対の軸部31の先端部にはこれらの軸部31を連結する直線状の押圧部32がネジ止めされている。
【0032】
プローブ本体2の外周面における保護体30が取り付けられる面にはそれぞれ一対の保持部11が固定され、これらの保持部11により軸部31がスライド可能に保持されている。保護体30は、保護体30の下端側の縁部を音響レンズ7の表面と同じ方向である下向きにして保持部11に保持されている。保持部11と押圧部32との間には、押圧部32をカム13の外周面に押圧する向きに付勢するスプリング12が設けられている。
【0033】
このような構成において、超音波診断中に超音波プローブ1Bが操作者の手から離れた場合、例えば、超音波プローブ1を診察台の上に置いた場合や超音波プローブ1が落下した場合には、圧力センサ8がオフになり、モータ14が駆動されてカム13が図5において実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に90度回転する。カム13が図4において二点鎖線で示す位置に回転することにより、保護体30がカム13により押され、保護体30の下端側の縁部が二点鎖線で示すように音響レンズ7の表面及びプローブ本体2の下端縁2aより下側に突出する位置(保護位置)に移動する。
【0034】
保護体30が保護位置に移動することにより、超音波プローブ1Bが落下した場合に保護体30の下端側の縁部が落下面に衝突し、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止される。このため、超音波プローブ1Bが落下しても超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0035】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る超音波プローブについて、図6に基づいて説明する。
【0036】
第4の実施の形態は、超音波プローブに設けられて保護体40を保護解除位置から保護位置へ移動させる移動手段41について示したものである。なお、第4の実施の形態では、プローブ本体を省略し、移動手段41と直線状の保護体40についてのみ示している。
【0037】
保護体40は、太径の当接部40aと細径の軸部40bとにより形成されている。プローブ本体の外周面には保持部42が固定され、この保持部42に形成された貫通孔43に軸部40bがスライド可能に貫通されている。貫通孔43は軸部40bより大径であって当接部40aより小径に形成されている。当接部40aにおける保持部42に対向する端面と保持部42との間には、保護体40を保護位置に向けて下向きに付勢するスプリング44が設けられている。
【0038】
軸部40bには、円錐台形状のストッパ45が取り付けられている。このストッパ45は、プローブ本体に設けられた圧力センサ8の検知結果に基づき図示しないアクチュエータにより開閉される構造に形成されている。また、ストッパ45は、開いているストッパ45に対してこのストッパ45を閉じる方向に外側から外力が作用した場合、容易に閉じる構造に形成されている。図6(a)(c)はストッパ45が開いている状態を示し、図6(b)はストッパ45が閉じている状態を示している。図6(b)に示すようにストッパ45が閉じることにより、ストッパ45は軸部40bと共に貫通孔43内を通過可能となる。ストッパ45とストッパ45を開閉するアクチュエータとにより、移動手段41が構成されている。
【0039】
軸部40bは磁性体により形成されており、軸部40bの先端側にはこの軸部40bを吸着可能な電磁石46が配置されている。電磁石46は、図6(a)〜(c)において実線で示す位置と、図6(c)において二点鎖線で示す位置とに往復移動可能に設けられている。
【0040】
このような構成において、図6(a)は、保護体40が保持解除位置に位置する状態を
示している。ストッパ45は開いており、開いたストッパ45の大径側が保持部42における貫通孔43の周囲の面に当接されている。
【0041】
保護体40が図6(a)に示す保持解除位置に位置する場合に、超音波プローブが操作者の手から離れることにより圧力センサ8がオフになると、移動手段41を構成するアクチュエータが駆動され、ストッパ45が図6(b)に示すように閉じる。ストッパ45が図6(b)に示すように閉じると、ストッパ45は軸部40bと共に貫通孔43を通過可能となり、保護体40はスプリング44の付勢力により保護位置に向けて図6(b)に示す矢印a方向にスライドする。
【0042】
図6(c)は、保護体40が保護位置に移動した状態を示している。この保護位置とは、第1ないし第3の実施の形態で説明したように、保護体40の先端部が音響レンズ7の表面及びプローブ本体2の下端縁2aより下側に突出する位置である。保護体40が保護位置に移動することにより、超音波プローブが落下した場合に保護体40の当接部40aの先端が落下面に衝突し、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止される。このため、超音波プローブが落下しても超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0043】
図6(c)に示すように保護位置に位置する保護体40を図6(a)に示す保護解除位置に移動させる場合には、電磁石46に通電するとともに電磁石46を図6(c)において二点鎖線で示す位置に移動させ、電磁石46によって軸部40bを吸着する。電磁石46により軸部40bを吸着した後、電磁石46を軸部40bと共に図6(c)において実線で示す位置に移動させる。電磁石46を図6(c)において実線で示す位置に移動させる場合には、開いているストッパ45が貫通孔43の内周面に当接し、ストッパ45にはストッパ45を閉じる方向に外力が作用する。これにより、ストッパ45が閉じ、ストッパ45は軸部40bと共に移動し、保護体40は、図6(a)に示す保持解除位置に移動する。
【0044】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係る超音波プローブについて、図7及び図8に基づいて説明する。本実施の形態の超音波プローブ1Cは、プローブ本体50とプローブ本体50の先端側に取り付けられた音響窓材51とを備えている。音響窓材51は先端側部分が半楕円球形状に形成されている。音響窓材51は、超音波を透過する性質を有する材料であって、音響インピーダンスが人体に近い材料、例えば、ポリメチルペンテンポリマーにより形成されている。
【0045】
音響窓材51内には、液状の音響伝搬媒体52が収容されている。さらに、音響窓材51内には、音響伝搬媒体52中に浸漬された超音波振動子アセンブリ3が収容されている。超音波振動子アセンブリ3は、第1の実施の形態で説明したように、バッキング材5と複数の超音波振動子4と音響整合層6と音響レンズ7とを積層して形成されている。また、超音波振動子アセンブリ3は、支軸53を支点として矢印b方向に揺動可能に支持されている。
【0046】
この超音波プローブ1Cでは、超音波振動子アセンブリ3を支軸53の中心線周りに揺動させながら超音波振動子4から超音波を送受信し、超音波は音響伝搬媒体52と音響窓材51とを介して被検体との間で送受信される。音響窓材51は、超音波の減衰を抑えて超音波の伝搬を効率よく行うために薄く形成され、弾性変形しやすい。
【0047】
超音波プローブ1Cのプローブ本体50には、第1の実施の形態において説明した保護
体9と移動手段10とが取り付けられている。
【0048】
保護体9は、音響窓材51の外側に配置されている。保護体9は、超音波プローブ1Cが落下した場合に、音響窓材51が落下面に衝突して弾性変形しても、弾性変形した音響窓材51を介して超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突することを阻止するための部材である。
【0049】
移動手段10は、保護体9を図8に示す保護位置と、図7に示す保護解除位置とに移動させる機構である。保護体9が図8に示す保護位置に位置する場合は、保護体9の当接部9bが音響レンズ7の表面より下側に突出して位置する。一方、保護体9が図7に示す保護解除位置に位置する場合は、保護体9の当接部9bが超音波振動子アセンブリ3の音響レンズ7の表面よりも上側に位置している。
【0050】
このような構成において、操作者が超音波プローブ1Cを把持している場合には、グリップ部に設けられている圧力センサ8が操作者により握られ、圧力センサ8がオンになっている。圧力センサ8がオンの場合には、モータ14により駆動されたカム13が図7に示す位置で停止している。カム13が図7に示す位置で停止している場合には、保護体9が保護解除位置に位置する。保護体9が図7に示す保護解除位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bが超音波振動子アセンブリ3の音響レンズ7の表面よりも上側に位置している。このため、音響窓材51を被検体の体表面に当接させて行う超音波診断に際しては、当接部9bを被検体の体表面に接触させることなく超音波診断を行える。
【0051】
超音波診断中に超音波プローブ1Cが操作者の手から離れた場合、例えば、超音波プローブ1Cを診察台の上に置いた場合や超音波プローブ1Cが落下した場合には、圧力センサ8がオフになり、モータ14が駆動されてカム13が図8に示す位置に回動する。カム13が図8に示す位置に回動することにより、保護体9が図8に示す保護位置に移動する。保護体9が図8に示す保護位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bが音響レンズ7の表面より下側に突出する。
【0052】
このため、超音波プローブ1Cが落下し、音響窓材51が落下面に衝突して弾性変形した場合には、弾性変形した音響窓材51を介して超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突する前に、保護体9の当接部9bが落下面に衝突する。したがって、超音波プローブ1Cが落下しても超音波振動子アセンブリ3が弾性変形した音響窓材51を介して落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が音響窓材51を介して落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0053】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態に係る超音波プローブについて、図9に基づいて説明する。本実施の形態の超音波プローブ1Dは、第5の実施の形態において説明したプローブ本体50と音響窓材51とを備えており、第5の実施の形態では保護体9が音響窓材51の外側に設けられているのに対し、第6の実施の形態では保護体9が音響窓材51の内側に設けられている。また、移動手段10は、プローブ本体2内に収容されている。
【0054】
図9は、保護体9が保護位置に位置する場合を示している。保護位置に位置する保護体9は、保護体9の当接部9bが音響レンズ7の表面より下側に突出して位置する。一方、保護体9が図示しない保護解除位置に位置する場合は、保護体9の当接部9bが超音波振動子アセンブリ3の音響レンズ7の表面よりも上側に位置する。
【0055】
このような構成において、超音波診断中に超音波プローブ1Dが操作者の手から離れた場合、例えば、超音波プローブ1を診察台の上に置いた場合や超音波プローブ1が落下し
た場合には、圧力センサ8がオフになり、モータ14が駆動されてカム13が回転することにより保護体9が図9に示す保護位置に移動する。保護体9が図9に示す保護位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bが音響レンズ7の表面より下側に突出する。
【0056】
このため、超音波プローブ1Dが落下し、音響窓材51が落下面に衝突して弾性変形した場合、弾性変形した音響窓材51を介して超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突する前に、保護体9の当接部9bが弾性変形した音響窓材51を介して落下面に衝突する。したがって、超音波プローブ1Dが落下しても超音波振動子アセンブリ3が弾性変形した音響窓材51を介して落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が音響窓材51を介して落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0057】
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態に係る超音波プローブについて、図10に基づいて説明する。本実施の形態の超音波プローブ1Eは、第6の実施の形態において説明した保護体9における音響窓材51の内面に対向する部分である当接部9bに、ゴムなどで形成された弾性材54が取り付けられている。
【0058】
このような構成において、超音波診断中に超音波プローブ1Eが操作者の手から離れた場合、例えば、超音波プローブ1を診察台の上に置いた場合や超音波プローブ1が落下した場合には、圧力センサ8がオフになり、モータ14が駆動されてカム13が回転することにより保護体9が図10に示す保護位置に移動する。保護体9が図10に示す保護位置に位置する場合には、保護体9の当接部9bに取り付けられた弾性材54が音響レンズ7の表面より下側に突出する。
【0059】
このため、超音波プローブ1Eが落下し、音響窓材51が落下面に衝突して弾性変形した場合、弾性変形した音響窓材51を介して超音波振動子アセンブリ3が落下面に衝突する前に、保護体9の当接部9bに取り付けられた弾性材54が、弾性変形した音響窓材51を介して落下面に衝突する。したがって、超音波プローブ1Dが落下しても超音波振動子アセンブリ3が弾性変形した音響窓材51を介して落下面に衝突することが防止され、超音波振動子アセンブリ3が音響窓材51を介して落下面に衝突することが原因となる超音波振動子4の破損が防止される。
【0060】
しかも、超音波プローブ1Eの落下時には弾性変形した音響窓材51が当接部9bに取り付けられた弾性材54に衝突するため、落下時の衝撃による音響窓材51の破損を防止することができる。
【0061】
なお、図4及び図5に示す構造の保護体20を音響窓材51内に設けた場合には、直線状に形成された当接部20aの先端側にこのような弾性材54を取り付けることにより、超音波プローブの落下時における音響窓材51の破損を防止することができる。
【0062】
また、上述した各実施の形態においては、超音波プローブが操作者の手から離れたことを検知する検知手段として圧力センサ8を例に挙げて説明したが、検知手段として使用できるものは圧力センサ8に限定されない。他の検知手段として、例えば、超音波プローブが落下したことを検知する加速度センサを用いることができる。
【0063】
(第8の実施の形態)
本発明の第8の実施の形態に係る超音波診断装置について、図11に基づいて説明する。図11は、超音波診断装置60の概略構成を示すブロック図である。
【0064】
この超音波診断装置60は、超音波プローブ61と、送受信部62と、信号処理部63と、DSC(Digital Scan Converter)64と、画像生成部65と、表示装置66と、制御部67とを備えている。この超音波診断装置60においては超音波プローブ61に特徴があり、それ以外の構成要素である送受信部62などは公知のものが用いられている。
【0065】
超音波プローブ61としては、第1乃至第7の実施の形態に係る超音波プローブ1、1A、1B、1C、1D、1Eが用いられる。この超音波プローブ61には、保護体9と、モータ等のアクチュエータを含む移動手段10と、圧力センサや加速度センサ等の検知手段8とが設けられている。
【0066】
送受信部62は送信部と受信部とからなり、超音波プローブ61に電気信号を供給して超音波を発生させるとともに、超音波プローブ61が受信したエコー信号を受信する。
【0067】
信号処理部63は、公知のBモード処理回路、ドプラ処理回路及びカラーモード処理回路を備えている。送受信部62から出力されたデータはいずれかの処理回路にて所定の処理を施される。Bモード処理回路はエコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。ドプラ処理回路はドプラ偏移周波数成分を取り出し、更にFFT(Fast Fourier Transform)処理等を施して血流情報を有するデータを生成する。カラーモード処理回路は動いている血流情報の映像化を行い、カラー超音波ラスタデータを生成する。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。
【0068】
DSC64は、直交座標系で表される画像を得るために、超音波ラスタデータを直交座標で表されるデータに変換する(スキャンコンバージョン処理)。例えば、Bモード処理回路から出力されたデータに対してスキャンコンバージョン処理が施されると、被検体の組織形状を2次元情報として表す断層像データが生成される。
【0069】
画像生成部65は各種画像処理を行う。例えば、断層像データからボクセルデータを生成し、更に、ボリュームレンダリング処理を行って3次元画像データなどを生成する。
【0070】
表示装置66は液晶ディスプレイなどのモニタからなり、断層像や3次元画像などが表示される。
【0071】
制御部67はCPUからなり、記憶部(図示せず)に記憶されている制御プログラムや画像生成プログラムなどを実行することにより各部の制御を行う。記憶部はROMなどのメモリやハードディスクなどからなり、画像データ、各種設定条件及びプログラムなどが記憶されている。
【0072】
その他、ジョイスティックなどのポインティングデバイス、スイッチ又はTCS(Touch Command Screen)などの操作部(図示しない)が備えられ、超音波の送受信条件などに関する各種設定が操作者により入力される。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B、1C、1D、1E 超音波プローブ
2 プローブ本体
3 超音波振動子アセンブリ
8 検知手段
9 保護体
10 移動手段
20 保護体
40 保護体
41 移動手段
51 音響窓材
52 音響伝搬媒体
54 弾性材
61 超音波プローブ
63 送受信部
65 画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ本体に取り付けられ、液状の音響伝搬媒体を収容する音響窓材と、
超音波振動子を含み、前記音響伝搬媒体中に浸漬されて揺動可能に前記音響窓材内に収容される超音波振動子アセンブリと、
前記プローブ本体が操作者の手から離れたことを検知する検知手段と、
前記音響窓材の内側に設けられ、前記プローブ本体が落下した場合に前記超音波振動子アセンブリが落下面に衝突することを阻止する保護位置に移動可能な保護体と、
前記保護体の前記音響窓材の内面に対向する部分に設けられた弾性材と、
前記検知手段の検知結果に基づき、前記保護体を前記保護位置に移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の超音波プローブと、
前記超音波プローブにより被検体に対して超音波を送受信する送受信部と、
前記送受信部が受信した前記被検体からの反射波に基づいて超音波画像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−179377(P2012−179377A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105399(P2012−105399)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【分割の表示】特願2007−141927(P2007−141927)の分割
【原出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】