説明

超音波ミニチュアプローブ

【課題】処置具の突出方向を容易に認識することができる超音波ミニチュアプローブを提供する。
【解決手段】超音波ミニチュアプローブ10は、内視鏡2のチャンネル3に挿通可能な先端部11と、先端部11で開口する鉗子口12と、鉗子口12から突出する処置具14を超音波観察可能な超音波観察部13と、先端部11の外周に配置され、内視鏡2から光学観察可能な視認部15とを有する。そして、この視認部15は鉗子口12から突出する処置具14の突出方向を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波ミニチュアプローブに関し、特に、先端部に内視鏡から光学観察可能な視認部を備えた超音波ミニチュアプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベックス型超音波内視鏡は、内視鏡先端にコンベックス振動子、針等の処置具を挿通させる鉗子口、光学系を有しており、コンベックス振動子、鉗子口及び光学系のそれぞれの配置が一義的に決まっている。そのため、コンベックス型超音波内視鏡では、穿刺時に鉗子口に挿通される針の突出方向は、内視鏡光学画像及び超音波画像ともに特定の方向となる。
【0003】
ところで、近年では、通常内視鏡の鉗子チャンネル等に挿通して使用される超音波ミニチュアプローブが提案されている。
【0004】
例えば、特開平7−255725号公報には、振動子の位置を内視鏡光学画像で視認できるように、振動子を内蔵しているチューブの表面付近に挿入状態を視認可能な印を設けた超音波ミニチュアプローブが開示されている。
【0005】
また、近年では、超音波ミニチュアプローブに針等の処置具を組み合わせた穿刺型の超音波プローブが報告されている。この穿刺型の超音波ミニチュアプローブは、内視鏡光学画像を通常内視鏡で得ているため、コンベックス型超音波内視鏡と同様に処置を行うと、内視鏡光学画像における病変部(関心領域)と処置具との方向にずれが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−255725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
穿刺型の超音波ミニチュアプローブでは、内視鏡光学画像で微小な病変部を確認した後、処置具で病変部を処置するため、内視鏡光学画像における病変部と処置具との位置関係が重要となる。
【0008】
しかしながら、特開平7−255725号公報に開示された超音波ミニチュアプローブでは、振動子の位置を内視鏡光学画像で視認することはできるが、処置具の突出方向を認識することはできなかった。
【0009】
そこで、本発明は、処置具の突出方向を容易に認識することができる超音波ミニチュアプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、内視鏡のチャンネルに挿通可能な先端部と、前記先端部で開口する鉗子口と、前記鉗子口から突出する処置具を超音波観察可能な超音波観察部と、前記先端部の外周に配置され、前記内視鏡から光学観察可能な視認部と、を有し、前記視認部は前記鉗子口から突出する前記処置具の突出方向を示すことを特徴とする超音波ミニチュアプローブを提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の超音波ミニチュアプローブによれば、処置具の突出方向を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る内視鏡システムの構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す斜視図である。
【図3】超音波ミニチュアプローブを体内で突出させた状況を説明するための図である。
【図4】超音波ミニチュアプローブを体内で突出させた状況を説明するための図である。
【図5】視認部の他の構成例を示す図である。
【図6】処置具14が受ける反力について説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す斜視図である。
【図8】第2の実施の形態の変形例に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す斜視図である。
【図9】第2の実施の形態の変形例に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
【0014】
図1は、第1の実施の形態に係る内視鏡システムの構成を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、内視鏡システム1は、内視鏡2と、穿刺型の超音波ミニチュアプローブ10と有して構成されている。
【0016】
内視鏡2には、超音波ミニチュアプローブ10を挿通可能なチャンネル3が設けられている。また、内視鏡2の先端部には、対物レンズ4と、照明レンズ5及び6と、ノズル7とが設けられている。
【0017】
対物レンズ4の基端側には、この対物レンズ4の結像位置に図示しないCCD等の撮像装置が配置される。この撮像装置は、対物レンズ4で結像された被写体の光学像を撮像して得た撮像信号を図示しないビデオプロセッサに出力する。ビデオプロセッサは、撮像信号に所定の信号処理を施して得られた映像信号を図示しないモニタに出力し、このモニタに内視鏡光学画像を表示させる。
【0018】
照明レンズ5及び6の基端側には、図示しない光源装置からの照明光を転送する図示しないライトガイドの出射端側が配設される。照明レンズ5及び6は、ライトガイドからの照明光により被写体を照明する。
【0019】
ノズル7には、図示しない送気送水ポンプが接続されており、この送気送水ポンプから気体または液体が供給される。ノズル7は、供給された気体または液体を対物レンズ4に噴射し、対物レンズ4の表面を洗浄する。
【0020】
図2は、第1の実施の形態に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す斜視図である。
【0021】
図2に示すように、超音波ミニチュアプローブ10は、内視鏡2のチャンネル3に挿通可能な先端部11を有する。この先端部11には、先端部11で開口する鉗子口12と、超音波観察部13とが設けられている。
【0022】
鉗子口12からは、体内の病変部に所望の処置を行うための針等の処置具14が突出する。
【0023】
超音波観察部13は、コンベックス走査方式の振動子であり、挿入方向前方から上方に向けて超音波の送信を行うとともに、鉗子口12から突出する処置具14あるいは生体組織で反射された超音波を受信する。なお、超音波観察部13は、ラジアル走査方式含む2次元走査の振動子であってもよい。
【0024】
この超音波観察部13で受信された受信信号は、図示しない超音波観測装置に出力される。超音波観測装置は、受信信号に応じた超音波画像を生成し、図示しないモニタに表示させる。これにより、術者は、鉗子口12から突出する処置具14の位置あるいは体内の病変部の位置等を超音波観察可能となる。
【0025】
また、先端部11の外周には、内視鏡2から光学観察可能な視認部15及び16が配置される。本実施の形態では、鉗子口12が設けられている先端部11の上側に、1本の線からなる視認部15が配置され、超音波観察部13が設けられている先端部11の下側に、2本の線からなる視認部16が配置される。なお、図2において、視認部16の片方の線は、図2の先端部11の背面側に配置されているため点線で示しているが、後述する図4に示すように、視認部16は、2本の線である。これらの視認部15及び16は、処置具14の突出方向を示すようになっている。
【0026】
図3及び図4は、超音波ミニチュアプローブを体内で突出させた状況を説明するための図である。
【0027】
図3及び図4は、内視鏡2によって撮像された内視鏡光学画像20a及び20bを示している。内視鏡光学画像20aは、体内の2時方向に病変部21が描出されている。また、内視鏡光学画像20bは、体内の7時方向に病変部22が描出されている。このように、病変部21及び22の場所は、内視鏡光学画像20a及び20b上の様々な位置に描出される。そのため、術者は、処置具14の突出方向を容易に認識する必要がある。
【0028】
また、内視鏡光学画像20a及び20bは、遠近感が強いため、超音波ミニチュアプローブ10の先端部11の形状を認識するのが難しい。
【0029】
図3に示す内視鏡光学画像20aには、病変部21及び先端部11の上側に設けられた視認部15が描出されている。術者は、視認部15を視認することで、先端部11の上側に設けられた鉗子口12から突出する処置具14を視認することができる。
【0030】
一方、図4に示す内視鏡光学画像20bには、病変部22及び先端部11の下側に設けられた視認部16が描出されている。術者は、視認部16を視認することで、図6の背面側に処置具14が突出することを認識する。
【0031】
しかしながら、図4の背面側に処置具14が突出する場合、処置具14が先端部11の陰に隠れてしまい、術者は、処置具14を内視鏡光学画像20bで認識するのが難しい。この場合、術者は、内視鏡光学画像20bを観察するとともに、超音波観察部13により得られる超音波画像から処置具14の位置を観察し、病変部22の処置を行う。
【0032】
このように、術者は、先端部11に設けられて視認部15または16を内視鏡光学画像で視認し、処置具14の突出方向を認識することで、病変部21または22に所望の処置を行うことができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、先端部11の上側に1本の線からなる視認部15が配置され、先端部11の下側に2本の線からなる視認部16が配置されているが、これに限定されることなく、例えば、点線または波線等であってもよい。また、視認部15及び16に互いに異なる色を付けてもよい。さらに、視認部15及び16のいずれか一方だけを先端部11に設けるようにしてもよい。
【0034】
図5は、視認部の他の構成例を示す図である。
【0035】
図5の内視鏡光学画像20cに示すように、先端部11の外周には、先端部11の基端側になるにつれて太くなる三角形状の視認部17が設けられている。
【0036】
例えば、1本の線からなる視認部15だけが先端部11に設けられている場合、術者は、先端部11が回動した際に、内視鏡光学画像で視認部15を視認するのが難しくなる。これに対し、三角形状の視認部17は、1本線の視認部15に比べ形状が太くなるため、術者は、先端部11が回動した際にも、内視鏡光学画像で視認部17を視認しやすくなる。
【0037】
以上のように、超音波ミニチュアプローブ10は、先端部11の外周に処置具14の突出方向を示す視認部15及び16を設けるようにした。術者は、内視鏡2の内視鏡光学画像により視認部15及び16を視認することにより、処置具14の突出方向を容易に認識することができる。
【0038】
よって、本実施の形態の超音波ミニチュアプローブ10によれば、処置具14の突出方向を容易に認識することができる。
(変形例)
【0039】
第1の実施の形態の変形例について説明する。
【0040】
上述したように、図4の内視鏡光学画像20bの場合、処置具14を内視鏡光学画像20bで視認することが難しいため、術者は、内視鏡光学画像20bを観察するとともに、超音波観察部13により得られる超音波画像から処置具14の位置を観察し、病変部22の処置を行うにしている。
【0041】
しかしながら、針等の処置具14の幅と超音波観察部13の幅とが略同一の場合、超音波画像で処置具14の位置変化を観察することが難しくなる。本実施の形態では、先端部11の外径は約2.5mmとなっており、先端部11に搭載される超音波観察部13の幅は約1mmとなっている。処置具14の幅が約1mmの場合、処置具14が超音波を遮っていまい、超音波画像で処置具14の位置変化を認識しにくくなる。
【0042】
ここで、スライス厚は、以下の式(1)により求めることができる。
【0043】
スライス厚=1.22×波長λ×距離×超音波観察部13の幅・・・式(1)
【0044】
波長λは、周波数を15MHz、水の音速を1500m/sとすると、0.1mmとなる。また、距離は、一般的な超音波ミニチュアプローブのペネトレーション深度の半分を穿刺位置とすると、10mmとなる。さらに、超音波観察部13の幅は、上述したように約1mmとなっている。
【0045】
これらの値を式(1)に代入することにより、本変形例では、スライス厚Wは、1.2mmとなる。
【0046】
このように、本変形例では、視認部16の2本の線の間隔をスライス厚Wと同じにしている。これにより、術者は、処置具14を内視鏡光学画像20b及び超音波画像で視認することが難しい場合でも、視認部16の2本の線の間隔により、処置具14の幅を内視鏡光学画像20bから推定することができる。この結果、術者は、スライス厚Wの幅に病変部22が存在していれば、処置具14を用いて処置を行うことができる。
(第2の実施の形態)
【0047】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0048】
図6は、処置具14が受ける反力について説明するための図であり、図7は、第2の実施の形態に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す斜視図である。
【0049】
図6に示す超音波ミニチュアプローブ10は、上述したように、図4の内視鏡光学画像20bの場合、処置具14を内視鏡光学画像20bで視認することが難しいため、術者は、内視鏡光学画像20bを観察するとともに、超音波観察部13により得られる超音波画像から処置具14の位置を観察し、病変部22の処置を行う構成になっている。この超音波ミニチュアプローブ10は、内視鏡2のチャンネル3に挿通され使用されるため、外径が細く、約2.5mm未満いという外見上の制約があった。また、超音波ミニチュアプローブ10の先端部11は、穿孔等を防止するために、剛性が低くなっている。
【0050】
そのため、超音波ミニチュアプローブ10では、例えば、針で病変部21を穿刺する等、処置具14で病変部21を処置する際に、処置具14が受ける病変部21からの反発力に負けてしまい、先端部11が撓むことがある。例えば、処置時の処置具14の反力は、図6に示すように、ハッチング矢印31の方向となり、挿入軸と異なる方向となる。この場合、先端部11が撓んでしまい、術者は、処置具14を用いて病変部21への処置を行うことが難しくなる。
【0051】
そこで、図7に示すように、本実施の形態の超音波ミニチュアプローブ10aは、先端部11の撓みを抑制するために、先端部11の内部にステンレス等の硬質部材からなる補強部材32を設けている。本実施の形態では、図7に向かって上側に鉗子口12が設けられているため、補強部材32を設けるスペースが少なくなっている。そのため、超音波観察部13が設けられている図7に向かって下側に補強部材32を設けている。
【0052】
これにより、処置時の処置具14の合成反力は、図7に示すように、ハッチング矢印33の方向となり、挿入軸と同じ方向となる。なお、補強部材32は、1つに限定されることなく、複数の補強部材を先端部11の内部に設けるようにしてもよい。
【0053】
このように、本実施の形態の超音波ミニチュアプローブ10aは、先端部11に補強部材32を設けることにより、処置具14が受ける反力を挿入軸方向に近づけることができる。そのため、超音波ミニチュアプローブ10aは、処置具14による処置時に先端部11の撓みを抑制することができる。この結果、術者は、処置具14を用いて病変部21への処置を容易に行うことができる。
【0054】
なお、補強部材32を先端部11の外周、例えば、先端部11の下側の表面に設けるようにしてもよい。また、補強部材32を先端部11の内部に設ける場合は、先端部11を透明な部材で構成するようにしてもよい。このような場合、補強部材32を視認部として兼用することができる。即ち、図7において、視認部16を設けずに、視認部16の代わりに補強部材32を視認部として用いることができる。
(変形例)
【0055】
第2の実施の形態の変形例について説明する。
【0056】
図8は、第2の実施の形態の変形例に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す斜視図であり、図9は、第2の実施の形態の変形例に係る超音波ミニチュアプローブの構成を示す断面図である。なお、図8及び図9において、図7と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
病変部21を処置する場合、先端部11の先端面を病変部21に接触させて処置を行う場合がある。このとき、鉗子口12から処置具14を突出させた際に先端部11の先端面が平面の場合、先端面が病変部21から離れてしまい、先端部11が曲がってしまう虞がある。
【0058】
そこで、図8及び図9に示すように、本変形例の超音波ミニチュアプローブ10bは、先端部11の先端面に斜面41を設けている。先端部11の先端面に斜面41を設けることにより、先端部11の先端面と病変部21との接触面積が増加する。
【0059】
そのため、超音波ミニチュアプローブ10bは、先端部11の先端面を病変部21に接触させた状態において鉗子口12から処置具14を突出しても、先端部11の先端面が病変部21から離れることがない。この結果、術者は、処置具14を用いて病変部への処置を容易に行うことができる。
【0060】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…内視鏡システム、2…内視鏡、3…チャンネル、4…対物レンズ、5,6…照明レンズ、7…ノズル、10,10a,10b…超音波ミニチュアプローブ、11…先端部、12…鉗子口、13…超音波観察部、14…処置具、15,16,17…視認部、20a,20b,20c…内視鏡光学画像、21,22…病変部、31…ハッチング矢印、32…補強部材、33…ハッチング矢印、41…斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡のチャンネルに挿通可能な先端部と、
前記先端部で開口する鉗子口と、
前記鉗子口から突出する処置具を超音波観察可能な超音波観察部と、
前記先端部の外周に配置され、前記内視鏡から光学観察可能な視認部と、
を有し、
前記視認部は前記鉗子口から突出する前記処置具の突出方向を示すことを特徴とする超音波ミニチュアプローブ。
【請求項2】
前記視認部は、前記先端部の挿入方向と並行な少なくとも1本の線であることを特徴とする請求項1に記載の超音波ミニチュアプローブ。
【請求項3】
前記先端部の撓みを抑制する補強部材を前記先端部の内部に含むことを特徴とする請求項1に記載の超音波ミニチュアプローブ。
【請求項4】
前記補強部材は、さらに前記視認部として兼用することを特徴とする請求項3に記載の超音波ミニチュアプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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