超音波モータ用ロータ及び超音波モータ
【課題】鳴きの発生を容易に抑制することができ、かつ製造が容易な超音波モータ用ロータ及びそれを備える超音波モータを提供する。
【解決手段】超音波モータ用ロータ50は、支持部材53と、弾性体34と接触する板状の接触部材54とを備えている。支持部材53は、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとを有する。支持部材本体53aは、弾性体34と対向する対向面53a1を有する。第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、支持部材本体53aの対向面53a1から弾性体34側に延びている。接触部材54は、第1の突起部53bと第2の突起部53cとにより、支持部材本体53aの対向面53a1から離間して支持されている。
【解決手段】超音波モータ用ロータ50は、支持部材53と、弾性体34と接触する板状の接触部材54とを備えている。支持部材53は、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとを有する。支持部材本体53aは、弾性体34と対向する対向面53a1を有する。第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、支持部材本体53aの対向面53a1から弾性体34側に延びている。接触部材54は、第1の突起部53bと第2の突起部53cとにより、支持部材本体53aの対向面53a1から離間して支持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータ用ロータに関し、詳細には、超音波振動を発生させるステータの上に配置される超音波モータ用ロータ及びそれを備える超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1や特許文献2などにおいて、圧電効果を利用した超音波モータが提案されている。超音波モータは、小型化が可能であり、高回転速度が得やすく、かつ、駆動音を小さくし得るアクチュエータであるため、カメラ用レンズなどのアクチュエータとして、広く利用されている。
【0003】
図13は、特許文献1に記載の超音波モータの斜視図である。図14は、特許文献1に記載の超音波モータのステータとロータとの接触部を拡大した断面図である。図13に示すように、超音波モータ100は、ステータ101と、ロータ102とを備えている。ステータ101は、弾性体101aと、弾性体101aの裏面に貼付されている圧電体101bと弾性支持部102cとを備えている。ロータ102は、弾性体101aの上に配置されている。ロータ102は弾性支持部102cにより軸方向の弾性体101a側に付勢されている。ロータ102は、ロータ母材102aと、スライダ材102bと弾性支持部102cとを備えている。ロータ102は弾性支持部102cにより軸方向の弾性体101a側に付勢されている。図14に示すように、スライダ材102bは、横断面形状が台形である円板状に形成されており、下底面全体がロータ母材102aに貼付されている。そして、スライダ材102bの上底面は、ステータ101の弾性体101aに接触している。
【0004】
超音波モータ100では、圧電体101bが電圧印加され、圧電体101bが屈曲振動すると、弾性体101aのロータ102側の表面に、進行性振動波が発生する。このため、進行性振動波により波うつ弾性体101aの表面と、スライダ材102bの表面との間に発生する摩擦力により、ロータ102が移動される。その結果、ロータ102がステータ101に対して回転する。
【0005】
図15は、下記の特許文献3に記載の棒状超音波モータにおけるロータの模式的断面図である。図15に示すように、ロータ200は、ロータ本環201と、接触バネ部202とを備えている。接触バネ部202は、ロータ本環201に接続されている基部202aと、基部202aの先端に接続されているフランジ部202bと、フランジ部202bの先端に設けられており、ステータと接触する接触突起部202cとを有する。ロータ200では、接触バネ部202を構成する部材の肉厚が、接触突起部202cから離れるに従って厚くされており、接触バネ部202の固有振動モードの全てのモードの固有振動数が、駆動周波数の2倍よりも大きくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−74182号公報
【特許文献2】特開2002−58262号公報
【特許文献3】特開平5−211783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、超音波モータ100では、弾性体101aの表面と、スライダ材102bの表面との間に発生する摩擦力により、ロータ102が駆動される。このため、超音波モータ100の駆動時における弾性体101aとスライダ材102bとの接触により駆動音が発生する。この駆動音の周波数と、ロータ102の共振周波数とが一致すると、大きな駆動音、すなわち、「鳴き」が生じることとなる。従って、超音波モータ100では、ロータ102の共振周波数が駆動音の周波数と一致しないように、ロータ102の弾性支持部102c及びスライダ材102bなどを設計する必要がある。
【0008】
しかしながら、超音波モータ100では、弾性支持部102cがロータ102bと一体に形成されるため、ロータ102の構成が複雑になる傾向があった。また、スライダ材102bの下底面全体がロータ母材102aに貼付されているため、スライダ材102bによって共振周波数を調節することが困難であった。さらに、スライダ材102bの共振周波数の調整可能な範囲も小さかった。従って、超音波モータ100では、簡単な構成で鳴きの発生を十分に抑制することが困難であった。
【0009】
また、上記特許文献3に記載のロータでは、接触バネ部202が一体に形成されているため、接触バネ部202の作製が困難であるばかりか、共振周波数の調製が困難であるという問題もあった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロータが振動子との接触平面のうねりに追従しやすく、高いモータ特性を有し、鳴きの発生を簡単な構成で容易に抑制することができ、かつ、製造が容易な超音波モータ用ロータ及びそれを備える超音波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超音波モータ用ロータは、振動素子と、振動素子に取り付けられた弾性体とを有するステータを備える超音波モータの弾性体に接触するように配置される超音波モータ用ロータである。本発明に係る超音波モータ用ロータは、支持部材と、弾性体と接触する板状の接触部材とを備えている。支持部材は、支持部材本体と、第1及び第2の突起部とを有する。支持部材本体は、弾性体と対向する対向面を有する。第1及び第2の突起部のそれぞれは、支持部材本体の対向面から弾性体側に延びている。接触部材は、第1の突起部と第2の突起部とにより、支持部材本体の対向面から離間して支持されている。
【0012】
本発明に係る超音波モータ用ロータのある特定の局面において、支持部材本体は筒状であり、支持部材本体の対向面は、支持部材本体の端面により構成されており、第2の突起部は、第1の突起部に対して支持部材本体の半径方向外側に位置している。
【0013】
本発明に係る超音波モータ用ロータの他の特定の局面において、接触部材は、矩形状に形成されており、接触部材は、支持部材本体の周方向に沿って複数配置されている。この構成によれば、接触部材の作製が容易となり、従って、超音波モータ用ロータの製造が容易となる。
【0014】
本発明に係る超音波モータ用ロータの別の特定の局面において、接触部材は、接触部材本体と、接触部材本体から突起する突起部とを有しており、接触部材は、突起部において弾性体に接触する。
【0015】
本発明に係る超音波モータ用ロータのさらに他の特定の局面において、突起部は、接触部材本体の中央部に位置している。この構成によれば、突起部がステータ側に押圧された際に、ステータと突起部との接触位置が変化しにくい。従って、発生する駆動トルクが変動することを効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明に係る超音波モータは、上記本発明に係る超音波モータ用ロータを備えている。
【0017】
本発明に係る超音波モータのある特定の局面において、振動素子は、圧電振動素子である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、弾性体と接触する接触部材は、板状に形成されており、第1の突起部と第2の突起部とにより、支持部材本体の対向面から離間して支持されているため、例えば、接触部材の厚さを変更したり、第1の突起部や第2の突起部の幅を調節したりすることにより、接触部材の共振周波数を容易に調節することができる。よって、鳴きの発生を簡単な構成で容易に抑制することができる。また、接触部材の共振周波数の調整可能な範囲が大きい。従って、駆動音の小さな超音波モータを容易に実現することができる。
【0019】
また、本発明では、弾性体と接触する接触部材が支持部材とは別体に形成されているため、駆動音の小さな超音波モータ用ロータを容易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る超音波モータの略図的断面図である。
【図2】ロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図3】ロータの略図的背面図である。
【図4】接触部材の共振周波数の調整を説明するための略図的断面図である。
【図5】接触部材の共振周波数の調整を説明するための略図的断面図である。
【図6】第2の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図7】第3の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図8】第4の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図9】第5の実施形態におけるロータの略図的背面図である。
【図10】第6の実施形態におけるロータの略図的背面図である。
【図11】第7の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図12】変形例におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図13】特許文献1に記載の超音波モータの斜視図である。
【図14】特許文献1に記載の超音波モータのステータとロータとの接触部を拡大した断面図である。
【図15】特許文献3に記載の棒状超音波モータにおけるロータの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波モータの略図的断面図である。図1に示すように、超音波モータ1は、ホルダ10と、ステータ30と、ロータ50とを備えている。ホルダ10は、円筒部11と、第1及び第2のフランジ部12,13とを備えている。第1のフランジ部12は、円筒部11の一方側の端部から径方向外側に向かって延びている。一方、第2のフランジ部13は、円筒部11の他方側の端部から径方向外側に向かって延びている。第1及び第2のフランジ部12,13の少なくとも一方は、円筒部11に対して着脱可能であってもよい。第1及び第2のフランジ部12,13の少なくとも一方を円筒部11に対して着脱可能とすることにより、ステータ30及びロータ50の組み付けが容易となる。
【0023】
ステータ30は、円筒状に形成されており、円筒部11の外側に配置されている。円筒部11とステータ30との間には、クリアランスが形成されている。ステータ30は、円環状の付勢バネ31と、円筒状の支持部材32と、円筒状の圧電振動素子33と、円筒状の弾性体34とを備えている。支持部材32は、第1のフランジ部12に固定されている。支持部材32と第1のフランジ部12との間には、付勢バネ31が配置されている。この付勢バネ31によって支持部材32並びにその上に形成されている圧電振動素子33及び弾性体34がロータ50側に付勢されている。
【0024】
支持部材32の上には、圧電振動素子33が取り付けられている。図示は省略するが、圧電振動素子33は、厚み方向に分極された円筒状の圧電体と、圧電体の一方の端面に設けられた第1の電極と、圧電体の他方の端面に設けられた第2の電極とを備えている。
【0025】
圧電体は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックなどの適宜の圧電材料により形成することができる。第1及び第2の電極は、例えば、Al、Cu、Ag、Au、Ptなどの金属やこれらの金属のうちの1種以上を含む合金により形成することができる。
【0026】
圧電振動素子33の上には、弾性体34が取り付けられている。弾性体34は、圧電振動素子33が駆動されることにより、表面に進行性振動波が発生する程度の弾性を有する部材である限りにおいて特に限定されない。弾性体34は、例えば、金属、リン青銅などの合金、セラミック、シリコン材料または合成樹脂などにより形成することができる。なお、大きな進行性振動波が生じやすくなるように、弾性体34のロータ50側の表面34aには、弾性体34の半径方向に延びる複数の溝が、周方向に沿って間隔をおいて形成されていてもよい。
【0027】
ステータ30の上部において、円筒部11の外側には、ロータ50が配置されている。ロータ50と、円筒部11との間には、クリアランスが形成されている。ロータ50は、支持部材53と、接触部材54と、緩衝部材52と、回転板51とを備えている。回転板51は、ベアリング14を介して第2のフランジ部13に取り付けられている。このため、ロータ50は、ホルダ10と、ホルダ10に固定されているステータ30とに対して円筒部11の中心軸を中心として回転可能である。
【0028】
回転板51の材質は特に限定されないが、回転板51は、例えば、AlやFeなどの金属、Al合金、ステンレスなどの合金またはセラミックなどにより形成することができる。
【0029】
回転板51には、ゴムなどの弾性体等により構成される緩衝部材52を介して支持部材53が取り付けられている。支持部材53は、接触部材54を支持するための部材である。図2に示すように、支持部材53は、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとを備えている。
【0030】
図1に示すように、支持部材本体53aは、円筒状に形成されている。支持部材本体53aのステータ30とは反対側の端部は、緩衝部材52を介して回転板51に接続されている。支持部材本体53aのステータ30側の端面53a1は、ステータ30の弾性体34と対向する対向面を構成している。なお、本発明において、支持部材本体は、筒状であればよく、円筒状でなくてもよい。すなわち、支持部材本体は、例えば、軸方向に貫通する貫通孔を有する多角柱状などであってもよい。
【0031】
図2に示すように、第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、支持部材本体53aの端面53a1から弾性体34側に延びている。第1及び第2の突起部53b、53cは、支持部材本体53aの径方向に沿って配列されている。より具体的には、第1の突起部53bは、筒状に形成されている。そして、第1の突起部53bは、端面53a1の内周側縁部から弾性体34側に垂直に延びている。第2の突起部53cも、第1の突起部53bと同様に筒状に形成されている。第2の突起部53cの内径は、第1の突起部53bの外径よりも大きい。第2の突起部53cは、端面53a1の外周側縁部から弾性体34側に垂直に延びている。第1の突起部53bと第2の突起部53cとの間には、円環状の凹部53dが形成されている。
【0032】
なお、本発明において、第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、端面53a1から弾性体34側に延びていればよく、第1及び第2の突起部53b、53cの延びる方向と端面53a1とは垂直でなくてもよい。例えば、第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、端面53a1から弾性体34側に斜めに延びていてもよい。
【0033】
支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとの材質は、特に限定されず、例えば、AlやFeなどの金属、Al合金、ステンレスなどの合金またはセラミックなどにより支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとを形成することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとは、一体に形成されている例について説明する。但し、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとは、別体に形成されていてもよい。
【0035】
接触部材54は、中央に同心円状の貫通孔が形成されている円板状に形成されている。接触部材54は、第1及び第2の突起部53b、53cにより、支持部材本体53aの端面53a1から離間して支持されている。本実施形態では、接触部材54は、第1の突起部53b先端部と第2の突起部53cの先端部とに取り付けられている。具体的には、図2に示すように、第1の突起部53bの先端部の径方向外側端部には、切欠き部53b1が形成されている。この切欠き部53b1により接触部材54の径方向内側縁部が支持されている。一方、第2の突起部53cの先端部の径方向内側端部には、切欠き部53c1が形成されている。この切欠き部53c1により接触部材54の径方向外側縁部が支持されている。
【0036】
接触部材54は、接触部材本体54aと、突起部54bとを備えている。図3に示すように、本実施形態では、突起部54bは、接触部材本体54aの全周にわたって円環状に形成されている。突起部54bは、接触部材本体54aの径方向略中央部に設けられている。図1に示すように、突起部54bは、接触部材本体54aから弾性体34側に突起している。接触部材54は、この突起部54bにおいて、弾性体34に接触している。
【0037】
接触部材54の材質は、特に限定されず、例えば、AlやFeなどの金属、Al合金、ステンレスなどの合金またはセラミックなどにより接触部材54を形成することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、接触部材本体54aと突起部54bとは、一枚の板状部材をプレスすることにより形成されている。但し、接触部材本体54aと突起部54bとは別体に形成されていてもよい。この場合、例えば、突起部54bのみを耐摩耗性に優れた材料、タングステン、サファイヤ、セラミックスなどで形成することができる。このため、弾性の優れている材料からなる接触部材本体54aと組み合わせることによって、突起部54bの脆性を小さくし、材料価格を低下させ、さらには、切削等の難しい加工を不要とすることができる。
【0039】
次に、超音波モータ1の動作について説明する。図1に示す圧電振動素子33に電圧が印加されると、圧電振動素子33が屈曲振動する。これにより、弾性体34のロータ50側の表面に、周方向に沿って進行する進行性振動波が発生する。このため、進行性振動波により波うつ弾性体34のロータ50側の表面と、突起部54bの表面との間に発生する摩擦力により、ロータ50が駆動される。その結果、ロータ50がステータ30に対して回転する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、接触部材54は、板状に形成されており、第1及び第2の突起部53b、53cによって、支持部材本体53aの端面53a1から離間して支持されている。このため、例えば、接触部材54の第1及び第2の突起部53b、53cにより支持されている部分相互間の距離を調節することにより、接触部材54の共振周波数を容易に調整することができる。すなわち、第1及び第2の突起部53b、53cに形成されている切欠き部53b1,53c1の径方向における寸法を調節することにより、接触部材54の共振周波数を容易に調整することができる。具体的には、例えば、図4に示すように、切欠き部53b1,53c1の径方向における寸法を大きくし、接触部材54の第1及び第2の突起部53b、53cにより支持されている部分相互間の距離Lを短くすることにより、共振周波数を高くすることができる。
【0041】
さらに、接触部材54の形状に応じた形状に切り欠き部53b1,53c1を形成することで、接触部材54の位置を決める作業が容易になり、接触部材54の保持力を大きくする効果を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、接触部材54が別体に形成されているため、接触部材54の厚みを調節することにより、接触部材54の共振周波数を容易に調整することができる。具体的には、例えば、図5に示すように、接触部材54の厚みtを小さくすることにより、共振周波数を高くすることができる。
【0043】
このように、本実施形態では、接触部材54の共振周波数を容易に調節することができる。例えば、接触部材54の材質を変更することなく接触部材54の共振周波数を調節することも可能である。また、接触部材54の両固定端間の距離Lや、接触部材54の厚みtなど、複数のパラメータにより接触部材54の共振周波数を調節できるため、接触部材54の共振周波数の調節可能な範囲が広い。従って、駆動時の鳴きを容易かつ効果的に抑制することができる。従って、超音波モータ1の駆動音を小さくすることができる。
【0044】
さらに、上記のように、接触部材54の第1及び第2の突起部53b、53cにより支持されている部分相互間の距離Lや接触部材54の厚みtを調節することにより、ロータ50の外形を変化させることなく共振周波数を調節することができる。従って、ホルダ10やステータ30の設計を変更することなく、接触部材54の共振周波数を調節することができる。
【0045】
また、接触部材54を第1及び第2の突起部53b、53cにより端面53a1から離間して支持することにより、接触部材54の弾力性を高めることができるため、接触部材54の弾性体34の振動への追従性を高めることができる。従って、高いエネルギー効率と、スムーズな回転を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態では、接触部材54と支持部材53とが別体であるため、接触部材54が経年劣化した場合は、接触部材54のみを交換すればよい。
【0047】
また、例えば、図15に示すように、片持ち梁態様で接触突起部202cが支持されている場合は、接触突起部202cがステータ側に押圧されると、フランジ部202bが大きく変形し、接触突起部202cとステータとの位置が変化する。このため、発生する駆動トルクが変動することとなる。
【0048】
それに対して、例えば、本実施形態のように、接触部材54が、第1及び第2の突起部53b、53cにより両持ち梁態様で支持されている場合は、接触部材54がステータ側に押圧されても、接触部材54が大きく変形しにくい。また、片持ち梁態様の場合とは異なり、接触部材54の突起部54bが垂直方向に変位することとなる。このため、突起部54bとステータとの接触位置及び接触角度が変化しにくい。従って、発生する駆動トルクが変動しにくい。すなわち、一定の大きさの駆動トルクを安定して発生させることができる。また、突起部54bが局所的に摩耗し、突起部54bの形状が変化することによって、突起部54bとステータとの接触面積が変化することも効果的に抑制することができる。
【0049】
さらに、本実施形態のように、接触部材54が、第1及び第2の突起部53b、53cにより両持ち梁態様で支持されている場合は、接触部材54の固有振動数を低下させることができるため、接触部材を介してステータからロータに伝わる不要な振動を減衰させることができ、駆動音をより効果的に低減することができる。
【0050】
特に、図12に示すように、突起部54bが断面矩形状に形成されている場合などのように、突起部54bがステータに面接触するような場合には、両持ち梁態様の本実施形態では、片持ち梁態様の場合とは異なり、接触部材54がステータ側に押圧されても、突起部54bとステータとの接触面積が変化しにくい。従って、発生する駆動トルクの変動がより効果的に抑制される。また、中央部に突起部54bを形成するなどして、接触部材54の中央部の剛性を高めた場合、接触部材54の突起部54b以外の部分の剛性が相対的に低下する。従って、接触部材54は、突起部54bとステータとの接触角度が変化しないように撓みやすくなる。すなわち、接触部材54のたわみによって突起部54bとステータとの接触角度が変化しに九九なる。従って、発生する駆動トルクの変動がさらに効果的に抑制される。なお、接触部材54の中央部の剛性を高める方法は、中央部の厚みを厚くする方法に限定されず、例えば、U字状に形成する方法なども挙げられる。
【0051】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0052】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、接触部材54が一枚の板状部材をプレスすることにより形成されたものである例について説明した。このため、第1の実施形態では、突起部54bの裏面側に凹部が形成されている。
【0053】
しかしながら、本発明において、突起部54bの裏面側に凹部が形成されている必要は必ずしもない。例えば、図6に示すように、突起部54bの裏面側が平坦であってもよい。
【0054】
(第3及び第4の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態では、接触部材54は、突起部54bにおいて弾性体34と接触している例について説明した。但し、本発明において、接触部材54は、突起部54bを有してなくてもよい。例えば、図7に示すように、接触部材54は、平板状に形成されており、接触部材54の弾性体34側の表面54c全体で弾性体34に接触していてもよい。また、図8に示すように、接触部材54は、表面54c側に向かって幅狭となる形状に形成されていてもよい。
【0055】
(第5及び第6の実施形態)
上記第1の実施形態では、図3に示すように、円環状の接触部材54が支持部材53の全周にわたって取り付けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図9に示すように、円弧状の接触部材54が、支持部材53の周方向に沿って間隔をあけて複数取り付けられていてもよい。その場合、凹部53dは、図9に示すように、接触部材54が設けられている部分にのみ形成されていてもよいし、図9に示す場合とは異なり、支持部材53の全周にわたって形成されていてもよい。
【0056】
また、図10に示すように、矩形状の接触部材54が、支持部材53の周方向に沿って間隔をあけて複数取り付けられていてもよい。この場合、接触部材54の作製が容易となるため、超音波モータの製造が容易となる。
【0057】
また、図9に示すように、接触部材54が周方向に沿って間隔をあけて複数取り付けられ、かつ、ロータ及びステータの中心に回転軸などの構造物が配置されているため、摩耗などの要因で接触部材54が損傷した場合であっても、接触部材54が単数の場合と比べて、接触部材54の交換が容易である。
【0058】
なお、上記実施形態では、本発明を実施した好ましい形態の一例について、円板進行波型超音波モータを例に挙げて説明した。但し、本発明に係る超音波モータは、円板進行波型超音波モータに限定されない。本発明に係る超音波モータは、例えば、平板共振型の超音波モータであってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、振動素子として、圧電振動素子を用いる例について説明したが、本発明において、振動素子は、圧電振動素子でなくてもよく、超音波振動を発生させることができるものである限りにおいて特に限定されない。
【0060】
(第7の実施形態)
上記第1の実施形態では、図2に示すように、第1及び第2の突起部53b、53cに切欠き部53b1、53c1を設け、切欠き部53b1、53c1に接触部材54を取り付ける例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図11に示すように、切欠き部53b1、53c1を形成せずに、第1及び第2の突起部53b、53cの先端に位置する端面に接触部材54を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…超音波モータ
10…ホルダ
11…円筒部
12…第1のフランジ部
13…第2のフランジ部
14…ベアリング
30…ステータ
31…付勢バネ
32…支持部材
33…圧電振動素子
34…弾性体
34a…弾性体の表面
50…ロータ
51…回転板
52…緩衝部材
53…支持部材
53a…支持部材本体
53a1…支持部材本体の端面
53b…第1の突起部
53b1…切欠き部
53c…第2の突起部
53c1…切欠き部
53d…凹部
54…接触部材
54a…接触部材本体
54b…突起部
54c…接触部材の弾性体側の表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータ用ロータに関し、詳細には、超音波振動を発生させるステータの上に配置される超音波モータ用ロータ及びそれを備える超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1や特許文献2などにおいて、圧電効果を利用した超音波モータが提案されている。超音波モータは、小型化が可能であり、高回転速度が得やすく、かつ、駆動音を小さくし得るアクチュエータであるため、カメラ用レンズなどのアクチュエータとして、広く利用されている。
【0003】
図13は、特許文献1に記載の超音波モータの斜視図である。図14は、特許文献1に記載の超音波モータのステータとロータとの接触部を拡大した断面図である。図13に示すように、超音波モータ100は、ステータ101と、ロータ102とを備えている。ステータ101は、弾性体101aと、弾性体101aの裏面に貼付されている圧電体101bと弾性支持部102cとを備えている。ロータ102は、弾性体101aの上に配置されている。ロータ102は弾性支持部102cにより軸方向の弾性体101a側に付勢されている。ロータ102は、ロータ母材102aと、スライダ材102bと弾性支持部102cとを備えている。ロータ102は弾性支持部102cにより軸方向の弾性体101a側に付勢されている。図14に示すように、スライダ材102bは、横断面形状が台形である円板状に形成されており、下底面全体がロータ母材102aに貼付されている。そして、スライダ材102bの上底面は、ステータ101の弾性体101aに接触している。
【0004】
超音波モータ100では、圧電体101bが電圧印加され、圧電体101bが屈曲振動すると、弾性体101aのロータ102側の表面に、進行性振動波が発生する。このため、進行性振動波により波うつ弾性体101aの表面と、スライダ材102bの表面との間に発生する摩擦力により、ロータ102が移動される。その結果、ロータ102がステータ101に対して回転する。
【0005】
図15は、下記の特許文献3に記載の棒状超音波モータにおけるロータの模式的断面図である。図15に示すように、ロータ200は、ロータ本環201と、接触バネ部202とを備えている。接触バネ部202は、ロータ本環201に接続されている基部202aと、基部202aの先端に接続されているフランジ部202bと、フランジ部202bの先端に設けられており、ステータと接触する接触突起部202cとを有する。ロータ200では、接触バネ部202を構成する部材の肉厚が、接触突起部202cから離れるに従って厚くされており、接触バネ部202の固有振動モードの全てのモードの固有振動数が、駆動周波数の2倍よりも大きくされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−74182号公報
【特許文献2】特開2002−58262号公報
【特許文献3】特開平5−211783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、超音波モータ100では、弾性体101aの表面と、スライダ材102bの表面との間に発生する摩擦力により、ロータ102が駆動される。このため、超音波モータ100の駆動時における弾性体101aとスライダ材102bとの接触により駆動音が発生する。この駆動音の周波数と、ロータ102の共振周波数とが一致すると、大きな駆動音、すなわち、「鳴き」が生じることとなる。従って、超音波モータ100では、ロータ102の共振周波数が駆動音の周波数と一致しないように、ロータ102の弾性支持部102c及びスライダ材102bなどを設計する必要がある。
【0008】
しかしながら、超音波モータ100では、弾性支持部102cがロータ102bと一体に形成されるため、ロータ102の構成が複雑になる傾向があった。また、スライダ材102bの下底面全体がロータ母材102aに貼付されているため、スライダ材102bによって共振周波数を調節することが困難であった。さらに、スライダ材102bの共振周波数の調整可能な範囲も小さかった。従って、超音波モータ100では、簡単な構成で鳴きの発生を十分に抑制することが困難であった。
【0009】
また、上記特許文献3に記載のロータでは、接触バネ部202が一体に形成されているため、接触バネ部202の作製が困難であるばかりか、共振周波数の調製が困難であるという問題もあった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロータが振動子との接触平面のうねりに追従しやすく、高いモータ特性を有し、鳴きの発生を簡単な構成で容易に抑制することができ、かつ、製造が容易な超音波モータ用ロータ及びそれを備える超音波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超音波モータ用ロータは、振動素子と、振動素子に取り付けられた弾性体とを有するステータを備える超音波モータの弾性体に接触するように配置される超音波モータ用ロータである。本発明に係る超音波モータ用ロータは、支持部材と、弾性体と接触する板状の接触部材とを備えている。支持部材は、支持部材本体と、第1及び第2の突起部とを有する。支持部材本体は、弾性体と対向する対向面を有する。第1及び第2の突起部のそれぞれは、支持部材本体の対向面から弾性体側に延びている。接触部材は、第1の突起部と第2の突起部とにより、支持部材本体の対向面から離間して支持されている。
【0012】
本発明に係る超音波モータ用ロータのある特定の局面において、支持部材本体は筒状であり、支持部材本体の対向面は、支持部材本体の端面により構成されており、第2の突起部は、第1の突起部に対して支持部材本体の半径方向外側に位置している。
【0013】
本発明に係る超音波モータ用ロータの他の特定の局面において、接触部材は、矩形状に形成されており、接触部材は、支持部材本体の周方向に沿って複数配置されている。この構成によれば、接触部材の作製が容易となり、従って、超音波モータ用ロータの製造が容易となる。
【0014】
本発明に係る超音波モータ用ロータの別の特定の局面において、接触部材は、接触部材本体と、接触部材本体から突起する突起部とを有しており、接触部材は、突起部において弾性体に接触する。
【0015】
本発明に係る超音波モータ用ロータのさらに他の特定の局面において、突起部は、接触部材本体の中央部に位置している。この構成によれば、突起部がステータ側に押圧された際に、ステータと突起部との接触位置が変化しにくい。従って、発生する駆動トルクが変動することを効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明に係る超音波モータは、上記本発明に係る超音波モータ用ロータを備えている。
【0017】
本発明に係る超音波モータのある特定の局面において、振動素子は、圧電振動素子である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、弾性体と接触する接触部材は、板状に形成されており、第1の突起部と第2の突起部とにより、支持部材本体の対向面から離間して支持されているため、例えば、接触部材の厚さを変更したり、第1の突起部や第2の突起部の幅を調節したりすることにより、接触部材の共振周波数を容易に調節することができる。よって、鳴きの発生を簡単な構成で容易に抑制することができる。また、接触部材の共振周波数の調整可能な範囲が大きい。従って、駆動音の小さな超音波モータを容易に実現することができる。
【0019】
また、本発明では、弾性体と接触する接触部材が支持部材とは別体に形成されているため、駆動音の小さな超音波モータ用ロータを容易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る超音波モータの略図的断面図である。
【図2】ロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図3】ロータの略図的背面図である。
【図4】接触部材の共振周波数の調整を説明するための略図的断面図である。
【図5】接触部材の共振周波数の調整を説明するための略図的断面図である。
【図6】第2の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図7】第3の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図8】第4の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図9】第5の実施形態におけるロータの略図的背面図である。
【図10】第6の実施形態におけるロータの略図的背面図である。
【図11】第7の実施形態におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図12】変形例におけるロータの一部を拡大した略図的断面図である。
【図13】特許文献1に記載の超音波モータの斜視図である。
【図14】特許文献1に記載の超音波モータのステータとロータとの接触部を拡大した断面図である。
【図15】特許文献3に記載の棒状超音波モータにおけるロータの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波モータの略図的断面図である。図1に示すように、超音波モータ1は、ホルダ10と、ステータ30と、ロータ50とを備えている。ホルダ10は、円筒部11と、第1及び第2のフランジ部12,13とを備えている。第1のフランジ部12は、円筒部11の一方側の端部から径方向外側に向かって延びている。一方、第2のフランジ部13は、円筒部11の他方側の端部から径方向外側に向かって延びている。第1及び第2のフランジ部12,13の少なくとも一方は、円筒部11に対して着脱可能であってもよい。第1及び第2のフランジ部12,13の少なくとも一方を円筒部11に対して着脱可能とすることにより、ステータ30及びロータ50の組み付けが容易となる。
【0023】
ステータ30は、円筒状に形成されており、円筒部11の外側に配置されている。円筒部11とステータ30との間には、クリアランスが形成されている。ステータ30は、円環状の付勢バネ31と、円筒状の支持部材32と、円筒状の圧電振動素子33と、円筒状の弾性体34とを備えている。支持部材32は、第1のフランジ部12に固定されている。支持部材32と第1のフランジ部12との間には、付勢バネ31が配置されている。この付勢バネ31によって支持部材32並びにその上に形成されている圧電振動素子33及び弾性体34がロータ50側に付勢されている。
【0024】
支持部材32の上には、圧電振動素子33が取り付けられている。図示は省略するが、圧電振動素子33は、厚み方向に分極された円筒状の圧電体と、圧電体の一方の端面に設けられた第1の電極と、圧電体の他方の端面に設けられた第2の電極とを備えている。
【0025】
圧電体は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックなどの適宜の圧電材料により形成することができる。第1及び第2の電極は、例えば、Al、Cu、Ag、Au、Ptなどの金属やこれらの金属のうちの1種以上を含む合金により形成することができる。
【0026】
圧電振動素子33の上には、弾性体34が取り付けられている。弾性体34は、圧電振動素子33が駆動されることにより、表面に進行性振動波が発生する程度の弾性を有する部材である限りにおいて特に限定されない。弾性体34は、例えば、金属、リン青銅などの合金、セラミック、シリコン材料または合成樹脂などにより形成することができる。なお、大きな進行性振動波が生じやすくなるように、弾性体34のロータ50側の表面34aには、弾性体34の半径方向に延びる複数の溝が、周方向に沿って間隔をおいて形成されていてもよい。
【0027】
ステータ30の上部において、円筒部11の外側には、ロータ50が配置されている。ロータ50と、円筒部11との間には、クリアランスが形成されている。ロータ50は、支持部材53と、接触部材54と、緩衝部材52と、回転板51とを備えている。回転板51は、ベアリング14を介して第2のフランジ部13に取り付けられている。このため、ロータ50は、ホルダ10と、ホルダ10に固定されているステータ30とに対して円筒部11の中心軸を中心として回転可能である。
【0028】
回転板51の材質は特に限定されないが、回転板51は、例えば、AlやFeなどの金属、Al合金、ステンレスなどの合金またはセラミックなどにより形成することができる。
【0029】
回転板51には、ゴムなどの弾性体等により構成される緩衝部材52を介して支持部材53が取り付けられている。支持部材53は、接触部材54を支持するための部材である。図2に示すように、支持部材53は、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとを備えている。
【0030】
図1に示すように、支持部材本体53aは、円筒状に形成されている。支持部材本体53aのステータ30とは反対側の端部は、緩衝部材52を介して回転板51に接続されている。支持部材本体53aのステータ30側の端面53a1は、ステータ30の弾性体34と対向する対向面を構成している。なお、本発明において、支持部材本体は、筒状であればよく、円筒状でなくてもよい。すなわち、支持部材本体は、例えば、軸方向に貫通する貫通孔を有する多角柱状などであってもよい。
【0031】
図2に示すように、第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、支持部材本体53aの端面53a1から弾性体34側に延びている。第1及び第2の突起部53b、53cは、支持部材本体53aの径方向に沿って配列されている。より具体的には、第1の突起部53bは、筒状に形成されている。そして、第1の突起部53bは、端面53a1の内周側縁部から弾性体34側に垂直に延びている。第2の突起部53cも、第1の突起部53bと同様に筒状に形成されている。第2の突起部53cの内径は、第1の突起部53bの外径よりも大きい。第2の突起部53cは、端面53a1の外周側縁部から弾性体34側に垂直に延びている。第1の突起部53bと第2の突起部53cとの間には、円環状の凹部53dが形成されている。
【0032】
なお、本発明において、第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、端面53a1から弾性体34側に延びていればよく、第1及び第2の突起部53b、53cの延びる方向と端面53a1とは垂直でなくてもよい。例えば、第1及び第2の突起部53b、53cのそれぞれは、端面53a1から弾性体34側に斜めに延びていてもよい。
【0033】
支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとの材質は、特に限定されず、例えば、AlやFeなどの金属、Al合金、ステンレスなどの合金またはセラミックなどにより支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとを形成することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとは、一体に形成されている例について説明する。但し、支持部材本体53aと、第1及び第2の突起部53b、53cとは、別体に形成されていてもよい。
【0035】
接触部材54は、中央に同心円状の貫通孔が形成されている円板状に形成されている。接触部材54は、第1及び第2の突起部53b、53cにより、支持部材本体53aの端面53a1から離間して支持されている。本実施形態では、接触部材54は、第1の突起部53b先端部と第2の突起部53cの先端部とに取り付けられている。具体的には、図2に示すように、第1の突起部53bの先端部の径方向外側端部には、切欠き部53b1が形成されている。この切欠き部53b1により接触部材54の径方向内側縁部が支持されている。一方、第2の突起部53cの先端部の径方向内側端部には、切欠き部53c1が形成されている。この切欠き部53c1により接触部材54の径方向外側縁部が支持されている。
【0036】
接触部材54は、接触部材本体54aと、突起部54bとを備えている。図3に示すように、本実施形態では、突起部54bは、接触部材本体54aの全周にわたって円環状に形成されている。突起部54bは、接触部材本体54aの径方向略中央部に設けられている。図1に示すように、突起部54bは、接触部材本体54aから弾性体34側に突起している。接触部材54は、この突起部54bにおいて、弾性体34に接触している。
【0037】
接触部材54の材質は、特に限定されず、例えば、AlやFeなどの金属、Al合金、ステンレスなどの合金またはセラミックなどにより接触部材54を形成することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、接触部材本体54aと突起部54bとは、一枚の板状部材をプレスすることにより形成されている。但し、接触部材本体54aと突起部54bとは別体に形成されていてもよい。この場合、例えば、突起部54bのみを耐摩耗性に優れた材料、タングステン、サファイヤ、セラミックスなどで形成することができる。このため、弾性の優れている材料からなる接触部材本体54aと組み合わせることによって、突起部54bの脆性を小さくし、材料価格を低下させ、さらには、切削等の難しい加工を不要とすることができる。
【0039】
次に、超音波モータ1の動作について説明する。図1に示す圧電振動素子33に電圧が印加されると、圧電振動素子33が屈曲振動する。これにより、弾性体34のロータ50側の表面に、周方向に沿って進行する進行性振動波が発生する。このため、進行性振動波により波うつ弾性体34のロータ50側の表面と、突起部54bの表面との間に発生する摩擦力により、ロータ50が駆動される。その結果、ロータ50がステータ30に対して回転する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、接触部材54は、板状に形成されており、第1及び第2の突起部53b、53cによって、支持部材本体53aの端面53a1から離間して支持されている。このため、例えば、接触部材54の第1及び第2の突起部53b、53cにより支持されている部分相互間の距離を調節することにより、接触部材54の共振周波数を容易に調整することができる。すなわち、第1及び第2の突起部53b、53cに形成されている切欠き部53b1,53c1の径方向における寸法を調節することにより、接触部材54の共振周波数を容易に調整することができる。具体的には、例えば、図4に示すように、切欠き部53b1,53c1の径方向における寸法を大きくし、接触部材54の第1及び第2の突起部53b、53cにより支持されている部分相互間の距離Lを短くすることにより、共振周波数を高くすることができる。
【0041】
さらに、接触部材54の形状に応じた形状に切り欠き部53b1,53c1を形成することで、接触部材54の位置を決める作業が容易になり、接触部材54の保持力を大きくする効果を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、接触部材54が別体に形成されているため、接触部材54の厚みを調節することにより、接触部材54の共振周波数を容易に調整することができる。具体的には、例えば、図5に示すように、接触部材54の厚みtを小さくすることにより、共振周波数を高くすることができる。
【0043】
このように、本実施形態では、接触部材54の共振周波数を容易に調節することができる。例えば、接触部材54の材質を変更することなく接触部材54の共振周波数を調節することも可能である。また、接触部材54の両固定端間の距離Lや、接触部材54の厚みtなど、複数のパラメータにより接触部材54の共振周波数を調節できるため、接触部材54の共振周波数の調節可能な範囲が広い。従って、駆動時の鳴きを容易かつ効果的に抑制することができる。従って、超音波モータ1の駆動音を小さくすることができる。
【0044】
さらに、上記のように、接触部材54の第1及び第2の突起部53b、53cにより支持されている部分相互間の距離Lや接触部材54の厚みtを調節することにより、ロータ50の外形を変化させることなく共振周波数を調節することができる。従って、ホルダ10やステータ30の設計を変更することなく、接触部材54の共振周波数を調節することができる。
【0045】
また、接触部材54を第1及び第2の突起部53b、53cにより端面53a1から離間して支持することにより、接触部材54の弾力性を高めることができるため、接触部材54の弾性体34の振動への追従性を高めることができる。従って、高いエネルギー効率と、スムーズな回転を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態では、接触部材54と支持部材53とが別体であるため、接触部材54が経年劣化した場合は、接触部材54のみを交換すればよい。
【0047】
また、例えば、図15に示すように、片持ち梁態様で接触突起部202cが支持されている場合は、接触突起部202cがステータ側に押圧されると、フランジ部202bが大きく変形し、接触突起部202cとステータとの位置が変化する。このため、発生する駆動トルクが変動することとなる。
【0048】
それに対して、例えば、本実施形態のように、接触部材54が、第1及び第2の突起部53b、53cにより両持ち梁態様で支持されている場合は、接触部材54がステータ側に押圧されても、接触部材54が大きく変形しにくい。また、片持ち梁態様の場合とは異なり、接触部材54の突起部54bが垂直方向に変位することとなる。このため、突起部54bとステータとの接触位置及び接触角度が変化しにくい。従って、発生する駆動トルクが変動しにくい。すなわち、一定の大きさの駆動トルクを安定して発生させることができる。また、突起部54bが局所的に摩耗し、突起部54bの形状が変化することによって、突起部54bとステータとの接触面積が変化することも効果的に抑制することができる。
【0049】
さらに、本実施形態のように、接触部材54が、第1及び第2の突起部53b、53cにより両持ち梁態様で支持されている場合は、接触部材54の固有振動数を低下させることができるため、接触部材を介してステータからロータに伝わる不要な振動を減衰させることができ、駆動音をより効果的に低減することができる。
【0050】
特に、図12に示すように、突起部54bが断面矩形状に形成されている場合などのように、突起部54bがステータに面接触するような場合には、両持ち梁態様の本実施形態では、片持ち梁態様の場合とは異なり、接触部材54がステータ側に押圧されても、突起部54bとステータとの接触面積が変化しにくい。従って、発生する駆動トルクの変動がより効果的に抑制される。また、中央部に突起部54bを形成するなどして、接触部材54の中央部の剛性を高めた場合、接触部材54の突起部54b以外の部分の剛性が相対的に低下する。従って、接触部材54は、突起部54bとステータとの接触角度が変化しないように撓みやすくなる。すなわち、接触部材54のたわみによって突起部54bとステータとの接触角度が変化しに九九なる。従って、発生する駆動トルクの変動がさらに効果的に抑制される。なお、接触部材54の中央部の剛性を高める方法は、中央部の厚みを厚くする方法に限定されず、例えば、U字状に形成する方法なども挙げられる。
【0051】
以下、本発明を実施した好ましい形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0052】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、接触部材54が一枚の板状部材をプレスすることにより形成されたものである例について説明した。このため、第1の実施形態では、突起部54bの裏面側に凹部が形成されている。
【0053】
しかしながら、本発明において、突起部54bの裏面側に凹部が形成されている必要は必ずしもない。例えば、図6に示すように、突起部54bの裏面側が平坦であってもよい。
【0054】
(第3及び第4の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態では、接触部材54は、突起部54bにおいて弾性体34と接触している例について説明した。但し、本発明において、接触部材54は、突起部54bを有してなくてもよい。例えば、図7に示すように、接触部材54は、平板状に形成されており、接触部材54の弾性体34側の表面54c全体で弾性体34に接触していてもよい。また、図8に示すように、接触部材54は、表面54c側に向かって幅狭となる形状に形成されていてもよい。
【0055】
(第5及び第6の実施形態)
上記第1の実施形態では、図3に示すように、円環状の接触部材54が支持部材53の全周にわたって取り付けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図9に示すように、円弧状の接触部材54が、支持部材53の周方向に沿って間隔をあけて複数取り付けられていてもよい。その場合、凹部53dは、図9に示すように、接触部材54が設けられている部分にのみ形成されていてもよいし、図9に示す場合とは異なり、支持部材53の全周にわたって形成されていてもよい。
【0056】
また、図10に示すように、矩形状の接触部材54が、支持部材53の周方向に沿って間隔をあけて複数取り付けられていてもよい。この場合、接触部材54の作製が容易となるため、超音波モータの製造が容易となる。
【0057】
また、図9に示すように、接触部材54が周方向に沿って間隔をあけて複数取り付けられ、かつ、ロータ及びステータの中心に回転軸などの構造物が配置されているため、摩耗などの要因で接触部材54が損傷した場合であっても、接触部材54が単数の場合と比べて、接触部材54の交換が容易である。
【0058】
なお、上記実施形態では、本発明を実施した好ましい形態の一例について、円板進行波型超音波モータを例に挙げて説明した。但し、本発明に係る超音波モータは、円板進行波型超音波モータに限定されない。本発明に係る超音波モータは、例えば、平板共振型の超音波モータであってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、振動素子として、圧電振動素子を用いる例について説明したが、本発明において、振動素子は、圧電振動素子でなくてもよく、超音波振動を発生させることができるものである限りにおいて特に限定されない。
【0060】
(第7の実施形態)
上記第1の実施形態では、図2に示すように、第1及び第2の突起部53b、53cに切欠き部53b1、53c1を設け、切欠き部53b1、53c1に接触部材54を取り付ける例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図11に示すように、切欠き部53b1、53c1を形成せずに、第1及び第2の突起部53b、53cの先端に位置する端面に接触部材54を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…超音波モータ
10…ホルダ
11…円筒部
12…第1のフランジ部
13…第2のフランジ部
14…ベアリング
30…ステータ
31…付勢バネ
32…支持部材
33…圧電振動素子
34…弾性体
34a…弾性体の表面
50…ロータ
51…回転板
52…緩衝部材
53…支持部材
53a…支持部材本体
53a1…支持部材本体の端面
53b…第1の突起部
53b1…切欠き部
53c…第2の突起部
53c1…切欠き部
53d…凹部
54…接触部材
54a…接触部材本体
54b…突起部
54c…接触部材の弾性体側の表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動素子と、前記振動素子に取り付けられた弾性体とを有するステータを備える超音波モータの前記弾性体に接触するように配置される超音波モータ用ロータであって、
前記弾性体と対向する対向面を有する支持部材本体と、前記支持部材本体の対向面から前記弾性体側に延びる第1及び第2の突起部とを有する支持部材と、
前記第1の突起部と前記第2の突起部とにより、前記支持部材本体の対向面から離間して支持されており、前記弾性体と接触する板状の接触部材とを備える、超音波モータ用ロータ。
【請求項2】
前記支持部材本体は筒状であり、前記支持部材本体の対向面は、前記支持部材本体の端面により構成されており、前記第2の突起部は、前記第1の突起部に対して前記支持部材本体の半径方向外側に位置している、請求項1に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項3】
前記接触部材は、矩形状に形成されており、前記接触部材は、前記支持部材本体の周方向に沿って複数配置されている、請求項2に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項4】
前記接触部材は、接触部材本体と、前記接触部材本体から突起する突起部とを有しており、前記接触部材は、前記突起部において前記弾性体に接触する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項5】
前記突起部は、前記接触部材本体の中央部に位置している、請求項4に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波モータ用ロータを備える、超音波モータ。
【請求項7】
前記振動素子は、圧電振動素子である、請求項6に記載の超音波モータ。
【請求項1】
振動素子と、前記振動素子に取り付けられた弾性体とを有するステータを備える超音波モータの前記弾性体に接触するように配置される超音波モータ用ロータであって、
前記弾性体と対向する対向面を有する支持部材本体と、前記支持部材本体の対向面から前記弾性体側に延びる第1及び第2の突起部とを有する支持部材と、
前記第1の突起部と前記第2の突起部とにより、前記支持部材本体の対向面から離間して支持されており、前記弾性体と接触する板状の接触部材とを備える、超音波モータ用ロータ。
【請求項2】
前記支持部材本体は筒状であり、前記支持部材本体の対向面は、前記支持部材本体の端面により構成されており、前記第2の突起部は、前記第1の突起部に対して前記支持部材本体の半径方向外側に位置している、請求項1に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項3】
前記接触部材は、矩形状に形成されており、前記接触部材は、前記支持部材本体の周方向に沿って複数配置されている、請求項2に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項4】
前記接触部材は、接触部材本体と、前記接触部材本体から突起する突起部とを有しており、前記接触部材は、前記突起部において前記弾性体に接触する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項5】
前記突起部は、前記接触部材本体の中央部に位置している、請求項4に記載の超音波モータ用ロータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波モータ用ロータを備える、超音波モータ。
【請求項7】
前記振動素子は、圧電振動素子である、請求項6に記載の超音波モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−235540(P2012−235540A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184446(P2009−184446)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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