超音波モータ用振動子
【課題】入出力特性の非線形性を緩和して得られる、微動領域での制御性(位置決め精度)の高い超音波モータ用振動子、及び振動効率の高い超音波モータ用振動子の提供。
【解決手段】積層する全ての圧電素子に、屈曲振動を励振させる電極領域と伸縮振動を励振させる電極領域とを配置し、各振動を独立して制御できる積層圧電素子を提案する。入出力特性の非線形性が緩和され、超音波モータ用振動子の微動領域での動作性能を高めることができる。
【解決手段】積層する全ての圧電素子に、屈曲振動を励振させる電極領域と伸縮振動を励振させる電極領域とを配置し、各振動を独立して制御できる積層圧電素子を提案する。入出力特性の非線形性が緩和され、超音波モータ用振動子の微動領域での動作性能を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用いて構成する超音波モータ用振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子・情報産業の急速な発展に伴い、精密部品の更なる微細化、高集積化が求められており、ナノオーダー(10-9mオーダー)での検査や加工に対応する超精密位置決め装置が必要となっている。また、医療やバイオ研究においてタンパク質や細胞の制御による応用技術開発が進み、より微細な領域への位置決めが可能な顕微鏡用ステージに対するニーズが非常に強くなっている。更に近年では高精度化への要求と併せて、検査・加工・測定の対象物が小さくなるに伴い、位置決め装置やその駆動源の小型化・軽量化も求められるようになってきた。
【0003】
従来、位置決め装置の駆動源としては電磁モータが用いられてきた。しかし、電磁モータによる位置決め装置では、電磁モータが持つ種々の間題点に合わせて、減速装置(ギヤ)やボールねじが必要となる等の構造的な間題点も多く、ナノレベルの精度を得ることは困難となっていた。また、占有体積や重量も構造上の制約のために必然的に大きなものになる。電磁モータ方式の位置決め装置の場合、比較的高精度と言われているものでも、位置決め精度は1μm(1.0×10-6m)が限界となっており、マーケット・ニーズであるナノオーダーに比べると1000倍も粗動であるといえる。つまり、電磁モータ方式の位置決め装置でナノオーダーが達成できる可能性は非常に低いと予想される。
【0004】
そこで、電磁モータ方式の位置決め装置に代わる新しい位置決め装置として超音波モータを駆動源とする位置決め装置が期待され始めている。この超音波モータ方式の位置決め装置は、超音波振動をそのまま摩擦摺動運動に変換するという動作原理を利用したものであり、減速装置やボールネジを必要とせず、また小型軽量、応答性が高い、作動音がない、停止時の保持力が大きい等の優れた特性も付与できると期待されている。このように、超音波モータを駆動源とする技術は、非常に高精度な位置決め装置を作る要素技術として注目され、多くのタイプが提案され研究されている。
【0005】
一般的な超音波モータの原理を図2に示す。超音波モータは振動子1とスライダ2(移動体)を含み、振動子はその伸縮と屈曲の組み合わせにより、少なくともその一部が楕円運動をする。例えば、図2(A)中のp点(振動子の左端面の中心点)は、(a)〜(d)の4つの状態を通って同図(B)に示す軌跡を描く(xは振動子の長手方向、yは振動子の上下面に垂直な軸)。振動子の楕円運動をしている部分には、通常、固定摺動部材(ステータ)3となる耐磨耗性材料が接着されている。振動子の楕円運動はステータを介してスライダに伝達され、スライダを動かす駆動力となる。図2では、楕円運動の繰り返しにより移動体は図のガイド4に沿って下方へと送られる。この例では直線的に移動体を駆動しているが、移動体を円環状にすれば回転運動を生じることも可能である。
【0006】
後述するように、振動子は圧電素子で構成できるが、この場合、前述の楕円運動の大きさは圧電素子への入力電圧に依存する。すなわち、図3(図2(B)に対応する図。但し、図2(B)のy軸は図3では水平方向として示す。)に模式的に示すように、入力電圧が大きければ楕円運動も大きく、従って、スライダの移動速度も大きくなる。一方、入力電圧が小さければ楕円運動も小さく、従って、スライダの移動速度も小さくなる。
例えば、超音波モータを用いてXYテーブル等で精密位置決めする場合、目的位置に近づくと移動速度を遅くして、少しずつ近づくという動作が必要となるが、移動速度を遅くするためには入力電圧を小さくする必要がある。
【0007】
一方、固定摺動部材を介してスライダに駆動力を伝達できるのは両者が接触しているからであり、この目的のため、ステータは、適当な圧力でスライダに押し当てられている。しかし、押し当て加重が強すぎると、ステータがスライダに押し当てられ過ぎるため、互いが一瞬たりとも離れる事ができず、弱い入力電圧では全く動かない(図3の楕円運動の横方向の振幅成分がゼロになることに相当、従来の振動子の場合は同時に縦方向の振幅もゼロになる)。入力電圧を上げていくと、ある電圧(しきい電圧)で突然動き出し、このしきい電圧を超えた領域で楕円運動が起こり始める。
【0008】
押し当て力をどれだけ弱くしてもしきい電圧が低くなるだけで、しきい電圧は必ず存在し、ある電圧(しきい電圧)で突然動き出すという挙動を無くすことは難しい。すなわち、電圧−移動速度の関係は、図4に示すように、低電圧領域では電圧一移動速度の特性が比例関係ではない上に非常に急峻な曲線を描いており、僅かな電圧の変動によって移動速度が大幅に変化してしまう(入出力特性の非線形性)。
このように、超音波モータを用いて精密位置決めを使用とする場合、入力電圧を低くする必要があるが、入出力特性の非線形性のため、微動領域では制御が困難になる。
【0009】
従来の超音波モータ用振動子として、例えば、特許文献1、2は、矩形状の積層圧電素子に伸縮振動と屈曲振動の2種類の振動を同時に励振させることにより、振動体の所定の位置に楕円運動を発生させ、この楕円運動を移動体(スライダ)へ伝達することで移動体を回転運動もしくは直線運動させるものが開示されている。また、特許文献3、4には、屈曲2次振動を加振するための圧電素子と、伸縮1次振動を加振するための圧電素子とを個別にそれぞれ積層させ、振動子に楕円運動を発生させるものが開示されている。
しかし、従来の超音波モータ用振動子は、入出力特性の非線形性を解消したものではなく、このため、微動領域での振動子の制御性が悪く、精密な位置決めに用いるのは困難であった。
【0010】
また、従来の超音波モータ用振動子の圧電素子は、特許文献5に代表されるように、板状の素子を挟んで、その両面のほぼ全面に電極を形成している。このため、静電容量が大きくなり、必要以上の電流が流れるため、駆動電源に大きな負担がかかるという問題があった。さらに、特許文献3、4では、屈曲2次振動を加振するための圧電素子と、伸縮1次振動を加振するための圧電素子とを個別にそれぞれ積層させるが、振動子全体の半分だけが屈曲振動を、もう半分だけが伸縮振動を加振していることになる。このため、素子全体に占める加振領域の割合が小さくなり、結果的には振動振幅の小さな振動子になってしまうと考えられ、加振効率が悪いという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特許第3311446号明細書
【特許文献2】特開2004−297951号公報
【特許文献3】特開2000−116162号公報
【特許文献4】特開2005−65358号公報
【特許文献5】特許第2722211号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、入出力特性の非線形性を緩和し、微動領域での制御性(位置決め精度)の高い超音波モータ用振動子の提供、及び振動効率の高い超音波モータ用振動子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、圧電素子において屈曲振動(好ましくは、屈曲2次振動)と伸縮振動(好ましくは、伸縮1次振動)を独立して励振させることで、振動子の制御性が大幅に向上し、また各々の振動を励振させるための分極領域を適切な位置および大きさに最適化することにより振動効率が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の超音波モータ用振動子を提供するものである。
【0014】
1.圧電素子に、屈曲振動と伸縮振動をそれぞれ独立して励振する分極領域をもち、当該分極領域に電圧信号を印加するための電極を設けたことを特徴とする超音波モータ用振動子。
2.圧電素子の屈曲振動と伸縮振動を励振する分極領域が、それぞれの振動による圧電素子の歪みが最大になる部位を含む前記1記載の超音波モータ用振動子。
3.屈曲振動が屈曲2次振動、伸縮振動が伸縮1次振動である前記1または2記載の超音波モータ用振動子。
4.圧電素子が矩形板であり、伸縮振動を励起する分極領域が、前記矩形板の対向する長辺及び短辺の中点を含む領域に、矩形板の各辺に平行な辺によって画される矩形または十字型領域であり、当該領域における長辺に平行な辺が、前記矩形板の長辺の長さの10%以上、95%以下であり、前記当該領域における矩形板の短辺に平行な辺が、前記矩形板の短辺の長さの10%以上である前記3に記載の超音波モータ用振動子。
5.圧電素子が矩形板であり、屈曲振動を励起する分極領域が、前記矩形板の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4だけ中心寄りの領域において、それぞれ設けられる各面2対の電極であり、各々の分極領域の長辺に平行な辺が前記長辺の長さの40%以下であり、短辺に平行な辺が前記短辺の長さの40%以下である前記3に記載の超音波モータ用振動子。
6.請求項1〜5のいずれか記載の圧電素子と、外部電極との短絡を目的とする引き出し電極パターンを持つ前記1に記載の電極を積層して構成した積層圧電型超音波モータ用振動子。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超音波モータ用振動子は、従来に比べ制御性、特に微動領域における制御性が大幅に向上するため、精密位置決め装置の駆動源として有用である。さらに、従来よりも高い振動効率の超音波モータ用振動子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、圧電素子を用いて構成する超音波モータ用振動子において、1個の素子上に屈曲振動(好ましくは、屈曲2次振動)と伸縮振動(好ましくは、伸縮1次振動)を独立して励振するように電極を設け、その配置を最適にする。なお、屈曲(2次)振動とは、図6(a)に模式的に示す横振動(2次では1波長≒振動子の全長)であり、伸縮(1次)振動とは、同図(b)に模式的に示す縦振動(1次では半波長=振動子の全長))である。
以下本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の圧電素子の加振点(電極位置)は、伸縮振動や屈曲振動を効率よく発生させるため、各振動による歪が最大となる場所に配置する。具体的には、伸縮振動では振動の「節」の位置に、屈曲運動では振動の「腹」の位置に電極を配置する。
例えば、矩形薄板状の圧電素子を用いた場合、屈曲2次振動の振幅分布は図7(a)に示すようになる。屈曲2次振動は圧電素子の全長がほぼ1波長に相当する横振動(素子面内に振幅を有する振動)であるため、歪が最大になる場所は振幅が最大になる箇所であり、振動の自由端である左右の端から1/4位置程度の場所である。実際は圧電素子の全長(L)は屈曲2次振動の1波長(λ2B)よりわずかに長く、歪みが最大になる場所は、左右の端から(1/4)L+α中心に近い所となる。α=(1/4)(L−λ2B)であり、通常、αはLの4.5%〜6.5%程度である。従って、本発明ではこの位置に屈曲(2次)振動用の電極を配置する。
【0018】
また、同じく矩形薄板状の圧電素子を用いた場合の伸縮1次振動の振幅分布を図7(b)に示す。伸縮1次振動は圧電素子の全長が1/2波長に相当する縦振動(素子の長手方向に振幅を有する振動)であるため、屈曲振動の場合とは異なり、歪が最大になる場所は変位が最小になる箇所であり、素子の中央付近である。従って、本発明ではこの位置に伸縮(1次)振動用の電極を配置する。
伸縮1次振動および屈曲2次振動において、振動の励振効率は共振周波数(fs)と反共振周波数(fp)の差(Δf=fp−fs)で間接的に評価することが出来る事が知られている。図12には伸縮1次振動、図13および図14には屈曲2次振動の、それぞれ分極領域の大きさを変えた場合のΔfの推移を示す。
伸縮1次振動を励振する場合、振動子の伸縮1次振動のΔfは、分極領域の長辺に平行な辺の長さが素子の長辺の長さの70%程度が極大であり、95%を超えると大幅に低下していることが分かる。このことから、伸縮1次振動を励振するための分極領域として、長辺側の長さは素子の長辺の95%以下が好ましいといえる。一方で、55%以下になった場合にもΔfの低下が著しいが、伸縮1次振動は、ステータとスライダを突き離すという補助的な振動が主な役割であるので、励振効率の低下という欠点よりもむしろ電極面積が小さくなることに伴う消費電力の低減化という利点が好まれる場合が多い。このことから、伸縮1次振動を励振するための分極領域として、長辺側の長さは素子の長辺の長さの10%以上が好ましく、振動効率を優先的に設計するならば、55%以上が好ましいといえる。また、短辺側の長さは、屈曲2次振動を励振するための分極領域によって最大値が制限されるが、最小値としては素子の短辺側の長さの10%以上であれば、長辺側の長さと同じ理由で、必要充分であると思われる。
また、屈曲2次振動を励振する場合、振動子の屈曲2次振動のΔfは、各々の分極領域の短辺側の長さが素子の長辺側の側面から素子の短辺側の長さの30%程度が極大であり、40%を超える、または20%以下になると大幅に低下していることが分かる。また、長辺側の長さは素子の長辺側の長さの30%程度が極大であり、40%を超える、または20%以下になると大幅に低下していることが分かる。屈曲2次振動の歪み分布を有限要素解析によって調べてみると、歪みは素子の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4程度中心寄りの領域において、素子の長辺側の側面近傍に局所的に集中している。したがって、局所的な励振をすることで、幾分は振動効率が低下すると思われるが、必要充分な振幅が得られると考えられる。屈曲2次振動の場合は、スライダの移動速度や駆動力を支配する主導的な役割であるので、励振効率は極力高い方が好まれる場合が多い。しかし、一方では消費電力の低減化に対する要望も多い。つまり、消費電力の低減化のために、歪みが集中する局所に、励振に必要十分な分極領域を設けてもよい。このことから、屈曲2次振動を励振するための分極領域として、各々の分極領域は、短辺側の長さは素子の長辺側側面から40%以下が好ましく、長辺側の長さは40%以下が好ましいといえる。なお、分極領域の下限値は、形状等の条件や求められる特性により変わり得る。有限要素解析等により有効と推定される最小値以上であればよいが、例えば、各1%以上、好ましくは素子の長辺側側面から3%以上、長辺側の長さ10%以上、より好ましくはそれぞれ5%以上、20%以上である。
【0019】
以下では、伸縮1次振動と屈曲2次振動を例として説明するが、伸縮振動と屈曲振動とを独立に励振するものであれば、他の振動モードの組み合わせであってもよい。もっとも、高次モードでは一般に振幅の絶対値が小さくなり、伸縮振動と屈曲振動とを独立に励振するのが困難となる上、電極配置も複雑となるため、伸縮1次振動と屈曲2次振動の組み合わせが好ましい。また、以下の例では、概ね均一な厚みを有する矩形薄板状の圧電素子を用いた場合における矩形板の4辺に平行な辺によって画された分極領域の配置について説明するが、伸縮振動や屈曲振動による歪が最大となる場所に各振動を独立して励振し得るような分極領域の形状であれば、その形状は問わず、適当な解析手法によって決定されるそのような場所に分極領域および電気的信号を印加するための電極を配置した振動子も本発明の範囲に含まれる。
【0020】
本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子の電極配置の基本構成を図1に示す。
図1に示すように、電極は伸縮1次振動用電極(図中、c)と屈曲2次振動用電極(図中、a及びb)を含む。
伸縮1次振動用電極は、伸縮1次振動を励振するための分極領域の両面、つまり圧電素子(矩形板)の対向する長辺の中点を結ぶ中心線上の少なくとも一部を含む領域に設けられる。図示していないが、cの対電極は素子の裏面に存在し、両者間に交流電圧を印加することにより伸縮1次振動を励振する。
伸縮振動励起用の電極領域は、図1では概ね十字型の領域として示しているが、前記中心線の中点を含む限りにおいて任意の形状でよく、例えば、多角形、円形、楕円形でもよい。もっとも、図1の十字型のほか、圧電素子(矩形板)の各辺に平行な辺によって画される矩形状領域が好ましい。また、圧電素子側面への短絡のため、図1及び8に示すように一辺を素子側面に接触させてもよく、図9に示すように引き出し部分を作ってもよい。なお、引き出し部分は、電極領域間の配置、外部電極や端子の配置、構造等を考慮し、これらの間の干渉や電極等による振動の抑制が最小になるように配置することが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記領域における矩形板の長辺に平行な辺が、前記長辺の長さの10%以上95%以下であることが好ましい。10%以下であっても伸縮振動を励振することは出来るが十分な励振を行なうことが困難である。一方、前述の中心点から外れた位置まで含めて電圧を印加しても励振効率は上がらず、静電容量が増すとともに電極によって却って振幅が抑制される。従って、特に図7に示すように、圧電素子の幅ほぼ全部に及ぶ矩形形状の電極とする場合は、長辺に沿った長さは、長辺全長の95%以下が好ましく、85%以下であることがより好ましい。
また、前記領域における矩形板の短辺に平行な辺が、前記短辺の長さの10%以上であることが好ましい。10%未満では分極領域の面積が小さくなりすぎるために十分な励振を行なうことが困難である。
伸縮1次振動用電極は、上記の通り、素子の分極領域の表裏面に設ける。
【0022】
また、図1に示すように、屈曲2次振動用電極(図中a及びb)は、屈曲2次振動を励振するための分極領域の両面、つまり圧電素子(矩形板)の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4だけ中心寄りの領域にそれぞれ設けられる各面2対の電極である。ここで、各対の電極は、前記中心点に対して点対称的に設られる。図示していないが、a及びbの対電極は素子の裏面に存在し、aとbに逆位相の交流電圧を印加することにより屈曲2次振動を励振する。
a及びbの電極は、互いに、また、cとの間で十分に絶縁が確保されるように設ければよいが、a及びbの電極はcとの間に0.2ないし0.5mmの隙間を設けて、充分な絶縁性を確保することが好ましい。
【0023】
本発明の振動子を超音波モータに用いる場合、早く動かしたい場合はa−b及びcに大きな交流電圧を印加する。微動領域では、cには通常通りの電圧で、a−bに印加する電圧を弱くすることにより、微調節可能な振動状態を得る。従来の振動子が発生する楕円運動と、本発明の振動子が発生する楕円運動の比較を図5に示す。各振動を独立して励振できる本発明の振動子は、移動体への加圧方向の振動だけ予め充分に励起しておき、さらに送り方向の振動を微弱に励起することができる。そのため、低電圧領域においても比較的線形な特性が得られ、しきい電圧を超えてからの急峻な特性を緩和し、微動領域の制御性を高めることができる。
【0024】
各電極は、適宜、電圧印加用のリード部分を有してもよいし、あるいは圧電素子板に電極が設けられたフレキシブル基板を接合してもよい。
また、本発明の超音波モータ用振動子は、単層の振動子に限定されず、上述の振動子を積層したものでもよい。本発明では、圧電体の全ての層に屈曲振動を励振させる部分と伸縮振動を励振させる部分を配置する。そのため、振動子全体に占める加振領域の割合も多くなり、振動効率の良い振動子が得られる。
【0025】
本発明において用いる圧電素子及び電極の材料、振動子上に電極を付与する方法、積層体とする場合の積層方法は、当分野で利用可能な任意の材料及び方法を含む。後で述べる実施例においては圧電素子材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いたが、他の圧電性材料、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム等の無機材料、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機圧電材料を用いても良い。また、後で述べる実施例においては電極材料としては、銀・パラジウム合金電極を用いたが、他の電極材料、例えば銅、銀、金、アルミニウム、白金、パラジウムあるいはこれらを含む合金等を用いても良い。電極付与方法の例としては、導電ペーストの塗布ないし印刷、メッキ、蒸着等が挙げられる。
積層体を形成する手法の例としては、圧電素子材料とバインダーを含むスラリーをシート状に成型、乾燥し、その上に図10に示すように、圧電素子側面への短絡のために引き出される引き出し電極の位置を変えた2種類の電極(内部電極)パターンを付与した後、図11に示すような順序でこれらを積層、本焼成し、さらに外部電極を設ける方法が挙げられる。図15に、個々の圧電体の内部電極と1層おきに短絡する外部電極7a、7b、8a、8bを形成した積層型の振動子を示す。もっとも、以上はいずれも例であり、この他の材料や方法を用いても本発明の振動子を製造することは可能である。
【0026】
なお、本明細書において「超音波モータ」とは、振動子の少なくとも一部の部位が圧電機構によって楕円運動を行い、他の部材を駆動し得るものをすべて含む。また、その振動周波数は、必ずしも超音波域でなくてもよく駆動源として機能し得るものであればよい。
【実施例】
【0027】
実施例1
厚さ2mm×長さ30mm×幅8.4mmの矩形状の圧電素子板を用意し、図1に準じた形状及び配置の伸縮1次振動用電極及び屈曲2次振動用電極を形成した。伸縮1次振動用電極は長さ20mmの十字型とし、圧電素子の面積の41%の大きさを有する。屈曲2次振動用の電極は、各々、長さ6mm、幅1.5mmとし、2対で圧電素子の面積の14%を有する。短辺中央部にはステータを接着した。
前記圧電振動子の端部に接着したステータの振動状態を測定した結果を図16に示す。電極aとbには位相差180度でそれぞれ100Vp-p、55.2kHzの交流電圧を印加するとともに、電極cには電極aとbに印加する信号と位相が異なる信号として、100Vp-p、同一周波数の交流電圧を印加した。なお、電極aとbに対する電極cの位相差は、端部の振動位相に90度の位相差が生じるように適宜調節した。この結果、図16に示すように、短辺中央に設けたステータは楕円運動を行なうことが確認された。電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を25Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は25%まで低減し、非常に微細な独立した制御が可能であることが確認できた。
【0028】
実施例2
厚さ2mm×長さ30mm×幅8.4mmの矩形状の圧電素子板を用意し、図8に準じた形状及び配置の伸縮1次振動用電極及び屈曲2次振動用電極を形成した。伸縮1次振動用電極は長さ6mmの矩形とし、圧電素子の面積の19%の大きさを有する。屈曲2次振動用の電極は実施例1と同様に、各々、長さ6mm、幅1.5mmとし、2対で圧電素子の面積の14%を有する。短辺中央部にはステータを接着した。また実施例1と同様に短辺中央部にはステータを接着した。
各々の電極には実施例1と同様の電圧を印加したので、以下には測定結果について実施例1との相違点について主に述べる。測定の結果、伸縮1次振動用の分極領域が素子の長辺の20%という小さな領域になったことに伴う伸縮1次振動の大幅な振幅低下が認められたが、短辺中央に設けたステータには楕円運動の発生が確認された。電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を25Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は25%まで低減し、実施例1と同様に、非常に微細な独立した制御が可能であることが確認できた。
【0029】
実施例3
厚さ2mm×長さ30mm×幅8.4mmの矩形状の圧電素子板を用意し、図9に準じた形状及び配置の伸縮1次振動用電極及び屈曲2次振動用電極を形成した。伸縮1次振動用電極は長さ20mmの矩形とし、圧電素子の面積の29%の大きさを有する。屈曲2次振動用の電極は実施例1と同様に、各々、長さ6mm、幅1.5mmとし、2対で圧電素子の面積の14%を有する。短辺中央部にはステータを接着した。また実施例1と同様に短辺中央部にはステータを接着した。
各々の電極には実施例1と同様の電圧を印加したので、以下には測定結果について実施例1及び実施例2との相違点について主に述べる。測定の結果、伸縮1次振動用の分極領域が実施例1より小さく、また実施例2より大きくなったことに伴う伸縮1次振動の振幅が実施例1より若干小さく、実施例2より大幅に大きくなったことが認められ、短辺中央に設けたステータは楕円運動を行なうことが確認された。電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を25Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は25%まで低減し、この場合でも実施例1と同様に、非常に微細な独立した制御が可能であることが確認できた。
【0030】
実施例4
実施例1〜3の電極配置を持つ、厚み0.08mmの圧電素子を35層積層した積層型の超音波モータ用振動子を形成し、実施例1ないし実施例3と同様に振動状態を測定した。圧電体の1層厚みが薄くなったことに伴い、実施例1ないし実施例3と同程度の振幅を得るために必要な印加電圧は大幅に低下し、約5Vp-pで同程度の振幅が得られた。前記電圧を印加して振動状態を測定したところ、短辺中央に設けたステータは楕円運動を行なうことが確認された。また、電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を1Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は20%まで低減し、実施例1ないし実施例3と同様に、各振動モードが互いに独立した制御が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の圧電素子は、最適な電極配置を採ることで、送り方向の振幅(図3の楕円運動の横方向の振幅)と加圧方向の振幅(図3の楕円運動の縦方向の振幅)を独立で制御できる。このため、いわゆる「超音波モータ」の駆動源として広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子における電極配置の一例を示す平面図。
【図2】一般的な超音波モータの原理を示す模式図。
【図3】振動子の楕円運動と入力電圧の関係を示す模式図。
【図4】入力電圧と移動速度の関係を示す模式図。
【図5】従来の振動子と、本発明の振動子が発生する楕円運動の比較を示す模式図。
【図6】屈曲2次振動(a)と伸縮1次振動(b)を示す模式図。
【図7】屈曲2次振動の振幅分布(a)と伸縮1次振動の振幅分布(b)を示す模式図。
【図8】本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子における電極配置の他の例を示す平面図。
【図9】本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子における電極配置の他の例を示す平面図。
【図10】圧電素子の側面への短絡のための引き出し電極の位置のパターンを示す平面図。
【図11】積層圧電型超音波モータ用振動子の積層順序の例を示す図。
【図12】伸縮1次振動の分極領域の長さと励振効率の関係を示す図。
【図13】屈曲2次振動の分極領域の長さ(長辺側)と励振効率の関係を示す図。
【図14】屈曲2次振動の分極領域の長さ(短辺側)と励振効率の関係を示す図。
【図15】積層圧電型超音波モータ用振動子を示す図。
【図16】電極a、bの印加電圧の振幅を変化させた場合のステータの振動状態を示す図。
【符号の説明】
【0033】
a 屈曲2次振動用電極
b 屈曲2次振動用電極
c 伸縮1次振動用電極
1 振動子
2 スライダ
3 固定摺動部材(ステータ)
4 ガイド
p 振動子の左端面の中心点
6 積層型振動子
7a、b 外部電極
8a、b 外部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用いて構成する超音波モータ用振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子・情報産業の急速な発展に伴い、精密部品の更なる微細化、高集積化が求められており、ナノオーダー(10-9mオーダー)での検査や加工に対応する超精密位置決め装置が必要となっている。また、医療やバイオ研究においてタンパク質や細胞の制御による応用技術開発が進み、より微細な領域への位置決めが可能な顕微鏡用ステージに対するニーズが非常に強くなっている。更に近年では高精度化への要求と併せて、検査・加工・測定の対象物が小さくなるに伴い、位置決め装置やその駆動源の小型化・軽量化も求められるようになってきた。
【0003】
従来、位置決め装置の駆動源としては電磁モータが用いられてきた。しかし、電磁モータによる位置決め装置では、電磁モータが持つ種々の間題点に合わせて、減速装置(ギヤ)やボールねじが必要となる等の構造的な間題点も多く、ナノレベルの精度を得ることは困難となっていた。また、占有体積や重量も構造上の制約のために必然的に大きなものになる。電磁モータ方式の位置決め装置の場合、比較的高精度と言われているものでも、位置決め精度は1μm(1.0×10-6m)が限界となっており、マーケット・ニーズであるナノオーダーに比べると1000倍も粗動であるといえる。つまり、電磁モータ方式の位置決め装置でナノオーダーが達成できる可能性は非常に低いと予想される。
【0004】
そこで、電磁モータ方式の位置決め装置に代わる新しい位置決め装置として超音波モータを駆動源とする位置決め装置が期待され始めている。この超音波モータ方式の位置決め装置は、超音波振動をそのまま摩擦摺動運動に変換するという動作原理を利用したものであり、減速装置やボールネジを必要とせず、また小型軽量、応答性が高い、作動音がない、停止時の保持力が大きい等の優れた特性も付与できると期待されている。このように、超音波モータを駆動源とする技術は、非常に高精度な位置決め装置を作る要素技術として注目され、多くのタイプが提案され研究されている。
【0005】
一般的な超音波モータの原理を図2に示す。超音波モータは振動子1とスライダ2(移動体)を含み、振動子はその伸縮と屈曲の組み合わせにより、少なくともその一部が楕円運動をする。例えば、図2(A)中のp点(振動子の左端面の中心点)は、(a)〜(d)の4つの状態を通って同図(B)に示す軌跡を描く(xは振動子の長手方向、yは振動子の上下面に垂直な軸)。振動子の楕円運動をしている部分には、通常、固定摺動部材(ステータ)3となる耐磨耗性材料が接着されている。振動子の楕円運動はステータを介してスライダに伝達され、スライダを動かす駆動力となる。図2では、楕円運動の繰り返しにより移動体は図のガイド4に沿って下方へと送られる。この例では直線的に移動体を駆動しているが、移動体を円環状にすれば回転運動を生じることも可能である。
【0006】
後述するように、振動子は圧電素子で構成できるが、この場合、前述の楕円運動の大きさは圧電素子への入力電圧に依存する。すなわち、図3(図2(B)に対応する図。但し、図2(B)のy軸は図3では水平方向として示す。)に模式的に示すように、入力電圧が大きければ楕円運動も大きく、従って、スライダの移動速度も大きくなる。一方、入力電圧が小さければ楕円運動も小さく、従って、スライダの移動速度も小さくなる。
例えば、超音波モータを用いてXYテーブル等で精密位置決めする場合、目的位置に近づくと移動速度を遅くして、少しずつ近づくという動作が必要となるが、移動速度を遅くするためには入力電圧を小さくする必要がある。
【0007】
一方、固定摺動部材を介してスライダに駆動力を伝達できるのは両者が接触しているからであり、この目的のため、ステータは、適当な圧力でスライダに押し当てられている。しかし、押し当て加重が強すぎると、ステータがスライダに押し当てられ過ぎるため、互いが一瞬たりとも離れる事ができず、弱い入力電圧では全く動かない(図3の楕円運動の横方向の振幅成分がゼロになることに相当、従来の振動子の場合は同時に縦方向の振幅もゼロになる)。入力電圧を上げていくと、ある電圧(しきい電圧)で突然動き出し、このしきい電圧を超えた領域で楕円運動が起こり始める。
【0008】
押し当て力をどれだけ弱くしてもしきい電圧が低くなるだけで、しきい電圧は必ず存在し、ある電圧(しきい電圧)で突然動き出すという挙動を無くすことは難しい。すなわち、電圧−移動速度の関係は、図4に示すように、低電圧領域では電圧一移動速度の特性が比例関係ではない上に非常に急峻な曲線を描いており、僅かな電圧の変動によって移動速度が大幅に変化してしまう(入出力特性の非線形性)。
このように、超音波モータを用いて精密位置決めを使用とする場合、入力電圧を低くする必要があるが、入出力特性の非線形性のため、微動領域では制御が困難になる。
【0009】
従来の超音波モータ用振動子として、例えば、特許文献1、2は、矩形状の積層圧電素子に伸縮振動と屈曲振動の2種類の振動を同時に励振させることにより、振動体の所定の位置に楕円運動を発生させ、この楕円運動を移動体(スライダ)へ伝達することで移動体を回転運動もしくは直線運動させるものが開示されている。また、特許文献3、4には、屈曲2次振動を加振するための圧電素子と、伸縮1次振動を加振するための圧電素子とを個別にそれぞれ積層させ、振動子に楕円運動を発生させるものが開示されている。
しかし、従来の超音波モータ用振動子は、入出力特性の非線形性を解消したものではなく、このため、微動領域での振動子の制御性が悪く、精密な位置決めに用いるのは困難であった。
【0010】
また、従来の超音波モータ用振動子の圧電素子は、特許文献5に代表されるように、板状の素子を挟んで、その両面のほぼ全面に電極を形成している。このため、静電容量が大きくなり、必要以上の電流が流れるため、駆動電源に大きな負担がかかるという問題があった。さらに、特許文献3、4では、屈曲2次振動を加振するための圧電素子と、伸縮1次振動を加振するための圧電素子とを個別にそれぞれ積層させるが、振動子全体の半分だけが屈曲振動を、もう半分だけが伸縮振動を加振していることになる。このため、素子全体に占める加振領域の割合が小さくなり、結果的には振動振幅の小さな振動子になってしまうと考えられ、加振効率が悪いという問題があった。
【0011】
【特許文献1】特許第3311446号明細書
【特許文献2】特開2004−297951号公報
【特許文献3】特開2000−116162号公報
【特許文献4】特開2005−65358号公報
【特許文献5】特許第2722211号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、入出力特性の非線形性を緩和し、微動領域での制御性(位置決め精度)の高い超音波モータ用振動子の提供、及び振動効率の高い超音波モータ用振動子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、圧電素子において屈曲振動(好ましくは、屈曲2次振動)と伸縮振動(好ましくは、伸縮1次振動)を独立して励振させることで、振動子の制御性が大幅に向上し、また各々の振動を励振させるための分極領域を適切な位置および大きさに最適化することにより振動効率が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の超音波モータ用振動子を提供するものである。
【0014】
1.圧電素子に、屈曲振動と伸縮振動をそれぞれ独立して励振する分極領域をもち、当該分極領域に電圧信号を印加するための電極を設けたことを特徴とする超音波モータ用振動子。
2.圧電素子の屈曲振動と伸縮振動を励振する分極領域が、それぞれの振動による圧電素子の歪みが最大になる部位を含む前記1記載の超音波モータ用振動子。
3.屈曲振動が屈曲2次振動、伸縮振動が伸縮1次振動である前記1または2記載の超音波モータ用振動子。
4.圧電素子が矩形板であり、伸縮振動を励起する分極領域が、前記矩形板の対向する長辺及び短辺の中点を含む領域に、矩形板の各辺に平行な辺によって画される矩形または十字型領域であり、当該領域における長辺に平行な辺が、前記矩形板の長辺の長さの10%以上、95%以下であり、前記当該領域における矩形板の短辺に平行な辺が、前記矩形板の短辺の長さの10%以上である前記3に記載の超音波モータ用振動子。
5.圧電素子が矩形板であり、屈曲振動を励起する分極領域が、前記矩形板の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4だけ中心寄りの領域において、それぞれ設けられる各面2対の電極であり、各々の分極領域の長辺に平行な辺が前記長辺の長さの40%以下であり、短辺に平行な辺が前記短辺の長さの40%以下である前記3に記載の超音波モータ用振動子。
6.請求項1〜5のいずれか記載の圧電素子と、外部電極との短絡を目的とする引き出し電極パターンを持つ前記1に記載の電極を積層して構成した積層圧電型超音波モータ用振動子。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超音波モータ用振動子は、従来に比べ制御性、特に微動領域における制御性が大幅に向上するため、精密位置決め装置の駆動源として有用である。さらに、従来よりも高い振動効率の超音波モータ用振動子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、圧電素子を用いて構成する超音波モータ用振動子において、1個の素子上に屈曲振動(好ましくは、屈曲2次振動)と伸縮振動(好ましくは、伸縮1次振動)を独立して励振するように電極を設け、その配置を最適にする。なお、屈曲(2次)振動とは、図6(a)に模式的に示す横振動(2次では1波長≒振動子の全長)であり、伸縮(1次)振動とは、同図(b)に模式的に示す縦振動(1次では半波長=振動子の全長))である。
以下本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の圧電素子の加振点(電極位置)は、伸縮振動や屈曲振動を効率よく発生させるため、各振動による歪が最大となる場所に配置する。具体的には、伸縮振動では振動の「節」の位置に、屈曲運動では振動の「腹」の位置に電極を配置する。
例えば、矩形薄板状の圧電素子を用いた場合、屈曲2次振動の振幅分布は図7(a)に示すようになる。屈曲2次振動は圧電素子の全長がほぼ1波長に相当する横振動(素子面内に振幅を有する振動)であるため、歪が最大になる場所は振幅が最大になる箇所であり、振動の自由端である左右の端から1/4位置程度の場所である。実際は圧電素子の全長(L)は屈曲2次振動の1波長(λ2B)よりわずかに長く、歪みが最大になる場所は、左右の端から(1/4)L+α中心に近い所となる。α=(1/4)(L−λ2B)であり、通常、αはLの4.5%〜6.5%程度である。従って、本発明ではこの位置に屈曲(2次)振動用の電極を配置する。
【0018】
また、同じく矩形薄板状の圧電素子を用いた場合の伸縮1次振動の振幅分布を図7(b)に示す。伸縮1次振動は圧電素子の全長が1/2波長に相当する縦振動(素子の長手方向に振幅を有する振動)であるため、屈曲振動の場合とは異なり、歪が最大になる場所は変位が最小になる箇所であり、素子の中央付近である。従って、本発明ではこの位置に伸縮(1次)振動用の電極を配置する。
伸縮1次振動および屈曲2次振動において、振動の励振効率は共振周波数(fs)と反共振周波数(fp)の差(Δf=fp−fs)で間接的に評価することが出来る事が知られている。図12には伸縮1次振動、図13および図14には屈曲2次振動の、それぞれ分極領域の大きさを変えた場合のΔfの推移を示す。
伸縮1次振動を励振する場合、振動子の伸縮1次振動のΔfは、分極領域の長辺に平行な辺の長さが素子の長辺の長さの70%程度が極大であり、95%を超えると大幅に低下していることが分かる。このことから、伸縮1次振動を励振するための分極領域として、長辺側の長さは素子の長辺の95%以下が好ましいといえる。一方で、55%以下になった場合にもΔfの低下が著しいが、伸縮1次振動は、ステータとスライダを突き離すという補助的な振動が主な役割であるので、励振効率の低下という欠点よりもむしろ電極面積が小さくなることに伴う消費電力の低減化という利点が好まれる場合が多い。このことから、伸縮1次振動を励振するための分極領域として、長辺側の長さは素子の長辺の長さの10%以上が好ましく、振動効率を優先的に設計するならば、55%以上が好ましいといえる。また、短辺側の長さは、屈曲2次振動を励振するための分極領域によって最大値が制限されるが、最小値としては素子の短辺側の長さの10%以上であれば、長辺側の長さと同じ理由で、必要充分であると思われる。
また、屈曲2次振動を励振する場合、振動子の屈曲2次振動のΔfは、各々の分極領域の短辺側の長さが素子の長辺側の側面から素子の短辺側の長さの30%程度が極大であり、40%を超える、または20%以下になると大幅に低下していることが分かる。また、長辺側の長さは素子の長辺側の長さの30%程度が極大であり、40%を超える、または20%以下になると大幅に低下していることが分かる。屈曲2次振動の歪み分布を有限要素解析によって調べてみると、歪みは素子の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4程度中心寄りの領域において、素子の長辺側の側面近傍に局所的に集中している。したがって、局所的な励振をすることで、幾分は振動効率が低下すると思われるが、必要充分な振幅が得られると考えられる。屈曲2次振動の場合は、スライダの移動速度や駆動力を支配する主導的な役割であるので、励振効率は極力高い方が好まれる場合が多い。しかし、一方では消費電力の低減化に対する要望も多い。つまり、消費電力の低減化のために、歪みが集中する局所に、励振に必要十分な分極領域を設けてもよい。このことから、屈曲2次振動を励振するための分極領域として、各々の分極領域は、短辺側の長さは素子の長辺側側面から40%以下が好ましく、長辺側の長さは40%以下が好ましいといえる。なお、分極領域の下限値は、形状等の条件や求められる特性により変わり得る。有限要素解析等により有効と推定される最小値以上であればよいが、例えば、各1%以上、好ましくは素子の長辺側側面から3%以上、長辺側の長さ10%以上、より好ましくはそれぞれ5%以上、20%以上である。
【0019】
以下では、伸縮1次振動と屈曲2次振動を例として説明するが、伸縮振動と屈曲振動とを独立に励振するものであれば、他の振動モードの組み合わせであってもよい。もっとも、高次モードでは一般に振幅の絶対値が小さくなり、伸縮振動と屈曲振動とを独立に励振するのが困難となる上、電極配置も複雑となるため、伸縮1次振動と屈曲2次振動の組み合わせが好ましい。また、以下の例では、概ね均一な厚みを有する矩形薄板状の圧電素子を用いた場合における矩形板の4辺に平行な辺によって画された分極領域の配置について説明するが、伸縮振動や屈曲振動による歪が最大となる場所に各振動を独立して励振し得るような分極領域の形状であれば、その形状は問わず、適当な解析手法によって決定されるそのような場所に分極領域および電気的信号を印加するための電極を配置した振動子も本発明の範囲に含まれる。
【0020】
本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子の電極配置の基本構成を図1に示す。
図1に示すように、電極は伸縮1次振動用電極(図中、c)と屈曲2次振動用電極(図中、a及びb)を含む。
伸縮1次振動用電極は、伸縮1次振動を励振するための分極領域の両面、つまり圧電素子(矩形板)の対向する長辺の中点を結ぶ中心線上の少なくとも一部を含む領域に設けられる。図示していないが、cの対電極は素子の裏面に存在し、両者間に交流電圧を印加することにより伸縮1次振動を励振する。
伸縮振動励起用の電極領域は、図1では概ね十字型の領域として示しているが、前記中心線の中点を含む限りにおいて任意の形状でよく、例えば、多角形、円形、楕円形でもよい。もっとも、図1の十字型のほか、圧電素子(矩形板)の各辺に平行な辺によって画される矩形状領域が好ましい。また、圧電素子側面への短絡のため、図1及び8に示すように一辺を素子側面に接触させてもよく、図9に示すように引き出し部分を作ってもよい。なお、引き出し部分は、電極領域間の配置、外部電極や端子の配置、構造等を考慮し、これらの間の干渉や電極等による振動の抑制が最小になるように配置することが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記領域における矩形板の長辺に平行な辺が、前記長辺の長さの10%以上95%以下であることが好ましい。10%以下であっても伸縮振動を励振することは出来るが十分な励振を行なうことが困難である。一方、前述の中心点から外れた位置まで含めて電圧を印加しても励振効率は上がらず、静電容量が増すとともに電極によって却って振幅が抑制される。従って、特に図7に示すように、圧電素子の幅ほぼ全部に及ぶ矩形形状の電極とする場合は、長辺に沿った長さは、長辺全長の95%以下が好ましく、85%以下であることがより好ましい。
また、前記領域における矩形板の短辺に平行な辺が、前記短辺の長さの10%以上であることが好ましい。10%未満では分極領域の面積が小さくなりすぎるために十分な励振を行なうことが困難である。
伸縮1次振動用電極は、上記の通り、素子の分極領域の表裏面に設ける。
【0022】
また、図1に示すように、屈曲2次振動用電極(図中a及びb)は、屈曲2次振動を励振するための分極領域の両面、つまり圧電素子(矩形板)の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4だけ中心寄りの領域にそれぞれ設けられる各面2対の電極である。ここで、各対の電極は、前記中心点に対して点対称的に設られる。図示していないが、a及びbの対電極は素子の裏面に存在し、aとbに逆位相の交流電圧を印加することにより屈曲2次振動を励振する。
a及びbの電極は、互いに、また、cとの間で十分に絶縁が確保されるように設ければよいが、a及びbの電極はcとの間に0.2ないし0.5mmの隙間を設けて、充分な絶縁性を確保することが好ましい。
【0023】
本発明の振動子を超音波モータに用いる場合、早く動かしたい場合はa−b及びcに大きな交流電圧を印加する。微動領域では、cには通常通りの電圧で、a−bに印加する電圧を弱くすることにより、微調節可能な振動状態を得る。従来の振動子が発生する楕円運動と、本発明の振動子が発生する楕円運動の比較を図5に示す。各振動を独立して励振できる本発明の振動子は、移動体への加圧方向の振動だけ予め充分に励起しておき、さらに送り方向の振動を微弱に励起することができる。そのため、低電圧領域においても比較的線形な特性が得られ、しきい電圧を超えてからの急峻な特性を緩和し、微動領域の制御性を高めることができる。
【0024】
各電極は、適宜、電圧印加用のリード部分を有してもよいし、あるいは圧電素子板に電極が設けられたフレキシブル基板を接合してもよい。
また、本発明の超音波モータ用振動子は、単層の振動子に限定されず、上述の振動子を積層したものでもよい。本発明では、圧電体の全ての層に屈曲振動を励振させる部分と伸縮振動を励振させる部分を配置する。そのため、振動子全体に占める加振領域の割合も多くなり、振動効率の良い振動子が得られる。
【0025】
本発明において用いる圧電素子及び電極の材料、振動子上に電極を付与する方法、積層体とする場合の積層方法は、当分野で利用可能な任意の材料及び方法を含む。後で述べる実施例においては圧電素子材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いたが、他の圧電性材料、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム等の無機材料、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機圧電材料を用いても良い。また、後で述べる実施例においては電極材料としては、銀・パラジウム合金電極を用いたが、他の電極材料、例えば銅、銀、金、アルミニウム、白金、パラジウムあるいはこれらを含む合金等を用いても良い。電極付与方法の例としては、導電ペーストの塗布ないし印刷、メッキ、蒸着等が挙げられる。
積層体を形成する手法の例としては、圧電素子材料とバインダーを含むスラリーをシート状に成型、乾燥し、その上に図10に示すように、圧電素子側面への短絡のために引き出される引き出し電極の位置を変えた2種類の電極(内部電極)パターンを付与した後、図11に示すような順序でこれらを積層、本焼成し、さらに外部電極を設ける方法が挙げられる。図15に、個々の圧電体の内部電極と1層おきに短絡する外部電極7a、7b、8a、8bを形成した積層型の振動子を示す。もっとも、以上はいずれも例であり、この他の材料や方法を用いても本発明の振動子を製造することは可能である。
【0026】
なお、本明細書において「超音波モータ」とは、振動子の少なくとも一部の部位が圧電機構によって楕円運動を行い、他の部材を駆動し得るものをすべて含む。また、その振動周波数は、必ずしも超音波域でなくてもよく駆動源として機能し得るものであればよい。
【実施例】
【0027】
実施例1
厚さ2mm×長さ30mm×幅8.4mmの矩形状の圧電素子板を用意し、図1に準じた形状及び配置の伸縮1次振動用電極及び屈曲2次振動用電極を形成した。伸縮1次振動用電極は長さ20mmの十字型とし、圧電素子の面積の41%の大きさを有する。屈曲2次振動用の電極は、各々、長さ6mm、幅1.5mmとし、2対で圧電素子の面積の14%を有する。短辺中央部にはステータを接着した。
前記圧電振動子の端部に接着したステータの振動状態を測定した結果を図16に示す。電極aとbには位相差180度でそれぞれ100Vp-p、55.2kHzの交流電圧を印加するとともに、電極cには電極aとbに印加する信号と位相が異なる信号として、100Vp-p、同一周波数の交流電圧を印加した。なお、電極aとbに対する電極cの位相差は、端部の振動位相に90度の位相差が生じるように適宜調節した。この結果、図16に示すように、短辺中央に設けたステータは楕円運動を行なうことが確認された。電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を25Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は25%まで低減し、非常に微細な独立した制御が可能であることが確認できた。
【0028】
実施例2
厚さ2mm×長さ30mm×幅8.4mmの矩形状の圧電素子板を用意し、図8に準じた形状及び配置の伸縮1次振動用電極及び屈曲2次振動用電極を形成した。伸縮1次振動用電極は長さ6mmの矩形とし、圧電素子の面積の19%の大きさを有する。屈曲2次振動用の電極は実施例1と同様に、各々、長さ6mm、幅1.5mmとし、2対で圧電素子の面積の14%を有する。短辺中央部にはステータを接着した。また実施例1と同様に短辺中央部にはステータを接着した。
各々の電極には実施例1と同様の電圧を印加したので、以下には測定結果について実施例1との相違点について主に述べる。測定の結果、伸縮1次振動用の分極領域が素子の長辺の20%という小さな領域になったことに伴う伸縮1次振動の大幅な振幅低下が認められたが、短辺中央に設けたステータには楕円運動の発生が確認された。電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を25Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は25%まで低減し、実施例1と同様に、非常に微細な独立した制御が可能であることが確認できた。
【0029】
実施例3
厚さ2mm×長さ30mm×幅8.4mmの矩形状の圧電素子板を用意し、図9に準じた形状及び配置の伸縮1次振動用電極及び屈曲2次振動用電極を形成した。伸縮1次振動用電極は長さ20mmの矩形とし、圧電素子の面積の29%の大きさを有する。屈曲2次振動用の電極は実施例1と同様に、各々、長さ6mm、幅1.5mmとし、2対で圧電素子の面積の14%を有する。短辺中央部にはステータを接着した。また実施例1と同様に短辺中央部にはステータを接着した。
各々の電極には実施例1と同様の電圧を印加したので、以下には測定結果について実施例1及び実施例2との相違点について主に述べる。測定の結果、伸縮1次振動用の分極領域が実施例1より小さく、また実施例2より大きくなったことに伴う伸縮1次振動の振幅が実施例1より若干小さく、実施例2より大幅に大きくなったことが認められ、短辺中央に設けたステータは楕円運動を行なうことが確認された。電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を25Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は25%まで低減し、この場合でも実施例1と同様に、非常に微細な独立した制御が可能であることが確認できた。
【0030】
実施例4
実施例1〜3の電極配置を持つ、厚み0.08mmの圧電素子を35層積層した積層型の超音波モータ用振動子を形成し、実施例1ないし実施例3と同様に振動状態を測定した。圧電体の1層厚みが薄くなったことに伴い、実施例1ないし実施例3と同程度の振幅を得るために必要な印加電圧は大幅に低下し、約5Vp-pで同程度の振幅が得られた。前記電圧を印加して振動状態を測定したところ、短辺中央に設けたステータは楕円運動を行なうことが確認された。また、電極aとbと電極cの伸縮1次振動への寄与を調べるため電極aとbの印加電圧の振幅を1Vp-pまで低減したところステータの楕円運動の長径はほぼ変わらないものの(ほぼ100%)、短径は20%まで低減し、実施例1ないし実施例3と同様に、各振動モードが互いに独立した制御が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の圧電素子は、最適な電極配置を採ることで、送り方向の振幅(図3の楕円運動の横方向の振幅)と加圧方向の振幅(図3の楕円運動の縦方向の振幅)を独立で制御できる。このため、いわゆる「超音波モータ」の駆動源として広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子における電極配置の一例を示す平面図。
【図2】一般的な超音波モータの原理を示す模式図。
【図3】振動子の楕円運動と入力電圧の関係を示す模式図。
【図4】入力電圧と移動速度の関係を示す模式図。
【図5】従来の振動子と、本発明の振動子が発生する楕円運動の比較を示す模式図。
【図6】屈曲2次振動(a)と伸縮1次振動(b)を示す模式図。
【図7】屈曲2次振動の振幅分布(a)と伸縮1次振動の振幅分布(b)を示す模式図。
【図8】本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子における電極配置の他の例を示す平面図。
【図9】本発明の超音波モータ用振動子の圧電素子における電極配置の他の例を示す平面図。
【図10】圧電素子の側面への短絡のための引き出し電極の位置のパターンを示す平面図。
【図11】積層圧電型超音波モータ用振動子の積層順序の例を示す図。
【図12】伸縮1次振動の分極領域の長さと励振効率の関係を示す図。
【図13】屈曲2次振動の分極領域の長さ(長辺側)と励振効率の関係を示す図。
【図14】屈曲2次振動の分極領域の長さ(短辺側)と励振効率の関係を示す図。
【図15】積層圧電型超音波モータ用振動子を示す図。
【図16】電極a、bの印加電圧の振幅を変化させた場合のステータの振動状態を示す図。
【符号の説明】
【0033】
a 屈曲2次振動用電極
b 屈曲2次振動用電極
c 伸縮1次振動用電極
1 振動子
2 スライダ
3 固定摺動部材(ステータ)
4 ガイド
p 振動子の左端面の中心点
6 積層型振動子
7a、b 外部電極
8a、b 外部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子に、屈曲振動と伸縮振動をそれぞれ独立して励振する分極領域をもち、当該分極領域に電圧信号を印加するための電極を設けたことを特徴とする超音波モータ用振動子。
【請求項2】
圧電素子の屈曲振動と伸縮振動を励振する分極領域が、それぞれの振動による圧電素子の歪みが最大になる部位を含む請求項1記載の超音波モータ用振動子。
【請求項3】
屈曲振動が屈曲2次振動、伸縮振動が伸縮1次振動である請求項1または2記載の超音波モータ用振動子。
【請求項4】
圧電素子が矩形板であり、伸縮振動を励起する分極領域が、前記矩形板の対向する長辺及び短辺の中点を含む領域に、矩形板の各辺に平行な辺によって画される矩形または十字型領域であり、当該領域における長辺に平行な辺が、前記矩形板の長辺の長さの10%以上、95%以下であり、前記当該領域における矩形板の短辺に平行な辺が、前記矩形板の短辺の長さの10%以上である請求項3に記載の超音波モータ用振動子。
【請求項5】
圧電素子が矩形板であり、屈曲振動を励起する分極領域が、前記矩形板の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4だけ中心寄りの領域において、それぞれ設けられる各面2対の電極であり、各々の分極領域の長辺に平行な辺が前記長辺の長さの40%以下であり、短辺に平行な辺が前記短辺の長さの40%以下である請求項3に記載の超音波モータ用振動子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の圧電素子と、外部電極との短絡を目的とする引き出し電極パターンを持つ請求項1に記載の電極を積層して構成した積層圧電型超音波モータ用振動子。
【請求項1】
圧電素子に、屈曲振動と伸縮振動をそれぞれ独立して励振する分極領域をもち、当該分極領域に電圧信号を印加するための電極を設けたことを特徴とする超音波モータ用振動子。
【請求項2】
圧電素子の屈曲振動と伸縮振動を励振する分極領域が、それぞれの振動による圧電素子の歪みが最大になる部位を含む請求項1記載の超音波モータ用振動子。
【請求項3】
屈曲振動が屈曲2次振動、伸縮振動が伸縮1次振動である請求項1または2記載の超音波モータ用振動子。
【請求項4】
圧電素子が矩形板であり、伸縮振動を励起する分極領域が、前記矩形板の対向する長辺及び短辺の中点を含む領域に、矩形板の各辺に平行な辺によって画される矩形または十字型領域であり、当該領域における長辺に平行な辺が、前記矩形板の長辺の長さの10%以上、95%以下であり、前記当該領域における矩形板の短辺に平行な辺が、前記矩形板の短辺の長さの10%以上である請求項3に記載の超音波モータ用振動子。
【請求項5】
圧電素子が矩形板であり、屈曲振動を励起する分極領域が、前記矩形板の短辺から長辺に沿って長辺の長さの1/4だけ中心寄りの領域において、それぞれ設けられる各面2対の電極であり、各々の分極領域の長辺に平行な辺が前記長辺の長さの40%以下であり、短辺に平行な辺が前記短辺の長さの40%以下である請求項3に記載の超音波モータ用振動子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の圧電素子と、外部電極との短絡を目的とする引き出し電極パターンを持つ請求項1に記載の電極を積層して構成した積層圧電型超音波モータ用振動子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−54407(P2008−54407A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227479(P2006−227479)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(390010216)ニッコー株式会社 (49)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(390010216)ニッコー株式会社 (49)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【Fターム(参考)】
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