説明

超音波噴霧システム

超音波噴霧装置は、超音波振動子と、振動子の遠位端部に取付けられるホーンと、霧化すべき流体を収容するホーン内のチャンバと、放射面と、チャンバから放射面まで誘導する流路とを具える。振動子によって生成された振動は、ホーン全体にわたって放射面まで移動する。ホーンの内部チャンバを通って放射面でホーンを出るのに伴い、振動がエネルギを霧化すべき流体に放出するように誘発する。流体の運動エネルギを制御可能に増加させることで、流体に放射されるエネルギが流体の霧化を補助および/または促進する。振動を利用して流体の霧化を補助および/または促進して、流体の運動エネルギを増加させると、環境条件の変化が噴霧パターンを損なう、および/または霧化を低減させた場合に、超音波噴霧装置が所望の噴霧パターンを維持することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーンおよび/または共振構造を通過する流体を霧化、および/または霧化を補助するために、ホーンおよび/または共振構造を通って移動する超音波を用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の霧化は、超音波のような液体に作用する力によって、液体が小さな液体粒子に分割されるプロセスである。超音波噴霧システムは、非常に霧化された液体の噴霧液を作ることが望ましい場合に用いられる。例えば、超音波噴霧器は多くの場合、様々な装置や製品をコーティングをするのに用いられる。液体を超音波に曝すと、液体内に振動および/またはキャビテーションが発生し、小さい液体粒子に分裂する。Berger等による米国特許第4,153,201号、Bergerによる米国特許第4,655,393号、およびManna等による米国特許第5,516,043号は、液体を霧化するのに超音波を用いる噴霧システムの例を記載している。これらの装置はチップを具えており、当該チップを通過する超音波によって振動する。チップ内は中央流路であり、霧化すべき液体を運搬する。中央流路内の液体は、液体に作用する力によってチップの端部に向かって押し出される。チップの端部にまで達すると、霧化すべき液体がチップから放出される。次いで、チップの先端から放射される超音波が液体と衝突し、これによって当該液体を小さな液体粒子に分裂させる。
【発明の概要】
【0003】
霧状の流体の噴霧液を生成できる超音波噴霧装置が開示されている。当該装置は、後壁と前壁と少なくとも1つの側壁とを具える内部チャンバを有するホーンと、ホーンの遠位端部の放射面と、チャンバに開口する少なくとも1つの流路と、内部チャンバの前壁に始まり放射面で終端する流路とを具えている。ホーンの近位端部に連結され、発生器によって動力供給される振動子は、ホーン内に超音波振動を誘導する。超音波振動が振動子からホーンの放射面までホーン全体にわたって移動すると、ホーンの内部チャンバを通って移動して放射面でホーンを出るのに伴って、超音波エネルギを霧化すべき流体内に放出するように誘導する。流体の運動エネルギを制御可能に増加させると、流体内に放射された超音波エネルギが、流体の霧化を補助および/または促進する。超音波エネルギを利用して流体の運動エネルギを増加させることにより、流体の霧化を補助および/または促進させると、環境条件の変化が噴霧パターンを損なう、および/または霧化を低減させた場合に、超音波噴霧装置が所望の噴霧パターンを維持することが可能となる。
【0004】
通常の圧力駆動の流体噴霧器のように、超音波噴霧装置は流体内の圧力変化を用いて、霧化を促進させる運動エネルギを発生させる。霧化すべき流体は、内部チャンバに開口している流路を通って装置に流入する。その後、流体はチャンバを通って流れ、チャンバの前壁から放射面まで延在する流路に流れ込む。内部チャンバの前壁に始まる流路がチャンバよりも狭い場合、流路を流れる流体の圧力は流体の速度の増加に伴って減少する。流体の運動エネルギは速度の二乗に比例するため、流体の運動エネルギは流路を流れるにつれて増加する。流体の分子間の引力が壊れると、増加した流体の運動エネルギによって、放射面でホーンを出るときに流体が霧化される。
【0005】
残念ながら、圧力駆動の流体噴霧器は、環境条件の変化によって悪い影響をうけることがある。特に、霧状の流体が噴霧される環境の圧力の変化は、霧化レベルの低減および/または噴霧パターンの歪みを起こすことがある。流体が圧力駆動の流体噴霧器を通るとき、環境の圧力によって後方に押し戻される。従って、流体に作用する正味圧力は、噴霧器を通る流体を押出す圧力と環境の圧力との差である。運動エネルギに変換されるのは流体の正味圧力である。このように、環境圧力が増加すると正味圧力は減少し、ホーンを出る流体の運動エネルギが減少する。従って、環境圧力の増加は、流体の霧化レベルを低下させる。
【0006】
流体が噴霧される環境の圧力は、いくつかの理由によって増加することがある。例えば、自然の天候パターンは環境圧力の増加の原因となりうる。霧状の流体が基質である化学反応もまた、環境圧力を増加させることがある。例えば、霧状の流体の分子をさらに小さい分子に分離および/または分裂させる化学反応は、環境圧力の増加を招くことがある。同様に、化学反応の収率を増加させるためにホーンの外側の環境に反応物を加えても、環境圧力が増加することがある。
【0007】
流体の運動エネルギの増加によって、ホーンの様々な地点から放射される超音波エネルギが、環境圧力の増加を防止するように流体の霧化を補助してもよい。ホーンの近位端部が超音波振動子に固定される場合、振動子の動作が超音波振動をホーン内に誘導する。この振動は、ホーンの近位端部から遠位端部まで移動する超音波として概念化できる。超音波振動がホーン全体にわたって移動するとき、ホーンは収縮および伸長する。しかしながら、ホーンの長さ全体は伸長および収縮しない。代わりに、超音波振動の波節(最小の振れまたは振幅の地点)間のホーンの部分が伸長および収縮する。超音波振動の波節上に厳密に位置するホーンの部分は、伸長および収縮しない。従って、波節間のホーンの部分のみが伸長および収縮し、波節上に厳密に位置するホーンの一部は動かない。これは、超音波のホーンが物理的に別個の部分に切断されているようなものである。超音波振動の波節に相当するホーンの部分は固定して保持され、波節間の領域に相当するホーンの部分が伸長および収縮する。波節間の領域に相当するホーンの部分が小さい部分に切断された場合、最も伸長および収縮する部分は、超音波振動の波腹(最大の振れまたは振幅の地点)に相当する部分である。
【0008】
ホーンの伸長および収縮によって、内部チャンバの後壁が前後に移動する。前後に移動すると、後壁がチャンバ内の流体に超音波エネルギを放射する。後壁が前方に移動すると、チャンバ内の流体に衝突する。チャンバ内の流体に衝突すると、ゴングを撃つ小槌のように、チャンバの後壁は流体内に振動を放射、または誘導する。流体を通って移動する振動は、ホーンを通って移動する超音波振動と同一の周波数を有している。チャンバの後壁がさらに前後に移動すると、後壁はチャンバ内の流体にさらに力強く衝突し、流体内に放射される超音波振動の振幅が大きくなる。流体内に振動を誘導すると、チャンバの後壁の運動がチャンバを通って移動する流体の運動エネルギを増加させる。増加した流体の運動エネルギは、放射面で出るときの流体の霧化を向上させ、これにより、環境条件の変化によって起こる霧化の減少を抑制する。
【0009】
抑制している流体の運動エネルギの増加は、放射面から放射される超音波振動によっても誘発されることがある。内部チャンバの後壁のように、超音波振動がホーン全体にわたって移動するときに放射面も前後に移動する。従って、放射面が前方に移動すると、ホーンを出ていく流体と周囲の空気に衝突する。出ていく流体と周囲の空気に衝突すると、放射面は出ていく流体内に振動を放射または誘導する。このように、出ていく流体の運動エネルギが増加する。増加した運動エネルギはさらに、放射面で出ていく流体を霧化し、これにより、環境条件の変化によって起こる霧化の減少を抑制する。
【0010】
チャンバの後壁および/または放射面の移動によって流体に伝えられる増加した運動エネルギは、ホーン全体にわたって移動する超音波振動の振幅を調整することによって制御できる。チャンバを通って移動および/または放射面で出ていくのに伴い、超音波振動の振幅の増加が流体に伝えられる運動エネルギの量を増加させる。ホーンが、発生器を通って供給される電気信号により駆動する圧電性振動子によって、共振して超音波振動する場合、電気信号の電圧の増加がホーンを移動する超音波振動の振幅を増加させる。
【0011】
環境圧力の増加と同様に、環境圧力の減少は霧状の噴霧に悪い影響を与えることがある。流体に作用する正味圧力が運動エネルギに変換され、流体に作用する正味圧力が噴霧器を通る流体を押出す圧力と環境の圧力との差異であるため、環境圧力の減少が圧力駆動の噴霧器を出ていく流体の運動エネルギを増加させる。従って、環境圧力が減少すると、流体の出口速度が増加する。高速で噴霧器を出ると、霧状の流体の液体粒子が噴霧器から遠く離れて移動し、これにより噴霧パターンが広くなる。噴霧パターンの変化は、望ましくない結果を導くことがある。例えば、噴霧パターンが広くなると、目的の対象から離れる方向、および/または目的でない対象に向かって霧状の流体が方向づけられることがある。従って、環境圧力の減少が、好ましくなく霧状の噴霧を拡散させる結果となりうる。
【0012】
ホーン全体にわたって移動する超音波の振幅を調整すると、放射面で生成された霧状の噴霧を集中させるのに有用となりうる。放射面から放射される超音波振動を利用して、集中した噴霧の生成が達成され、噴霧パターンを制限して方向づけてもよい。放射面から放射される超音波振動は、放射面の外部境界内に生成される霧状の噴霧の大半を方向づけて制限してもよい。放射面から放射される超音波振動によって得られる制限レベルは、ホーン全体にわたって移動する超音波振動の振幅による。このように、ホーンを通過する超音波振動の振幅を増加させて、生成される噴霧パターンの幅を狭めてもよく;これによって噴霧を集中させる。例えば、噴霧が扇形に広がりすぎる場合、超音波振動の振幅を増加させて噴霧パターンを狭めてもよい。反対に、噴霧が狭すぎる場合、超音波振動の振幅を減少させて噴霧パターンを広げてもよい。
【0013】
放射面の幾何学形状を変更することにより、噴霧パターンの形状もまた変更できる。平面を有する放射面を用いて、ほぼ円柱状の噴霧パターンの生成を達成できる。先細の放射面を用いて、ホーンの幅よりも小さい幅の噴霧パターンの生成を達成できる。凹状の放射面を用いて、さらに集中した噴霧を達成できる。このような構成では、凹状の放射面から放射される超音波は、放射面の焦点を通して噴霧を集中させてもよい。特定の地点に向かってではないが、放射面の内側境界に向かって生成された噴霧を集中または集束させることが望ましい場合、ホーンの中心軸を向いた傾斜部を有する放射面を用いることが望ましい場合がある。放射面の傾斜部から放射される超音波は、霧状の噴霧を内側へ中心軸に向かって方向づけてもよい。当然ながら、集中した噴霧が望ましくない場合がありうる。例えば、霧状の液体を広い表面積に素早く塗布することが望ましい場合がありうる。このような場合では、凸状の放射面を利用すると、ホーンの幅よりも広い噴霧パターンを生成することができる。利用される放射面は、限定ではないが、内側凸部を囲んでいる外側凹部、および/または内側円錐部を覆っている外側平面部といった、上述の構成の任意の組み合わせを有してもよい。ホーン内の共振振動を誘導すると、上述の噴霧パターンの生成が容易となるが、必ずしも必要ではない。
【0014】
上記および/または下記に挙げるものに加えて、他の利点および/または動作の機構が、本発明による装置によって導き出されうるということに注目および理解されたい。本明細書に示されている動作の機構は、厳密には理論上のものであり、本開示および/または添付の特許請求の範囲を限定することを決して意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1aおよび図1bは、超音波噴霧装置の実施形態の断面図を示している。
【図2】図2a乃至図2eは、放射面の代替的な実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
超音波噴霧装置の好適な実施形態が、図面に示され、以下に詳細が記載されている。当該技術分野の当業者は、調査をすると、霧化装置によってもたらされる利点を理解するであろう。
【0017】
図1aおよび図1bは超音波噴霧装置の実施形態を図示しており、当該装置はホーン101と、発生器116によって動力供給されるホーン101の近位面117に取付けられた超音波振動子102とを具えている。超音波振動子および発生器は当該技術分野において周知であるため、本明細書に詳細を記載する必要はない。超音波ホーン101は、近位面117と、近位面117と反対側の放射面111と、近位面117と放射面111との間に延在する少なくとも1つの外周面118とを具える。ホーン101の内部にあるものは、後壁104と、前壁105と、後壁104と前壁105との間に延在する少なくとも1つの側壁113と、後壁104内の超音波レンズ122とを具える内部チャンバ103である。ホーン101内に振動を誘導するために、超音波振動子102が近位面117に機械的に連結されてもよい。ホーン101を振動子102に機械的に取付(例えば、ねじ接続で固定)、接着して取付、および/または溶接することによって、ホーン101を振動子102に機械的に連結することが達成されてもよい。ホーン101と振動子102とを機械的に連結する他の手段は、当該技術分野の当業者にとって簡単に認識可能であり、上記の手段の組み合わせまたは代替の手段が用いられてもよい。代替的には、ホーン101および振動子102は単一の要素であってもよい。振動子102がホーン101に機械的に連結される場合、発生器116から供給された電気信号で駆動する振動子102は、ホーン101内に超音波振動114を誘導する。振動子102が圧電性振動子の場合、ホーン101全体にわたって移動する超音波振動114の振幅は、振動子102を駆動する電気信号の電圧を増大させることで増加されてもよい。
【0018】
超音波振動114がホーン101全体にわたって移動するのに伴い、後壁104が前後に振動する。後壁104の前後の動きが、レンズ122からチャンバ103内の流体に超音波振動を放出するように誘導する。レンズ122上の少なくとも一点がホーン101を通過する超音波振動114のほぼ波腹に位置するように後壁104を位置決めすることによって、チャンバ103内の流体に放射される超音波振動の量および/または振幅を最大限にしてもよい。好適には、レンズ122の中心は超音波振動114のほぼ波腹に位置する。レンズ122から放射される超音波振動が矢印119で示されており、チャンバ103の前方に向かって移動する。前壁105の発振および/または振幅を最小限にするため、前壁105上の少なくとも一点が超音波振動114の波節に位置するように、前壁105を位置決めすることが望ましい。好適には、前壁105の中心は超音波振動114のほぼ波節に位置する。
【0019】
図1aに図示されている特定のレンズは、凹部123を具えている。凹部123が少なくとも2次元において全体的に放射形状を形成する場合、レンズ122の凹部123から放射された、矢印119によって示される超音波振動は、歪みがない集束パターンで放射形状の焦点124に向かって移動する。超音波振動119が焦点124で集束すると、振動119によって伝わる超音波エネルギが焦点124で集中してもよい。このため、チャンバ103を通過する流体は、焦点124において最大限に集中した超音波エネルギに曝される。従って、超音波で誘発される流体の運動エネルギの増加は、焦点124で最大となる。前壁105の流路110の開口部と近接するように、流路110の開口部またはその近くに焦点124を位置決めし、これによって、流体が流路110に流入するときに、最大限の運動エネルギの増加が得られる。
【0020】
別の方法あるいは組み合わせでは、チャンバの後壁内の超音波レンズはさらに、凸部を具えてもよい。例えば、チャンバの後壁内の超音波レンズは、内側凸部を取り囲む外側凹部を具えてもよい。
【0021】
チャンバ103の前壁105は、図1aに示されるような傾斜部125を具えてもよい。前壁105の傾斜部125は、チャンバ103を通して流路110に流体を流し込むことができる。レンズ122から放射される超音波振動が流路110の開口部に近い地点に向けて指向される場合、前壁105の傾斜部125は、超音波レンズ122の周辺境界から放射された超音波振動を集束させる角度と同じか、それ以上の角度を形成することが望ましい。
【0022】
流体および/または霧化すべき流体は、外周面118に始まりチャンバ103に開口する少なくとも1つの流路109を通って、図1aおよび図1bに示されている実施形態のチャンバ103に流入する。好適には、流路109は、ホーン101全体にわたって移動、および/またはレンズ122から放射される超音波振動114の波節を包含する。別の方法あるいは組み合わせでは、流路109は、外周面118に始まり後壁104においてチャンバ103に開口してもよい。流路109を出ると、流体はチャンバ103を通って流れる。次いで、流体は、前壁105内に始まり放射面111内で終端する流路110を通ってチャンバ103を出る。霧化すべき流体が流路110を通過すると、流体の圧力は減少し、速度が増加する。従って、流体が流路110を通って流れると、流体に作用する圧力が運動エネルギに変換される。流路110を通過するときに流体が十分な運動エネルギを得た場合、流体の分子間の引力が破壊されて、放射面111で流路110を出るときに流体が霧化される。ホーン101を通過する流体が、流路110を通って通過することで得られる運動エネルギによって霧化される場合、チャンバ103の最大高さ(h)は流路110の最大幅(w)よりも大きくあるべきである。好適には、チャンバ103の最大高さは、流路110の最大幅の約200倍か、それ以上にすべきである。
【0023】
放射面111上の少なくとも一点は、ホーン101を通過する超音波振動114のほぼ波腹に位置することが好ましい。
【0024】
製造を簡略化するために、超音波ホーン101はさらに、遠位端部に取付けられるキャップ112を具えてもよい。キャップ112は、ホーン101の遠位端部に、機械的に取付(例えば、ねじ接続で固定)、接着して取付、および/または溶接されてもよい。当該技術分野における当業者に簡単に認識されるような、取付キャップ112をホーン101に取付ける他の手段が、上記の手段の組み合わせまたは代替物で用いられてもよい。前壁105と、流路110と、放射面111と、着脱可能なキャップ112とを具えることによって、生成される流体の霧化レベルおよび/または噴霧パターンが、必要性および/または周囲環境に応じて調整できるようになる。例えば、流路110の幅は、異なる流体で所望の霧化レベルを生成するためには調整する必要がありうる。放射面の幾何学形状もまた、異なる用途に対して適切な噴霧パターンを作りだすために、変更する必要がありうる。ホーン101を通過する超音波振動114のほぼ波節点でキャップ112を本発明に取付けることで、使用中にホーン101からキャップ112が分離するのを妨げることができる。
【0025】
流路110を出る流体の霧化を向上させるために、異なる温度の流体がチャンバ103に供給されうるということは特筆すべきである。これはさらに、噴霧の量、噴霧の質を変更、および/または、噴霧される流体の乾燥工程を促進してもよい。
【0026】
本発明による超音波ホーン101の代替的な実施形態は、チャンバ103の側壁113内に開口する単一の流路109を有してもよい。複数の流路109が用いられる場合、図1aに示されるように、ホーン101の中心軸120に沿って配置されてもよい。別の方法あるいは組み合わせでは、流路109は、図1aに示されるように異なる面および/または、図1bに示されるように同じ面に配置されてもよい。
【0027】
別の方法あるいは組み合わせでは、霧化すべき流体が、近位面117に始まり後壁104内に開口する流路121を通ってチャンバ103に流入してもよい。ホーン101を通過することによって流体が霧化される場合、流路121の最大幅(w’)はチャンバ103の最大高さよりも小さくあるべきである。好適には、チャンバ103の最大高さは、流路121の最大幅の約20倍とすべきである。
【0028】
単一の流路は、霧化すべき流体をチャンバ103に供給するのに用いられてもよい。ホーン101がチャンバ103に開口している複数の流路を具える場合、少なくとも1つの流路を通ってチャンバ103に気体を供給することにより、流体の霧化が向上されてもよい。
【0029】
ホーン101およびチャンバ103は、図1に示されるように円柱形である。ホーン101およびチャンバ103はさらに他の形状に構成されてもよく、チャンバ103の形状はホーン101の形状に対応する必要はない。
【0030】
チャンバ103内で超音波振動119に曝す、および/または流体が流路110を通過することによって起こる流体の運動エネルギの増加が、放射面111でホーン101から出る流体を霧化してもよい。放射面111から放射される超音波振動によって運ばれるエネルギもまた、出ていく流体を霧化してもよい。流体の霧化の増加に加えて、あるいは代替的に、放射面111から放射される超音波振動は、霧状の流体の噴霧に向けられてもよい。
【0031】
放射面から放射される超音波振動を流路110から排出される流体の噴霧に向ける方法は、放射面111の形状に大きく依存する。図2a乃至図2eは、放射面の代替的な実施形態を図示している。図2aおよび図2bは、ほぼ円柱状の噴霧パターンを生成する平面を具える放射面111を示している。ホーンの中心軸120と垂直の少なくとも1次元においてホーンの幅よりも狭くなるように、図2bに示されるように、放射面111が先細りしていてもよい。図2aおよび図2bに示されている、放射面111から放射される超音波振動は、流路110から放射面111の外側の境界に放出される噴霧液201の殆どを方向づけて、制限してもよい。結果として、図4aおよび図4bの流路110から放出される噴霧液201の大部分は、各放射面の幾何学境界に最初に制限される。
【0032】
図2cに示されている放射面111の凸部203から放射される超音波振動は、噴霧液201を放射状、かつ、放射面111から離れる長手方向に方向づける。逆に、図2eに示されている放射面111の凹部204から放射される超音波振動は、焦点202を通して噴霧液201を集中させる。焦点202が凹部204によって少なくとも2次元において形成される全体的な放射形状の焦点となるように、放射面111を構成することによって、焦点202に向かう噴霧液201を最大限に集中させることが達成されてもよい。放射面111はさらに、図2dに示されるような円錐部205を有してもよい。円錐部205から放射される超音波振動は、霧状の噴霧液201を内側に方向づけてもよい。放射面は、限定ではないが、内側凸部を取り囲む外側凹部および/または内側円錐部を囲んでいる外側平面部といった、上記の形状の任意の組み合わせを有してもよい。
【0033】
放射面の形状に係わらず、ホーン全体にわたって移動する超音波振動の振幅を調整することが、生成される霧状の噴霧液を集中させるのに有用となりうる。放射面から放射される超音波振動および/または超音波エネルギの振動の伝達によって得られる制限レベルは、ホーンを移動する超音波振動の振幅による。このように、超音波振動の振幅を増加させて、生成される噴霧パターンの幅を狭めてもよく;これにより生成される噴霧を集中させる。例えば、流体の噴霧が放射面の幾何学的な範囲を超える、すなわち扇形に広がりすぎる場合、超音波振動の振幅を増加させて噴霧を狭くしてもよい。逆に、噴霧が狭すぎる場合、超音波振動の振幅を減少させて噴霧を広くしてもよい。近位端部に取付けられた圧電性振動子によってホーンが共振して振動する場合、振動子を駆動する電気信号の電圧を増加させることによって、ホーンの全体にわたって移動する超音波振動の振幅の増加が達成されてもよい。
【0034】
ホーンは、約16kHzまたはそれ以上の周波数で共振して振動可能であってもよい。ホーン全体にわたって移動する超音波振動は、約1ミクロンまたはそれ以上の振幅を有してもよい。ホーンは、約20kHz乃至約200kHzの周波数で共振して振動できることが好ましい。ホーンは、約30kHzの周波数で共振して振動できることが推奨される。
【0035】
超音波振動子を駆動する信号は、正弦波、矩形波、三角波、台形波、またはその組み合わせであってもよい。
【0036】
記載された単数形の要素、および/または「前記」という要素は、複数形においても用いられうることを理解すべきである。また、複数で記載された要素は単数形にも用いられうることを理解すべきである。
【0037】
装置および方法の特定の実施形態が本明細書に例示および記載されてきたが、当該技術分野における当業者は、任意の配置、組み合わせ、および/または同じ目的を達成するよう意図された一連のものが、示された特定の実施形態に代用されうることを理解すべきである。以上の記載は例示であって制限を意図するものでないと理解すべきである。上記の実施形態および他の実施形態、さらには一連の上記方法および他の使用方法の組み合わせは、本開示を調査すると、当該技術分野の当業者にとっては自明である。
【0038】
特許請求される装置および方法の範囲は、添付の特許請求の範囲に関して、これらの請求項が権利を享受する完全な範囲の均等物と共に定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ホーンおよび/または共振構造を通過する流体を霧化、および/または霧化を補助するために、ホーンおよび/または共振構造を移動する超音波を用いる装置に関する。

【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.近位面と;
b.前記近位面と反対側の放射面と;
c.近位端部と前記放射面との間に延在する少なくとも1つの外周面と;
d.内部チャンバであって:
i.後壁と;
ii.前壁と;
iii.前記後壁と前記前壁との間に延在する少なくとも1つの側壁と;
iv.前記後壁内の超音波レンズと、を具える内部チャンバと;
e.前記放射面以外の面に始まり前記内部チャンバに開口する少なくとも1つの流路と;
f.前記内部チャンバの前記前壁に始まり前記放射面で終端する流路と;
を具えており、
g.約16kHzまたはそれ以上の周波数で共振して振動可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記チャンバの前記後壁内の前記超音波レンズ上の少なくとも一点が、当該装置の振動のほぼ波腹に位置することをさらに特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記放射面上の少なくとも一点が、当該装置の振動のほぼ波腹に位置することをさらに特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記チャンバの前記前壁上の少なくとも一点が、当該装置の振動のほぼ波節に位置することをさらに特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記チャンバに開口する前記流路が、前記外周面に始まり、振動のほぼ波節で前記内部チャンバの前記側壁に開口することをさらに特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、振動子が、前記近位面に取付けられることをさらに特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、発生器が、前記振動子を駆動することをさらに特徴とする装置。
【請求項8】
a.近位面と;
b.前記近位面と反対側の放射面と;
c.近位端部と前記放射面との間に延在する少なくとも1つの外周面と;
d.内部チャンバであって:
i.後壁と;
ii.前壁と;
iii.前記後壁と前記前壁との間に延在する少なくとも1つの側壁と;
iv.前記後壁内の超音波レンズと、を具える内部チャンバと;
e.前記放射面以外の面に始まり前記内部チャンバに開口する少なくとも1つの流路と;
f.前記内部チャンバの前記前壁に始まり前記放射面で終端する流路と、を具えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、前記内部チャンバの最大高さが、前記内部チャンバの前記前壁に始まる前記流路の最大幅よりも大きいことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8に記載の装置において、前記内部チャンバの最大高さが、前記内部チャンバの前記前壁に始まる前記流路の最大幅の約200倍大きいことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項8に記載の装置において、前記チャンバに開口する前記流路が、前記近位面に始まり、前記内部チャンバの前記後壁に開口しており、前記内部チャンバの最大高さが前記流路の最大幅よりも大きいことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項8に記載の装置において、前記チャンバに開口する前記流路が、前記近位面に始まり、前記内部チャンバの前記後壁に開口しており、前記内部チャンバの最大高さが前記流路の最大幅の約20倍大きいことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項8に記載の装置がさらに、少なくとも2次元において全体的な放射形状を形成する前記超音波レンズ内に、1または複数の凹部を具えることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、前記凹部または前記超音波レンズの一部によって形成される放物線の焦点が、前記内部チャンバの前記前壁内に始まる前記流路の開口部の近位に位置することを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項8に記載の装置がさらに、前記放射面内に少なくとも1つの平面部を具えることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項8に記載の装置がさらに、前記近位面から前記放射面に延在する中心軸と、前記中心軸と垂直に方向づけられる少なくとも1次元において当該装置の幅よりも狭い前記放射面の領域とを具えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項8に記載の装置がさらに、前記放射面内に少なくとも1つの凹部を具えることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項8に記載の装置がさらに、前記放射面内に少なくとも1つの凸部を具えることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項8に記載の装置がさらに、前記放射面内に少なくとも1つの円錐部を具えることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項8に記載の装置がさらに、当該装置を約16kHzまたはそれ以上の周波数で共振して振動するように誘導可能な前記近位面に取付けられる振動子を具えることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置がさらに、前記振動子を駆動するための発生器を具えることを特徴とする装置。


【公表番号】特表2011−511708(P2011−511708A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546099(P2010−546099)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/033614
【国際公開番号】WO2009/102679
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510219224)
【氏名又は名称原語表記】BABAEV,Eilaz
【Fターム(参考)】