説明

超音波変換器のアレイ

【課題】本発明は、高い圧電結合係数kの圧電層を有する改善された超音波変換器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、基板(1)と、膜(2)と、第1の電極(4)と、圧電層(5)と、第2の電極(6)とを夫々有する超音波変換器のアレイに関わり、基板(1)は、膜(2)と一つの側において隣り合う少なくとも一つの開口部(3)を有し、圧電層(5)は高い圧電結合係数kを有しテクスチャされている。本発明は、超音波変換器、及び、超音波変換器のアレイを製造する方法に更に関わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と、膜と、第1の電極と、圧電層と、第2の電極とを夫々が有し、上記基板が、膜と一つの側で隣り合う少なくとも一つの開口部を有する超音波変換器のアレイに関わる。本発明は、更に、超音波変換器、及び、超音波変換器を製造する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
超音波の生成は、純粋に機械的手段、又は、磁気ひずみ或いは圧電効果を利用する電気音響変換器を用いて行われる。超音波は、今日では技術的に容易に実現できるため、幅広く使用されている。従って、超音波は、医学診断又は非破壊材料試験において画像を生成するために使用される。
【0003】
最も幅広く使用されている電気音響変換器は、圧電効果に基づいている。実際、一次元の又は二次元のアレイシステムが単一の変換器システムに加えて最も使用されている。二次元アレイシステムは、三次元画像を表示することに関して特に好ましい。
【0004】
音響変換器における圧電素子の励起は、数kHz乃至数MHzの周波数でAC場において、又は、特に画像生成のいずれかにおいて、数MHzの基礎周波数及び100%までの相対帯域幅の短い発振バーストによって行われる。場の方向における圧電素子の往復運動は、例えば、水又は生物学的組織のような結合された媒体中で連続的な又は脈打つ超音波を生成する。組織の密度に依存して変化する反射、及び、路の長さと共に変化するスループット時間は、医学診断における画像生成のために利用される。
【0005】
圧電超音波変換器は、今日では圧電セラミックブロックから製造されている。正確に定められた寸法を有し、上側及び下側に電極のある圧電セラミックブロックは、実装予備的形成品においてアレイに取り付けられる。
【0006】
これら従来のシステムの不都合な点は、制御回路が別個で構成され、システム中に組み込まれ得ない点である。
【0007】
より安価な超音波変換器アレイシステムは、いわゆる圧電マイクロマシン超音波変換器(PMUT)によって形成される。圧電超音波変換器のアレイは、シリコン上に直接的に設けられる。このような超音波変換器は、シリコン基板以外に第1の電極、圧電層、及び、第2の電極が設けられる膜を有する。膜は、開口部が形成されるようシリコンをエッチングすることを通じて簡単に得られ得る。圧電素子の長さにおける変化は、膜を振動させるように励起させる。このような超音波変換器のアレイを製造するためには、一つのシリコン基板上に幾つかの膜を形成するよう幾つかの開口部が生成される。
【0008】
このような超音波変換器は、US5,956,292(特許文献1)から公知である。圧電層のために使用される材料は、例えば、ZnO、AlN、LiNbO、PbZrTi1−x(O1)、BaTiO、又は、SrTiOのようなセラミック材料である。
【0009】
しかしながら、広帯域周波数適用に関して、特に高い圧電結合係数kの材料が要求される。
【特許文献1】米国特許第5,956,292号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、高い圧電結合係数kの圧電層を有する改善された超音波変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、基板と、膜と、第1の電極と、圧電層と、第2の電極とを夫々有し、上記基板が、膜と一つの側で隣り合う開口部を少なくとも一つ有する超音波変換器のアレイを用いて実現され、このとき上記圧電層は構造を有する表面である。
【0012】
多結晶圧電層と比較して圧電層を構造化することを通じて圧電結合係数kが明らかに増加される。
【0013】
圧電層は、単結晶層であることが好ましい。
【0014】
圧電層が単結晶層によって形成される場合、完全に理想的な構造が得られる。
【0015】
一つの電極の材料が構造化されていることも更に好ましい。
【0016】
構造を有する電極上に圧電層を製造することは、圧電層の材料を構造化させることを可能にする。
【0017】
圧電層は、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Ni1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Sc1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Zn1/3Nb2/3)1-x-y(Mn1/2Nb1/2)xTiyO3 (0<=x<=1, 0<=y<=1), Pb(In1/2Nb1/2)O3-PbTiO3, Sr3TaGa3Si2O14, K(Sr1-xBax)2Nb5O15 (0<=x<=1), Na(Sr1-xBax)2Nb5O15 (0<=x<=1), BaTiO3, (K1-xNax)NbO3 (0<=x<=1), (Bi,Na,K,Pb,Ba)TiO3, (Bi,Na)TiO3, Bi7Ti4NbO21, (K1-xNax)NbO3-(Bi,Na,K,Pb,Ba)TiO3 (0<=x<=1), a(BixNa1-x)TiO3-b(KNbO3-c)-(1/2)(Bi2O3-Sc2O3) (0<=x<=1, a+b+c=1), (BaaSrbCac)TixZr1-xO3 (0<=x<=1, a+b+c=1), (BaaSrbLac)Bi4Ti4O15 (a+b+c=1), Bi4Ti3O12, LiNbO3, La3Ga5.5Nb0.5O14, La3Ga5SiO14, La3Ga5.5Ta0.5O14,及びPbZrxTi1-xO3 (0<=x<=1)から成る群から選択される材料を有することが特に好ましい。またその材料には、La、Mn、Fe、Sb、Sr、Niのドーパント又はこれらドーパントの組み合せがドープされたものも、ドープされていないものも含まれる。
【0018】
障壁層が圧電層に面する、基板の側に設けられることが有利である。
【0019】
この障壁層は、変換器の処理中、膜とその上にある層との間の化学的相互作用を防止する。
【0020】
第1の及び第2の電極が圧電層の両端に配置されることが好ましい。
【0021】
電極を圧電層の両端に配置することにより、圧電層のポールされた動作が可能となる。
【0022】
電極が圧電層の同じ表面上に配置されることも好ましい。
【0023】
少なくとも一つの更なる電極が第1の電極と第2の電極との間に配置されることが更に好ましい。
【0024】
変換器の電気インピーダンスは、この電極配置によって減少される。
【0025】
少なくとも2つの電極が同じ極性を有し、少なくとも一つの電極が反対の極性を有することが有利であり、同じ極性の電極は並列に結合される。
【0026】
これにより変換器の電気インピーダンスが減少される。
【0027】
複数の電極同心を形成することが好ましい。
【0028】
本発明は、基板と、膜と、第1の電極と、圧電層と、第2の電極とを夫々有し、上記基板が、膜と一つの側で隣り合う少なくとも一つの開口部を有する超音波変換器のアレイに関わり、このアレイは膜の圧電層に面する側に障壁層が設けられることを特徴とする。
【0029】
この障壁層は、変換器の処理中、膜とその上にある層との間の化学的相互作用を防止する。
【0030】
一方の電極が障壁層上に形成される構造を有する電極であることが好ましい。
【0031】
障壁層が膜の層の曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を有することが更に好ましい。
【0032】
変換器の中立面と圧電層との間の距離が圧電層の厚さよりも大きいことが有利である。
【0033】
この対策により、有効な結合係数が高められる。
【0034】
障壁層が圧電層の厚さよりも厚いことが更に有利である。
【0035】
本発明は、基板と、膜と、第1の電極と、圧電層と、第2の電極とを夫々有し、基板が、膜と一つの側で隣り合う少なくとも一つの開口部を有する超音波変換器に更に関わり、上記圧電層は構造を有する層である。
【0036】
本発明は、基板と、膜と、第1の電極と、圧電層と、第2の電極とを夫々有し、基板が、膜と一つの側で隣り合う少なくとも一つの開口部を有する超音波変換器のアレイを製造する方法に更に関わり、このとき上記圧電層は構造を有するように製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は、図面及び10の実施例を参照して以下に詳細に説明する。
【0038】
図1において、超音波変換器の可能な実施例は、例えば、シリコン、(100)配向又は(111)配向を有するシリコン、(100)配向を有するMgO、LaAlO、サファイア、GaAs、例えば、ZrO或いはAlのようなセラミック材料、例えば、平坦化層を夫々有するZrO或いはAlのようなセラミック材料、ガラスセラミック材料、又は、ガラス材料を有し得る基板1を含む。無機材料、有機材料、又は、無機及び有機材料の組み合せを有し得る膜2が基板1に設けられる。使用される無機材料は、例えば、SiC、SiO、多結晶シリコン、Si、又は、これら材料から成る積層システムでもよい。少なくとも一つの開口部3がエッチング又はスタンピングを手段として基板1に形成される。開口部3は、膜2と一つの側で隣り合う。開口部3上にある膜2は、この開口部により振動することが可能である。基板1が、配向、例えば、(100)配向を有するMgOの材料を有する場合、開口部3が基板1を完全に通らず、薄層が残留し膜2を形成することが好ましくなり得る。
【0039】
第1の電極4は、膜2の上にあり、この電極は、例えば、50nm乃至1μmの層の厚さを有するPt、1乃至20nmの層の厚さを有するTi/20乃至600nmの層の厚さを有するPt、1乃至20nmの層の厚さを有するTi/20乃至600nmの層の厚さを有するPt、1乃至20nmの層の厚さを有するTi、
【0040】
【表3】

を有する。圧電層5は、第1の電極4に設けられる。圧電層5の層の厚さは、1乃至50μmであることが好ましい。より高い帯域幅を実現するためには、高い圧電結合係数kの材料が圧電層5に使用される。第2の電極6が圧電層5に設けられ、この電極は、例えば、Al、SiでドーピングされたAl、CuでドーピングされたAl、50nm乃至1μmの層の厚さを有するPt、1乃至20nmの層の厚さを有するTi/20乃至600nmの層の厚さを有するPt、1乃至20nmの層の厚さを有するTi/20乃至600nmの層の厚さを有するPt、1乃至20nmの層の厚さを有するTi、
【0041】
【表4】

を有する。図に示す以外の代替の実施例では、電極4、6は、圧電層5の横方向のポール動作のために圧電層5の横の両端に配置されてもよい。変換器の電気インピーダンスを減少するために、更なる電極が圧電層5の端の間で横方向に設けられてもよい。例えば、4つの電極が圧電層5の横の表面にわたって離散的な位置で形成されてもよく、このとき交番電極は交番極性を有し、及び、同じ極性を有する電極は電気インピーダンスを減少させるために並列して結合される。
【0042】
膜2と第1の電極4との間に障壁層7が設けられることも有利である。この障壁層7は、膜2とその上にある層、例えば、第1の電極4又は圧電層5との間の可能な化学的相互作用を防止する。障壁層7は、例えば、Al、ZrO、TiO、HfO、MgO、又は、LaAlO、並びに幾つかのこれら材料の合成物を有してもよい。更に、構造を有する電極が障壁層7上に容易に形成され得る。障壁層7は、膜の層の曲げ剛性よりも実質的に少ない曲げ剛性を有することが好ましい。この特性は、障壁層7の厚さと共に、変換器の中立面と圧電層5との間の距離を圧電層5の厚さよりも幾らか大きくすることを可能にし、変換器の有効な結合係数を改善する。障壁層7が圧電層5よりも厚いことが好ましい。
【0043】
電圧は、第1の電流供給接触部8及び第2の電流供給接触9を通じて圧電層5に印加され得、各電流供給接触部は夫々の電極4、6に接続され、圧電層5は従って振動され得る。圧電層5が音響エネルギーによって励起される場合、結果となる電圧は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9を通じて切断され、測定され得る。
【0044】
有機材料又は無機材料、或いは、それら材料の組み合せの保護層は、超音波変換器全体にわたって設けられてもよい。使用される有機材料は、例えば、ポリベンゾシクロブテン又はポリイミドでもよく、無機材料は、例えば、Si、SiO、又はSi(01、01、01)でもよい。
【0045】
圧電層5中の材料は、高い圧電結合係数kを実現するために好ましくは柱状成長によって構造が形成される構造が形成された圧電層5中の圧電材料の結晶は、外部のサンプリング幾何学に対して好ましい方向を有し、夫々の結晶学的向きに関して互いに対して統計的にランダムに配置されていない。
【0046】
テクスチャ構造の圧電層5は、例えば、ゾル・ゲル処理、スパッタリング、CVD(化学気相成長)処理、又は、プリント手法のような薄膜処理を用いて実現されてもよい。圧電層5は、予め焼結され機械的に処理された圧電材料の層を結合又は接着することで第1の電極4上に設けられてもよい。
【0047】
更なる代替物はいわゆるテンプレート・グレイン成長(TGG)方法によって形成される。この方法では、多結晶層が単結晶テンプレート上に設けられる。多結晶層は、高温で加熱することで構造を有する単結晶層に変換される。
【0048】
圧電層5に使用され得る材料は、例えば、強誘電体、電気歪材料、並びに特別な圧電材料である。従って、例えば、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Ni1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Sc1/3Nb2/3)O3-PbTiO3, Pb(Zn1/3Nb2/3)1-x-y(Mn1/2Nb1/2)xTiyO3 (0<=x<=1, 0<=y<=1), Pb(In1/2Nb1/2)O3-PbTiO3, Sr3TaGa3Si2O14, K(Sr1-xBax)2Nb5O15 (0<=x<=1), Na(Sr1-xBax)2Nb5O15 (0<=x<=1), BaTiO3, (K1-xNax)NbO3 (0<=x<=1), (Bi,Na,K,Pb,Ba)TiO3, (Bi,Na)TiO3, Bi7Ti4NbO21, (K1-xNax)NbO3-(Bi,Na,K,Pb,Ba)TiO3 (0<=x<=1), a(BixNa1-x)TiO3-b(KNbO3-c)-(1/2)(Bi2O3-Sc2O3) (0<=x<=1, a+b+c=1), (BaaSrbCac)TixZr1-xO3 (0<=x<=1, a+b+c=1), (BaaSrbLac)Bi4Ti4O15 (a+b+c=1), Bi4Ti3O12, LiNbO3, La3Ga5.5Nb0.5O14, La3Ga5SiO14, La3Ga5.5Ta0.5O14,及びPbZrxTi1-xO3 (0<=x<=1)圧電層5に使用されてもよい。またこれらの材料には、La、Mn、Fe、Sb、Sr、Niのドーパント又はこれらのドーパントの組み合せがドープされても良いし、ドープされなくても良い。
【0049】
方向付けられた第1の電極4、構造を有する障壁層7、又は、構造を有する膜2上への圧電層5の構成された堆積は、圧電層5の構造に影響を与えることができる。
【0050】
従って、熱的に予熱されていない(111)配向を有するPtの第1の電極4を用いることで(111)配向を有する圧電層を成長することができる。(111)配向を有するPtの熱的に予熱された第1の電極を使用することで、(100)及び(111)配向、又は、(100)配向だけの圧電層を成長することが可能となる。
【0051】
(111)配向を有するPtの熱的に予熱された第1の電極4上に堆積する以外に圧電層5の材料の成長に影響を与える別の方法が使用されてもよい。
【0052】
膜2又は(100)配向を有するMgOの障壁層7を使用することは、(100)配向を有するPtを第1の電極4として成長することを可能にする。結果として、上記圧電材料は、構造を有する層の状態で、テクスチャ構造の第1の電極4上で成長され得る。
【0053】
圧電層5の構造は、例えば、レーザアニーリングのような更なる処理を通じて単結晶状態の方に更に改善され得る。
【0054】
圧電層5の成長、結晶度、及び配向を改善するためには、第1の電極4上に核生成された層が設けられてもよい。
【0055】
圧電結合係数kを高める更なる可能性は、圧電層5におけるセラミック材料を極性化することである。セラミック材料は、第1の及び第2の電極4、6にバイアス電圧を印加することを通じて場の方向に分極され得る。
【0056】
図1に示す超音波変換器の実施例では、第1の電極4は、圧電層5の下に配置され、第2の電極6は圧電層5の上に配置される。第1の及び第2の電流供給接触部8、9を通じて電極4、6にAC電圧を印加することは、圧電層5を縦方向又は層の厚さに対して垂直な横方向に振動するように励起させる。
【0057】
或いは、電極4、6は、圧電層5の一つの側、例えば、膜2と反対側にだけ構成された方法で設けられてもよい。この場合、AC電圧を印加することは、層の面において圧電層5を縦方向に振動にさせるように励起させる。核生成層は、この場合、成長、結晶度、及び配向のために障壁層7に設けられてもよい。
【0058】
或いは、基板1は、その背面側にSiO又はSi、或いは、これら材料の組み合せの絶縁層を有してもよい。
【0059】
複数のこのような超音波変換器が基板1上に設けられてもよい。超音波変換器の一次元の又は二次元のアレイは、個々の超音波変換器の適切な電気接続を通じて製造され得る。圧電層5と、第1の及び第2の電極4、6と、存在するならば核生成層とは、個々の超音波変換器が互いから空間的に分離されるようにしてこの場合構成される。
【0060】
膜2は、超音波変換器のアレイを製造するために基板1上に形成される。この目的のために、適切な材料の層が基板1上に堆積されてもよい。開口部3は、エッチング処理を手段として基板1中に形成されてもよく、この開口部は、基板1を完全に通り、膜によって一つの側に境界が付けられる。
【0061】
或いは、例えば、基板1は、部分的にだけエッチングされ、それにより薄層が残留し、膜2となる。
【0062】
障壁層7は、膜2上に設けられてもよい。第1の電極4は、開口部3が存在する基板の全ての場所において適用可能であれば膜2又は障壁層7に設けられる。構造を有する圧電層5は、各第1の電極4上に設けられ、第2の電極6は各圧電層5の上に設けられる。第1の及び第2の電極4、6には、第1の及び第2の電流供給接触8、9が夫々設けられる。
【0063】
或いは、開口部3は、膜2の中に部分的に延在してもよい。この目的のためには、開口部3の相互に対向する領域にある膜2の一部分は、例えば、エッチング又はスパッタリングを通じて除去される。膜2の共振振動数及び音響インピーダンスは、この対策によって音響的に振動されるよう媒体に適合され得る。
【0064】
図2は、超音波変換器の更なる実施例を示す。本実施例では、開口部3の相互に対向する領域にある膜2の一部分が例えば、エッチング又はスパッタリングを手段として除去される。更に、例えば、障壁層7、第1の電極4、圧電層5、及び、第2の電極6のような膜2の上にある層の幅は、最大でも開口部3と隣り合う膜2の領域位の幅である。層は、従って、図2に対して垂直にとられる断面で基板1に接続されている。
【0065】
セラミック材料の基板1を有する超音波変換器の製造は、代替の方法で行われてもよい。このためには、最初に基板1が例えば、ZrO或いはAlのようなセラミックパウダー、及び有機結合剤からフィルムキャスティング処理において製造される。開口部は、超音波変換器のアレイに対して要求される数においてスタンピング処理で基板1中に形成される。このとき基板は、セラミック材料のフィルムで完全に覆われ、ラミネートされ、焼結される。第1の電極4は、開口部3がある基板1中の全ての場所において焼結された膜2の上に設けられる。核生成層、例えば、BiTi12を有する核生成層は、各電極4に設けられる。核生成層は、第1の電極4を部分的に、好ましくはその10%を覆う。このとき圧電層5のセラミック材料が核生成層上に、好ましくは厚フィルム処理で設けられ、1275℃で構造を有するように焼結される。圧電層5においてどの配向が存在するかは、セラミック材料の正確な組成及びドーピングに依存する。最後に、第2の電極6は、核圧電層5上に設けられ、各電極4、6は夫々の電流供給接触部8、9を具備する。
【0066】
或いは、他の方法が構造を有する圧電層5を製造するために使用されてもよく、例えば、構造を有する基板1、構造を有する障壁層7、又は、構造を有する第1の電極4を使用してもよい。
【0067】
超音波変換器のアレイ又は一つの超音波変換器の構成、及び、様々な層及び/又は開口部3の成形における代替物は、当業者に公知である。
【0068】
本発明の実施例を以下により詳細に説明し、本発明がどのようにして実際に実現されるかを示す。
【実施例1】
【0069】
実施例1
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコン基板1を有する。反対側には、SiO/Si/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。TiOの障壁層7が膜2上にある。Ti/Ptの第1の電極4は、基板1中の開口部3がエッチングされた全ての場所において障壁層7に設けられる。第1の電極4のPtを含む層は、(111)配向を有するように成長される。(100)配向及び(111)配向を有するPbZr0.35Ti0.65の層は、圧電層5を形成するよう各第1の電極4上に設けられる。Ptの第2の電極6は、各圧電層5上に設けられる。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。個々の超音波変換器夫々に高められた温度でバイアス電圧を印加することは、圧電層5中のセラミック材料を場の方向に分極する。それにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例2】
【0070】
実施例2
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコン基板1を有する。反対側には、SiO/多結晶シリコン/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。TiOの障壁層7が膜2上にある。Ti/Ptの第1の電極4は、基板1中の開口部3がエッチングされた全ての場所において障壁層7に設けられる。第1の電極4のPtを含む層は、(111)配向を有するように成長されるPbZr0.35Ti0.65。の薄い核生成層は、各第1の電極4に設けられる。(001)配向を有するPb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5を形成するよう各核生成層に生長される。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。個々の超音波変換器夫々に高められた温度でバイアス電圧を印加することは、圧電層5中のセラミック材料を場の方向に分極する。それにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例3】
【0071】
実施例3
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコン基板1を有する。反対側には、SiO/多結晶シリコン/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。TiOの障壁層7が膜2上にある。Ti/Ptの第1の電極4は、基板1中の開口部3がエッチングされた全ての場所において障壁層7に設けられる。第1の電極4のPtを含む層は、(111)配向を有するように成長される。PbZr0.35Ti0.65の薄い核生成層は、各第1の電極4に設けられる。(001)配向及び(111)配向を有するPb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5を形成するよう各核生成層に生長される。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。個々の超音波変換器夫々に高められた温度でバイアス電圧を印加することは、圧電層5中のセラミック材料を場の方向に分極する。それにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例4】
【0072】
実施例4
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を支持するシリコンの基板1を有する。反対側には、SiO/多結晶シリコン/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。開口部3の相互に対向する領域にある膜2の一部分は、エッチングを手段として除去される。ZrOの障壁層7が膜2上にある。Ti/Ptの第1の電極4は基板1中の、開口部3がある全ての場所において障壁層7に設けられる。第1の電極4のPtを含む層は、(111)配向を有するように成長される。PbZr0.35Ti0.65の薄い核生成層は、各第1の電極4に設けられる。(001)配向及び(111)配向を有するPb(Ni1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5を形成するよう各核生成層に生長される。TiW/Alの第2の電極6は、各圧電層5上にある。膜の上にある層の幅は、開口部3の領域において最大でも膜2の幅である。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。これにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例5】
【0073】
実施例5
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコンの基板1を含む。反対側には、SiO/多結晶シリコン/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。(100)配向を有するMgOの障壁層7が膜2上にある。PbZr0.35Ti0.65の薄い核生成層は、基板1中の開口部3がある全ての場所において障壁層7に設けられる。(001)配向を有するPb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5として各核生成層上に設けられる。TiW/Alの第1の及び第2の電極4、6は各圧電層5上にある。2つの電極4、6は、圧電層5の上側にある2つの電極表面が毎回超音波変換器を形成するように構成される。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。これにより、各超音波変換器が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例6】
【0074】
実施例6
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコンの基板1を含む。反対側には、SiO/Siの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。(100)配向を有するMgOの障壁層7が膜2上にある。(100)配向を有しランタン及びマンガンでドーピングされたPbZr0.15Ti0.85の層は、圧電層5を形成するよう障壁層7に成長される。Ptの第1の及び第2の電極4、6が各圧電層5上にある。2つの電極4、6は、圧電層5の上側にある2つの電極表面が毎回超音波変換器を形成するように構成される。超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。個々の超音波変換器夫々に高められた温度でバイアス電圧を印加することは、圧電層5中のセラミック材料を場の方向に分極する。これにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例7】
【0075】
実施例7
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコン基板1を有する。反対側には、SiO/Si/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。(100)配向を有するMgOの障壁層7が膜2上にある。Ti/Ptの第1の電極4は、基板1中の開口部3がある全ての場所において障壁層7に設けられる。第1の電極4のPtを含む層は、(100)配向を有するように成長される。PbZr0.35Ti0.65の薄い核生成層は、各第1の電極4に設けられる。(001)配向を有するPb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5を形成するよう各核生成層に生長される。Ptの第2の電極6が各圧電層5上にある。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。これにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例8】
【0076】
実施例8
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコン基板1を有する。反対側には、SiO/Si/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。(100)配向を有するMgOの障壁層7が膜2上にある。Ti/Ptの第1の電極4は、基板1中の開口部3がある全ての場所において障壁層7に設けられる。第1の電極4のPtを含む層は、(100)配向を有するように成長される。(001)配向を有するPb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5を形成するよう各第1の電極4に生長される。Ptの第2の電極6が各圧電層5上にある。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。個々の超音波変換器は、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1に電気的に接続されている。これにより、超音波変換器夫々が非常に高い圧電結合係数kを有する超音波変換器のアレイが得られる。
【実施例9】
【0077】
実施例9
超音波変換器のアレイは、一方の側にSi及びSiOの絶縁層を有するシリコン基板1を有する。反対側には、SiO/多結晶シリコン/SiOの積層システムから成る膜2が設けられる。基板1は、膜2と一つの側で夫々隣り合う複数の開口部3を有する。(100)配向を有するMgOの障壁層7が膜2上にある。PbZr0.35Ti0.65の薄い核生成層は基板1の開口部3がある全ての場所において障壁層7に設けられる。(001)配向を有するPb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiOの層は、圧電層5を形成するよう各核生成層に生長される。TiW/Alの第1の及び第2の電極4、6は、各圧電層5上にある。2つの電極は、圧電層5の上側にある2つの電極表面が毎回超音波変換器を形成するように構成される。各超音波変換器の第1の及び第2の電極4、6は、第1の及び第2の電流供給接触部8、9に夫々接続されている。これらは、一次元アレイの超音波変換器が得られるよう基板1上の他の超音波変換器に電気的に接続されている。
【実施例10】
【0078】
実施例10
超音波変換器のアレイは、平均的な粒の大きさが0.4μmのイットリウム安定化されたZrO及び適切な有機結合剤からフィルムキャスティング処理で製造される400μmの厚さの基板1を有する。開口部3は、超音波変換器の予想されるアレイに対して必要な数のスタンピング処理で基板1中に形成される。開口部3は、基板の中を完全に通る。基板1は、その後第2の、10μmの厚さのフィルムのイットリウム安定化されたZrOで完全に覆われ、ラミネートされ、焼結される。それにより、焼結された膜2を有する基板1が得られる。Ptの第1の電極4は、基板1中の開口部がある全ての場所において焼結された膜2に設けられる。第1の電極4は、2乃至5μmの平均的な径を有するBiTi12の針状結晶の核生成層で約10%コーティングされる。針状結晶は、第1の電極4上に平坦におかれ、それにより、好ましい方向を示し、その後の焼結処理において結晶核として機能する。次に30μmの厚さのセラミックパウダーの形態で厚フィルム処理において各核生成層上にPb(Sc1/3Nb2/3)O−PbTiOが設けられ、1275℃で構造を有するように焼結される。Agの夫々の第2の電極6がその後に設けられる。第1の及び第2の電極4、6夫々には第1の及び第2の電流供給接触部8、9が設けられ、一次元のアレイの超音波変換器が得られるように基板1上の他の超音波変換器と接続される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】超音波変換器の構成を示す断面図である。
【図2】更なる超音波変換器の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 基板
2 膜
3 開口部
4 第1の電極
5 圧電層
6 第2の電極
7 障壁層
8 第1の電流供給接触部
9 第2の電流供給接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、膜と、第1の電極と、圧電層と、第2の電極とを夫々有し、上記基板が、上記膜と一つの側において隣り合う少なくとも一つの開口部を有する超音波変換器のアレイであって、上記膜の上記圧電層に面する側に障壁層が設けられることを特徴とする超音波変換器のアレイ。
【請求項2】
一方の電極が上記障壁層に形成される構造を有する電極であることを特徴とする請求項記載の超音波変換器のアレイ。
【請求項3】
上記障壁層が上記膜の層の曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を有することを特徴とする請求項記載の超音波変換器のアレイ。
【請求項4】
変換器の中立面と上記圧電層との間の距離が上記圧電層の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項記載の超音波変換器のアレイ。
【請求項5】
上記障壁層が上記圧電層よりも厚いことを特徴とする請求項記載の超音波変換器のアレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−15423(P2011−15423A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185823(P2010−185823)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【分割の表示】特願2007−98761(P2007−98761)の分割
【原出願日】平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】