説明

超音波定常波アトマイザー装置

本発明は、ワークピースを塗装するための塗料の噴霧ミストを生成するための超音波定常波アトマイザー装置10,40,50,60,70,80に係る。この装置は、ソノトロード12,48、及び、このソノトロード12,48に対向して配置されたコンポーネント14,46を備える。運転の際に、定常波超音波場が、前記ソノトロード12,48と前記コンポーネント14の間の中間のスペースに形成される。この装置は、更に、塗料供給デバイス29を備え、それによって、超音波場のサウンド・パーティクル速度の極大部の近傍に塗料を送り込むことができる。この塗料供給デバイス29は、前記定常波超音波場の領域の中に、塗料を吐出するための少なくとも二つのパイプ片30,31,32;42,43,44を備え、これらのパイプ片30,31,32;42,43,44の内の少なくとも二つは、定常波超音波場のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中に、配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを塗装するための塗料の噴霧ミストを生成するための超音波定常波アトマイザー装置に係る。この装置は、ソノトロードと、このソノトロードに対向して配置されたコンポーネントとを備え、運転の際に、前記ソノトロードと前記コンポーネントの中間のスペースの中に定常波超音波場が形成される。この装置は、更に、塗料供給デバイスを備え、この塗料供給デバイスによって、前記定常波超音波場のサウンド・パーティクル速度の極大部の近傍に塗料を送り込むことができる。
【背景技術】
【0002】
ワークピースの塗料のために、特に、自動車産業でしばしば見られるようなマスプロダクションの際の塗装のために、今日、広く知られた高回転速度アトマイザーが、好ましくは使用されている。高回転速度アトマイザーのケースでは、塗料は、金属製ベルの内側を通り、そのようにして、このベルの前側(ワークピースに面している)に到達する。この金属製ベルは、通常、圧縮空気のタービンによって駆動され、最大80,000回転/分で回転する。このケースで働く遠心力が、塗料を金属製ベルの前側のエッジに到達させ、そこで、微細な液滴に粉砕する。このことは、塗料のコーティングの適切な質に対して要求される塗料の噴霧ミストの液滴のサイズが、10μmから60μmの領域に入ると言う効果をもたらす。
【0003】
広く知られるようになったファンメンタルズを検討すると、原理的に、塗料は、定常波超音波アトマイゼーションによってもアトマイズすることができると言うことが分かる。しかしながら、この原理について調べて見ると、アトマイゼーション中の平均液滴サイズとして、100μmと200μmの間の値が観察され、いくつかの例では、更に大きな液滴も観察された。しかしながら、この種の大きな液滴は、塗料のコーティングの品質に悪い影響を与え、その結果、塗装工程での採用を魅力の乏しいものにしている。
【0004】
より小さな液滴サイズを実現することを目的として、ワークピースを塗装するための塗料の噴霧ミストを生成するための超音波定常波アトマイザー装置をどのようにして設計することができるかについての提案が、これまでに成されてきた。生成される塗料の噴霧ミストを改善し、その結果として、比較的小さな液滴サイズを実現するために、例えば、ソノトロードや、コンポーネント、シャット・オフ要素またはマルチ・ピース・リングなどの特定のデザインが知られるようになっている。問題は、既知の装置では、塗料の比較的僅かな部分しかアトマイズされないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような既存技術に鑑み、本発明の目的は、塗料のアトマイズ量、即ち塗料の吐出量、を増大させることが可能で、それと同時に、生成される液滴サイズの選択範囲を維持することが可能な、塗料の噴霧ミストを生成するための超音波定常波アトマイザー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に規定されている本発明によるワークピースの塗装のための塗料の噴霧ミストを生成するための超音波定常波アトマイザー装置によって実現される。
【0007】
本発明による超音波定常波アトマイザー装置は、先に記載したようなタイプの装置であって、定常波超音波場の領域の中に、塗料を吐出するための少なくとも二つのパイプ片を有する塗料供給デバイスを備えている。更に、上記パイプ片の内の少なくとも二つは、前記定常波超音波場の前記サウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中に配置されている。
【0008】
本発明によれば、超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部が、塗料の比較的大きな部分をアトマイズして塗料の液滴に変える目的で使用される。その理由は、次のことが見出されたからである。即ち、特に、単純な構造の超音波定常波アトマイザー装置のケースでは、サウンド・パーティクル速度の選択された極大部は、しばしば、定常波超音波場の中に、特に良好に形成される。例えば、サウンド・パーティクル速度の波腹の数が奇数の定常波超音波場の場合には、中央のサウンド・パーティクル速度の波腹の中に、特に良好に形成される。換言すると、比較的高いサウンド・パーティクル速度の場合に、この極大部が特に安定する。
【0009】
本発明によれば、上記の選択された極大部による、これらの特に良好なアトマイジングの性質が、アトマイズされる塗料の量を増大させるために、あるいは、塗料供給デバイスから吐出される塗料の流量を増大させるために使用される。即ち、本発明によれば、塗料を吐出するための少なくとも二つのパイプ片が、上記の選択された極大部の領域の中に配置される。その結果として、アトマイズされる塗料の量を効果的に増大させることが可能になる。
【0010】
本発明による超音波定常波アトマイザー装置の効果的なデザインは、上記コンポーネントが、もう一つのソノトロードである場合に実現される。このようにして、定常波超音波場のアトマイズ能力が、増大される。更に、このようにして、より安定した超音波場を形成することが可能になる。
【0011】
本発明の主題の効果的な更なる実施形態によれば、上記の選択された極大部の領域中での上記パイプ片の間の距離が、各パイプ片毎に互いに離れた塗料のシートが形成されるように、選択される。振動に関連する技術的な理由で、塗料のシートが、いずれのケースでも各パイプ片にそれぞれ形成され、塗料の吐出口から伸びる。もし、パイプ片の相互間の距離が、塗料のシートが互いに影響を与えることなく互いに十分離れて形成されるように選択された場合には、いずれのケースでも、異なる塗料のシートの液滴が衝突することによって、より大きな液滴が形成される領域が無くなる。この提案された配置により、塗料の噴霧ミストの質が改善される。
【0012】
超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の内で、上記の少なくとも二つのパイプ片の塗料吐出口が一つの直線上に配置され、且つ、上記直線が、上記ソノトロードと上記コンポーネントの互いに対向するサウンド・フェイスの図心を通る仮想中心線に対して垂直であることは、特に効果的である。このタイプの配置の場合、パイプ片の塗料吐出口と上記ソノトロード間の距離、及びパイプ片の塗料吐出口と上記コンポーネントの間の距離は、ほぼ同一である。特に効果的な位置は、X軸方向に見たとき、サウンド・パーティクル速度の極大部の領域の中にある。
【0013】
上記のような効果はまた、3本のパイプ片が、超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中に配置され、且つ、これらのパイプ片即ちその塗料吐出口が、三角形状に配置された場合に実現される。正三角形状の配置は、特に好ましい。更なる改善では、上記三角形によって決定される領域が、上記ソノトロードと上記コンポーネントの互いに対向するサウンド・フェイスの図心を通る仮想中心線に対して垂直である。このケースでもまた、上記のような効果は、X軸方向に見たとき、塗料吐出口がサウンド・パーティクル速度の極大部の領域の中に配置された場合に実現される。
【0014】
また、見出されたところによれば、アトマイジングの作用あるいはアトマイジングの速度は、特定された極大部の位置を、それが上記コンポーネントよりも上記ソノトロードに近いように選択することによって、改善することができる。
【0015】
そのとき、いわゆる毛管波乱流効果(capillary wave turbulence effect)の可能性がある、この効果は、塗料の液滴を上記ソノトロードから離れた位置に維持し、その結果として、塗料の液滴を振動させ、そのようにして、アトマイゼーションのプロセスを助ける。
【0016】
本発明の主題の更に効果的な実施形態は、従属請求項から得ることができる。
【0017】
本発明、その効果、及び本発明の更なる改善については、以下の添付図面によって特定される実施形態の例を用いて、より詳細に説明され記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、本発明による第一の超音波定常波アトマイザー装置10を等角投影法で示す。座標は、デカルト座標系によるX、Y及びZ軸方向を表す矢印で示されている。更に、この図は、概略の特徴を表すことのみを目的とするものであり、従って、この図から実際の寸法を導き出すことはできない。
【0019】
第一のソノトロード12は、第一の反射ボディ14に対向して配置されている。この図において、ソノトロード12は、円筒状の基礎ボディ16によって概略的に表され、上記円筒状の基礎ボディ16の端面から突出するサウンド・ボディ18が、反射ボディ14の方向に向いている。サウンド・ボディ18及び基礎ボディ16は、ほぼ円筒の形状を有している。サウンド・ボディ18と第一の反射ボディ14の互いに対向する端面を、それぞれ、サウンド・ボディ18の端面のための第一のサウンド・フェイス20、及び、反射ボディ14の端面のための第二のサウンド・フェイス22、と呼ぶことにする。
【0020】
第一のサウンド・フェイス20及び第二のサウンド・フェイス22は、凹面として形成されている、即ち、それらの形は、仮想中空球体の表面の一部分にほぼ近似している。このことを表すために、第一の点線24及び第二の点線24が、第一のサウンド・フェイス20の上に描かれている。第一のライン24及び第二のライン26の交点は、正確に第一のサウンド・フェイス20の中心に位置している。これらの第一のライン24及び第二のライン26に対応する線が、同様に、第二のサウンド・フェイス22の上に描かれている。但し、参照符号は付されていない。また、第一のライン24と第二のライン26、及び第二のサウンド・フェイス22の対応する二つのラインの交点を通るように、中心軸28が示されている。この中心軸28の方向は、X座標の方向に正確に一致している。
【0021】
第一のサウンド・フェイス20と第二のサウンド・フェイス22の間の中間のスペースの中に、第一のパイプ片30、第二のパイプ片31及び第三のパイプ片32が示されている。これらのパイプ片の自由端は、正確に、サウンド・フェイス20,22の中間点に配置されている。換言すれば、パイプ片30,31,32は、互いに隣り合うように配置され、それらの自由端は、中心軸28と第二のライン26によって規定される一つの平面上に配置される。更に、自由端の全ては、一つの仮想直線によって結ばれる。これらのパイプ片30,31,32の長手方向の軸は、Y軸方向に対して平行に配置され、上記自由端から離れた端で塗料供給デバイス29(この図の中には、詳細な形態までは描かれていない)に接続されている。この塗料供給デバイス29は、第一の超音波定常波アトマイザー装置10でアトマイズするように要求された量の塗料を供給する。
【0022】
しかしながら、本発明のアイデアはまた、オプションとして、パイプ片30,31,32のそれぞれが、別個の塗料供給デバイス29に接続される形態をも包含する。これは、いずれにせよ、ここに描かれている塗料供給デバイス29によって、意図されていることである。
【0023】
そのために、これらのパイプ片30,31,32の上記他方の端は、あたかも、自由空間の中で終るように描かれているが、そこには、実際には、塗料供給デバイス29との接続部がある。
【0024】
第一のサウンド・フェイス20と第二のサウンド・フェイス22の間の定常波超音波場の中で、起こっているプロセスを、より良く表現することを可能にするために、超音波定常波のサウンド・パーティクル速度5個の波腹のプロファイルが、中間のスペースの中に示されている。このプロファイルは、中心軸の回りに、より正確に言うとX軸方向及びY軸方向によって規定される平面の中に、示されている。
【0025】
ここに示された例では、第一のサウンド・フェイス20と上記パイプ片30,31,32の間の第一の距離34、及び、上記パイプ片30,31,32と第二のサウンド・フェイス22の間の第二の距離36は、互いに等しい。従って、次のことが明らかである、上記パイプ片30,31,32の自由端はまた、サウンド・パーティクル速度の極大部の部分の一つのみに配置されている。換言すれば、サウンド・パーティクル速度の5個の波腹の内の中央の波腹の中に配置されている。
【0026】
この配置のために選択された第一の超音波定常波アトマイザー装置10のデザインにおいて、第一の距離34及び第二の距離36の距離は、振動数24kHzの超音波に対して、17mmが得られ、サウンド・パーティクル速度は、5個の波腹を持つ。換言すれば、クリーニングまたは方向付け用エアのための適当なスペースが得られる。このエアは、アトマイゼーションプロセスを助けるために、あるいは、塗料のパーティクルの方向を定めるために、使用することが可能である。このような配置、即ち三つのパイプ片30,31,32がサウンド・パーティクル速度の唯一つの波腹の中に(即ち、サウンド・パーティクル”速度の極大部の領域の中に)置かれた配置、を用いることにより、特に高い塗料の吐出量、特に200mL/min以上の塗料の吐出量、を容易に実現することができると言う有利な効果が得られる。更に、そのことは、アトマイズされた塗料の液滴の径の分布が、許容し得る範囲に収められることを確保する。このアトマイゼーションのプロセスは、この図の中で、上記パイプ片30,31,32の自由端の部分に象徴的に描かれている。即ち、多くの小さな塗料パーティクルが、誇張して描かれたアトマイゼーション・バブルの回りに、描かれている。
【0027】
図2に第二の超音波定常波アトマイザー装置40を示す。この装置は、第一の超音波定常波アトマイザー装置10と実質的に同じコンポーネントを有するように意図されているので、同等のコンポーネントに対して、同一の参照符号が付されている。第一の超音波定常波アトマイザー装置10と第二の超音波定常波アトマイザー装置40の間の主要な相違点は、図1に示された配置とは異なり、パイプ片30,31,32の位置がサウンド・ボディ18と第一の反射ボディの間の中央ではなく、サウンド・ボディ18に近い部分にあることである。パイプ片30;31,32の位置は、塗料吐出口が超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部にあるように、正確に言うと、サウンド・ボディ18から見て二番目の極大部にあるように選択されている。従って、換言すれば、サウンド・ボディ18と上記パイプ片30,31,32の間の第三の距離38は、パイプ片30,31,32第一の反射ボディ14の間の距離として規定される第四の距離39よりも小さい。
【0028】
ここに示された配置のケースでは、パイプ片30,31,32が第一のソノトロード12により近いという優位性があることが分かる。その理由は、次のことが見出されたからである。即ち、第一のソノトロード12のサウンド・ボディ18の振動は、アトマイズされた塗料の液滴がソノトロードに付着することを、比較的良く防止するからである。あるいは、換言すれば、サウンド・ボディ18の振動によって、塗料の液滴がソノトロードから遠ざけられるからである。
【0029】
それに加えて、パイプ片30,31,32及びアトマイズされた塗料パーティクルで示されるアトマイズされたバブルの図は、それぞれ互いに独立に作用するアトマイズ領域が、パイプ片30,31,32の自由端によって形成されるように、パイプ片30,31,32の間の距離が選択されていることを示している。換言すれば、互いに離れた塗料のシートが、各パイプ片30,31,32に対して形成される。このことは次のような優位性をもたらす。即ち、吐出された塗料がアトマイズされて、パーティクルになる領域は、互いに、妨げられることがない。その結果、アトマイズ作用が改善され、比較的高いアトマイズ速度が実現される。
【0030】
図3に、本発明の主題を具体化するための、更に効果的な可能性を、第三の超音波定常波アトマイザー装置50を用いて示す。この装置は、第一の超音波定常波アトマイザー装置10と、実質的に同じ構造を備えている。使用されているコンポーネント同士の比較を容易にするため、同等のコンポーネントに対して同一の参照符号が付されている。
【0031】
この図における配置と図2における配置との間の相違点は、この図では、第四のパイプ片42、第五のパイプ片43及び第六のパイプ片44が、サウンド・ボディ18と第一の反射ボディ14の間の丁度中央に、正確に配置されていることである。従って、パイプ片42,43,44の対応する塗料吐出口は、サウンド・パーティクル速度の中央の極大部の領域の中に配置されているが、これらの塗料吐出口はもはや、X及びZ軸方向によって規定される平面の中に配置されておらず、その代わりに、中央の第五のパイプ片43が、X及びZ軸によって規定される平面の上方(Y軸方向に正側の位置)に配置され、第四のパイプ片42及び第六のパイプ片44が、X及びZ軸によって規定される平面の下側に配置されている。しかしながら、三つの塗料吐出口は、全て、Y及びZ軸によって規定される平面に対して平行な一つの平面の中に配置されている。従って、これらの三つの塗料吐出口は、Y及びZ軸によって規定される平面に対して平行な一つの平面の中に位置する仮想三角形を構成するように配置されている。
【0032】
このデザインは、次のような優位性を有する。即ち、塗料吐出口の相互の間の距離を、サウンド・パーティクル速度の選択された一つの極大部の位置から外れることなく、更に増大させることができる。このようにして、アトマイゼーションを更に改善することが可能になり、それと同時に、塗料の流量を増大させることが可能になる。
【0033】
図4に第四の超音波定常波アトマイザー装置60を示す。この装置は、第二の反射ボディ46を備え、この第二の反射ボディ46は、第二のソノトロード48に対向するように配置されている。三本の第一の小径ペイントパイプ52が、第二の反射ボディ46と第二のソノトロード48の間の中間部分に配置されている。図1において既に示されているものと同様に、第一の小径ペイントパイプの塗料吐出口は、Z軸方向の仮想線に沿って配置されている。ここに示された配置の特徴は、第二のソノトロード48の第二のサウンド・ボディ54、及び第二の反射ボディ46の形状が、直方体状であり、第二のサウンド・ボディ54及び第二の反射ボディ46の互い対向するサウンド・フェイス、換言すれば、第二のサウンド・ボディ54の第三のサウンド・フェイス56及び第二の反射ボディ46の第四のサウンド・フェイス48が、円筒状のボディの表面の一部に相当する形状を備えていることである。
【0034】
このケースでは、上記の円筒状のボディの仮想中心軸が、第一の小径ペイントパイプ52の塗料吐出口を通るライン62に対して平行な場合に、効果があることが分かる。上記仮想円筒の中心軸の投影線64が、第三のサウンド・フェイス56及び第四のサウンド・フェイス58の上で、破線で描かれている。このような配置によって、定常波超音波場の中のサウンド・パーティクル速度の極大部が最大限に大きくなると言う効果が得られる。換言すれば、上記極大部の位置は、ライン62の方向(ここでは、Z軸方向に一致している)に可能な限り大きな広がりを持つ。
【0035】
図5に、第五の超音波定常波アトマイザー装置70を示す。このケースで示されている配置は、図4に示された配置と同様であり、第二の小径ペイントパイプ52が、第五のサウンド・フェイス66と第六のサウンド・フェイス68の間の中間位置に配置されている。図4に示されたサウンド・フェイスとの相違点は、第五のサウンド・フェイス66及び第六のサウンド・フェイス68が、複数の平面から構成されており、これらの複数の平面からなる形状が、全体として、円筒状のボディの表面の一部に近似していることである。このようにした場合にも、定常波超音波場内の最大サウンド・パーティクル速度の領域を広げることができる。
【0036】
最後に、図6に、第六の超音波定常波アトマイザー装置を示す。この装置は、図1に示された例と同様に、第一の反射ボディ14を備えた第一のソノトロード12に基づいている。従って、参照符号は、図1と同一の符号を引き継いでいる。このケースでは、3本の第二の小径ペイントパイプ72が、図1に示されているパイプ片30,31,32と同様な方法で、配置されている。従って、ソノトロード12からの距離と第一の反射ボディ14からの距離が等しく、その距離は、この図において、第二の距離36として示されている。更に、この図の中に示されているように、3本の第三の小径ペイントパイプ74が、図1に示されているパイプ片30,31,32の位置に相当する位置に配置されている。換言すれば、第三の小径ペイントパイプ74とサウンド・ボディ18との間の距離は、図2による第三の距離38に相当している。第三の距離38は、図6の中に示されている。
【0037】
従って、本発明の主題のこの実施形態において、合計で6本の小径ペイントパイプ72,74が、第一のソノトロード12と第一の反射ボディ14の間に配置される。より正確に言えば、それぞれ3本の小径ペイントパイプ72,74から構成される二つのグループが配置され、その結果、3本の小径ペイントパイプ74は、それぞれ、サウンド・ボディ18の前方のサウンド・パーティクル速度の第二の極大部に配置され、3本の小径ペイントパイプ72は、サウンド・パーティクル速度の第三の極大部に配置され、従って、第三の極大部の先に配置される。このような配置によって、塗料のアトマイゼーションの速度を更に増大させることができる。
以上に例として挙げたいずれの配置においても、更なる手段のいずれがが、アトマイゼーションに対してまたは塗装プロセスに対して、それなりに有効に作用するかについて、詳細には示されていない。例えば、クリーニング用エアは、広く示されたやり方で、アトマイズされた塗料がソノトロードまたは反射ボディに付着することを実質的に防止するために、使用することができる。更に、方向付け用エアは、アトマイズされた塗料パーティクルを、要求された塗装方向へ飛ばすために、使用することができる。
【0038】
塗装方向を調整するプロセスは、塗料パーティクルを静電的にチャージすることによっても、補助することができる。このチャ−ジングは、広く知られているやり方によって、内部的に、換言すれば、高い電位にある塗料を供給することによって、行うことができる。あるいは、外部チャ−ジングによって、行うこともできる。その場合、アトマイズされた塗料が、高電圧が付加され且つアトマイジング位置の近傍に配置されたニードルによって、チャージされる。その場合、塗装対象のワークピースは、通常、アース電位に接続され、それによって、電気的にチャージされた塗料パーティクルは、ワークピースの方向へ飛ぶ。なお、内部チャ−ジング及び外部チャ−ジングを併用することも可能である。
【0039】
その他に、反射ボディとして、更なるソノトロードを用いることも考えられる。その場合には、定常波超音波場が特に強く形成されるという優位性が得られる。更に、そのようなやり方によって、超音波場の制御性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、第一の超音波定常波アトマイザー装置を示す。
【図2】図2は、第二の超音波定常波アトマイザー装置を示す。
【図3】図3は、第三の超音波定常波アトマイザー装置を示す。
【図4】図4は、第四の超音波定常波アトマイザー装置を示す。
【図5】図5は、第五の超音波定常波アトマイザー装置を示す。
【図6】図6は、第六の超音波定常波アトマイザー装置を示す。
【符号の説明】
【0041】
10・・・第一の超音波定常波アトマイザー装置、12・・・第一のソノトロード、14・・・第一の反射ボディ、16・・・基礎ボディ、18・・・第一のサウンド・ボディ、20・・・第一のサウンド・フェイス、22・・・第二のサウンド・フェイス、24・・・第一のライン、26・・・第二のライン、28・・・中心軸、30・・・第一のパイプ片、31・・・第二のパイプ片、32・・・第三のパイプ片、34・・・第一の距離、36・・・第二の距離、38・・・第三の距離、39・・・第四の距離、40・・・第二の超音波定常波アトマイザー装置、42・・・第四のパイプ片、43・・・第五のパイプ片、44・・・第六のパイプ片、46・・・第二の反射ボディ、48・・・第二のソノトロード、50・・・第三の超音波定常波アトマイザー装置、52・・・第一の小径ペイントパイプ、54・・・第二のサウンド・ボディ、56・・・第三のサウンド・ボディ、58・・・第四のサウンド・ボディ、60・・・第四の超音波定常波アトマイザー装置、62・・・ライン、64・・・投影線、66・・・第五のサウンド・フェイス、68・・・第六のサウンド・フェイス、70・・・第五の超音波定常波アトマイザー装置、72・・・第二の小径ペイントパイプ、74・・・第三の小径ペイントパイプ、80・・・第六の超音波定常波アトマイザー装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを塗装するための塗料の噴霧ミストを生成するための超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80)であって、
ソノトロード(12,48)と、
ソノトロード(12,48)に対向して配置されたコンポーネント(14)と、
塗料供給デバイス(29)と、を備え、
運転の際に、前記ソノトロード(12,48)と前記コンポーネント(14)の中間のスペースに定常波超音波場が形成され、且つ、前記塗料供給デバイス(29)によって、前記定常波超音波場のサウンド・パーティクル速度の極大部の近傍に塗料を送り込むことができるように構成された超音波定常波アトマイザー装置において、
前記塗料供給デバイス(29)は、前記定常波超音波場の領域の中に塗料を吐出するための少なくとも二つのパイプ片(30,31,32;42,43,44)を有し、
且つ、前記パイプ片(30,31,32;42,43,44)の内の少なくとも二つは、前記定常波超音波場のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中に配置されていること、
を特徴とする超音波定常波アトマイザー装置。
【請求項2】
下記特徴を備えた請求項1に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
前記コンポーネント(14)は、もう一つのソノトロードである。
【請求項3】
下記特徴を備えた請求項1または2に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
前記選択された極大部の領域の中の前記パイプ片(30,31,32;42,43,44)の相互間の距離は、互いに離れた塗料のシートが各パイプ片(30,31,32;42,43,44)に対して形成される程度に大きい。
【請求項4】
下記特徴を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中の前記少なくとも二つのパイプ片(30,31,32;42,43,44)の塗料吐出口は、一つの仮想直線の上に配置されており、
且つ、前記仮想直線は、前記ソノトロード(12,48)及び前記コンポーネント(14,46)の互いに対向するサウンド・フェイス(20,22,56,58)の図心を通る仮想中心線に対して垂直である。
【請求項5】
下記特徴を備えた請求項4に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
前記サウンド・フェイス(66,68)の形状は、多面体表面を用いて再現されたシリンダの表面の切片、または円筒状のシリンダの切片にほぼ対応し、
且つ、前記シリンダの長手方向の軸は、前記仮想直線(24,26,62)に対して平行である。
【請求項6】
下記特徴を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
前記パイプ片(30,31,32;42,43,44)の内の3つは、超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中に配置され、
且つ、これらのパイプ片(30,31,32;42,43,44)即ちそれらの塗料吐出口は、三角形を構成するように、特に正三角形を構成するように、配置されている。
【請求項7】
下記特徴を備えた請求項6に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
前記三角形によって決定される平面は、前記ソノトロード(12,48)及び前記コンポーネント(14,46)の互いに対向するサウンド・フェイス(20,22,56,58,66,68)の図心を通る仮想中心線に対して垂直である。
【請求項8】
下記特徴を備えた請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
超音波定常波のサウンド・パーティクル速度の選択された極大部の領域の中に配置された前記少なくとも二つのパイプ片(30,31,32;42,43,44)と前記ソノトロード(12,48)の間の距離は、これらのパイプ片(30,31,32;42,43,44)と前記コンポーネント(14,46)との間の距離に、高々等しい。
【請求項9】
下記特徴を備えた請求項1から8のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
前記少なくとも二つのパイプ片(30,31,32;42,43,44)は、疎水性の表面、特に、テトラフルオロエチレンのコーティングが施された表面を備えている。
【請求項10】
下記特徴を備えた請求項1から9のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
クリーニング用エアの流れがあり、それによって、前記ソノトロード(12,48)および/または前記コンポーネント(14,46)の濡れが防止され、または、減らされる。
【請求項11】
下記特徴を備えた請求項1から10のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
方向付け用エアの流れがあり、それによって、塗料の噴霧ミストの飛翔の方向に影響を与えることができる。
【請求項12】
下記特徴を備えた請求項1から11のいずれか1項に記載の超音波定常波アトマイザー装置(10,40,50,60,70,80):
外部および/または内部チャージングのための少なくとも一つのチャージング・デバイスを有し、それによって、塗料またはアトマイズされた塗料パーティクルを静電的にチャージすることができる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−505407(P2006−505407A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554295(P2004−554295)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011967
【国際公開番号】WO2004/048001
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(591079203)アーベーベー・パテント・ゲーエムベーハー (16)
【氏名又は名称原語表記】ABB PATENT GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】