超音波式厚み検出装置、及び、超音波式エッジ位置検出装置
【課題】 被検出物の厚みを精度良く検出することが可能な超音波式厚み検出装置を提供する。
【解決手段】 複数の受信素子7のうち被検出物10の端部が位置する受信素子7を第1の受信素子とし、その隣に位置する受信素子7を第2の受信素子とする。第1の厚みの第1のリファレンス用試料、第2の厚みの第2のリファレンス用試料、被検出物10が、それぞれ第1の受信素子7の受信レベルが規定値となるよう発振部1と受信部2との間に挿入された際の第2の受信素子における受信レベルを、それぞれ第1、第2、第3の受信レベルとする。第1の受信レベルに対する比率を第1の軸、厚みを第2の軸とする座標系に、第1及び第2の受信レベルに対応する点をプロットし、それら2点を結ぶ直線上において第3の受信レベルに対応する点を求め、その厚みを被検出物10の厚みとして検出する。
【解決手段】 複数の受信素子7のうち被検出物10の端部が位置する受信素子7を第1の受信素子とし、その隣に位置する受信素子7を第2の受信素子とする。第1の厚みの第1のリファレンス用試料、第2の厚みの第2のリファレンス用試料、被検出物10が、それぞれ第1の受信素子7の受信レベルが規定値となるよう発振部1と受信部2との間に挿入された際の第2の受信素子における受信レベルを、それぞれ第1、第2、第3の受信レベルとする。第1の受信レベルに対する比率を第1の軸、厚みを第2の軸とする座標系に、第1及び第2の受信レベルに対応する点をプロットし、それら2点を結ぶ直線上において第3の受信レベルに対応する点を求め、その厚みを被検出物10の厚みとして検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波式厚み検出装置、超音波式エッジ位置検出装置、超音波式厚み検出方法、及び、超音波式エッジ位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検出物の厚みを検出する装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1には、超音波を送波する送波器と、該送波器と対向して配置された受波器と、を備え、送波器と受波器との間に被検出物を配置し、送波器から送波した超音波を被検出物を透過させて受波器に受波させ、該受波した超音波の強度に基づいて被検出物の厚みを検出する検出装置が開示されている。すなわち、被検出物を透過する超音波の強度は、被検出物が厚いほど低下するので、受波器により受波する超音波の強度に基づき厚み検出を行うことができる。
【0004】
また、被検出物のエッジ位置(端部位置)を検出する装置としては、例えば、特許文献2に開示されたものがある。
【0005】
特許文献2には、超音波を発振する発振部と、この発振部より発振される超音波を受信する受信部と、を相互に対向した配置で備え、発振部と受信部との間に配置された被検出物の端部の位置を、受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出装置が開示されている。
【0006】
このような超音波式エッジ位置検出装置は、対となる発振素子と受信素子とを複数アレー状に並べて、所望の検出範囲を得る構造となっている。各受信素子による受信信号が連続的、かつ直線的となるようにするためには、各発振素子並びに各受信素子の配置、特に取付ピッチは重要な要素である。通常は、各受信素子の受信信号が途切れないよう、隣り合う発振素子の発振範囲、並びに隣り合う受信素子の受信範囲が互いにオーバーラップするように配置(例えば、千鳥状に配置)されている。
【0007】
このような超音波式エッジ位置検出装置において、被検出物の端部を検出する受信素子(その受信範囲に被検出物の端部が位置する受信素子)に注目すると、被検出物の端部の位置と受信素子による受信信号のレベル(受信レベル)との関係は、図11に示す曲線L10(以下、受信レベル曲線)のようになる。
【0008】
図11に示すように、受信レベル曲線L10は、受信素子の受信範囲における中心から離れるほど、その直線性が損なわれる。特に、受信素子の受信範囲が被検出物によりほぼ遮られるときの直線性、すなわち受信レベル曲線L10の右部における直線性が顕著に劣る。
【0009】
このため、できるだけ広い受信範囲で良好な直線性を得るために、受信レベル曲線L10に直線化補正を施すことによって、該受信レベル曲線L10を直線L11へ補正することが一般的である。
【特許文献1】特公平7−58178号公報
【特許文献2】米国特許第5834877号公報明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の検出装置は、超音波が被検出物を透過する量(透過量)に基づいて被検出物の厚みを検出する構成であるため、S/N比が良好な信号を安定的に得ることが困難である。このため、厚みの検出精度が悪く、僅かな厚みの差を検出することができない。よって、例えば、特許文献1に開示されているように、ウェブの継ぎ目(継ぎ目テープによって接続されているため、継ぎ目以外の部分よりも厚くなっている)を判断する程度にしか役立たない。更に、超音波が被検出物を透過するためには、超音波の音圧が高いことが要求されるため、高出力の超音波信号を発振するための駆動回路が必要である。
【0011】
また、特許文献2のようなエッジ位置検出装置では、被検出物の端部の位置と受信素子による受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線の形状は、被検出物の厚みに応じて変化する。
【0012】
図12は、被検出物の厚みを3段階に変化させたときの、被検出物の挿入量と受信素子による受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線をそれぞれ示す図である。
【0013】
図12において、受信レベル曲線L10−1は被検出物の厚みが比較的厚い場合、受信レベル曲線L10−3は被検出物の厚みが比較的薄い場合、受信レベル曲線L10−2は被検出物の厚みがそれらの中間の場合の、各々の受信レベル曲線を示す。
【0014】
図12に示すように、被検出物の挿入量が多く、受信素子の受信範囲が被検出物によりほぼ遮られるとき(各受信レベル曲線L10−1、L10−2、L10−3の右部)の直線性は、被検出物が薄くなるほど悪化する(受信レベル曲線L10−3が最も直線性が悪い)。すなわち、被検出物の厚みが薄くほど、受信レベルがゼロになる端部位置が、受信素子の受信範囲における中心から遠くなる。
【0015】
このため、被検出物の厚み毎に、それぞれ適した直線化補正を行う必要がある。つまり、被検出物の厚みが変われば、その都度、直線化補正を行う必要がある。
【0016】
なお、被検出物の厚みが変わったにもかかわらず直線化補正を新たに行わなければ、各受信素子の受信信号の連続性が悪化する結果、エッジ位置検出装置の検出精度が悪化する。
【0017】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、被検出物の厚みを精度良く検出することが可能な超音波式厚み検出装置を提供することを第1の目的とする。
【0018】
また、本発明は、本発明の超音波式厚み検出装置の技術的特徴を利用することにより、被検出物の厚みに応じた、端部位置の検出値の補正を自動的に行うことが可能な超音波式エッジ位置検出装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の超音波式厚み検出装置は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、を備え、前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出装置であって、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することを特徴としている。
【0020】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記第1の受信レベルに対する比率を第1の軸とし、厚みを第2の軸とする座標系に、前記第1の厚み及び前記第1の受信レベルに対応する第1の点と、前記第2の厚み及び前記第2の受信レベルに対応する第2の点と、をそれぞれプロットし、該プロットした2点を結ぶ直線上において前記第3の受信レベルに対応する点を求め、該求めた点に対応する前記第2の軸上における厚みを、前記被検出物の厚みとして検出することが好ましい。
【0021】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記複数の受信素子は、各受信素子の受信範囲が前記所定の方向において切れ目無いように配置されていることが好ましい。
【0022】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記第1の受信素子は、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が、前記複数の受信素子のうち最も所定値に近い受信素子であることが好ましい。
【0023】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記第1及び第2の受信素子は、受信範囲が互いに隣り合うことが好ましい。
【0024】
また、本発明の超音波式エッジ位置検出装置は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、を備え、前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出装置において、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出し、前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正することを特徴としている。
【0025】
本発明の超音波式厚み検出方法は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出方法であって、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子の受信レベルを、第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第2の受信レベルとすると、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第3の受信レベルとして検出する過程と、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、を備えることを特徴としている。
【0026】
本発明の超音波式エッジ位置検出方法は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出方法において、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとすると、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとして検出する過程と、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正する過程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することにより、該厚みを精度良く検出することができる。
【0028】
また、本発明によれば、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することにより、該厚みを精度良く検出することができる。そして、前記受信部における受信レベルに応じて前記被検出物の前記端部の位置を検出するに際しては、精度良く検出した被検出物の厚みに応じて、前記端部の位置の検出値を自動的且つ適切に補正することができる。しかも、被検出物の端部位置の検出用の発振部及び受信部を、被検出物の厚みの検出用に兼用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。
【0030】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置100の構成を示す正面図である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置100は、超音波を発振する発振部1と、発振部1から発振される超音波を受信する受信部2と、検出処理部3と、駆動処理部8と、を備えている。
【0032】
発振部1と受信部2とは相互に平行となるよう対向して配置されている。
【0033】
発振部1と受信部2との間の空間は、シート状の被検出物10が挿入される挿入領域11を構成している。
【0034】
図1に示すように、超音波式エッジ位置検出装置100は、例えば、上側に位置する上側部分100Aと、下側に位置する下側部分100Bと、これら両部分100A、100Bを相互に接続する中間部分100Cと、からなり、断面コ字形状の全体形状を有している。例えば、発振部1は上側部分100Aに、受信部2は下側部分100Bに、それぞれ配置されているが、発振部1と受信部2とは、相互に対向していれば、その他の位置関係であっても良い。
【0035】
図2(a)は発振部1の上面図、図2(b)は受信部2の上面図である。
【0036】
発振部1は、図1及び図2(a)に示すように、板状の音響整合層4と、この音響整合層4に取り付けられた複数の発振素子6と、を備えて構成されている。各発振素子6は、略同一面内に配置されている。
【0037】
同様に、受信部2も、図1及び図2(b)に示すように、板状の音響整合層4と、この音響整合層4に取り付けられた複数の受信素子7と、を備えて構成されている。各受信素子7は、略同一面内に配置されている。
【0038】
各発振素子6が配置された面と、各受信素子7が配置された面とは、互いに略平行とされている。なお、図1に示す被検出物挿入方向Sもこれらの面に対して平行であり、各発振素子6並びに各受信素子7は、それぞれ被検出物挿入方向Sに沿って配置されている。
【0039】
各発振素子6並びに各受信素子7としては、例えば、セラミック圧電素子を備えて構成されるものが一般的である。
【0040】
駆動処理部8は、発振部1が備える各発振素子6を駆動させ、各発振素子6から超音波を発振させる処理を行う。なお、駆動処理部8から各発振素子6へは、各発振素子6毎に個別の配線(図示略)が接続されており、駆動処理部8は、各発振素子6を個別に駆動させる。
【0041】
受信部2が備える各受信素子7は、発振部1より超音波を受信すると、その受信レベルに応じた受信信号を検出処理部3に出力する。なお、各受信素子7から検出処理部3へは、各受信素子7毎に個別の配線(図示略)が接続されており、各受信素子7は、検出処理部3に対し、個別に受信信号を出力する。
【0042】
検出処理部3は、受信素子7より入力される受信信号に応じて、図1に示す被検出物挿入方向Sにおける被検出物10の端部(エッジ)の位置を検出する処理と、被検出物10の厚みTを検出する処理と、を行う。
【0043】
なお、本実施形態では、図2(a)に示すように、例えば、発振素子6がH1〜H12までの12個であり、図2(b)に示すように、例えば、受信素子7もJ1〜J12までの12個である例を説明するが、各素子6,7の個数は複数であれば任意である。
【0044】
各受信素子7は、例えば、対応する1個ずつの発振素子6と対向して配置されている。すなわち、J1の受信素子7はH1の発振素子6と、J2の受信素子7はH2の発振素子6と、J3の受信素子7はH3の発振素子6と、J4の受信素子7はH4の発振素子6と、J5の受信素子7はH5の発振素子6と、J6の受信素子7はH6の発振素子6と、J7の受信素子7はH7の発振素子6と、J8の受信素子7はH8の発振素子6と、J9の受信素子7はH9の発振素子6と、J10の受信素子7はH10の発振素子6と、J11の受信素子7はH11の発振素子6と、J12の受信素子7はH12の発振素子6と、それぞれ対向している。
【0045】
各発振素子6は、受信部2、特に、対向する受信素子7に向けて超音波を発振する。
【0046】
各受信素子7は、発振部1、特に、対向する発振素子6から発振される超音波を受信する。
【0047】
ここで、図1に示すように、各発振素子6において、受信部2と対向する面のうち、超音波を発振する部位を発振面6aと称する。また、この発振面6aが受信部2側を臨む範囲、すなわち、当該発振面6aと受信部2とを結ぶ任意の垂線が存在する全ての範囲を網羅した範囲を発振範囲6bと称する。
【0048】
同様に、各受信素子7において、発振部1と対向する面のうち、超音波を受信する部位を受信面7aと称する。また、この受信面7aが発振部1側を臨む範囲、すなわち、当該受信面7aと発振部1とを結ぶ任意の垂線が存在する全ての範囲を網羅した範囲を受信範囲7aと称する。
【0049】
複数の発振素子6は、各発振素子6による発振範囲6bが被検出物挿入方向Sにおいて互いに異なり、且つ、各発振素子6による発振範囲6bが被検出物挿入方向Sにおいて切れ目無いように配置されている。具体的には、複数の発振素子6は、例えば、図2(a)及び図1に示すように、被検出物挿入方向Sに沿って、H1〜H12の順に2列の千鳥状に配置され、且つ、正面から見て隣り合う発振素子6による発振範囲6bの端部が互いにオーバーラップするように配置されている。
【0050】
同様に、複数の受信素子7は、各受信素子7による受信範囲7aが被検出物挿入方向Sにおいて互いに異なり、且つ、各受信素子7による受信範囲が被検出物挿入方向Sにおいて切れ目無いように配置されている。具体的には、複数の受信素子7も、例えば、図2(b)及び図1に示すように、被検出物挿入方向Sに沿って、J1〜J12の順に千鳥状に配置され、且つ、正面から見て隣り合う受信素子7による受信範囲7bの端部が互いにオーバーラップするように配置されている。
【0051】
発振素子6及び受信素子7をこのように並べる理由は、各受信素子7の受信範囲7bを途切れることなく繋げるためである(電気的には、各受信素子7による受信信号を互いにオーバーラップさせ、受信部2の全体視野における受信信号として演算するため)。更に、このように受信範囲7bを切れ目無く繋げることにより、図1に示す検出範囲Wの全域において、被検出物10の端部の位置を検出できるようにする。検出範囲Wは、全ての受信素子7の受信範囲7bを繋げた範囲である。
【0052】
なお、図2に示すように、発振素子6は、列毎に別個の音響整合層4上に配置され、同様に、受信素子7も、列毎に別個の音響整合層4上に配置されている。
【0053】
ここで、各受信素子7は、自身と対向する発振素子6から発振される超音波を受信する。各受信素子7が受ける音圧は、自身と対向する発振素子6から発振される超音波が被検出物10によって遮蔽される割合に応じて変化する
すなわち、J1の受信素子7における受信レベル(受信する音圧の大きさに比例する受信強度)は、J1の受信素子7から見てH1の発振素子6が被検出物10により遮蔽される割合(面積の割合)が小さいほど高く、該遮蔽される割合が大きいほど低くなる。すなわち、この受信レベルは、その割合(0%〜100%)に逆比例する。
【0054】
同様に、他の各受信素子7における受信レベルも、自身から見て対向する発振素子6が被検出物10により遮蔽される割合に逆比例する。
【0055】
以下では、各受信素子7の受信レベルは、自身から見て対向する発振素子6が被検出物10により遮蔽される割合(0%〜100%)で示す。
【0056】
すなわち、各受信素子7から見て自身と対向する発振素子6が被検出物10により、完全に遮蔽されるときは受信レベルが0(%)であり、全く遮蔽されないときは受信レベルが100(%)であり、その他のときには0%と100%との中間である。
【0057】
例えば、図3は、J7の受信素子7の受信レベルが約50%の状態を例示した平面図である。
【0058】
図4は検出処理部3の構成を示すブロック図である。
【0059】
図4に示すように、検出処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)31と、このCPU31の動作用プログラムなどを記憶保持したROM(Read Only Memory)32と、CPU31の作業領域などとして機能するRAM(Random Access Memory)33と、を備えて構成されている。
【0060】
CPU31は、ROM32に記憶されたプログラムに従って動作することにより、被検出物10の端部の位置を検出する処理と、被検出物10の厚みTを検出する処理と、を行う。
【0061】
ROM32には、被検出物10の端部の位置と受信素子7における受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線の直線化補正用に、例えば、複数のルックアップテーブル321が記憶されている。各ルックアップテーブル321は、それぞれ被検出物10の異なる厚みに対応付けられている。
【0062】
次に、動作を説明する。
【0063】
先ず、被検出物10の端部位置の検出動作を説明する。
【0064】
図5は被検出物10の端部位置の検出動作を説明するための図である。
【0065】
図5においては、J2〜J12の11個の受信素子7のうち、その受信範囲7bに被検出物10の端部が位置する何れか1つの受信素子を受信素子nとして示している。また、この受信素子nとは受信範囲7bが被検出物挿入方向Sの反対側に隣接する受信素子(J1〜J11の何れか1つ)を受信素子n−1として示している。すなわち、例えば、受信素子nがJ2であれば、受信素子n−1はJ1である。また、H2〜H12の11個の発振素子6のうち、受信素子nと対向する発振素子6を発振素子nとして示し、この発振素子nとは発振範囲6bが被検出物挿入方向Sの反対側に隣接する発振素子(H1〜H11の何れか1つ)を発振素子n−1として示している。
【0066】
検出処理部3は、複数の受信素子7からそれぞれ入力される受信信号のうち、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」からの受信信号を用いて、被検出物10の端部の位置を検出する。
【0067】
検出処理部3は、原則的には、受信レベルが最も所定値(例えば50%)に近い受信素子7を、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」であると判断する。
【0068】
ただし、図5に示す受信素子nと受信素子n−1との中心位置Cの付近に被検出物10の端部が位置するときには、該端部位置の微少な変動に連動して、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」が受信素子nと受信素子n−1とで頻繁に切り替わってしまい、検出処理部3の処理負担増大などの弊害がある。
【0069】
そこで、検出処理部3が「被検出物10の端部を検出している受信素子7」を一の受信素子7から他の受信素子7に切り替える処理は、例えば、以下のようにして行う。
【0070】
先ず、当初、被検出物10の端部の位置が、図5に示す受信素子n−1の受信範囲の中心に位置していたとする。このときの「被検出物10の端部を検出している受信素子7」は、勿論、受信素子n−1である。
【0071】
その後、被検出物10被検出物10が被検出物挿入方向Sに移動したとする。
【0072】
このとき、被検出物10の端部位置が、受信素子nと受信素子n−1との中心位置Cを超えると直ちに「被検出物10の端部を検出している受信素子7」を受信素子n−1から受信素子nに切り替えるのではなく、中心位置Cよりも所定距離Dだけ被検出物挿入方向S側の位置Eを超えたときに、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」を受信素子n−1から受信素子nに切り替える。
【0073】
このように、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」の切り替えに、所定距離Dに相当する遅れ、すなわちヒステリシスを設定していることによって、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」が頻繁に切り替わることを防止している。
【0074】
「被検出物10の端部を検出している受信素子7」からの受信信号を用いた、被検出物10の端部位置の検出動作自体は、従来周知であるため、詳細な説明は省略するが、具体的には、例えば、以下に説明するようにして行う。
【0075】
図7は被検出物10の端部位置の検出動作を説明するための図であり、発振素子6から発振される超音波信号と受信素子7により受信される超音波信号(受信信号)の経時変化を示す。
【0076】
超音波の周波数としては、一般的に40KHz〜400KHzが使用される。
【0077】
波形は一般的に矩形波が用いられるが、極性の切り替わり時に高エネルギーの高調波が発生しやすく、また超音波エネルギーとなる効率も悪い。
【0078】
このため、本実施形態では、例えば、三角波を使用する。正弦波(sin波)が理想であるが、ハードウェアやソフトウェアで達成させる場合、シンプルなものになりにくい。三角波は単純なハードウェアで実現でき、発生する超音波も正弦波の場合に近く損失も少ない。
【0079】
超音波の発生形態は、バーストモードを用いる。
【0080】
受信信号は、検波、LPF(ローパスフィルタ)処理され、図7に示すように、その信号の立ち上がりの傾きを測定し評価することにより、エッジ位置を検出する。このように信号の立ち上がりの傾きを測定し評価する方法については、本出願人による特開2003−97933号公報に詳しい。
【0081】
なお、遮蔽される割合が100%の場合、信号の立ち上がりの傾きはゼロとなる。
【0082】
次に、被検出物10の厚みの検出動作を説明する。
【0083】
上述のように、被検出物10の端部位置と受信素子7における受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線は、被検出物10の厚みTに応じて異なる(図12参照)。
【0084】
本実施形態では、この受信レベル曲線と被検出物10の厚みTとの関係を利用して、被検出物10の厚みTを定量的に検出する処理と、この検出した厚みTに応じて受信レベル曲線の直線化補正を行う処理とを、超音波式エッジ位置検出装置100が自動的に行う。
【0085】
被検出物10の厚みを検出するには、先ず、厚みの検出に用いる厚み検出用関数を求める。
【0086】
図5は、厚み検出用関数を求めるためと、厚みを検出するために、それぞれ行う測定動作を説明するための模式図でもある。また、図6は厚み検出用関数L3を示す図である。
【0087】
図5の下部に示す座標系は、縦軸が受信レベル、横軸が被検出物10の端部の位置(被検出物挿入方向S側が正)である。
【0088】
また、図6に示す座標系は、縦軸が被検出物10の厚みである。また、図6の座標系の横軸は、後述する第1のリファレンスに対する、後述する測定値Xn−1の比率である。
【0089】
なお、受信素子7の受信信号は、交流の信号となるが、この交流信号を検波及びLPF(ローパスフィルタ)処理した値が図5の縦軸の値である。
【0090】
厚み検出用関数を求めるための測定には、被検出物10の代わりに、2種類のリファレンス用試料を用いる。
【0091】
このうち一方のリファレンス用試料(以下、第1のリファレンス用試料)としては、なるべく薄く、超音波を透過しやすいものが好ましい。
【0092】
他方のリファレンス用試料(以下、第2のリファレンス用試料)としては、超音波をほとんど透過しない(僅かに透過する)程度の厚さのものを用いる。
【0093】
なお、第1及び第2のリファレンス用試料としては、それぞれ被検出物10と同じ材質のものを選択する。
【0094】
被検出物10、第1及び第2のリファレンス用試料としては、例えば、樹脂製の薄膜が好適である。
【0095】
第1のリファレンス用試料としては、例えば、厚さ10μm程度のラッピングフィルムなどが好ましい。
【0096】
また、第2のリファレンス用試料の厚さとしては、例えば、100μm程度が好ましい。
【0097】
簡単のため、例えば、第1のリファレンス用試料の厚さは丁度10μm、第2のリファレンス用試料の厚さは丁度100μmであるものとする。
【0098】
図5に示す曲線L1は、受信素子n(第1の受信素子)における受信レベルと、リファレンス用試料或いは被検出物10の端部の位置と、の関係を示す。同様に、図5に示す曲線L2は、受信素子n−1(第2の受信素子)における受信レベルと、リファレンス用試料或いは被検出物10の端部の位置と、の関係を示す。
【0099】
検出処理部3は、図5に示すように、受信素子nの受信レベルが所定の規定値Kn(%)となるように、リファレンス用試料或いは被検出物10が挿入領域11へ挿入されたときの、受信素子n−1の測定値Xn−1(%)を測定する。
【0100】
ここで、被検出物挿入方向Sにおけるリファレンス用試料並びに被検出物10の幅は、少なくとも、受信素子nと受信素子n−1の受信範囲7bを完全に遮る幅があればよい。すなわち、1つ受信範囲7bの2倍の幅から、隣り合う受信範囲7bがオーバーラップする範囲の幅を差し引いた幅があれば良い。
【0101】
このため、図5に示すように被検出物10の端部が受信素子nの受信範囲7bに位置するときには、受信素子n−1の受信範囲7bが被検出物10により遮られる被検出物挿入方向Sにおける範囲は、受信素子nの受信範囲7bが被検出物10により遮られる被検出物挿入方向Sにおける範囲よりも必ず広くなる。例えば、図5の例では、受信素子n−1の受信範囲7bは、被検出物10により完全に遮られている。よって、Xn−1(%)は規定値Kn(%)よりも小さくなる。
【0102】
なお、受信素子n−1の受信範囲7bが被検出物10により完全に遮られていても、その測定値Xn−1を検出できることの1つの要因としては、被検出物10の端部において超音波の回り込みが生じることが挙げられる。
【0103】
次に、測定した測定値Xn−1を図6に示す座標系にプロットする。
【0104】
先ず、第1のリファレンス用試料を用いて測定した測定値Xn−1(以下、第1のリファレンス)に対応する点をプロットする。
【0105】
ここで、第1のリファレンスは、簡単のため、100%として、図6の座標系にプロットする。
【0106】
すなわち、図6に示すポイントP1(第1リファレンスに対する比率:100%、厚さ:10μmに対応する点)が、第1のリファレンス用試料(厚さ10μm)を用いて測定した測定値Xn−1(第1のリファレンス)に対応する点である。
【0107】
次に、第2のリファレンス用試料を用いて測定した測定値Xn−1(以下、第2のリファレンス)に対応する点を図6の座標系にプロットする。
【0108】
例えば、第1のリファレンスに対する第2のリファレンスの比率が60%であったとする。この場合、図6に示すポイントP2(第1リファレンスに対する比率:60%、厚さ:100μmに対応する点)が、第2のリファレンス用試料(厚さ100μm)を用いて測定した測定値Xn−1(第2のリファレンス)に対応する点である。
【0109】
次に、図6に示す座標系に、ポイントP1とP2とを結ぶ直線を描くことにより、厚み検出用関数L3を得ることができる。
【0110】
このように求めた厚み検出用関数L3を用いることにより、本実施形態の例では、厚さ10μmから100μmの範囲であるならば、被検出物10の厚みを、以下に説明するように推定によって正確に検出することができる。
【0111】
先ず、図5に示すように、受信素子nの受信レベルが所定の規定値Kn(%)となるように、未知の厚みを有する被検出物10が挿入領域11へ挿入されたときの、受信素子n−1の測定値Xn−1(%)を測定する。
【0112】
次に、このように被検出物10に対して測定した測定値Xn−1の、第1のリファレンスに対する比率を演算する。
【0113】
次に、このように演算した比率に対応する点(図6のポイントP3)を、厚み検出用関数L3上において求める。
【0114】
図6には、被検出物10に対して測定した測定値Xn−1の、第1のリファレンスに対する比率が、例えば、80%であるときの例を示している。
【0115】
そして、このように求めたポイントP3に対応する厚み(すなわち、該ポイント3に対応する縦軸値)を求めることにより、厚みが未知の被検出物10の厚みを推定することができる。
【0116】
すなわち、図5に示すように、厚みが未知の被検出物10の測定値Xn−1の、第1のリファレンスの測定値Xn−1に対する比率が80%であれば、被検出物10の厚みTは55μmと推定することができる。
【0117】
なお、第1のリファレンスの測定は、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に行っておく。同様に、第2のリファレンスの測定も、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に行っておく。そして、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に、対応する第1及び第2のリファレンスを用いて、厚み検出用関数L3を求める。
【0118】
すなわち、図6の厚み検出用関数L3は、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に存在する。
【0119】
そして、ある受信素子nの受信範囲7bに被検出物10の端部が位置するときには、当該受信素子nと受信素子n−1との組み合わせに対して求めた厚み検出用関数L3を用いて、被検出物10の厚みを推定(検出)する。
【0120】
ここで、測定値Xn−1には、各受信素子n−1毎に、その特性(感度)や配列誤差に起因してバラツキが生じるが、上記のように第1及び第2のリファレンスを測定し、厚み検出用関数L3を求めることを、予め、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に行っておき、被検出物10を検出する受信素子nと受信素子n−1との組み合わせに対応する厚み検出用関数L3を選択的に用いて厚み検出を行うことにより、各受信素子n−1毎の特性や配置のバラツキの影響を小さくすることができる。
【0121】
次に、検出した厚みTに応じて受信レベル曲線の直線化補正を行う。
【0122】
直線化補正を行う受信レベル曲線は、(受信素子n−1が検出する受信レベル曲線ではなく)受信素子nが検出する受信レベル曲線である。
【0123】
被検出物10の厚みに応じた直線化補正自体は、従来周知であるため、詳細な説明は省略するが、本実施形態では、具体的には、例えば、ROM32に記憶されたルックアップテーブル321を用いて直線化補正を行う。
【0124】
上述のように、ROM32には、複数のルックアップテーブル321が記憶され、各ルックアップテーブル321は、被検出物10の異なる厚みに対応付けられている。
【0125】
各ルックアップテーブル321には、受信素子7による各受信レベルと、その受信レベルに対応する直線化補正された値と、の関係が記憶されている。
【0126】
CPU31は、上述のように検出した被検出物10の厚みTに対応するルックアップテーブル321を選択する(具体的には、検出した被検出物10の厚みTと最も近い厚みに対応するルックアップテーブル321を選択する)。そして、選択したルックアップテーブル321を参照することにより、受信素子7から入力された受信レベルに対応する直線化補正された値を抽出する。
【0127】
これにより、受信素子7から入力された受信レベルに対応した、被検出物10の端部の正しい位置を得ることができる。
【0128】
各ルックアップテーブル321には、受信素子7による各受信レベルと、その受信レベルに対応する直線化補正された値と、の関係が、所定の分解能(例えば、2の16乗=65536)で記憶されている。よって、受信範囲7bを所定の分解能で等分した検出精度で、被検出物10の端部の位置を検出することができる。
【0129】
なお、上記のように、各受信素子n、n−1毎に、特性や配置のバラツキがあるため、ルックアップテーブル321の選択は、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に別個に行う。
【0130】
以上のような第1の実施形態によれば、全ての受信素子7の受信範囲7b(図1の検出範囲W)において、第1のリファレンス用試料の厚みと、第1のリファレンス用試料について測定した測定値Xn−1と、第2のリファレンス用試料の厚みと、第2のリファレンス用試料について測定した測定値Xn−1と、被検出物10について測定したXn−1と、に基づいて、被検出物10の厚みを精度良く検出することができる。そして、被検出物10の端部の位置を検出するに際しては、精度良く検出した被検出物10の厚みに応じて、受信レベル曲線を自動的且つ適切に直線化補正することができる。しかも、被検出物10の端部位置の検出用の発振素子6及び受信素子7を、被検出物10の厚みの検出用に兼用させることができる。
【0131】
〔第2の実施形態〕
図8は第2の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置200の構成を示す正面図である。図8においては、図1におけるのと同様の構成要素には同一の符号を付している。
【0132】
本実施形態の場合、発振部1及び受信部2は、それぞれ音響整合層4を備えていない代わりに、板状の取付ベース部材20を備えている。
【0133】
各発振素子6は発振側の取付ベース部材20上に配置され、各受信素子7は受信側の取付ベース部材20上に配置されている。
【0134】
本実施形態の場合、発振部1及び受信部2における素子6,7の配置が、上記の第1の実施形態と相違する。
【0135】
すなわち、図8に示すように、発振素子6は、隣り合う発振素子6と接するように被検出物挿入方向Sにおいて直列に配置されている。受信素子7も、隣り合う受信素子7と接するように被検出物挿入方向Sにおいて直列に配置されている。
【0136】
発振素子6並びに受信素子7の個数は、それぞれ複数であれば任意であるが、図8では、発振素子6がH1〜H10の10個、受信素子7がJ1〜J9の9個である例を示している。
【0137】
受信素子7と発振素子6とは、被検出物挿入方向Sにおける寸法が互いに等しく設定されている。そして、各受信素子7は各発振素子6に対して半ピッチだけ挿入方向Sにおいてずらして配置されている。従って、個々の受信素子7は、隣り合う2つの発振素子6の各々の半分ずつの部分と対向している。
【0138】
図9は本実施形態の場合における素子6,7の構造を示す斜視図である。
【0139】
図8に示すように、素子6,7は、直方体状の外形を有し、そのほぼ上半分を構成する第1部分30Aと、そのほぼ下半分を構成する第2部分30Bと、これら第1及び第2部分30A、30Bの間に組み込まれた、ピエゾフィルムとしてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルム31と、第1部分30Aの表側に配置された第1及び第2端子32,33と、を備えている。
【0140】
第1部分30Aと第2部分30Bとにより、エンクロージャと呼ばれる共鳴箱が構成されている。
【0141】
PVDFフィルム31は、第1部分30Aの下面に形成された波形の部分と、第2部分30Bの上面に形成された波形の部分とに挟持されることにより、波形の形状に成形されている。
【0142】
第1部分30Aと第2部分30Bとは、止着部材34により相互に連結されている。
【0143】
また、PVDFフィルム31は、その表・裏に電極処理がなされており、表側の電極は端子30Aに、裏側の電極は端子30Bに、それぞれ導通されている。
【0144】
このような構造の発振素子6及び受信素子7は、図9に示すように、その長手方向に直交する方向が被検出物挿入方向Sと一致するように配置される。
【0145】
上記の第1の実施形態で用いたような、セラミック圧電素子からなる発振・受信素子6,7の場合、第1の実施形態で説明したように、隣同士がオーバーラップした配置とする必要があるが、第2の実施形態の構造の発振素子6及び受信素子7の場合、図8に示すように隣同士密着して配置することにより、発振素子6の発振範囲6b並びに受信素子7の受信範囲7bに切れ目が生じることはない。
【0146】
PVDFの特徴は、音響インピーダンス及び密度が小さいことにより、素子から直接空気媒体を容易に効率よく振動させることができることである。
【0147】
通常、超音波素子としてセラミック圧電素子が知られているが、空気媒体を振動させるには、音響インピーダンスのマッチングを取るため、音響整合層などが必要とされる。
【0148】
対して、PVDFフィルム31を用いる場合、上記の理由から、音響整合層が不要となる。
【0149】
PVDFのもう一つの大きな特徴は、超音波周波数を自由に決定することができることである。セラミック圧電素子の場合は、共振周波数のみしか扱えないが、PVDFフィルム31の波形の曲率半径を所定の値にすれば、希望する超音波周波数を扱うことができる。
【0150】
その他として、素子の大きさを自由に設定できるため、1素子当たりの視野範囲をセラミック圧電素子に比べ、かなり広いものにさせることができ、その結果、特に超音波式エッジ位置検出装置200に広い検出範囲が求められる場合は、コスト的に大きなメリットとなる。
【0151】
更に、発振、受信間において、PVDFフィルム31を直線形状としていないため、不要な反射が全くなく、受信された信号(受信信号)の処理が容易である。このため、発信側と受信側との間を往復する反射信号の減衰を待たなくて良いというメリットもある。
【0152】
なお、発振素子6と受信素子7との位置を列方向において半ピッチずらした配置とすることにより、1個の受信素子7に対して2個の発振素子6が対向するが、このような配置とする目的は、1個の受信素子7当たりの検出視野を広くするためである。
【0153】
次に、駆動処理部8について説明する。
【0154】
発振素子6が備えるPVDFフィルム31から所定の周波数の超音波を発生させるためには、PVDFフィルム31の表裏の電極間を200Vp−p(p−pはpeak to peakの意味)前後の振幅のAC信号で駆動する必要がある。
【0155】
超音波は、空気を媒体としているので、40kHz〜400kHz程度の周波数の正弦波が適切である。また、200Vp−pと比較的高圧であることから、ドライブ回路として、E級アンプが適切である。
【0156】
ここで、E級アンプとは、LC共振回路を用いた高効率ゼロボルトスイッチング回路のことであり、非常にシンプルな回路で、高電圧の正弦波を発生できるものである。
【0157】
本実施形態の場合も、各受信素子7における受信レベルは、各受信素子7から見て、発振部1において自身と対向する部位が被検出物10により遮蔽される割合に応じて変化する。
【0158】
次に、動作を説明する。
【0159】
先ず、本実施形態の場合における被検出物10の端部位置の検出動作について、上記の第1の実施形態と相違する点だけを説明する。
【0160】
図10は端部位置の検出動作を説明するための図であり、発振素子6から発振される超音波信号と受信素子7により受信される超音波信号の経時変化を示す。
【0161】
超音波の発生形態は、バーストモードを用いる。
【0162】
受信信号は、検波、LPF(ローパスフィルタ)処理され、図10に示すように、その信号の立ち上がりの傾きを測定し評価する。このように信号の立ち上がりの傾きを測定し評価する方法については、本出願人による特開2003−97933号公報に詳しい。
【0163】
また、被検出物10の厚みの検出動作、並びに、検出した厚みに応じた受信レベル曲線の直線化補正は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0164】
第2の実施形態によれば、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0165】
なお、上記の各実施形態では、厚み検出を行う被検出物10の材質として、樹脂を例示したが、その他の材質のものについても、同様に、厚み検出を行うことができる。
【0166】
また、上記の各実施形態では、超音波式エッジ位置検出装置100、200を説明したが、これら超音波式エッジ位置検出装置100、200は、端部位置の検出機能と、検出した厚みに応じて直線化補正を行う機能と、を省略することにより、超音波式厚み検出装置とすることができる。
【0167】
また、上記の各実施形態では、第2の受信素子としては、その受信範囲が第1の受信素子(受信素子n)の受信範囲に隣接する受信素子を選択する例を説明したが、第2の受信素子は、発振部1の対向する部位が被検出物10により遮蔽される割合が第1の受信素子よりも大きく、測定値Xn−1を検出可能な受信素子であれば、その他の受信素子を選択しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置の構成を示す正面図である。
【図2】超音波式エッジ位置検出装置の発振部及び受信部を示す平面図である。
【図3】超音波式エッジ位置検出装置の受信部を示す平面図である。
【図4】検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】端部位置及び厚みの検出動作を説明するための模式図である。
【図6】厚み検出用関数を示す図である。
【図7】端部位置の検出動作を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置の構成を示す正面図である。
【図9】第2の実施形態の場合の発振素子及び受信素子の構造を示す斜視図である。
【図10】第2の実施形態の場合の端部位置の検出動作を説明するための図である。
【図11】被検出物の挿入量と測定値との対応を示す図である。
【図12】被検出物の厚みに応じて、被検出物の挿入量と検出値との対応が変化することを示す図である。
【符号の説明】
【0169】
1 発振部
2 受信部
6 発振素子
7 受信素子
10 被検出物
100 超音波式エッジ位置検出装置(超音波式厚み検出装置を含む)
200 超音波式エッジ位置検出装置(超音波式厚み検出装置を含む)
S 被検出物挿入方向(所定の方向)
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波式厚み検出装置、超音波式エッジ位置検出装置、超音波式厚み検出方法、及び、超音波式エッジ位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検出物の厚みを検出する装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1には、超音波を送波する送波器と、該送波器と対向して配置された受波器と、を備え、送波器と受波器との間に被検出物を配置し、送波器から送波した超音波を被検出物を透過させて受波器に受波させ、該受波した超音波の強度に基づいて被検出物の厚みを検出する検出装置が開示されている。すなわち、被検出物を透過する超音波の強度は、被検出物が厚いほど低下するので、受波器により受波する超音波の強度に基づき厚み検出を行うことができる。
【0004】
また、被検出物のエッジ位置(端部位置)を検出する装置としては、例えば、特許文献2に開示されたものがある。
【0005】
特許文献2には、超音波を発振する発振部と、この発振部より発振される超音波を受信する受信部と、を相互に対向した配置で備え、発振部と受信部との間に配置された被検出物の端部の位置を、受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出装置が開示されている。
【0006】
このような超音波式エッジ位置検出装置は、対となる発振素子と受信素子とを複数アレー状に並べて、所望の検出範囲を得る構造となっている。各受信素子による受信信号が連続的、かつ直線的となるようにするためには、各発振素子並びに各受信素子の配置、特に取付ピッチは重要な要素である。通常は、各受信素子の受信信号が途切れないよう、隣り合う発振素子の発振範囲、並びに隣り合う受信素子の受信範囲が互いにオーバーラップするように配置(例えば、千鳥状に配置)されている。
【0007】
このような超音波式エッジ位置検出装置において、被検出物の端部を検出する受信素子(その受信範囲に被検出物の端部が位置する受信素子)に注目すると、被検出物の端部の位置と受信素子による受信信号のレベル(受信レベル)との関係は、図11に示す曲線L10(以下、受信レベル曲線)のようになる。
【0008】
図11に示すように、受信レベル曲線L10は、受信素子の受信範囲における中心から離れるほど、その直線性が損なわれる。特に、受信素子の受信範囲が被検出物によりほぼ遮られるときの直線性、すなわち受信レベル曲線L10の右部における直線性が顕著に劣る。
【0009】
このため、できるだけ広い受信範囲で良好な直線性を得るために、受信レベル曲線L10に直線化補正を施すことによって、該受信レベル曲線L10を直線L11へ補正することが一般的である。
【特許文献1】特公平7−58178号公報
【特許文献2】米国特許第5834877号公報明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の検出装置は、超音波が被検出物を透過する量(透過量)に基づいて被検出物の厚みを検出する構成であるため、S/N比が良好な信号を安定的に得ることが困難である。このため、厚みの検出精度が悪く、僅かな厚みの差を検出することができない。よって、例えば、特許文献1に開示されているように、ウェブの継ぎ目(継ぎ目テープによって接続されているため、継ぎ目以外の部分よりも厚くなっている)を判断する程度にしか役立たない。更に、超音波が被検出物を透過するためには、超音波の音圧が高いことが要求されるため、高出力の超音波信号を発振するための駆動回路が必要である。
【0011】
また、特許文献2のようなエッジ位置検出装置では、被検出物の端部の位置と受信素子による受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線の形状は、被検出物の厚みに応じて変化する。
【0012】
図12は、被検出物の厚みを3段階に変化させたときの、被検出物の挿入量と受信素子による受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線をそれぞれ示す図である。
【0013】
図12において、受信レベル曲線L10−1は被検出物の厚みが比較的厚い場合、受信レベル曲線L10−3は被検出物の厚みが比較的薄い場合、受信レベル曲線L10−2は被検出物の厚みがそれらの中間の場合の、各々の受信レベル曲線を示す。
【0014】
図12に示すように、被検出物の挿入量が多く、受信素子の受信範囲が被検出物によりほぼ遮られるとき(各受信レベル曲線L10−1、L10−2、L10−3の右部)の直線性は、被検出物が薄くなるほど悪化する(受信レベル曲線L10−3が最も直線性が悪い)。すなわち、被検出物の厚みが薄くほど、受信レベルがゼロになる端部位置が、受信素子の受信範囲における中心から遠くなる。
【0015】
このため、被検出物の厚み毎に、それぞれ適した直線化補正を行う必要がある。つまり、被検出物の厚みが変われば、その都度、直線化補正を行う必要がある。
【0016】
なお、被検出物の厚みが変わったにもかかわらず直線化補正を新たに行わなければ、各受信素子の受信信号の連続性が悪化する結果、エッジ位置検出装置の検出精度が悪化する。
【0017】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、被検出物の厚みを精度良く検出することが可能な超音波式厚み検出装置を提供することを第1の目的とする。
【0018】
また、本発明は、本発明の超音波式厚み検出装置の技術的特徴を利用することにより、被検出物の厚みに応じた、端部位置の検出値の補正を自動的に行うことが可能な超音波式エッジ位置検出装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の超音波式厚み検出装置は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、を備え、前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出装置であって、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することを特徴としている。
【0020】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記第1の受信レベルに対する比率を第1の軸とし、厚みを第2の軸とする座標系に、前記第1の厚み及び前記第1の受信レベルに対応する第1の点と、前記第2の厚み及び前記第2の受信レベルに対応する第2の点と、をそれぞれプロットし、該プロットした2点を結ぶ直線上において前記第3の受信レベルに対応する点を求め、該求めた点に対応する前記第2の軸上における厚みを、前記被検出物の厚みとして検出することが好ましい。
【0021】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記複数の受信素子は、各受信素子の受信範囲が前記所定の方向において切れ目無いように配置されていることが好ましい。
【0022】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記第1の受信素子は、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が、前記複数の受信素子のうち最も所定値に近い受信素子であることが好ましい。
【0023】
本発明の超音波式厚み検出装置においては、前記第1及び第2の受信素子は、受信範囲が互いに隣り合うことが好ましい。
【0024】
また、本発明の超音波式エッジ位置検出装置は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、を備え、前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出装置において、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出し、前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正することを特徴としている。
【0025】
本発明の超音波式厚み検出方法は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出方法であって、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子の受信レベルを、第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第2の受信レベルとすると、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第3の受信レベルとして検出する過程と、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、を備えることを特徴としている。
【0026】
本発明の超音波式エッジ位置検出方法は、超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出方法において、前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとすると、前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとして検出する過程と、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正する過程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することにより、該厚みを精度良く検出することができる。
【0028】
また、本発明によれば、前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することにより、該厚みを精度良く検出することができる。そして、前記受信部における受信レベルに応じて前記被検出物の前記端部の位置を検出するに際しては、精度良く検出した被検出物の厚みに応じて、前記端部の位置の検出値を自動的且つ適切に補正することができる。しかも、被検出物の端部位置の検出用の発振部及び受信部を、被検出物の厚みの検出用に兼用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。
【0030】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置100の構成を示す正面図である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置100は、超音波を発振する発振部1と、発振部1から発振される超音波を受信する受信部2と、検出処理部3と、駆動処理部8と、を備えている。
【0032】
発振部1と受信部2とは相互に平行となるよう対向して配置されている。
【0033】
発振部1と受信部2との間の空間は、シート状の被検出物10が挿入される挿入領域11を構成している。
【0034】
図1に示すように、超音波式エッジ位置検出装置100は、例えば、上側に位置する上側部分100Aと、下側に位置する下側部分100Bと、これら両部分100A、100Bを相互に接続する中間部分100Cと、からなり、断面コ字形状の全体形状を有している。例えば、発振部1は上側部分100Aに、受信部2は下側部分100Bに、それぞれ配置されているが、発振部1と受信部2とは、相互に対向していれば、その他の位置関係であっても良い。
【0035】
図2(a)は発振部1の上面図、図2(b)は受信部2の上面図である。
【0036】
発振部1は、図1及び図2(a)に示すように、板状の音響整合層4と、この音響整合層4に取り付けられた複数の発振素子6と、を備えて構成されている。各発振素子6は、略同一面内に配置されている。
【0037】
同様に、受信部2も、図1及び図2(b)に示すように、板状の音響整合層4と、この音響整合層4に取り付けられた複数の受信素子7と、を備えて構成されている。各受信素子7は、略同一面内に配置されている。
【0038】
各発振素子6が配置された面と、各受信素子7が配置された面とは、互いに略平行とされている。なお、図1に示す被検出物挿入方向Sもこれらの面に対して平行であり、各発振素子6並びに各受信素子7は、それぞれ被検出物挿入方向Sに沿って配置されている。
【0039】
各発振素子6並びに各受信素子7としては、例えば、セラミック圧電素子を備えて構成されるものが一般的である。
【0040】
駆動処理部8は、発振部1が備える各発振素子6を駆動させ、各発振素子6から超音波を発振させる処理を行う。なお、駆動処理部8から各発振素子6へは、各発振素子6毎に個別の配線(図示略)が接続されており、駆動処理部8は、各発振素子6を個別に駆動させる。
【0041】
受信部2が備える各受信素子7は、発振部1より超音波を受信すると、その受信レベルに応じた受信信号を検出処理部3に出力する。なお、各受信素子7から検出処理部3へは、各受信素子7毎に個別の配線(図示略)が接続されており、各受信素子7は、検出処理部3に対し、個別に受信信号を出力する。
【0042】
検出処理部3は、受信素子7より入力される受信信号に応じて、図1に示す被検出物挿入方向Sにおける被検出物10の端部(エッジ)の位置を検出する処理と、被検出物10の厚みTを検出する処理と、を行う。
【0043】
なお、本実施形態では、図2(a)に示すように、例えば、発振素子6がH1〜H12までの12個であり、図2(b)に示すように、例えば、受信素子7もJ1〜J12までの12個である例を説明するが、各素子6,7の個数は複数であれば任意である。
【0044】
各受信素子7は、例えば、対応する1個ずつの発振素子6と対向して配置されている。すなわち、J1の受信素子7はH1の発振素子6と、J2の受信素子7はH2の発振素子6と、J3の受信素子7はH3の発振素子6と、J4の受信素子7はH4の発振素子6と、J5の受信素子7はH5の発振素子6と、J6の受信素子7はH6の発振素子6と、J7の受信素子7はH7の発振素子6と、J8の受信素子7はH8の発振素子6と、J9の受信素子7はH9の発振素子6と、J10の受信素子7はH10の発振素子6と、J11の受信素子7はH11の発振素子6と、J12の受信素子7はH12の発振素子6と、それぞれ対向している。
【0045】
各発振素子6は、受信部2、特に、対向する受信素子7に向けて超音波を発振する。
【0046】
各受信素子7は、発振部1、特に、対向する発振素子6から発振される超音波を受信する。
【0047】
ここで、図1に示すように、各発振素子6において、受信部2と対向する面のうち、超音波を発振する部位を発振面6aと称する。また、この発振面6aが受信部2側を臨む範囲、すなわち、当該発振面6aと受信部2とを結ぶ任意の垂線が存在する全ての範囲を網羅した範囲を発振範囲6bと称する。
【0048】
同様に、各受信素子7において、発振部1と対向する面のうち、超音波を受信する部位を受信面7aと称する。また、この受信面7aが発振部1側を臨む範囲、すなわち、当該受信面7aと発振部1とを結ぶ任意の垂線が存在する全ての範囲を網羅した範囲を受信範囲7aと称する。
【0049】
複数の発振素子6は、各発振素子6による発振範囲6bが被検出物挿入方向Sにおいて互いに異なり、且つ、各発振素子6による発振範囲6bが被検出物挿入方向Sにおいて切れ目無いように配置されている。具体的には、複数の発振素子6は、例えば、図2(a)及び図1に示すように、被検出物挿入方向Sに沿って、H1〜H12の順に2列の千鳥状に配置され、且つ、正面から見て隣り合う発振素子6による発振範囲6bの端部が互いにオーバーラップするように配置されている。
【0050】
同様に、複数の受信素子7は、各受信素子7による受信範囲7aが被検出物挿入方向Sにおいて互いに異なり、且つ、各受信素子7による受信範囲が被検出物挿入方向Sにおいて切れ目無いように配置されている。具体的には、複数の受信素子7も、例えば、図2(b)及び図1に示すように、被検出物挿入方向Sに沿って、J1〜J12の順に千鳥状に配置され、且つ、正面から見て隣り合う受信素子7による受信範囲7bの端部が互いにオーバーラップするように配置されている。
【0051】
発振素子6及び受信素子7をこのように並べる理由は、各受信素子7の受信範囲7bを途切れることなく繋げるためである(電気的には、各受信素子7による受信信号を互いにオーバーラップさせ、受信部2の全体視野における受信信号として演算するため)。更に、このように受信範囲7bを切れ目無く繋げることにより、図1に示す検出範囲Wの全域において、被検出物10の端部の位置を検出できるようにする。検出範囲Wは、全ての受信素子7の受信範囲7bを繋げた範囲である。
【0052】
なお、図2に示すように、発振素子6は、列毎に別個の音響整合層4上に配置され、同様に、受信素子7も、列毎に別個の音響整合層4上に配置されている。
【0053】
ここで、各受信素子7は、自身と対向する発振素子6から発振される超音波を受信する。各受信素子7が受ける音圧は、自身と対向する発振素子6から発振される超音波が被検出物10によって遮蔽される割合に応じて変化する
すなわち、J1の受信素子7における受信レベル(受信する音圧の大きさに比例する受信強度)は、J1の受信素子7から見てH1の発振素子6が被検出物10により遮蔽される割合(面積の割合)が小さいほど高く、該遮蔽される割合が大きいほど低くなる。すなわち、この受信レベルは、その割合(0%〜100%)に逆比例する。
【0054】
同様に、他の各受信素子7における受信レベルも、自身から見て対向する発振素子6が被検出物10により遮蔽される割合に逆比例する。
【0055】
以下では、各受信素子7の受信レベルは、自身から見て対向する発振素子6が被検出物10により遮蔽される割合(0%〜100%)で示す。
【0056】
すなわち、各受信素子7から見て自身と対向する発振素子6が被検出物10により、完全に遮蔽されるときは受信レベルが0(%)であり、全く遮蔽されないときは受信レベルが100(%)であり、その他のときには0%と100%との中間である。
【0057】
例えば、図3は、J7の受信素子7の受信レベルが約50%の状態を例示した平面図である。
【0058】
図4は検出処理部3の構成を示すブロック図である。
【0059】
図4に示すように、検出処理部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)31と、このCPU31の動作用プログラムなどを記憶保持したROM(Read Only Memory)32と、CPU31の作業領域などとして機能するRAM(Random Access Memory)33と、を備えて構成されている。
【0060】
CPU31は、ROM32に記憶されたプログラムに従って動作することにより、被検出物10の端部の位置を検出する処理と、被検出物10の厚みTを検出する処理と、を行う。
【0061】
ROM32には、被検出物10の端部の位置と受信素子7における受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線の直線化補正用に、例えば、複数のルックアップテーブル321が記憶されている。各ルックアップテーブル321は、それぞれ被検出物10の異なる厚みに対応付けられている。
【0062】
次に、動作を説明する。
【0063】
先ず、被検出物10の端部位置の検出動作を説明する。
【0064】
図5は被検出物10の端部位置の検出動作を説明するための図である。
【0065】
図5においては、J2〜J12の11個の受信素子7のうち、その受信範囲7bに被検出物10の端部が位置する何れか1つの受信素子を受信素子nとして示している。また、この受信素子nとは受信範囲7bが被検出物挿入方向Sの反対側に隣接する受信素子(J1〜J11の何れか1つ)を受信素子n−1として示している。すなわち、例えば、受信素子nがJ2であれば、受信素子n−1はJ1である。また、H2〜H12の11個の発振素子6のうち、受信素子nと対向する発振素子6を発振素子nとして示し、この発振素子nとは発振範囲6bが被検出物挿入方向Sの反対側に隣接する発振素子(H1〜H11の何れか1つ)を発振素子n−1として示している。
【0066】
検出処理部3は、複数の受信素子7からそれぞれ入力される受信信号のうち、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」からの受信信号を用いて、被検出物10の端部の位置を検出する。
【0067】
検出処理部3は、原則的には、受信レベルが最も所定値(例えば50%)に近い受信素子7を、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」であると判断する。
【0068】
ただし、図5に示す受信素子nと受信素子n−1との中心位置Cの付近に被検出物10の端部が位置するときには、該端部位置の微少な変動に連動して、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」が受信素子nと受信素子n−1とで頻繁に切り替わってしまい、検出処理部3の処理負担増大などの弊害がある。
【0069】
そこで、検出処理部3が「被検出物10の端部を検出している受信素子7」を一の受信素子7から他の受信素子7に切り替える処理は、例えば、以下のようにして行う。
【0070】
先ず、当初、被検出物10の端部の位置が、図5に示す受信素子n−1の受信範囲の中心に位置していたとする。このときの「被検出物10の端部を検出している受信素子7」は、勿論、受信素子n−1である。
【0071】
その後、被検出物10被検出物10が被検出物挿入方向Sに移動したとする。
【0072】
このとき、被検出物10の端部位置が、受信素子nと受信素子n−1との中心位置Cを超えると直ちに「被検出物10の端部を検出している受信素子7」を受信素子n−1から受信素子nに切り替えるのではなく、中心位置Cよりも所定距離Dだけ被検出物挿入方向S側の位置Eを超えたときに、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」を受信素子n−1から受信素子nに切り替える。
【0073】
このように、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」の切り替えに、所定距離Dに相当する遅れ、すなわちヒステリシスを設定していることによって、「被検出物10の端部を検出している受信素子7」が頻繁に切り替わることを防止している。
【0074】
「被検出物10の端部を検出している受信素子7」からの受信信号を用いた、被検出物10の端部位置の検出動作自体は、従来周知であるため、詳細な説明は省略するが、具体的には、例えば、以下に説明するようにして行う。
【0075】
図7は被検出物10の端部位置の検出動作を説明するための図であり、発振素子6から発振される超音波信号と受信素子7により受信される超音波信号(受信信号)の経時変化を示す。
【0076】
超音波の周波数としては、一般的に40KHz〜400KHzが使用される。
【0077】
波形は一般的に矩形波が用いられるが、極性の切り替わり時に高エネルギーの高調波が発生しやすく、また超音波エネルギーとなる効率も悪い。
【0078】
このため、本実施形態では、例えば、三角波を使用する。正弦波(sin波)が理想であるが、ハードウェアやソフトウェアで達成させる場合、シンプルなものになりにくい。三角波は単純なハードウェアで実現でき、発生する超音波も正弦波の場合に近く損失も少ない。
【0079】
超音波の発生形態は、バーストモードを用いる。
【0080】
受信信号は、検波、LPF(ローパスフィルタ)処理され、図7に示すように、その信号の立ち上がりの傾きを測定し評価することにより、エッジ位置を検出する。このように信号の立ち上がりの傾きを測定し評価する方法については、本出願人による特開2003−97933号公報に詳しい。
【0081】
なお、遮蔽される割合が100%の場合、信号の立ち上がりの傾きはゼロとなる。
【0082】
次に、被検出物10の厚みの検出動作を説明する。
【0083】
上述のように、被検出物10の端部位置と受信素子7における受信レベルとの関係を示す受信レベル曲線は、被検出物10の厚みTに応じて異なる(図12参照)。
【0084】
本実施形態では、この受信レベル曲線と被検出物10の厚みTとの関係を利用して、被検出物10の厚みTを定量的に検出する処理と、この検出した厚みTに応じて受信レベル曲線の直線化補正を行う処理とを、超音波式エッジ位置検出装置100が自動的に行う。
【0085】
被検出物10の厚みを検出するには、先ず、厚みの検出に用いる厚み検出用関数を求める。
【0086】
図5は、厚み検出用関数を求めるためと、厚みを検出するために、それぞれ行う測定動作を説明するための模式図でもある。また、図6は厚み検出用関数L3を示す図である。
【0087】
図5の下部に示す座標系は、縦軸が受信レベル、横軸が被検出物10の端部の位置(被検出物挿入方向S側が正)である。
【0088】
また、図6に示す座標系は、縦軸が被検出物10の厚みである。また、図6の座標系の横軸は、後述する第1のリファレンスに対する、後述する測定値Xn−1の比率である。
【0089】
なお、受信素子7の受信信号は、交流の信号となるが、この交流信号を検波及びLPF(ローパスフィルタ)処理した値が図5の縦軸の値である。
【0090】
厚み検出用関数を求めるための測定には、被検出物10の代わりに、2種類のリファレンス用試料を用いる。
【0091】
このうち一方のリファレンス用試料(以下、第1のリファレンス用試料)としては、なるべく薄く、超音波を透過しやすいものが好ましい。
【0092】
他方のリファレンス用試料(以下、第2のリファレンス用試料)としては、超音波をほとんど透過しない(僅かに透過する)程度の厚さのものを用いる。
【0093】
なお、第1及び第2のリファレンス用試料としては、それぞれ被検出物10と同じ材質のものを選択する。
【0094】
被検出物10、第1及び第2のリファレンス用試料としては、例えば、樹脂製の薄膜が好適である。
【0095】
第1のリファレンス用試料としては、例えば、厚さ10μm程度のラッピングフィルムなどが好ましい。
【0096】
また、第2のリファレンス用試料の厚さとしては、例えば、100μm程度が好ましい。
【0097】
簡単のため、例えば、第1のリファレンス用試料の厚さは丁度10μm、第2のリファレンス用試料の厚さは丁度100μmであるものとする。
【0098】
図5に示す曲線L1は、受信素子n(第1の受信素子)における受信レベルと、リファレンス用試料或いは被検出物10の端部の位置と、の関係を示す。同様に、図5に示す曲線L2は、受信素子n−1(第2の受信素子)における受信レベルと、リファレンス用試料或いは被検出物10の端部の位置と、の関係を示す。
【0099】
検出処理部3は、図5に示すように、受信素子nの受信レベルが所定の規定値Kn(%)となるように、リファレンス用試料或いは被検出物10が挿入領域11へ挿入されたときの、受信素子n−1の測定値Xn−1(%)を測定する。
【0100】
ここで、被検出物挿入方向Sにおけるリファレンス用試料並びに被検出物10の幅は、少なくとも、受信素子nと受信素子n−1の受信範囲7bを完全に遮る幅があればよい。すなわち、1つ受信範囲7bの2倍の幅から、隣り合う受信範囲7bがオーバーラップする範囲の幅を差し引いた幅があれば良い。
【0101】
このため、図5に示すように被検出物10の端部が受信素子nの受信範囲7bに位置するときには、受信素子n−1の受信範囲7bが被検出物10により遮られる被検出物挿入方向Sにおける範囲は、受信素子nの受信範囲7bが被検出物10により遮られる被検出物挿入方向Sにおける範囲よりも必ず広くなる。例えば、図5の例では、受信素子n−1の受信範囲7bは、被検出物10により完全に遮られている。よって、Xn−1(%)は規定値Kn(%)よりも小さくなる。
【0102】
なお、受信素子n−1の受信範囲7bが被検出物10により完全に遮られていても、その測定値Xn−1を検出できることの1つの要因としては、被検出物10の端部において超音波の回り込みが生じることが挙げられる。
【0103】
次に、測定した測定値Xn−1を図6に示す座標系にプロットする。
【0104】
先ず、第1のリファレンス用試料を用いて測定した測定値Xn−1(以下、第1のリファレンス)に対応する点をプロットする。
【0105】
ここで、第1のリファレンスは、簡単のため、100%として、図6の座標系にプロットする。
【0106】
すなわち、図6に示すポイントP1(第1リファレンスに対する比率:100%、厚さ:10μmに対応する点)が、第1のリファレンス用試料(厚さ10μm)を用いて測定した測定値Xn−1(第1のリファレンス)に対応する点である。
【0107】
次に、第2のリファレンス用試料を用いて測定した測定値Xn−1(以下、第2のリファレンス)に対応する点を図6の座標系にプロットする。
【0108】
例えば、第1のリファレンスに対する第2のリファレンスの比率が60%であったとする。この場合、図6に示すポイントP2(第1リファレンスに対する比率:60%、厚さ:100μmに対応する点)が、第2のリファレンス用試料(厚さ100μm)を用いて測定した測定値Xn−1(第2のリファレンス)に対応する点である。
【0109】
次に、図6に示す座標系に、ポイントP1とP2とを結ぶ直線を描くことにより、厚み検出用関数L3を得ることができる。
【0110】
このように求めた厚み検出用関数L3を用いることにより、本実施形態の例では、厚さ10μmから100μmの範囲であるならば、被検出物10の厚みを、以下に説明するように推定によって正確に検出することができる。
【0111】
先ず、図5に示すように、受信素子nの受信レベルが所定の規定値Kn(%)となるように、未知の厚みを有する被検出物10が挿入領域11へ挿入されたときの、受信素子n−1の測定値Xn−1(%)を測定する。
【0112】
次に、このように被検出物10に対して測定した測定値Xn−1の、第1のリファレンスに対する比率を演算する。
【0113】
次に、このように演算した比率に対応する点(図6のポイントP3)を、厚み検出用関数L3上において求める。
【0114】
図6には、被検出物10に対して測定した測定値Xn−1の、第1のリファレンスに対する比率が、例えば、80%であるときの例を示している。
【0115】
そして、このように求めたポイントP3に対応する厚み(すなわち、該ポイント3に対応する縦軸値)を求めることにより、厚みが未知の被検出物10の厚みを推定することができる。
【0116】
すなわち、図5に示すように、厚みが未知の被検出物10の測定値Xn−1の、第1のリファレンスの測定値Xn−1に対する比率が80%であれば、被検出物10の厚みTは55μmと推定することができる。
【0117】
なお、第1のリファレンスの測定は、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に行っておく。同様に、第2のリファレンスの測定も、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に行っておく。そして、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に、対応する第1及び第2のリファレンスを用いて、厚み検出用関数L3を求める。
【0118】
すなわち、図6の厚み検出用関数L3は、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に存在する。
【0119】
そして、ある受信素子nの受信範囲7bに被検出物10の端部が位置するときには、当該受信素子nと受信素子n−1との組み合わせに対して求めた厚み検出用関数L3を用いて、被検出物10の厚みを推定(検出)する。
【0120】
ここで、測定値Xn−1には、各受信素子n−1毎に、その特性(感度)や配列誤差に起因してバラツキが生じるが、上記のように第1及び第2のリファレンスを測定し、厚み検出用関数L3を求めることを、予め、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に行っておき、被検出物10を検出する受信素子nと受信素子n−1との組み合わせに対応する厚み検出用関数L3を選択的に用いて厚み検出を行うことにより、各受信素子n−1毎の特性や配置のバラツキの影響を小さくすることができる。
【0121】
次に、検出した厚みTに応じて受信レベル曲線の直線化補正を行う。
【0122】
直線化補正を行う受信レベル曲線は、(受信素子n−1が検出する受信レベル曲線ではなく)受信素子nが検出する受信レベル曲線である。
【0123】
被検出物10の厚みに応じた直線化補正自体は、従来周知であるため、詳細な説明は省略するが、本実施形態では、具体的には、例えば、ROM32に記憶されたルックアップテーブル321を用いて直線化補正を行う。
【0124】
上述のように、ROM32には、複数のルックアップテーブル321が記憶され、各ルックアップテーブル321は、被検出物10の異なる厚みに対応付けられている。
【0125】
各ルックアップテーブル321には、受信素子7による各受信レベルと、その受信レベルに対応する直線化補正された値と、の関係が記憶されている。
【0126】
CPU31は、上述のように検出した被検出物10の厚みTに対応するルックアップテーブル321を選択する(具体的には、検出した被検出物10の厚みTと最も近い厚みに対応するルックアップテーブル321を選択する)。そして、選択したルックアップテーブル321を参照することにより、受信素子7から入力された受信レベルに対応する直線化補正された値を抽出する。
【0127】
これにより、受信素子7から入力された受信レベルに対応した、被検出物10の端部の正しい位置を得ることができる。
【0128】
各ルックアップテーブル321には、受信素子7による各受信レベルと、その受信レベルに対応する直線化補正された値と、の関係が、所定の分解能(例えば、2の16乗=65536)で記憶されている。よって、受信範囲7bを所定の分解能で等分した検出精度で、被検出物10の端部の位置を検出することができる。
【0129】
なお、上記のように、各受信素子n、n−1毎に、特性や配置のバラツキがあるため、ルックアップテーブル321の選択は、受信素子nと受信素子n−1との全ての組み合わせ毎に別個に行う。
【0130】
以上のような第1の実施形態によれば、全ての受信素子7の受信範囲7b(図1の検出範囲W)において、第1のリファレンス用試料の厚みと、第1のリファレンス用試料について測定した測定値Xn−1と、第2のリファレンス用試料の厚みと、第2のリファレンス用試料について測定した測定値Xn−1と、被検出物10について測定したXn−1と、に基づいて、被検出物10の厚みを精度良く検出することができる。そして、被検出物10の端部の位置を検出するに際しては、精度良く検出した被検出物10の厚みに応じて、受信レベル曲線を自動的且つ適切に直線化補正することができる。しかも、被検出物10の端部位置の検出用の発振素子6及び受信素子7を、被検出物10の厚みの検出用に兼用させることができる。
【0131】
〔第2の実施形態〕
図8は第2の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置200の構成を示す正面図である。図8においては、図1におけるのと同様の構成要素には同一の符号を付している。
【0132】
本実施形態の場合、発振部1及び受信部2は、それぞれ音響整合層4を備えていない代わりに、板状の取付ベース部材20を備えている。
【0133】
各発振素子6は発振側の取付ベース部材20上に配置され、各受信素子7は受信側の取付ベース部材20上に配置されている。
【0134】
本実施形態の場合、発振部1及び受信部2における素子6,7の配置が、上記の第1の実施形態と相違する。
【0135】
すなわち、図8に示すように、発振素子6は、隣り合う発振素子6と接するように被検出物挿入方向Sにおいて直列に配置されている。受信素子7も、隣り合う受信素子7と接するように被検出物挿入方向Sにおいて直列に配置されている。
【0136】
発振素子6並びに受信素子7の個数は、それぞれ複数であれば任意であるが、図8では、発振素子6がH1〜H10の10個、受信素子7がJ1〜J9の9個である例を示している。
【0137】
受信素子7と発振素子6とは、被検出物挿入方向Sにおける寸法が互いに等しく設定されている。そして、各受信素子7は各発振素子6に対して半ピッチだけ挿入方向Sにおいてずらして配置されている。従って、個々の受信素子7は、隣り合う2つの発振素子6の各々の半分ずつの部分と対向している。
【0138】
図9は本実施形態の場合における素子6,7の構造を示す斜視図である。
【0139】
図8に示すように、素子6,7は、直方体状の外形を有し、そのほぼ上半分を構成する第1部分30Aと、そのほぼ下半分を構成する第2部分30Bと、これら第1及び第2部分30A、30Bの間に組み込まれた、ピエゾフィルムとしてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルム31と、第1部分30Aの表側に配置された第1及び第2端子32,33と、を備えている。
【0140】
第1部分30Aと第2部分30Bとにより、エンクロージャと呼ばれる共鳴箱が構成されている。
【0141】
PVDFフィルム31は、第1部分30Aの下面に形成された波形の部分と、第2部分30Bの上面に形成された波形の部分とに挟持されることにより、波形の形状に成形されている。
【0142】
第1部分30Aと第2部分30Bとは、止着部材34により相互に連結されている。
【0143】
また、PVDFフィルム31は、その表・裏に電極処理がなされており、表側の電極は端子30Aに、裏側の電極は端子30Bに、それぞれ導通されている。
【0144】
このような構造の発振素子6及び受信素子7は、図9に示すように、その長手方向に直交する方向が被検出物挿入方向Sと一致するように配置される。
【0145】
上記の第1の実施形態で用いたような、セラミック圧電素子からなる発振・受信素子6,7の場合、第1の実施形態で説明したように、隣同士がオーバーラップした配置とする必要があるが、第2の実施形態の構造の発振素子6及び受信素子7の場合、図8に示すように隣同士密着して配置することにより、発振素子6の発振範囲6b並びに受信素子7の受信範囲7bに切れ目が生じることはない。
【0146】
PVDFの特徴は、音響インピーダンス及び密度が小さいことにより、素子から直接空気媒体を容易に効率よく振動させることができることである。
【0147】
通常、超音波素子としてセラミック圧電素子が知られているが、空気媒体を振動させるには、音響インピーダンスのマッチングを取るため、音響整合層などが必要とされる。
【0148】
対して、PVDFフィルム31を用いる場合、上記の理由から、音響整合層が不要となる。
【0149】
PVDFのもう一つの大きな特徴は、超音波周波数を自由に決定することができることである。セラミック圧電素子の場合は、共振周波数のみしか扱えないが、PVDFフィルム31の波形の曲率半径を所定の値にすれば、希望する超音波周波数を扱うことができる。
【0150】
その他として、素子の大きさを自由に設定できるため、1素子当たりの視野範囲をセラミック圧電素子に比べ、かなり広いものにさせることができ、その結果、特に超音波式エッジ位置検出装置200に広い検出範囲が求められる場合は、コスト的に大きなメリットとなる。
【0151】
更に、発振、受信間において、PVDFフィルム31を直線形状としていないため、不要な反射が全くなく、受信された信号(受信信号)の処理が容易である。このため、発信側と受信側との間を往復する反射信号の減衰を待たなくて良いというメリットもある。
【0152】
なお、発振素子6と受信素子7との位置を列方向において半ピッチずらした配置とすることにより、1個の受信素子7に対して2個の発振素子6が対向するが、このような配置とする目的は、1個の受信素子7当たりの検出視野を広くするためである。
【0153】
次に、駆動処理部8について説明する。
【0154】
発振素子6が備えるPVDFフィルム31から所定の周波数の超音波を発生させるためには、PVDFフィルム31の表裏の電極間を200Vp−p(p−pはpeak to peakの意味)前後の振幅のAC信号で駆動する必要がある。
【0155】
超音波は、空気を媒体としているので、40kHz〜400kHz程度の周波数の正弦波が適切である。また、200Vp−pと比較的高圧であることから、ドライブ回路として、E級アンプが適切である。
【0156】
ここで、E級アンプとは、LC共振回路を用いた高効率ゼロボルトスイッチング回路のことであり、非常にシンプルな回路で、高電圧の正弦波を発生できるものである。
【0157】
本実施形態の場合も、各受信素子7における受信レベルは、各受信素子7から見て、発振部1において自身と対向する部位が被検出物10により遮蔽される割合に応じて変化する。
【0158】
次に、動作を説明する。
【0159】
先ず、本実施形態の場合における被検出物10の端部位置の検出動作について、上記の第1の実施形態と相違する点だけを説明する。
【0160】
図10は端部位置の検出動作を説明するための図であり、発振素子6から発振される超音波信号と受信素子7により受信される超音波信号の経時変化を示す。
【0161】
超音波の発生形態は、バーストモードを用いる。
【0162】
受信信号は、検波、LPF(ローパスフィルタ)処理され、図10に示すように、その信号の立ち上がりの傾きを測定し評価する。このように信号の立ち上がりの傾きを測定し評価する方法については、本出願人による特開2003−97933号公報に詳しい。
【0163】
また、被検出物10の厚みの検出動作、並びに、検出した厚みに応じた受信レベル曲線の直線化補正は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0164】
第2の実施形態によれば、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0165】
なお、上記の各実施形態では、厚み検出を行う被検出物10の材質として、樹脂を例示したが、その他の材質のものについても、同様に、厚み検出を行うことができる。
【0166】
また、上記の各実施形態では、超音波式エッジ位置検出装置100、200を説明したが、これら超音波式エッジ位置検出装置100、200は、端部位置の検出機能と、検出した厚みに応じて直線化補正を行う機能と、を省略することにより、超音波式厚み検出装置とすることができる。
【0167】
また、上記の各実施形態では、第2の受信素子としては、その受信範囲が第1の受信素子(受信素子n)の受信範囲に隣接する受信素子を選択する例を説明したが、第2の受信素子は、発振部1の対向する部位が被検出物10により遮蔽される割合が第1の受信素子よりも大きく、測定値Xn−1を検出可能な受信素子であれば、その他の受信素子を選択しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置の構成を示す正面図である。
【図2】超音波式エッジ位置検出装置の発振部及び受信部を示す平面図である。
【図3】超音波式エッジ位置検出装置の受信部を示す平面図である。
【図4】検出処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】端部位置及び厚みの検出動作を説明するための模式図である。
【図6】厚み検出用関数を示す図である。
【図7】端部位置の検出動作を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係る超音波式エッジ位置検出装置の構成を示す正面図である。
【図9】第2の実施形態の場合の発振素子及び受信素子の構造を示す斜視図である。
【図10】第2の実施形態の場合の端部位置の検出動作を説明するための図である。
【図11】被検出物の挿入量と測定値との対応を示す図である。
【図12】被検出物の厚みに応じて、被検出物の挿入量と検出値との対応が変化することを示す図である。
【符号の説明】
【0169】
1 発振部
2 受信部
6 発振素子
7 受信素子
10 被検出物
100 超音波式エッジ位置検出装置(超音波式厚み検出装置を含む)
200 超音波式エッジ位置検出装置(超音波式厚み検出装置を含む)
S 被検出物挿入方向(所定の方向)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発振する発振部と、
前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、
を備え、
前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出装置であって、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することを特徴とする超音波式厚み検出装置。
【請求項2】
前記第1の受信レベルに対する比率を第1の軸とし、厚みを第2の軸とする座標系に、前記第1の厚み及び前記第1の受信レベルに対応する第1の点と、前記第2の厚み及び前記第2の受信レベルに対応する第2の点と、をそれぞれプロットし、該プロットした2点を結ぶ直線上において前記第3の受信レベルに対応する点を求め、該求めた点に対応する前記第2の軸上における厚みを、前記被検出物の厚みとして検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項3】
前記複数の受信素子は、各受信素子の受信範囲が前記所定の方向において切れ目無いように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項4】
前記第1の受信素子は、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が、前記複数の受信素子のうち最も所定値に近い受信素子であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の受信素子は、受信範囲が互いに隣り合うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項6】
超音波を発振する発振部と、
前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、
を備え、
前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出装置において、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出し、
前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正することを特徴とする超音波式エッジ位置検出装置。
【請求項7】
超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出方法であって、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子の受信レベルを、第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第2の受信レベルとすると、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第3の受信レベルとして検出する過程と、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、
を備えることを特徴とする超音波式厚み検出方法。
【請求項8】
超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出方法において、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとすると、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとして検出する過程と、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、
前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正する過程と、
を備えることを特徴とする超音波式エッジ位置検出方法。
【請求項1】
超音波を発振する発振部と、
前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、
を備え、
前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出装置であって、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出することを特徴とする超音波式厚み検出装置。
【請求項2】
前記第1の受信レベルに対する比率を第1の軸とし、厚みを第2の軸とする座標系に、前記第1の厚み及び前記第1の受信レベルに対応する第1の点と、前記第2の厚み及び前記第2の受信レベルに対応する第2の点と、をそれぞれプロットし、該プロットした2点を結ぶ直線上において前記第3の受信レベルに対応する点を求め、該求めた点に対応する前記第2の軸上における厚みを、前記被検出物の厚みとして検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項3】
前記複数の受信素子は、各受信素子の受信範囲が前記所定の方向において切れ目無いように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項4】
前記第1の受信素子は、前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が、前記複数の受信素子のうち最も所定値に近い受信素子であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の受信素子は、受信範囲が互いに隣り合うことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の超音波式厚み検出装置。
【請求項6】
超音波を発振する発振部と、
前記発振部と対向して配置され、前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、
を備え、
前記発振部と前記受信部との間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出装置において、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとし、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとすると、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出し、
前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正することを特徴とする超音波式エッジ位置検出装置。
【請求項7】
超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の厚みを、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式厚み検出方法であって、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
前記複数の受信素子は、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向において、各受信素子の受信範囲が互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子の受信レベルを、第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第2の受信レベルとすると、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを、第3の受信レベルとして検出する過程と、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、
を備えることを特徴とする超音波式厚み検出方法。
【請求項8】
超音波を発振する発振部と、前記発振部と対向して配置され前記発振部から発振される超音波を受信する受信部と、の間に配置されたシート状の被検出物の端部の、前記発振部と前記受信部とを結ぶ垂線に対して略直交する所定の方向における位置を、前記受信部による受信レベルに基づいて検出する超音波式エッジ位置検出方法において、
前記受信部は、超音波を受信する複数の受信素子を備え、
各受信素子は、受信範囲が前記所定の方向において互いに異なるように配置され、
前記被検出物の端部が受信範囲に位置する受信素子のうちの何れか1つを第1の受信素子とし、
前記発振部の対向する部位が前記被検出物により遮蔽される割合が前記第1の受信素子よりも大きい受信素子のうちの何れか1つを第2の受信素子とし、
第1の厚みを有する第1のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第1の受信レベルとし、
第2の厚みを有する第2のリファレンス用試料が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第2の受信レベルとすると、
前記被検出物が、前記第1の受信素子における受信レベルが前記規定値となるように前記発振部と前記受信部との間に配置された際の、前記第2の受信素子における受信レベルを第3の受信レベルとして検出する過程と、
前記第1の厚み、前記第1の受信レベル、前記第2の厚み、前記第2の受信レベル、及び、前記第3の受信レベルに基づいて、前記被検出物の厚みを検出する過程と、
前記受信部による受信レベルに応じた前記被検出物の前記端部の位置の検出値を、前記検出した厚みに応じて補正する過程と、
を備えることを特徴とする超音波式エッジ位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【公開番号】特開2010−38680(P2010−38680A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200681(P2008−200681)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000135254)株式会社ニレコ (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000135254)株式会社ニレコ (41)
【Fターム(参考)】
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