説明

超音波式液面計

【課題】液面計の超音波変換器が液面に対し適正な角度位置にあるかどうかを確認できるようにする。
【解決手段】超音波式液面計は、液面へ向けて超音波を送受する複数の超音波変換器4,5,6を配置している。そして送信部22は、各超音波変換器4,5,6からパルス波を送信させる。また増幅機23とA/D変換器25により、超音波変換器4,5,6で受信した受信波から受信信号を得る。そして液面エコー強度計測部26は、受信信号から各方向の液面エコーの強度を計測する。報知制御部24は、計測した液面エコー強度により、単円周上の各方向の液面エコー強度の偏り状態を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面へ送信した超音波の液面エコーの受信タイミングをもとに液位を検知する超音波液面計に関する。詳しくは、液面計の超音波変換器が液面に対し適正な角度位置にあるかどうかを確認するための方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波式液面計には、液面上検出型と液面下検出型とがある。液面上検出型の超音波式液面計は、液面の上方に超音波変換器を設置し、液面の上方向から超音波を気体中に発射し、液面で反射して戻ってきた超音波を受信する。液面下検出型の超音波式液面計は、液面の下方に超音波変換器を設置し、液面の下方向から超音波を液体中に発射し、液面で反射して戻ってきた超音波を受信する。液面下検出型には、例えばLPGタンクの底部の外壁面に超音波変換器を設置し、超音波を上方向に発射してLPGタンクの底部鋼板を通過させ、LPG液中を伝播して液面で反射させ、反射波がLPG液中を伝播し、再びLPGタンクの底部鋼板を通過して同じ超音波変換器で受信し、超音波の伝播遅延時間を計測して液残量を表示するものも含まれる。また、超音波式液面計には、同じ超音波変換器で送受を兼用にする方式と、超音波を発射する超音波変換器とは別の超音波変換器で反射波を受信する方式とがある。
【0003】
例えば特許文献1には、動作確認及び通信確認等の自己診断機能を具備した超音波レベル計が開示されている。この超音波レベル計では、例えば、自己診断機能を実行することにより動作確認が行われ、センサの断線やショートを検出することができる。また、自己診断機能により、液面検出の信頼性を確認することができる。
ここでは例えば、超音波センサより超音波が発せられた際、複数回のエコーパルス波が戻ってくるが、(1)センサの取り付け不具合(センサと貯槽または容器との壁部との間に空隙が存在する等)、(2)貯槽または容器内の底部における堆積物等の異物の存在、(3)センサそのものの品質劣化、などにより生じる信頼性の低下を検出し、センサ機能の自己診断を行うようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液面上検出型、液面下検出型、あるいは超音波変換器の送受兼用方式、送受非兼用方式、いずれの超音波式液面計おいても、液面からの反射波を受信できるように、超音波の発射方向、受波方向を合わせて超音波変換器が設置される必要がある。液面に対して超音波変換器の設置方向が適正でないと液位の計測に誤差が生じたり、誤計測、計測不能といった状況となってしまう恐れがある。
例えばLPGタンク底面外壁に設置する超音波変換器は、液面に対して超音波が鉛直方向に行き来するようにLPGタンク底面が水平となる位置に取り付ける必要があり、もしずれた角度に取り付けられた場合には、反射波が超音波変換器の位置に戻らず受信できない為、液位を計測出来なくなり、ガス残量が把握できず最悪の場合ガス切れに至ってしまうことも起こりうる。
【0005】
従来、このような超音波変換器の取り付けずれ対策として、ひとつは超音波変換器の設置時に、水平器を用いてLPGタンク底面の水平位置を確認して取り付ける方法があった。しかしこの場合、水平器を必要とし、また水平器で確認した水平位置を正確にマーキング後に超音波変換器をマーキングに合わせて正確に取り付ける必要があった。また別の対策として、超音波液面計自身に、液面エコーの強度が所定レベルにあるかどうかをチェックする機能を持たせ、運用開始前にチェック動作させる方法も行っていたが、チェック動作させた際の液位によっては、液面エコーが強くなる場合があり、たとえ超音波変換器の取り付けずれがあったとしても検出できなかった。
以上のように従来の超音波液面計では、超音波変換器の取り付け角度を液面に対して正確に合わせることが困難な場合や、チェック機能を設けても不十分な場合があった。
【0006】
また特許文献1のように、従来の液面計においても自己診断機能として超音波エコー状態を診断する機能があった。しかし、従来の液面計では、センサの取付状態の良否を判定出力するだけである為、センサの取付ズレがあった場合、どちらの方向に修正すればよいのかがわからなかった。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであり、液面へ送信した超音波の液面エコーの受信タイミングをもとに液位を検知する超音波液面計において、液面計の超音波変換器が液面に対し適正な角度位置にあるかどうかを確認することができる超音波式液面計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の点を解決する為に、以下の構成をとる。
<構成1>
液面へ送信した超音波の液面エコーの受信タイミングをもとに液位を検知する液面計であって、複数の超音波変換器を配置し、前記各超音波変換器からパルス波を送信する送信手段と、前記各超音波変換器から受信信号を得る受信手段と、前記受信信号から単円周上の各方向の液面エコーの強度を計測する液面エコー強度計測手段と、単円周上の各方向の前記液面エコー強度の偏り状態を報知する手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
<構成2>
報知手段は、液面エコーを捉えるために超音波変換器が取り付けられるべき位置方向を明示する表示器である。
【0010】
<構成3>
報知手段は、液面エコーを捉えるために超音波変換器が取り付けられるべき位置方向を明示する音発生装置である。
【0011】
<構成4>
報知手段は、液面エコーを捉えるために超音波変換器が取り付けられるべき位置方向を液面エコー強度が強く現れた方向とすることを特徴とする。
【0012】
<構成5>
報知手段は、超音波変換器が取り付けられた位置が適正か否かの判定結果を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、単円周上に配置した各超音波変換器のエコー強度を調べてエコー強度の大きく現れる方向を明示することにより、超音波変換器の取り付け位置をどの方向に修正すればよいのかが明確になり、液面エコーをより安定して捕らえるための最適位置へ超音波変換器の取り付け位置を誘導できる。したがって、超音波変換器の取付を正確に作業効率よく実施できる。また、エコー強度の偏り状態を評価して取り付け位置の良否判定を行うため、運用前に取り付け状態を的確にチェック可能となり、超音波変換器の取り付け位置不良による運用後の計測不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体例を用いて説明する。
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る超音波式液面計の構成図である。図1において超音波式液面計は、タンク1の底面外壁に設置された超音波変換器4,5,6と、制御部14と、LED7〜12を主要構成とする。制御部14は、送信部22と、増幅器23と、A/D変換器25と、液面エコー強度計測部26と、報知制御部24と、ドットマトリックス表示器16と、2つのLED19,20と、スピーカ21からなる。
【0015】
図2は、本発明の実施形態1に係る超音波式液面計の概観図である。図2において3つの超音波変換器4,5,6は、円筒形のケース3に収められており、単円周上に配置されている。またケース3には、LED7〜12も単円周上に実装されている。ケース3と制御部14はケーブル13で接続され、超音波変換器4,5,6、LED7〜12の電気配線がケーブル13内を通る。制御部14の表側には、液位を表示するための表示器15と、ドットマトリックス表示器16と、2つのLED19,20と、スピーカ21が実装されている。ドットマトリックス表示器16には、3つの超音波変換器と6つのLEDを含むケース3のイラスト17が描かれている。
【0016】
図3は、本発明の実施形態1に係る超音波式液面計の動作を示すフローチャートである。
図3において、まずステップS101で超音波変換器4,5,6からパルス波を同時に発射した後、ステップS102で各超音波変換器の受信波を増幅器23で増幅し、A/D変換器25でA/D変換して受信信号データ列を得る。次にステップS103で各受信信号の最大振幅を検索し液面エコー強度とする。
【0017】
次にステップS104で各液面エコー強度の中での最大値Pmaxを求める。次にステップS105で、液面エコー強度の最大値Pmaxが所定の下限値以上であるかどうかを調べる。もしPmaxが下限値未満ならば液面エコーは極めて弱い状態であると判断し、ステップS106でLED7〜12をすべて消灯状態としてステップS113へ進む。
LED7〜12は、液面エコー強度の偏り状態を示す目的で点灯させるが、液面エコー状態が極めて弱い状態にあった場合には、全部消灯して『液面エコー弱い』という趣旨を報知するのである。
【0018】
ステップS104でもしPmaxが下限値以上だった場合には、液面エコー強度の偏り状態を表示させる。その為にステップS107に進み、Pmax近辺、例えば0.9Pmax以上の液面エコー強度、となった超音波変換器の個数nを求める。
【0019】
ステップS108でnはいくつか判定した結果、n=1の場合、ステップS109へ進み、Pmaxとなった超音波変換器のLEDを点灯する。点灯したLEDは、液面エコー強度が強い方向を示している。
またn=2の場合、ステップS110に進み、0.9Pmax以上となった2つの超音波変換器間のLEDひとつを点灯する。つまり、2つの超音波変換器の液面エコー強度が強い場合には、液面エコーの強い方向をその2つの超音波変換器の中間の方向とみなして、2つの超音波変換器の中間の方向に配置されたLEDを点灯する。
【0020】
n=3の場合、すべての超音波変換器の液面エコー強度がほぼ均等であるので、ステップS111に進み、LED7〜12すべてを点灯する。つまり全方向のLEDを点灯することで『液面エコー強度がほぼ均等である。』という趣旨を明示する。そしてステップS114に進み、取り付け判定OKとみなして制御部14のLED19を点灯し、『取り付けOK』という趣旨を明示する。それ以外の場合、すなわちステップS109、S110を実行後は、ステップS112に進み、点灯したLEDに対応する方向の矢印マークをドットマトリックス表示器16に表示する。
ステップS112、S106を実行した後は、ステップS113に進み、取り付け判定NGとみなして制御部14のLED20を点灯し、『取り付けNG』という趣旨を明示する。
【0021】
図4は、タンク1の底面に設置した3つの超音波変換器の単円の中心位置が少し左側にずれている状態を示した図である。超音波変換器4,5,6から発射された超音波パルスは、タンク1の底部鋼板を通過して液体中を上方へ向かう。このとき、タンク1の底部鋼板の面がもっとも水平に近い状態で接した超音波変換器6の超音波束は、ほぼ鉛直上方に向かい液面2でほぼ垂直に反射してほぼ超音波変換器6に向かって戻る。タンク1の底部鋼板の面がもっとも水平から右向きにずれた状態(右側が下がった状態)で接した超音波変換器4の超音波束は、タンク1の底部鋼板を通過すると液体中を右に傾いた方向に上昇し、液面2で反射して右に傾いた方向のまま降下するので、超音波変換器6に向かって進み、超音波変換器4からは遠ざかって戻ることになる。超音波変換器5の超音波束は、超音波変換器4ほどの傾きはないが右向きに少しずれているので、右にずれた位置に戻ってくることとなる。
【0022】
こうして3つの超音波変換器4,5,6から発射された超音波のエコーは、タンク1の底部の水平面に近い超音波変換器6で受信するエコーが最も強く、タンク1の底部の水平面から大きくずれた超音波変換器4で受信するエコーが最も弱くなる。超音波変換器4は、単円周上に配置しているので、その単円中心がタンク底部曲面の水平面位置に合ったとき各超音波変換器の受信エコーの強さが均一になる。
【0023】
図5は、送信パルス波形(A)と、各超音波変換器4,5,6の受信信号波形(B)〜(C)を示した図である。図5の(A)のように送信パルスは、正弦波3サイクルからなる。各受信信号波形(B)〜(C)の最大振幅は、それぞれV4、V5、V6であり、V6>V5>V4となっている。これら最大振幅をそれぞれの超音波変換器のエコー強度とする。よってエコー強度は、超音波変換器6が最も大きくなる。
【0024】
上述のとおり、エコー強度は、タンクの底部の水平面に近いほど大きく出るから、単円周上に配置した超音波変換器のうちで最も強いエコー強度を示した超音波変換器の位置方向がタンクの底部の水平面位置を指し示すことになる。よって、LED7〜12のうち点灯したLEDの方向がタンクの底部の水平面位置方向を指し示すこととなり、LEDが点灯した方向に超音波変換器4,5,6を動かして取り付け位置を修正すればよいことがわかる。また全部のLEDが点灯した状態は、エコー強度が均等であるから、タンクの底部の水平面位置に超音波変換器4,5,6の単円中心が一致しており、超音波変換器の取り付け位置は適正であると考えられる。
【0025】
本実施例では、超音波変換器4,5,6は、液面計測値を得るためにも用いる。オペレータは、液面計の制御部14に設けた図示しない操作ボタンを操作して上述のように超音波変換器4,5,6の取り付け位置を修正するための動作をさせた後、運用モードに切り替える。すると、定期的に制御部14は、超音波変換器4,5,6からパルス波を発射し、液面エコーを受信して、液面エコーの受信タイミングから液面高さを割り出して液位を表示器に毎回表示する。
【0026】
超音波変換器4,5,6を液面計測にも用いると上述したが、液面計測専用の超音波変換器群を設けても良い。この場合、超音波変換器4,5,6の単円中心に液面計測専用の超音波変換器群の中心を合わせて配置する。液面計測専用の超音波変換器群は、一個の超音波変換器でもよい。
【0027】
上記実施例では、超音波変換器3つの場合であったが、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。超音波変換器が2つの場合には、1軸方向の取り付けずれしか検出できないが、例えば横型の円筒状タンクの底部(つまり円筒曲面)に設置されて円周方向のずれのみ考慮すればよい場合には超音波変換器2つでも十分機能を果たすことも考えられる。
【0028】
また上記実施例では、3つの超音波変換器に対し6つのLEDで取付位置の修正方向を表示したが、LEDの数を超音波変換器と同数の3つにしてもよい。逆に例えば3つの超音波変換器に対し9つのLEDを配置するなどLED数を増やしてもよい。この場合、超音波変換器間の中間には2つのLEDを配置させる。両サイドの超音波変換器のエコー強度が0.9Pmaxであった場合、Pmaxであった超音波変換器寄りのLEDを点灯する。
【0029】
上記実施例では、円筒型のケース3に6つのLED7〜12を配置してエコー強度の偏り状態を表示した。別の表示方法として、図2に示すように、制御部14のドットマトリックス表示器16に円筒型ケース3のイラスト17を表示し、イラスト上のLED7〜12を点灯表示してもよい。またこのときに、超音波変換器4,5,6の取り付け位置を修正する方向を示す矢印18を表示してもよい。
また、エコー強度の偏り状態を表示する替わりに、制御部14に配置したスピーカ21から音声でエコー強度の偏り状態を報知してもよい。例えば、予め前後左右方向を定義しておき、『右手前に少しずらして取り付けて下さい。』という具合に音声ガイドするようにしてもよい。
【0030】
また上記実施例では、制御部14に取り付け判定結果を、LED19,20に表示していたが、スピーカ21から音声で『取り付けOK』と発音して取り付け判定結果を報知してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波式液面計の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る超音波式液面計の概観図である。
【図3】本発明の実施形態に係る超音波式液面計の動作を示すフローチャートである。
【図4】タンクの底面に設置した3つの超音波変換器の単円の中心位置が少し左側にずれている状態を示した図である。
【図5】送信パルス波形と、各超音波変換器の受信信号波形を示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1…タンク、2…液面、3…円筒型ケース、4,5,6…超音波変換器、7〜12…LED、13…ケーブル、14…制御部、15…表示器、16…ドットマトリックス表示器、17…イラスト、18…矢印、19,20…LED、21…スピーカ、22…送信部、23…増幅器、24…報知制御部、25…A/D変換器、26…液面エコー強度計測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面へ送信した超音波の液面エコーの受信タイミングをもとに液位を検知する液面計において、
複数の超音波変換器と、
前記各超音波変換器からパルス波を送信する送信手段と、
前記各超音波変換器から受信信号を得る受信手段と、
前記受信信号から各方向の液面エコーの強度を計測する液面エコー強度計測手段と、
単円周上の各方向の前記液面エコー強度の偏り状態を報知する手段を具備したことを特徴とする液面計。
【請求項2】
前記報知手段は、液面エコーを捉えるために超音波変換器が取り付けられるべき位置方向を明示する表示器であることを特徴とする請求項1記載の液面計。
【請求項3】
前記報知手段は、液面エコーを捉えるために前記超音波変換器が取り付けられるべき位置方向を明示する音発生装置であることを特徴とする請求項1記載の液面計。
【請求項4】
前記報知手段は、液面エコーを捉えるために前記超音波変換器が取り付けられるべき位置方向を液面エコー強度が強く現れた方向とすることを特徴とする請求項2または3記載の液面計。
【請求項5】
前記報知手段は、前記超音波変換器が取り付けられた位置が適正か否かの判定結果を報知することを特徴とする請求項1記載の液面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−309560(P2008−309560A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156353(P2007−156353)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】