説明

超音波振動子の取り付け構造とそれを使用した超音波流量計測装置

【課題】超音波計測装置としての信頼性を備え、超音波振動子を被計測流路に組み付ける工程が単純化され、作業ミスが低減されることを目的とする。
【解決手段】有底筒状のケース1と音響整合層5と圧電体6とを備えた超音波振動子14と、電気的絶縁性の材料で形成した絶縁体15と、気密シール性のシール材18と、被取り付け部16とを含み、超音波振動子14を絶縁体15を介して被取り付け部16に取り付ける取り付け構造において、超音波振動子14と絶縁体15との間および絶縁体15と被取り付け部16との間に、シール材18を介装することにより、超音波振動子と被計測流路の振動伝搬を低減でき、かつ絶縁性、シール性を確保でき、超音波振動子を被計測流路に組み付ける工程は、被計測流路に絶縁体とシール材を先に組み込むことにより簡単に超音波振動子を取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計測装置における超音波振動子の取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の超音波流量計測装置に用いる超音波振動子の取り付け構造は、超音波振動子を制振体と振動伝達抑止体を介して超音波流量計測装置の被計測流路に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された従来の取り付け構造を示すものである。図に示すように、超音波振動子30の側壁部31の外周面には側壁部の振動を低減する制振体32を巻装し、超音波振動子30の支持部33を保持する保持部34を有する振動伝達抑止体35を介して超音波流量計測装置の被計測流路38に取り付け、固定体37で固定している。これによって、圧電体36の振動が取り付け側に伝搬することを低減して残響の短い超音波パルスの送受信ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−344472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、超音波振動子30を被計測流路38へ組み込む際に制振体32と振動伝達抑止体35を事前に超音波振動子に取り付ける必要があり、且つ制振体32と振動伝達抑止体35は構成上複雑な形状となるため作業性が悪く、組立て信頼性も低下してしまう。また、固定体37は保持部34を覆うように構成されているため被計測流路38に制振体32と振動伝達抑止体35を取り付けた超音波振動子30を装着後に固定体37をビス等により被計測流路38に固定していた。そのため、被計測流路38に超音波振動子30を取り付ける工程だけで相当な時間と工程が必要となる課題を有していた。
【0006】
本発明は上記課題を解決するもので、超音波流量計測装置としての信頼性を維持しつつ、超音波振動子を被計測流路に組み付ける工程が単純化され、作業ミスが低減されることによる作業信頼性の高い超音波振動子の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波振動子の取り付け構造は、有底筒状のケースと音響整合層と圧電体とを備えた超音波振動子と、電気的絶縁性の材料で形成した絶縁体と、気密シール性のシール材と、被取り付け部とを含み、超音波振動子を絶縁体を介して被取り付け部に取り付ける取り付け構造において、超音波振動子と絶縁体との間および絶縁体と被取り付け部との間に、シール材を介装したものである。
【0008】
これによって、超音波振動子と被計測流路の振動伝搬を低減でき、かつ絶縁性、シール性を確保でき、超音波振動子を被計測流路に組み付ける工程は、被計測流路に絶縁体とシール材を先に組み込むことにより簡単に超音波振動子を取り付けることができる。
【0009】
また、本発明の超音波振動子の取り付け構造は、超音波振動子の一部を絶縁体の係止手
段にて固定する取り付け構造としたものである。
【0010】
これによって、超音波振動子を被計測流路に取り付ける工程は、被計測流路に絶縁体とシール材を組み込んだあと超音波振動子を係止手段のリブ部に嵌め込むだけで装着できる。
【発明の効果】
【0011】
超音波流量計測装置としての信頼性を維持しつつ、超音波振動子を被計測流路に組み付ける工程が単純化され、作業ミスが低減されることによって作業信頼性が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における超音波振動子の取り付け構造を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態2における超音波振動子の取り付け構造を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態3の超音波振動子の取り付け構造を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態4の超音波流量計測装置の構成図
【図5】従来の超音波振動子の取り付け構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、有底筒状のケースと音響整合層と圧電体とを備えた超音波振動子と、電気的絶縁性の材料で形成した絶縁体と、気密シール性のシール材と、被取り付け部とを含み、前記超音波振動子を前記絶縁体を介して前記被取り付け部に取り付ける取り付け構造において、前記超音波振動子と前記絶縁体との間および前記絶縁体と前記被取り付け部との間に、前記シール材を介装したことを特徴とする、超音波振動子の取り付け構造。
【0014】
これにより、圧電体の振動が被計測流路へ伝搬するのを低減し残響の短い超音波パルスの送受信を行い計測精度を確保することができる。
【0015】
またケースを絶縁体で遮蔽してコンパクトな取り付け構造で被取り付け部と超音波振動子との導電距離を大きくすることで、落雷などにより被取り付け部と超音波振動子間に異常高電圧が発生した場合でもリークに至る耐電圧を高め、リーク電流による超音波振動子の破損を防いで信頼性を確保することができる。
【0016】
また超音波振動子が取り付けられる被取り付け部と絶縁体との間およびケースと絶縁体との間にシール材を設けることにより被計測流体側とシール材を介して対側との気密シール性を確保することができる。
【0017】
また被取り付け部へ事前にシール材と絶縁体を取り付けることができ、超音波振動子の取り付け性が向上できるとともにシンプルな構成と工程の単純かにより作業ミスが低減でき作業信頼性を向上することができる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明において、絶縁体は係止手段を備え、前記係止手段で前記超音波振動子を前記絶縁体に係止するものである。
【0019】
それにより、被取り付け部に事前にシール材と絶縁体を取り付けて、その後、超音波振動子を係止手段で係止するだけで絶縁体に取り付けることが可能となり、さらに超音波振動子の取り付けに必要な部品点数が削減され、取り付け工程を単純化することができる。
【0020】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記絶縁体と、前記超音波振動子との間に振動伝搬防止帯を備えものである。
【0021】
これにより、圧電体の振動がケースに伝搬した場合であっても、振動伝搬防止帯により絶縁体への振動伝搬が大幅に低減でき、絶縁体から被取り付け部への振動伝搬が低減され、残響によるノイズの発生の低減や残響の短い超音波パルスの送受信が可能で、S/Nが改善されて被計測流体の流量、流速の計測精度、計測範囲の拡大など計測特性が向上できる。
【0022】
第4の発明は、 少なくとも一対の前記超音波振動子と、被計測流体が流れる計測流路と、前記計測流路に対向して配置された複数の前記被取り付け部と、前記超音波振動子間の超音波伝搬時間を計測する計測制御部と、前記計測制御部からの信号に基づいて流量を算出する演算部とを含み、前記超音波振動子は、第1〜第3のいずれか1つの発明の超音波振動子の取り付け構造により前記計測流路の被取り付け部に取り付けたものである。
【0023】
これにより、計測精度を高め計測範囲を拡大し長期間にわたり計測特性を維持できる流量計測装置を提供することができる。
【0024】
しかも、超音波計測装置として必要信頼性を堅持しながらも、シンプルな構成と工程の単純化が可能となり、作業ミスが低減でき作業信頼性を向上することができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態における超音波振動子の取り付け構造について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における超音波振動子の取り付け構造の断面図を示すものである。
【0027】
図1に示すように、ケース1は底部2と、側壁部3、開口部4を有する有底筒状である。底部2の外壁面には音響整合層5固定されており、底部2の内壁面には音響整合層5の反対側に圧電体6が固定されている。ケース1の開口部4の外周に環状に広がるフランジ8と開口部4を塞ぐ封止体9とを重ねて厚みを増加させて剛性を持たせた固定部7が形成されている。封止体9には端子10a、10bが設けられており、端子10aと端子10bは絶縁部11を介して絶縁されている。圧電体6と端子10aとはリード線12で電気的に接続されている。圧電体6には溝13が設けられている。
【0028】
このように超音波振動子14は有底筒状のケース1の内部に圧電体6を設けて封止体9で封止するとともにケース1の外部に音響整合層5と固定部7を備えている。
【0029】
また、ケース1を囲うように電気的絶縁材料で成型された絶縁体15が巻装されており、ケース1と絶縁体15や計測流路の強度、耐食性、耐久性を確保するためアルミ合金ダイキャストなどの金属材料で成型された被取り付け部16と絶縁体15の間は組立て性を考慮し適度なクリアランス17が設けられている。
【0030】
固定部7と絶縁体15の間や被取り付け部16と絶縁体15の間には気密シール性の材質で成型されたシール材18が密着するように設けられている。シール材18は例えばゴム製Oリングやシリコン製樹脂などを使用する。絶縁体15と固定部7は固定体19とビス(図示せず)を介して被取り付け部16に固定されている。
【0031】
以上のように構成された超音波振動子14の作製方法の一例について以下に説明する。超音波振動子14はLPガスや天然ガス中で使用することを想定して、有底筒状のケース1にはステンレス、音響整合層5にはエポキシ樹脂と中空ガラス球の混合体からなる材料を選択する。ケース1の加工方法には量産性を考え、切削加工ではなく絞り加工のような
成形加工を選択する。また、ケース1のステンレスの厚みは、超音波振動子14の感度、構造的強度、成形加工性の観点から0.1から0.5mm程度を選択する。
【0032】
このように薄い材料でケース1を成形するため固定部7はケース1の絞り加工により形成されるフランジ8の板厚T1に対して封止体9の板厚T2を大きくし(T1<T2)、封止体9を溶接などで接合して構造的強度を高めている。
【0033】
また、圧電体6はステンレスからなる底部2に接着固定されるため、広がり方向の振動が阻害される。超音波振動子14の高感度化を図るには広がり振動よりも厚み縦振動を主モードに利用する方が有利である。しかし、圧電体6は形状により振動の主モードが決定されてしまい、圧電体6の形状と使用周波数に対する許容範囲が狭い。そこで、圧電体6に溝13を設けた構造として、実用可能な小型の寸法で厚み振動を主モードとすることが可能となる。
【0034】
このような材料、形状として具体的な作製手順として、まず厚み0.2mmのステンレス鋼板から円形状の底部2を有する有底筒状のケース1を成形加工する。次に、底部2の外壁面に円板状の音響整合層5、内壁面には圧電体6をエポキシ系接着剤にて接着固定する。このとき溝13により分割された電極(図示せず)と底部2を10μm以下の薄い接着層を介して接着固定することにより、分割された電極(図示せず)と底部2の電気的導通も取ることができる。
【0035】
リード線12は圧電体6の電極(図示せず)と端子10aにそれぞれ半田付けをする。最後に、1mm程度のステンレス板からなる封止体9を開口部4の外周側に設けたフランジ8に電気抵抗溶接などにより固定し、封止と電気的導通を同時に行う。
【0036】
圧電体6はケース1をグランドとして共用し、さらにケース1および封止体9で覆われるためノイズの影響を低減できる。また、封止するときケース1の内部に乾燥した窒素や不活性ガスを置換封入すると、圧電体6の電極、圧電体6とケース1の接着層などの長期間使用による劣化防止が可能である。
【0037】
以上のように構成された超音波振動子の取り付け構造について、以下その動作、作用を説明する。
【0038】
まず、有底筒状のケース1を囲うように電気的絶縁材料で成型された絶縁体15について、もし仮に本実施の形態で示した絶縁体15が無く超音波振動子14は被取り付け部16と電気絶縁距離の小さい状態で配置された場合について説明する。この場合、落雷などにより被取り付け部16と超音波振動子14の間に異常な高電圧が発生すると、被取り付け部16と超音波振動子14の間に大きな電流が流れて超音波振動子14の圧電体6などに損傷が生じることになる。
【0039】
この損傷を防止するには異常な高電圧に対してリークに至る耐電圧を高めるため電気絶縁距離を大きくすることが必要になる。しかし、ケース1と取り付け壁25との距離を大きくするには、取り付け穴を大きくすると共にフランジ8などで形成した固定部7の外形を大きくせねばならず、小型化に逆行する。
【0040】
しかし、本実施の形態のように電気絶縁材料で成型した絶縁体15を設置すると、小型のままで超音波振動子14と被取り付け部16とが電気的絶縁物によって遮蔽され絶縁距離が大きくなり、落雷などにより被取り付け部側と超音波振動子間に異常高電圧が発生した場合でもリークに至る耐電圧を高めることができ、リーク電流による超音波振動子の破損を防いで信頼性を向上できる。
【0041】
また、被取り付け部16への絶縁体15の取り付け時や、絶縁体15への超音波振動子14の取り付け時にスムーズに挿入できるよう適度なクリアランス17を設けているため、被計測流体であるガスや液体が被取り付け部16から漏れ出す恐れがある。そのために、シール材18によって絶縁体15と被取り付け部16との気密シール性を確保することができる。
【0042】
次に本実施の形態における最大の効果をもたらす、被取り付け部16への超音波振動子14の取り付け方法について説明する。被取り付け部16にまず絶縁体15の下側に配置されているシール材18を取り付ける。なお、シール材18は例えばOリングを使用する場合、被取り付け部16の壁面に窪みを設けていればOリングの装着が容易にでき、取り付け場所も規定される。次に絶縁体15を被取り付け部16に挿入し、絶縁体15の上側に配置されているシール材18を取り付ける。なお、シール材18は例えばOリングを使用する場合、被取り付け部16の壁面に窪みを設けていればOリングの装着が容易にでき、取り付け場所も規定される。
【0043】
次に超音波振動子14を絶縁体15とシール材18を装着した被取り付け部16に挿入する。最後に固定体19にて固定部7と絶縁体15の上部を押さえるように取り付けることにより、シール材18の密着性が増し、超音波振動子を固定することができる。
【0044】
以上のように、部品ひとつひとつを被取り付け部16に装着していくことにより前工程での準備作業が不要となるほか、装着状態を目視確認しながら確実に作業を進めることができる。特にシール材18については、少しでもずれて装着したり、折れ曲がって装着したりすると被取り付け部16からのガス漏れや水もれに繋がることになるので、本実施の形態のようにシール材18を線接触で密着させることによって、特にOリングを使用することによって構造上も作業性上も信頼性を向上することができる。
【0045】
このように超音波計測装置として必要な信頼性を堅持しながらも、計測流路の被取り付け部16へ事前にシール材18と絶縁体15を取り付けることができ、超音波振動子14の取り付け性が向上できる。また、それぞれの部品の形状の簡易化と、シンプルな構成と工程の単純化をすることで作業ミスが低減でき作業信頼性を向上することができ、漏洩がなく安全で計測精度が高く計測範囲の大きい流量計測装置が実現できる。
【0046】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における超音波振動子の取り付け構造の断面図を示すものである。
【0047】
本実施の形態において実施の形態と同一部材および同一機能を有するものは同一符号を付し詳細な説明は省略し、異なるところを中心に説明する。
【0048】
絶縁体15の端部には内リブ20が設けられており、内リブ20は超音波振動子14の固定部7を環状に囲っている絶縁体15の内向き側に環状の対称位置に少なくとも2箇所設けられ、ある程度の可動性を備え固定部7を押えるような形状の係止手段である。なお、内リブ20は環状の位置に多数個設けてもよい。
【0049】
また、絶縁体15の外周部には外リブが設けられており、外リブ21は固定部7を環状に囲っている絶縁体15の外向き側に環状の対称位置に少なくとも2箇所設けられ、形状は絶縁体15を被取り付け部16に挿入し易いよう図2の垂直下方向にはなだらかに成型され、垂直上方向は絶縁体15を被取り付け部16に取り付けた後容易に抜けないよう返し構造を備えたものである。なお、外リブ21はある程度の可動性を備えてもよい。
【0050】
一方、被取り付け部16の外リブ21に対応する位置には、嵌め込み穴22が設けられており、嵌め込み穴22は外リブ21と同じような形状であり、絶縁体15が挿入された状態で外リブ21が入り込むような位置に設けられている。なお、外リブ21と嵌め込み穴22は環状の位置に多数個設けてもよく、形状は半円状や半円球状としてもよい。
【0051】
以上のように構成された本実施の形態における超音波振動子の取り付け構造について、以下その動作、作用を説明する。
【0052】
まず、被取り付け部16に絶縁体15の下側に配置されているシール材18を取り付ける。なお、シール材18は例えばOリングを使用する場合、被取り付け部16の壁面に窪みを設けていればOリングの装着が容易にでき、取り付け場所も規定される。
【0053】
次に絶縁体15を被取り付け部16に挿入し、絶縁体15の上側に配置されているシール材18を取り付ける。なお、シール材18は例えばOリングを使用する場合、被取り付け部16の壁面に窪みを設けていればOリングの装着が容易にでき、取り付け場所も規定される。
【0054】
次に超音波振動子14を絶縁体15とシール材18を装着した被取り付け部16に挿入する。挿入途中に固定部7が内リブ20を外側に広げるように作用し、固定部7がシール材18まで到達すると固定部7に広げられていた内リブ20が元に戻り、固定部7を押さえ込むような係止手段となる。このような係止手段とすることで固定部7を押える固定体が不要であり、部品削減が可能となる。また固定部7を抑える固定体を被取り付け部16に装着していたビス締め等が不要となり、取り付け工程も簡素化できる。
【0055】
このように超音波計測装置として必要信頼性を堅持しながらも、より一層、部品の形状の簡易化、シンプルな構成と工程の単純をすることで作業ミスが低減でき作業信頼性を向上することができ、漏洩がなく安全で計測精度が高く計測範囲の大きい流量計測装置が実現できる。
【0056】
また、被取り付け部16と絶縁体15の取り付けを、嵌め込み穴22に外リブ21を嵌め込むような係止手段とすることにより、特に、シンプルな構成と工程の単純化をすることで作業ミスが低減でき作業信頼性を向上することができ、漏洩がなく安全で計測精度が高く計測範囲の大きい流量計測装置が実現できる。
【0057】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における超音波振動子の取り付け構造の断面図を示すものである。
【0058】
本実施の形態において実施の形態1と同一部材および同一機能を有するものは同一符号を付し詳細な説明は省略し、異なるところを中心に説明する。
【0059】
超音波振動子14の有底筒状のケース1の側壁側と絶縁体15との間には振動伝搬防止帯23が設けられており、ケース1の側壁3と絶縁体15が接触しないよう、1mm〜2mm程度の隙間を設けている。
【0060】
以上のように構成される超音波振動子の取り付け構造について、以下その動作、作用を説明する。
【0061】
超音波計測装置は、送信側の超音波振動子14と受信側の超音波振動子14がお互いに
超音波の送信、受信を行うことにより動作している。送受信の超音波振動子14の駆動時には、超音波振動子14に駆動電気入力を印可されて圧電体6が振動し、この振動が音響整合層5を介して被計測流体に超音波パルスとして放射されるだけでなく、ケース1を振動させようとする。また、受信側では受信した超音波パルスは圧電体6で電気信号に変換されると同時にケース1も振動させようとする。
【0062】
ケース1が振動すると、ケース1の振動が被取り付け部16を介して受信側の超音波振動子14に伝わり、受信側では被取り付け部16を介した振動と受信した超音波パルスと合成されるため振幅、位相に影響して計測に誤差を与える要因となる。
【0063】
このような超音波振動子14自身の振動をできるだけ被取り付け部16に伝搬しないようにするため、ケース1の側壁3側と絶縁体15との間に振動伝搬防止帯23を設けて物理的接触を避けて振動伝搬を防止している。なお、固定部7が封止体9との固着により剛性が高くなり、固定部7の振動が抑えられているため、固定部7と絶縁体15の一部が接触していても計測に影響がある振動伝搬には至らない。
【0064】
以上のようにすることで、残響の短い超音波パルスの送受信が可能で、取り付け側への振動伝搬の低減が可能な超音波振動子を得ることができ、残響によるノイズの発生の低減と被取り付け部側への振動伝搬の低減ができ、S/Nが改善されて被測定流体の流量、流速の計測精度、計測範囲の拡大など計測特性が向上できる。
【0065】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4を示す超音波流量計測装置の構成図を示すものである。
【0066】
本実施の形態において実施の形態1〜3と同一部材及び同一機能を有するものは同一符号を付し詳細な説明は省略し、異なるところを中心に説明する。
【0067】
超音波流量計測装置における被計測流体が流れる流路にあって、被計測流体の流速の測定位置である計測流路24は流路壁25に囲まれた幅Wの流路である。2個の超音波振動子26、27は互いに対向するように流路壁25の被取り付け部16に実施の形態2に記載した取り付け構造により取り付けられており、上流側の超音波振動子26と下流側の超音波振動子27は距離Lを隔てるとともに速度Vの被計測流体の流れに対して角度θ傾けて設置されている。超音波振動子26、27に対して超音波の送受信をさせる計測制御部28が接続されており、計測制御部28は超音波振動子26、27の信号を基に流速を計算し流量を算出する演算部29を備えている。
【0068】
以上のように構成された超音波流量計測装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0069】
計測流路24を被計測流体が流れている時に、計測制御部28の作用により超音波振動子26、27間で計測流路24を横切るようにして超音波の送受信が行われる。すなわち、上流側の超音波振動子26から発せられた超音波が下流側の超音波振動子27で受信されるまでの経過時間T1を計測する。また一方、下流側の超音波振動子27から発せられた超音波が上流側の超音波振動子26で受信されるまでの経過時間T2を計測する。このようにして測定された経過時間T1およびT2を基に、以下の演算式により演算部29で流量が算出される。
【0070】
いま、被計測流体の流れと超音波伝播路とのなす角度をθとし、流量測定部である超音波振動子26、27間の距離をL、被測定流体の音速をCとすると、流速Vは以下の式にて算出される。
【0071】
T1=L/(C+Vcosθ)
T2=L/(C−Vcosθ)
T1の逆数からT2の逆数を引き算する式より音速Cを消去して
V=(L/2cosθ){(1/T1)−(1/T2)}
θおよびLは既知なのでT1およびT2の値より流速Vが算出できる。
【0072】
いま、空気の流量を計ることを考え、角度θ=27度、距離L=70mm、音速C=340m/秒、流速V=8m/秒を想定すると、T1=2.0/10000秒、T2=2.1/10000秒であり、瞬時計測ができる。
【0073】
ここで、計測流路24の流れ方向に直交する横断面積sより、流量QはQ=kVsここで、kは横断面積sにおける流速分布を考慮した換算係数である。このようにして演算部29で流量を求めることができる。
【0074】
超音波による流量計測では、時間T1、T2を高精度に計測することが重要である。すなわち、送信側では残響の少ない超音波振動を被計測流体中のみに発することが大切であり、受信側では流体通路壁を伝搬した超音波振動は排除し被計測流体中を伝搬した超音波振動のみを残響を少なく受信することが大切である。
【0075】
本実施の形態の超音波流量計測装置では、超音波振動子14を絶縁体15で囲うことでコンパクトなスペースのままで流路壁25から電気的な絶縁距離を大きく確保でき、耐電圧性を高めて雷サージ性が向上でき、信頼性の高い計測装置が実現できる。絶縁体15とシール材18とにより、計測精度、計測範囲、雷サージ性に優れ信頼性、実用性に優れた計測装置が実現できる。
【0076】
このように超音波計測装置として必要な信頼性を堅持しながらも、被取り付け部16へ事前にシール材18と絶縁体15を取り付けることができ、超音波振動子14の取り付け性が向上できる。
【0077】
また、絶縁体15の一部に内リブ20と外リブ21の係止手段を備えることにより、より一層それぞれの部品の形状の簡易化、シンプルな構成と工程の単純をすることができ、作業ミスが低減でき作業信頼性を向上することができる。
【0078】
なお、本実施の形態おいては、実施の形態2に記載して取り付け構造により超音波振動子を被取り付け部に取り付けたが、これに限るものではなく、実施の形態1または3に記載の取り付け構造を採用した場合も同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかる超音波振動子の取り付け構造は、超音波計測装置としての信頼性を備え、超音波振動子を被計測流路に組み付ける工程が単純化され、作業ミスを低減することが可能となるので、ガスメーターや水道メーターなどの高信頼性が要求される流体計測装置等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 ケース
5 音響整合層
6 圧電体
14、26、27 超音波振動子
15 絶縁体
16 被取り付け部
18 シール材
20 内リブ(係止手段)
23 振動伝搬防止帯
24 計測流路
28 計測制御部
29 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のケースと音響整合層と圧電体とを備えた超音波振動子と、
電気的絶縁性の材料で形成した絶縁体と、
気密シール性のシール材と、
被取り付け部と、を含み、
前記超音波振動子を前記絶縁体を介して前記被取り付け部に取り付ける取り付け構造において、
前記超音波振動子と前記絶縁体との間および前記絶縁体と前記被取り付け部との間に、前記シール材を介装したことを特徴とする、
超音波振動子の取り付け構造。
【請求項2】
前記絶縁体は係止手段を備え、
前記係止手段で前記超音波振動子を前記絶縁体に係止する、
請求項1に記載の超音波振動子の取り付け構造。
【請求項3】
前記絶縁体と、前記超音波振動子との間に振動伝搬防止帯を備えた、
請求項1または2に記載の超音波振動子の取り付け構造。
【請求項4】
少なくとも一対の前記超音波振動子と、
被計測流体が流れる計測流路と、
前記計測流路に対向して配置された複数の前記被取り付け部と、
前記超音波振動子間の超音波伝搬時間を計測する計測制御部と、
前記計測制御部からの信号に基づいて流量を算出する演算部と、を含み、
前記超音波振動子は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波振動子の取り付け構造により前記計測流路の被取り付け部に取り付けられた、
超音波流量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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