説明

超音波振動子セル、超音波振動子エレメント、超音波振動子アレイ及び超音波診断装置

【課題】DCバイアスを低減させつつ十分な音圧の超音波を送受信することが可能な超音波振動子セル、超音波振動子エレメント、超音波振動子アレイ及び超音波診断装置を提供する。
【解決手段】本発明の超音波振動子セルは、基板と、前記基板上に配設された電荷保持部と、前記電荷保持部上に配設され、信号の入出力に使われる下部電極と、前記下部電極上に空隙部を隔てて配設され、絶縁膜および前記絶縁膜上に配置された上部電極を少なくとも含む振動膜と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型の超音波振動子セル、超音波振動子エレメント、超音波振動子アレイ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子セルは電気信号を超音波に変換して対象物へ送信し、また対象物で反射した超音波を受信して電気信号に変換する機能を有する。
【0003】
より具体的には、超音波振動子セルは、空隙部を挟んで対向する一対の平板状の電極(平行平板電極)を具備して構成され、なおかつ前記一対の電極のうち一方の電極は振動膜に含まれ、前記振動膜の振動により超音波の送受信を行う。超音波振動子セルは、超音波の受信時においては、一対の電極間の静電容量の変化を基に超音波信号を電気信号に変換するため、従来型の超音波振動子セルの場合、特に受信時においては一対の電極間にDCバイアス電圧を印加する必要があった。
【0004】
一対の電極間にエレクトレット膜を設けることでDCバイアス電圧の印加を不要とした超音波振動子セルが、特開平2−52599号公報に開示されている。
【特許文献1】特開平2−52599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波振動子セルが送信する超音波の音圧は、一対の電極間の静電容量に依存するものである。特開平2−52599号公報に開示の超音波振動子セルの等価回路図を図17に示す。特開平2−52599号公報に開示の超音波振動子セルは、一対の電極501、502間にエレクトレット膜503を配設してなる。この場合、一対の電極501、502間における合成静電容量C1は、絶縁膜506の静電容量Cmemと空隙部504の静電容量Ccavとエレクトレット膜503の静電容量Celeとを合成した値となる。
【0006】
ここで、空隙部504の厚さは、絶縁膜506の必要振幅により決定されるため、エレクトレット膜503の有無に関係なく一定である。このため、エレクトレット膜503を電極501、502間に配設しない場合の、電極501、502間における合成静電容量C0は、前記合成静電容量C1よりも大きい。
【0007】
言い換えれば、従来の超音波振動子セルの構造では、DCバイアスを低減させつつ、前記静電容量を維持することはできなかった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、DCバイアスを低減させつつ十分な音圧の超音波を送受信することが可能な超音波振動子セル、超音波振動子エレメント、超音波振動子アレイ及び超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波振動子セルは、基板と、前記基板上に配設された電荷保持部と、前記電荷保持部上に配設され、信号の入出力に使われる下部電極と、前記下部電極上に空隙部を隔てて配設され、絶縁膜および前記絶縁膜上に配置された上部電極を少なくとも含む振動膜と、を具備することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の超音波振動子セルは、基板と、前記基板上に配設された電荷保持部と、前記電荷保持部上に配設され、信号の入出力に使われる下部電極と、前記下部電極上に空隙部を隔てて配設され、少なくとも、絶縁膜および前記絶縁膜上に配置された上部電極を含む振動膜と、を具備する。この様な構造を有する本発明の超音波振動子セルは、静電容量の低下を抑制しつつ、DCバイアス電圧を低減またはゼロにすることができる。
【0011】
本発明の超音波振動子セルの用途は特に限定されないが、例えば超音波内視鏡に用いることができる。以下に、本発明の超音波振動子セルを適用しうる超音波内視鏡の例を説明する。ただし、本発明の超音波振動子セルを適用する超音波内視鏡は以下の記載に限定されず、本発明の超音波振動子セルは従来公知の内視鏡に適用されうる。例えば、超音波プローブタイプの超音波内視鏡、またはカプセル型の超音波内視鏡に適用してもよい。
【0012】
以下、図1から図8を参照して説明する。なお、各構成要素の形状、各構成要素の大きさの比率、または各構成要素の配置位置等、本発明はこれらの図のみに限定されない。図1は超音波内視鏡の概略構成を示す説明図である。図2は超音波内視鏡の先端部分の構成を示す斜視図である。図3は超音波振動子アレイの斜視図である。図4は超音波振動子ユニットを超音波の送受方向から見た上面図である。
【0013】
図1に示すように超音波内視鏡1は、体内に導入される細長の挿入部2と、挿入部2の基端に位置する操作部3と、操作部3の側部から延出するユニバーサルコード4とで主に構成することができる。
【0014】
例えば、前記ユニバーサルコード4の基端部には図示しない光源装置に接続される内視鏡コネクタ4aが設けられていてもよい。この内視鏡コネクタ4aからは図示しないカメラコントロールユニットに電気コネクタ5aを介して着脱自在に接続される電気ケーブル5及び図示しない超音波観測装置に超音波コネクタ6aを介して着脱自在に接続される超音波ケーブル6を延出することができる。
【0015】
例えば前記挿入部2は、先端側から順に先端硬性部20、先端硬性部20の後端に位置する湾曲自在な湾曲部8、この湾曲部8の後端に位置して前記操作部3の先端部に至る細径かつ長尺で可撓性を有する可撓管部9を連設して構成されている。また、前記先端硬性部20の先端側には詳しくは後述する超音波を送受するための超音波送受部30が設けられている。先端硬性部の形成材料としては特に限定されないが、樹脂などが挙げられる。
【0016】
前記操作部3には前記湾曲部8を所望の方向に湾曲制御するアングルノブ11、送気及び送水操作を行うための送気・送水ボタン12、吸引操作を行うための吸引ボタン13、体内に導入する処置具の入り口となる処置具挿入口14等を設けることができる。
【0017】
図2に示すように、先端硬性部20には、観察部位に照明光を照射する照明光学部を構成する照明レンズ(図示せず)、観察部位の光学像を捉える観察光学部を構成する対物レンズ21、切除した部位を吸引したり処置具が突出したりする開口である吸引兼鉗子口22及び送気及び送水を行うための送気送水口(図示せず)が設けられていてもよい。ただし、本発明の超音波振動子セルを適用する先端硬性部は上述の構造に限定されず、本発明の超音波振動子セルは従来公知の構造に適用されうる。
【0018】
先端硬性部20の先端に設けられた超音波送受部30は、図3に示すように、超音波振動子アレイ31と駆動回路34とFPC35とを具備して構成されていてもよい。FPC35は、可撓性を有し両面に実装面が形成された配線基板であり、超音波送受部30においては、前記FPC35は先端硬性部20の挿入軸と略平行な軸を中心軸として略円筒状に巻回されて配設されていることが好ましい。前記配線基板はフレキシブル配線基板であることが好ましい。
【0019】
図3に示す例では、円筒状のFPC35の外周面上には、2次元の超音波振動子アレイである超音波振動子アレイ31が設けられている。超音波振動子アレイ31は、FPC35の外周面上に周方向に配列された複数の超音波振動子ユニット32を具備して構成されている。超音波振動子ユニット32は、FPC35の外周面の法線方向から見て略長方形状を有し、円筒状のFPC35の外周面上において、短手方向を周方向として等間隔に配列されている。超音波振動子アレイ31は、の数は特に限定されないが、例えば十数から数百個の超音波振動子ユニット32により構成することができる。例えば、目的に応じて、16、32、48、64、128、192、または256などの数を選択することができる。図3における超音波振動子アレイ31は、36個の超音波振動子ユニット32を具備している。
【0020】
また、超音波振動子ユニット32は、図4に例示するように、複数の超音波振動子エレメント33が配列されて構成されていてもよい。ただし、超音波振動子エレメントの配列位置または配列数等は図4のみに限定されない。図4において、超音波振動子エレメント33は、FPC35の外周面の法線方向から見て正方形状を有しており、該超音波振動子エレメント33は、超音波振動子ユニットの長手方向に1次元に配列されている。本発明において超音波振動子ユニットの数は特に限定されず、目的に応じて、36、48、または64などの数を選択することができる。
【0021】
超音波振動子エレメント33は、詳しくは後述する複数の超音波振動子セル100により構成されている。同一の超音波振動子エレメント33においては、超音波振動子セル100は、全て並列に電気的に接続することが好ましく、超音波観測装置からの駆動信号が入力されることにより、同時に同位相の超音波を送信することができる。すなわち、本実施形態では、一つの超音波振動子エレメント33が、超音波を送受信するための最小の駆動単位を構成している。図4および図5では、超音波振動子エレメント33は、4個の超音波振動子セル100により構成されている。
【0022】
図4および図5に例示されるように、隣接する超音波振動子ユニット32間には、個々の超音波振動子ユニット32を区画する溝部である超音波振動子ユニット境界溝41を形成することができる。ただし境界溝の形状は図4のみまたは図5のみに限定されない。また、超音波振動子エレメント33間にも、個々の超音波振動子エレメント33を区画する溝部である超音波振動子エレメント境界溝42を形成することができる。このように、最小の駆動単位である超音波振動子エレメント33の外周に溝部を設けることにより、隣接する超音波振動子エレメント33間におけるクロストークを低減することが可能となる。
【0023】
超音波振動子エレメント33は、FPC35の実装面の法線方向、すなわち円筒状であるFPC35の径方向外向きに超音波を送信する。したがって、超音波振動子エレメント33が1次元に配列されて構成された超音波振動子ユニット32は、1次元の超音波振動子アレイを構成するものであり、該超音波振動子ユニット32が複数配列されることにより、2次元の超音波振動子アレイである超音波振動子アレイ31が構成されるの。
【0024】
一方、円筒状のFPC35の内周面上、すなわち超音波振動子アレイ31が実装された実装面とは反対側の実装面上には、複数の駆動回路34を実装することができる。駆動回路34は、超音波振動子エレメント33を駆動するためのパルサーや選択回路等の電気回路を有し、個々の超音波振動子エレメント33と電気的に接続することができる。
【0025】
また、駆動回路34は、円筒状のFPC35の外周面上に形成された、複数の信号電極36及び接地電極37に電気的に接続することができる。なお、信号電極36は、図3においては一つの電極のように示しているものであるが、信号電極36は、超音波振動子エレメント33の数に対応して分割されており、一つの超音波振動子エレメント33に対し一つの信号電極を配設することができる。
【0026】
信号電極36及び接地電極37は、超音波ケーブル6内を挿通されて一端が超音波コネクタ6aに電気的に接続された、同軸ケーブルの他端が電気的に接続される。よって、駆動回路34は、超音波観測装置に電気的に接続される。
【0027】
上述の構成を有する超音波送受部30は、円筒形状のFPC35の外周面上に配設された2次元の超音波振動子アレイである超音波振動子アレイ31によって、超音波を先端硬性部20の挿入軸と直交する平面上において放射状に送受信する、いわゆる電子式ラジアル走査と、超音波を先端硬性部20の挿入軸を含む平面上において放射状に送受信する、いわゆる電子式セクタ走査とを、同時又は交互に行うことができる。すなわち、上述の超音波内視鏡1は、体内における3次元の超音波走査が可能である。
【0028】
以下に、本発明の超音波振動子セルの好ましい形態について詳細を記載する。ただし、本発明は以下の実施形態のみに限定されない。
【0029】
(第1の実施形態)
図5は、超音波振動子セル100の上面図である。図6は、図5のVI-VI断面図である。図7は、超音波振動子セル100の等価回路図である。
【0030】
なお、以下の積層構造の説明において、各層の上下関係については、基板101の表面から法線方向に遠ざかる方向を上方向とする。例えば、図6の断面図において、上部電極120は下部電極110の上方に配設されている、と称するものとする。また、各層の厚さとは、基板101表面の法線に平行な方向についての各層の寸法を指す。また、以下の説明においては、便宜的に、基板101の表面のうち、超音波振動子セル100が形成される面をセル形成面、超音波振動子セル100が形成される面とは反対側の面を裏面と称する。
【0031】
超音波振動子セル100は、空隙部107を介して対向する一対の平行平板電極である、下部電極110(第1の電極)及び上部電極120(第2の電極)を有して構成される。超音波振動子セル100は、上部電極を含む弾性を有する膜状の構造体である振動膜100aの振動により、超音波を送受信するものである。
【0032】
本実施形態に係る超音波振動子セル100の構造について、以下に詳細に説明する。
【0033】
本発明の超音波振動子セルに含まれる基板101の材質としては特に限定されず、例えば、導電性の材料によって構成されていてもよいし、絶縁性の材料によって構成されていてもよい。以下、導電性の材料によって構成された基板を導電性基板とも記載し、電気絶縁性の材料により構成された基板を絶縁性基板とも記載する。
【0034】
前記基板が導電性基板である場合、前記導電性基板を構成する材料としては特に限定されず、従来公知の導電性材料を用いることができ、例えば、シリコン半導体等の導電性材料を用いることができる。
【0035】
前記基板が導電性基板である場合、電荷保持部が形成されない方の面または両面に絶縁性の膜を配置することもできる。本発明においては、基板表面の電荷保持部側の面に配置される絶縁性の膜を第1絶縁膜と記載し、基板表面の他方の面に配置される絶縁性の膜を裏面絶縁膜と記載する。これらの配置方法は特に限定されないが、例えば、図6の符合102、109に示すように、第1絶縁膜102および裏面絶縁膜109を配置することができる。第1絶縁膜または裏面絶縁膜の材質としては特に限定されず、従来公知の絶縁性材料を用いることができ、例えば、シリコン酸化物、石英、サファイヤ、水晶、アルミナ、ジルコニア、ガラス、または樹脂等の絶縁性材料を用いることができる。特に、基板101としてシリコン半導体を用い、第1絶縁膜102および裏面絶縁膜109としてシリコン酸化物を用いる場合、シリコン基板101を熱酸化処理することにより両面にシリコン酸化物の膜を形成することができる。
【0036】
前記基板が絶縁性基板である場合、前記絶縁性基板を構成する材料としては特に限定されず、従来公知の絶縁性材料を用いることができ、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、石英、サファイヤ、水晶、アルミナ、ジルコニア、ガラス、または樹脂等の絶縁性材料を用いることができる。
【0037】
基板101の形状または厚みについては特に限定はされず、目的に応じて適切な形状を適宜選択することができる。
【0038】
基板101のセル形成面上、すなわち第1絶縁膜102上には、電荷を保持する電荷保持部が形成されている。電荷保持部の形状は特に限定されないが、円形状であることが好ましい。
【0039】
電荷保持部としては特に限定されないが、エレクトレットを含むエレクトレット膜であることが好ましい。
【0040】
本発明において、エレクトレット膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、プラズマCVD法等により形成されたシリコン酸化膜を、コロナ放電により帯電させることで形成することができる。
【0041】
なお、電荷保持部130としてエレクトレット膜を用いる場合には、エレクトレット膜はSiO、もしくはSiN等のシリコン化合物、または、HfO、もしくはHfAl等のハフニウム酸化物により構成されてもよい。これらの化合物および酸化物は絶縁性に優れる。エレクトレット膜として、絶縁性の高いシリコン化合物やハフニウム酸化物を用いることにより、電荷をエレクトレット膜の深い準位のトラップに固定することができ、長期にわたって安定した電位を得ることが可能となる。
【0042】
電荷保持部としてエレクトレット膜を用いる場合、図8に例示するように、導電性の基板101上に直接、電荷保持部130aを形成した場合、電荷保持部130aと基板101界面近傍に電荷が保持される。これにより、より安定した電荷の保持が可能となる。
【0043】
電荷保持部130上には、下部電極110が形成されている。下部電極の形状は特に限定されないが、電荷保持部130と同形状であることが好ましく、より好ましくは円形状である。
【0044】
下部電極110の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリングにより成膜しパターニングすることで形成することができる。
【0045】
下部電極110の材質としては特に限定されないが、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、チタン、タンタル、またはこれらの合金であることが好ましい。これらの中で、アルミニウム、または銅は原価特性に優れるという利点を有し、タングステン、チタン、タンタル、またはこれらの合金は高融点金属であることから、超音波振動子セルの製造工程に高温処理工程を採用することができるという利点を有する。
【0046】
以下に、実施形態1の超音波振動子セルを超音波振動子エレメントに適用した際の、配置位置や、超音波振動子エレメントに含まれる構成要素についての説明を、実施形態1の説明に交えて記載するが、本発明は以下の記載のみに限定されない。
【0047】
図6に例示されるように、下部電極110は下部電極配線111を通じて、外部からの電気信号を受信したり、下部電極からの電気信号を伝えたりする信号電極パッド113と電気的に接続されていてもよい。図5では、下部電極110は、上方から見て隣接する4つの下部電極110同士が、X字形状の下部電極配線111により電気的に接続されている。
【0048】
上方から見てX字形状の下部電極配線111の、配線の交差部には、基板101を貫通して形成されたウェハ貫通電極112が、超音波振動子エレメント33単位に設けられている。ウェハ貫通電極112は、絶縁部106により基板101とは電気的に絶縁されており、裏面絶縁膜109上に形成された信号電極パッド113に電気的に接続されていてもよい。すなわち、下部電極110は、下部電極配線111、ウェハ貫通電極112を介して、基板101の裏面に形成された信号電極パッド113に電気的に接続されていてもよい。
【0049】
下部電極110上には、空隙部107越しに振動膜100aが配置されている。振動膜は、少なくとも第2絶縁膜104および前記第2絶縁膜104上に配置された上部電極120を含むが、図6に例示するように、上部電極保護膜105を含んでいてもよい。上述の基板101表面に形成される絶縁膜と区別するために、以下、振動膜に含まれる絶縁膜を第2絶縁膜とも記載する。
【0050】
第2絶縁膜104を構成する材料は特に限定されず、従来公知の電気絶縁性の材料を用いることができ、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、石英、サファイヤ、水晶、アルミナ、ジルコニア、ガラス、または樹脂等の絶縁性材料が挙げられる。第2絶縁膜104の製造方法としては特に限定されないが、例えば、LPCVD法やプラズマCVD法により形成することができる。
【0051】
上述したように、下部電極110と、振動膜100aとの間には空隙部が配置されている。空隙部の内圧は特に限定されず大気圧であってもよいし、減圧状態であってもよいし、真空状態であってもよい。
【0052】
空隙部の形状は特に限定されず、観察時に使用する超音波の波長や出力により適宜決定され、例えば、円柱状、六角柱状、または四角柱状などの形状であってもよい。
【0053】
空隙部107の形成方法は特に限定されず、公知の技術である犠牲層エッチングにより形成することができる。犠牲層エッチングを利用した場合、空隙部107内と第2絶縁膜104の上層とを連通するための犠牲層除去孔が形成されるが、前記犠牲層除去孔は、図6に例示するようにプラグ108により封止されていることが好ましい。犠牲増除去孔の形成数または形成箇所は特に限定されず、空隙部の形状などにより適宜決定することができる。例えば、図5では犠牲層除去孔は空隙部107の外周部の3箇所に形成されている。なお、空隙部107は、微細加工後のウェハ同士を接合する方法で形成されるものであってもよい。
【0054】
上部電極120は、上方から見て下部電極110と同心上、すなわち下部電極110と対向する位置に設けられていることが好ましい。
【0055】
上部電極120の形成方法としては特に限定されないが、例えばスパッタリングにより成膜しパターニングすることで形成することができる。
【0056】
上部電極120は、上方から見て隣接する4つの上部電極120同士が、X字形状の上部電極配線121により電気的に接続することができる。ここで、上部電極配線121は、上述した下部電極配線111と、上方から見て重なる部分とが最小となるように配設することが好ましい。このように、下部電極配線111と上部電極配線121とを、互いに重なる部分を最小にするように配置することにより、配線部における寄生容量の発生を防止することができる。
【0057】
上部電極を構成ずる材料としては特に限定されず、従来公知の導電性材料を用いることができ、例えばAl、Cu、W、Mo、Ti、またはTa等の導電性材料を用いることができる。また、上部電極120は1種の導電性材料のみからなってもよいし、2種以上の導電性材料を積層した多層構造を有するものであってもよい。
【0058】
図5および図6に例示するように、上方から見てX字形状の上部電極配線121の配線の交差部は、超音波振動子ユニット境界溝41上に形成されていることが好ましい。該超音波振動子ユニット境界溝41は、第2絶縁膜104の振動膜支持部104aを貫通して基板101に到達する深さで形成されていることが好ましい。超音波振動子ユニット境界溝41内には、上部電極120及び上部電極配線121と同一の工程により貫通電極122が成膜されており、貫通電極122は、基板101にオーミックコンタクト領域122aを介して電気的に接続されていることが好ましい。
【0059】
また、裏面絶縁膜109上には接地電極パッド123が形成されており、接地電極パッド123は、オーミックコンタクト領域123aを介して基板101に電気的に接続されていることが好ましい。すなわち、上部電極120は、上部電極配線121、貫通電極122、基板101を介して、基板101の裏面に形成された接地電極パッド123に電気的に接続されていることが好ましい。
【0060】
上部保護膜105の形成方法としては特に限定されないが、例えばプラズマCVD法により形成することができる。
【0061】
上部保護膜105を構成する材料としては特に限定されず、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化膜、窒化ハフニウム(HfN)、またはハフニウム酸窒化物(HfON)等により構成されてもよい。特に、HfNまたはHfONは、高密度の膜が得られるため保護膜として好ましい。
【0062】
また、図示しないが、上部保護膜105上には、耐水性、耐薬品性等を有し、生体適合性及び電気絶縁性に優れた膜を成膜してもよく、より具体的にはパラキシレン系樹脂からなる膜を成膜してもよい。
【0063】
上述の超音波振動子セルを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスを利用して作成することができる。MEMSプロセスにより作成された、超音波振動子は、一般的にc−MUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)と呼ばれる。MEMSプロセスを利用した場合、鉛を使用せずに超音波振動子セル、または超音波振動子エレメントを作製することができる。
【0064】
上述した構成を有する超音波振動子セル100を有する超音波振動子エレメント31は、例えば半田接合、異方性導電フィルム接合、超音波接合等の公知の工法によりFPC35上に実装されることが好ましい。超音波振動子セル100は、信号電極パッド113及び接地電極パッド123を介して、FPC35の反対側に実装された駆動回路34に電気的に接続されることが好ましい。
【0065】
すなわち、信号電極パッド113を介して、下部電極110と駆動回路34との間で電圧信号である駆動信号及び受信信号の送受がなされることが好ましい。また、接地電極パッド123は、接地電位とされ、上部電極120は、基板101及び接地電極パッド123を介して接地電位に接続されることが好ましい。
【0066】
このように、超音波振動子セル100に含まれる基板101を導電性のシリコンで形成し、接地電位とすることにより裏面側から飛来するノイズを遮蔽し、よりS/N比の高い超音波画像を得ることが可能となる。
【0067】
また、超音波振動子セル100の裏面側に信号電極パッド113及び接地電極パッド123を設けることにより、実装面積を減少させることができる。
【0068】
上述した構成を有する超音波振動子セル100においては、下部電極110に直列に電気的に接続された電荷保持部130に保持された電荷によって、一対の電極である下部電極110及び上部電極120間には、常に電位差が生じることとなる。すなわち、超音波振動子セル100は、下部電極110及び上部電極120間にDCバイアス電圧が印加された状態と電気的に同等となるのであり、従来よりもDCバイアス電圧を低減するか、またはDCバイアス電圧を外部から印加することなく、超音波の送受信を行うことが可能となる。すなわち、超音波振動子セル100を駆動する信号の電圧実効値を低くすることが可能となる。よって、超音波振動子セルのようにDCバイアス電圧を印加するための回路や配線を必要とせず装置の小型化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、駆動信号の電圧実効値を低く抑えられるため、駆動回路や配線を流れる電流値が小さくなり、消費電力を低くすることが可能である。このことは、駆動回路の更なる小型化を可能とし、また駆動回路の発熱による超音波振動子セルの特性変動を防止することが可能となる。
【0070】
また、上述した構成を有する超音波振動子セル100の下部電極110と上部電極120との間における合成静電容量Ctは、図7に示すように、第2絶縁膜104の静電容量Cmemと、空隙部107の静電容量Ccavとを直列に接続したものとなる。
【0071】
すなわち、本実施形態では、電荷保持部130を下部電極110と上部電極120との間に介在させる必要がないため、従来のように電荷保持部130を配設することによって電極間距離を広げてしまい該電極間における静電容量の低下を抑制することができる。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、従来に比して、対向する電極間における静電容量を高くすることが可能となり、より高い送信超音波の音圧が得られるため、感度の高い超音波振動子セルを得ることができる。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、DCバイアス電圧を低減するか、またはDCバイアス電圧を印加することなく超音波の送受信が可能であり、かつ感度の高い超音波振動子セルを得ることが可能である。
【0074】
また、上述の構造の場合、超音波振動子セル100を駆動するための駆動信号は、超音波振動子セル100の下層側、すなわち観察対象に対して超音波を送受する方向とは反対側に位置する下部電極110に印加される。ここで、該下部電極110に比してより観察対象に近い位置に配設されている上部電極200は、接地電位に接続されている。すなわち、本実施形態の超音波振動子セル100の外周部には、接地電位に接続された導電層のみが配設され、駆動信号が印加される導電層は超音波振動子セル100の内部側にのみ配設されている。よって、駆動信号が印加される導電層と、外部との電気的絶縁の確保が確実かつ容易となる。これに加えて、超音波振動子セルによっては前述のように実効値の高いDCバイアス電圧を印加するための配線等が不要であるため、例えば、超音波振動子セル100を被覆するための保護膜の膜厚を薄くすることが可能となり、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態の超音波振動子セル100を具備した超音波内視鏡1によれば、高空間分解能の超音波診断画像が得られる。
【0076】
なお、上述の実施形態においては、超音波振動子セル100を駆動するための駆動回路34は、超音波振動子セル100とは別に形成されてFPC35に実装されるものであるが、本発明はこの形態に限られるものではない。
【0077】
上述したように本発明の超音波振動子セルに含まれる基板をシリコン半導体基板にすることができるが、超音波振動子セル100を駆動するための電子回路の少なくとも一部を、シリコン半導体基板上にモノリシックに形成することが可能である。このように駆動回路を基板101上に形成することにより、駆動回路を別途実装する工程を無くすことができ、工程数の短縮化を図ることもできる。また、駆動回路と超音波振動子セル100との電気的接続の信頼性を向上させることが可能である。
【0078】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、第2の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。第2の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、電荷保持部の構成のみが異なる。よって、以下ではこの相違点のみを説明するものとし、また、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0079】
電荷保持部無機材料からなるエレクトレット膜を用いた場合、電荷は、格子欠陥やダングリングボンド等の原子の結合の欠陥部に捕獲される。すなわち、エレクトレット膜の格子欠陥もしくはダングリングボンドの密度を上げることにより、エレクトレット膜に保持される電荷量を高めることが可能となる。
【0080】
そこで、本実施形態においては、エレクトレット膜を2層以上に積層した複層構造とした。エレクトレット膜を2層以上積層する場合、それぞれ同じ種類のエレクトレット膜を積層してもよいし、異なる種類のエレクトレット膜を積層してもよい。より具体的には、シリコン化合物からなるエレクトレット膜を積層してもよいし、ハフニウム酸化物からなるエレクトレット膜を積層してもよいし、シリコン化合物からなるエレクトレット膜とハフニウム酸化物からなるエレクトレット膜とを積層してもよい。シリコン化合物またはハフニウム酸化物の好ましい例は、上述の第2の実施形態の項に記載したとおりである。図9に例示されるエレクトレット膜は、SiO膜130bとSiN膜130cとを積層して形成することにより構成されている。
【0081】
一般に、材料表面にはダングリングボンドが高密度に存在するものであるが、例えば材料表面が気体にさらされている場合には、保持された電荷は気体に存在する外来イオンにより中和されてしてしまう。ところが、本実施形態のように、エレクトレット膜を積層構造とすることにより、各層の界面に保持された電荷は、外来イオンの影響を受けにくくなる。
【0082】
したがって、本実施形態によれば、エレクトレット膜を単層で構成した場合に比して、エレクトレット膜を複層の積層構造とすることにより、より多い電荷をより長期に亘って安定して保持することが可能となる。
【0083】
なお、積層構造を有するエレクトレット膜を構成する膜の材料の組み合わせは、上述の形態に限られるものではなく、例えば、SiO膜およびHfO膜、HfAl膜およびSiN膜、SiO膜およびHfAl膜、または、SiNおよびHfO膜の組み合わせ等、シリコン化合物とハフニウム酸化物との組み合わせにより構成されてもよい。このように、エレクトレット膜として、絶縁性の高いシリコン化合物やハフニウム酸化物を用いることにより、電荷をエレクトレット膜の深い準位のトラップに固定することができ、長期にわたって安定した電位を得ることが可能となり、超音波振動子セルの動作の信頼性を向上させることが可能である。
【0084】
本実施形態のその他の効果は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0085】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図10を参照して説明する。図10は、第3の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。第3の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、エレクトレット膜の構成のみが異なる。よって、以下ではこの相違点のみを説明するものとし、また、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0086】
本実施形態では、図10に示すように、基板101上に形成された誘電体膜331中に、フロート状に誘電体膜331とは異なる材料からなる電荷保持膜332を埋設することにより、エレクトレット膜330を形成している。
【0087】
誘電体膜331中に埋設される電荷保持膜332を構成する材質としては特に限定されないが、例えばW、Mo、もしくはTa等の金属、ポリシリコンもしくはアモルファスシリコンか等の半導体、または、Ta、TiO、Al、ZrOもしくはHfO等の誘電体膜が挙げられる。本実施形態においても、第2の実施形態と同様にエレクトレット膜を単層で構成した場合に比して、エレクトレット膜は、より多い電荷をより長期に亘って安定して保持することが可能となり、超音波振動子セルの動作の信頼性を向上させることが可能である。
【0088】
本実施形態のその他の効果は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0089】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、第4の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。図12は第4の実施形態に係る超音波振動子セルの等価回路図である。第4の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、超音波振動子セルの積層構造のみが異なる。よって、以下ではこの相違点のみを説明するものとし、また、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0090】
本実施形態の超音波振動子セルでは、下部電極110に上接して、該下部電極110を被覆するように、電気絶縁性を有する下部保護膜103が形成されている。下部保護膜103を構成する材料としては特に限定されないが、シリコン窒化物、窒化ハフニウム(HfN)またはハフニウム酸窒化物(HfON)などが挙げられる。特に、HfN及びHfONは、高密度の膜が得られるため膜厚を薄くすることが可能となり、下部保護膜103を設けることによる空隙部107及び上下の電極間の距離に与える影響を抑えることが可能である。したがって、下部保護膜103を配設することによる、上部電極120と下部電極110との間における合成静電容量Ct4の低下量を最小限に抑制することが可能となる。
【0091】
下部保護膜103の形成方法としては特に限定されないが、例えばプラズマCVD法により形成することができる。
【0092】
本実施形態のように、下部電極110上にも下部保護膜103を配設することにより、下部電極110が、下部電極110形成後に実施される超音波振動子セルの製造工程における犠牲層エッチングや熱処理等によりダメージを受けることを抑制することができる。
【0093】
したがって、本実施形態によれば、超音波振動子アレイ31を構成する全ての超音波振動子セルにおける、下部電極110の膜質及び膜厚を均一に形成することが可能である。よって、各超音波振動子セルの送信超音波の周波数や音圧等の特性を均一にすることが可能となり、より高空間分解能の超音波診断画像を得ることが可能となる。
【0094】
本実施形態のその他の効果は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0095】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、第5の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。図14は第5の実施形態に係る超音波振動子セルの等価回路図である。第5の実施形態では、第4の実施形態の構成に対し、エレクトレット膜の配置と数のみが異なる。よって、以下ではこの相違点のみを説明するものとし、また、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0096】
本実施形態の超音波振動子セルでは、下部電極110の下層に配設された電荷保持部130に加えて、別の第2のエレクトレット膜333が、下部電極110と、上部電極120との間に配置されている。より具体的には、本実施形態では、第2のエレクトレット膜333を、空隙部107と下部電極110との間に配置するか、第2絶縁膜104と空隙部107との間に配置するか、上部電極120と第2絶縁膜104との間に配置することができる。図13では空隙部107と第2絶縁膜104との間に第2のエレクトレット膜333が配設されている。ここで、第2のエレクトレット膜333の分極の極性の方向は、電荷保持部130に保持された電荷を打ち消すことがないように設定されている。
【0097】
本実施形態のように、第二のエレクトレット膜333を配設することにより、より多くの電荷を保持することが可能となり、下部電極110及び上部電極120間における電位差をより大きくすることができる。すなわち、下部電極110及び上部電極120間に印加するDCバイアス電圧をより高めた状態と電気的に同等となり、超音波振動子セルの超音波の送受信感度をより高めることが可能となる。
【0098】
本実施形態のその他の効果は第4の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0099】
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態について、図15及び図16を参照して説明する。図15は、第6の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。図16は第5の実施形態に係る超音波振動子セルの等価回路図である。第6の実施形態では、第1の実施形態の構成に対し、超音波振動子セルが形成される基板の材料が異なる。よって、以下ではこの相違点のみを説明するものとし、また、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0100】
本実施形態では、基板150は絶縁性の材料により構成された絶縁性基板であり、基板150と電荷保持部130との間には、接地電位とされる接地導電層151が配置される。絶縁性基板に関しては上述の第1の実施形態の項に記載したとおりである。
【0101】
この接地導電層151上に、第1の実施形態の超音波振動子セル100と同様の構成が積層される。また、本実施形態の超音波振動子セルは、電気回路的には、導電性材料で構成された基板101を、接地導電層151として置き換えたものと等価であり、図16に示すような等価回路となる。
【0102】
接地導電層151の形成方法としては、特に限定されないが、スパッタリングを用いることができる。
【0103】
接地導電層151を構成する材料としては特に限定されず、従来公知の導電性材料を用いることができるが、例えば、Cr、Ni、Cu、Ti、Sn、Pt、Au、W、Mo、またはTaなどが挙げられる。なお、接地導電層151は、2種以上の導電性材料を積層した多層構造を有するものであってもよい。例えば、接地導電層は2層の金属膜からなり、下方側(基板150に接する側)の層が、Cr、Ni、Cu、Ti又はSnのいずれかからなり、上方側の層がPt、Au、W、Mo又はTaのいずれかからなる構成であってもよい。
【0104】
本実施形態の超音波振動子セルは、絶縁性基板150の裏面側がFPC上に接着剤等により固定された後に、ワイヤボンディング等によりFPCの配線パターンと電気的に接続することができる。これにより、接地導電層151及び下部電極110は、接地電位及び制御回路34にそれぞれ電気的に接続される。
【0105】
本実施の形態によれば、導電性の基板上に超音波振動子セルを形成する場合に比して、導電性の基板を配線として使用した場合に発生する寄生容量の発生を抑制することができ、より効率よく超音波振動子セルの駆動制御を行うことができる。
【0106】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う超音波振動子セル、超音波振動子エレメント、超音波振動子アレイ、及び超音波診断装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0107】
例えば、上述の超音波内視鏡は、電子式のラジアル走査及びセクタ走査を行うものとして説明しているが、走査方式はこれに限られるものではなく、リニア走査、コンベックス走査等を採用したものであってもよい。また、超音波送受部を、複数の超音波振動子エレメントを1次元に配列した1次元アレイとしたものであってもよい。さらに、本発明は機械式の走査方式の超音波内視鏡にも適用可能であり、上述の超音波振動子エレメントをアレイ状配列した形態のみでなく、単一の超音波振動子エレメントを用いた超音波内視鏡にも本発明を適用することが可能である。
【0108】
また、本発明は、先端に超音波送受部を設けた内視鏡のみに限らず、有線、無線の形式を問わず体内に導入される、いわゆる超音波プローブ全般を含む技術分野に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】超音波内視鏡の概略構成を示す説明図である。
【図2】超音波内視鏡の先端部分の構成を示す斜視図である。
【図3】超音波振動子アレイの斜視図である。
【図4】超音波振動子ユニットを超音波の送受方向から見た上面図である。
【図5】超音波振動子セルの上面図である。
【図6】図5のVI-VI断面図である。
【図7】超音波振動子セルの等価回路図である。
【図8】第1の実施形態の超音波振動子セルの変形例を示す部分断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。
【図10】第3の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。
【図11】第4の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。
【図12】第4の実施形態に係る超音波振動子セルの等価回路図である。
【図13】第5の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。
【図14】第5の実施形態に係る超音波振動子セルの等価回路図である。
【図15】第6の実施形態に係る超音波振動子セルの部分断面図である。
【図16】第6の実施形態に係る超音波振動子セルの等価回路図である。
【図17】従来の静電容量型トランスデューサの等価回路図である。
【符号の説明】
【0110】
100 超音波振動子セル、 100a 振動膜、 101 基板、 102 第1絶縁膜、 104 第2絶縁膜、 105 上部電極保護膜、 107 空隙部、 108 プラグ、 109 裏面絶縁膜、 110 下部電極、 111 下部電極配線、 112 ウェハ貫通電極、 113 信号電極パッド、 120 上部電極、 121 上部電極配線、 122 貫通電極、 123 接地電極パッド、 130 電荷保持部、 34 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配設された電荷保持部と、
前記電荷保持部上に配設され、信号の入出力に使われる下部電極と、
前記下部電極上に空隙部を隔てて配設され、絶縁膜および前記絶縁膜上に配置された上部電極を少なくとも含む振動膜と、
を具備することを特徴とする超音波振動子セル。
【請求項2】
前記電荷保持部は、エレクトレット膜であることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子セル。
【請求項3】
前記エレクトレット膜は、
単層の膜または複層の膜であり、シリコン化合物からなることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項4】
前記エレクトレット膜は、単層の膜または複層の膜であり、ハフニウム酸化物からなることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項5】
前記エレクトレット膜は、シリコン化合物からなる膜及びハフニウム酸化物からなる膜を積層してなることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項6】
前記下部電極と、前記上部電極との間に、第2のエレクトレット膜が配設されることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項7】
前記基板は電気絶縁性の材料により構成された絶縁性基板であって、
前記絶縁性基板と前記電荷保持部との間に、導電性を有し接地電位とされる接地導電膜が配設されることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子セル。
【請求項8】
前記基板は電気絶縁性の材料により構成された絶縁性基板であって、
前記絶縁性基板と前記電荷保持部との間に、導電性を有し接地電位とされる接地導電膜が配設されることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項9】
前記基板は導電性の材料により構成された導電性基板であって、前記導電性基板は接地電位とされることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子セル。
【請求項10】
前記基板は導電性の材料により構成された導電性基板であって、前記導電性基板は接地電位とされることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項11】
前記導電性基板は、シリコン半導体からなることを特徴とする請求項10に記載の超音波振動子セル。
【請求項12】
前記導電性基板は、シリコン半導体からなることを特徴とする請求項11に記載の超音波振動子セル。
【請求項13】
前記下部電極と、前記空隙部との間に電気絶縁性の保護膜が配設されることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動子セル。
【請求項14】
前記下部電極と、前記空隙部との間に電気絶縁性の保護膜が配設されることを特徴とする請求項2に記載の超音波振動子セル。
【請求項15】
請求項1に記載の超音波振動子セルを含む超音波振動子エレメント。
【請求項16】
請求項15に記載の超音波振動子エレメントを含む超音波振動子アレイ。
【請求項17】
請求項16に記載の超音波振動子アレイを具備することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−118631(P2008−118631A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263695(P2007−263695)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】